ゲスト
(ka0000)
桃紅のセントーア
マスター:惇克

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/07/22 22:00
- 完成日
- 2014/07/30 21:04
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
とある山地のとある高原。
そこに、知る者も少ない静かな湿原があった。
雪解けの水を湛えた湖から始まり、青く霞む山脈と樹林帯に囲まれるまで広く続く原野。
梅雨の晴れ間、雲の切れた空から差し込む光と、ゆるく転がり落ちてきた風とを受けて、湿原に群生するワタスゲが白い綿毛を揺らし踊らせている。
天上の絶景。
そう称しても遜色ないような景色の中にひとつの異変が存在していた。
「うわなにこれめんどくさい」
デートスポットの下見に来て異変の第一発見者となってしまった疾影士は、そう漏らさずにはいられなかった。
その目線の先には、湿原の中に立つ半人半馬の雑魔があった。
『それ』がサラブレットのようなスラリと洗練された下半身に、細マッチョ金髪美青年、という姿なら絵にもなったろうが、そこにいたのは、どっしりとした短い足でっぷりとした馬体の下半身に、毛深い肥満体型の髭面おっさんしかも蝶を模した仮面装着、という姿のやつだった。
耽美BL方向ではなく、淫乱プリティー熊さんとかそういうそっちの方向だった。
ショッピングピンクのハート型の鏃のついた矢と、リボンとフリルをあしらったプリティーな弓を手に、獲物(と書いていいオトコと読む)を求めて、湿原をウロウロと闊歩する半人半馬。当然のように全裸。
(あれだセクシービーム(男性限定)とか使ってくるそういうやつだ)
(ついでに女性に対しては攻撃力1.5倍とかそういうやつだ)
死んだ魚のような目をして、疾影士はやけに具体的な分析をしていた。
ただ、幸いなことに、この湿原は知る人ぞ知る隠れ絶景スポットだったがため被害はゼロである。今のところ。
今のところは。
「――よし、逃げよう」
尻の穴の危機を覚えた疾影士は全能力を隠遁に注ぎその場を離れ、魔導短伝話の通じる所まで辿り着くと、デンジャラスな雑魔の出現をハンターズソサエティに通報した。
そこに、知る者も少ない静かな湿原があった。
雪解けの水を湛えた湖から始まり、青く霞む山脈と樹林帯に囲まれるまで広く続く原野。
梅雨の晴れ間、雲の切れた空から差し込む光と、ゆるく転がり落ちてきた風とを受けて、湿原に群生するワタスゲが白い綿毛を揺らし踊らせている。
天上の絶景。
そう称しても遜色ないような景色の中にひとつの異変が存在していた。
「うわなにこれめんどくさい」
デートスポットの下見に来て異変の第一発見者となってしまった疾影士は、そう漏らさずにはいられなかった。
その目線の先には、湿原の中に立つ半人半馬の雑魔があった。
『それ』がサラブレットのようなスラリと洗練された下半身に、細マッチョ金髪美青年、という姿なら絵にもなったろうが、そこにいたのは、どっしりとした短い足でっぷりとした馬体の下半身に、毛深い肥満体型の髭面おっさんしかも蝶を模した仮面装着、という姿のやつだった。
耽美BL方向ではなく、淫乱プリティー熊さんとかそういうそっちの方向だった。
ショッピングピンクのハート型の鏃のついた矢と、リボンとフリルをあしらったプリティーな弓を手に、獲物(と書いていいオトコと読む)を求めて、湿原をウロウロと闊歩する半人半馬。当然のように全裸。
(あれだセクシービーム(男性限定)とか使ってくるそういうやつだ)
(ついでに女性に対しては攻撃力1.5倍とかそういうやつだ)
死んだ魚のような目をして、疾影士はやけに具体的な分析をしていた。
ただ、幸いなことに、この湿原は知る人ぞ知る隠れ絶景スポットだったがため被害はゼロである。今のところ。
今のところは。
「――よし、逃げよう」
尻の穴の危機を覚えた疾影士は全能力を隠遁に注ぎその場を離れ、魔導短伝話の通じる所まで辿り着くと、デンジャラスな雑魔の出現をハンターズソサエティに通報した。
リプレイ本文
●
山紫水明。
偉大なる自然の懐にいちゃいけないものがいた。
誰もが見た瞬間「暗黒の世界に帰れ!」と即ギレしていることだろう。
討伐の依頼を受けて現地に到着したハンター達も例外ではなかった。
「相当な化け物じゃねぇか……」
目視で確認した雑魔の姿に影護 絶(ka1077)の顔が盛大に引き攣った。
「……半人半馬の男色雑魔と来たか。随分と濃い相手だぜ」
ナハティガル・ハーレイ(ka0023)は葉巻を燻らせながら、心底面倒くさそうに舌を打つ。
「……見ているだけでもなんかやばそうな雰囲気が漂ってくるな……。これは一刻も早く殲滅するしかあるまい。自分も全力を尽くすこととしよう」
直視していては正気値が削られる。雑魔から目を逸らしつつアバルト・ジンツァー(ka0895)が深く頷き、寡黙な男、ダラントスカスティーヤ(ka0928)もまた同様に目線を明後日の方向に向けた。
しかし、ふざけた姿ではあるもののあれもまた雑魔である。油断は禁物、と気を引き締める。
「まぁ、仕事なら頑張れそうですね」
依頼報酬を目的として参加した倉敷 一縷(ka1500)は仕事として割り切ろうとしていた。
そんな男性陣の困惑を余所に、まるきり他人事のように星見 香澄(ka0866)はゆったりと構えている。
「さて、ボクはゆっくり見学させてもらおうかな。うん、男の子ガンバレ」
女子に興味は示さない雑魔なのである意味超余裕なのだ。
「とんでもない雑魔が相手ですね……みなさん頑張りましょう!」
破廉恥な雑魔を成敗致します!と聖盾(ka2154)が意気込む。
雑魔を放置しておいては被害が広がるばかりだろう。
(被害に遭った男性が心に受ける傷は相当なものとなるでしょうね……)
形のよい眉をひそめ悲痛な表情を浮かべるが、同時に、男性同士が激しく前後上下する場面を脳裏に思い描いてしまった。雄同士のお互いを貪り食らうような激しい肌と肌とのぶつかり合い、その禁忌にして淫靡、だがどこか耽美な雰囲気漂うヴィジョンに聖盾はにわかに頬を染める。
(嗚呼……なんでしょうかこの気持ちは……何か、私の中にある新たな扉を開いてしまいそうな恐ろしい予感が……)
その隣では、精神安定剤を噛み砕きながら、ガドリニア(ka1878)が己が内側の衝動と戦っていた。
(戦いたい戦いたい戦いたい、あぁ、あのおっさん強そうだな……喧嘩ふっかけてもいいのかな……だめだ、まだ、まだ我慢しなきゃ……今回は雑魔との戦いだ。あいつらは一応味方だ。あぁ、でも戦ってみたい。)
No Battle、No Lifeを地で行く彼女は戦闘中毒とも言えるべき状態にある。
(今は我慢しないと。きっと雑魔はあたいを満足させてくれるといいな。あぁ、戦いたい。戦闘がしたい。戦闘しなければ気が狂ってしまいそうだ。あぁ、早く、早く)
雑魔との戦闘を渇望するガドリニア。
当の雑魔はお笑い成分多めの謎存在だったりするのだがそれでいいのか。
「居場所が分かってる内に片づけようぜ。間違っても逃がす訳にはいかねぇ」
死んだ魚のような瞳をした絶が、どこか悲壮な使命感を口にする。
「まあ……最悪の事態が起きたとしても、即死したりはしねぇから安心しな」
ナハティガルは不安を抱いている仲間を軽い調子で励ました。
確かに確かに即死はしない。
死ぬわけじゃあない。
精神的、男性的には死ぬかもしれないが、そこから生まれ変わって新たな世界を切り開くことも可能なのだ。
デスアンドリバース、死と新生は常に表裏一体である。
●
何やらうっかり人生を変えてしまうかのような危険が待ち受けているため、ハンター達(主に男性)はしっかり対処と作戦を考え、念入りに打ち合わせて戦闘に臨む。
雑魔は見た目の通りやや鈍重で、感知能力も低く、ハンター達は簡単に先手をとることができた。
戦闘を心待ちにしていたガドリニアが雑魔の死角から接近を計る。男性陣の陽動により雑魔がそちらに気をとられている所を強襲し、急所への一撃を狙う算段だったが、いざ戦闘、となれば誰よりも早く動き出てしまった。
彼女の接近に気づいた雑魔が、憤怒の形相で鼻息を荒くする。
蹄で激しく湿地を蹴り、ガドリニアへと突進する様子を見せる雑魔だったが
「――よう。奇遇だな? ちょっと俺と遊ぼうぜ……?」
ナハティガルの声がそれを止める。
湿地を歩く足音水音で気付かれない様に慎重に接近していた彼は、距離こそあまり縮められなかったが、雑魔の背後方向をとることに成功していた。
その声に雑魔が勢いよく振り返る。
ナハティガルは妖艶な笑みを浮かべると、おもむろに胸元をチラリと肌蹴けさせ、黒豹を思わせる艶やかな己の肉体を誇示し、フェロモン大放出。
男女問わず誘われてしまうような危険な色香に、雑魔の鼻息が別の意味で荒くなる。
雑魔の隙を作る為の、男性陣決死のアピールタイムの開幕だった。
「で、どうするのでしょうか?」
一縷は少々困惑しつつ、雑魔へと接近を開始する。
この隙に聖盾は受ける傷が少しでも軽くなるようにと、ガドリニアへプロテクションをかける。
「一体俺は何をやってるんだ……? いや、今は考えるな……」
自分に言い聞かせるように呟き、わき上がってくる当然の疑念を押しとどめた絶は、雑魔を誘惑するためにしぶしぶと浴衣を着崩し、帯で最低限脱げないように固定し大胆に開けた。
男は囮と割り切った方が良し、と身を隠すのは最初から諦めた彼は正面から堂々と接近する。
アバルトは慎重に敵の射程外ぎりぎりの距離にまで移動していた。
彼もまた、上半身に袖無し服を身につけ、さりげなく鍛え上げられた筋肉を誇示している。いぶし銀を思わせる奥ゆかしいアピールだった。
その横を駆けて行くのはダラントスカスティーヤ。開幕するや否や、剣を抜き放ち、全力疾走で一気に雑魔へと肉迫する。
「さて、戦況はっと……うん、ガンバレガンバレ」
香澄は後方で待機している。
「ん、暑いね。炭酸飲料でもゆっくりと飲んでよう」
男性陣が文字通り体を張って雑魔を誘惑している間は、藪をつついて蛇を出さないよう、待っているつもりのようだった。
雑魔は眼前で繰り広げられるいい男たちの饗宴に「ウホッ!」という野太い歓声を上げ、そして少し迷うそぶりを見せた後に、最も接近していた筋肉質のいい男、ダラントスカスティーヤに弓矢を向けて光線を放つ。
「!?」
毒々しいピンク色の光線を浴びてしまったダラントスカスティーヤの瞳に陶然とした色が浮かぶ。
男性陣の間に緊張が走った。
早急になんとかしなければ彼が「アッー!」な目に遭ってしまう。そしてそれの目撃者になってしまう。
絶は雑魔の撃破を優先し武器を握りしめた。魅了の処置をしている間に、更に光線を撃たれてしまっては泥沼に陥りかねない。
一縷は魅了された仲間が邪魔になるようなら、情けで峰打ち、気絶させようと考えていたが、現段階ではまだわからない、と判断を保留した。
「ハハハハ! シネシネシネシネェエ!」
ガドリニアはそんなことはお構いなしに斬りつける。
戦闘狂の面目躍如といった具合にやたらにハイテンションでノリノリだった。
半身半馬という形状から、雑魔の背中から攻撃を行えば反撃も来ないだろうと踏んでいたが、馬という生物は背後に回られるのを極度に嫌う。
激高した雑魔が後ろ脚でガドリニアを蹴り上げようとするが、
「……おっと。よそ見は厳禁だ」
ナハティガルが即座に雑魔の注意を惹きつけ、そのまま雑魔の懐まで接近する。
そして、厄介な効果を持つ弓矢を封じる必要がある、と、弓矢を持つ雑魔の手を優しくそっと握って宥める。
「なぁ、そんなモンで男のハートは射抜け無いぜ……?」
濡れた色合いの流し目で見つめられ、雑魔がうっとりとした吐息を漏らす。
雑魔がせめて見目麗しい女子の姿であれば、ノンストップロマンティックエクスプレス~恋の暴走特急★ リグレットを高原の風に乗せて~みたいな微笑ましい少女漫画的展開にもなっただろうが、実際は毛むくじゃらでだらしない体型の中年男性なのだから救いようがない。
その隙に一縷が弓矢の光線に警戒しつつ、脚のひざ裏を狙って一撃を加える。
斬ってしまえば攻撃が封じられるであろう。さらには機動力も奪えるだろうという目論見だった。
攻撃を受け『メス豚みてぇなオスに用はねぇんだよ!』とでも言いたげに侮蔑の表情を見せる雑魔。
その顔面に聖盾が放った聖なる光が突き刺さる。
女性が接近すると興奮する雑魔であるので、彼女は後方支援に徹していた。
雑魔に感知されないよう、慎重に行動し、接近にも注意を払う。
勇敢にも囮として、逞しい筋肉で雑魔を魅了しようと試みてくれる男性陣に大事がないよう、補助と回復の魔法をいつでも発動できるように身構えていなければならない。
そう自身の役割を決めていたが、彼女は頬を染め悩ましげにそっと吐息を漏らす。
「嗚呼……逞しい筋肉……ハッ! 私はいったい何を……」
聖盾が肉体美に魅了され、更には薔薇薔薇しい妄想に入り込もうとしていたその目線の先では、絶がフラジェルム(鞭)で雑魔を撲っていた。
「わざわざお前の好きそうな武器持ってきてやったんだよ!」
「ハヒィンッ!」
雑魔は涎を垂らしながら喜色のこもった気色の悪い悲鳴をあげる。
「悦べ、豚野郎!」
鞭なんて普段は使わねぇ。そう言う絶だったが、豚野郎をしばく鞭さばきは実に堂に入っていた。
何かアレな光景になりつつある現場に、内心で冷や汗をかきながらもアバルトは努めて冷静に長弓を構え、しかと胴体を狙い撃つ。
当初は弓矢か顔面を狙う算段だったが、仲間が雑魔に接近している今、安全をとり胴体を選んだ。
そろそろ頃合いとみた香澄が行動を開始する。
攻撃を行うガドリニアへと攻性強化をかけ、攻撃の後押しをする。
「痛いの一発ぶつけて来てね☆ ボクはメンドクサイから後ろから応援してるよ」
抵抗に破れ、魅了されてしまったダラントスカスティーヤはふらふらと雑魔へと近づき、そして、言葉など不要と熱い抱擁を交わした。
雑魔は仮面に隠れた表情をだらしなく緩め、彼の引き締まった肉体を撫で回す。
主に尻を重点的に。
「ハーァハハ! シネシネシネェ!」
ガドリニアはそんなことはお構いなしに斬りつける。
雑魔は健気にもダラントスカスティーヤを庇うように突き飛ばし、一撃をその身に受けた。いい男を刃で傷つけるのは忍びないという本能の行動である。
ナハティガルはその間にダラントスカスティーヤの頬を叩き、呼びかけ、正気に戻せないかと試みた。
一縷は魅了効果の弓矢にドン引きしながら、それを回避しようと接近し、手元からはじき飛ばそうと狙うが、雑魔とがっちり一体化しているかのようでその試みは成功しなかった。
「その破廉恥な弓は貴方にはもったいない代物ね! 大人しく私にお渡しなさい!」
後方で攻防を見守っていた聖盾がうっかり本音を漏らす。
さりげに危険人物が誕生しつつあったが、側に誰もいなかったのが幸いだったのかそうでなかったのか。
「あぁくそ! 早く終わらねぇかな」
引き続き雑魔を鞭でしばく絶。
(乱れた服装で鞭振るう男とか、こっちが変態みたいじゃねぇか)
自分の姿を客観視し、泣きたくなってきた彼だが攻撃の手は緩めない。
戦闘を終わらせて、さっさと帰って着替えたい、それだけを思いつつ。
アバルトは射程線上を出入りしつつ、前衛の負担を軽減させようと牽制射撃を行い、雑魔の注意を分散させる。
それに乗じて香澄がぶっ放す。
「痛いの一発ドッカーンってね。いやー、雑魔が暑苦しいなんて思ってないさ、もちろん暑苦しいから近づくのは願い下げだなんて思ってないさ」
と嘘か本気かわからないことを言いながら。
ナハティガルの平手で正気に戻ったダラントスカスティーヤは、いろんな衝撃で膝から崩れ落ちそうになったが、どうにか踏みとどまり剣をとり直していた。
『いい男との蜜月を邪魔する不届き者どもめ!』とばかりに憤慨する雑魔がガドリニアへと突進する。
女性に対しては一切の躊躇がない。それどころか興奮して攻撃力も増すという面倒ぶり。
まともにそれをうけたガドリニアは弾き飛ばされ、湿原に叩きつけられるが、即座に起き上がり雑魔へと斬りつける。
その気迫と狂気に怯んだ雑魔に大剣の刃が迫る。
「――安らかに逝きな!!」
これまでの甘い雰囲気を取り払い、野獣のようなナハティガルが放つ必殺の一撃。
一縷の刃が続き、絶の鞭が殴打を加える。
「すまないが、求愛は魅力的な女性からしか受けるつもりはない。そのまま地獄へ堕ちてしまえ!」
死角に回り込んでいたアバルトが矢を射掛ける。
雑魔につきあうのもこれまでと、速攻を仕掛けるハンター達。
その間に、負傷したガドリニアを聖盾が癒やす。
「男の子たちよく頑張った、怪我した人は後ろで回復するといい。あとはボクに任せてもらえばいいよー」
そろそろ安全になっただろうと踏んだ香澄が接近し、機導剣を発動させる。
虫の息だった雑魔は香澄に興奮することなく、めんどくさそうに一瞥した。
「ん? その態度、ボクが女性に見えないってことかな?」
香澄は笑顔を凍り付かせ、ざっくりと雑魔を袈裟斬りにする。
『メス豚に止めを刺されるなど。せめて、温もりをくれた君の手で!』とばかりに、雑魔はダラントスカスティーヤに向かって最期の突進を敢行。
当方に迎撃の用意あり、と、ダラントスカスティーヤは湿地を踏みしめ、剣の柄を握り直し、大きく一閃。
見事なまでにばっさりと斬り捨てられたが、なんかすごいいい笑顔とサムズアップを残して雑魔は消えた。
それを見たハンター達はちょっとイラッとした。が、みんないい大人だったので何も言わず何も見なかったことにした。
ただ一人、聖盾だけは雑魔と共に消えていく弓を残念そうに眺めていた。
●
「何はともあれ。男達の貞操は死守された――ってか?」
どっと押し寄せてきた疲れに大きく息を吐き、葉巻にゆったりと火を灯けるナハティガル。
「さぁあとは帰るだけだ。男の子たちそろそろ服着ようか」
香澄の一言に、男性陣は苦笑いを浮かべながら、衣服を整える。
「一刻も早くお風呂に入りたいです」
湿原を走り回ったせいか、水や泥はねで服が汚れており、じめじめとした不快感に一縷は顔を顰めた。
ダラントスカスティーヤは雑魔の遺体の後処理を念入りにと考えていたが、その存在はすでに消え去っており、もう二度と人目につくようなことはない。
平穏を取り戻した美しい湿原を見渡すと、彼は大きく頷いた。
今日の出来事はきれいさっぱり忘れよう。
そう固く決心して。
山紫水明。
偉大なる自然の懐にいちゃいけないものがいた。
誰もが見た瞬間「暗黒の世界に帰れ!」と即ギレしていることだろう。
討伐の依頼を受けて現地に到着したハンター達も例外ではなかった。
「相当な化け物じゃねぇか……」
目視で確認した雑魔の姿に影護 絶(ka1077)の顔が盛大に引き攣った。
「……半人半馬の男色雑魔と来たか。随分と濃い相手だぜ」
ナハティガル・ハーレイ(ka0023)は葉巻を燻らせながら、心底面倒くさそうに舌を打つ。
「……見ているだけでもなんかやばそうな雰囲気が漂ってくるな……。これは一刻も早く殲滅するしかあるまい。自分も全力を尽くすこととしよう」
直視していては正気値が削られる。雑魔から目を逸らしつつアバルト・ジンツァー(ka0895)が深く頷き、寡黙な男、ダラントスカスティーヤ(ka0928)もまた同様に目線を明後日の方向に向けた。
しかし、ふざけた姿ではあるもののあれもまた雑魔である。油断は禁物、と気を引き締める。
「まぁ、仕事なら頑張れそうですね」
依頼報酬を目的として参加した倉敷 一縷(ka1500)は仕事として割り切ろうとしていた。
そんな男性陣の困惑を余所に、まるきり他人事のように星見 香澄(ka0866)はゆったりと構えている。
「さて、ボクはゆっくり見学させてもらおうかな。うん、男の子ガンバレ」
女子に興味は示さない雑魔なのである意味超余裕なのだ。
「とんでもない雑魔が相手ですね……みなさん頑張りましょう!」
破廉恥な雑魔を成敗致します!と聖盾(ka2154)が意気込む。
雑魔を放置しておいては被害が広がるばかりだろう。
(被害に遭った男性が心に受ける傷は相当なものとなるでしょうね……)
形のよい眉をひそめ悲痛な表情を浮かべるが、同時に、男性同士が激しく前後上下する場面を脳裏に思い描いてしまった。雄同士のお互いを貪り食らうような激しい肌と肌とのぶつかり合い、その禁忌にして淫靡、だがどこか耽美な雰囲気漂うヴィジョンに聖盾はにわかに頬を染める。
(嗚呼……なんでしょうかこの気持ちは……何か、私の中にある新たな扉を開いてしまいそうな恐ろしい予感が……)
その隣では、精神安定剤を噛み砕きながら、ガドリニア(ka1878)が己が内側の衝動と戦っていた。
(戦いたい戦いたい戦いたい、あぁ、あのおっさん強そうだな……喧嘩ふっかけてもいいのかな……だめだ、まだ、まだ我慢しなきゃ……今回は雑魔との戦いだ。あいつらは一応味方だ。あぁ、でも戦ってみたい。)
No Battle、No Lifeを地で行く彼女は戦闘中毒とも言えるべき状態にある。
(今は我慢しないと。きっと雑魔はあたいを満足させてくれるといいな。あぁ、戦いたい。戦闘がしたい。戦闘しなければ気が狂ってしまいそうだ。あぁ、早く、早く)
雑魔との戦闘を渇望するガドリニア。
当の雑魔はお笑い成分多めの謎存在だったりするのだがそれでいいのか。
「居場所が分かってる内に片づけようぜ。間違っても逃がす訳にはいかねぇ」
死んだ魚のような瞳をした絶が、どこか悲壮な使命感を口にする。
「まあ……最悪の事態が起きたとしても、即死したりはしねぇから安心しな」
ナハティガルは不安を抱いている仲間を軽い調子で励ました。
確かに確かに即死はしない。
死ぬわけじゃあない。
精神的、男性的には死ぬかもしれないが、そこから生まれ変わって新たな世界を切り開くことも可能なのだ。
デスアンドリバース、死と新生は常に表裏一体である。
●
何やらうっかり人生を変えてしまうかのような危険が待ち受けているため、ハンター達(主に男性)はしっかり対処と作戦を考え、念入りに打ち合わせて戦闘に臨む。
雑魔は見た目の通りやや鈍重で、感知能力も低く、ハンター達は簡単に先手をとることができた。
戦闘を心待ちにしていたガドリニアが雑魔の死角から接近を計る。男性陣の陽動により雑魔がそちらに気をとられている所を強襲し、急所への一撃を狙う算段だったが、いざ戦闘、となれば誰よりも早く動き出てしまった。
彼女の接近に気づいた雑魔が、憤怒の形相で鼻息を荒くする。
蹄で激しく湿地を蹴り、ガドリニアへと突進する様子を見せる雑魔だったが
「――よう。奇遇だな? ちょっと俺と遊ぼうぜ……?」
ナハティガルの声がそれを止める。
湿地を歩く足音水音で気付かれない様に慎重に接近していた彼は、距離こそあまり縮められなかったが、雑魔の背後方向をとることに成功していた。
その声に雑魔が勢いよく振り返る。
ナハティガルは妖艶な笑みを浮かべると、おもむろに胸元をチラリと肌蹴けさせ、黒豹を思わせる艶やかな己の肉体を誇示し、フェロモン大放出。
男女問わず誘われてしまうような危険な色香に、雑魔の鼻息が別の意味で荒くなる。
雑魔の隙を作る為の、男性陣決死のアピールタイムの開幕だった。
「で、どうするのでしょうか?」
一縷は少々困惑しつつ、雑魔へと接近を開始する。
この隙に聖盾は受ける傷が少しでも軽くなるようにと、ガドリニアへプロテクションをかける。
「一体俺は何をやってるんだ……? いや、今は考えるな……」
自分に言い聞かせるように呟き、わき上がってくる当然の疑念を押しとどめた絶は、雑魔を誘惑するためにしぶしぶと浴衣を着崩し、帯で最低限脱げないように固定し大胆に開けた。
男は囮と割り切った方が良し、と身を隠すのは最初から諦めた彼は正面から堂々と接近する。
アバルトは慎重に敵の射程外ぎりぎりの距離にまで移動していた。
彼もまた、上半身に袖無し服を身につけ、さりげなく鍛え上げられた筋肉を誇示している。いぶし銀を思わせる奥ゆかしいアピールだった。
その横を駆けて行くのはダラントスカスティーヤ。開幕するや否や、剣を抜き放ち、全力疾走で一気に雑魔へと肉迫する。
「さて、戦況はっと……うん、ガンバレガンバレ」
香澄は後方で待機している。
「ん、暑いね。炭酸飲料でもゆっくりと飲んでよう」
男性陣が文字通り体を張って雑魔を誘惑している間は、藪をつついて蛇を出さないよう、待っているつもりのようだった。
雑魔は眼前で繰り広げられるいい男たちの饗宴に「ウホッ!」という野太い歓声を上げ、そして少し迷うそぶりを見せた後に、最も接近していた筋肉質のいい男、ダラントスカスティーヤに弓矢を向けて光線を放つ。
「!?」
毒々しいピンク色の光線を浴びてしまったダラントスカスティーヤの瞳に陶然とした色が浮かぶ。
男性陣の間に緊張が走った。
早急になんとかしなければ彼が「アッー!」な目に遭ってしまう。そしてそれの目撃者になってしまう。
絶は雑魔の撃破を優先し武器を握りしめた。魅了の処置をしている間に、更に光線を撃たれてしまっては泥沼に陥りかねない。
一縷は魅了された仲間が邪魔になるようなら、情けで峰打ち、気絶させようと考えていたが、現段階ではまだわからない、と判断を保留した。
「ハハハハ! シネシネシネシネェエ!」
ガドリニアはそんなことはお構いなしに斬りつける。
戦闘狂の面目躍如といった具合にやたらにハイテンションでノリノリだった。
半身半馬という形状から、雑魔の背中から攻撃を行えば反撃も来ないだろうと踏んでいたが、馬という生物は背後に回られるのを極度に嫌う。
激高した雑魔が後ろ脚でガドリニアを蹴り上げようとするが、
「……おっと。よそ見は厳禁だ」
ナハティガルが即座に雑魔の注意を惹きつけ、そのまま雑魔の懐まで接近する。
そして、厄介な効果を持つ弓矢を封じる必要がある、と、弓矢を持つ雑魔の手を優しくそっと握って宥める。
「なぁ、そんなモンで男のハートは射抜け無いぜ……?」
濡れた色合いの流し目で見つめられ、雑魔がうっとりとした吐息を漏らす。
雑魔がせめて見目麗しい女子の姿であれば、ノンストップロマンティックエクスプレス~恋の暴走特急★ リグレットを高原の風に乗せて~みたいな微笑ましい少女漫画的展開にもなっただろうが、実際は毛むくじゃらでだらしない体型の中年男性なのだから救いようがない。
その隙に一縷が弓矢の光線に警戒しつつ、脚のひざ裏を狙って一撃を加える。
斬ってしまえば攻撃が封じられるであろう。さらには機動力も奪えるだろうという目論見だった。
攻撃を受け『メス豚みてぇなオスに用はねぇんだよ!』とでも言いたげに侮蔑の表情を見せる雑魔。
その顔面に聖盾が放った聖なる光が突き刺さる。
女性が接近すると興奮する雑魔であるので、彼女は後方支援に徹していた。
雑魔に感知されないよう、慎重に行動し、接近にも注意を払う。
勇敢にも囮として、逞しい筋肉で雑魔を魅了しようと試みてくれる男性陣に大事がないよう、補助と回復の魔法をいつでも発動できるように身構えていなければならない。
そう自身の役割を決めていたが、彼女は頬を染め悩ましげにそっと吐息を漏らす。
「嗚呼……逞しい筋肉……ハッ! 私はいったい何を……」
聖盾が肉体美に魅了され、更には薔薇薔薇しい妄想に入り込もうとしていたその目線の先では、絶がフラジェルム(鞭)で雑魔を撲っていた。
「わざわざお前の好きそうな武器持ってきてやったんだよ!」
「ハヒィンッ!」
雑魔は涎を垂らしながら喜色のこもった気色の悪い悲鳴をあげる。
「悦べ、豚野郎!」
鞭なんて普段は使わねぇ。そう言う絶だったが、豚野郎をしばく鞭さばきは実に堂に入っていた。
何かアレな光景になりつつある現場に、内心で冷や汗をかきながらもアバルトは努めて冷静に長弓を構え、しかと胴体を狙い撃つ。
当初は弓矢か顔面を狙う算段だったが、仲間が雑魔に接近している今、安全をとり胴体を選んだ。
そろそろ頃合いとみた香澄が行動を開始する。
攻撃を行うガドリニアへと攻性強化をかけ、攻撃の後押しをする。
「痛いの一発ぶつけて来てね☆ ボクはメンドクサイから後ろから応援してるよ」
抵抗に破れ、魅了されてしまったダラントスカスティーヤはふらふらと雑魔へと近づき、そして、言葉など不要と熱い抱擁を交わした。
雑魔は仮面に隠れた表情をだらしなく緩め、彼の引き締まった肉体を撫で回す。
主に尻を重点的に。
「ハーァハハ! シネシネシネェ!」
ガドリニアはそんなことはお構いなしに斬りつける。
雑魔は健気にもダラントスカスティーヤを庇うように突き飛ばし、一撃をその身に受けた。いい男を刃で傷つけるのは忍びないという本能の行動である。
ナハティガルはその間にダラントスカスティーヤの頬を叩き、呼びかけ、正気に戻せないかと試みた。
一縷は魅了効果の弓矢にドン引きしながら、それを回避しようと接近し、手元からはじき飛ばそうと狙うが、雑魔とがっちり一体化しているかのようでその試みは成功しなかった。
「その破廉恥な弓は貴方にはもったいない代物ね! 大人しく私にお渡しなさい!」
後方で攻防を見守っていた聖盾がうっかり本音を漏らす。
さりげに危険人物が誕生しつつあったが、側に誰もいなかったのが幸いだったのかそうでなかったのか。
「あぁくそ! 早く終わらねぇかな」
引き続き雑魔を鞭でしばく絶。
(乱れた服装で鞭振るう男とか、こっちが変態みたいじゃねぇか)
自分の姿を客観視し、泣きたくなってきた彼だが攻撃の手は緩めない。
戦闘を終わらせて、さっさと帰って着替えたい、それだけを思いつつ。
アバルトは射程線上を出入りしつつ、前衛の負担を軽減させようと牽制射撃を行い、雑魔の注意を分散させる。
それに乗じて香澄がぶっ放す。
「痛いの一発ドッカーンってね。いやー、雑魔が暑苦しいなんて思ってないさ、もちろん暑苦しいから近づくのは願い下げだなんて思ってないさ」
と嘘か本気かわからないことを言いながら。
ナハティガルの平手で正気に戻ったダラントスカスティーヤは、いろんな衝撃で膝から崩れ落ちそうになったが、どうにか踏みとどまり剣をとり直していた。
『いい男との蜜月を邪魔する不届き者どもめ!』とばかりに憤慨する雑魔がガドリニアへと突進する。
女性に対しては一切の躊躇がない。それどころか興奮して攻撃力も増すという面倒ぶり。
まともにそれをうけたガドリニアは弾き飛ばされ、湿原に叩きつけられるが、即座に起き上がり雑魔へと斬りつける。
その気迫と狂気に怯んだ雑魔に大剣の刃が迫る。
「――安らかに逝きな!!」
これまでの甘い雰囲気を取り払い、野獣のようなナハティガルが放つ必殺の一撃。
一縷の刃が続き、絶の鞭が殴打を加える。
「すまないが、求愛は魅力的な女性からしか受けるつもりはない。そのまま地獄へ堕ちてしまえ!」
死角に回り込んでいたアバルトが矢を射掛ける。
雑魔につきあうのもこれまでと、速攻を仕掛けるハンター達。
その間に、負傷したガドリニアを聖盾が癒やす。
「男の子たちよく頑張った、怪我した人は後ろで回復するといい。あとはボクに任せてもらえばいいよー」
そろそろ安全になっただろうと踏んだ香澄が接近し、機導剣を発動させる。
虫の息だった雑魔は香澄に興奮することなく、めんどくさそうに一瞥した。
「ん? その態度、ボクが女性に見えないってことかな?」
香澄は笑顔を凍り付かせ、ざっくりと雑魔を袈裟斬りにする。
『メス豚に止めを刺されるなど。せめて、温もりをくれた君の手で!』とばかりに、雑魔はダラントスカスティーヤに向かって最期の突進を敢行。
当方に迎撃の用意あり、と、ダラントスカスティーヤは湿地を踏みしめ、剣の柄を握り直し、大きく一閃。
見事なまでにばっさりと斬り捨てられたが、なんかすごいいい笑顔とサムズアップを残して雑魔は消えた。
それを見たハンター達はちょっとイラッとした。が、みんないい大人だったので何も言わず何も見なかったことにした。
ただ一人、聖盾だけは雑魔と共に消えていく弓を残念そうに眺めていた。
●
「何はともあれ。男達の貞操は死守された――ってか?」
どっと押し寄せてきた疲れに大きく息を吐き、葉巻にゆったりと火を灯けるナハティガル。
「さぁあとは帰るだけだ。男の子たちそろそろ服着ようか」
香澄の一言に、男性陣は苦笑いを浮かべながら、衣服を整える。
「一刻も早くお風呂に入りたいです」
湿原を走り回ったせいか、水や泥はねで服が汚れており、じめじめとした不快感に一縷は顔を顰めた。
ダラントスカスティーヤは雑魔の遺体の後処理を念入りにと考えていたが、その存在はすでに消え去っており、もう二度と人目につくようなことはない。
平穏を取り戻した美しい湿原を見渡すと、彼は大きく頷いた。
今日の出来事はきれいさっぱり忘れよう。
そう固く決心して。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/18 11:48:59 |
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作戦会議 ガドリニア(ka1878) エルフ|18才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2014/07/22 18:49:52 |