ゲスト
(ka0000)
街に現れた吸血鬼……?
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 6~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/08/06 22:00
- 完成日
- 2015/08/10 00:39
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●血を吸う歪虚
容赦なく太陽が照り付けてくる季節。
ここ、グラズヘイム王国にも、夏がやってきた。
さんさんと降りそそぐ陽光。王国内のとある小さな街においても、その陽射しの強さは人々を悩ましていた。
人々は暑さを耐え凌ぐ為、この街を分断するように流れる川で涼をとる。
緩やかな川の流れが、暑さを少しでも和らげてくれるなら。そう思い、水辺で語らいながら過ごす者、あるいは、実際に水浴びをする者もいる。
暑い中でも、水のせせらぎによって、さわやかな一時を過ごす街の住民達。
そんな中だ。奴らが現れたのは。
ゆらり、ゆらりと浮かんでいたその連中の大きさは、人間の赤ん坊くらいあるだろうか。そいつらはぶんぶんと飛び回り、川辺にいた人々に飛びかかり、片っ端から血を吸い取っていく。
不気味なその生物に、人々は悲鳴を上げて逃げ惑うのだった。
その次の日のこと。
そいつらの討伐願いがハンターズソサエティに出されていた。
「とある街に、人の血を吸うという歪虚(ヴォイド)が現れました」
受付の女性による説明に、ハンター達は戦慄する。まさか、暴食……アンデッドの仕業かとざわつき始めた。
それで、敵の正体はと聞かれた、カウンターの女性から返ってきた言葉は……。
「蚊ですよ、蚊」
……は、はあ。
そんな溜息交じりの声がハンター達から漏れる。
「ですから、蚊型の雑魔が出たんです」
ともあれ、雑魔なので討伐をと、女性は依頼の説明を行う。
グラズヘイム王国にある小さな街。街を二分するよう縦断している川、中央の橋付近に雑魔は現れる。
昨日の雑魔出現を受け、人々が川や橋に寄り付く様子はない。橋付近にハンターが自ら近づけば、人の血を吸いたい雑魔はすぐに現れるだろう。
出現する蚊型雑魔は4体。血を吸う他、羽音で攻撃を行う。飛びかかって突撃してくることもあるので注意したい。
通常生活において、蚊は鬱陶しい存在だが、雑魔とあらば一層面倒な存在になってしまう。蚊であり、雑魔であるこの敵に、目一杯日頃の恨みをぶつけるのもいいだろう。
「それでは、よろしくお願いいたしますね」
ハンター達を見送る受付の女性は、営業スマイルでにっこりと笑っていた。
容赦なく太陽が照り付けてくる季節。
ここ、グラズヘイム王国にも、夏がやってきた。
さんさんと降りそそぐ陽光。王国内のとある小さな街においても、その陽射しの強さは人々を悩ましていた。
人々は暑さを耐え凌ぐ為、この街を分断するように流れる川で涼をとる。
緩やかな川の流れが、暑さを少しでも和らげてくれるなら。そう思い、水辺で語らいながら過ごす者、あるいは、実際に水浴びをする者もいる。
暑い中でも、水のせせらぎによって、さわやかな一時を過ごす街の住民達。
そんな中だ。奴らが現れたのは。
ゆらり、ゆらりと浮かんでいたその連中の大きさは、人間の赤ん坊くらいあるだろうか。そいつらはぶんぶんと飛び回り、川辺にいた人々に飛びかかり、片っ端から血を吸い取っていく。
不気味なその生物に、人々は悲鳴を上げて逃げ惑うのだった。
その次の日のこと。
そいつらの討伐願いがハンターズソサエティに出されていた。
「とある街に、人の血を吸うという歪虚(ヴォイド)が現れました」
受付の女性による説明に、ハンター達は戦慄する。まさか、暴食……アンデッドの仕業かとざわつき始めた。
それで、敵の正体はと聞かれた、カウンターの女性から返ってきた言葉は……。
「蚊ですよ、蚊」
……は、はあ。
そんな溜息交じりの声がハンター達から漏れる。
「ですから、蚊型の雑魔が出たんです」
ともあれ、雑魔なので討伐をと、女性は依頼の説明を行う。
グラズヘイム王国にある小さな街。街を二分するよう縦断している川、中央の橋付近に雑魔は現れる。
昨日の雑魔出現を受け、人々が川や橋に寄り付く様子はない。橋付近にハンターが自ら近づけば、人の血を吸いたい雑魔はすぐに現れるだろう。
出現する蚊型雑魔は4体。血を吸う他、羽音で攻撃を行う。飛びかかって突撃してくることもあるので注意したい。
通常生活において、蚊は鬱陶しい存在だが、雑魔とあらば一層面倒な存在になってしまう。蚊であり、雑魔であるこの敵に、目一杯日頃の恨みをぶつけるのもいいだろう。
「それでは、よろしくお願いいたしますね」
ハンター達を見送る受付の女性は、営業スマイルでにっこりと笑っていた。
リプレイ本文
●暑い……(汗)
「だぁぁー。クソあちぃな、おい」
「まさか、こんな猛暑日に雑魔が出るなんてな~……」
流れ出る汗を止められず、岩井崎 旭(ka0234)、篠崎 宗也(ka4210)は思わず悲鳴を上げる。
太陽は容赦なく、全ての物に強力な陽射しを降り注かせていたのだ。
「蚊型の雑魔ですか。ただでさえ暑いというのに、鬱陶しいのが出てきましたね」
「この季節では、蚊は大量発生して厄介な相手ですね」
エルバッハ・リオン(ka2434)が溜息を吐くのを見て、ラススヴェート(ka5325)が蚊の繁殖能力に懸念を示した。今回の相手は湧き続けると大変な相手になりうる。
「蚊、蚊か。うん、蚊、ね。……蚊という種族に対しての恨みを果たす時がついに来たか!」
「普通の蚊にさえ毎年迷惑してるってのに、まさか雑魔になって出てくるとは……上等だこの野郎、一匹残らず駆逐してやるぜ!」
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)、柊 真司(ka0705)はある意味で恨みを募らせた敵に、自身の力の全てをぶつけようと考えている。
その雑魔は、街を寸断する川をつなぐ橋に現れると言う。それもあって、住民達は橋に近寄ることもできず、困っているのだそうだ。
「生活に多大な影響が出てしまうな。被害を出さず、早く解決できるよう頑張りたい」
「早く解決しないと、川を境に街の人の交流が、分断されてしまいますよね。……と言っても、待つしか出来ない訳ですけれど」
ザレム・アズール(ka0878)は実害が出る前に対処をと考えているが、敵は不定期に現れる。天央 観智(ka0896)が言うように敵の出現を待つしかない。この暑い中で忍耐を求められるという、なんとも精神的に堪える依頼なのだ。
「犠牲者が出たらもっとヤバいよな! 覚悟しろよ、鬱陶しい害虫め!」
「では、害虫退治と参りましょう」
宗也とラススヴェートのテンションの差は年齢的なものだろう。ただ、雑魔を討伐する意気込みは同じだ。
「終わったら、この川に飛び込んでやる! 絶対に、絶対だ!!」
旭はうっとうしすぎる蚊をいち早く絶滅させ、川で涼をとりたいと考えている。その為の水着の準備も万全だ。
「さっさと出てきて倒されやがれ、蚊のヴォイド野郎め!!」
叫ぶ旭。こうして、一行は雑魔退治に当たる。
ただ、繰り返しにはなるが、敵がいつ出現するのか分からないのが現状。
「持久戦になるかもだから、体力温存の為にも二班に分かれて交代で見張らないか?」
そこで、ザレムが提案を行う。メンバー達はその提案の通り、ハンターを4人ずつ2班に分ける。
その際、アルトも色々と提案した。班交代のタイミング、また、雑魔が現れた際に合流するタイミングなど、合いの手を入れる真司を含め、すり合わせる。とはいえ、いつ終わるとも分からぬ依頼に臨むハンター達には、アルトの提案はこれ以上ない指針となったようだった。
●早く出て来いよ!(イライラ)
A、Bの2班に分かれたハンター達。
覚醒回数を考え、アルトは自分達B班の先行を提案する。異論も無かった為、そのまま先にB班が橋へと向かう。
B班メンバーは、真司、観智、エルバッハ、アルトだ。
アルトは橋の上を往復し、誘い出しを図る。
(足場がないと、不意の事態に心配だしね……)
彼女は暑さ対策も忘れない。日傘代わりに傘を使い、直射日光を避けている。その上で、冷えた飲み物を水筒に入れ、細目に水分補給行っていた。
同じく、橋の上で哨戒を行うのは真司だ。橋の上を左側通行で時計周りに周回する。
「暑いぜ、チキショー。とっとと出てこねぇかなぁ」
時折、水筒に川の水を汲んで頭から被り、彼はぶつくさと文句を言う。
それでも、突然雑魔が出てきても対処できるように、真司は周囲の様子を確認しながら進む。
観智、エルバッハの2人はウォーターウォークを使い、用心しながら水面を歩く。川の水上を移動しながら、雑魔を探そうと考えたのだ。
2人は注目したのは、橋の下。
ここに足場があれば、涼しみながら敵の捜索が出来たかもしれないが、残念ながら水は川幅全てを流れている。
ただ、彼らはすぐに、橋の下でそれを目にすることができた。
ぶーーーん。
ゆらりと宙を舞い、羽音を立てて現れる大きな蚊。そいつは橋の上へと移動する。
「おっと、いきなり出てきたな。速攻で片付けてやる!」
敵がこちらに向かってくるのを見た真司は、そのまま突撃する。
(そういや昔、殺虫スプレーを使って……)
ジェットブーツを使って雑魔へと接近する真司は、良い子には真似させられない過去を想い出しながら、手のひらにマテリアルを集中させていく。
「まぁ、そんな事は置いておいて、飛んで火にいる夏の虫って奴だ、燃えつきやがれ!」
真司はそれを炎の力と化して、雑魔へと浴びせかけた。
炎を受けた敵。少しふらふらと飛んだかと思うと、一直線にハンターに向かって飛んでくる。
それを、アルトが脚にマテリアルを篭めて瞬時に跳躍し、雑魔の体を受け止めた。
着地したアルトは反撃を仕掛け、フェイントを織り交ぜて蚊を惑わせる。生憎と敵がつられることはないようだったが、浴びせかけた連撃は雑魔の体を裂いていく。
水上から橋へと駆け上がってきた観智は周囲に巻き込む物がないかを確認し、燃え盛る炎の球を飛ばす。
同じく、エルバッハ。彼女は仲間達に被害が及ばないようにと気がけ、スタッフの先から火球を放った。
2つの火球は雑魔へとぶつかり、爆発を起こす。動きを完全に止めたそいつは霧散するように消えていく。
あっさりと倒れる雑魔。どうやら体力が多くないようなのは、持久戦に臨むハンター達にとって唯一の救いだった。
敵を倒したことで、今度はA班が捜索を始める。
こちらのメンバーは、旭、ザレム、宗也、ラススヴェートである。4人は四方を見張る形で敵の出現に気を配っていた。
外は炎天下。それでいて湿気でムシムシとしている。さすがに、今度はすぐに敵が現れる気配はない。
「橋の上での警戒中は、耐えるしかないですね」
1時間くらいならと、ラススヴェートが外套を頭から被って直射日光を避ける。
宗也は汗をダラダラとたらし、槍を構えていた。
「早く出てこい雑魔……! こっちはもういつでも行けるんだぜ……!」
覚醒して待機する旭の上半身はミミズクのような容姿。じっとしていても羽毛で余計に暑くなってしまう。
鋭敏視覚で見張りを行うザレムもミネラルウォーターでの水分補給を行いながら、持久力を使って暑さを耐え続ける。
そのザレムは昼は水辺の暗い所にいると考え、紐に結んだLEDライトを橋の下へと垂らしてゆっくりと揺らす。
しばらくして、橋の下から突如、大きな蚊が現れた。
水の中からゆらりと現れたその蚊を、旭は野生の瞳で捉えて逃さない。
敵は橋の上のハンターを獲物と見定めて、空中を飛んで近づいて来る。
「岩井崎様、前はお願いします」
「おう!」
ラススヴェートが即座に旭に声を掛け、さらに旭の武器へと炎の精霊力を付与する。
そこで、ザレムが取り出した物。それは、竹刀の先端に太い針金で裾部分を取り付けたスカート。ただ、腰の部分は空気が出る程度に縫い窄められている。
「要はでっかい虫取網さ」
それ使うことで、ザレムは雑魔の体を完全に捉えた。
「虫には、虫取網だな」
スカートはダメになったがなと零すザレムだが、効果はてきめん。
味方がそいつに向けて集中攻撃を行っていく。
宗也の放つ光る矢で貫かれながらも、蚊はしぶとくもがいていたが、炎を纏った武器を手にする旭が、蚊型雑魔へと己の武器をぶつける!
「おら、くたばりやがれ!」
雑魔はそれを避けることができず、一瞬で塵へと化してしまったのだった。
●だから、早く出ろって!(怒)
雑魔2体を倒した後もなお、いつ出るか分からない雑魔の捜索は続く。
交替で休みをとるメンバー達。彼らが決めた交替のタイミングはこうだ。
まずは、何もなく1時間経過した場合。
そして、戦闘になって覚醒した場合は、敵を一体以上倒すか、覚醒が切れる1時間が過ぎる前としている。
ちなみに、2班が合流するタイミングは、敵が一気に2体以上出た場合や、片方の班の負傷や体力減少が著しい場合としていた。
こうして、互いの体力や体調を思いやりながらメンバー達は休み、あるいは捜索を行う。
こちらは、B班の休憩時間。
ミネラルウォーターで水分補給をするエルバッハ。気温が上がったことで、熱さで動けなると困る感じた彼女は、エンジェルドレスを脱いでビキニアーマー姿となっていた。
余りの暑さにミネラルウォーターを頭から被っていたのは、アルトだ。
魔導短伝話での通話を考えていたそのアルトと観智。ただ、生憎とA班メンバーが魔導短伝話を持っていなかった。彼らが口頭で連絡してくれるのを信じ、B班メンバーは体を休める。
そこへ、街の人が雑魔討伐に当たるハンター達へと差し入れを持ってきてくれた。
真司はありがたく日陰でその冷水をいただく。アルトもすぐになくなってしまう水の補充を、街の人達にお願いしていたようだ。
すぐに1時間が経ち、戻ってきたのはA班メンバー達。
宗也は戻って早々、日陰へと飛び込んで大の字になっていた。
「あ~、日陰の方が幾分マシだな! これで冷房があればな~!」
旭も汗を拭いつつ、日陰に置いてあったミネラルウォーターで水分を取る。
「休憩中は、水だけではいけませんね」
それを見ていたラススヴェート。差し入れとしていただいたレモンに塩、そして蜂蜜を冷水に混ぜてレモネードを作る。
「すっきりしていて飲みやすいですよ。普通の水よりは美味しいと思います」
ラススヴェートの気遣いもあり、宗也はレモネードをごくごくと飲む。
「お~、こいつはいいな!」
さらに、彼は水を顔にも掛け、火照る体を冷やす。これも、住民による水の差し入れがあってこそである。
「そういえば、蚊って二酸化炭素とか体温で人を見つけるって……って、あぶねぇ!」
その時、川から2体の大きな蚊が飛んでくるのを目にし、旭は住民を庇うように立つ。
「差し入れ感謝だ。早くここから避難しろ、橋には絶対近づくな」
「ここは俺達に任せて早く逃げろ! なーに、冷水パワーであんな雑魔なんか楽勝だぜ!」
ザレム、宗也は不安がる住民達に避難を促し、自分達も敵の応戦に当たっていく。
一方、捜索していたB班メンバーもすでに雑魔を発見しており、こちらに向かってくる。
雑魔との接触は彼らの方は早い。アルト、真司が2体の雑魔へと瞬時に迫り、攻撃を仕掛けていた。
真司は範囲内の仲間の存在を気にかけ、雷撃を帯びたディファレンスエンジンを叩きつける。
「触れたら電気……。あぁ、殺虫ラケットを思い出すぜ、バチッとな」
にやりと彼が笑えば、雷撃で蚊の体がショートする。
もう1体もフリーになっていたのを、エルバッハは見逃さない。彼女も仲間を巻き込まぬよう気を付けながら、雑魔へと青白いガスを飛ばす。雑魔となった蚊にもそれは有効だったようで、そいつはぽとりと眠りに、そして地面へ落ちた。
そこに駆けつけたのは、休憩していたA班メンバーだ。
「お前達なら、俺の魔術でお釣りがきそうだぜ!」
先ほどの雑魔の様子を見ていると、敵の体力はほとんどないといってもいい。最悪近接攻撃も考えていた宗也だが、全力でスキルをぶっ放して蚊を焼き払おうと燃える矢を飛ばした。
麻痺を起こしながらもしぶとく動く蚊の姿を見たラススヴェートは、自ら囮になろうと、自身の汗の匂いと共に鋭い風を放つ。
(これで、誘引できればいいのですけど)
しかしながら、ラススヴェートの思惑は外れ、思いもしない方向へと飛んでいく。頑丈とは言えぬ彼は敵の攻撃を受けずには済んだが、敵の誘い出しに失敗したことを残念がる。
ザレムはその雑魔へ光の三角形を形成して光を飛ばす。されど、そいつは羽音を鳴らして抵抗してくる。ザレムは顔をしかめ、布を濡らし丸めた耳栓で防御を試みた。全く効果がないとは言わないが、雑魔になったことで余計な力を持ったのか、その音で全てを防ぐことはできなかったようだ。
ぶーん。ぶーーん。
蚊の羽音は、ただでさえ暑さで気が立っているハンター達をさらにイラつかせる。
「さっきから!」
旭は暑さと羽音のやかましさとで、その怒りが最高潮になっていた。
「うっとおしいんだよ、その羽音がッ!!!」
そいつに向けて、旭はレイピアを振り下ろす!
羽を斬られて全身をも断たれた蚊は、霧散するように消えていった。
もう1体もハンター達の攻撃で目を覚まし、傷つく自身の体を回復すべく観智の体をつかみ、その血を吸い取る。
「止むを得ませんね……」
敵に詰め寄られた観智は魔法剣「レヴァリー」を携え、白兵戦を仕掛ける。その刃で斬られた蚊は、回復させた傷が再び大きく開いてしまう。
その敵の隙をつき、アルトが迫る。これ以上仲間を傷つけはさせぬと。
連続して刀で斬り伏せると、アルトは柄を握る手に確かな手応えを覚えた。
「お前らみたいなサイズだと倒しやすくて助かるんだが、な」
毎年蚊に悩まされる者達なら、ある意味で思うことかもしれない。
その雑魔はアルトの言葉を聞くことすらなく、この世からなくなっていったのだった。
●雑魔を倒しても……
時間はかかったが、確認されていた4体の雑魔を退治したハンター達。
「うおおおお! 俺はもう川に入るからな!!!」
「あっちー!! もう我慢の限界だー!!」
旭はすぐさま水着になり、宗也もパンツ一丁になって川へと飛び込んだ。
川の流れはある程度ゆったりとしていたものの、その深さは宗也の想像以上だった。
「ちょ、ふかっ! 誰かー、ヘルプヘルプ!!」
彼は大声を上げて助けを呼ぶと、水上移動可能なエルバッハがやれやれと救出に向かっていく。
同じく、川へと入るザレムだが、先の2人と違ってその底の方をライトで照らして隈なくチェックしていた。
「そもそも、綺麗な川には蚊はわかない。川底の掃除を一度徹底的にやるべきだな」
水の透き通った川ではあるが、清流ではあまり生息しない生物も繁殖している。ザレムは見かけた蚊の卵を回収して潰す予定だ。アルトもその助力を申し出ている。
「そういえば、本物の蚊の対策はどうしましょうか?」
溺れかける宗也を助けたエルバッハがそんな懸念も示すが、ザレムは抜かりない。再発防止も兼ねて、彼は街の人に対策するよう提案も考えている。
日が傾き、陽射しが弱まってきた街。雑魔がいなくなったこともあって、住民達の姿が橋のそばに戻りつつあるようだった。
「だぁぁー。クソあちぃな、おい」
「まさか、こんな猛暑日に雑魔が出るなんてな~……」
流れ出る汗を止められず、岩井崎 旭(ka0234)、篠崎 宗也(ka4210)は思わず悲鳴を上げる。
太陽は容赦なく、全ての物に強力な陽射しを降り注かせていたのだ。
「蚊型の雑魔ですか。ただでさえ暑いというのに、鬱陶しいのが出てきましたね」
「この季節では、蚊は大量発生して厄介な相手ですね」
エルバッハ・リオン(ka2434)が溜息を吐くのを見て、ラススヴェート(ka5325)が蚊の繁殖能力に懸念を示した。今回の相手は湧き続けると大変な相手になりうる。
「蚊、蚊か。うん、蚊、ね。……蚊という種族に対しての恨みを果たす時がついに来たか!」
「普通の蚊にさえ毎年迷惑してるってのに、まさか雑魔になって出てくるとは……上等だこの野郎、一匹残らず駆逐してやるぜ!」
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)、柊 真司(ka0705)はある意味で恨みを募らせた敵に、自身の力の全てをぶつけようと考えている。
その雑魔は、街を寸断する川をつなぐ橋に現れると言う。それもあって、住民達は橋に近寄ることもできず、困っているのだそうだ。
「生活に多大な影響が出てしまうな。被害を出さず、早く解決できるよう頑張りたい」
「早く解決しないと、川を境に街の人の交流が、分断されてしまいますよね。……と言っても、待つしか出来ない訳ですけれど」
ザレム・アズール(ka0878)は実害が出る前に対処をと考えているが、敵は不定期に現れる。天央 観智(ka0896)が言うように敵の出現を待つしかない。この暑い中で忍耐を求められるという、なんとも精神的に堪える依頼なのだ。
「犠牲者が出たらもっとヤバいよな! 覚悟しろよ、鬱陶しい害虫め!」
「では、害虫退治と参りましょう」
宗也とラススヴェートのテンションの差は年齢的なものだろう。ただ、雑魔を討伐する意気込みは同じだ。
「終わったら、この川に飛び込んでやる! 絶対に、絶対だ!!」
旭はうっとうしすぎる蚊をいち早く絶滅させ、川で涼をとりたいと考えている。その為の水着の準備も万全だ。
「さっさと出てきて倒されやがれ、蚊のヴォイド野郎め!!」
叫ぶ旭。こうして、一行は雑魔退治に当たる。
ただ、繰り返しにはなるが、敵がいつ出現するのか分からないのが現状。
「持久戦になるかもだから、体力温存の為にも二班に分かれて交代で見張らないか?」
そこで、ザレムが提案を行う。メンバー達はその提案の通り、ハンターを4人ずつ2班に分ける。
その際、アルトも色々と提案した。班交代のタイミング、また、雑魔が現れた際に合流するタイミングなど、合いの手を入れる真司を含め、すり合わせる。とはいえ、いつ終わるとも分からぬ依頼に臨むハンター達には、アルトの提案はこれ以上ない指針となったようだった。
●早く出て来いよ!(イライラ)
A、Bの2班に分かれたハンター達。
覚醒回数を考え、アルトは自分達B班の先行を提案する。異論も無かった為、そのまま先にB班が橋へと向かう。
B班メンバーは、真司、観智、エルバッハ、アルトだ。
アルトは橋の上を往復し、誘い出しを図る。
(足場がないと、不意の事態に心配だしね……)
彼女は暑さ対策も忘れない。日傘代わりに傘を使い、直射日光を避けている。その上で、冷えた飲み物を水筒に入れ、細目に水分補給行っていた。
同じく、橋の上で哨戒を行うのは真司だ。橋の上を左側通行で時計周りに周回する。
「暑いぜ、チキショー。とっとと出てこねぇかなぁ」
時折、水筒に川の水を汲んで頭から被り、彼はぶつくさと文句を言う。
それでも、突然雑魔が出てきても対処できるように、真司は周囲の様子を確認しながら進む。
観智、エルバッハの2人はウォーターウォークを使い、用心しながら水面を歩く。川の水上を移動しながら、雑魔を探そうと考えたのだ。
2人は注目したのは、橋の下。
ここに足場があれば、涼しみながら敵の捜索が出来たかもしれないが、残念ながら水は川幅全てを流れている。
ただ、彼らはすぐに、橋の下でそれを目にすることができた。
ぶーーーん。
ゆらりと宙を舞い、羽音を立てて現れる大きな蚊。そいつは橋の上へと移動する。
「おっと、いきなり出てきたな。速攻で片付けてやる!」
敵がこちらに向かってくるのを見た真司は、そのまま突撃する。
(そういや昔、殺虫スプレーを使って……)
ジェットブーツを使って雑魔へと接近する真司は、良い子には真似させられない過去を想い出しながら、手のひらにマテリアルを集中させていく。
「まぁ、そんな事は置いておいて、飛んで火にいる夏の虫って奴だ、燃えつきやがれ!」
真司はそれを炎の力と化して、雑魔へと浴びせかけた。
炎を受けた敵。少しふらふらと飛んだかと思うと、一直線にハンターに向かって飛んでくる。
それを、アルトが脚にマテリアルを篭めて瞬時に跳躍し、雑魔の体を受け止めた。
着地したアルトは反撃を仕掛け、フェイントを織り交ぜて蚊を惑わせる。生憎と敵がつられることはないようだったが、浴びせかけた連撃は雑魔の体を裂いていく。
水上から橋へと駆け上がってきた観智は周囲に巻き込む物がないかを確認し、燃え盛る炎の球を飛ばす。
同じく、エルバッハ。彼女は仲間達に被害が及ばないようにと気がけ、スタッフの先から火球を放った。
2つの火球は雑魔へとぶつかり、爆発を起こす。動きを完全に止めたそいつは霧散するように消えていく。
あっさりと倒れる雑魔。どうやら体力が多くないようなのは、持久戦に臨むハンター達にとって唯一の救いだった。
敵を倒したことで、今度はA班が捜索を始める。
こちらのメンバーは、旭、ザレム、宗也、ラススヴェートである。4人は四方を見張る形で敵の出現に気を配っていた。
外は炎天下。それでいて湿気でムシムシとしている。さすがに、今度はすぐに敵が現れる気配はない。
「橋の上での警戒中は、耐えるしかないですね」
1時間くらいならと、ラススヴェートが外套を頭から被って直射日光を避ける。
宗也は汗をダラダラとたらし、槍を構えていた。
「早く出てこい雑魔……! こっちはもういつでも行けるんだぜ……!」
覚醒して待機する旭の上半身はミミズクのような容姿。じっとしていても羽毛で余計に暑くなってしまう。
鋭敏視覚で見張りを行うザレムもミネラルウォーターでの水分補給を行いながら、持久力を使って暑さを耐え続ける。
そのザレムは昼は水辺の暗い所にいると考え、紐に結んだLEDライトを橋の下へと垂らしてゆっくりと揺らす。
しばらくして、橋の下から突如、大きな蚊が現れた。
水の中からゆらりと現れたその蚊を、旭は野生の瞳で捉えて逃さない。
敵は橋の上のハンターを獲物と見定めて、空中を飛んで近づいて来る。
「岩井崎様、前はお願いします」
「おう!」
ラススヴェートが即座に旭に声を掛け、さらに旭の武器へと炎の精霊力を付与する。
そこで、ザレムが取り出した物。それは、竹刀の先端に太い針金で裾部分を取り付けたスカート。ただ、腰の部分は空気が出る程度に縫い窄められている。
「要はでっかい虫取網さ」
それ使うことで、ザレムは雑魔の体を完全に捉えた。
「虫には、虫取網だな」
スカートはダメになったがなと零すザレムだが、効果はてきめん。
味方がそいつに向けて集中攻撃を行っていく。
宗也の放つ光る矢で貫かれながらも、蚊はしぶとくもがいていたが、炎を纏った武器を手にする旭が、蚊型雑魔へと己の武器をぶつける!
「おら、くたばりやがれ!」
雑魔はそれを避けることができず、一瞬で塵へと化してしまったのだった。
●だから、早く出ろって!(怒)
雑魔2体を倒した後もなお、いつ出るか分からない雑魔の捜索は続く。
交替で休みをとるメンバー達。彼らが決めた交替のタイミングはこうだ。
まずは、何もなく1時間経過した場合。
そして、戦闘になって覚醒した場合は、敵を一体以上倒すか、覚醒が切れる1時間が過ぎる前としている。
ちなみに、2班が合流するタイミングは、敵が一気に2体以上出た場合や、片方の班の負傷や体力減少が著しい場合としていた。
こうして、互いの体力や体調を思いやりながらメンバー達は休み、あるいは捜索を行う。
こちらは、B班の休憩時間。
ミネラルウォーターで水分補給をするエルバッハ。気温が上がったことで、熱さで動けなると困る感じた彼女は、エンジェルドレスを脱いでビキニアーマー姿となっていた。
余りの暑さにミネラルウォーターを頭から被っていたのは、アルトだ。
魔導短伝話での通話を考えていたそのアルトと観智。ただ、生憎とA班メンバーが魔導短伝話を持っていなかった。彼らが口頭で連絡してくれるのを信じ、B班メンバーは体を休める。
そこへ、街の人が雑魔討伐に当たるハンター達へと差し入れを持ってきてくれた。
真司はありがたく日陰でその冷水をいただく。アルトもすぐになくなってしまう水の補充を、街の人達にお願いしていたようだ。
すぐに1時間が経ち、戻ってきたのはA班メンバー達。
宗也は戻って早々、日陰へと飛び込んで大の字になっていた。
「あ~、日陰の方が幾分マシだな! これで冷房があればな~!」
旭も汗を拭いつつ、日陰に置いてあったミネラルウォーターで水分を取る。
「休憩中は、水だけではいけませんね」
それを見ていたラススヴェート。差し入れとしていただいたレモンに塩、そして蜂蜜を冷水に混ぜてレモネードを作る。
「すっきりしていて飲みやすいですよ。普通の水よりは美味しいと思います」
ラススヴェートの気遣いもあり、宗也はレモネードをごくごくと飲む。
「お~、こいつはいいな!」
さらに、彼は水を顔にも掛け、火照る体を冷やす。これも、住民による水の差し入れがあってこそである。
「そういえば、蚊って二酸化炭素とか体温で人を見つけるって……って、あぶねぇ!」
その時、川から2体の大きな蚊が飛んでくるのを目にし、旭は住民を庇うように立つ。
「差し入れ感謝だ。早くここから避難しろ、橋には絶対近づくな」
「ここは俺達に任せて早く逃げろ! なーに、冷水パワーであんな雑魔なんか楽勝だぜ!」
ザレム、宗也は不安がる住民達に避難を促し、自分達も敵の応戦に当たっていく。
一方、捜索していたB班メンバーもすでに雑魔を発見しており、こちらに向かってくる。
雑魔との接触は彼らの方は早い。アルト、真司が2体の雑魔へと瞬時に迫り、攻撃を仕掛けていた。
真司は範囲内の仲間の存在を気にかけ、雷撃を帯びたディファレンスエンジンを叩きつける。
「触れたら電気……。あぁ、殺虫ラケットを思い出すぜ、バチッとな」
にやりと彼が笑えば、雷撃で蚊の体がショートする。
もう1体もフリーになっていたのを、エルバッハは見逃さない。彼女も仲間を巻き込まぬよう気を付けながら、雑魔へと青白いガスを飛ばす。雑魔となった蚊にもそれは有効だったようで、そいつはぽとりと眠りに、そして地面へ落ちた。
そこに駆けつけたのは、休憩していたA班メンバーだ。
「お前達なら、俺の魔術でお釣りがきそうだぜ!」
先ほどの雑魔の様子を見ていると、敵の体力はほとんどないといってもいい。最悪近接攻撃も考えていた宗也だが、全力でスキルをぶっ放して蚊を焼き払おうと燃える矢を飛ばした。
麻痺を起こしながらもしぶとく動く蚊の姿を見たラススヴェートは、自ら囮になろうと、自身の汗の匂いと共に鋭い風を放つ。
(これで、誘引できればいいのですけど)
しかしながら、ラススヴェートの思惑は外れ、思いもしない方向へと飛んでいく。頑丈とは言えぬ彼は敵の攻撃を受けずには済んだが、敵の誘い出しに失敗したことを残念がる。
ザレムはその雑魔へ光の三角形を形成して光を飛ばす。されど、そいつは羽音を鳴らして抵抗してくる。ザレムは顔をしかめ、布を濡らし丸めた耳栓で防御を試みた。全く効果がないとは言わないが、雑魔になったことで余計な力を持ったのか、その音で全てを防ぐことはできなかったようだ。
ぶーん。ぶーーん。
蚊の羽音は、ただでさえ暑さで気が立っているハンター達をさらにイラつかせる。
「さっきから!」
旭は暑さと羽音のやかましさとで、その怒りが最高潮になっていた。
「うっとおしいんだよ、その羽音がッ!!!」
そいつに向けて、旭はレイピアを振り下ろす!
羽を斬られて全身をも断たれた蚊は、霧散するように消えていった。
もう1体もハンター達の攻撃で目を覚まし、傷つく自身の体を回復すべく観智の体をつかみ、その血を吸い取る。
「止むを得ませんね……」
敵に詰め寄られた観智は魔法剣「レヴァリー」を携え、白兵戦を仕掛ける。その刃で斬られた蚊は、回復させた傷が再び大きく開いてしまう。
その敵の隙をつき、アルトが迫る。これ以上仲間を傷つけはさせぬと。
連続して刀で斬り伏せると、アルトは柄を握る手に確かな手応えを覚えた。
「お前らみたいなサイズだと倒しやすくて助かるんだが、な」
毎年蚊に悩まされる者達なら、ある意味で思うことかもしれない。
その雑魔はアルトの言葉を聞くことすらなく、この世からなくなっていったのだった。
●雑魔を倒しても……
時間はかかったが、確認されていた4体の雑魔を退治したハンター達。
「うおおおお! 俺はもう川に入るからな!!!」
「あっちー!! もう我慢の限界だー!!」
旭はすぐさま水着になり、宗也もパンツ一丁になって川へと飛び込んだ。
川の流れはある程度ゆったりとしていたものの、その深さは宗也の想像以上だった。
「ちょ、ふかっ! 誰かー、ヘルプヘルプ!!」
彼は大声を上げて助けを呼ぶと、水上移動可能なエルバッハがやれやれと救出に向かっていく。
同じく、川へと入るザレムだが、先の2人と違ってその底の方をライトで照らして隈なくチェックしていた。
「そもそも、綺麗な川には蚊はわかない。川底の掃除を一度徹底的にやるべきだな」
水の透き通った川ではあるが、清流ではあまり生息しない生物も繁殖している。ザレムは見かけた蚊の卵を回収して潰す予定だ。アルトもその助力を申し出ている。
「そういえば、本物の蚊の対策はどうしましょうか?」
溺れかける宗也を助けたエルバッハがそんな懸念も示すが、ザレムは抜かりない。再発防止も兼ねて、彼は街の人に対策するよう提案も考えている。
日が傾き、陽射しが弱まってきた街。雑魔がいなくなったこともあって、住民達の姿が橋のそばに戻りつつあるようだった。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 ラススヴェート(ka5325) エルフ|65才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/08/06 19:53:18 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/08/05 18:29:31 |