雨後の遺跡のスライム退治

マスター:貴島春介

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/07/23 09:00
完成日
2014/07/31 11:33

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 大雨が降った翌日、新しい依頼が掲示された。
「雨の被害がないか確認に行ったスタッフが大慌てで帰ってきましてね」
「遺跡に発生した雑魔退治です。ハンターとして登録をしたばかりでしたら、口頭で細かく依頼内容をご説明しましょうか」
 ハンターズソサエティのスタッフは丁寧に切り出した。
「調査済みですから、遺跡の構造はわかっているんです。地下3階からなっている遺跡なんですが……」
 スタッフは少し困ったように言う。
「浸水するんですよ、この遺跡は」

「入り口は天然の洞窟で、洞窟の中の床が天然の地面のようにカモフラージュされています。そこから階段で地下に降りて遺跡に入るんです。この入り口からずるーっと不定形の塊がはみ出て、うねうねしていたんですよ。スライムですね。数は3体、確認されています。しばらく観察していると、中に引っ込んでしまったそうです」
 遺跡内については詳細な記録があるらしく、紙束をめくりながらスタッフは説明する。
「遺跡内は非常になめらかな面を持った硬い岩のようなものでできています。相当古いものですから、もうぼろぼろで、ヒビや亀裂がたくさん入っています。壁面に走ったヒビから水が染み出していて、床には所々水たまりができています。水浸しになった壁にも床にも藻のようなものが密生していて、慎重に歩かないと滑って転んでしまいます。各階を隔てる階段も床や壁と同じものでできています。床面と同じく藻のため足場が悪いので、気をつけてくださいね」
 スタッフは諭すような口調で続ける。
「スライム3体最下層にある広い空間に出現していると考えられます。最下層には足首が浸る程度の水がたまっていて、スライムはその上を滑るように移動してくるそうです。地面のあるところで戦うのとは少し勝手が違うかもしれません」
 ここで一旦一息吐くと、スタッフは記録から顔を上げて、質問した。
「以上が依頼の内容です。いかがでしょう、この依頼お受けになりますか?」

リプレイ本文

●新米ハンター、準備する
 リゼリオの町にあるハンターズオフィス。様々な装備に身を包んだハンターたちで賑わう建物の一角で、浸水する地下遺跡へと向かうハンターたちが出発前の準備を整えていた。
 クンネ・イヴウィン(ka0008)は充電が完了したLEDライトをしげしげと眺めてつぶやいた。
「マテリアルを使わずに……リアルブルーには便利な物があるのですね」
 確かに明かりが付くことを確認し、てきぱきとベルトを使ってライトを体に固定する。
 依頼内容を吟味し、めいめいが、靴に荒縄を巻くなどの対策を講じている。服から取ったゴムを靴に巻きつけていた石橋 パメラ(ka1296)がくすりと微笑んで言う。
「……なんだか冬の故郷を思い出します。雪道はよく滑って大変でしたが楽しくもありました……勿論、今も楽しいです」
 その言葉通り、これから雑魔退治に向かうにもかかわらずどこか楽しそうだ。
 対照的にしょんぼりとしているエルフの少女がいる。リュカ・レインクロイツ(ka2322)だ。
「きょうのいらい……ドワーフさんも……エルフさんも……いない……」
 人間に対する苦手意識がまだぬぐえていないようだ。不安そうな面持ちでリュカはちらりと、隣にいるドレスの女性を見た。彼女は人間の割には、少し耳がとがっている気がする。
 そのドレスの女性、ヴァルナ=エリゴス(ka2651)は靴の滑り止めを終えてドレスを整えると、ロングソードを腰に佩いた。
「さて、私のハンターとしての初陣ですね。場所柄故、好みの武器が持ち込めなかったのは残念ですが……まあいいでしょう」
 騎士の生まれであるヴァルナは、大剣を好む。しかし、左手で光源を保持する必要上、今回は武器を変えざるを得なかったのだ。
「服や靴がずぶ濡れになってしまいそうですけど、洗って乾かせば済む話ですし、あまり気にせず戦いましょう。仮に破れてしまったら…必要経費として落ちるのでしょうか?」
 ふとわき起こった疑問に首を傾げるヴァルナ。
「今回は気を付けていても濡れたり汚れたりするわ。それを前提とした格好をすればいいのよ」
 冷静に返した巫女服の少女、柏部 狭綾(ka2697)は、ハンターズオフィスに保管されていた遺跡の地図を確認している。迷わない為に道順を把握しておくに超したことはない。
「(初依頼で男が俺だけか…。凶悪な相手ではないけど、油断して皆が無駄な怪我をしないように注意だね)」 オリヒカ フォリッド(ka2712)は会話する女性陣を眺めつつ心中でつぶやいた。機導砲の取り回しの邪魔にならないよう、ライトを腕に固定する。
 今回の依頼に参加するハンターは6人。クンネは今回同行する仲間を見回し、改めて丁寧に頭を下げた。
「よろしくお願いします。私は、ハンターとしての依頼も、戦闘も初めてです。昔から訓練は積んできたつもりですが、油断せず臨みたいと思います」
 丁寧だが、淡々とした口調で挨拶を述べる。
「いざとなったら俺を盾にしちゃえばいいさ」
 オリヒカがのんびりとした口調で返す。
「獅子は兎を狩るにも全力を尽くす。たかが雑魔と侮らず、気を引き締めていくとしましょう。今は家を離れているとは言っても、家名に泥を塗るような真似は出来ませんしね」
 ハンターになってからも家にこだわっている発言をしてしまい、ヴァルナは苦笑した。

●地下遺跡の中で
 6人分のLEDライトで照らして進めば、明かりのない地下の遺跡内でも十分明るい。依頼で説明されたとおり、足元は密生する藻でぬるぬると滑り、覚束ないことこの上ない。靴に滑り止めを施さなかったら、転倒する者が出ていただろう。
 前衛として先を進むパメラは油断無く足下にライトを向け気を配っている。
「藻だけが障害とも限らないですし気をつけなくては……ですね」
 念の為、段差の有無など見えなくなっている足元部分への警戒も怠らない。
 パメラと同じく前衛として並ぶヴァルナは危なげなく、滑りやすい床の状態をものともせず歩みを進めている。
「ヴァルナさん、バランスを取るのがお上手ですのね」
 パメラが素直に感想を口に出すと、ヴァルナは優雅に微笑んだ。
「私、ダンスの心得があるのです。踵の高い靴で殿方と踊るのと、滑りやすい床を踏み締めて剣を振るう事、どちらも体勢を保つという意味では大差無いでしょう?」

●戦闘開始!
 ライトの光を透かす半透明のゼリーのような、しかし人間ほどもある塊、スライムが3体、部屋の奥に固まっていた。光に反応し、ハンターたちの方へとうごめきながら近づいてくる。
 クンネの瞳が、ぼんやりと発光した。暗闇でなければ、わからないほどかすかに。後衛の3人が投げかける明かりを背に、クンネが、足下の水を蹴立てて走る。素早い動きで一気にスライムとの距離を詰め、即座に攻撃に転じる。
 クンネの、マテリアルを込めた一撃がスライムを捉えるかと見えた瞬間、水面に浮いていたスライムはつるりと滑るように攻撃をかわした。6人の間に少しの動揺が走る。
「私が押さえます。後衛は作戦通り集中攻撃を」
 クンネは体勢を立て直し、スライムと対峙する。前衛を任されたクンネ、パメラ、ヴァルナの3人で、それぞれ1体ずつスライムの足を止める作戦だ。後衛の3人のところに抜かせるわけにはいかなかった。
「さて…こういう時はなんて言えば良いのかしら。倒してしまっても構わないのでしょう?でしたっけ」
 ……私には無理ですがね、とパメラは口の中で呟く。
 ゆらり、と黒い煙のようなオーラが揺らめき。武器を構えた姿勢から大きなモーションなしに、2体目のスライムにナイフを投擲する。空気を裂いて刃は命中し、その不定形の体がぶよんぶよんと大きく揺れ動いた。その隙に、一気に接近する。
「こちらは私が止めます!」
「しゅうちゅう……こうげき……」
 リュカがワンドを掲げ、魔法を発動させた。光の矢がまぶしく輝き、クンネが押さえるスライム目がけ撃ち込まれる。
 だが、またしても。滑るように移動したスライムは光の矢を避け、水面に叩きつけられた魔力の塊は派手に水しぶきを巻き上げた。
「では、剣で打ち返して差し上げましょう」
 ヴァルナが見事な平衡感覚で3体目のスライムの元に近づく。全身には淡い黄金色の燐光を纏っている。振り上げたロングソードがマテリアルの光を帯び、ヴァルナはそれを叩きつけるように振り下ろした。大剣ほどではないが、いい手応えだ。スライムは衝撃が走ったようにブルブルと震える。
 攻撃を避け続けるスライムに向かって、オリヒカは機導砲の照準を付けた。浮かび上がる紺色の淡い光。普段は穏やかなオリヒカだが、今は攻撃をすることをためらわない。
「させるかぁー!」
 己のマテリアルを武器に流し込み、引き金を引く。緑色の光が一直線にスライムへと走る。ジュウ、と音がして、命中した部分がこそげたようになる。
 狭綾は片手にライトを保持し、壁を背に身を預ける。じわりと着物に水が染み込むが、かまわない。むやみに動いて滑って転ぶよりは確実な手段を。対策にも抜かりはない。
「クンネ、そちらを狙うわ」
 スカート状になった巫女袴を大胆にたくし上げ、あらわになった太股に装着されたオートマチックピストルを引き抜く。着物で覆われた胸元から燐光が溢れ、狭綾は武器にマテリアルを込める。重いピストルが火を噴き、マテリアルが込められた弾丸がスライムへと命中した。
 スライムたちは全身をブルブルと波打たせ、目の前をふさぐ人間に向かって襲いかかったが、クンネには盾でやすやすと防がれ、ヴァルナにはドレスを翻して避けられる。パメラが攻撃を受けるが、体勢を崩すまでには至らない。
 攻撃を受け流したクンネは再びマテリアルを込めた一撃を繰り出した。不定形の体に刃が潜り込み手応えを感じたものの、とどめには遠い。
「やはり、あまり効いていないですね。とにかく手数をかけてみましょう」
「それがよさそうですね……」
 答えてパメラも目の前の相手に同じ攻撃を仕掛ける。最小限の動きで放たれたナイフが、スライムの動きを制する。
「もう……いっかい……」
 橙色と赤の瞳でスライムを見据えたリュカが、今度こそはと光の矢を生み出す。矢はヴァルナの止めたスライムに向かって炸裂した。
「逃しません!」
 ヴァルナがロングソードを振りかぶり、重い一撃がスライムを打ち据えた。
「一気に畳みかける……!」
 その一瞬を見逃さず、オリヒカは機導砲を構えた。魔力の矢と強烈な一撃で打ちのめされたスライムはひとたまりもない。弾けるようにマテリアルに還元されて消滅した。
「あと2体」
 狭綾はつぶやき、オートマチックピストルを構える。クンネが足止めしているスライムとは距離があるが、狭綾の目は難なく敵の姿を捉え、マテリアルの力を得た武器は命中精度と威力を飛躍させる。狭綾の放った弾丸はスライムの体を貫き、マテリアルへと還元させた。
 1体になってしまったスライムは、もう一度パメラに襲いかかるが、同じ攻撃に二度も当たる彼女ではない。今回は身軽にかわしてみせた。
「加勢します、パメラさん」
 目の前のスライムが消滅すると、クンネは残るパメラが止めるスライムへと接近した。短刀で牽制し、動きを止める。パメラが追い打ちをかけ投擲したナイフは吸い込まれるようにスライムに命中した。
「あと一息ですね!」
 ヴァルナが三度ロングソードを構え、スライムに向かって一歩踏み込む。黄金色のマテリアルがその体を巡り、足下の水面に波紋を起こした。叩きつけられた一撃が、スライムを押しつぶす。
「……すらいむさん……じゃま……です」
 さらにたたみ掛けるように。リュカが唱えたマジックアローの呪文が光の矢を形作った。それはまっすぐに最後の1体となったスライムに向かって飛び、とどめを刺したのだった。

●戦い終わって
 スライムを倒し、向かってくる敵はもういない。雑魔退治の依頼を果たすことができたのだ。
 リュカは呼吸を整えると、ナッツを取り出し口に入れた。まさか、自分が最後の最後でとどめを刺すことになるなんて。
 オリヒカは壁を背にしている狭綾のところに行き、コートを差し出した。
「よかったら使って。風邪ひいたらもともこうもないからね」
「平気よ。服が濡れるってわかってたし」
 狭綾が無頓着に着物の衿を開くと、着物の下は水着だった。前もって準備しておいたのだ。狭綾の動じない様子に、逆にオリヒカの方が戸惑ってしまう。
 「皆さん、お疲れ様でした」
 クンネはぺこり、と丁寧に頭を下げた。お疲れ様の言葉に、そこでやっと全員の緊張が解けた、その瞬間。
 パメラが派手に滑って転倒した。受け身もとれず、思い切り頭から水にダイブしてしまう。自慢の金髪も、かっちりとしたスーツも水浸しだ。お互いに反応に困ってしまい、遺跡の中に沈黙が落ちる。
「……大きな音を出して、残りの敵がいないか確認してみました。何もいないようでよかったです。さぁ……皆さん帰りましょ?」
  年長の意地なのか、手をぽんと合わせ笑顔で誤魔化す。
「彼女の方がコートと回復魔法がが必要じゃないかしら。」
 狭綾がオリヒカに言うと、彼は慌ててパメラの元に行き、回復魔法を唱える。

 無事に依頼を果たし、リゼリオに帰還する中で、オリヒカはペットを撫でながら今回の依頼を思い返していた。
「(…自分が出来ることを増やすためにも、強くならないと)」
 力をつけなければ、と決意する。
 クリムゾンウェストの大地に踏み出したハンターたちの冒険の第一歩は、大きな怪我人もなく、無事に成功したのだった。

依頼結果

依頼成功度大成功
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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧


  • クンネ・イヴウィン(ka0008
    人間(紅)|18才|女性|疾影士
  • 穏かなる銃使い
    石橋 パメラ(ka1296
    人間(蒼)|20才|女性|疾影士

  • リュカ・レインクロイツ(ka2322
    エルフ|10才|女性|魔術師
  • 誓槍の騎士
    ヴァルナ=エリゴス(ka2651
    人間(紅)|18才|女性|闘狩人
  • 対触手モニター『谷』
    柏部 狭綾(ka2697
    人間(蒼)|17才|女性|猟撃士

  • オリヒカ フォリッド(ka2712
    人間(蒼)|24才|男性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
オリヒカ フォリッド(ka2712
人間(リアルブルー)|24才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2014/07/23 00:05:10
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/07/18 10:43:04