• 東征

【東征】少年、鬼にささやく茨の道

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/07/20 22:00
完成日
2015/07/26 18:59

みんなの思い出

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オープニング

●契約
 彼の決断に異議を唱えるのは簡単だった。
 ただ、異議を唱えても何も解決しない。
 鬼は、妖怪たちに飲み込まれ消滅するだけだ。
 妖怪にとっては鬼がどうなろうと問題ない事柄。手駒が増えるかエサが増えるか。
 鬼にとっては存亡の危機を乗り越えられるかという賭けだった。
 だから、彼は仲間を守るために妖怪と契約をした。
 一緒に歩むことは叶わなくなる……鬼の国を求めるとしても……。

●少年
 夜のとばりが下り、暗い結界の外。鬼たちが野営する側を、フードを目深にかぶった小柄な人影が用心深く進んでいる。
(アカシラって鬼と話をして、監視の場所を確認して……大江紅葉に教えて……でも結界入れないよね。んー、死んでる鬼って……。わわっ、憤怒のヒトには見つからないようにする……エクエス頑張れ! 僕は黒子、僕は黒子……レチタティーヴォ様のためだから頑張ろう……)
 心の中でしゃべりながら、嫉妬の歪虚のプエル(kz0127)は目指す人物の元まで進んだ。

●使者
 深紅が似合う鬼アカシラは監視の目から外れず、そして微妙に逃れる位置にいた。かといって逃げることはできない。
 木にもたれかかり、一人、寝るでもなく考える。
 過去の事、未来の事。
 人間側は西方の者が加わって動きが変わった。
 妖怪の方にも変なモノが見え隠れするようになった。これまでの妖怪と明らかに違う種類がいるのだ。
 変わる状況。
 変わらないのは鬼の未来。妖怪の下にいても未来は消えていくしかなく、明るさは一つもない。
「人間、か」
 若い鬼たちが人間から略奪、まあ窃盗であるが……をやっているのは知っている。その彼らが人間について話をしていた。
 大声で言わないが、人間のとの共存を意識している者もいるだろう。
 一方で、石を投げられたとも聞く。共存を鬼が望んだところで、果たせるとは限らないことを物語っている。
 なぜ、人間の事を彼らが語りだしたか。
 西方の人間に出会い、話をしたからというのが理由だったようだ。それも、しくじって捕まって。
 西方の人間は鬼に対して先入観がなく受け入れてくれたのだろうか? ただし、巫子の姿を見たという話もあるので、判断しきれない。
(アクロなら……どう考えただろうね)
 眠ろう、と膝を抱えたとき、風が動いた。
「こんばんは」
 アカシラはびくりと身をこわばらせ、武器の柄を掴んだ。
 目の前には人間と見間違う姿の妖怪がいる。人間よりも少年の人形めいたそれは、手に鬼の髑髏を持ち、手袋で覆われた手で愛おしそうになでる。
(なんだい……これは? あの目玉の新手の嫌がらせかい?)
 監視している妖怪が鬼の死体をはべらしたり、歪虚を連れて来たりと鬼の気を逆なでることをしている。
 その一端としても、人形の雰囲気は違う。人間に近い容姿や西方の服を着ているという奇妙さがある。
「妖怪が……」
 口を開きかけたアカシラの唇に、近づいた人形は人差し指を当てる。
「余は歪虚だけど妖怪ではない」
 ささやく声が困惑を奏でる。
「何の用だい、小僧」
 小僧と言われて人形はピクリと一瞬怒りを示したが、取り繕う。
「あなたの夢を……彼の想いをかなえてあげよう」
「はァ?」
「あれ?」
 人形はセリフを忘れた子供のように首を傾げている。妖怪でなければ可愛らしいと頬を緩めることもできただろう。
「疲れているんだ、寝る」
 人形はあわてて言葉を紡ぐ。
「明日、シシャを立てればいい」
「は?」
「戦死者にまぎれて使者を置いて来ればいい」
「……なんでそんなことを……」
 何の罠だろうか。
 感情を感じさせない紫の双眸はアカシラを見つめる。
「目玉のヒトを気にしているの? あのヒトのことは気にしなくてはいけないよ? 巻き添えを食らいたくないでしょ?」
「……目的は?」
「知らない」
 人形が笑みを深くすると、無邪気さと艶然さが増す。
「目的は?」
「余は知らない!」
 人形に怒りが浮かぶが脅威には見えない。
 アカシラに様々な葛藤が生じる。人形が言うことが本当ならば、妖怪から離反する時期が来たと言える。嘘であれば、全ての鬼が殺される。そして、あの亡者のように使われるかもしれない。
「お前は、子どもに全部を説明するの?」
 妖怪が見たままの年齢ではないが、見た目を考えれば言いたいことは伝わる。
 説明しないわけではないが、隠す部分がないわけではない。
「目玉のヒトの事はどうにかするから」
 人形は髑髏をアカシラの手に載せる。
「……些細な選びが大きな結果をもたらす……だっけ?」
 人形は首をかしげると立ち去った。
(――アクロ)
 アカシラの瞼の裏に浮かんだのは、黄金の実りを迎えた田と笑う人の姿だった。

●シシャ
 天ノ都に鬼は攻め入った、妖怪の一軍団として。
 シシャになるからといって手加減はできない。妖怪に怪しまれる行動はしてはならない。
 アカシラにシシャを頼まれたとき、正気かと疑った。
 もちろん、シシャを引き受けず、彼女を糾弾することもできたかもしれない。
 疲弊を考えれば、いつ動くかということが来る。
 鬼の未来を考えれば、どこかで賭けに出ないとならないのだ。
 天ノ都に攻めるときこそ、変化が見え始めた今こそ……機会が来たととらえることができる。
 だから、シシャも人間を斬り奥に迫る。そして、隠れるところを探す。
 シシャは殺されたふりをして、死体の下にはまり込んだ。
 戦いに慣れているとはいえ、じっとして戦場のにおいを嗅ぐのは辛かった。
 もし、死人かどうか刃で試されれば、本当に死ぬこともありうる。
 また、監視の妖怪が彼を追っていれば、自分と関係のある人物が殺されるかもしれない。
 誰もが人質、誰もが手駒。
 死体のふりをしつつ彼はただひたすら今後の事だけを考える。
 まずはどうすべき、何を告げるのか。ぐるり、ぐるりと脳裏を駆ける思考。

 静寂が訪れる。

 戦場を片づけ始めた音がした。
 シシャの体は動かさなかったために固まっている。
 出て行っても、殺されることもありうる。
 不安も緊張も全て賭け金だ。
 少しずつをほぐし、ゆっくり起き上がる。
「ぎゃああああああああ」
 兵士の悲鳴が上がる。死んでいると思っ鬼が動いたから。
「ま、待ってくれ」
 シシャの声はかすれる。
「武装は解く、話を……。監視があるため、こうでもしないと来られない! 人間を殺したことは否定しない。申し訳ない! だが、私を殺すとしても、話だけはさせてくれ」
 シシャは武器を捨て、声を張った。
 監視者が彼をまだ追っていたら、大切な誰かが死んでいるかもしれない。
 不安がよぎるが、目の前の事だけに集中しないとならない。
「すまない……申し訳ない」
 シシャは跪いて頭を下げた。
「もう、このままでは、私達は消えるしかないんだ。憎まれてもいい、私は殺されてもいい。無関係な者は助けてくれっ!」
 シシャの慟哭のような吐き出す声が響く。

 天ノ都に騒動が再び起こる。

リプレイ本文

●捕虜
 兵士が悲鳴を上げたころ、同じ場所で悲鳴を上げるケンジ・ヴィルター(ka4938)。硬直し、鬼のシシャが告げるのを見ていた。
「ぎゃっふぁあああああ!? ……え、あ、生きてるんか?」
 死体が動いているわけではなければ恐ろしくはなく、状況が分かるまでは武器に手をかけうかがう。状況が分かったのでケンジは走って近づいた。
 オウカ・レンヴォルト(ka0301)は抜刀していた振動刀をしまい、毛布をシシャに差出す。
「その体を拭くがいい」
 シシャはその真意を測りかね、受け取るがじっとオウカを見つめる。
「待て……善意は良いが……」
 ティーア・ズィルバーン(ka0122)はメモに「監視は会話も聞くのか?」と書きつつ小声で問う。
「見るだけ」
 シシャは口を隠すように動かす。
「それでも、用心しないといけないよな」
 キヅカ・リク(ka0038)は周囲を見渡す。監視がどんな姿をしているか分からないため、油断できない。
「捕虜として……取り押さえさせてもらいますよ?」
 雪ノ下正太郎(ka0539)はシシャの心構えを問うように声をかけて、地面に引き倒す。
(おやおや、妙な場面に出くわしたみたいだねぇ。一族が滅ぶ……気になるわ)
 イリア=シルフィード(ka4134)は騒ぎが起こり始めた場所を見つめる。
 イリアは近づき、シシャが怪我をしているなら『ヒール』を掛けようとしたが、止める者があった。
「待って。この人が信用に値するかって分からないんだ」
 レベッカ・アマデーオ(ka1963)はこのシシャが謀略を持ってきている可能性も含めて考える。
「癒すなら、命に別状のない程度で。アンタも覚悟の上来ているんだろう? でも、経緯からして手放しで信用はできない」
 レベッカの真っ直ぐな視線を受けて、シシャはうなずいた。
「監視の目を逃れるなら場所を変えたほうが良くないか?」
 近くに来たケンジが告げる。
 レイオス・アクアウォーカー(ka1990)は出かける前と景色を一変させた都を歩いていた。そこにこの鬼のシシャのやり取りが見え、駆けつける。聞きたいこともあるし、監視に心当たりもあった。
「天ノ都が襲われているとき、ここを見ていたような目玉野郎を倒した。監視と関係あるか? 鬼の亡者とオガツとかいうのを連れていたが、知ってるか?」
 レイオスの言葉にシシャは目を見開いた。
「目玉……亡者……そいつは監視でここの戦いを、我々を見張っていたはず。奴が滅んだ?」
 シシャは安堵し、態度に余裕が生じる。
「オガツと言う名は心当たりがないが、奴を最後に見たときに鬼の歪虚も連れていた」
 丁寧に応じられ、レイオスは小さく礼を述べる。
「捕虜でもなんでもいい、今回こそ、話をさせてほしい」
 シシャは声を張り上げる。遠巻きにいたエトファリカの兵士たちは、上司に報告に向かう。
 殺した方がいいのではないかという声も漏れ聞こえる。
「責任は俺が持つ。問題があったなら、俺の首を飛ばせ。だが、俺の目の黒いうちは彼に手を出させん」
 オウカは兵士たちを一喝した。
「俺も異世界から来た口だから、この件は気になって仕方がないことがある」
 ティーアは諭すように告げる。
「きちんと取り押さえてますから」
 正太郎は兵士を安心させるように、シシャを抑えているふりをしている。もちろん、彼が抵抗し始めたら抑える自信もあるからできる事。
「あたしたちがきちんと見ているから、報告でも行けば? まさか、血みどろのまま上司の尋問をさせるの?」
「本人の血か、他人の血かは拭いてみない事には分からないからねぇ」
 レベッカとイリアもエトファリカの兵士に正論を告げる。
「場所は借りるぞ」
 レイオスは早速シシャを立たせる。
「聞き耳立てたければそれでもいいんじゃないか」
 暗い所はないし、面倒だからとリクは言いながらも色々と考えていた。

●別室
 一室に入って、まずシシャの血をぬぐう。念のため衣類に何もないか調べた。どんな術が掛けられているかも分からない。
 怪我の状態は「大したことない」とイリアは判断する。
「まあ、疑いが晴れたら癒してやろう」
「別にかまわない、この程度では死なないだろうし」
 イリアの言葉にシシャは申し訳ないと言う声がにじむ。
「俺は御神楽謳華という」
 オウカは本名を名乗った。続くように名乗るハンターたち。
「俺はケンジってんだ『剣を司る』って意味な。あんたの名前は?」
 気さくな雰囲気にシシャは落ち着いて見えるが、動揺を口にする。
「ヒラツという……なぜ、そこまで俺を助けようとする?」
 リクやレイオスは食事をヒラツの前に出す。
「毒はないから、安心しろよ。これからを考えたら、体力つけておかなくちゃな」
 レイオスは自分が置いたものの一つを口に含んだ。
「先日、結界を抜けられた鬼に関わったんです。『敵』と聞いていたのに結界を抜けて来るし、感情も変わらないようで……必ずしも邪悪な存在ではない、人類と共に生きられる存在だと知りました」
「え? じゃあ、エルフやドワーフみたいな感じ?」
 正太郎の言葉にレベッカが驚いてヒラツを見る。
「正直言って情報がないですよ。政府側の資料の閲覧許可出ればいいんですが」
「今はその時間はないだろう?」
 リクの言葉に正太郎はかすかにうなずく。人間側からの話はいつでも聞けるが、鬼直接は敵味方別れている現在は難しい。
「かたじけない」
 ヒラツは出されたものを少し口に含むヒラツの頬に、涙が一筋這った。

●悪路王
「結局、私たちエルフと同じような種族なのか?」
 イリアの問いかけにヒラツは曖昧な返事をする。
「近いとは思うが、良くわからない」
「詳しい人はいないの?」
 レベッカが尋ねるが、ヒラツは首をかしげる。
「考える余裕がなかったから。我々にも国もあったと聞くが、俺が知っている限りでは妖怪に支配された土地に集落を作って抵抗しているだけということ」
「里が幾つもあるということか?」
 ケンジは問いかける。
「あるはずだ。妖怪に蹂躙されるタイミングによっては単独で行動していた奴もいるだろう。妖怪が支配した土地では連絡も取れない。俺たちはアクロの集落にいた、と言うだけに過ぎない」
「アクロって悪路王と関係があるのか? 戦ったんだが、憎悪が計り知れなかった。ただ、元来の悪でもない気もした……」
 ティーアにヒラツはうなずく。
「アクロはいい指導者だったんだ……だから、多くの鬼が集まって生活していた。妖怪の攻勢が厳しくなって人間からの援助もなかった。徹底的に戦うことを望んだものもいた。一方で戦えない者も多く抱えていた……」
 ヒラツは水を飲み干す。
「鬼をかばってアクロが……妖怪と契約した。妖怪の下に付くことで里は残り、俺たちは戦力となった」
「……妖怪はお前たちを守っているわけではないだろう?」
 オウカは声を絞り出した。
「その場で滅びる覚悟なら契約を結ばないこともできた。だが、妖怪の下でもがき、いずれ自分たちの国を持つために。悪路は俺たちを守ろうとしている」
「その悪路王とは袂を分かつつもりかよ」
 ケンジは苦しげに言ってヒラツを見つめた。一瞬、彼は震え、目を閉じた。
「生き延びる為……鬼が鬼として生きる為に望んでいること」
 そこに歪虚となったアクロはいなかった。
「人間が……見捨てたのですか?」
「妖怪によって使者がつぶされたのか、人間に余裕がなかったのか分からない」
 正太郎への返答は理知的・現実的だった、当時の使者がどうなったのかを知らないから。

●里
 沈黙が二瞬くらい支配した。
「監視者はどういったものか?」
 オウカが問いかける。
「我々が裏切らないかを見ている。戦場や里の中など適した奴らが。一匹はあんたがやってくれた」
「おかしい点はあったけどな。誰かに踊らされているみたいで、オレたちが」
 レイオスは眉を寄せた。
「俺たちの間に、変な妖怪が出入りし始めているし、今回、シシャの事を告げた奴が監視を『どうにかする』と言ったそうだ」
 彼自身、半信半疑で行動を取っている。
「新しい監視ということですか?」
「分からない。山本の下モノのが入れ替わっているのか、妖怪たちが共食いを始めたのか、俺たちを食らうために狙っているのか……」
 正太郎の表情が険しくなる。
「でも、山本は死んだよ?」
 リクは歪虚に食われた山本五郎左衛門の話をした。
「鬼を取り巻く環境がこれで一気に変わったということだな」
 話を聞きリクがつぶやくが、彼らの危機が変わっていないのは間違いない。
「でもまだ里が解放されたわけではない。非戦闘員はどのくらいいるのだ?」
 オウカは焦る、時間がないと言うのが見えてきたから。
「……解放……できれば嬉しい。アカシラと行動しているもの以外は戦えないに等しい。もちろん、レベルに差はあるが。一番は子どもたちだ」
 赤子はいないが、幼い子らは経験も何も足りない。
「妖怪の中にいるのだから、監視の目は多い……それに理由をつけて食べようとする」
 裏切れば食う。マテリアルを補うために、己の力を増すために。
「こっそり……確か、会った子もこっそり来たと言ってましたね。逃げたらまずいと怯えていました」
 正太郎は納得する。監視は笊のようだが、タイミングが悪いと自分ではない別の者が消えるかもしれないのだ。
「目的とアンタをここにやったのは誰か教えて。皆、聞きたいことがありすぎで一番大切なこと忘れてる」
 レベッカが苦笑しつつ言う。
「アカシラだ。アクロの右腕だった人物で、今は俺たちをまとめている」
「入れ知恵は?」
 ケンジの言葉にヒラツは首を横に振った。
 変な妖怪が出入りし始めているのだから、入れ知恵は歪虚であろうとは予想は付く。その歪虚の目的、欲する利益が見えない。
「鬼の支配者が変わるだけ? つまり、鬼が種として消える猶予は?」
 リクの問いかけにヒラツは分からないと首を振る。
「猶予はないのよ。妖怪が鬼を殺せば終わり。監視が見ている中、彼が手厚く使者として扱われているのを見たら、戦えない、それもヒラツと親しい鬼から殺されていた」
 イリアは淡々としている。表情は暗く、偶然でも踊らされても監視が殺されたことで話は変わったのだが。
「だから、助けたいんだ」
 オウカの視線を受けて、ヒラツの胸の中に熱いものがこみ上げた。

●目的
「目的は支援を……こちらからは情報と戦力を……といっても山本がいなくなったのでそのあたりの情報は不要か」
「戦力としてはありがたいわけだ。だが離反が敵方にすぐにばれるのはまずい」
 ティーアは眉をひそめる。しかし、それらも含めて捕虜として彼を連れている。
「中途半端に動けないわけよね」
「政府が決める事とはいえ……」
 レベッカの言葉に対し、レイオスはうめいた。
「それはそうと……和平は鬼の総意か?」
 ケンジの問いにヒラツはうなずく。本当か否かは計れないが、疲弊を考えれば多くの者が思うことだろう。
「どのように共存したいんですか?」
「そうだよな、人と交わらないと生きていけない」
 正太郎とレイオスの問いかけにヒラツは首をひねる。
「国を……安定的に暮らせる場所を。敵対せず、穏やかに」
 目の前の事態を脱出することが先であり、希望はその先だ。希望を語るヒラツの目は穏やかに見える。
「人間の中で……傭兵をしたり、中には悪事に染まる奴もいた……」
「それを言ったら、人間だって善人も犯罪者もいるわけだから」
 ティーアが気にする事はないと苦笑する。
「どうやって今後やり取りするんだ?」
 リクは眉をひそめる。
「それは……そちらに任せになってしまうが」
「IDを渡してみる?」
「割符なんかが確実ではないかの? 参戦証なんかを使って」
 リクとイリアが提案する。
「トランシーバー、距離は短いが監視をかいくぐりやすい……」
 レイオスの提案にうなずく。
「合図も有効だろう。例えばこうすると『了解した』という意味とか」
 オウカも提案を出す。
「まずは彼を、政府に殺させないことが先ですね」
「それは確かに。私は決定には異議をさしはさむつもりはないけど、危険を冒して来た彼の『義』は汲んでほしい」
 正太郎にイリアが同意する。
「ここのことをメモして……渡すか」
 直接、スメラギや征夷大将軍に話が届くことが手っ取り早いとケンジはメモを出す。兵士が面倒臭がって殺すことも否定できない。
「もし、使者を立てるならハンター入れろってのも。いや、このまま僕たちが直接掛け合った方が早いかもしれない」
 リクは腕を組んで首をかしげる。
「直接、確かに」
 オウカは立ち上がって今にも走っていきそうだ。
「あんたの気持ちが本当なら、協力しないわけにはいかない」
 レベッカは笑う。
 兵士が呼びに来たため、ヒラツは立ち上がる。拘束すべきか、丁重に扱うか非常に迷うところであった。
「そうだ、俺は何でも屋だ。何かあったら頼ってくれよ。安くするから」
 ティーアはヒラツに笑いかける。
「僕もやれることをやる」
 リクの言葉にヒラツは頭を下げる。
「行き来できるようになるなら、酒飲んでもっと話をしたい」
 レイオスはニカッと笑う。
「……こんなに丁寧に話を聞いてくれて……嬉しかった」
「そうだ、ヒールを忘れるところだったわ」
 イリアがヒラツが負っていた傷を治す。
 ヒラツは最後に深々と頭を下げた。
 ハンターたちはヒラツを見送った後、それぞれが思うところに行動を始めた。
 動いた事態に止まることはできないから。

●報告
「報告します。鬼の使者が現れ……居合わせたハンターたちが直接応対し……妖怪の下を抜け、支援を要求しているようです。使者は武装解除し、部屋に入れてあります」

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参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • アックスブレード「ツヴァイシュトースツァーン」マイスター
    ティーア・ズィルバーン(ka0122
    人間(蒼)|22才|男性|疾影士
  • 和なる剣舞
    オウカ・レンヴォルト(ka0301
    人間(蒼)|26才|男性|機導師
  • 人と鬼の共存を見る者
    雪ノ下正太郎(ka0539
    人間(蒼)|16才|男性|霊闘士
  • 嵐影海光
    レベッカ・アマデーオ(ka1963
    人間(紅)|20才|女性|機導師
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカー(ka1990
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人

  • イリア=シルフィード(ka4134
    エルフ|24才|女性|聖導士
  • 頼れるアニキ
    ケンジ・ヴィルター(ka4938
    人間(蒼)|21才|男性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
オウカ・レンヴォルト(ka0301
人間(リアルブルー)|26才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2015/07/20 20:57:43
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/07/19 14:03:01