堅忍持久のスティンク

マスター:小宮山

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/07/25 07:30
完成日
2014/08/02 16:36

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「臭ッ!!」
「何か臭くない?」
「どっからこの臭い……あっちの方から臭うよ」

 どこから臭うのかは解らないが、とにかく臭い。
 ひょっとしたら、村のどこかで動物が行き倒れでもしたのかもしれない。
 村中が息をするのも困難になる程の腐臭に覆われ始めた中、災厄は更に降り掛かる。
 ゴブリンの一団が村を襲撃してきたのだ。そう、臭いの元を連れて。

「臭ッ!! アレか! あのトカゲか!!」
「あ、俺、アレ知ってるよ。死んでもクッセーの。前に森で見た事あるよ」

 ゴブリン達は臭いが気にならない様で、村人達がむせ返る中、好き放題に村を荒らして回るのだった。
 一矢報いようと村人達も抵抗を試みたのだが、臭いの元を連れて歩いているせいで手の出し様が無い。

「このままじゃどうにもならんぞ……トカゲもゴブリンもどげんかせんといかん。救援要請をだすのじゃ」

 村長の一言で、数人の若者がハンターへ依頼を出しに村を抜け出した。

「でもさ、これってハンターでも臭くてまともに戦えないんじゃね?」
「まあ、俺達よりは戦えるっしょ。今はとにかく空気が美味い……」

 依頼を伝えに街へ出た若者達は、異変に気付く。周囲の人々が眉をひそめてが寄り付かないのだ。

「ひょっとしてさ、俺達体に臭いが染み付いてんじゃね?」
 若者達が地震の体に鼻をつけて臭いを嗅ぐが、すでに嗅覚が麻痺しているのか特に臭いを感じない。
「マジか……マジか。鼻が慣れちまってわかんねえのな……これ、臭い落ちるんだろうな……?」
「と、取り敢えずゴブリンとトカゲを何とかしてもらったら、ハーブたっぷり入れた温泉に入ろうぜ……」

『依頼:ゴブリンと臭いトカゲを何とかして!臭い消しに温泉もあるよ!』

リプレイ本文

「──くせぇ……兎に角くせぇ……」
 遠目にゴブリンの一団を視界に入れ、安藤・レブナント・御治郎(ka0998)がウンザリした顔で一人ごちる。ハンター達が依頼を受けて辿り着いた村は、村に入る前から臭い始めていた。
「全くだ。何持ってきても消せないなら耐えるか誤魔化すしかないな、こりゃ」
 駄目元で口内を出血させて血の臭いで腐臭を紛らわせようとした物の、腐臭に血の味が加わるだけという結果に陥った為、早々に諦めて嘆くのは高嶺 瀞牙(ka0250)だ。
 ちなみに臭いに慣れようと全力で深呼吸した後、一気に顔色を変えた高嶺を見たメンバーは、心の中で合掌をしたに違いない。

 口のみで息をしようとしても、強烈な腐臭は肺に入れるだけで噎せ返るという事が解ったという結果に終わり、ハーブ入りのマスクを用意した者達も、臭いが混ざるだけだという事を悟り、早々に諦めた様だった。

 辟易とした表情で準備をしつつ、依頼を終了させた後の温泉に思いを馳せる女性陣。
「早くやっつけて村人さんを助けてあげないとね。そう、早くやっつけて……ハーブ入りの温泉に浸かりたいわ!」
 風呂好きの夕影 風音(ka0275)は力説。そしてエルデ・ディアマント(ka0263)含む女性陣は、成る可く呼吸を押さえたいのか、無言でコクコクと同意の意を示すのであった。

 ちなみに道中寝たままだった紅鬼 姫乃(ka2472)は、村に入った時には既に目を覚ましていた。起き抜けに物騒な台詞が飛び出たのは、また別のお話。

「正直な所、勘弁してくれって所だけど、仕事だしね」
 と、全員と風上に移動しながら日高・明(ka0476)がこぼす。そして、足を止めた所が広場から風上になる地点だった。戦闘開始の気合いの様に日高は走り出しながら口に出し──
「──やるしかないよなあ!」
 トカゲに向かい一直線に走る日高達に支援スキルを飛ばし、エルデが言う。
「もう、パパッとやっつけちゃうよ!」

 
「飼い主ゴブリン倒したらトカゲが逃げ帰る、とかないぞよかね?」
「無理じゃないかなぁ……?」
 自身に『動かざるもの』を付与し、前衛を張る仲間の背を守る様に鞭を振るディーナ(ka1748)に日高が答える。
 ディーナの普段の戦闘スタイルは拳で殴る物だが、何とかトカゲと距離を取りたい為に、今回は鞭での戦闘となる。
 戦闘の激しい動きに呼吸も荒くなり、更にそこへ強烈な腐臭が襲いかかる為にどうしても意識がそちらへ持っていかれてしまう。

 そこへ追い打ちの様にトカゲから強烈な口臭を浴びせられ、歯を食いしばって堪え──無理だった。

 「「ごっふぉげっほげほ!!」」

 日高とディーナが噎せ返り、楽しそうに襲いかかるゴブリンの短剣で浅く斬りつけられる。
「ぐぉお!これは確かに……」『辛い!』
 涙目で危うく口にしそうになった言葉を我慢。流石男の子。
 噎せ返り無防備になった日高とディーナへ襲いかかるトカゲとゴブリンへ銃撃が飛ぶ。

「いやー、それにしても、銃って便利だねー?楽だし、踏ん張りきかなくても威力あるし…」
 白い耳と尻尾を揺らしながら、ラン・ヴィンダールヴ(ka0109)が声を上げる。
「まぁ、ちょっと戦ってるって感じが薄いのが問題かなー……っと」
 更に追撃。日高達への攻撃の手が緩まり、トカゲ達に隙が生まれ──

「だから臭せぇんだよ。それ以外どんな感想があるんだよ」
 もうこの依頼始まってから臭いしか言ってない気がする安藤の嫌そうな声と共に、機導砲がトカゲの頭を打ち抜いた。
 のっしのっしと噎せ返る二人に手を貸し起き上がらせる。そして嫌そうな顔。強い人だ。
「ありがと、安藤さん……ってか、こいつらは大丈夫なのか?嗅覚はないの!?」

 噎せ返りが治まった日高とディーナが直ぐさま戦線に復帰、ゴブリンへと向かう。
「鞭で攻撃ぞー!」
 ゴブリンの足を狙ったディーナの攻撃は飛んで躱されたが、そこに同じく飛んで距離を詰めた日高のロングソードが横薙ぎに一閃。
「ギッ──……」
 ゴブリンは断末魔を上げる間もなく上半身と下半身が別れ、ドサリと地面へと転がった。


 一方では、エルデ達が思わぬ苦戦を強いられていた。
 高嶺はゴブリンの投げつけるナイフをロングソードで弾き、振り戻す刃に踏込と強打を乗せて袈裟に切り払う。
「ギャッギャギィッ!」
 声を上げて飛び退いたゴブリンが、高嶺の姿勢が戻る前にナイフをまた投げ放つ。
 背を合わせていた紅鬼がラブリュスの一閃でナイフを弾き、また背中合わせに戻る。
 
「ほんっとにこの臭いの中元気だなお前ら!」
 ゴブリン二体、トカゲ二体を相手取り、ゴブリンをメインに大立ち回りをしてみせる高嶺と紅鬼。
 エルデの放った銃弾がゴブリンの足を打ち抜き、痛みのせいかゴブリンが武器を振り回して紅鬼に擦り傷を負わせた時──
「痛い、痛いのっ……フフフ、貴方も痛くして差し上げるわぁ♪」
 と、ラブリュスをフルスイング。そして吹き飛ばされたゴブリンは息絶えた。
「──次の子はだぁれ?」

 ─────

 舌なめずりをして視線を彷徨わせる紅鬼の姿を見て、一瞬敵味方の動きが止まる。
「──こええよ……」
「ちょっ……こわいよ!」
 高嶺とエルデが思わず口にする。
 紅鬼は聞こえなかったのか、楽しそうにゴブリンに向けてラブリュスのフルスイングを続けている。
 夕影は見なかった事にしたのか、援護に手一杯なのか、はたまた温泉の事で頭がいっぱいなのか。特に反応無く戦闘をこなしている。
 
 高嶺がトカゲを一体受け持つ事になり、残る一匹のトカゲが夕影とエルデの方へとのっしのっし歩いて行く。
「ああ、もう! あちいけっ」
 エルデが魔導銃でトカゲを撃ち、夕影がホーリーライトで追撃をかける……のだが、中々当たらない。2メートルもの大トカゲに徐々に距離を詰められ、じりじりと後退して行く様子は、まるでリアルブルーの恐竜なんちゃらパーク的映画のワンシーンを彷彿させる。 
 そして二人を強烈な腐臭が襲った。

「けほっ……こほっごほっ」

 エルデは涙目で耐え、夕影が餌食となった。
 ガックリと膝をつき、口元を押さえて咳き込む夕影へ、余裕たっぷりにトカゲが歩み寄る。
「こら、その人に近づくんじゃない!」
 夕影に襲いかかろうとするトカゲに魔導銃を撃ち込むエルデ。命中はする物の、動きを止めるには至らなかった。

 その時、夕影の前に立ち塞がる影──ディーナだった。
「た、耐える!!」
 仁王立ちに防御姿勢でトカゲの攻撃をやり過ごし、噎せ返って動きの取れない夕影をカバー。
 さらに銃弾がトカゲへと撃ち込まれる。
「ナイスカバー、ディーナちゃん」
 げんなりした表情で掩護射撃を入れたのはラン。臭いの強烈さに、さしもの戦闘狂のきらいが有るランもテンションがだだ下がりの様で。
 
 どうやらエルデ達はじりじりと後退させられている内に、もう一方の戦闘集団の方へと押しやられてしまっていたのだった。
 助かった事もあり、気が抜けたのか。エルデがふと横に目をやると、高嶺達の方のゴブリンが夕影の方にダッシュ、そして飛びかかろうとしていた。

 ──夕影が動く。
 
「ふんすっ!」
 夕影は飛びかかるゴブリンの頭部をワンハンドキャッチ。勢いを殺さずに軸足に回転を乗せて高嶺の方へと投げ返したのだ。今日一番のファインプレーである。

「ギィッ?!ギャギャーーーーッ!!──ッギ──」
 高嶺の方へと投げられたゴブリンは、スラッガーよろしくフルスイングされたロングソードで叩き伏せられた。

「──温泉の為に……負けられないのよ!」
 物への執着は、時として乙女を修羅にするのだった。


 さて、残ったのはトカゲが二匹とゴブリンが一匹。
 安藤と日高が背中合わせでトカゲと相対し、ゴブリンは哀れ銃弾の雨霰で早々に蜂の巣とされてしまった。
「トカゲ優先だった筈なんだけどな……中々上手くは行かんもんだ」
「全くだな……」
 安藤と日高は愚痴を零しつつもトカゲからは目を離さない。じりじりと距離を詰める二匹と二人。
 日高は踏込と強打で。安藤は機導剣で。お互いの間合いになった時二つの影が動いた。
 そして同時に撒き散らされる強烈な腐臭。
 
「「ぐおっ……がはっ!げっほげほ!!」」

 互いの攻撃は命中した物の屠るまでは至らず、トカゲは二人にのしのしと近付いて行く。その時、エルデの魔導銃の弾丸が一匹を貫き、夕影のホーリーライトとランの放った銃弾がもう一匹を貫いた。

 最後の一撃を受け、ドサリと地面に横たわるトカゲを見届け、「やっと終わったのか」とハンター達はその場で座り込み、大きく息をして──噎せ返った。


「いやぁ! 有り難う御座いました!!」
 倒した残骸をかき集め、村人達に指定された場所へと運ぶハンター達。そこは街の外れにある大きな畑の片隅だった。
「取り敢えず埋めとけば、肥料くらいにはなりますじゃろ……元の肥料の臭いもありますしの。埋めてしまえば多少の臭いも気になりますまいて」
 ふぉっふぉっと体を揺らして笑う村長の話も、ハンター達にはあまり届いていない。
 寧ろ、戦闘が終わった今、トカゲの異臭を最初に村へ入った時程感じなくなっている事に絶望感を感じていたのだ。

「ささ、村の外れに温泉があります。皆さんお疲れでしょうし、臭いも気になりますでしょう。臭い消しにハーブもたんまりと用意しておりますので、ゆっくりして行って下さいませ」
 村長の次に偉いと思われる初老の男性に連れられて、村の外れへ。村から離れる程に森を抜ける清々しい風が心地いい。
 空気には味が無い等と言うが、そんな事は無い。何故なら今吸っている空気はこんなにも美味しいのだから。

 温泉へと到着し、ハンター達は各性別に分けられた温泉へと向かう。
 女性陣一温泉を楽しみにしていたであろう夕影は、ご機嫌な様で鼻歌が止まらない。
「あぁ~もうっ幸せ。生き返るようだわぁ」
 ゆったりと湯船に浸かり、極楽気分で思わず声が出てしまう。
「まったく、とんでもない奴だったね」
 薬草石鹸を死ぬ程泡立てたのであろう、もこもこの泡の固まりからエルデの声がする。臭いが気になるお年頃。だって女の子だもの。
「臭気を消すにはうわがきぞよの〜……臭いが消えないと家に帰れないぞよ……」
 ぶくぶくと半分沈みながらディーナが言う。温泉と言えばおいしいご飯とお酒! という発想だったのだろうが、鼻根に残る臭いが無くならない事には、折角の美味しい物でも台無しである。我慢、我慢。
「ふぅー、いい香りだね。ぽかぽかしてきたよ」
 やっと髪と体を洗い終えたエルデが湯船に浸かり、気持ち良さそうに声を出す。
 
 一方紅鬼はというと……?
 脱衣場で良からぬ事を考えていたのだが、戦闘の疲れか湯船に浸かるとコクリコクリと船を漕いでいた。
「コクコク……ブクブクブク……」
 誰か、誰か気付いてあげて……!!
 
 
 一方男湯。
「ほんと……辛かったね……お風呂程度で消えるの……? この臭い……」
 ランはテンションだだ下がりのまま、辛そうにフラフラと浴場へ。
「まだ、鼻の奥の方で、臭いが残ってる気がするー……それに、服……大丈夫かな、これ……」
 よく気付きましたね、ランさん。大丈夫じゃないです。でも、貴方を含め皆がそれに気付くのは、もう少し後のお話。

「温泉で隣に女湯!! そうしたら男としてやるこた一つだろ!! なぁ!?」
 安藤が戦闘中の嫌そうな顔を一変させ、がっはっはと豪快に笑いながら日高の肩を叩く。
「いや、他の人とどうぞ……僕は疲れたよ……」
 今回一番トカゲの被害にあった日高は、兎に角臭いを落として疲れを癒したい一心の様で、反応が鈍い。
「若いのにだらしねぇなあ! 枯れてんのかぁ? 高嶺、ラン、お前らはどうだ?」
 安藤の問いに二人揃って首を振る。
「私は臭いを消すのに忙しいので。安藤さんお一人でどうぞ」
 高嶺は臭い消しの為に桶に武具をつけ込み、消臭に余念が無い。
 男湯全員の鈍い反応に「なんだよつまんねぇなぁ……」と安藤が一人女湯との垣根へと寄り……丁度良い節穴を見つけて目を当てるとそこには男のロマ────

 白く輝く光の球(夕影の放ったホーリーライト)が程よい勢いで飛んでくるのが見え、安藤の意識はそこで暗転した。


 温泉から上がり、すっかり臭いも落ちてリフレッシュしたハンター達は脱衣所へと向かい、そして現実を知り、各々が悲鳴を上げる。

「臭ッ!!」
「マジか?! そうか、服か!!」
「ええー?! ちょっと、やめてよね!!」

 ただ一人、武具一式を温泉で黙々と洗っていた高嶺が「やっぱりな」という顔で皆を眺める。但し、乾かす時間が無い為、高嶺はずぶ濡れだ。

「……こういう罠だったのか……」

 げんなりした顔で、声で、ハンター達全員の心に同じ言葉が浮かび、結局高嶺に習い全員温泉で衣服の臭い消しへと舞い戻る事になった。
 
 
 皆がうんざりした顔で衣服を洗濯する中、夕影だけが生き生きした顔で湯船に浸かっている。かれこれ三時間、ずっと浸かりっ放しなのだが、上気せたりはしないのだろうか。

「──私、きっとこの時の為に生きてきたんだわ」
 幸せそうな顔で夕影が一人ごちる。夕影さん、そろそろ服を洗わないと、皆と一緒に帰れませんよ?

依頼結果

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MVP一覧

  • 大口叩きの鍛冶職人
    エルデ・ディアマントka0263
  • 挺身者
    日高・明ka0476

重体一覧

参加者一覧

  • 皇帝を口説いた男
    ラン・ヴィンダールヴ(ka0109
    人間(紅)|20才|男性|霊闘士

  • 高嶺 瀞牙(ka0250
    人間(蒼)|21才|男性|闘狩人
  • 大口叩きの鍛冶職人
    エルデ・ディアマント(ka0263
    ドワーフ|11才|女性|機導師
  • 心強き癒し手
    夕影 風音(ka0275
    人間(蒼)|20才|女性|聖導士
  • 挺身者
    日高・明(ka0476
    人間(蒼)|17才|男性|闘狩人

  • 安藤・レブナント・御治郎(ka0998
    人間(蒼)|28才|男性|機導師
  • ムカデに好かれた娘
    ディーナ(ka1748
    人間(紅)|20才|女性|霊闘士

  • 紅鬼 姫乃(ka2472
    人間(紅)|17才|女性|霊闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談スレッド
エルデ・ディアマント(ka0263
ドワーフ|11才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2014/07/25 06:23:54
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/07/23 21:40:40