バケイションズビーチ

マスター:DoLLer

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
寸志
相談期間
5日
締切
2014/07/21 15:00
完成日
2014/07/29 16:02

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「はーぁ、あつ……」
 町で仕事をしていた少女は、うだるような暑さに何度目か覚えていないぼやきを口にした。
 料理人にとっては夏というのはまさに地獄の季節である。火を使う厨房の温度はちょっとしたサウナのようで、そこに一日張り付いていなければならない料理人は一日で数キロ体重が落ちることもある。食糧庫は快適であるが、夏は食材の傷みが早い。その結果、食糧庫は普段入れなくても良いはずの食材まで収まることになり、人間が涼む余裕などない。
 涼みたい。
 陽が沈む前の噴水広場でぼんやりと座り込むものの風ひとつ吹かず、暑さが抜けるという感じにはなれなかった。それに往来が激しく喧騒の鳴りやまないこの広場で涼を求める方が無理があるのかもしれない。
「今度の休み、どこか行こうっと。頑張った自分にご褒美あげないとね、偉かったぞ、ワタシ!」
 泉か森か山か……色々頭の中に頭の中を駆け巡るが、やはりこれだけ暑ければたどり着くのは一つである。
「いよぉっし! 海に決定!!」
 彼氏いないけどっ!
 友達と休み合わなかったけれど!!
 わたしは灼熱地獄から解放されて、クールなバカンスを楽しむんだぁぁぁぁ!!!
 あっという間に旅支度を終えた少女は気炎万丈で旅立っていった。

 ここであなたは夏の海で思い浮かべるのはなんだろうか。
 思う存分に水と戯れる姿?
 目隠しして果物を割る姿?
 ボール遊び?
 海辺で水着を着たカップルが走る姿?

 少女はそれらすべてを視界に収めていた。
 海に入って派手にギャアギャアと歓声をあげ水しぶきを上げる、ゴブリン。
 積み荷から奪ってきたのであろう果物を棒で破壊しかぶりつく、ゴブリン。
 多分、荷馬車の幌だったものを丸めてボール代わりにして遊ぶ、ゴブリン。
 極めつけは人間の着ていたものを追いはぎしたのであろう、水着に見立てているのかもしれない衣服の残骸を身にまとい追いかけっこする、バカップル風ゴブリン。
 そう、人里離れた隠れスポットとして何年か前に紹介されたビーチでは、ゴブリン達が夏を満喫していたのだ。
「私が求めていたのはこんなんじゃなーいっ!!!」
 少女は悲鳴を上げて、ハンターオフィスに駆け込んでいったのであった。

リプレイ本文

「なんてゆーか、もう遊ぶ気満々、ですよね?」
 依頼人のミネアはハンター達の姿を見てぼそっと呟いた。全員武装はしているものの服の下に水着を着けている人多数。普段から魔術師然としたメープル・マラカイト(ka0347)ですら三角帽子は麦わらになっているし、ラウリィ・ディバイン(ka0425)はバナナボートを準備してるし。
「いや、ゴブリンが荷馬車を襲ったのなら退治しないと、と思ってな」
 と、いたく真面目に語るイスカ・ティフィニア(ka2222)はボールやスイカを小脇に抱えている。説得力など欠片もない。
「気にしない、気にしないっ。時間が勿体ないし、さぁいこっ」
 レベッカ・ヘルフリッヒ(ka0617)はさっさと浜辺へ走っていくと、他の面々も次々と武器を構える。
「待っててね、ミネアちゃーん。すぐ追い払ってくるからね」
 ウィンクを飛ばすラウリィに、ミネアは心底不安になった。

「というわけでー」
「うーーーーーーーみーーーーーー!!!!」
 元から不意打ちをかます予定もなかったのだがトリス・マリアンデール(ka0349)の心からの雄叫びで、ゴブリン達はもちろん横にいた海堂 紅緒(ka1880)までもセリフを奪われた形になってしまう。
「ま、いいか。どうせ注意を向かせなきゃと思ってたし」
 ゴブリン達は邪魔な奴らが来た、と息巻き始めた。
 が、次の瞬間、軽い炸裂音によりゴブリンの動きが止まった。ヴィーズリーベ・メーベルナッハ(ka0115)の魔導銃が火を吹いたのだ。
「去りなさい、此処は貴方達の遊び場ではありません」
 一瞬ひるんだもののゴブリン達はまだ戦意を失ったわけではなく、飛びかかろうとしたその瞬間。日下 菜摘(ka0881)のホーリーライトやメープルのマジックアローが次々と足元をに打ち込まれた上に、トリスの銃が転がっていたスイカを吹っ飛ばした。派手に破裂し、真っ赤な果実が飛び散る。
「次はその頭をスイカ割りの代わりにしちゃいますよ」
「トリスさん……後の掃除のことを考えてください」
「えー、どうせスイカ割りするからいいじゃないですか」
 菜摘の指摘にちょっと不満げなトリス。そんな容赦のないハンター達に気圧され、海辺に一歩、また一歩と後退していくゴブリン。
 そこに波間をかき分け進んでいた結城 藤乃(ka1904)がゴブリンの背後から襲い掛かった。
 しゃきーんっ。
「つまらぬモノを切ってしまった……」
 そう呟いて、藤乃が二本の短剣をくるりと回して、鞘に納めると同時に、バカップル風ゴブリンが身に着けていた水着らしきものが真っ二つに切れて落ちた。
「ぎゃ、ぎゃぁぁぁぁん」
 ゴブリンは布の切れ端を持って悲鳴を上げる。ただし恥じらっているのか、単に獲得したものが破壊されてショックを受けているのかわからない。まぁハンター達にとってはどちらでも気色悪いということに変わりはないのだが。
「おらおらおら、誰のシマで好き勝手さらしとんねん、ボテくり回すぞ、ゴルァ」
 それに追い打ちをかけるようにしてキヅカ・リク(ka0038)が愛馬イクに乗り、釘バットを振り回して走りこんでくる。言葉は棒読みなれど、ロデオのように派手に跋扈しながら襲い掛かる姿は十分にゴブリン達の恐怖を煽ったようだ。ゴブリン達は蜘蛛の子を散らしたように逃げて行ってしまった。
「服を着ていってください! ゴミも放って帰らないように!!」
 人間とは交わることのないであろうゴブリンといえども一応人型。あんな姿で人前に出られては大迷惑と、ウォーハンマーを振り回す菜摘が制止の声を上げた。言葉というよりその気迫が通じたのであろう、とにかく持てるだけの荷物を担いで帰るゴブリン達。
「意外とあっけなかったですね。でも掃除する手間も省けて助かりました。でも」
 すっかり視界からゴブリンが消え去ったのを確認して、軽く息をついてメープルは杖を下ろした。
「なんだかこちらが悪役になった気分……」
 ハンターは恐ろしい勢いで浜辺の残骸を掃除して、皆それぞれ歓喜の声を上げて浜辺へと走り出す姿にメープルはほんの少しばかり苦笑いを浮かべた。だが、どうせ相容れることのない者同士なのだ。気に病むことでもない。
 メープルはローブを外すと、真夏の太陽を一身に浴びた。
 さぁバカンスを楽しもう。


 空は雲一つない青空。輝く太陽の光が降り注ぎ、白い砂浜をまぶしく輝かせる。風は潮の香りを運び、焼けた砂からの熱を吹き流してくれる。絶えず波が寄せたり引いたりする音が耳に心地よい。
「イイ……」
 泳ぎながらバナナボートを引いているラウリィは思わず本音が漏れた。
 バナナボートにまたがるのは青と白のチェック柄のは紅緒と、ワンピースの上に白いシャツを着ているミネアさん、それからワインをもったカラフルな南国を思わせる模様の水着のメープル。少し離れた場所では妖艶な黒のビキニ姿のヴィーズリーベことヴィズと明るい赤の髪とお揃いのセパレートの水着姿のレベッカが派手に水の掛け合いをしている。浜辺では藤乃がトップを外してうつぶせに寝ているし、横で白いビキニ姿のトリスは砂まみれになりながら、砂の城を作ろうと奮闘している。それを手伝う菜摘は少々露出は少ないがカモメのワンポイントが可愛いホルターネックタイプの濃紺の水着からはその胸のふくよかさがよくうかがえる。水着の女性がいっぱいでラウリィはそのまま海に溶けてしまいそうなほどに蕩けた笑顔を浮かべるのも仕方のないことだ。ん、男? そんなもの自動補正で視界から削除済み。
「ら、ラウリィさん? 大丈夫、ですか?」
 結構ヒいた声でミネアが思わず声をかけて、ラウリィはふと我に返る。いかん、注意していたはずなのに鼻血が……。
「ごめんごめん。いや、暑くってのぼせちゃった~」
「えー、絶対ウソ! ヤラしいこと考えてたんでしょっ」
 バナナボートの先頭にいた紅緒がラウリィに顔を近づけて問い詰める。いやあのその、と適当にごまかそうとするラウリィの視線は紅緒の胸の谷間に集中してしまう。
「このエロ男~っ!!」
「いや、まて、誤解、ご、ごか、ごふぁ」
 バナナボートの上からバシバシと足で水をかけられて沈没しそうになるラウリィ。
 しかし、牽引役の彼が沈没するということは即ちバナナボートの体勢も危なくなるわけで、たちまち自分のした仕打ちに報いを受けることになる紅緒と残り二人。
「わ、わっ。そんなに揺らさないでっ」
 悲鳴のあと海へと転落する紅緒。そしてミネアも堪え切れずに転落。そしてメープルはワインに栓をして、自分から飛び出して浅瀬に移動する身の軽さを披露する。
「ちょとぉぉぉ、おいてか、ない、ごぼっ。ぼぼぼ」
 紅緒が派手に手足をばたつかせる。その手足の勢いに頭がおいていかれる形となり、水面に何度も顔が浮沈する。
「海堂さんっ『ウイテマテ』ですっ」
 ウイテマテ。溺れそうになった時は大の字になって浮いて待て、という合言葉。そうしてミネアが慌てて浜辺の皆に応援を要請した。
「すぐ助けませんとっ」
 菜摘がすっくと立ち上がり海に走り出したその時。砂の城を作っていたトリスがそれを制止する。
「まっかせなさーい!」
「だって、紅緒さんを助けませんと!」
「直接救助するのは大変危険なのです。そこで登場! 万力の隙間を搭載したこの砦『エバン・エマール要塞』の出番ですっ」
 トリスは完成した砂の城を披露した。高さ1m弱、直径1m50、城壁有り、窓や尖塔まで表現され砦には砂で作るには難しい中空の大砲まで装備されている。
 まさかこんなモノ作っていたのかと菜摘もごくりと息をのむ。
「ふっふっふ、この万力の隙間に浮き輪替わりの弾を詰め込み……」
 イスカが持ってきたボールを大砲にセットする。そしておもむろにカウントダウンする。
 浜辺にいたキヅカや藤乃も思わずその行く末を見守る。
 超高精細で出来上がった砂の城はどのように大砲を放つのか……!?
「3・2・1……ふぁいあーーーーーっ」
 どかんっ!!!
 バネも火薬も魔法も使わずボールは確かに発射された。
 トリスの蹴りによって。
 ……しかも砂に埋もれていたからちょっとしか飛ばなかった。
「あほかぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
 イスカが思わずトリスを張り倒した。思わず見守ってしまった自分が情けないと思ったのはイスカだけではなかっただろう。イスカはその足で波打ち際でぷかぷか浮かぶボールをつかんで投げようとするが、濡れた砂に足を取られて投げる姿勢を取れない。
「パスっ」
 仕方なくイスカはボールを軽く投げ放つ。トリスが受け、そのボールを両手で高く高く押し上げた。
 そして改めて走りこんだ菜摘が一気に高く跳躍した。逆光を受けるその跳躍に、ワンポイントのカモメがきらりと輝く。
「あたーーっく!」
 ボールは狙い外さず紅緒の元に飛んでいった。
「レシーブ!」
 即座に体勢を立て直して、ボールを弾き返してしまった。
「アホかっ、掴まれってんだよ!」
 イスカの声に紅緒は照れたように笑った。
「いやぁ、反射動作って怖いね」
「いいではありませんか、そのおかげで地に足がついたようですし」
 メープルはくすりと笑って、元通りに直したバナナボートに腰かけてワインを煽った。その言葉通り、紅緒は自分がいつの間にかちゃんと立っていることに気付いたのだ。ともあれ危機は無事去ったようだ。
「ふぅ、大事にならずに済んだようですね」
 溺れ騒ぎに近くでレベッカと戯れていたヴィズはバナナボートに手をかけ、浜へと上がった紅緒を見送ってそう言った。
「ミネアさんも大丈夫でしたか?」
「ちょっと驚いたけど、海堂さんが無事で良かったです」
 そう言いつつ、ミネアはバナナボートに戻ろうとよじ登るが、足のつかない海水に浮かんだボートに戻るのはなかなか困難で苦労している。そこでヴィズはミネアを後ろから押し上げるのを手伝う。
「よいしょっ」
 ミネアがボートに無事乗り込んだ瞬間。ぶしゅあっ、と水が噴き出る音がした。先導役のラウリィが鼻血を派手に吹きあげてのけぞっている。
「あら」
「今度はどうし、たんです?」
「び、びーずりーべさぁん……刺激的……す、ぎ」
 その言葉に従って、皆の視線がヴィズに集まった。気が付けばヴィズのトップが失われ、そこには。
 突如、ミネアが『MS規制』と書かれたフライパンが皆の視線を遮った。
「見ちゃダメです!!」
「別に減るものでもありませんが」
「そーゆーこと言わないっ!! 流れちゃった、んですか?」
 意外とヴィズ本人は大した事の様子でもなく冷静な対応だが、ミネアは顔を真っ赤にしてフライパンをぶんぶんと振り回した。
「いえ、おそらく……」
 ヴィズは視線を自分の泳いできた方向にやった。そこではレベッカが失われたはずの黒い水着を持って満面の笑みを浮かべていた。
「んふふふふ。ヴィズちゃん、サービス満点だねー♪」
「やれやれ、仕方のない子ですね。因果応報、という言葉があるというのに」
「そんなこと言ってないで。私のシャツ貸しますから」
 意味ありげな言葉を呟くヴィズにミネアは慌てて羽織っていたシャツを脱いで渡す。そこで初めてヴィズの指に何かの紐が引っかかっていることに気付いた。
「それ何、です?」
「先刻、落とし物を拾いまして……」
 その言葉と同時に、ヴィズは後方で笑っていたレベッカをちらりとみやった。
 視線に気づいたレベッカは目を細めてヴィズとミネアの手の間にある赤い布を見て、笑みが凍り付いた。
「ぼ、ボクのっ……!?」
 レベッカは慌てて視線を自分の体に落とした。トップスの方は無事にある。とすると下の方……
「こらぁ!!!」
 『MS規制』フライパンがヴィズの頭を打った後、勢いでレベッカの元まですっ飛び、レベッカの視界を遮った。
「だから因果応報と言いましたのに」
「かーえーしーてーあげなさいっ!!」
 努めて冷静なヴィズの視界いっぱいに角が生えたような形相のミネアが映る。ここまで怒られたら仕方ない、というか腹の虫が治まったのだからそれで十分。ヴィズはレベッカの元まで行くと、それぞれが悪戯しようと奪っていた水着を交換しあったのであった。
 そこで浜辺からギヅカの声がかかる。
「おーい、スイカの準備できたぞー」
 その声に海に入っていた一同は次々と浜辺へと戻っていった。そう、次はスイカ割りだ。

「はーい、バットに頭をつけてその場で10周」
 トリスが密かに作った『会場』でスイカ割りの役にあたったのは、クジの結果、キヅカに決定された。パラソルやその他の荷物で隠された会場にキヅカは目隠しで連れてこられた。キヅカがゴブリン退治に使っていた釘バットがそのままスイカ割りの棒に早変わり。無数の折れ曲がったクギに威圧感を感じた菜摘がぽろりと漏らす。
「あれ……大丈夫なのでしょうか」
「普通のバットでもボクたちが叩いたら、一発で粉砕しちゃうしいいんじゃない?」
 レベッカはいたって平気なようだ。まあちゃんと食べる分は別にあるから大丈夫。
「まさかクリムゾンウェストに来てスイカ割りするとは思わなかったな……しかも半分仕事で」
 キヅカは目隠しで視界が防がれた中、心の中で呟いた。リアルブルーでもあまり経験したことのないことだが、この目隠しの外は実は地球だった、なんて淡い希望がふとよぎるが、もちろんそんなことはあるわけない。キヅカは頭を振ると神経を研ぎ澄ました。
 何しろ、普通のスイカ割りではない。トリスの作った砂の砦を乗り越えなければならないのだ。
「右から回ってすすんでくださいー。ぐるっと一周するくらい~」
「いや、男ならまっすぐすすめ。当たって砕けろ」
「そこから機導砲で一撃だよっ」
 もはやどこからツッコめばいいのかわからない。キヅカは恐る恐る足を踏み出していく。
「右ー右ー。もっと右ー」
「そうそう、そのまままっすぐ~」
「いや、そっちは、もがもが」
 なんだろう、すごく悪い予感がする。特にマトモな意見が封殺されている気がするのは気のせいだろうか。
 キヅカがしばらく進むと、大きな傾斜が感じられた。トリスの作った砦だろうか。
「ふふふー、この砦は簡単に壊せなませんからねっ。スイカを簡単にはとらせませんよっ」
 っても、普通の砂山だろ? 壊せないったってなー。
 と、砦を登るろうと次の一歩を踏み出した。が、その先に予想していた斜面はなかった。それどころかいきなりの下り坂だ。しかもさっきとは砂が断然ゆるく、ふんばりすらできずに足を取られてしまう。危険を感じてすぐにバットを離すものの、さすがに体勢を整えなおすことはできなかった。
「うわぁぁぁぁっ」
「ひゃっ!?」
 どしゃゃぁぁぁ、と砂の坂道を転がった先で、普段からよく聞く声が響いた。やはり嵌められていたのだ。一部の外野から歓声が上がった。
「藤乃さん、ごめんっ」
 慌てて目隠しを取り、藤乃の状態を確認しようとしたキヅカは自分たちがどんな状況にあるのかようやく理解した。
 吐息が感じられるほどの間近に藤乃の顔。密着した脚と脚。そして藤乃の豊かな胸についたキヅカの腕。
「この手はなーに? そーゆーことしたいのかな?」
「いや、成り行きだよ。ほら、スイカ割りしてたから……ってか、なんで藤乃さんこっちにいるんだよ」
 慌てて飛び退くキヅカに小さく笑みを浮かべて藤乃は答えた。
「私、寝てたから。スイカ割りもう始めちゃったのね」
「そうだよ、けっきょくスイカはどこだ……?」
「スイカって、アレ?」
 藤乃がキヅカの真後ろを指さした。そこにはキヅカと同じくらいの背丈で作られた巨大な砦が作られ、その天辺、つまり自分の目線より高い場所にスイカは安置されていた。
「こんなんできるかぁぁぁぁ!!!」


「そういえば、ミネアさん、ここに一人で遊ぶつもりだったのですか……?」
 帰り道。青かった空も次第に深い色に変わっていく最中、トリスが問いかけた。
「前に紹介されてたから人いるかな、って思ったの。結局いたのゴブリンだったけど」
「いいじゃない、おかげでミネアさんとお友達になれたし、みんなともね?」
 ラウリィの言葉に皆笑顔で頷いた。そのお友達、という言葉にミネアは少し目を丸くした。
「おともだち……」
「ハンターとお友達になるのはイヤですか?」
 優しく問いかける菜摘の声に、ミネアは首を振った。
「そうじゃないの。そのハンターってすごい人ばっかりだから、私なんかが友達って……いいのかなって」
 その言葉に一同は顔を見合わせて、くすりと笑い、代表して藤乃が口を開いた。
「ハンターだからとか、覚醒者だからとか、そんなこと思っている人いないんじゃないかしら。中身は同じ人間」
「そっか……」
 ミネアは言葉を反芻するように俯いたあと、飛び切りの笑顔で皆に向き直った。
「みんな、ありがとうっ! 本当に楽しかった」
 初めて、ぎこちないですます調が外れた言葉がミネアの飛び出したのを聞いて、皆はもう一度笑顔を作った。

 最高の夏休みをありがとう。

依頼結果

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重体一覧

参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • にゅるどろ経験者
    ヴィーズリーベ・メーベルナッハ(ka0115
    人間(蒼)|25才|女性|機導師
  • Pun Pun ぷー
    メープル・マラカイト(ka0347
    エルフ|25才|女性|魔術師

  • トリス・マリアンデール(ka0349
    エルフ|16才|女性|機導師
  • ラフな守備範囲
    ラウリィ・ディバイン(ka0425
    エルフ|17才|男性|猟撃士
  • みんなトモダチ?
    レベッカ・ヘルフリッヒ(ka0617
    人間(蒼)|20才|女性|猟撃士
  • 冥土へと還す鎮魂歌
    日下 菜摘(ka0881
    人間(蒼)|24才|女性|聖導士
  • カナイオ・スイーパー
    海堂 紅緒(ka1880
    人間(蒼)|18才|女性|闘狩人
  • 生者の務め
    結城 藤乃(ka1904
    人間(蒼)|23才|女性|猟撃士
  • 命の重さを語る者
    イスカ・ティフィニア(ka2222
    人間(紅)|20才|男性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/07/16 15:33:43
アイコン 相談卓
日下 菜摘(ka0881
人間(リアルブルー)|24才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2014/07/21 14:48:47