ゲスト
(ka0000)
むしなんか だいきらい!!!
マスター:龍河流

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 4日
- 締切
- 2015/07/19 07:30
- 完成日
- 2015/07/28 02:29
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
あびきょーかんのじごくえず。
誰かが、そう叫びました。
でも、ちゃんと聞いていた人はいません。
だって、みんな忙しかったのです。
「きいてねーっ!」
「受付さんのばーかーっっっっ」
うぞうぞ、うぞうぞ
「うわっ、こっちくんな!!」
「ぎゃぁ、後ろからも来たよっ」
ぴょーん、ぴょーん
「あれがいるぅっ!」
「言うな、その名前だけは言ったら駄目だ」
ぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろ
「さーさーれーるーーーーーっ」
「どこに逃げればいいんだよぅ」
ぶーん
ぶーーーーーーーん
「おい、皆、落ち着くんだ」
「これが落ち着いていられるかー!」
「そんなこと言うなんて、人じゃないわよ、こいつっ」
ざざざざざざざざざざざざざーーーーーーーー
「もう、生きて帰れないかも……」
「気が早いって、数が多いだけで単なるでかいゴ」
「殺せっ、先にこいつを殺してしまえ」
今日の依頼は、雑魔退治。
かなり数は多いらしいけれど、一体ずつは依頼してきた村の若者でもなんとか潰せたと聞きました。つまり、相当弱っちい。
しかも、うんと大きなものもいなかったそうなので、根気よく退治していけば終わるはず。難しいことはありません。
そういう楽なお仕事のはずでした。
そのはずだったのです。
だがしかし!
問題は、その雑魔どもが虫の姿をしていたことでした。
虫、蟲、むし、ムシ。なんでもいいです。とにかく、色んな虫がいたのです。
足が多いのも、細長いのも、丸いのも、固いのも、柔らかいのも、飛ぶのも、跳ねるのも、色々、いろいろと。
確かに、一匹ずつは弱くて、駆け出しのハンターさんでもぶちっと潰せることでしょう。
でも、この依頼を受けた人達はどういう訳だか……
「いやーっ、虫キラーい!」
「その名前を聞くのも嫌だよぅ」
ほとんどが虫が大嫌いだったのでした。
「たーすーけーてーーー」
全然お仕事になりゃしません。
誰かが、そう叫びました。
でも、ちゃんと聞いていた人はいません。
だって、みんな忙しかったのです。
「きいてねーっ!」
「受付さんのばーかーっっっっ」
うぞうぞ、うぞうぞ
「うわっ、こっちくんな!!」
「ぎゃぁ、後ろからも来たよっ」
ぴょーん、ぴょーん
「あれがいるぅっ!」
「言うな、その名前だけは言ったら駄目だ」
ぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろ
「さーさーれーるーーーーーっ」
「どこに逃げればいいんだよぅ」
ぶーん
ぶーーーーーーーん
「おい、皆、落ち着くんだ」
「これが落ち着いていられるかー!」
「そんなこと言うなんて、人じゃないわよ、こいつっ」
ざざざざざざざざざざざざざーーーーーーーー
「もう、生きて帰れないかも……」
「気が早いって、数が多いだけで単なるでかいゴ」
「殺せっ、先にこいつを殺してしまえ」
今日の依頼は、雑魔退治。
かなり数は多いらしいけれど、一体ずつは依頼してきた村の若者でもなんとか潰せたと聞きました。つまり、相当弱っちい。
しかも、うんと大きなものもいなかったそうなので、根気よく退治していけば終わるはず。難しいことはありません。
そういう楽なお仕事のはずでした。
そのはずだったのです。
だがしかし!
問題は、その雑魔どもが虫の姿をしていたことでした。
虫、蟲、むし、ムシ。なんでもいいです。とにかく、色んな虫がいたのです。
足が多いのも、細長いのも、丸いのも、固いのも、柔らかいのも、飛ぶのも、跳ねるのも、色々、いろいろと。
確かに、一匹ずつは弱くて、駆け出しのハンターさんでもぶちっと潰せることでしょう。
でも、この依頼を受けた人達はどういう訳だか……
「いやーっ、虫キラーい!」
「その名前を聞くのも嫌だよぅ」
ほとんどが虫が大嫌いだったのでした。
「たーすーけーてーーー」
全然お仕事になりゃしません。
リプレイ本文
今日の依頼は、弱い敵をたくさん倒して、あっさりお金がもらえる素敵なお仕事です。
「リアルな虫ばかりですね……ま、まあね、あれさえいなければ」
じいっと見ちゃうと気色悪い雑魔のオンパレードに、葛音 水月(ka1895)君はかーなーりへっぴり腰でした。
だって、やっぱり楽しくないではありませんか。
いろんな動きをする的がいて、それが弱っちくて、だけどたくさんいるのは、まあ悪くありません。楽しいと思います。
そう。モカ・プルーム(ka3411)ちゃんも言っていたではありませんか。お金が儲かりそうなニオイがするって!
だけど、やっぱり……
「あーーーーーーーー、やっぱりダメーッ!!!!!!!」
「ひ、ひぃっ、ごめんなさい!」
またレイン・レーネリル(ka2887)さんが叫んで、ヨルムガンド・D・アルバ(ka5168)さんが謝っています。
それでも二人とも、ちゃんと雑魔は倒していますとも。
りぼるばーさんどぎゅんっ ぐじゃっ
まほうだぼうぎょしょーへきーー どべしゃっ
もちろん、モカちゃんと葛音君も頑張っていますよ。
はりせんさんべちっ びぴゅっ
しゅりけんさんざっくり どばっぴー
だけど、虫がいっぱいで、全部が大きくて、潰すと体からあれとかこれとかいろんなものがでろりんするのは、見ていて楽しくないのです。
なんたって、スカッとしません。
「うぇぇ、なーんでプチュッと体液出しながら死ぬのよ!?」
挙句に、レインさんがさっきからしょーさいなじっきょーをしてくれます。
そう、詳細な実況。
今も雑魔の虫種類から、それがどう潰れたのか、ばらばらになり具合に、体液の飛び散り方、果てはそれがどういう順番に消えていったかを、事細かに叫んでくれています。
「やーめーてーよー! そこは見ないようにしてるんだからーっ」
とうとうモカちゃんが、叫び返しました。
葛音君は、片方の手で耳を塞いでいます。もちろんレインさんに近い方の耳ですとも。
ヨルムガンドさんは、両手で耳を塞いでしまいました。
……両手?
「うわあぁっ、なにしてるんですかー!」
葛音君、慌ててダークMASAMUNEをぶんぶん。
何かほっぺたに付きましたが、気にしてはいけません。後でお風呂に入ればいいのです。そのくらいは、依頼してきた村の人に頼んでも罰は当たりません。
それより先に、雑魔だからついちゃった『何か』もすぐに消えるはずなんです。
だから。
ヨルムガンドさんの髪の毛にべったり『何か』が付いていたなんて、誰も教えてあげませんでした。
レインさんはもちろん、モカちゃんもそれどころではなかったのです。
かさかさかさかさかさかさかさかさ
うごうごしている虫雑魔の群れから、アレが出て来たのですから。
黒くて、油っぽくて、固そうな細長い流線形っぽいムシ。お台所によく出るあ奴。
虫がたいそう嫌いらしいレインさんは、びーきゃー悲鳴を上げています。
「エルフが森に棲んでるからって、虫が大丈夫とは限らないんだからーっ!」
「ボ、ボクはまあまあ平気かなぁ? あははははははは」
悲鳴の後に、うつろな笑いを響かせているのはモカちゃんです。どちらもエルフの女の子。虫嫌い度には、ちょっとは差があるようですけれど……
ともかくも、モカちゃんは、ハリセンさんでゴキをぺこんとやろうとしました。
無理矢理元気を取り戻したヨルムガンドさんも、イレイザーさんで応援をしようとしています。
色々見なかったことにした葛音君も、手裏剣さんの用意がばっちりです。
レインさんは……頑張ろうとしているみたいです?
そして。
「いっくぞーーって、んぎゃぁっ!!??!!?!」
ぴょーん どがっ ごろごろ
ハリセンさんでのゴキを叩きのめそうとしたモカちゃんが、奥から飛んできた別の蟲にぶつかって、弾き飛ばされました。飛ばされたけど、上手に受け身を取ったので怪我はしていません。
狙っていたゴキには当たらなかったけど、ハリセンさんでその蟲のおなかは叩いてやりましたとも!
でもでも、だけど。
「ごめん、あれは絶対ダメーっ!」
「なんであれがいるんですかー!!!!」
レインさんと葛音君が、二人揃って後ずさり。
やってきたのはカマドウマ。あのおなかがぼってり大きなバッタ目。
それが、ハリセンの威力でかち割られたおなかから、でろ~っと何か色々はみださせてのご登場です。
はっきりきっぱり逃げ腰のお二人に、モカちゃんとヨルムガンドさんは理解しました。
『あ、苦手なんだ、カマドウマ』
これで分からないはずもないのですけれど、要するにとても嫌いなのでしょう。
しかーし、ここで逃げては依頼が果たせません。なんとか頑張らなくてはならないのです。
と、カマドウマ嫌いではない二人の殺っちゃえ気分が、巨大カマドウマに向かったその時!
更に林の奥から、緑に光る丸い蟲、大きさは今までで最大が『こんにちは』したのです。
同時に、ものすごーっい臭いがぷーん。
「ボクの天敵ぃっ」
モカちゃん、突然の逃げの体勢。
ヨルムガンドさんも、鼻が曲がりそうで、苦しくて素早くは動けません。
レインさんは、ものも言わずに走り出しました。後ろに。
葛音君もじりじり下がっていきます。ゲホゲホと咳をしながら。
モカちゃん、もうどこに行ったのか分かりません。
戦線は、崩壊しました。
………………
…………
……
…
「私知ってるんだからね! 歴史上色んな生命体は進化して姿変えてるけど、虫はこの世界に突如登場して、登場した時からあのフォルムなんでしょ!? きっと侵略型えいりあんなんだ! そうに違いない! 母星へ帰れ!」
「侵略型えりいあんって、何?」
「うーん……他の星から攻めてくる一種の歪虚のこと、ですかねぇ」
「あ、飴はいらないか?」
林の外れの低木茂みの陰。
ハンターの皆さんは、一時退却後の作戦会議中でした。
レインさんがだだ漏れさせているリアルブルー生物知識を傾聴しつつ、思わず走って逃げたことはなかったことにしている最中とも言います。
でも、ですよ。
「まさか、緑の悪魔が現れるとはねぇ」
また『あははははは』とからっからに乾いた笑い声を上げたのは、モカちゃんでした。
虫雑魔にも頑張って立ち向かっていたモカちゃんも、天敵の緑の悪魔の登場には落ち着いてはいられなかったのです。他の皆さんにも、緑の悪魔は強敵でした。
その名は、カメムシ。
全長八十センチの、巨大カメムシ。あの独特の臭いも、大きさの分だけ強烈。
飴をなめて元気を出し、服の襟を引き上げたり、持っていた汗拭きをぐるぐる顔に巻いたり、出来る臭い対策は全部してから、作戦会議です。
落ち着いて、いきましょう。
「あ、あのね、デルタレイがまだ五回、残ってるから」
色々叫びすぎて、レインさんは喉の具合が良くないようです。ヨルムガンドさんが、もう一つ飴をくれました。
二人とも手がプルプルしているので、落とさないように気を付けましょう。
そんなヨルムガンドさんは、初めての戦闘依頼でこんな敵。溜息ばかりが零れます。でも、この中では天敵虫に出会っていないのは、もしやこの人だけかもしれません?
「あれさえ潰してくれたら、他のは僕、前衛に回ってもいいんですけど……」
苦手なものには近付きたくない葛音君。カマドウマよりカメムシの方がまだましと、モカちゃんに攻撃対象を決めようよと言い掛けました。
これは、いい作戦です。苦手なものに行くより、他のものを退治した方がはかどるに決まっています。
けれども、モカちゃんの目は、これ以上はないほど据わり切っていたのでした。別人のようです。
「目の前にいるから気色悪いんだよ。潰しちゃえばいいんでしょ。苦手意識ごと、全部ベチッといけばいい!!」
臭いが付かないうちに、退治しなきゃ駄目だ。
そう繰り返すモカちゃんは、さっきまでのモカちゃんとは明らかに違っていました。もうカメムシを見たからって、うっかり逃げたりはしません。
そもそもあれは、他の人が悲鳴を上げたり、逃げようとしたからつられてしまったのです。モカちゃんが最初に逃げようと思ったのではありません。ええ、違いますとも!
と、全員が思っていたのですが、まあそれはそれ。
「そうよね。臭いが付くのは絶対嫌だし、緑の悪魔に集中砲火して、そうしたらあれの退治は任せていい?」
「もちろんだよ!!」
「そうしてもらえるなら、僕も前に出ましょう。問題は、他の虫、特に奴が先に出て来た場合……」
嫌いなカマドウマ退治に、モカちゃんが名乗りを上げたくれたので、レインさんと葛音君も元気が出てきました。でも問題は、カマドウマが先に近くに来てしまった時です。
「なら、俺が他の奴らは撃てばいいな。こうなったら、全滅させないと気が済まん」
この足止めには、ヨルムガンドさんが立候補してくれました。なんだかさっきまでと様子が違いますけれど、大丈夫でしょうか?
ともかく、作戦会議はいい感じにまとまったようです。
さあ、虫はすぐそこまで来ていますから、頑張って退治しちゃいましょう。
戦線、再構築です?
「滅びやがれっ、ウジ虫どもぉ!!!!」
銃撃、ずばばばばばばばっ。
ヨルムガンドさん、天敵がとうとう出現したようです。言葉遣いから変わっちゃいました。戦ってくれてれば、他の人はちっとも構いやしませんけれども。
なんたって、構っている暇なんてありゃしません。
「後衛! 私、後衛だからねっ!!」
やっぱり銃撃、どぎゅーん。
レインさん、誰よりも後ろで主張しています。デルタレイだって、いつでも使えちゃう体勢です。今は魔導拳銃のエア・スティーラーさんがぶいぶいゆってます。
撃て撃て、どんどん撃て。
「た、ただのバッタなんて、敵じゃありませんからねっ」
MASAMUNEさんぶんぶん、ざくざくずばば。
葛音君、ものすごーく攻撃が適当です。ちょっと腰が入っていません。でも大抵の敵は弱いから、当たればいいのです、当たれば。狙っていたのと違ったとしても。
避ける時は、ものすごく素早いですよ。だって、何の虫でも触ったら気色悪いではありませんか。
そ う し て
「きあいとこんじょーーーーーーっ!」
ハリセンさん、びびびびびびしぃっ!!
モカちゃん、顔では目以外のところを布でグルグル巻きにしたとは思えない雄たけびを上げつつ、ハリセンを振り回してカメムシに突っ込んでいきました。殴る蹴る、また殴る。
ビシバシ、どかげしっ、ハリセンさん大炸裂。
やがて、モカちゃんはじめ、四人の活躍で緑の悪魔カメムシ雑魔は見事に退治されました。
まあ、臭い液体があたりに飛び散ったことは、雑魔だから後で消えると思えば大丈夫のはず。四人とも頭からかぶっちゃいましたけど、臭いのはきっと今だけです。
多分、きっとね。
「殲滅してやるぅっ」
これは誰の声だったでしょう。全員の声だったかもしれません。
もはやカマドウマだろうが、ハエやウジ虫やムカデだって、怖いものなどありゃしません。
人はそれを、バーサーカーと言ったりします。戦うこと、敵を倒すことしか考えられなくなる、ちょっと困った状態や、そうなっちゃった人を言う言葉だそうです。
「昆虫、死すべし」
「そう言えば、弱いのをたくさん倒して倒してって、楽しい依頼でしたよね?」
「終わったら、ニオイと一緒に記憶からも洗い流してあげる」
「滅ぶのは、バッタ目だけで許してあげてもいいのよ?」
ハンターさん達の持っていた、あらゆる武器がブイブイゆいました。
スキルなんて、使い切るに決まっています。
雑魔? 皆殺しですよ。だって雑魔じゃありませんか!
やがて。
「うっうっうっ……もう虫は嫌だぁ、家に帰りたいぃ、グスッ」
ただ林に戻った場所で、ヨルムガンドさんが膝を抱えてさめざめと泣いています。
ヨルムガンドさんの周りでは、ぜいぜい苦しそうな呼吸のレインさんと、何かにうなされている葛音君と、時々プルプル痙攣しているモカちゃんの三人が、変な格好で倒れていました。
寝ているのでしょうか。気絶しているのかもしれません。倒れているところだけ見ると、この二つの差はどこにあるのか分かりませんが、どちらかと言えば気絶っぽい?
辺りには、カメムシのくっさい臭いだけがまだ残っていて……
「み、緑の悪魔ぁ」
モカちゃんが、またプルプルしています。
「リアルな虫ばかりですね……ま、まあね、あれさえいなければ」
じいっと見ちゃうと気色悪い雑魔のオンパレードに、葛音 水月(ka1895)君はかーなーりへっぴり腰でした。
だって、やっぱり楽しくないではありませんか。
いろんな動きをする的がいて、それが弱っちくて、だけどたくさんいるのは、まあ悪くありません。楽しいと思います。
そう。モカ・プルーム(ka3411)ちゃんも言っていたではありませんか。お金が儲かりそうなニオイがするって!
だけど、やっぱり……
「あーーーーーーーー、やっぱりダメーッ!!!!!!!」
「ひ、ひぃっ、ごめんなさい!」
またレイン・レーネリル(ka2887)さんが叫んで、ヨルムガンド・D・アルバ(ka5168)さんが謝っています。
それでも二人とも、ちゃんと雑魔は倒していますとも。
りぼるばーさんどぎゅんっ ぐじゃっ
まほうだぼうぎょしょーへきーー どべしゃっ
もちろん、モカちゃんと葛音君も頑張っていますよ。
はりせんさんべちっ びぴゅっ
しゅりけんさんざっくり どばっぴー
だけど、虫がいっぱいで、全部が大きくて、潰すと体からあれとかこれとかいろんなものがでろりんするのは、見ていて楽しくないのです。
なんたって、スカッとしません。
「うぇぇ、なーんでプチュッと体液出しながら死ぬのよ!?」
挙句に、レインさんがさっきからしょーさいなじっきょーをしてくれます。
そう、詳細な実況。
今も雑魔の虫種類から、それがどう潰れたのか、ばらばらになり具合に、体液の飛び散り方、果てはそれがどういう順番に消えていったかを、事細かに叫んでくれています。
「やーめーてーよー! そこは見ないようにしてるんだからーっ」
とうとうモカちゃんが、叫び返しました。
葛音君は、片方の手で耳を塞いでいます。もちろんレインさんに近い方の耳ですとも。
ヨルムガンドさんは、両手で耳を塞いでしまいました。
……両手?
「うわあぁっ、なにしてるんですかー!」
葛音君、慌ててダークMASAMUNEをぶんぶん。
何かほっぺたに付きましたが、気にしてはいけません。後でお風呂に入ればいいのです。そのくらいは、依頼してきた村の人に頼んでも罰は当たりません。
それより先に、雑魔だからついちゃった『何か』もすぐに消えるはずなんです。
だから。
ヨルムガンドさんの髪の毛にべったり『何か』が付いていたなんて、誰も教えてあげませんでした。
レインさんはもちろん、モカちゃんもそれどころではなかったのです。
かさかさかさかさかさかさかさかさ
うごうごしている虫雑魔の群れから、アレが出て来たのですから。
黒くて、油っぽくて、固そうな細長い流線形っぽいムシ。お台所によく出るあ奴。
虫がたいそう嫌いらしいレインさんは、びーきゃー悲鳴を上げています。
「エルフが森に棲んでるからって、虫が大丈夫とは限らないんだからーっ!」
「ボ、ボクはまあまあ平気かなぁ? あははははははは」
悲鳴の後に、うつろな笑いを響かせているのはモカちゃんです。どちらもエルフの女の子。虫嫌い度には、ちょっとは差があるようですけれど……
ともかくも、モカちゃんは、ハリセンさんでゴキをぺこんとやろうとしました。
無理矢理元気を取り戻したヨルムガンドさんも、イレイザーさんで応援をしようとしています。
色々見なかったことにした葛音君も、手裏剣さんの用意がばっちりです。
レインさんは……頑張ろうとしているみたいです?
そして。
「いっくぞーーって、んぎゃぁっ!!??!!?!」
ぴょーん どがっ ごろごろ
ハリセンさんでのゴキを叩きのめそうとしたモカちゃんが、奥から飛んできた別の蟲にぶつかって、弾き飛ばされました。飛ばされたけど、上手に受け身を取ったので怪我はしていません。
狙っていたゴキには当たらなかったけど、ハリセンさんでその蟲のおなかは叩いてやりましたとも!
でもでも、だけど。
「ごめん、あれは絶対ダメーっ!」
「なんであれがいるんですかー!!!!」
レインさんと葛音君が、二人揃って後ずさり。
やってきたのはカマドウマ。あのおなかがぼってり大きなバッタ目。
それが、ハリセンの威力でかち割られたおなかから、でろ~っと何か色々はみださせてのご登場です。
はっきりきっぱり逃げ腰のお二人に、モカちゃんとヨルムガンドさんは理解しました。
『あ、苦手なんだ、カマドウマ』
これで分からないはずもないのですけれど、要するにとても嫌いなのでしょう。
しかーし、ここで逃げては依頼が果たせません。なんとか頑張らなくてはならないのです。
と、カマドウマ嫌いではない二人の殺っちゃえ気分が、巨大カマドウマに向かったその時!
更に林の奥から、緑に光る丸い蟲、大きさは今までで最大が『こんにちは』したのです。
同時に、ものすごーっい臭いがぷーん。
「ボクの天敵ぃっ」
モカちゃん、突然の逃げの体勢。
ヨルムガンドさんも、鼻が曲がりそうで、苦しくて素早くは動けません。
レインさんは、ものも言わずに走り出しました。後ろに。
葛音君もじりじり下がっていきます。ゲホゲホと咳をしながら。
モカちゃん、もうどこに行ったのか分かりません。
戦線は、崩壊しました。
………………
…………
……
…
「私知ってるんだからね! 歴史上色んな生命体は進化して姿変えてるけど、虫はこの世界に突如登場して、登場した時からあのフォルムなんでしょ!? きっと侵略型えいりあんなんだ! そうに違いない! 母星へ帰れ!」
「侵略型えりいあんって、何?」
「うーん……他の星から攻めてくる一種の歪虚のこと、ですかねぇ」
「あ、飴はいらないか?」
林の外れの低木茂みの陰。
ハンターの皆さんは、一時退却後の作戦会議中でした。
レインさんがだだ漏れさせているリアルブルー生物知識を傾聴しつつ、思わず走って逃げたことはなかったことにしている最中とも言います。
でも、ですよ。
「まさか、緑の悪魔が現れるとはねぇ」
また『あははははは』とからっからに乾いた笑い声を上げたのは、モカちゃんでした。
虫雑魔にも頑張って立ち向かっていたモカちゃんも、天敵の緑の悪魔の登場には落ち着いてはいられなかったのです。他の皆さんにも、緑の悪魔は強敵でした。
その名は、カメムシ。
全長八十センチの、巨大カメムシ。あの独特の臭いも、大きさの分だけ強烈。
飴をなめて元気を出し、服の襟を引き上げたり、持っていた汗拭きをぐるぐる顔に巻いたり、出来る臭い対策は全部してから、作戦会議です。
落ち着いて、いきましょう。
「あ、あのね、デルタレイがまだ五回、残ってるから」
色々叫びすぎて、レインさんは喉の具合が良くないようです。ヨルムガンドさんが、もう一つ飴をくれました。
二人とも手がプルプルしているので、落とさないように気を付けましょう。
そんなヨルムガンドさんは、初めての戦闘依頼でこんな敵。溜息ばかりが零れます。でも、この中では天敵虫に出会っていないのは、もしやこの人だけかもしれません?
「あれさえ潰してくれたら、他のは僕、前衛に回ってもいいんですけど……」
苦手なものには近付きたくない葛音君。カマドウマよりカメムシの方がまだましと、モカちゃんに攻撃対象を決めようよと言い掛けました。
これは、いい作戦です。苦手なものに行くより、他のものを退治した方がはかどるに決まっています。
けれども、モカちゃんの目は、これ以上はないほど据わり切っていたのでした。別人のようです。
「目の前にいるから気色悪いんだよ。潰しちゃえばいいんでしょ。苦手意識ごと、全部ベチッといけばいい!!」
臭いが付かないうちに、退治しなきゃ駄目だ。
そう繰り返すモカちゃんは、さっきまでのモカちゃんとは明らかに違っていました。もうカメムシを見たからって、うっかり逃げたりはしません。
そもそもあれは、他の人が悲鳴を上げたり、逃げようとしたからつられてしまったのです。モカちゃんが最初に逃げようと思ったのではありません。ええ、違いますとも!
と、全員が思っていたのですが、まあそれはそれ。
「そうよね。臭いが付くのは絶対嫌だし、緑の悪魔に集中砲火して、そうしたらあれの退治は任せていい?」
「もちろんだよ!!」
「そうしてもらえるなら、僕も前に出ましょう。問題は、他の虫、特に奴が先に出て来た場合……」
嫌いなカマドウマ退治に、モカちゃんが名乗りを上げたくれたので、レインさんと葛音君も元気が出てきました。でも問題は、カマドウマが先に近くに来てしまった時です。
「なら、俺が他の奴らは撃てばいいな。こうなったら、全滅させないと気が済まん」
この足止めには、ヨルムガンドさんが立候補してくれました。なんだかさっきまでと様子が違いますけれど、大丈夫でしょうか?
ともかく、作戦会議はいい感じにまとまったようです。
さあ、虫はすぐそこまで来ていますから、頑張って退治しちゃいましょう。
戦線、再構築です?
「滅びやがれっ、ウジ虫どもぉ!!!!」
銃撃、ずばばばばばばばっ。
ヨルムガンドさん、天敵がとうとう出現したようです。言葉遣いから変わっちゃいました。戦ってくれてれば、他の人はちっとも構いやしませんけれども。
なんたって、構っている暇なんてありゃしません。
「後衛! 私、後衛だからねっ!!」
やっぱり銃撃、どぎゅーん。
レインさん、誰よりも後ろで主張しています。デルタレイだって、いつでも使えちゃう体勢です。今は魔導拳銃のエア・スティーラーさんがぶいぶいゆってます。
撃て撃て、どんどん撃て。
「た、ただのバッタなんて、敵じゃありませんからねっ」
MASAMUNEさんぶんぶん、ざくざくずばば。
葛音君、ものすごーく攻撃が適当です。ちょっと腰が入っていません。でも大抵の敵は弱いから、当たればいいのです、当たれば。狙っていたのと違ったとしても。
避ける時は、ものすごく素早いですよ。だって、何の虫でも触ったら気色悪いではありませんか。
そ う し て
「きあいとこんじょーーーーーーっ!」
ハリセンさん、びびびびびびしぃっ!!
モカちゃん、顔では目以外のところを布でグルグル巻きにしたとは思えない雄たけびを上げつつ、ハリセンを振り回してカメムシに突っ込んでいきました。殴る蹴る、また殴る。
ビシバシ、どかげしっ、ハリセンさん大炸裂。
やがて、モカちゃんはじめ、四人の活躍で緑の悪魔カメムシ雑魔は見事に退治されました。
まあ、臭い液体があたりに飛び散ったことは、雑魔だから後で消えると思えば大丈夫のはず。四人とも頭からかぶっちゃいましたけど、臭いのはきっと今だけです。
多分、きっとね。
「殲滅してやるぅっ」
これは誰の声だったでしょう。全員の声だったかもしれません。
もはやカマドウマだろうが、ハエやウジ虫やムカデだって、怖いものなどありゃしません。
人はそれを、バーサーカーと言ったりします。戦うこと、敵を倒すことしか考えられなくなる、ちょっと困った状態や、そうなっちゃった人を言う言葉だそうです。
「昆虫、死すべし」
「そう言えば、弱いのをたくさん倒して倒してって、楽しい依頼でしたよね?」
「終わったら、ニオイと一緒に記憶からも洗い流してあげる」
「滅ぶのは、バッタ目だけで許してあげてもいいのよ?」
ハンターさん達の持っていた、あらゆる武器がブイブイゆいました。
スキルなんて、使い切るに決まっています。
雑魔? 皆殺しですよ。だって雑魔じゃありませんか!
やがて。
「うっうっうっ……もう虫は嫌だぁ、家に帰りたいぃ、グスッ」
ただ林に戻った場所で、ヨルムガンドさんが膝を抱えてさめざめと泣いています。
ヨルムガンドさんの周りでは、ぜいぜい苦しそうな呼吸のレインさんと、何かにうなされている葛音君と、時々プルプル痙攣しているモカちゃんの三人が、変な格好で倒れていました。
寝ているのでしょうか。気絶しているのかもしれません。倒れているところだけ見ると、この二つの差はどこにあるのか分かりませんが、どちらかと言えば気絶っぽい?
辺りには、カメムシのくっさい臭いだけがまだ残っていて……
「み、緑の悪魔ぁ」
モカちゃんが、またプルプルしています。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 5人 |
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MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/07/18 18:55:12 |
|
![]() |
相談! モカ・プルーム(ka3411) エルフ|11才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/07/18 21:51:04 |