• 聖呪

【聖呪】ゴブリンナイトVS非武装馬車

マスター:馬車猪

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
4日
締切
2015/07/27 19:00
完成日
2015/08/02 22:41

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 荷馬車が限界近い速度を出している。
 舗装はひび割れていて車輪が頻繁に跳ね、左右の林から伸びた緑でただでさえ狭い道がさらに狭い。
「司祭様! 本当にこの道進んでいいんですか?」
 熟練の御者が大声を出す。
「何かありましたへぶっ」
 イコニア・カーナボン(kz0040)が舌を噛んで涙目になる。
 御者に近づいて会話しようにも、荷台には医薬品が限界まで積まれているので身動きできない。
「こんな地形で歪虚に襲われたら大事故になりますよ! 司祭様の癒しの業に不安があるわけじゃぁないですけど……って何か言われました?」
 少女司祭は口を押さえて苦しんでいる。
 目的地はゴブリンに狙われた街であり、援軍という立場なのでヒールを無駄遣いできない。
 ぷるぷる震えながら痛み止めを飲み込み、舌に染みる痛みで悶え方が激しくなる。
「御者の旦那、護衛は俺等に任せな」
 乗用馬を駆る王国兵が親指を立てる。
 危なげなく馬車と速度をあわせる乗馬技術と、揺れる馬上から遠くまで見通す目を兼ね備えた覚醒者だ。
「ゴブリンの10や20敵じゃねぇからよ。それより街についたらいい女がいる店に案内してくれよ」
「お前の稼ぎじゃ店追い出されるだろ」
 突っ込みが入りうるせぇと怒鳴り返し皆一緒になって大声で笑う。
 危険な場面でも冗談を言える根性を頼もしく感じながら、イコニアは気合を入れてなんとか口を開いた。
「だいじょーぶです。騎乗生物に乗ったまま森を突っ切れる精鋭で無い限りゴブリンの展開は間に合いませんっ」
 前方40メートルの道の右側から、草の汁で緑に染まった騎兵が現れた。
 御者と司祭が反応する前に、王国兵達が一斉に矢を放っていた。
 超小型恐竜が軽やかにステップを踏む。
 棒立ちなら確実に当たっていたはずの矢のうち3本が外れ、残る半数の矢が薄い皮膚を射貫かれその場に倒れる。
「畜生2匹、3、もっといやがる!」
 器用に着地したゴブリンの後方十数メートルで緑が揺れ、新たなゴブリンナイトが道の上に現れた。
 御者は馬車がぎりぎりの急減速を行う。
 イコニアは必死に荷物にしがみついて転落を回避し、王国兵達は二の矢で超小型恐竜をもう1体潰す。
「我等ノ動キヲ読ンデイタカ! 我隊ハ奴等ヲ足止メスル、他隊ハコノママ進ンデ人間ドモノ柔イ腹ヲ食イヤブレ!」
 使い込まれた山刀を手に、重武装の王国兵達へ恐れる様子もなく躍り掛かる。
 こうなると騎乗生物の質が重要だ。ハンターと比べると練度も主との絆も足りない馬が怯えて数歩退き、あるいは主を無視して暴れ出す。
「野郎共、司祭様の前で無様を晒すんじゃねぇ!」
 投げ出された兵をヒールの光が照らしている。
「応!」
 威勢良く応える兵達だが厳しい表情だ。
 道の右側が揺れが続いている。1カ所2カ所ではなくほとんど全体が揺れている。
 ゴブリンナイトが続々と現れ、一部は殿に合流し、残りは左の緑の中に入ろうとしていた。
「こいつぁ」
 輸送部隊第二陣にいるはずのハンターが救援に来るまで、生き残ることも難しいかもしれない。


●戦場地図
林林林林林林林
森森森森森林林
ゴ兵輸道林林森
林林林道道道ユ
林林林林林林林
林林林林林林林

上の地図は1文字縦横約10メートルです。
西(左)にずっと行くと街があります。
北(上)にずっと行くとゴブリンの主力に遭遇してしまうかも。
ハンターの初期位置は、道のどれかかユの位置です。プレイングで指定しない場合はユの位置になります。

森:ゴブリンがいるかもしれない林です。蔓や小さな岩などの障害物が多数有り、バイクや馬を使うより徒歩の方が速く移動できるかもしれません。
林:戦闘開始時点でゴブリンがいない林です。他の条件は上の森と同じです。
道:森の中に、幅4メートル弱の道が延びています。少しだけ蛇行しています。
輸:馬車が2台停まっています。他は上の道と同じです。馬車の脇を通り抜けるときは、徒歩なら非常に容易、馬なら少し速度を落とさないと馬車に衝突する可能性があります。
ユ:ハンターが護衛を担当していた馬車が2台います。積み荷は王国兵が護衛する馬車と同じです。
ゴ:徒歩のゴブリン2体が東のマスに到達する寸前です。目視できるだけで3体のゴブリンナイトが道の上にいます。
兵:森の中の道に、兵士6名が展開しています。

リプレイ本文

●平和だった森
 よく手入れされた森は湿気と木陰で風をよく冷やし、快適な風を街道上の一行に届けた。
 荷台の上でシャリファ・アスナン(ka2938)が身を起こす。
 生命に溢れた緑が左右から迫っている。歪虚の気配はどこにもない。
「居るとしたら森の中だね。念のため見てくるよ」
 腰のナイフの位置を微修正。脇に置いていた小型弓を手に持ち、ほぼ最高速の馬車から森に向かって飛び込んだ。
 それから半秒経過するより早く、先行した馬車2両の方向から激しい戦いの音が聞こえてくる。
「増援は必要ですか」
 マリア・ベルンシュタイン(ka0482)は愛馬を荷台に近づけながらトランシーバー越しに先行班に問いかける。
 ゴブリン、襲撃、そっちは無事かという言葉が切れ切れに届く。
「安全を確保次第合流します」
 道が蛇行しているので先行した馬車2両は見えない。
 道の先からは石畳の上での戦闘音が聞こえ、左右の緑からは小動物や虫の音ばかりが耳に届く。
 積み荷は少量でも効果のある医薬品、つまり戦場近くの街や村では黄金並の価値を持つ品なので一時放置して合流を急ぐ訳もいかない。
 これ以上、誰も死なせない。傷つけさせない。
 マリアは体力と精神力を使い尽くす勢いで、左右からの襲撃を警戒していた。
「最低3、騎兵」
 森に飛び込んだはずのシャリファの声が聞こえた。
 マリアが声の方向に向き直ると、ゴブリンと超小型恐竜の主従が2、否3、マリア達輸送隊に気づいて目を丸くしていた。
 御者役のセリス・アルマーズ(ka1079)が、馬を宥めつつ形の良い眉を寄せる。
 なんだか大変なことになったわねー、と考えたのは一瞬だけ。
 十分な戦闘訓練を積んだ馬は数秒で完全な落ち着きを取り戻す。
「エクラの加護ありしこの輸送部隊を狙うとは、運の無いゴブリンどもね」
 御者台からゴブリンナイト達を見下ろす。
「聖導士ッ! 人間ノ本隊ト合流スル前ニ叩ケバ」
「板金鎧ノ軍馬持チナンテ護衛ガイルモノカ! 罠ダ、長ノ為時間ヲ稼ゲ!」
 ナイト3体は極短時間で方針を決めた。
 己の守りを捨て、ハンター達の足である馬目がけて捨て身の突きを繰り出す。
「させるものですか」
 一時茫然として時間を無駄に使ったナイトや馬の面倒を見る必要があったセリスより、予め備えていたマリアの方が当然早く動くことができる。
 初手はシャドウブリット。使い手と反比例して濃い闇が小さな固まりになって投擲され、2台目の馬車の馬を狙おうとしたナイトを脇から打ち据える。
 二の手は極々短距離の移動。
 距離にして2メートルに満たない動きで、セリスの馬を狙っていたナイトの進路上に割り込んだ。
「駄馬如デッ」
 下帯に山刀1本装備のナイトが、限りなく理想に近い動きで突撃をしかける。
 しかし十分な速度を得る前にマリアと接触することになる。
「馬車も、仲間も」
 貝殻製の小型盾がゴブリンの刃を受け止める。
 マリアから湧き出すマテリアルが光輝く羽衣の如く広がる。
「傷つけることは許しません……!」
 花弁の形をした薄緑色の光が深さと濃さを増し、闇と区別のつかない色となってゴブリンを襲う。
「ヲヲッ」
 大きさを除けば肉食恐竜そのものの生き物が跳ねて回避する。
 ゴブリンは目を見開き間近に迫った死を真正面から見据え、マリアにせめて一太刀浴びせようと山刀を振るう。
 しかし彼の動きは全てハンターの掌の上。
 マリア以外に対して無防備になったナイトの横から、範囲攻撃としては破格の威力の光が叩きつけられた。
 体内から大きな骨が折れる音が連続して響き、ナイトとその愛騎は何もなせずに命を失った。
「まとめて天罰を下してあげるわ! ほらほら遠慮しないでかかってきなさい!」
 セリスが大きく胸を張る。生き残りのナイト2人は憎悪に目を光らせ奥歯をかみ砕きながら、2人がかりでも1人も倒せそうにない聖導士を避け逃げることで時間を稼ごうと駆けだした。
「これ、本当にゴブリン?」
 セリスの態度から挑発が消えた。
 容赦のない、微かな敬意を含んだ光の衝撃が広がる。
 真正面から向き合っているならともかく背後から迫る範囲攻撃を回避できる訳がない。ナイト達は背中から背骨まで痛めつけられ、1体が死に最後の1体が死力を振り絞り駆け続ける。
「ナッ?」
 ゴブリンとラプトルが、あっさりと抜き去り道をふさいで立ちふさがったマリアとその馬を見上げる。
「悪かったわ。貴方達相手に二度と油断しない」
 ナイトは不屈の精神で森に飛び込むが、セリスから伸びるホーリーライトにラプトル共々貫かれ絶命した。

●ゴブリンナイト対ハンターとおまけ(司祭込み)
「ひぃっ」
 非覚醒者の御者が御者台の上にへたり込み。
「ふにゅぇ!」
 司祭が御者を庇おうと荷台から飛び降りる。
 ちょうどそのとき、道の側の緑が揺れた。
 茂みからラプトルが頭を出し、そのまま前進して背中にいるナイトも姿を現す。
 数は2体だ。馬車との遭遇に驚きはしても戸惑いはせず、その場で最も有力であると同時に絶好の獲物である聖導士を左右から挟んで一気に仕留めようとする。
「にゃっ!」
 即座に振り返りメイスを振り下ろすがあっさり躱される。
 イコニアが奥歯を噛みしめて痛みに備える。舌の痛みには耐えられず涙も出る。
 ナイトは油断せず無駄口ひとつ叩かず、よく手入れされ禍々しく光る刃を振りかぶった。
「いけるな」
 後方十数メートルで榊 兵庫(ka0010)が愛馬に指示を出す。
 目指す先は、森と馬車に挟まれた狭くも厳しい戦場。
 戦馬は一蹴りごとに加速を行う。重量物と接触すれば足を骨折しかねない速度で手前の1両の脇を通過、さらにして加速して戦死数秒前のイコニアの間近まで到達する。
「司祭殿、受け身」
 冷静に声をかけ、渾身の力を込めて朱漆の槍を振り下ろす。
 自身と愛馬と動きをこれ以上なく正確に把握して、穂先に最も威力が載った瞬間にゴブリンナイトの頭頂部に到着させる。
「ナ」
 髪も皮も骨まで砕く。
 無残な切り口を残して喉元から抜けても速度はあまり衰えず、未だ主の絶命に気づかぬラプトルの首を半ばまで断ちようやく止まる。
 ラプトルから力が抜け、ナイトの頭と体と一緒に倒れてイコニアを押し倒した。
「はぶっ」
 乙女に相応しくない悲鳴だが元気そうだ。
 残るナイトは兵庫には勝てず騎馬の差で逃げ切ることもできないと判断。瞬時に己の命を切り捨てイコニアの首だけを狙い踏みつけようとした。
 聞き慣れぬ音が3つ連続する。
 銃口から飛翔した銃弾が3つ、馬車の荷台と戦馬の丁度中間を飛び、攻撃途中で体勢の崩れたラプトルにめり込んだ。
 メイド風装束の上からレザーアーマーで固めた少女が、銃口の向きをほんの少しだけ修正する。
 細身の篠原 蓮火(ka3894)がアサルトライフルを構えると、銃ではなく小型の砲を装備しているようにも見えた。
 現実の威力も砲に近く、ラプトルを穿った弾丸は内臓をミックスジュースにして弾痕からこぼしていた。その上に乗るゴブリンも体勢を崩し、イコニアに一撃入れる前に落馬する。
「こっちは任せぇ! 兵士はん! ええか、ゴブリンに当たらんでも乗ってるのが倒れれば十分や! とにかく撃って……」
 兵庫の動きに不自然さが混じる。
 転落ゴブリンに止めを刺しつつ、蓮火の近くの森に鋭い視線を向けていた。
 蓮火は馬車を挟んだ反対側のことを一旦頭から追い出した。
 大きく息を吸い、銃口を森に向けながら約2メートル後退。
 蓮火の後退と同じタイミングで複数のラプトルが森から飛び出す。
「見え見えや!」
 後退と同時に射撃を再開。
 弾2つが左端のラプトル、1発がその背のゴブリンに当たる。
「俺ニ構ウナ! 前ニ進メ!」
 血塗れナイトが蓮火を狙うが1歩届かない。
 その1歩の距離があれば銃弾を浴びせるには十分な距離になる。蓮火は確実に止めを刺し、次に右隣のラプトルを狙う。
「面倒なっ」
 ラプトルのみを潰して足止めというのも難しい。時間をかけて狙えば可能かもしれないがその時間があれば2、3体ゴブリンごと仕留めることが可能だからだ。
「うぇっ、何体おんのん?」
 さらに左から現れたゴブリンを兵庫が防ぎ、もっと右から現れたゴブリンナイトは森には入らず街道沿いに東に向かう。
 道が曲がりくねっているので一定以上遠ざかると銃では狙えない。
 蓮火は足を止め、狙いが乱れる限界まで頭を下げてゴブリンナイトの斬撃を回避し、木々の影に消える直前の背を狙った。
「ちっ」
 血が弾ける。重傷以上致命傷未満の手応えしかない。
「ガッ」
 ラプトルごとナイトが弾き飛ばされ街道の上に転がった。
「クロちゃんはかりものなんですよ」
 マリアン・ベヘーリト(ka3683)が登場する。
 ここまで彼女を運んできたゴースロン種の馬は、擦り傷を負ってはいるが元気そうだ。マリアンは下馬して念のためヒールを使って完全な治療を行い、青緑色の刃を持つグレートソードを構えた。
「妙ナ構エヲ」
 軽装かつ飛び道具を持たないマリアンを包囲の穴と認識したのだろう。
 健在なナイトが、マリアンの脇を走り抜けようと駆け出した。
「なめられたものですね」
 マリアンの姿勢が変わる。
 ゴブリンの目には特に意味がない動きに見えていたが、実際には合理的に筋と骨と神経を運用する手法だ。
 体の下丹田、骨盤中心の運用で力と速度を引き出し。
 技の中丹田、肩甲骨から胴体の繊細な運用で敵に当てるための精度を引き出し。
 心の上丹田、感覚と精神を力と技に調和させ。
 現実の剣より伸ばすつもりで、至近距離から剣を振るう。
「ヅッ」
 腕を切り裂かれて悲鳴を堪えるゴブリン。腹を割かれてもなお主を信じ前に進み続けるラプトル。
 だがそれ以上前には進めない。後続の馬車が周囲のゴブリンを排除してこちらに向かって来たのだ。
「物理的な限界より上の力は出せませんね」
 近づいて、切る。スキルは使っていないとはいえ、マテリアルを込めた分なんとなく威力がある気もした。
 ナイトは身をよじって直撃だけは避け、左肩を半ば切り落とされる代わりに命を保つ。
『同胞ッ! コチラハ塞ガレ』
 飛来した矢に喉を射貫かれ、ゴブリンの精鋭が地に倒れた。

●森中の静かな戦い
 シャリファは素早く移動を行い、自身の気配を森に溶け込ませた上で次の矢を取り出した。
 街道とは逆に森は静かだ。
 しかし、人間よりも明らかに大きなものの気配が複数感じられる。
 気配は動揺している。街道から同胞の断末魔が連続しているので当然だろう。
 音をたてずに二の矢を放つ。
 緑の濃い葉や枝から垂れる蔓の合間を通り抜け、森の中で戦場の迂回を目指していたラプトルの背に突き刺さる。
『ドコカラ……』
 ナイトが気づいたときにはシャリファは移動をほぼ終えていた。
 小さな掌が背後からゴブリンの口を塞ぎ、鋭く研がれた刃を古傷に覆われた急所に突き込んだ。
 ゴブリンが一度強ばって、脱力。流れ作業でラプトルにも止めを刺し、両者をゆっくりと地面に横たえる。
 彼女は刃についた血を拭き取り次の獲物を探しはじめた。
 馬車列の先頭でも激しい戦いが行われている。
 鍛えに鍛えてランスとしても使える槍で打たれ、体格の良いラプトルとナイトが2メートル吹き飛ばされる。
 主従共に口から血を吐いてはいるが足取りはしっかりしている。
「いい腕してるぜ」
 岩井崎 旭(ka0234)に追撃する余裕はない。
 これが決闘なら1対10でも勝つ。だが現実には旭が荷物も兵士も司祭も守る必要があり、ゴブリンにはこの場にとどまる理由が無い。
「大将!」
 背後からの声を認識した瞬間、ゴースロンは十数メートルを瞬く間に移動し、下馬し積み荷に近づいていたゴブリンを旭の槍が叩いて潰す。
 兵士達が旭達に指示されたとおりに矢を放つ。
 落馬時に負傷したとはいえ腐っても覚醒者だ。数本が当たって精鋭ゴブリンの命を奪う。
「コノ、匂イ」
 馬車の近くで倒れたゴブリンが、断末魔を気合いでねじ伏せ同胞に伝えようとするが命がもたなかった。
「大将! この調子で攻めましょうや!」
 兵士がわざと明るく振る舞う。旭もゴブリンへの挑発を兼ねて応えるものの、内心は晴れやかではない。
「軍じゃねーか」
 敵の質が予想以上に高い。耳に宿った動物霊を通し聞こえてくる音は、各国の精鋭部隊並みのそれに近い。
「森の中じゃ速い方かもしれねーが、道まで出てくんのが遅いぜ! ゴブリンッ!!」
 旭を足止めせんと迫るナイト3騎を軽々抑えることはできる。が、短時間で粉砕するような奇跡じみた技はない。
「南側に2つ! ……頼むぜ」
 旭は、森にいる筈のハンターを信じるしかなかった。

●宴のおわり
「残る観客はおふたり!」
 妖艶であると同時に可憐な道化が宙を舞う。
 太い枝がしなり、ワイヤーがするりと解けてリズリエル・ュリウス(ka0233)を勢いよく上に飛ばす。
「お代は命1つでおつり無し」
 太い枝に軽やかに着地。
 色鮮やかな衣装が大木の上で揺れた。
「馬鹿ニシオッテ!」
「ヨセ、勤メヲ……ドコニイッタ!?」
 枝の上にあるのは王冠を乗せた兎の似顔絵だけ。
 たん、たんと複数の幹を蹴る音が聞こえ、途切れた。
「ばぁっ」
 枝に足をかけてぶらさがる。
 美しい体の線を惜しげも無く見せつけるが、何より目立つのは両手で構えたオートMURAMASAだ。
「演目は首狩り兎のカーニバルっ」
 回転する刃の音がゴブリンの精神を痛めつける。
 心底楽しげな笑い声と、肉を断ち血がしぶく音が入り混じって森の中に広がる。
 既に銃弾を受けたゴブリンとラプトルに、耐えられる訳がなかった。
「ヨクモ弟ヲッ!」
 激情が理性を吹き飛ばす。
 ゴブリンが血走った目でリズリエルを凝視し、愛騎と共に差し違えの覚悟で迫る。
 リズリエルは客に対する態度で愛想を振りまきつつショットアンカーを使用。
 頑丈な幹にワイヤーを固定し、足を離して見事な空中ブランコを披露する。
「森の木がどうこうなんぞと、足場が多いと言うんだよなっ!」
 速度が0になる前にワイヤーの固定を解除。複数の木の幹を蹴り、地面に着地せずに言葉を投げつける。
「ほらほらっ、おいしい兎はここだぞっ」
 ゴブリンは怒りのあまりリズリエルしか見えていない。
 だから、既に自身を除いてゴブリンナイト隊が全滅したことも、リズリエルの合図に気づいて街道からこちらに向けられた銃口にも気づけなかった。
 乾いた音が響く。
 腹にそれぞれ命中弾を受けたゴブリンとナイトが、恨み言すら残せず死んだ。
 リズリエルが恭しくゴブリン達に一礼する。
「そっちはどない? おかわりきそう?」
「アンコールは必要ないみたいだぞ」
 リズリエル笑顔で応えて何かを回収する。
 ゴブリンの死体が街道から退けられ輸送隊が移動を再開するまで、10分もかからなかった。

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参加者一覧

  • 亜竜殺し
    榊 兵庫(ka0010
    人間(蒼)|26才|男性|闘狩人
  • うさぎのどうけし
    リズリエル・ュリウス(ka0233
    人間(紅)|16才|女性|疾影士
  • 戦地を駆ける鳥人間
    岩井崎 旭(ka0234
    人間(蒼)|20才|男性|霊闘士
  • 《思いやる》心の聖女
    マリア・ベルンシュタイン(ka0482
    人間(紅)|20才|女性|聖導士
  • 歪虚滅ぶべし
    セリス・アルマーズ(ka1079
    人間(紅)|20才|女性|聖導士
  • 森の戦士
    シャリファ・アスナン(ka2938
    人間(紅)|15才|女性|疾影士
  • うさぎ聖導士
    マリアン・ベヘーリト(ka3683
    ドワーフ|20才|女性|聖導士
  • 銃撃侍女
    篠原 蓮火(ka3894
    人間(蒼)|15才|女性|猟撃士

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/07/25 11:25:26
アイコン そうだんしましょー
セリス・アルマーズ(ka1079
人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2015/07/27 18:07:58