ゲスト
(ka0000)
コロの行き先を教えて!
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/08/21 19:00
- 完成日
- 2015/08/25 17:39
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●コロはどこへ行ってるの?
最近、うちのコロの様子がおかしい。
昼間になると、いつも姿が見えなくなってしまうのだ。
ただ、夜になるときちんと戻ってくるので、問題はないのかもしれない。戻ってくると大概泥まみれになっているのには困ってしまうが。
「コロったら、いっつもどこに行っているのかしら」
飼い主サンドラは、いつもいなくなるコロの行き先が気になっていた。
鎖で縛ってどこへと行けないようにすると、同じ方向を向いて止むことなく鳴き続けてしまう。放置すると近所迷惑になりかねないから困りものだ。
「仕方ないわね……」
コロの飼い主、サンドラが仕方なく鎖を外すと、コロはアンアンと鳴き、一直線に駆けていく。
その先は、近場の林のようである。
「林か……」
サンドラは思う。そういえば、子犬のコロを拾ってきたのも、あの林だった。
コロを追いかけたくとも、生憎と生まれたばかりの子供の世話で手一杯だ。おまけに家事だって、働く夫の為にも頑張らねばならない。
「うーん、仕方ないかなあ……」
ならばと、彼女は子供を抱いたまま、ハンターズソサエティを目指すことにしたのだった。
そこは、古都【アークエルス】からほど近い場所にある村。
「……とまあ、そういうわけです」
ハンターズソサエティにサンドラが出した依頼が貼られたのは、その日の夕方。
受付の女性はちょっとうっとりしながら依頼内容を語る。彼女も愛犬家らしいのだが、それは置いといて。
問題のコロだが、1歳半くらいのオス犬だ。
コロは昼前くらいにはいつも、飼い主であるサンドラの家を飛び出してしまう。
別についてきても逃げたりはしないようだが、コロの行く手を阻むことがあるとさすがに噛みついてくることがあるので、それは避けたい。
その林には、木の姿をした雑魔目撃の報告もある。実害が無かった為に放置されていたが、場合によってはコロと遭遇する可能性もある。邪魔をするなら討伐もやむを得ないだろう。
コロが目的の場所で気がすむまで何かをした後、しばらくすれば、サンドラの家に戻るようだ。その為、コロを放置しても構わないし、一緒に帰っても構わない。
「確認ですが、コロさんが何をやっているのかを確認してください。もし、危険が及ぶなら、その危険の除去も願います」
雑魔が現れる可能性は高いが、依頼さえ果たしてしまえば、ちょっとしたハイキングになりそうな感じだ。ハンター達はコロを追いかけるという依頼をこなしながらも、涼しい木陰で何をして過ごそうかと考えるのである。
最近、うちのコロの様子がおかしい。
昼間になると、いつも姿が見えなくなってしまうのだ。
ただ、夜になるときちんと戻ってくるので、問題はないのかもしれない。戻ってくると大概泥まみれになっているのには困ってしまうが。
「コロったら、いっつもどこに行っているのかしら」
飼い主サンドラは、いつもいなくなるコロの行き先が気になっていた。
鎖で縛ってどこへと行けないようにすると、同じ方向を向いて止むことなく鳴き続けてしまう。放置すると近所迷惑になりかねないから困りものだ。
「仕方ないわね……」
コロの飼い主、サンドラが仕方なく鎖を外すと、コロはアンアンと鳴き、一直線に駆けていく。
その先は、近場の林のようである。
「林か……」
サンドラは思う。そういえば、子犬のコロを拾ってきたのも、あの林だった。
コロを追いかけたくとも、生憎と生まれたばかりの子供の世話で手一杯だ。おまけに家事だって、働く夫の為にも頑張らねばならない。
「うーん、仕方ないかなあ……」
ならばと、彼女は子供を抱いたまま、ハンターズソサエティを目指すことにしたのだった。
そこは、古都【アークエルス】からほど近い場所にある村。
「……とまあ、そういうわけです」
ハンターズソサエティにサンドラが出した依頼が貼られたのは、その日の夕方。
受付の女性はちょっとうっとりしながら依頼内容を語る。彼女も愛犬家らしいのだが、それは置いといて。
問題のコロだが、1歳半くらいのオス犬だ。
コロは昼前くらいにはいつも、飼い主であるサンドラの家を飛び出してしまう。
別についてきても逃げたりはしないようだが、コロの行く手を阻むことがあるとさすがに噛みついてくることがあるので、それは避けたい。
その林には、木の姿をした雑魔目撃の報告もある。実害が無かった為に放置されていたが、場合によってはコロと遭遇する可能性もある。邪魔をするなら討伐もやむを得ないだろう。
コロが目的の場所で気がすむまで何かをした後、しばらくすれば、サンドラの家に戻るようだ。その為、コロを放置しても構わないし、一緒に帰っても構わない。
「確認ですが、コロさんが何をやっているのかを確認してください。もし、危険が及ぶなら、その危険の除去も願います」
雑魔が現れる可能性は高いが、依頼さえ果たしてしまえば、ちょっとしたハイキングになりそうな感じだ。ハンター達はコロを追いかけるという依頼をこなしながらも、涼しい木陰で何をして過ごそうかと考えるのである。
リプレイ本文
●コロの目的は?
古都【アークエルス】から近い場所にある村。
とある家を訪れた6人のハンターは玄関の戸を叩く。現れたのは、この家に住むサンドラという女性だった。
ハンター達は挨拶も程々に、サンドラから事情を聞き出す。
「コロ様を拾った時のことをお聞かせいただきたいのですが」
レイ・T・ベッドフォード(ka2398)は子供をあやすサンドラへと問う。
サンドラはある小雨の日に夫を迎えに行く途中、子犬のコロを林で拾ったのだという。アンアン鳴いていたコロを放っておけず、そのまま拾ってきたのだそうだ。
(特定の方角に、何かが在るのだろう。だとしたらそれは、彼にそって縁深いものなのか)
話を聞いていたレイはそう推測していたようだ。
その間、家の縁側では。
「私め犬と名乗る者で御座いますれば、コロ殿の為したいことが気になります……」
そう主張していた弥栄(ka4950)が、成犬のコロを興味深げに見つめている。
対して、コロはバクバクと美味しそうに朝ごはんを食べていたが、動物愛スキルも手伝って、コロは弥栄に親近感を見せていたようだ。
昼前になると、コロはてくてくと外に向かって歩き出す。
コロは今日もまた、彼は自分が世話になっている家を後にしていく。
それを、ハンター達は物陰から見守る。
「……コロちゃんは、どこにお散歩に行っているのかな?」
ファリス(ka2853)は家を出る前にサンドラが心配そうにしているのを見て、コロが何をしているかきちんと確かめようと考えていた。
「……悪いことが、起こらなければいいのですが」
そのサンドラと話をしていたレイ。サンドラが自分達ハンターを雇うに至っていることからも、その心配は十分にうかがい知れた。
「まぁ、コロの後ろをのんびりついていってみるか」
イレーヌ(ka1372)はというと、コロがいつもどういう冒険をしているか興味を持っている様子だ。
「……ヨハンナにもいいお散歩になるの」
てくてく歩いていくコロを追いかけ、ファリスの愛犬ヨハンナもついていく。2歳の雌の柴犬ヨハンナは、さながらお姉さんとでもいうように胸を張っていた。
さらに、犬使いの犬養 菜摘(ka3996)もこの依頼に大喜びで参加しているだけあって、森用の迷彩ジャケットと、雑魔対策の猟銃と、万全の準備を行っている。さらに、柴犬とダックスフンドをつれていくという気合の入れようだ。
弥栄はなんと、馬に乗っていた。コロは気にしていないようだが、これまたかなり力の入った追跡である。
「とにかく、依頼は依頼。僕に出来ることをやるだけだよ」
戦闘準備を万全にしていたロト(ka0323)も、それに続く。
6人のハンターと3匹の犬、さらに馬は、てくてく歩く雄犬を追っていくのだった。
●邪魔する物は
コロはずんずんと進み、林の中に入っていく。それに続き、ハンター達も木々の間を進んでいく。
木々の間隔は割と開いた場所ではあるが、うねって地面から飛び出す木の根や、陽光が届かずにぬかるみになっている場所のせいで、足元がやや凸凹してしまっている。
コロはそんな障害などなんのそのと突っ切っていくが、ハンター達にとっては真っ直ぐ歩くのも一苦労だ。
「……まぁ、こう見えても田舎育ちだし、体力はないわけじゃないよ」
とはいえ、無駄に体力を使わないに越したことはない。ロトはできるだけそれらの障害を避けながら進んでいく。
仲間達も概ね難なく進んでいたようだが、乗馬していた弥栄は時折馬から降りて、ランニングを使いつつ馬を引いていたようだ。
菜摘は逞しく林の散策を行う。ダックスフントには物陰や穴の低い場所を。柴犬にはそれより高い場所をメインに散策させており、菜摘自身は落ち着いて足跡、踏まれて折れた枝などの痕跡を探す。それは、この森に潜む雑魔を探す為。猟師として、彼女は勘を頼りに周囲を調べていた。
同時に、ハンター達はコロを見失わないよう追っていく。
時にこちらを振り向く様子から、コロはこちらには完全に気づいているようだ。
一行はぴったりマークするわけではなく、コロの散歩を妨害しないよう、できるだけ離れて観察を行う。
のどかな林の中を歩いていくコロ。そこでかさりと立つ物音に、ハンター達は素早く対応を始める。
コロの前に、ゆらりと立ち塞がった3本の木々。いや、それらはすでに雑魔と化していた。コロは邪魔する雑魔へとキャンキャンと吠える。
「――ある意味、今日出会えて良かったですね」
レイは超聴覚で雑魔の出現を察し、素早くコロと雑魔の間に立ちふさがって雷神斧を握りしめる。
「貴方がたは、コロ様達を傷つける……此処で、討ち滅ぼしましょう」
吠えるコロを守るように立つレイは、武器に祖霊の力を篭めて振りぬく。
雑魔となったそいつは、斬られてなおも木々を揺らして動く。ギギギと木と木が擦れるような音はそいつらの声なのかもしれない。
「ヨハンナはファリスの後ろに隠れているの。こんな雑魔なんてすぐに片付けるの!」
天使のような白い羽の幻影を背中に現したファリスが自身の柴犬ヨハンナへと呼びかけると、彼女はワンと吠えて後ろへ下がっていく。
そこで、動き出した木々が攻撃を仕掛けるべく動くのを見て、ファリスは炎の矢を飛ばす。炎のエネルギーに貫かれた木はギギと重い音を立て、体当たりを繰り出して来た。
それを、後ろから迫ってきた弥栄が水平に突き出した刀で幹を貫き、さらに身を呈して雑魔の体当たりを受け止める。
「体当たり? 上等で御座います。この私めと力勝負と行きましょうか」
覚醒し、白銀の狼の耳と尻尾の幻を出現させた弥栄。さらにその瞳は薄めの金色へと変色していた。向かい来る体当たりにダメージを受けながらも、彼は不敵に笑う。
雑魔に対するハンター達。
木々は雑魔としては比較的弱い部類。まるで雑草を刈り取るように、ハンター達は攻撃を繰り出してその駆除に当たる。
「……邪魔しないでよね、ただでさえ歩きにくいのにさ」
背中に届くほどに伸びた銀の髪を靡かせたロト。彼が言うようにここもまたぬかるみがあり、メンバー達の移動を妨げる。
ならばとその場から動かずに、ロトは緑へと変色した瞳で敵を捉え、鋭い風を飛ばして近場の木の幹を斬り倒す。そいつは地面へと倒れる前に宙で霧散した。
ふうと息をつくロト。暑いのか、首元をあおぐ彼の左鎖骨にはちらりと鳥の形の痣が見えた。
なおも雑魔は一行の進路を妨害して襲ってくる。コロは威嚇を続け、果敢にも食らいつこうと隙を伺っていた。例え雑魔だろうが、コロにとっては行く手を遮る障害でしかないのである。
普段、10歳くらいの外見のイレーヌ。戦いに臨む彼女は、敵に立ち向かおうとするコロを守るべく覚醒し、成人女性の外見へと変わっていた。
(衣服のサイズまで変化しないのが、玉に瑕なのだがな)
そのまま大きくなることで服が破れ、露出過多になるのがイレーヌは気に食わないようで。豊満な体を躍らせながらも彼女は光の弾を飛ばす。
眩い光に身を焼かれる木。ハンターはさらに雑魔の体当たりをやり過ごしながらも攻撃を浴びせる。
ファリスが飛ばす炎の矢。刹那、その体が勢いよく燃え上がったかと思うと、雑魔の姿は消え失せていた。
気づけば、すでに雑魔は1体まで減っている。
菜摘は覚醒することで、迷彩色のオーラで身を包んでいた。眼球にはスコープサイトの模様が浮かび、集中力を増したことで射撃の命中精度を高めている。
菜摘は猟銃を構え、ゆらりと動く木の雑魔を撃ち抜いた。
それでも、雑魔はギギと音を立て、広げる枝葉から数本の枝を飛ばす。
飛んできた枝を、弥栄が見事に刀で一刀両断する。彼はそのまま躍りかかり、敵の体を斬り伏せた。
ただ、やや浅い。体をボロボロにしながらも、そいつはゆらりと動く。
そいつ目がけてレイが水平に雷神斧を振るうと、雑魔の体が斬撃に沿ってズレていく。重い音を立てて左右にスライドした雑魔の姿は、地面へ落ちた直後になくなってしまったのだった。
その直後、コロはきょろきょろと辺りを見回す。無謀に雑魔に食らいつくこともなく、また、ハンター達によって守られたことで、コロにさほど怪我もないようだ。道をふさぐ脅威がなくなったことで、彼はまたてくてくと歩き始める。
一行は安心して、散歩するコロの追跡を再開するのだった。
●林の中でコロは……
てくてくと林の中を歩くコロは、やがて足を止める。
そこは、土が盛られ、木が十字に組まれた場所。どうやら、人の手によってつくられた墓のようだ。
コロはその組まれた木に、すりすりと頬ずりをする。
「もしや、コロ殿にとって大切な方の御墓なので御座いましょうか」
弥栄に合わせ、メンバー達はコロの様子を覗き込む。
イレーヌも、ファリスも、静かにコロを見守っていた。できる限り、彼の邪魔をしたくないという配慮からだ。
ロトは皆が見守る中、距離を取って周囲の調査を行う。崖など、危険な場所がないかと考えたのだ。とはいえ、ぬかるみになっている場所こそあるが、それ以上に危ないところはないようである。
程なくしてロトが戻ると、盛られた土の上でうずくまるコロの元に、仲間達が近寄っていた。
「……貴方の、ご家族の墓、ですか」
レイは墓を見て推測する。かすれていたが、そこには何かが書かれていた跡がある。
ここはおそらく、コロの親の墓なのではないか。そして、丁寧に組まれた木の墓標は、通りがかった誰かが作ってくれたのかもしれない。
「死後も大事に思われるとは、実に良きかな」
弥栄は近場から花を摘み、墓へと供える。
「近くに咲いている花故見慣れたもので申し訳ありませぬが、コロからの分を是非、私めに供えさせてくだされ」
この場に眠る誰かの為に。メンバー達は冥福を祈る。
その後、一行はその場で森林浴を始めた。幸いここは草が茂る場所。座ったり寝そべったりしても大丈夫とハンターは判断したのだ。
ロトはポテトチップスやナッツ、レイがバラエティランチを広げれば、匂いにつられたコロも起き出し、おやつタイムが始まる。
「無駄にならなくてよかった」
「美味しく召し上がっていただいたなら、幸いです」
皆、2人が持ち寄った食べ物を美味しく食べていたようだ。
「ほら、私は敵じゃないからな」
イレーヌがポテトチップスをチラつかせると、コロは匂いを嗅いでから食べ始める。人懐っこいコロはすぐにハンター達に懐き始めたようだ。
「コロちゃん、この子はヨハンナなの。この子の友達になって欲しいの」
ファリスはコロに愛犬を紹介すると、2匹は仲良くじゃれ合い始める。
その様子を、菜摘も興味深そうに眺め、犬が喜ぶ行為などを見ていたようだ。
しかし、お腹がいっぱいになったからか、コロはすぐに大きな欠伸をする。
「……ここは涼しくて気持ちいいの。ファリスも少しだけお昼寝するの」
ファリス、そしてイレーヌも。皆、涼しい木陰の下でうたた寝を始めた。
「君達は、どうしてそこまで純粋に突き進めるのかな」
木に寄りかかって起きていたロトは、眠るコロにぼそりと声を掛ける。
以前にも犬に関する依頼を受けたロト。その時の犬も必死だったのを彼は覚えていたのだ。いまだに不思議に思う彼ではあるが、それに答えなどないのだろうとロトは天を仰いで考えるのである。
しばらくうたた寝していたコロ。
林での一時を満喫した彼は、てくてくと元来た道を戻り始める。
帰り道、コロと並ぶようにハンター達は歩く。その際、また雑魔が現れないようにと、ファリスが一行を先導していたようだ。ちなみに、彼女の愛犬ヨハンナはコロと一緒に歩いている。
「いつも彼処で涼んでいるのか? 羨ましいことだな」
同じく一緒に歩くイレーヌが軽く笑って語りかけると、コロはワンと元気に一鳴きした。
●できることなら
日が傾き始めた頃、コロとハンター達はサンドラの家へと戻ってきた。
「この弥栄、所詮犬で御座います故、稚児殿の世話等自由に使っていただき構いませぬ。幼子の世話は以前にも経験が御座います故」
その主張もあり、弥栄はサンドラの子供をあやす任を請け負っていた。
その間、レイが林での出来事をありのままに報告する。
「……寂しいのかも、しれませんね」
サンドラもコロを拾った当時から、林に1匹だけでいた彼のことが気になっていたそうだ。
「……あの場所はコロちゃんにとって大切な場所なの。だから、止めないで居て欲しいの。
ファリスはサンドラへとそう提案する。
「彼は、貴女達の家に帰ってきていますから……きっと、彼も解っているんでしょうね」
「きちんとこの家に帰ってくるのは、おば様達のことを家族だと思っているからなの」
そうだねと少しだけしんみりするサンドラ。コロの行動はおそらく、あの場所で眠っている肉親と、今の飼い主とを大切に思うからの行動なのだろう。
翌朝。
コロは使命感を持って、いつものように歩き出す。あの林の、あの墓を目指して。
幼子を抱いてそれを見送るのが、サンドラの新たなる日課となったそうだ。
古都【アークエルス】から近い場所にある村。
とある家を訪れた6人のハンターは玄関の戸を叩く。現れたのは、この家に住むサンドラという女性だった。
ハンター達は挨拶も程々に、サンドラから事情を聞き出す。
「コロ様を拾った時のことをお聞かせいただきたいのですが」
レイ・T・ベッドフォード(ka2398)は子供をあやすサンドラへと問う。
サンドラはある小雨の日に夫を迎えに行く途中、子犬のコロを林で拾ったのだという。アンアン鳴いていたコロを放っておけず、そのまま拾ってきたのだそうだ。
(特定の方角に、何かが在るのだろう。だとしたらそれは、彼にそって縁深いものなのか)
話を聞いていたレイはそう推測していたようだ。
その間、家の縁側では。
「私め犬と名乗る者で御座いますれば、コロ殿の為したいことが気になります……」
そう主張していた弥栄(ka4950)が、成犬のコロを興味深げに見つめている。
対して、コロはバクバクと美味しそうに朝ごはんを食べていたが、動物愛スキルも手伝って、コロは弥栄に親近感を見せていたようだ。
昼前になると、コロはてくてくと外に向かって歩き出す。
コロは今日もまた、彼は自分が世話になっている家を後にしていく。
それを、ハンター達は物陰から見守る。
「……コロちゃんは、どこにお散歩に行っているのかな?」
ファリス(ka2853)は家を出る前にサンドラが心配そうにしているのを見て、コロが何をしているかきちんと確かめようと考えていた。
「……悪いことが、起こらなければいいのですが」
そのサンドラと話をしていたレイ。サンドラが自分達ハンターを雇うに至っていることからも、その心配は十分にうかがい知れた。
「まぁ、コロの後ろをのんびりついていってみるか」
イレーヌ(ka1372)はというと、コロがいつもどういう冒険をしているか興味を持っている様子だ。
「……ヨハンナにもいいお散歩になるの」
てくてく歩いていくコロを追いかけ、ファリスの愛犬ヨハンナもついていく。2歳の雌の柴犬ヨハンナは、さながらお姉さんとでもいうように胸を張っていた。
さらに、犬使いの犬養 菜摘(ka3996)もこの依頼に大喜びで参加しているだけあって、森用の迷彩ジャケットと、雑魔対策の猟銃と、万全の準備を行っている。さらに、柴犬とダックスフンドをつれていくという気合の入れようだ。
弥栄はなんと、馬に乗っていた。コロは気にしていないようだが、これまたかなり力の入った追跡である。
「とにかく、依頼は依頼。僕に出来ることをやるだけだよ」
戦闘準備を万全にしていたロト(ka0323)も、それに続く。
6人のハンターと3匹の犬、さらに馬は、てくてく歩く雄犬を追っていくのだった。
●邪魔する物は
コロはずんずんと進み、林の中に入っていく。それに続き、ハンター達も木々の間を進んでいく。
木々の間隔は割と開いた場所ではあるが、うねって地面から飛び出す木の根や、陽光が届かずにぬかるみになっている場所のせいで、足元がやや凸凹してしまっている。
コロはそんな障害などなんのそのと突っ切っていくが、ハンター達にとっては真っ直ぐ歩くのも一苦労だ。
「……まぁ、こう見えても田舎育ちだし、体力はないわけじゃないよ」
とはいえ、無駄に体力を使わないに越したことはない。ロトはできるだけそれらの障害を避けながら進んでいく。
仲間達も概ね難なく進んでいたようだが、乗馬していた弥栄は時折馬から降りて、ランニングを使いつつ馬を引いていたようだ。
菜摘は逞しく林の散策を行う。ダックスフントには物陰や穴の低い場所を。柴犬にはそれより高い場所をメインに散策させており、菜摘自身は落ち着いて足跡、踏まれて折れた枝などの痕跡を探す。それは、この森に潜む雑魔を探す為。猟師として、彼女は勘を頼りに周囲を調べていた。
同時に、ハンター達はコロを見失わないよう追っていく。
時にこちらを振り向く様子から、コロはこちらには完全に気づいているようだ。
一行はぴったりマークするわけではなく、コロの散歩を妨害しないよう、できるだけ離れて観察を行う。
のどかな林の中を歩いていくコロ。そこでかさりと立つ物音に、ハンター達は素早く対応を始める。
コロの前に、ゆらりと立ち塞がった3本の木々。いや、それらはすでに雑魔と化していた。コロは邪魔する雑魔へとキャンキャンと吠える。
「――ある意味、今日出会えて良かったですね」
レイは超聴覚で雑魔の出現を察し、素早くコロと雑魔の間に立ちふさがって雷神斧を握りしめる。
「貴方がたは、コロ様達を傷つける……此処で、討ち滅ぼしましょう」
吠えるコロを守るように立つレイは、武器に祖霊の力を篭めて振りぬく。
雑魔となったそいつは、斬られてなおも木々を揺らして動く。ギギギと木と木が擦れるような音はそいつらの声なのかもしれない。
「ヨハンナはファリスの後ろに隠れているの。こんな雑魔なんてすぐに片付けるの!」
天使のような白い羽の幻影を背中に現したファリスが自身の柴犬ヨハンナへと呼びかけると、彼女はワンと吠えて後ろへ下がっていく。
そこで、動き出した木々が攻撃を仕掛けるべく動くのを見て、ファリスは炎の矢を飛ばす。炎のエネルギーに貫かれた木はギギと重い音を立て、体当たりを繰り出して来た。
それを、後ろから迫ってきた弥栄が水平に突き出した刀で幹を貫き、さらに身を呈して雑魔の体当たりを受け止める。
「体当たり? 上等で御座います。この私めと力勝負と行きましょうか」
覚醒し、白銀の狼の耳と尻尾の幻を出現させた弥栄。さらにその瞳は薄めの金色へと変色していた。向かい来る体当たりにダメージを受けながらも、彼は不敵に笑う。
雑魔に対するハンター達。
木々は雑魔としては比較的弱い部類。まるで雑草を刈り取るように、ハンター達は攻撃を繰り出してその駆除に当たる。
「……邪魔しないでよね、ただでさえ歩きにくいのにさ」
背中に届くほどに伸びた銀の髪を靡かせたロト。彼が言うようにここもまたぬかるみがあり、メンバー達の移動を妨げる。
ならばとその場から動かずに、ロトは緑へと変色した瞳で敵を捉え、鋭い風を飛ばして近場の木の幹を斬り倒す。そいつは地面へと倒れる前に宙で霧散した。
ふうと息をつくロト。暑いのか、首元をあおぐ彼の左鎖骨にはちらりと鳥の形の痣が見えた。
なおも雑魔は一行の進路を妨害して襲ってくる。コロは威嚇を続け、果敢にも食らいつこうと隙を伺っていた。例え雑魔だろうが、コロにとっては行く手を遮る障害でしかないのである。
普段、10歳くらいの外見のイレーヌ。戦いに臨む彼女は、敵に立ち向かおうとするコロを守るべく覚醒し、成人女性の外見へと変わっていた。
(衣服のサイズまで変化しないのが、玉に瑕なのだがな)
そのまま大きくなることで服が破れ、露出過多になるのがイレーヌは気に食わないようで。豊満な体を躍らせながらも彼女は光の弾を飛ばす。
眩い光に身を焼かれる木。ハンターはさらに雑魔の体当たりをやり過ごしながらも攻撃を浴びせる。
ファリスが飛ばす炎の矢。刹那、その体が勢いよく燃え上がったかと思うと、雑魔の姿は消え失せていた。
気づけば、すでに雑魔は1体まで減っている。
菜摘は覚醒することで、迷彩色のオーラで身を包んでいた。眼球にはスコープサイトの模様が浮かび、集中力を増したことで射撃の命中精度を高めている。
菜摘は猟銃を構え、ゆらりと動く木の雑魔を撃ち抜いた。
それでも、雑魔はギギと音を立て、広げる枝葉から数本の枝を飛ばす。
飛んできた枝を、弥栄が見事に刀で一刀両断する。彼はそのまま躍りかかり、敵の体を斬り伏せた。
ただ、やや浅い。体をボロボロにしながらも、そいつはゆらりと動く。
そいつ目がけてレイが水平に雷神斧を振るうと、雑魔の体が斬撃に沿ってズレていく。重い音を立てて左右にスライドした雑魔の姿は、地面へ落ちた直後になくなってしまったのだった。
その直後、コロはきょろきょろと辺りを見回す。無謀に雑魔に食らいつくこともなく、また、ハンター達によって守られたことで、コロにさほど怪我もないようだ。道をふさぐ脅威がなくなったことで、彼はまたてくてくと歩き始める。
一行は安心して、散歩するコロの追跡を再開するのだった。
●林の中でコロは……
てくてくと林の中を歩くコロは、やがて足を止める。
そこは、土が盛られ、木が十字に組まれた場所。どうやら、人の手によってつくられた墓のようだ。
コロはその組まれた木に、すりすりと頬ずりをする。
「もしや、コロ殿にとって大切な方の御墓なので御座いましょうか」
弥栄に合わせ、メンバー達はコロの様子を覗き込む。
イレーヌも、ファリスも、静かにコロを見守っていた。できる限り、彼の邪魔をしたくないという配慮からだ。
ロトは皆が見守る中、距離を取って周囲の調査を行う。崖など、危険な場所がないかと考えたのだ。とはいえ、ぬかるみになっている場所こそあるが、それ以上に危ないところはないようである。
程なくしてロトが戻ると、盛られた土の上でうずくまるコロの元に、仲間達が近寄っていた。
「……貴方の、ご家族の墓、ですか」
レイは墓を見て推測する。かすれていたが、そこには何かが書かれていた跡がある。
ここはおそらく、コロの親の墓なのではないか。そして、丁寧に組まれた木の墓標は、通りがかった誰かが作ってくれたのかもしれない。
「死後も大事に思われるとは、実に良きかな」
弥栄は近場から花を摘み、墓へと供える。
「近くに咲いている花故見慣れたもので申し訳ありませぬが、コロからの分を是非、私めに供えさせてくだされ」
この場に眠る誰かの為に。メンバー達は冥福を祈る。
その後、一行はその場で森林浴を始めた。幸いここは草が茂る場所。座ったり寝そべったりしても大丈夫とハンターは判断したのだ。
ロトはポテトチップスやナッツ、レイがバラエティランチを広げれば、匂いにつられたコロも起き出し、おやつタイムが始まる。
「無駄にならなくてよかった」
「美味しく召し上がっていただいたなら、幸いです」
皆、2人が持ち寄った食べ物を美味しく食べていたようだ。
「ほら、私は敵じゃないからな」
イレーヌがポテトチップスをチラつかせると、コロは匂いを嗅いでから食べ始める。人懐っこいコロはすぐにハンター達に懐き始めたようだ。
「コロちゃん、この子はヨハンナなの。この子の友達になって欲しいの」
ファリスはコロに愛犬を紹介すると、2匹は仲良くじゃれ合い始める。
その様子を、菜摘も興味深そうに眺め、犬が喜ぶ行為などを見ていたようだ。
しかし、お腹がいっぱいになったからか、コロはすぐに大きな欠伸をする。
「……ここは涼しくて気持ちいいの。ファリスも少しだけお昼寝するの」
ファリス、そしてイレーヌも。皆、涼しい木陰の下でうたた寝を始めた。
「君達は、どうしてそこまで純粋に突き進めるのかな」
木に寄りかかって起きていたロトは、眠るコロにぼそりと声を掛ける。
以前にも犬に関する依頼を受けたロト。その時の犬も必死だったのを彼は覚えていたのだ。いまだに不思議に思う彼ではあるが、それに答えなどないのだろうとロトは天を仰いで考えるのである。
しばらくうたた寝していたコロ。
林での一時を満喫した彼は、てくてくと元来た道を戻り始める。
帰り道、コロと並ぶようにハンター達は歩く。その際、また雑魔が現れないようにと、ファリスが一行を先導していたようだ。ちなみに、彼女の愛犬ヨハンナはコロと一緒に歩いている。
「いつも彼処で涼んでいるのか? 羨ましいことだな」
同じく一緒に歩くイレーヌが軽く笑って語りかけると、コロはワンと元気に一鳴きした。
●できることなら
日が傾き始めた頃、コロとハンター達はサンドラの家へと戻ってきた。
「この弥栄、所詮犬で御座います故、稚児殿の世話等自由に使っていただき構いませぬ。幼子の世話は以前にも経験が御座います故」
その主張もあり、弥栄はサンドラの子供をあやす任を請け負っていた。
その間、レイが林での出来事をありのままに報告する。
「……寂しいのかも、しれませんね」
サンドラもコロを拾った当時から、林に1匹だけでいた彼のことが気になっていたそうだ。
「……あの場所はコロちゃんにとって大切な場所なの。だから、止めないで居て欲しいの。
ファリスはサンドラへとそう提案する。
「彼は、貴女達の家に帰ってきていますから……きっと、彼も解っているんでしょうね」
「きちんとこの家に帰ってくるのは、おば様達のことを家族だと思っているからなの」
そうだねと少しだけしんみりするサンドラ。コロの行動はおそらく、あの場所で眠っている肉親と、今の飼い主とを大切に思うからの行動なのだろう。
翌朝。
コロは使命感を持って、いつものように歩き出す。あの林の、あの墓を目指して。
幼子を抱いてそれを見送るのが、サンドラの新たなる日課となったそうだ。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/08/19 20:32:15 |
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相談卓 弥栄(ka4950) 人間(クリムゾンウェスト)|21才|男性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2015/08/20 02:47:55 |