ゲスト
(ka0000)
【聖呪】ゴブリン再び
マスター:天田洋介

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/07/15 22:00
- 完成日
- 2015/07/22 02:29
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
グラズヘイム王国の古都【アークエルス】から程近い位置にあるマリ・シャンク。
巡礼の人々が立ち寄る平穏な町なのだが、つい先月、突然の事態に見舞われた。町の中心部にあるミシェル教会がゴブリン集団に襲われたのである。忘れ去れていた町の郊外と教会内部を繋ぐ地下通路を使われたので、誰も気づかなかった。
礼拝中のミシェル教会は大騒動に。司祭ポールは信者達を逃がしたものの、自らが人質になってしまう。
こうしてミシェル教会はゴブリン集団に籠城されてしまったが、翌日にはハンター一行が現れる。一行の活躍によって司祭ポールは無事救出された。
交渉の結果、ゴブリン集団は食料をもらって教会から退去することとなる。但し、一人のゴブリンが教会に残った。白髪雑じりのゴブリンの名は『ビリィシャ』という。
「たぐさむぅ……いぃた」
「そこがわからないのですが――」
司祭ポールはかなりの日数をかけて根気よくビリィシャと話す。そして彼が仲間を率いてマリ・シャンクを襲った理由がおぼろげながらわかってくる。
マリ・シャンクは巡礼で有名な地であり、人々の往来がとても活発だった。そのことをビリィシャは理解している。どうやら多くの人間が巡っている様子から強大な威力を持つ兵器的なものが町にあると考えたようだ。
(ものすごく強い剣などの武器が隠されていると想像されたようですが……)
司祭ポールがそんなものはないと何度説明してもビリィシャは引き下がらなかった。
北方の山岳地帯からの脱出の際、彼はマガナという名の恋人を殺されている。そのことで意固地になっているのではと司祭ポールは想像した。
ビリィシャが話した情報の中に気になるものがある。教会を襲った自分達とは比べものにならないゴブリンの大集団が南下をしているといったものだ。確かに古都周辺でのゴブリン接触例は増えていた。
「それでよろしくお願いします」
「それがいいと私も思う」
司祭ポールは町長と相談。町長がハンターズソサエティーに依頼をだす。守備の騎士は増やしてもらったが、警備のどこかに穴があるかも知れなからだ。地下通路のように。
それから数日後、ハンター一行が平穏なマリ・シャンクの町を訪れた。
巡礼の人々が立ち寄る平穏な町なのだが、つい先月、突然の事態に見舞われた。町の中心部にあるミシェル教会がゴブリン集団に襲われたのである。忘れ去れていた町の郊外と教会内部を繋ぐ地下通路を使われたので、誰も気づかなかった。
礼拝中のミシェル教会は大騒動に。司祭ポールは信者達を逃がしたものの、自らが人質になってしまう。
こうしてミシェル教会はゴブリン集団に籠城されてしまったが、翌日にはハンター一行が現れる。一行の活躍によって司祭ポールは無事救出された。
交渉の結果、ゴブリン集団は食料をもらって教会から退去することとなる。但し、一人のゴブリンが教会に残った。白髪雑じりのゴブリンの名は『ビリィシャ』という。
「たぐさむぅ……いぃた」
「そこがわからないのですが――」
司祭ポールはかなりの日数をかけて根気よくビリィシャと話す。そして彼が仲間を率いてマリ・シャンクを襲った理由がおぼろげながらわかってくる。
マリ・シャンクは巡礼で有名な地であり、人々の往来がとても活発だった。そのことをビリィシャは理解している。どうやら多くの人間が巡っている様子から強大な威力を持つ兵器的なものが町にあると考えたようだ。
(ものすごく強い剣などの武器が隠されていると想像されたようですが……)
司祭ポールがそんなものはないと何度説明してもビリィシャは引き下がらなかった。
北方の山岳地帯からの脱出の際、彼はマガナという名の恋人を殺されている。そのことで意固地になっているのではと司祭ポールは想像した。
ビリィシャが話した情報の中に気になるものがある。教会を襲った自分達とは比べものにならないゴブリンの大集団が南下をしているといったものだ。確かに古都周辺でのゴブリン接触例は増えていた。
「それでよろしくお願いします」
「それがいいと私も思う」
司祭ポールは町長と相談。町長がハンターズソサエティーに依頼をだす。守備の騎士は増やしてもらったが、警備のどこかに穴があるかも知れなからだ。地下通路のように。
それから数日後、ハンター一行が平穏なマリ・シャンクの町を訪れた。
リプレイ本文
●
現在のマリ・シャンクには特別警戒の詰め所が存在している。
対ゴブリン用の対策室であり、城壁の衛兵や任務を承った騎士が中心となって回されていた。町の人々への警戒もここを通じて行われる。
「私はこの後、町長との約束がありますので失礼します」
ハンター一行はミシェル教会の司祭ポールに詰め所まで案内してもらう。
「お初にお目に掛かります」
出入り口の扉を開けたユナイテル・キングスコート(ka3458)が真っ先に挨拶。案内された席上で昨今の状況を聞く。
城壁外の偵察は定期的に行われていて手抜かりはないようだ。しかし外部からの襲撃に対しての対抗手段に手薄に感じられる。
「俺は防護柵を用意するつもりだ」
リカルド=イージス=バルデラマ(ka0356)は町の鍛冶屋に頼みたいことがあった。せっかくなので騎士の代表に紹介状を書いてもらう。
「交渉には私も連れて行ってください!」
鍛冶の腕に覚えがあるアルシュナ・ウィンゲーツ(ka5052)も同行を希望した。
「町の方たちに協力を仰ぎたいのです」
「私も手伝ってもらいたいのよね。馬防柵や落とし穴とか」
アデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)とセリス・アルマーズ(ka1079)は町民への呼びかけを行うことにする。
地下通路については完全に塞いで使えなくしたようだ。そのことにセリスは安心した。
「まずは北方への斥候をしたいと考えています。万一に備えて詰め所のどなたかに南側をお願いできますでしょうか?」
ユナイテルはより厳重な警戒の必要性を説いた。偵察だけでなく定点からの観察も必要だと。
「やっぱり一度は歩いて確かめみたいかな?」
葛音 水月(ka1895)は仲間の作業を手伝う前にやりたいことがある。それは城壁の上を一周すること。それが終わってから定点観察だ。
ユナイテルが北東方面、葛音水月が北西方面を担当する。人員が足りないので騎士にも参加を求めた。
(真実とは、時に見え難いものである。其れは巧妙に隠されていたり、或いは目の前の其れに我々は気がつかない)
セドリック・L・ファルツ(ka4167)は誰に気取られることもなく静かにやり取りを聞いていた。
(時には不条理で、理解し難いものかもしれない。然し我々は其の真実を疑ってはならない、真実とは常に多面的なものなのだから)
北方の山岳部に棲むゴブリンの諍いがマリ・シャンクにも波及して暴虐の宴が開かれようとしている。それ自体は事実だろうが、セドリックは渋い表情を浮かべていた。例えるならばパズルのピースが足りないのではないかと。
「……ゴブリンといえど、大挙して襲われればどれほどの被害が出るか分かりません。被害を可能な限り抑える為にわたしも尽力させて頂きます」
Hollow(ka4450)は詰め所の一同が作った警備計画書に目を通す。警戒は二十四時間体制で行われて、町民への連絡方法も熟考されている。
ハンター一行は間借りした詰め所の一室を拠点と定めるのだった。
●
ここは鍛冶屋。
「こんにちは、私はハンターのアルシュナっていいます。街を守るために力を貸して頂けませんか?」
「俺はリカルドだ。町を囲む城壁の周囲に罠を仕掛けたいんだ。鏃や欠けた刃などの鉄くずをもらえないだろうか?」
アルシュナとリカルドは休憩中の鍛冶職人達に事情を説明する。町を護るためならばと鍛冶職人達が乗り気になった。
「それなら鉄くずだけじゃなくて、他にもいいもんあるぜ。こいつはどうだ! ついでに運んでやるぜ!」
案内された倉庫には鉄製の大鍋が山のように保管されている。二人は礼をいいつつ、鉄くずと一緒に城壁の登り口付近まで運んで欲しいと頼んでおいた。
アデリシアは司祭ポールから許可をもらい、ミシェル教会に集まっていた人々に語りかけた。
「大切な町を護る戦いです。勇気を持って挑めばきっと戦神の加護があることでしょう。勿論、危険なことに変わりはないので無理に、とは申し上げません」
包み隠さずにすべてを話した。生き抜くのには時として覚悟が必要である。昨今のゴブリンとの遭遇事例を交えて説得を試みた。
セリスはミシェル教会の外側を点検する。町の大工達に教会建物の補修をお願いしていた。ちなみに以前ビリィシャと仲間が大暴れした礼拝堂はすでに補修済みである。
「あそこ傷んでいますね」
鐘楼を眺めていたとき、煉瓦の一部が崩れているのを発見した。今のところは大したことなさそうだが、破壊を目論む者にとっては格好の弱点になるかも知れない。
そういった個所を見つけて補修要望一覧を作成する。鐘楼の煉瓦は根元なので最優先のマークをつけておく。
大工に修理を任せた後は城壁周辺の罠作りに参加したセリスである。
「‥‥敵の総数が分からない以上敵を少しでも分断し、足止めするようにしなくては数で押し切られてはこちらの負けですからね」
Hollowは町の人々に協力してもらって障害物の設置に取りかかった。城壁付近の罠は準備が整わないので、まずはできる限りのことを行う。
「ゴブリンの襲撃が確かめられたのなら、こちらの荷馬車を道路を塞ぐように移動させてもらえますのてしょうか?」
具体的には城門からミシェル教会に至る道路への対策である。ゴブリンが攻め込んできたときの時間稼ぎだ。ハンター一行は教会へ駆けつける際に問題ないよう裏道を覚えておく。
「大丈夫かい?」
「任せてくださいですー」
覚醒した葛音水月は黒猫のように耳と尻尾が生やした。衛兵の心配をよそにたくさんの鉄鍋をまとめて担ぐ。城壁登り口の階段を往復してすべてを上に運び込んだ。
ランアウトも駆使して城壁上を移動。覚醒が切れるまでに大量の鉄鍋を城壁の必要個所まで届け終えた。
「では出発しましょうー」
その後は愛馬に跨がり、定点観察のために北西の地へ。騎士二名と野宿の準備を整えて張り込むのだった。
「ビリィシャ、もし君がもう一度、今のこの町に攻めこむとするならばどういう風に攻めるのか教えてもらえないかい?」
「うっ……ん」
セドリックはミシェル教会が預かるゴブリンのビリィシャに意見を求めた。
一般にゴブリンは集団行動が苦手だといわれている。ビリィシャが話したゴブリンの攻め方はその範疇に収まっている。一言でいえば猪突猛進。非常に単純な一斉攻撃だ。
御しやすいと考えがちだが攻められる立場の重圧は凄まじい。蛮勇は時として最強の兵法になり得る。そうさせないための策が必要だとセドリックは考えた。
愛馬に跨がったユナイテルは町から北東の方角を目指す。
「ここがちょうどよさそうですね」
小高い丘の上から周囲を見渡した。南西の方角にはマリ・シャンクが小さく見える。騎士二名と一緒に野宿による見張りを始めた。
町を中心にして北西側と南側にも定点観察の人員が配置されている。ゴブリンが町を襲うのならこれで引っかからないはずがなかった。
「これくらいヘッチャラです♪」
老人が支える杭をアルシュナが大槌で叩いていく。
こうして杭や木板によって防護柵が作られた。落とし穴作りも順調に進む。油や薪の手配と運び込みも順調だ。
やがて予感は現実を象って迫り来る。ハンターが到着して四日目の深夜、マリ・シャンクを目指す多勢の影が忍び寄ろうとしていた。
●
星明かりの深夜、ユナイテルは刈り入れが終わった麦畑を愛馬で駆ける。暗闇の中を進むゴブリン大集団の報を伝えるためだ。
全貌の把握はできなかったが百に近い軍勢だろう。騎士一名は状況を伝えるために北西の見張りの元へ。もう一名は後退しながら今も大集団を見張っている。
「敵襲ー! 防衛態勢を!」
城門側の篝火の横でユナイテルが声を張り上げた。
各所への連絡のために伝令が走る。鐘やラッパなどの警報だと迫る大集団に気づかれるかも知れないので使用されなかった。
それから三十分後、大集団がマリ・シャンクの城壁まで辿り着く。
「ごふっ……?」
指揮官らしきゴブリンナイトが首を傾げる。途中から街道を通ってきたのにもかかわらず、目の前が行き止まりの城壁だからだ。視界の中に城門はなかった。
偽の街道案はセドリックがだしたもの。街道の途中を誤魔化して偽の道に誘導している。単に麦畑の一部を耕しただけの簡易な道なのだが、暗がりのせいで大集団は気づかなかったようだ。
「さあみなさん!」
城壁上で一斉に木盾が並ぶ。アルシュナのかけ声に合わせて滑り台式の延長台が迫りだす。まもなく鉄鍋が城壁外へと放りだされた。
鉄鍋の中身は熱々の油だ。被ったゴブリン共の悲鳴がそこら中から沸き上がる。
「町のみなさん、次の攻撃をお願いします」
続いてアデリシアの指示で投石が行われた。より遠くへと投げられるように革製のバンドに引っかけて拳大の石が飛ばされる。
石の雨も加わってゴブリンの大集団が右往左往しだす。
周辺に仕掛けられた落とし穴に次々とゴブリンが落ちていく。穴の底では鋭利な鉄くずが待ち構えていた。
指揮官の号令によって大集団が一旦後退していく。
城門を探すためにリトルラプターに騎乗したゴブリンナイトが斥候にでる。城壁に沿って駆けていると足をとられて転倒。杭と縄による仕掛けが施されていた。
町を取り囲む麦畑を走っても無理。結ばれた麦の輪に足を引っかけてリトルラプターがひっくり返った。
「騎馬隊は脚を潰せばなんとかなるからな。遠慮はしねえ」
魔導バイク「ゲイル」に跨がったリカルドが林から飛びだす。勢いをつけてのすれ違いざま、ゴブリンナイトの首を試作振動刀の刃で刎ねる。
「レーサータイプのバイクじゃ、こりゃあ難しいな、ああハンドルとられるなあ」
状況によってはバイクを停めて魔導拳銃で仕留めるときもある。そうやって少しずつ敵を減らしていく。
罠が功を奏する。ゴブリンの大集団が北門を発見したのはそれから約三十分後のことだった。その間に町側も新たに煮えた油や湯の用意を終える。
さすがに大集団も学習したようで無闇に攻め込むようなことはしなくなった。まずは城壁上に向けて矢を放つ。
町側も鉄鍋を落とすが先程までのようにはいかなくなる。これからはより遠くへと飛ばせる火炎瓶に変更した。地面に零れた煮え油に引火して眼下が炎で照らされる。
「北でなにが起こってるのかしら?」
セリスが短弓「テムジン」で北門前のゴブリンを狙い射つ。
丸太を抱えて北門へと突撃するホフゴブリンの額に命中。そうやって城門壊しを阻止していく。それでも諦めずに大集団側は特攻を仕掛けてきた。
「罠で大分減らせたようですが……」
Hollowもカービン「プフェールトKT9」でホフゴブリンを狙い撃つ。その腕力は城門を抜けるのに役立ってしまう。攻性強化で火力を底上げして優先的に頭を潰していった。
「当たったー。次はあのゴブリンにしようー。ほらほらふぁいおー」
監視から戻っていた葛音水月は城門から八握剣を飛ばす。さくっとホフゴブリンの脳天に突き刺さった。
そうやってハンター達は城門破りのゴブリンを減らしていく。
「そろそろいいのではないでしょうか?」
城壁上から魔導銃で攻撃していたユナイテルが合図をだす。その場にいた誰もが頃合いだと感じていた。
城門内側の衛兵によってわざと閂が外される。そうとも知らずに城門をこじ開けられたと思い込んだゴブリンの大集団がなだれ込んだ。
それは町側が仕掛けた罠の最終段階。落とし穴は城壁の外側だけではなかった。内側に掘られた落とし穴に次々と落ちていく。
「引っかかったー。よしっと」
地面まで下りた葛音水月が八握剣を広角投射でぐるりと飛ばす。すんでの所で留まっていたゴブリンが足を滑らせて落とし穴へ。
「あはは、やっぱりこっちのほうが楽しーです♪」
ゴブリンに気づかれてもドッジダッシュで離脱。繰り返して敵数を減らしていった。
戦局は北城門の内側に移る。
「これでいい!」
城門の外に残ったリカルドはゴブリンの背後を狙う。魔導拳銃による威嚇で足止めをして試作振動刀の衝撃波で吹き飛ばした。指揮官クラスの鉄棍棒を受け止めながら白髪の覚醒リカルドがにやりと笑う。
「さあ来るがいい。身命と信仰にかけてやらせん!」
民家に踏み込もうとしていたゴブリンの背中にアデリシアがシャドウブリットの影をぶち当てる。怪我した味方には惜しみないヒールで癒やす。
「この生命にかえても……やあああぁぁぁ――!」
魔導バイクに乗ったアルシュナの刀撃がゴブリンの片腕を吹き飛ばした。そのままミシェル教会に着いて護りを固める。
セリスはセイクリッドフラッシュの輝きを落とし穴に浴びせかけた。途中までよじ登っていたゴブリン共が再び穴底へと落ちていく。
「これで這い上れないはずですね」
もしもを考えたセリスはミシェル教会へと向かう。
荷馬車で塞がれた道の位置が城壁上でカービンを構えるHollowの最大射程距離である。
「そこから先には行かせません」
Hollowが銃爪を絞った。放たれた銃弾が教会へ近づこうとするゴブリンを石畳へと転がす。
セドリックは城門が開いたのを見届けたあとで一足先にミシェル教会まで退いていた。
「あなたは外にでないでここにいてくださいね」
「わぁ……がった」
ビリィシャと一緒に窓から外を監視する。
教会に待避中の女子供を護らなければならない。とはいえそういった意味での活躍の場はなさそうだ。偽の街道と北城門内側への落とし穴を提案した時点でセドリックの仕事は終わっていたのかも知れなかった。
最終局面は北城門の外側で行われていた。
「そいつですね!」
リカルドの刃をゴブリンナイトの指揮官がはね除ける。そこへユナイテルが加勢した。
青い瞳を真っ赤に輝かせたユナイテルの剣筋は冴えていた。リカルドがありったけの銃弾を撃ち込む。
「ほらよ!」
刀を再び構えたリカルドが指揮官の右腕を叩き切る。ユナイテルが左腕を宙へと舞わせた。さらに二筋の深い刀傷を刻むことで指揮官はただの肉塊に化す。
「えっと、終わったみたいですよ」
終了を告げる鐘音を聞いた葛音水月が立ち止まった。
それまで追いかけてきたゴブリンが今度は逃げだそうとする。ランアウトで間合いを詰めた葛音水月の手には試作雷撃刀が握られていた。
彼が倒したのはマリ・シャンクを襲った最後のゴブリンだった。
●
戦闘の間にまだ息があったゴブリンに対してビリィシャが尋問を行っていた。
相変わらずビリィシャの訛りは酷い。その内容を知るには司祭ポールによる解読を待たなくてはならなかった。
ともあれマリ・シャンクの町はゴブリン襲来から護られる。
ハンター一行はそれから五日間の滞在中に身体を癒やす。当分の安全が確かめられたところでリゼリオへの帰路に就いたのだった。
現在のマリ・シャンクには特別警戒の詰め所が存在している。
対ゴブリン用の対策室であり、城壁の衛兵や任務を承った騎士が中心となって回されていた。町の人々への警戒もここを通じて行われる。
「私はこの後、町長との約束がありますので失礼します」
ハンター一行はミシェル教会の司祭ポールに詰め所まで案内してもらう。
「お初にお目に掛かります」
出入り口の扉を開けたユナイテル・キングスコート(ka3458)が真っ先に挨拶。案内された席上で昨今の状況を聞く。
城壁外の偵察は定期的に行われていて手抜かりはないようだ。しかし外部からの襲撃に対しての対抗手段に手薄に感じられる。
「俺は防護柵を用意するつもりだ」
リカルド=イージス=バルデラマ(ka0356)は町の鍛冶屋に頼みたいことがあった。せっかくなので騎士の代表に紹介状を書いてもらう。
「交渉には私も連れて行ってください!」
鍛冶の腕に覚えがあるアルシュナ・ウィンゲーツ(ka5052)も同行を希望した。
「町の方たちに協力を仰ぎたいのです」
「私も手伝ってもらいたいのよね。馬防柵や落とし穴とか」
アデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)とセリス・アルマーズ(ka1079)は町民への呼びかけを行うことにする。
地下通路については完全に塞いで使えなくしたようだ。そのことにセリスは安心した。
「まずは北方への斥候をしたいと考えています。万一に備えて詰め所のどなたかに南側をお願いできますでしょうか?」
ユナイテルはより厳重な警戒の必要性を説いた。偵察だけでなく定点からの観察も必要だと。
「やっぱり一度は歩いて確かめみたいかな?」
葛音 水月(ka1895)は仲間の作業を手伝う前にやりたいことがある。それは城壁の上を一周すること。それが終わってから定点観察だ。
ユナイテルが北東方面、葛音水月が北西方面を担当する。人員が足りないので騎士にも参加を求めた。
(真実とは、時に見え難いものである。其れは巧妙に隠されていたり、或いは目の前の其れに我々は気がつかない)
セドリック・L・ファルツ(ka4167)は誰に気取られることもなく静かにやり取りを聞いていた。
(時には不条理で、理解し難いものかもしれない。然し我々は其の真実を疑ってはならない、真実とは常に多面的なものなのだから)
北方の山岳部に棲むゴブリンの諍いがマリ・シャンクにも波及して暴虐の宴が開かれようとしている。それ自体は事実だろうが、セドリックは渋い表情を浮かべていた。例えるならばパズルのピースが足りないのではないかと。
「……ゴブリンといえど、大挙して襲われればどれほどの被害が出るか分かりません。被害を可能な限り抑える為にわたしも尽力させて頂きます」
Hollow(ka4450)は詰め所の一同が作った警備計画書に目を通す。警戒は二十四時間体制で行われて、町民への連絡方法も熟考されている。
ハンター一行は間借りした詰め所の一室を拠点と定めるのだった。
●
ここは鍛冶屋。
「こんにちは、私はハンターのアルシュナっていいます。街を守るために力を貸して頂けませんか?」
「俺はリカルドだ。町を囲む城壁の周囲に罠を仕掛けたいんだ。鏃や欠けた刃などの鉄くずをもらえないだろうか?」
アルシュナとリカルドは休憩中の鍛冶職人達に事情を説明する。町を護るためならばと鍛冶職人達が乗り気になった。
「それなら鉄くずだけじゃなくて、他にもいいもんあるぜ。こいつはどうだ! ついでに運んでやるぜ!」
案内された倉庫には鉄製の大鍋が山のように保管されている。二人は礼をいいつつ、鉄くずと一緒に城壁の登り口付近まで運んで欲しいと頼んでおいた。
アデリシアは司祭ポールから許可をもらい、ミシェル教会に集まっていた人々に語りかけた。
「大切な町を護る戦いです。勇気を持って挑めばきっと戦神の加護があることでしょう。勿論、危険なことに変わりはないので無理に、とは申し上げません」
包み隠さずにすべてを話した。生き抜くのには時として覚悟が必要である。昨今のゴブリンとの遭遇事例を交えて説得を試みた。
セリスはミシェル教会の外側を点検する。町の大工達に教会建物の補修をお願いしていた。ちなみに以前ビリィシャと仲間が大暴れした礼拝堂はすでに補修済みである。
「あそこ傷んでいますね」
鐘楼を眺めていたとき、煉瓦の一部が崩れているのを発見した。今のところは大したことなさそうだが、破壊を目論む者にとっては格好の弱点になるかも知れない。
そういった個所を見つけて補修要望一覧を作成する。鐘楼の煉瓦は根元なので最優先のマークをつけておく。
大工に修理を任せた後は城壁周辺の罠作りに参加したセリスである。
「‥‥敵の総数が分からない以上敵を少しでも分断し、足止めするようにしなくては数で押し切られてはこちらの負けですからね」
Hollowは町の人々に協力してもらって障害物の設置に取りかかった。城壁付近の罠は準備が整わないので、まずはできる限りのことを行う。
「ゴブリンの襲撃が確かめられたのなら、こちらの荷馬車を道路を塞ぐように移動させてもらえますのてしょうか?」
具体的には城門からミシェル教会に至る道路への対策である。ゴブリンが攻め込んできたときの時間稼ぎだ。ハンター一行は教会へ駆けつける際に問題ないよう裏道を覚えておく。
「大丈夫かい?」
「任せてくださいですー」
覚醒した葛音水月は黒猫のように耳と尻尾が生やした。衛兵の心配をよそにたくさんの鉄鍋をまとめて担ぐ。城壁登り口の階段を往復してすべてを上に運び込んだ。
ランアウトも駆使して城壁上を移動。覚醒が切れるまでに大量の鉄鍋を城壁の必要個所まで届け終えた。
「では出発しましょうー」
その後は愛馬に跨がり、定点観察のために北西の地へ。騎士二名と野宿の準備を整えて張り込むのだった。
「ビリィシャ、もし君がもう一度、今のこの町に攻めこむとするならばどういう風に攻めるのか教えてもらえないかい?」
「うっ……ん」
セドリックはミシェル教会が預かるゴブリンのビリィシャに意見を求めた。
一般にゴブリンは集団行動が苦手だといわれている。ビリィシャが話したゴブリンの攻め方はその範疇に収まっている。一言でいえば猪突猛進。非常に単純な一斉攻撃だ。
御しやすいと考えがちだが攻められる立場の重圧は凄まじい。蛮勇は時として最強の兵法になり得る。そうさせないための策が必要だとセドリックは考えた。
愛馬に跨がったユナイテルは町から北東の方角を目指す。
「ここがちょうどよさそうですね」
小高い丘の上から周囲を見渡した。南西の方角にはマリ・シャンクが小さく見える。騎士二名と一緒に野宿による見張りを始めた。
町を中心にして北西側と南側にも定点観察の人員が配置されている。ゴブリンが町を襲うのならこれで引っかからないはずがなかった。
「これくらいヘッチャラです♪」
老人が支える杭をアルシュナが大槌で叩いていく。
こうして杭や木板によって防護柵が作られた。落とし穴作りも順調に進む。油や薪の手配と運び込みも順調だ。
やがて予感は現実を象って迫り来る。ハンターが到着して四日目の深夜、マリ・シャンクを目指す多勢の影が忍び寄ろうとしていた。
●
星明かりの深夜、ユナイテルは刈り入れが終わった麦畑を愛馬で駆ける。暗闇の中を進むゴブリン大集団の報を伝えるためだ。
全貌の把握はできなかったが百に近い軍勢だろう。騎士一名は状況を伝えるために北西の見張りの元へ。もう一名は後退しながら今も大集団を見張っている。
「敵襲ー! 防衛態勢を!」
城門側の篝火の横でユナイテルが声を張り上げた。
各所への連絡のために伝令が走る。鐘やラッパなどの警報だと迫る大集団に気づかれるかも知れないので使用されなかった。
それから三十分後、大集団がマリ・シャンクの城壁まで辿り着く。
「ごふっ……?」
指揮官らしきゴブリンナイトが首を傾げる。途中から街道を通ってきたのにもかかわらず、目の前が行き止まりの城壁だからだ。視界の中に城門はなかった。
偽の街道案はセドリックがだしたもの。街道の途中を誤魔化して偽の道に誘導している。単に麦畑の一部を耕しただけの簡易な道なのだが、暗がりのせいで大集団は気づかなかったようだ。
「さあみなさん!」
城壁上で一斉に木盾が並ぶ。アルシュナのかけ声に合わせて滑り台式の延長台が迫りだす。まもなく鉄鍋が城壁外へと放りだされた。
鉄鍋の中身は熱々の油だ。被ったゴブリン共の悲鳴がそこら中から沸き上がる。
「町のみなさん、次の攻撃をお願いします」
続いてアデリシアの指示で投石が行われた。より遠くへと投げられるように革製のバンドに引っかけて拳大の石が飛ばされる。
石の雨も加わってゴブリンの大集団が右往左往しだす。
周辺に仕掛けられた落とし穴に次々とゴブリンが落ちていく。穴の底では鋭利な鉄くずが待ち構えていた。
指揮官の号令によって大集団が一旦後退していく。
城門を探すためにリトルラプターに騎乗したゴブリンナイトが斥候にでる。城壁に沿って駆けていると足をとられて転倒。杭と縄による仕掛けが施されていた。
町を取り囲む麦畑を走っても無理。結ばれた麦の輪に足を引っかけてリトルラプターがひっくり返った。
「騎馬隊は脚を潰せばなんとかなるからな。遠慮はしねえ」
魔導バイク「ゲイル」に跨がったリカルドが林から飛びだす。勢いをつけてのすれ違いざま、ゴブリンナイトの首を試作振動刀の刃で刎ねる。
「レーサータイプのバイクじゃ、こりゃあ難しいな、ああハンドルとられるなあ」
状況によってはバイクを停めて魔導拳銃で仕留めるときもある。そうやって少しずつ敵を減らしていく。
罠が功を奏する。ゴブリンの大集団が北門を発見したのはそれから約三十分後のことだった。その間に町側も新たに煮えた油や湯の用意を終える。
さすがに大集団も学習したようで無闇に攻め込むようなことはしなくなった。まずは城壁上に向けて矢を放つ。
町側も鉄鍋を落とすが先程までのようにはいかなくなる。これからはより遠くへと飛ばせる火炎瓶に変更した。地面に零れた煮え油に引火して眼下が炎で照らされる。
「北でなにが起こってるのかしら?」
セリスが短弓「テムジン」で北門前のゴブリンを狙い射つ。
丸太を抱えて北門へと突撃するホフゴブリンの額に命中。そうやって城門壊しを阻止していく。それでも諦めずに大集団側は特攻を仕掛けてきた。
「罠で大分減らせたようですが……」
Hollowもカービン「プフェールトKT9」でホフゴブリンを狙い撃つ。その腕力は城門を抜けるのに役立ってしまう。攻性強化で火力を底上げして優先的に頭を潰していった。
「当たったー。次はあのゴブリンにしようー。ほらほらふぁいおー」
監視から戻っていた葛音水月は城門から八握剣を飛ばす。さくっとホフゴブリンの脳天に突き刺さった。
そうやってハンター達は城門破りのゴブリンを減らしていく。
「そろそろいいのではないでしょうか?」
城壁上から魔導銃で攻撃していたユナイテルが合図をだす。その場にいた誰もが頃合いだと感じていた。
城門内側の衛兵によってわざと閂が外される。そうとも知らずに城門をこじ開けられたと思い込んだゴブリンの大集団がなだれ込んだ。
それは町側が仕掛けた罠の最終段階。落とし穴は城壁の外側だけではなかった。内側に掘られた落とし穴に次々と落ちていく。
「引っかかったー。よしっと」
地面まで下りた葛音水月が八握剣を広角投射でぐるりと飛ばす。すんでの所で留まっていたゴブリンが足を滑らせて落とし穴へ。
「あはは、やっぱりこっちのほうが楽しーです♪」
ゴブリンに気づかれてもドッジダッシュで離脱。繰り返して敵数を減らしていった。
戦局は北城門の内側に移る。
「これでいい!」
城門の外に残ったリカルドはゴブリンの背後を狙う。魔導拳銃による威嚇で足止めをして試作振動刀の衝撃波で吹き飛ばした。指揮官クラスの鉄棍棒を受け止めながら白髪の覚醒リカルドがにやりと笑う。
「さあ来るがいい。身命と信仰にかけてやらせん!」
民家に踏み込もうとしていたゴブリンの背中にアデリシアがシャドウブリットの影をぶち当てる。怪我した味方には惜しみないヒールで癒やす。
「この生命にかえても……やあああぁぁぁ――!」
魔導バイクに乗ったアルシュナの刀撃がゴブリンの片腕を吹き飛ばした。そのままミシェル教会に着いて護りを固める。
セリスはセイクリッドフラッシュの輝きを落とし穴に浴びせかけた。途中までよじ登っていたゴブリン共が再び穴底へと落ちていく。
「これで這い上れないはずですね」
もしもを考えたセリスはミシェル教会へと向かう。
荷馬車で塞がれた道の位置が城壁上でカービンを構えるHollowの最大射程距離である。
「そこから先には行かせません」
Hollowが銃爪を絞った。放たれた銃弾が教会へ近づこうとするゴブリンを石畳へと転がす。
セドリックは城門が開いたのを見届けたあとで一足先にミシェル教会まで退いていた。
「あなたは外にでないでここにいてくださいね」
「わぁ……がった」
ビリィシャと一緒に窓から外を監視する。
教会に待避中の女子供を護らなければならない。とはいえそういった意味での活躍の場はなさそうだ。偽の街道と北城門内側への落とし穴を提案した時点でセドリックの仕事は終わっていたのかも知れなかった。
最終局面は北城門の外側で行われていた。
「そいつですね!」
リカルドの刃をゴブリンナイトの指揮官がはね除ける。そこへユナイテルが加勢した。
青い瞳を真っ赤に輝かせたユナイテルの剣筋は冴えていた。リカルドがありったけの銃弾を撃ち込む。
「ほらよ!」
刀を再び構えたリカルドが指揮官の右腕を叩き切る。ユナイテルが左腕を宙へと舞わせた。さらに二筋の深い刀傷を刻むことで指揮官はただの肉塊に化す。
「えっと、終わったみたいですよ」
終了を告げる鐘音を聞いた葛音水月が立ち止まった。
それまで追いかけてきたゴブリンが今度は逃げだそうとする。ランアウトで間合いを詰めた葛音水月の手には試作雷撃刀が握られていた。
彼が倒したのはマリ・シャンクを襲った最後のゴブリンだった。
●
戦闘の間にまだ息があったゴブリンに対してビリィシャが尋問を行っていた。
相変わらずビリィシャの訛りは酷い。その内容を知るには司祭ポールによる解読を待たなくてはならなかった。
ともあれマリ・シャンクの町はゴブリン襲来から護られる。
ハンター一行はそれから五日間の滞在中に身体を癒やす。当分の安全が確かめられたところでリゼリオへの帰路に就いたのだった。
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
---|
面白かった! | 4人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
- 歪虚滅ぶべし
セリス・アルマーズ(ka1079)
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
質問卓 リカルド=フェアバーン(ka0356) 人間(リアルブルー)|32才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/07/14 19:09:02 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/07/13 22:10:56 |
|
![]() |
相談しましょー セリス・アルマーズ(ka1079) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/07/15 20:03:23 |