ゲスト
(ka0000)
クロウの兵器開発
マスター:植田誠

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/07/27 09:00
- 完成日
- 2015/08/04 23:39
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「どうだ?」
「ちょっと待ってくださいね……」
錬金術師組合本部、クロウの研究室にて。錬金術師組合長を務めるリーゼロッテ・クリューガーは大型の銃器を一しきり眺めてから頷いた。
「悪くないんじゃないですか。エネルギー供給経路も確保できてるみたいですし」
「そうか。手間取らせたな」
「いいえ、他ならぬ先輩の頼みですから」
クロウが今研究しているのは覚醒者向けの武装に関してだ。元々は魔導アーマーの装備開発を行っていたのだが、それらを作るためにまず人が持てる武器を作り、それらを魔導アーマーに転用していこうと考えたのだ。それに、覚醒者用の武器はうまくすれば一般兵用の武器にも転用できる。一石二鳥だ。
そういうわけで今回クロウが製作したのはこの銃器。もちろんただ弾を撃つだけの銃ではない。発端は組合によくやってくるブリジッタ・ビットマンという魔導アーマー開発者の話。彼女が参考にしているリアルブルー産のアニメ。そこに出てくる武器を実際に再現したものだ。
例えば魔導銃という武器があるが、これはマテリアルのエネルギーにより弾丸を射出する武器だ。対し、このクロウが試作した武器はマテリアルのエネルギーそのものを発射する。
「これぞ試作型エネルギーキャノン、ってな。アニメの奴よりでっかくなっちまったのが偶に傷か」
でっかく、とクロウが言った通り。この武器、非常に大きい。重量も半端じゃない。エネルギーを射出する機構の問題だ。
「それにエネルギーの集束にもまだまだ問題がなぁ……まぁとにかく試用……いや、いっそハンター連中でも雇うか……実際使う側の意見も聞いてみたいし……」
「……先輩」
ブツブツと今後の動きについて考えを巡らせているクロウに、やや困ったような表情を浮かべ声をかけるリーゼロッテ。
「先輩の研究にあまり口出しはしたくないんですが……その……」
「分かってる。こういうのを作るのが嫌な連中だっているってことはな」
昨今練魔院での魔導アーマーや兵器開発に警鐘を鳴らす組合員も少なくは無い。そんな中でクロウが大っぴらに兵器開発をやっていることはそういう連中から批判を受けることだろう。正博士が率先してそんなことをしては~なんて形で。
(ただ、帝国全体が軍事に傾いている現状……兵器開発ってのは目に触れやすく、成果が分かりやすいってのも無視できないからな)
練魔院との勢力争い、なんてことにクロウはもちろん、リーゼロッテも興味は無いだろう。だが、練魔院の暴走を抑えるためにはある程度の発言力が必要なのも事実だ。
それに、錬金術師組合にも武器の開発研究を行いたいと思う人間だって少しはいる。矛盾した考え方ではあるが、正博士であるクロウが大っぴらに兵器開発を行うことで、そういった人間が委縮しない空気作りが出来るのだ。
「……まぁ、その辺は上手くやるからよ。悪いな、気を使わせちまって」
「いいえ、とんでもないです」
「とんでもないって……そっちの方が上司なんだからそんなに恐縮すんなって。それじゃ、俺は依頼書作るか。早く連中の意見が聞いてみたいぜ」
「それでは、私は失礼します……あまり無理はしないようにしてくださいね、先輩」
そう言ってリーゼロッテは研究室を出る。クロウの考えを察したのかは分からないが、それ以上このことに関して苦言を呈することは無かった。
「どうだ?」
「ちょっと待ってくださいね……」
錬金術師組合本部、クロウの研究室にて。錬金術師組合長を務めるリーゼロッテ・クリューガーは大型の銃器を一しきり眺めてから頷いた。
「悪くないんじゃないですか。エネルギー供給経路も確保できてるみたいですし」
「そうか。手間取らせたな」
「いいえ、他ならぬ先輩の頼みですから」
クロウが今研究しているのは覚醒者向けの武装に関してだ。元々は魔導アーマーの装備開発を行っていたのだが、それらを作るためにまず人が持てる武器を作り、それらを魔導アーマーに転用していこうと考えたのだ。それに、覚醒者用の武器はうまくすれば一般兵用の武器にも転用できる。一石二鳥だ。
そういうわけで今回クロウが製作したのはこの銃器。もちろんただ弾を撃つだけの銃ではない。発端は組合によくやってくるブリジッタ・ビットマンという魔導アーマー開発者の話。彼女が参考にしているリアルブルー産のアニメ。そこに出てくる武器を実際に再現したものだ。
例えば魔導銃という武器があるが、これはマテリアルのエネルギーにより弾丸を射出する武器だ。対し、このクロウが試作した武器はマテリアルのエネルギーそのものを発射する。
「これぞ試作型エネルギーキャノン、ってな。アニメの奴よりでっかくなっちまったのが偶に傷か」
でっかく、とクロウが言った通り。この武器、非常に大きい。重量も半端じゃない。エネルギーを射出する機構の問題だ。
「それにエネルギーの集束にもまだまだ問題がなぁ……まぁとにかく試用……いや、いっそハンター連中でも雇うか……実際使う側の意見も聞いてみたいし……」
「……先輩」
ブツブツと今後の動きについて考えを巡らせているクロウに、やや困ったような表情を浮かべ声をかけるリーゼロッテ。
「先輩の研究にあまり口出しはしたくないんですが……その……」
「分かってる。こういうのを作るのが嫌な連中だっているってことはな」
昨今練魔院での魔導アーマーや兵器開発に警鐘を鳴らす組合員も少なくは無い。そんな中でクロウが大っぴらに兵器開発をやっていることはそういう連中から批判を受けることだろう。正博士が率先してそんなことをしては~なんて形で。
(ただ、帝国全体が軍事に傾いている現状……兵器開発ってのは目に触れやすく、成果が分かりやすいってのも無視できないからな)
練魔院との勢力争い、なんてことにクロウはもちろん、リーゼロッテも興味は無いだろう。だが、練魔院の暴走を抑えるためにはある程度の発言力が必要なのも事実だ。
それに、錬金術師組合にも武器の開発研究を行いたいと思う人間だって少しはいる。矛盾した考え方ではあるが、正博士であるクロウが大っぴらに兵器開発を行うことで、そういった人間が委縮しない空気作りが出来るのだ。
「……まぁ、その辺は上手くやるからよ。悪いな、気を使わせちまって」
「いいえ、とんでもないです」
「とんでもないって……そっちの方が上司なんだからそんなに恐縮すんなって。それじゃ、俺は依頼書作るか。早く連中の意見が聞いてみたいぜ」
「それでは、私は失礼します……あまり無理はしないようにしてくださいね、先輩」
そう言ってリーゼロッテは研究室を出る。クロウの考えを察したのかは分からないが、それ以上このことに関して苦言を呈することは無かった。
リプレイ本文
●
「というわけで、これが試作型のエネルギーキャノンだ」
クロウに集められたハンターたちは、早速演習場に連れてこられた。そこにはすでに準備してあったのだろう複数の試作型エネルギーキャノンが置いてあった。
「おおお……! これが……これがエネルギーキャノン……! 向こうの世界のフィクションで見たことあるよ、こういうの!」
「そりゃそうだ。そのフィクションを参考にして作ってんだからな」
レホス・エテルノ・リベルター(ka0498)はまじまじとキャノンを見る。
「ほう、これが……まぁこのデスドクロ様クラスになると指を鳴らすだけで地平線の彼方まで超高エネルギーの波動を放つことが可能だが……」
嘘か真か、そんなことを呟きながらキャノンを眺めているのはデスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013)だ。
「……成程成程、凡百の兵にとっては有用な武器となるのは間違いねぇ」
「おぉ、おぉぉ! 出た、そう、こういうの欲しかった! 魔法とか色々あるけどRBならやっぱこうメカメカしくなきゃ!」
キヅカ・リク(ka0038)はエネルギーキャノンを見てかなりテンションが上がっているようだ。
それはロベリア・李(ka4206)やグオルムール・クロム(ka0285)も同様だ。
「こういう依頼を待ってたのよ! 実用とロマンを兼ね備えてこその試作品。どんなものか楽しみだわ!」
「試作! 大型銃器! エネルギーキャノン! っかぁ、分かってるじゃねぇか!」
グオルムールに至っては息を荒くし、銃身に頬ずりまでしている。熱の入れようが凄い。
「……エネルギーキャノンねぇ」
対してどこか興味なさげなのはゼカライン=ニッケル(ka0266)。
「鍛冶屋的にも、ドワーフ的にもあんまりひかれねぇな」
では何故ここにやってきたのか。
それは『未知』。
新たな技術を用いた試作兵器はまさに未知の塊と言えよう。
「機械の事は良くわからないけど、射撃武器としてのコメントはしていきたいな」
「銃は門外漢だが、射撃って観点では近いものだ。俺の意見も役に立つかもしれない」
スーズリー・アイアンアックス(ka1687)やパープル(ka1067)は普段から射撃武器を使用しているようだ。であれば、有用な意見を言えるかも……
「かも、じゃない。役に立ってもらわなきゃ困るぜ? 金出してんのはこっちなんだからな」
「確かに、その通りだな……それでは、よろしく頼む」
クロウの言葉に苦笑いしながらパープルは応えた。
●
「それじゃ、早速撃ってみてくれ」
「分かった。それじゃとりあえず……」
そう言ってゼカラインがキャノンを構え引き金を引く。
「……おい、何もでねぇぞ」
不発。キャノンは何も反応していない。
「撃つにはただ引き金を引くだけじゃだめだ。マテリアルを蓄積媒体……まぁ弾丸の代わりだと思ってくれればいい。それに一度溜めてやる必要がある。魔法や機導術を使うのと要領は同じだからやってみてくれ」
言われるがままゼカラインは機導術を使うのと同じような感覚で撃つ。
「うぉっ!?」
強い光が集束し、次の瞬間機導砲の数倍とも思えるエネルギーの奔流が砲口から放出される。
エネルギーはそのまま的……のやや上をそのまま通過していく。射撃の腕前も必要なようだ。
「な、何でだ!? 俺の愛が足りないって言うのか!?」
一方グオルムール。同じ手順を取ったようだがこちらは不発。
「あ~集束に失敗したな。魔法だって失敗することもあるだろ? それと同じだ」
「……まったく、とんだじゃじゃ馬だぜ。だが優しくエスコートしてやんよ!」
グオルムールは数度射撃を試み、1発2発ぐらいは撃つことが出来たが、それ以上の回数失敗してしまう。
「また不発? なかなか撃てないなぁ」
スーズリーも苦戦しているようだ。引き金を引いてもなかなか肝心の威力が見れない。
「重たっ!?」
問題点はまだある。重量だ。
「こ、これを持って移動するのは大変だね……襲われたらひとたまりも無さそう」
レホスは足元をふらつかせながらも一射。こちらは一発で成功。狙いもある程度正確なようで上手く的を撃ち抜く。
「……撃ち抜くって言うか消し飛ばしてるね」
「凄い威力ね……次、2mずつ下がりながら撃ってもらえる?」
ロベリアの指示の下、少しずつ距離を離し試射を行っていく。そんな中……
「ところで、これは魔導アーマーへの転用を考えているんだよな?」
「一応な。ただ魔導アーマー以外にも色々応用は出来ると考えてる」
「それなら、何かに乗った状態での射撃テストをしてみてぇ」
「僕もバイクとの併用で支障が無いか調べてみたいな」
デスドクロ、リクからそう言う要望が出る。それを聞いたクロウは少し悩むような表情を見せる。
「何か問題があるのか?」
「いや……まぁとにかくやってみるか。構わないぜ」
というわけで、戦馬に跨ったデスドクロが早速キャノンを構え撃つ。
「うぉぉぉ!?」
地面に足を付いていない状態だと態勢が不安定になる……だけでなく反動も大きい。それに耐えきることが出来ず、デスドクロは馬の背から転げ落ちる。
「……この俺を地べたに這いつくばらせるとは……なかなか侮れない兵器じゃねぇか」
バイクを利用したリクの方も同様、撃った瞬間体が仰け反り衝撃で後ろに飛び、バイクの方が的に当たる始末だ。
「この感じだと騎乗状態での使用は控えた方がいいわね」
この後リクはジェットブーツを使用した状態での射撃も試してみた。ただやはり浮いている状態での射撃では精度も悪く、衝撃をもろに受け吹っ飛ぶことになってしまう。実際に運用では意図的にジェットブーツ使用中に撃とうとしなければ移動自体は一瞬で済むため問題にはならないだろうが。
その様子を見ながらパープルは少し思案する。各自の射撃における威力には多少差異がみられたからだ。
「威力を銃本体に依存するようには出来ないのか?」
パープルが質問への答えはイエス。ただ実行する気は今のところないそうだ。
「まずキャノンの威力差は一定時間内で溜められたエネルギーの差で、魔法や機導術の扱いが上手い方が溜めやすいということに起因している」
この威力を一定にするには、一定まで貯めないと使用できないようにすることになる。だが、そうすると人によって今度は貯める時間に影響が出てくる。
「万人が使えるという観点だとかなり低い蓄積量にする必要がある。そうすると一射辺りの威力が大幅に落ちる」
「それは兵器のコンセプトにそぐわない、と……」
「そういうことだ」
それから、しばらく試射は続き……
「とりあえずこんなもんでいいんじゃねぇか?」
ゼカラインが手にいくつかのメモを持って言う。
グオルムールから頼まれていた一発毎の排熱周り、反動、弾の交換機構。見るべきことは多々あった。
加えてロベリアの方では有効射程や射撃命中誤差を計測していた。騎乗状態での試射も行えたしデータは十分だろう。
「じゃあ、データは一回俺の方で預かる……会議室の方に移動してくれ」
キャノンをそのまま持ち帰ろうとするグオルムールを宥めて、一同は会議室に向かった。
●
「さて、それで実際使ってもらったわけだ。データなどは後で纏めてからになるんだが……とりあえず意見があれば言って貰いてぇな」
そう言われて口を開いたのはパープル。まずは重量に関する話だ。
「この重さは致命的だ。重さは取り回しのしやすさにつながり、命中精度にもつながる」
「確かに、リアブルではボンバード射石砲、カルヴァリン砲、カノン砲等々……重量との戦いだったと聞くよ」
パープルに続くようにスーズリーが言う。現状確かにこのキャノンは重すぎる。ゼカラインがその後に続く。
「鋼自体を軽くできねぇか? アルミにできる場所はアルミにするとか、もしくは材料を削り出しにしたらまだ軽くなるかもしれねぇな」
「ふむ……検討はしてみるが内部機関との兼ね合いもある。難しいだろうな」
「後は反動だな。騎乗状態で後ろに吹っ飛ぶ反動……これをどうにか……」
「確かに、実際撃ってみたけど、反動が結構強いよね。やっぱりバイポッドみたいなのを付けて安定させた方がいいんじゃないかな」
レホスはそのまま自身の意見を述べていく。
「あと、一度の放出時間を長めにできれば……撃ちながら銃口をスライドさせることができるかなって」
現状は放出時間も一瞬。それを長くすることで、連射が出来ないながらもアサルトライフル等と同様の弾幕を張るような効果が得られるのではないか、ということらしい。
ただこれは現状難しい。銃身への負担という意味でも。
「銃本体への直列機構を設けて複数を繋げるようにはできないかな?」
複数のエネルギーキャノンをつないで威力を上げられるようにしようというリクからの提案だ。
「これもさっきのレホスの話と同じで現状難しいな。まずは武器としての安定性を向上させないと話にならねぇ」
「後は連射だな。排熱で苦しむならその熱くなったモンを弾として排出するとかどうよ」
このゼカラインの提案は即却下された。排熱の必要性があるのは例の蓄積媒体だが、一応精密機器に当たる。使い捨てには出来ない。
「ただ、連射性に関しては確かに考える必要はあるな。外部冷却装置を取り付けるとか……」
「いやいや、そこは自動で弾を装填する弾帯ってのはどうだ?」
クロウとゼカラインに割り込んできたのはグオルムールだ。
「飛び散る薬莢、次々と装填される弾丸……やっぱ薬莢はロマンだろ!」
「まぁ薬莢が出るような武器じゃないんだが……しかし自動装填は一考の余地があるかもしれねぇな」
「魔導アーマーに転用するときにはそう言った再装填行動を自動化するプログラムを組んでおくといいかもしれなわね」
試射を行っている際の各自がとった再装填の動きを記録していたロベリアはそう続けた。
「アーマーに転用することを考えるなら、いっそ内蔵指揮にしちゃうのも手だよね」
「それは俺も考えてた。まぁこの辺りは魔導アーマーの開発がもう少し本格化してこねぇと進められねぇかもな……」
「ところで、あー……」
ここでやや詰まりながら、ゼカラインが言った。ある意味この武器にとって最大の問題点に関してだ。
「なんていうか、どっちかになんねぇか?」
この武器はまず魔法と同様の手順で集束を成功させ、そこから射撃と同様の手順で目標を狙う必要がある。
「エネルギーの充填もそうだけどよ、やり辛くてたまんねぇ。それに一般人にも使えるようにすんだろ? 覚醒者じゃないなら魔法も上手く使えねぇと思うわ」
「正論だな。ただ言うまでもないがこれをこのまま一般人向けに量産するわけじゃねぇ。ま、今後の課題ではあるがな」
量産時にはもう少し簡易的なものにする必要があるのは確かだろう。
「そうだ……言うまでも無ぇことだが」
ここでデスドクロが口を開いた。
「カラーリングは黒。妖しく輝くブラックボディこそが武器としての価値をワンランク上げるってもんよ」
「……まぁ実際手に入ったら自分で色を変えてみてくれ」
量産するとなるとウェルクマイスター社の力を借りることになる。あそこのモットーの一つは地味だったはずなので、色は多分地味になるだろう。
●
「後はそうだな……何か今後開発してほしいものとかあれば言ってみてくれ」
「ふむ……欲しいものか。むしろ俺様級の存在になると貰う側ってよりは与える側だからな」
そう言いつつもデスドクロは少し思案した後……
「強いてあげるなら今回のエネルギーキャノン。こいつをもうちょい改良して近接武器として使えるようにしたら面白れぇかもな」
重いというデメリットも裏を返せばそのウェイトを活かした高威力が期待できる鈍器たり得る。ということらしい。
「近接武器はいいね。ここはエネルギーを固定化させて大剣化させるなんてどうだろう。後は、これを展開と維持に転用したエネルギーシールドなんていいと思うな」
デスドクロの案に賛同するリク。さらにキャノンと連動した補助装置や、エネルギー射出を転用した移動用ロケットなどを提案した。
「鍛冶屋的に考えると、もうちょい小型化したらそのマテリアルエネルギー、鎧とかにつけられねぇか?」
エネルギーの蓄積を外部で行いそれを鎧の駆動などに回すとか、そういうことだろうか。
(この手の技術はリーゼロッテやブリジッタの方が専門だろうからそっちに相談してみるか)
「はぁぁい! はぁぁぁい! 逆に集束率を下げて拡散法とか良いと思いまぁぁぁす!」
大声と共に手を挙げるのはグオルムール。聞かれる前に意見を述べ始める。
「迫る大群、ちょーピンチ! そこで手元の機構を操作。拡散エネルギーで一掃する……浪漫だろ?」
「あ、僕が知ってるアニメにも同じようなのがあったよ! 歩兵の前に出る魔導アーマーが初手で広範囲にビームを撒き散らせることが出来たら良さそう」
「威力低減に関しては射程を抑えることで何とかできると思うわ」
グオルムールにレホスやロベリアも賛同した。
「案としては面白いな」
「……ところで、最新の物を試作するのもいいけど……」
そう切り出したのはスーズリーだ。
「旧式の技術で実用性の高い砲が欲しい」
「ふむ、さっき上げてたリアルブルーの兵器みたいなものか?」
「そう。石や鉄みたいな、普通の質量弾でいい。射角計算して撃つ部分は同じことだろうし」
「……言っていることはわからんではない。が、それは軍に求めるレベルの話で錬金術師組合的に求めることではないな」
旧来の技術が不要なわけではない。が、クロウにとって兵器開発は技術開発の一環だ。旧来のものを再現するようなものよりは新しい技術を利用することが優先される。そういうことだ。
「そうだ、エネルギーキャノンの話とは少し外れるが、ギミックアローは作れないか?」
「ギミックアロー?」
パープルが言うには、弓自体は色々作られているが、矢自体を加工したものが無いという話だ。
「矢じりに火薬を仕込んで着弾時に爆発する矢とか、羽部分に工夫し軌道を安定させるとか……」
「ふむ……まぁ考えてみても良いぜ」
ただ、矢となるとさすがにクロウも門外漢だ。誰か詳しい人間に話を聞く必要があるだろう。
「そうそう。これを」
そう言うとロベリアは持ってきていた兵器資料やアニメを出す。
「この辺りも今後の開発に参考にしてちょうだい。特にアイゼンハンダーが使っていた武器はいくつか流用できると思うわ」
この他、ロベリアからは組合向けとしてビデオカメラの開発はどうかという意見が出された。
こうしてクロウの試作兵器に関する意見聴取は終了した。
クロウの方で想定していないやり方での試用や各自の意見で、エネルギーキャノンの開発は確実に前進した。依頼としては大成功と言っていい。ただ、その結果が反映されるのはまだ先のことになりそうだ。
「というわけで、これが試作型のエネルギーキャノンだ」
クロウに集められたハンターたちは、早速演習場に連れてこられた。そこにはすでに準備してあったのだろう複数の試作型エネルギーキャノンが置いてあった。
「おおお……! これが……これがエネルギーキャノン……! 向こうの世界のフィクションで見たことあるよ、こういうの!」
「そりゃそうだ。そのフィクションを参考にして作ってんだからな」
レホス・エテルノ・リベルター(ka0498)はまじまじとキャノンを見る。
「ほう、これが……まぁこのデスドクロ様クラスになると指を鳴らすだけで地平線の彼方まで超高エネルギーの波動を放つことが可能だが……」
嘘か真か、そんなことを呟きながらキャノンを眺めているのはデスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013)だ。
「……成程成程、凡百の兵にとっては有用な武器となるのは間違いねぇ」
「おぉ、おぉぉ! 出た、そう、こういうの欲しかった! 魔法とか色々あるけどRBならやっぱこうメカメカしくなきゃ!」
キヅカ・リク(ka0038)はエネルギーキャノンを見てかなりテンションが上がっているようだ。
それはロベリア・李(ka4206)やグオルムール・クロム(ka0285)も同様だ。
「こういう依頼を待ってたのよ! 実用とロマンを兼ね備えてこその試作品。どんなものか楽しみだわ!」
「試作! 大型銃器! エネルギーキャノン! っかぁ、分かってるじゃねぇか!」
グオルムールに至っては息を荒くし、銃身に頬ずりまでしている。熱の入れようが凄い。
「……エネルギーキャノンねぇ」
対してどこか興味なさげなのはゼカライン=ニッケル(ka0266)。
「鍛冶屋的にも、ドワーフ的にもあんまりひかれねぇな」
では何故ここにやってきたのか。
それは『未知』。
新たな技術を用いた試作兵器はまさに未知の塊と言えよう。
「機械の事は良くわからないけど、射撃武器としてのコメントはしていきたいな」
「銃は門外漢だが、射撃って観点では近いものだ。俺の意見も役に立つかもしれない」
スーズリー・アイアンアックス(ka1687)やパープル(ka1067)は普段から射撃武器を使用しているようだ。であれば、有用な意見を言えるかも……
「かも、じゃない。役に立ってもらわなきゃ困るぜ? 金出してんのはこっちなんだからな」
「確かに、その通りだな……それでは、よろしく頼む」
クロウの言葉に苦笑いしながらパープルは応えた。
●
「それじゃ、早速撃ってみてくれ」
「分かった。それじゃとりあえず……」
そう言ってゼカラインがキャノンを構え引き金を引く。
「……おい、何もでねぇぞ」
不発。キャノンは何も反応していない。
「撃つにはただ引き金を引くだけじゃだめだ。マテリアルを蓄積媒体……まぁ弾丸の代わりだと思ってくれればいい。それに一度溜めてやる必要がある。魔法や機導術を使うのと要領は同じだからやってみてくれ」
言われるがままゼカラインは機導術を使うのと同じような感覚で撃つ。
「うぉっ!?」
強い光が集束し、次の瞬間機導砲の数倍とも思えるエネルギーの奔流が砲口から放出される。
エネルギーはそのまま的……のやや上をそのまま通過していく。射撃の腕前も必要なようだ。
「な、何でだ!? 俺の愛が足りないって言うのか!?」
一方グオルムール。同じ手順を取ったようだがこちらは不発。
「あ~集束に失敗したな。魔法だって失敗することもあるだろ? それと同じだ」
「……まったく、とんだじゃじゃ馬だぜ。だが優しくエスコートしてやんよ!」
グオルムールは数度射撃を試み、1発2発ぐらいは撃つことが出来たが、それ以上の回数失敗してしまう。
「また不発? なかなか撃てないなぁ」
スーズリーも苦戦しているようだ。引き金を引いてもなかなか肝心の威力が見れない。
「重たっ!?」
問題点はまだある。重量だ。
「こ、これを持って移動するのは大変だね……襲われたらひとたまりも無さそう」
レホスは足元をふらつかせながらも一射。こちらは一発で成功。狙いもある程度正確なようで上手く的を撃ち抜く。
「……撃ち抜くって言うか消し飛ばしてるね」
「凄い威力ね……次、2mずつ下がりながら撃ってもらえる?」
ロベリアの指示の下、少しずつ距離を離し試射を行っていく。そんな中……
「ところで、これは魔導アーマーへの転用を考えているんだよな?」
「一応な。ただ魔導アーマー以外にも色々応用は出来ると考えてる」
「それなら、何かに乗った状態での射撃テストをしてみてぇ」
「僕もバイクとの併用で支障が無いか調べてみたいな」
デスドクロ、リクからそう言う要望が出る。それを聞いたクロウは少し悩むような表情を見せる。
「何か問題があるのか?」
「いや……まぁとにかくやってみるか。構わないぜ」
というわけで、戦馬に跨ったデスドクロが早速キャノンを構え撃つ。
「うぉぉぉ!?」
地面に足を付いていない状態だと態勢が不安定になる……だけでなく反動も大きい。それに耐えきることが出来ず、デスドクロは馬の背から転げ落ちる。
「……この俺を地べたに這いつくばらせるとは……なかなか侮れない兵器じゃねぇか」
バイクを利用したリクの方も同様、撃った瞬間体が仰け反り衝撃で後ろに飛び、バイクの方が的に当たる始末だ。
「この感じだと騎乗状態での使用は控えた方がいいわね」
この後リクはジェットブーツを使用した状態での射撃も試してみた。ただやはり浮いている状態での射撃では精度も悪く、衝撃をもろに受け吹っ飛ぶことになってしまう。実際に運用では意図的にジェットブーツ使用中に撃とうとしなければ移動自体は一瞬で済むため問題にはならないだろうが。
その様子を見ながらパープルは少し思案する。各自の射撃における威力には多少差異がみられたからだ。
「威力を銃本体に依存するようには出来ないのか?」
パープルが質問への答えはイエス。ただ実行する気は今のところないそうだ。
「まずキャノンの威力差は一定時間内で溜められたエネルギーの差で、魔法や機導術の扱いが上手い方が溜めやすいということに起因している」
この威力を一定にするには、一定まで貯めないと使用できないようにすることになる。だが、そうすると人によって今度は貯める時間に影響が出てくる。
「万人が使えるという観点だとかなり低い蓄積量にする必要がある。そうすると一射辺りの威力が大幅に落ちる」
「それは兵器のコンセプトにそぐわない、と……」
「そういうことだ」
それから、しばらく試射は続き……
「とりあえずこんなもんでいいんじゃねぇか?」
ゼカラインが手にいくつかのメモを持って言う。
グオルムールから頼まれていた一発毎の排熱周り、反動、弾の交換機構。見るべきことは多々あった。
加えてロベリアの方では有効射程や射撃命中誤差を計測していた。騎乗状態での試射も行えたしデータは十分だろう。
「じゃあ、データは一回俺の方で預かる……会議室の方に移動してくれ」
キャノンをそのまま持ち帰ろうとするグオルムールを宥めて、一同は会議室に向かった。
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「さて、それで実際使ってもらったわけだ。データなどは後で纏めてからになるんだが……とりあえず意見があれば言って貰いてぇな」
そう言われて口を開いたのはパープル。まずは重量に関する話だ。
「この重さは致命的だ。重さは取り回しのしやすさにつながり、命中精度にもつながる」
「確かに、リアブルではボンバード射石砲、カルヴァリン砲、カノン砲等々……重量との戦いだったと聞くよ」
パープルに続くようにスーズリーが言う。現状確かにこのキャノンは重すぎる。ゼカラインがその後に続く。
「鋼自体を軽くできねぇか? アルミにできる場所はアルミにするとか、もしくは材料を削り出しにしたらまだ軽くなるかもしれねぇな」
「ふむ……検討はしてみるが内部機関との兼ね合いもある。難しいだろうな」
「後は反動だな。騎乗状態で後ろに吹っ飛ぶ反動……これをどうにか……」
「確かに、実際撃ってみたけど、反動が結構強いよね。やっぱりバイポッドみたいなのを付けて安定させた方がいいんじゃないかな」
レホスはそのまま自身の意見を述べていく。
「あと、一度の放出時間を長めにできれば……撃ちながら銃口をスライドさせることができるかなって」
現状は放出時間も一瞬。それを長くすることで、連射が出来ないながらもアサルトライフル等と同様の弾幕を張るような効果が得られるのではないか、ということらしい。
ただこれは現状難しい。銃身への負担という意味でも。
「銃本体への直列機構を設けて複数を繋げるようにはできないかな?」
複数のエネルギーキャノンをつないで威力を上げられるようにしようというリクからの提案だ。
「これもさっきのレホスの話と同じで現状難しいな。まずは武器としての安定性を向上させないと話にならねぇ」
「後は連射だな。排熱で苦しむならその熱くなったモンを弾として排出するとかどうよ」
このゼカラインの提案は即却下された。排熱の必要性があるのは例の蓄積媒体だが、一応精密機器に当たる。使い捨てには出来ない。
「ただ、連射性に関しては確かに考える必要はあるな。外部冷却装置を取り付けるとか……」
「いやいや、そこは自動で弾を装填する弾帯ってのはどうだ?」
クロウとゼカラインに割り込んできたのはグオルムールだ。
「飛び散る薬莢、次々と装填される弾丸……やっぱ薬莢はロマンだろ!」
「まぁ薬莢が出るような武器じゃないんだが……しかし自動装填は一考の余地があるかもしれねぇな」
「魔導アーマーに転用するときにはそう言った再装填行動を自動化するプログラムを組んでおくといいかもしれなわね」
試射を行っている際の各自がとった再装填の動きを記録していたロベリアはそう続けた。
「アーマーに転用することを考えるなら、いっそ内蔵指揮にしちゃうのも手だよね」
「それは俺も考えてた。まぁこの辺りは魔導アーマーの開発がもう少し本格化してこねぇと進められねぇかもな……」
「ところで、あー……」
ここでやや詰まりながら、ゼカラインが言った。ある意味この武器にとって最大の問題点に関してだ。
「なんていうか、どっちかになんねぇか?」
この武器はまず魔法と同様の手順で集束を成功させ、そこから射撃と同様の手順で目標を狙う必要がある。
「エネルギーの充填もそうだけどよ、やり辛くてたまんねぇ。それに一般人にも使えるようにすんだろ? 覚醒者じゃないなら魔法も上手く使えねぇと思うわ」
「正論だな。ただ言うまでもないがこれをこのまま一般人向けに量産するわけじゃねぇ。ま、今後の課題ではあるがな」
量産時にはもう少し簡易的なものにする必要があるのは確かだろう。
「そうだ……言うまでも無ぇことだが」
ここでデスドクロが口を開いた。
「カラーリングは黒。妖しく輝くブラックボディこそが武器としての価値をワンランク上げるってもんよ」
「……まぁ実際手に入ったら自分で色を変えてみてくれ」
量産するとなるとウェルクマイスター社の力を借りることになる。あそこのモットーの一つは地味だったはずなので、色は多分地味になるだろう。
●
「後はそうだな……何か今後開発してほしいものとかあれば言ってみてくれ」
「ふむ……欲しいものか。むしろ俺様級の存在になると貰う側ってよりは与える側だからな」
そう言いつつもデスドクロは少し思案した後……
「強いてあげるなら今回のエネルギーキャノン。こいつをもうちょい改良して近接武器として使えるようにしたら面白れぇかもな」
重いというデメリットも裏を返せばそのウェイトを活かした高威力が期待できる鈍器たり得る。ということらしい。
「近接武器はいいね。ここはエネルギーを固定化させて大剣化させるなんてどうだろう。後は、これを展開と維持に転用したエネルギーシールドなんていいと思うな」
デスドクロの案に賛同するリク。さらにキャノンと連動した補助装置や、エネルギー射出を転用した移動用ロケットなどを提案した。
「鍛冶屋的に考えると、もうちょい小型化したらそのマテリアルエネルギー、鎧とかにつけられねぇか?」
エネルギーの蓄積を外部で行いそれを鎧の駆動などに回すとか、そういうことだろうか。
(この手の技術はリーゼロッテやブリジッタの方が専門だろうからそっちに相談してみるか)
「はぁぁい! はぁぁぁい! 逆に集束率を下げて拡散法とか良いと思いまぁぁぁす!」
大声と共に手を挙げるのはグオルムール。聞かれる前に意見を述べ始める。
「迫る大群、ちょーピンチ! そこで手元の機構を操作。拡散エネルギーで一掃する……浪漫だろ?」
「あ、僕が知ってるアニメにも同じようなのがあったよ! 歩兵の前に出る魔導アーマーが初手で広範囲にビームを撒き散らせることが出来たら良さそう」
「威力低減に関しては射程を抑えることで何とかできると思うわ」
グオルムールにレホスやロベリアも賛同した。
「案としては面白いな」
「……ところで、最新の物を試作するのもいいけど……」
そう切り出したのはスーズリーだ。
「旧式の技術で実用性の高い砲が欲しい」
「ふむ、さっき上げてたリアルブルーの兵器みたいなものか?」
「そう。石や鉄みたいな、普通の質量弾でいい。射角計算して撃つ部分は同じことだろうし」
「……言っていることはわからんではない。が、それは軍に求めるレベルの話で錬金術師組合的に求めることではないな」
旧来の技術が不要なわけではない。が、クロウにとって兵器開発は技術開発の一環だ。旧来のものを再現するようなものよりは新しい技術を利用することが優先される。そういうことだ。
「そうだ、エネルギーキャノンの話とは少し外れるが、ギミックアローは作れないか?」
「ギミックアロー?」
パープルが言うには、弓自体は色々作られているが、矢自体を加工したものが無いという話だ。
「矢じりに火薬を仕込んで着弾時に爆発する矢とか、羽部分に工夫し軌道を安定させるとか……」
「ふむ……まぁ考えてみても良いぜ」
ただ、矢となるとさすがにクロウも門外漢だ。誰か詳しい人間に話を聞く必要があるだろう。
「そうそう。これを」
そう言うとロベリアは持ってきていた兵器資料やアニメを出す。
「この辺りも今後の開発に参考にしてちょうだい。特にアイゼンハンダーが使っていた武器はいくつか流用できると思うわ」
この他、ロベリアからは組合向けとしてビデオカメラの開発はどうかという意見が出された。
こうしてクロウの試作兵器に関する意見聴取は終了した。
クロウの方で想定していないやり方での試用や各自の意見で、エネルギーキャノンの開発は確実に前進した。依頼としては大成功と言っていい。ただ、その結果が反映されるのはまだ先のことになりそうだ。
依頼結果
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錬金術師組合・会議室 ロベリア・李(ka4206) 人間(リアルブルー)|38才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/07/27 00:20:29 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/07/23 22:57:21 |