夏だ! 水着だ! 村コンだ!

マスター:sagitta

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~10人
サポート
0~10人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
7日
締切
2015/08/01 15:00
完成日
2015/08/10 20:34

このシナリオは1日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 ぎらぎらと輝く太陽が、地上を照りつけていた。
 同盟領内に存在する農耕推進地域ジェオルジの一角であるこの村も、もちろん例外ではない。
「ふむ……暑い!」
 あたりまえのことを偉そうに宣言してみせたのは、ジェオルジ出身の農家の一人息子、マリオ30歳、独身。
 暑い! と宣言してのけたわりには、彼の表情は涼やかだった。それもそのはず、彼の肩から下は澄んだ水の中に浸されていたからだ。
「夏が暑ければ暑いほど、湖での水浴びは天国だな。しかもこの湖はジェオルジのド田舎にあるだけ、こんなにいい景色と澄んだ水に恵まれているにもかかわらず、めったに人の来ない穴場だしな!」
 彼の言うとおり、見渡す限りで彼の他にいるのは、近所に住んでいるのだろう老夫婦が一組だけだ。足を水に浸しながらひなたぼっこをしている白髪のふたりは、仲むつまじく、ほほえましい。
「……惜しむらくは、穴場すぎて、若いおなごの姿がいっさいないことか……できれば都会の人々にでもこの天国を教えてあげたいのだが……ぶくぶく」
 口のそばまで水に浸してぶくぶくと泡をはきつつ、マリオが独りごちる。二人できゃっきゃうふふするのに忙しい老夫婦は、そんなマリオの姿など目に入っていないようだ。
「ご老人とはいえ……カップルとは恨めしい、いや、うらやましい……ん? 待てよ? カップル、若い男女、水着……そうだ!」
 ザバッと水しぶきを飛ばしつつ、マリオはやおら頭を上げた。そして、湖岸に向かって猛スピードで泳ぎはじめる。
「はっはっ、この前の村長祭のときに盛況に終わった『出会いイベント』……その第二回を今こそ開くべきではないのかっ! しかもっ! 今回はっ! はっはっ」
 全力で泳ぎながら独り言を叫ぶマリオ。なんと器用なのか。
 すぐに岸にたどり着いたマリオは、よく日に焼けた上半身を晒した水着姿で、がばっと立ち上がり、叫んだ。
「水着で村コンだぁぁ!」


というわけで、張り出された告知ポスターの内容は、以下の通り。

『美しい田舎の湖で、運命の出会いを果たそう! パート2!
出会い――とは、恋人、に限らず、友人、仲間、パートナーと、広い意味で考えるべし。
あるいは、すでに出会っている人同士がさらに仲を深めるために利用するもよし。

今回は、熱い暑い夏を乗り切るべく、美しい湖での水着パーティーを開催します!

あなたの参加を、お待ちしています!』

リプレイ本文


 照りつける太陽。そして、美しく透き通った湖。
 ひとり湖岸に立っているのは、セリア・シャルリエ(ka4666)。
 セクシーな黒のビキニを身にまとって立つその姿は周囲の人々の目を釘付けにしている。特に、その視線が今にも水着からこぼれ落ちてしまいそうな胸元に集中しているのは、むべなるかな。――みんなのおっぱい、此処に有り。求めよ、さらば与えられん。
「――しかし」
 セリアが、不意に小さくつぶやいた。
(本当にそれが世界を救うおっぱいなのか。高嶺に咲く気高い存在であるべきではないか……)
 しばしの迷い。
 不意に何かを思いついたように歩き出し、女子更衣室として使われている天幕の中に入っていった。
 数分後。
 あらわれたセリアは、白いワンピースの水着に身を包んでいた。先ほどのビキニとくらべると、胸元の破壊力はだいぶおさえられている。周囲からはどこからともなく(おもに男性の)ため息が聞こえてきたとか来ないとか。

「ちょっ、ダメです、やめましょうよそんな、あっ、そこはっ、ひゃあっ」
 妙に色っぽい声を上げているのは、スカートタイプのワンピースを着て、湖岸に敷かれたシートにうつぶせになっているエリス・カルディコット(ka2572)だ。
「あらエリス、日に焼けすぎるのはよくないそうですから、しっかりと日焼け止めを塗らないとダメですよ」
 そう言って艶めかしい手つきでエリスの肌に薬を塗っているのは、仮面をつけた美女。エリスの親友のクルス・ルナ・フレア(ka4723)だ。
「ぼ、僕、自分で塗りますからぁ!」
「あら、遠慮しなくていいんですよ、だって私達、女の子同士でしょう?」
 クルスがエリスの耳元に唇を寄せ、クスリ、と笑いながら言う。途端に、抵抗していたエリスの体から力が抜け、耳が真っ赤になった。
(……ああ、天国のお母様、お元気でしょうか、僕は今、女装をして水着まで着ております……)
 放心状態のエリスが、心の中でつぶやく。
 どこからどう見ても美しい少女の姿のエリスだが――実は彼女、いや、彼が男性であることを、旧知の仲のクルスだけが知っていた。
「水着、よくお似合いですよ、エリス。今日は思いっきり楽しんでしまいましょう、ね」
 クルスがエリスに向かって片目をつむってみせる。もちろん、エリスのそのかわいらしい水着は、彼女が選んだものだ。
「く、クルスこそ……」
 言いかえそうとクルスの方に目を向けたエリスは、ごくり、と喉を鳴らして言葉を止めた。その頬が真っ赤に染まっている。クルスの色っぽい肉体を惜しげもなくさらすビキニ姿。それもどうやらサイズを間違えたらしく、小さすぎる水着の布から今にも肌がはみ出しそうな勢いだ。
「エリス、次は私に日焼け止めを塗ってくださいね♪」
 クルスの言葉に、エリスの顔はさらに赤みを増したのだった。

「灯ちゃん、どうどう? この間買いに行ってきたビキニだよ!」
 砂浜でくるり、とまわって見せたのは花厳 刹那(ka3984)だ。佐井 灯(ka4758)に向けてにっこりと笑いかける。二人とも大胆なビキニの水着姿で、仲睦まじくはしゃぎ合う姿は周囲の人の注目の的になっている。
「刹那ちゃん……すごく似合ってる。素敵だよ……」
「ありがとう! そういう灯ちゃんもすっごく似合ってるよ!」
「……え、似合ってる……かな? ちょっと大胆すぎるかなって思ったけど……刹那ちゃんにそう言ってもらえると、嬉しい、な。去年まで来てたのが合わなくなっちゃって……」
「えっ、灯ちゃんも? 私もー。毎年買い直す羽目になっちゃってさ……」
 刹那が自分の胸のあたりをながめながら意味深なため息をついてみせると、近くで耳をそばだてていたジェオルジ出身の男性が思わず顔を赤らめ、気付いた刹那がいたずらっぽくウィンクを飛ばしてみせる。なかなかの小悪魔っぷりだが、今は目の前の灯のことに夢中のようだ。
「あ~、水冷たくて気持ちいい! 灯ちゃんもおいでよ! ほら、来ないなら水かけちゃうぞ~! とりゃあ!」
「わ、やったな! もう、ボクだって負けないんだからー!」
 いつの間にか湖のなかに入り、きらきらと水しぶきをきらめかせながら歓声を上げてはしゃぐ二人。
 いやぁ、眼福眼福。

「まずは準備運動をしなくてはだな! 啓一君、ぜひ一緒に体をほぐそう!」
 デニムのワンピース水着に身を包み、るんるん気分で言ったのは、クリスティン・ガフ(ka1090)。普段は泣く子も黙る豪腕剣士だが、大好きな人といちゃいちゃできる機会とあって、すっかり浮かれている。
「ああ、そうだな、準備運動はきっちり行わねば」
 春日 啓一(ka1621)が応じる。ちなみに、もちろん啓一も水着姿で、日の下に晒された上半身はたくましく引き締まっている。
「こんな感じでどうかな? 啓一君、柔らかくなった?」
 クリスがストレッチをする啓一の背中をぐいぐいと押して体をほぐす――と同時に、ここぞとばかりに体を密着させる。
「あ、ああ――」
 応える啓一は、顔を真っ赤にして目を泳がせている。背中越しに伝わる柔らかい感触――いつもはサラシでかくされているが、これはまた結構――しかも今日は、間に挟まる布の数が少なく、肌に直接伝わるぬくもりとやわらかさ――。
「こ、交代だ、クリス」
「え、もう?」
 耐えきれずに啓一が立ち上がると、クリスが不満げに口をとがらせる。が、すぐに素直に背を向けて、啓一に身を預けた。
「あっ、んんっ――」
 ときどき変な声が出そうになるのを必死で我慢しつつストレッチを続けるクリスに、啓一も心臓が飛び跳ねそうになるのをおさえながら黙って背中を押し続ける。
「さて、こんなもので十分だな。どうやら向こうで、何かのゲームがはじまるみたいだ。行ってみようぜ」
 そう言って啓一が立ち上がり、クリスに手を差し出す。クリスはうれしそうに微笑み、その手を握った。

「……これが、村コン、か」
 一人、湖岸の砂浜を歩きながらつぶやいたのはオウカ・レンヴォルト(ka0301)だ。あちこちでカップルやパートナー同士が盛り上がる中、一人で参加しているオウカは、少し緊張気味だ。
 こちらの世界に来てからは少し改善されたとは言え、無愛想でがっちりとした体型から、故郷では他人から怖がられることが多かった彼は、人とつきあうこと、人に好かれることに苦手意識を持ってしまっている。
「……せめて、友達とかできたらいい、な」
 そう思いながら湖水をなんとはなしにながめていると、ふと彼に近づいてくる人影があった。同じくシングル参加のイレーヌ(ka1372)だ。黒のモノキニを着たイレーヌは、ときどき裸足の足先を水の中で遊ばせながら、涼しげな表情で砂浜を歩いている。
「よかったら、少し話さないか?」
「ん……よろしくな」
 自分の外見を見ても少しも臆せず、ごく自然に話しかけてきたイレーヌを見て、オウカの胸に温かいものが広がった。

「こ、こんなかっこで大丈夫でしょうか……ビ、ビ、ビキニなんて、私の体ごときでは恐れ多いです……」
 緊張した面持ちで、きょろきょろと辺りを見回しているのは葵・ミコシバ(ka4010)だ。普段は巫女として着物に身を包んでいる葵だが、今日は、慣れない水着姿だ。
 胸元にフリルのついた淡い桃色のかわいらしいビキニは、彼女によく似合っている。色っぽいというよりは、かわいらしくて庇護欲をかき立てる姿だ。
「あれっ。あそこに見えるは、オウカ先輩!? なんと、先輩も参加されていたんですね~。今回は先輩もわたしの世話などされたくないでしょうから、遠くから見つめるだけにいたしましょう……どうやら女性と一緒のようですし……」
 持ち前の謙虚さを発揮しまくって、一人結論づける葵。そんな葵に、声をかける者があった。
「もしもし、そこのかわいらしいお嬢さん!」
「はっ、はいっ? わ、私のことですか?」
 誰かに声をかけられるとはつゆほども思っていなかった葵は、うわずった声を上げて、慌てて顔を上げた。いつの間にか彼女の目の前に立っていたのは、このイベントの主催者、マリオだった。
「ええ、あなたのことです、葵さん! 桃色の水着がとてもお似合いでまるで天使のようだ!」
 両手をがばっと広げるオーバーアクションで褒め称えるマリオに、緊張していた葵も思わず破顔する。
「マリオさん、このたびは、ステキなイベントをありがとうございます」
「いえいえ。こちらこそ、葵さんをはじめとするステキなみなさんに参加していただけて、本当に、本当にうれしいです!!」
 ぐっと拳を握りしめてマリオが言う。若干暑苦しいが、素直でまっすぐな人間のようだ。
「ところで葵さん――」
「は、はい?」
 突然真剣な表情になったマリオに、葵が首を傾げる。
「びーちばれー、をしましょう!」
「……ビーチバレー、ですか?」
「そうです! リアルブルーでさかんだと言われるスポーツ! 水着の男女が入り乱れる競技! このイベントにぴったりではありませんかっ!」
 そう言ってマリオがごそごそと荷物の中から取りだしたのは、動物の皮に空気を入れてつくったと思われる、球だ。確かに、リアルブルーで見たビーチバレー用のボールと似ていなくもない。
 それを見て、葵の勝負事が好きな心に火がついた。
「いいですね、やりたいです!」
「では、みんなを呼んできましょう!」

 砂浜にロープでつくったネットが張られ、二人がペアになってチームをつくる。
 イレーヌとオウカ、クリスと啓一、エリスとクルス、刹那と灯、そして葵とセリアがそれぞれペアになった。マリオは審判役だ。
「オウカ、レシーブは私に任せろ、アタックは頼む!」
「ああ、イレーヌ。まかせとけっ!」
 すばしっこい後衛のイレーヌと、長身でたくましいオウカのナイスコンビ。
「クリスっ! 行くぞ!」
「ああ! 啓一君、任せてっ」
 アイコンタクトですべて伝わる、クリスと啓一の絶妙なコンビネーション。
「大丈夫です、葵。ここは私が制します」
「セリアさん、頼りになるっ!」
 セリアの根拠のない自身と、葵の全幅の信頼による謎の迫力。
「クルス……あ……ご、ごめんなさいっ! わざとではないのですけどっ!」
「あぁ……っ! い、いえ、エリス、気にしなくても大丈夫です、よっ」
 エリスが勢い余ってクルスの胸を触ってしまうという、美味しいハプニングもありつつ。
「灯ちゃん……きゃー、そんなとこっ……」
「刹那ちゃ……わわっ、あっ……」
 刹那と灯に至っては試合そっちのけでいちゃいちゃ……もとい、ハプニングだらけという始末。
 ビーチバレーを通して、ペア同士の友情は深まり、相手チームとの交流も弾む。もちろん、真剣勝負もあちこちで繰り広げられ、全試合が終了したころには、全員、へとへとだった。


 激戦を終え、お互いを労うべく、バーベキューが催された。
「はい、啓一君、あーん」
 楽しそうに肉を食べさせ合っているのはクリスと啓一だ。啓一も、いやな顔せずに応じている。
「こっちも~! エリス、アイスを食べさせてあげますね……あっ」
 クルスがエリスにアイスを食べさせようとして、誤ってアイスを落としてしまった。溶けたアイスがエリスの水着の胸元に落ちる。
「もうっ、クルスったら……お返しっ!」
「ひゃうんっ、え、エリス、食べもので遊んではダメですぅっ!」
 クルスの口元や胸元にも溶けたアイスが広がり、きゃっきゃと騒ぎ合う二人。もはや色々アウトな感じ。

 一方セリアと葵は、喧噪から少し離れたところで、静かに皿に載せた肉をほおばっていた。
「よさそうな人は、見つかりましたか?」
 セリアが、葵に尋ねている。
「うーん、そうですねぇ……」
「あなたには、思い人がいるんですよね」
 セリアが言うと、葵がぐっと言葉に詰まった。
「思い人を諦めてしまって、本当によいのですか? 後悔しませんか?」
「……わかりません。今はとりあえず、脇に置いておこうと思ってるんですけど」
「私には無責任なことは言えません。でも……素直になってみたら、いいのかもしれないです」
 セリアが葵の瞳をまっすぐに見つめて、そう言った。相変わらずぶっきらぼうな物言いだが、優しさと気遣いを感じさせる言葉。
「……ありがとうございます。今は、お友達作りに励みますね!」
「私は、もう、友達のつもりですけど」
 目をそらしてぼそっとセリアがつぶやいた言葉に、葵はぱっ、と目を輝かせた。
「調子はどうだ?」
 声がすると同時に不意におしりをつつかれて、セリアはびっくりして振り返った。そこにはイレーヌの、いたずらっぽい顔。
「そちらは楽しくやっているみたいですね、イレーヌ」
 皮肉な響きは少しもなく、純粋にうれしそうに、セリアが言う。
「セリア好みの相手がいないか、一緒に探しにいこう」
 イレーヌがこれまた屈託のない表情で言う。お互いに世話を焼きたがりの、いい友人同士のようだ。
「私もご一緒してもいいですか?」
 葵が尋ねると、イレーヌが笑顔でうなずいた。
「ああ、もちろんだ」


 そして夜。昼間とは打って変わって、静かな湖畔。
 簡易式の椅子と机が設けられ、それぞれのペアが思い思いにグラスを傾ける。

「……難しい依頼ばかりだと心がすさんで人間ではなくなってしまう!……だから」
 クリスがそう言って、啓一に身を寄せる。啓一は黙って腕を伸ばし、クリスを引き寄せた。
「傭兵だったとき、同業人を謀る、屠るは茶飯事だった。今でも他人が喋る肉袋にしか見えないときがある……かつての家族か、それ以上に純粋に愛を抱いているのは啓一君、あなただけだ。故に……あなたの前では、あなたの女で、いたい」
 クリスの真摯な言葉に、啓一は、目をそらさなかった。しっかりと目を見つめ、クリスの耳に囁きを返す。
「この今、ってやつが、もっと続くといいんだがな。まあ続くように頑張ろう」

『かんぱ~い』
 湖の水音に耳をかたむけながら、チン、とグラスを鳴らしたのはエリスとクルスだ。
「クルス、今日一日、つきあってくれてありがとう。その、すごく、楽しかったです」
「こちらこそ、エリスのかわいい水着姿を見られてうれしかったですよ」
「そ、そんなっ……僕、より、クルスの方がずっと、その……かわいかった、よっ……」
 恥ずかしそうに言ったエリスの言葉に、クルスの表情がうれしそうにゆるむ。
 闇夜に紛れた二人の顔がひどく赤かったのは、お酒のせいばかりではないだろう。

「……ん、よい酒、だ」
 オウカは、星空をながめながらジョッキを傾けていた。かたわらには、すっかりと打ち解けたイレーヌの姿。
「オウカ、酒は強い方か?」
 自分もジョッキの中のビールをあおりながら、イレーヌが尋ねる。
「ん? ……ああ、それなりに」
「では、私と勝負しないか? 私と飲み比べで勝ったら、何でも一日つきあってやろう……ん、どうした?」
 イレーヌのいたずらっぽい笑みに思わず見とれていたことに気付いて、オウカはあわてて我に返った。そして、手にしたジョッキをかかげてみせる。
「その勝負、受けて立とう」

「えへ、今日は楽しかったね」
 ジュースの入ったグラスを手にして、刹那が灯に話しかける。湖畔の砂浜に直接腰を下ろして、おたがいの肩を寄せ合うようにしている。
(……なぜだかどきどきしてきちゃう。女の子同士なのに……。でも、悪い気はしない、かな)
 刹那の声を聞きながら、灯はそんなことを思う。むき出しの肩から伝わるぬくもりが、心地よい。
「……今日は、ありがとう」
 刹那が、灯の耳元に唇を寄せて囁いた。
「……ボクの方こそ、ありがとね、刹那ちゃん。一日一緒に遊べて、楽しかった」

「えっと、これ、ボクが作ったお菓子なんですけど、お口に合いますでしょうかっ……」
 そう言ってセリアにおずおずと皿を差し出したのは、ジェオルジ出身のルゥ君、15歳。
 イレーヌと葵の協力の元、バーベキューのときに探したのはセリアの求めている『素直な人』だ。『小さくても何か夢を抱いている人』なら尚良し、とのことで、探し当てたのが彼、というわけだ。
 ルゥは村の菓子屋で奉公する素朴な好青年だ。彼の夢は、いつか自分の店を持ち、立派な菓子職人になること。今は、リアルブルーのお菓子に興味を持っているらしい。
「あの、イレーヌさんに、セリアさんが好きなものを聞いて、つくってみたんです」
 皿の上にあるのは、セリアの大好物、ミルクプリンだ。しかも、ちゃんとミントの葉を添えてある。高鳴る胸を押さえて、セリアはスプーンを握りしめた。震えそうになる手を押さえつつ、ミルクプリンを口に運ぶ。
「うっ」
「……せ、セリアさん??」
「うまい!」
 ほっとした表情のルゥに見向きもせず、セリアは夢中でミルクプリンを食べはじめた。少し離れたところでふたりのやりとりを見ていた葵が、小さく歓声を上げる。
「……美味しいものをつくる人に、悪人はいません」
 あっという間に平らげて一息ついたセリアが、ぽつり、と言う。
「あなたは、ミルクプリンで世界を救ってください。私は――」
 セリアは、おもむろにルゥに向けて手を伸ばした。そして――ルゥの顔を自分の胸に押しつけるようにして、いきなり抱きしめた。
「おっぱいで世界を、救います」
 ルゥは、セリアの腕の中で――しあわせそうな表情で気を失っていた。

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MVP一覧

  • ミルクプリンちゃん
    セリア・シャルリエka4666

重体一覧

参加者一覧

  • 和なる剣舞
    オウカ・レンヴォルト(ka0301
    人間(蒼)|26才|男性|機導師
  • 天に届く刃
    クリスティン・ガフ(ka1090
    人間(紅)|19才|女性|闘狩人
  • 白嶺の慧眼
    イレーヌ(ka1372
    ドワーフ|10才|女性|聖導士
  • 破れず破り
    春日 啓一(ka1621
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人
  • ピロクテテスの弓
    ニコラス・ディズレーリ(ka2572
    人間(紅)|21才|男性|猟撃士
  • 紅花瞬刃
    花厳 刹那(ka3984
    人間(蒼)|16才|女性|疾影士

  • 葵・ミコシバ(ka4010
    人間(蒼)|14才|女性|霊闘士
  • ミルクプリンちゃん
    セリア・シャルリエ(ka4666
    人間(蒼)|16才|女性|疾影士
  • エリスとの絆
    レヴェリー・ルナルクス(ka4723
    人間(紅)|24才|女性|舞刀士
  • 陽輪乱舞
    佐井 灯(ka4758
    人間(蒼)|17才|女性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
ニコラス・ディズレーリ(ka2572
人間(クリムゾンウェスト)|21才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2015/07/31 21:54:34
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/07/28 02:50:52