• 深棲

【深棲】Mi=Go

マスター:のどか

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/07/24 19:00
完成日
2014/08/03 11:04

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「あつぃぃ……溶けるぅぅぅ……」
 夏のハンターズオフィスで新人受付嬢はその暑さに見事にやられ、ぐでーっと身体をデスクに預けていた。
 ぱたぱたと書類の束を団扇代わりに扇いでみるも、起こる風まで生ぬるくては余計に体力を使うだけだった。
 
――プゥゥゥン
 
 その不快極まりない音を聞いたのは不意のことだった。
 そう、ヤツらはいつも知らないうちに近くに居て、知らないうちに身体に傷跡を残していく。
 ある種、人類の生涯の敵にして歪虚以上の天敵。
 
――プゥゥゥン……ゥゥゥゥン……ゥゥゥゥン
 
 その高周波にも似た独特の羽音は近づいたり離れたりを繰り返しながら獲物からその体液を搾取する機会を伺っている。
 気づかなければ成す総べなく新鮮な血液を奪われてゆくことだろう。
 しかしこうして不意にでも気づいたならば話は別だ。
 その小さな影を受付嬢はうだるその目でしっかりと捉えていた。
 
――プゥゥゥン
 
 ぴたりとその羽音が止む。
 それと同時に。
 
――パシン!
 
 受付嬢は慣れた手つきで自分の左腕をぴしゃりと叩いてみせた。
 そうしてそっと、叩いた手を目の前に翳す。
「……ちぇっ、逃がしたか」
 呟きと共に、その羽音は何処か遠くへと飛び去っていった。
 受付嬢は再びデスクに身を投げ出すと一層深くため息を付いた。
 その時ふと、1枚の紙がその視点の定まらない視界に入った。
 自分がついさっき団扇の代わりに使っていた紙――入ってきたばかりの依頼書だった。
「やば、ルミちゃんすっかり忘れてた」
 気だるそうにその身を机から起こすとその依頼書にさっと目を通す……と同時に、ガタリとその机から勢いよく立ち上がった。
「ふむ……ふむふむ……ふ~ん♪」
 今度はさっとではなくじっくりと嘗め回すようにその依頼内容を熟読すると、再びガタリと音を立てて机に座る。
 そうしてすぐに傍らのペンを取った。
 ハンター達に張り出す用紙を整えるためである。
「うん! やっぱり身体の心から涼しくなるにはオカルトもといスプラッタよね!」
 そう言うとさらさらと書類を整えてゆく。
 依頼書にはこう書かれていた。
 
――ここ最近、村で怪事件が多発している。
 ウチは小さな港町なのだが、人の手によるものと見るにはあまりに惨い殺人事件がこのところ立て続けに起きている。
 手口は全て同一で、身体の一部・若しくは至るところに刃物のようなものによる切傷・及び欠損が多数。さらに高い塔の上からでも落ちたかのようなひどい打撲・骨折の跡。
 そして極めつけが、被害者すべての頭頂部……頭蓋骨がぱっくりと切断されその脳が持ち去られている事。
 どう考えても人の手によるものとは思えないその猟奇的な手口に村では様々な意見や憶測が飛び交っている。
 そんな中、村の上空を虫のように滞空する異形のモノを見たという話が持ち上がった。
 それも単一の報告ではなく、何人もの人々が目撃しているものだ。
 その異形の虫はハエのような身体に甲殻類のような巨大なハサミを持ち、その頭部はまるで爛れた脳ミソのようなグロテスクな姿をしていたと言う。大きさは人間大ほどで、その一種のキメラのような姿は狂気の産物としか言いようが無い。
 そこで思い出したのが巷で話題となっている海洋性歪虚の話……こいつがその一種でもそうでなくとも、村人の安全に関わる自体だ。
 ハンター達よ、力を貸してほしい。
 
  
「――これでよし、っと」
 受付嬢は貼り出し用の書類を整えると目の前に掲げ、その出来映えをチェックする。
 そうしてうんと一つ頷くと静かに天井を見上げた。
「涼しくなれるようなお土産話、聞かせなさいよね」

――プゥゥゥン……パン!

「よっしゃぁ! ルミちゃんの勝利ィィ!」
 そうして天井を見上げた際に再会した先ほどの天敵。
 それをちょうど手に持っていた紙で叩き落すとぐっとガッツポーズを取ってみせる。
 が、手に持っていた――貼り出す予定の依頼書に赤い染みが付いたのは言うまでも無い。
「……ま、いっか。このまま張っちゃお」
 そうして受付嬢はそ知らぬ顔で掲示板へと依頼書を貼り付けるのだった。

リプレイ本文

●海洋エンカウント
暗い洞窟の中に3つの足音が木霊する。
遠くに聞こえる波の音。同時に足元の流入した水面がキラキラと光源に照らされ忙しなく輝く。
夜に現れるという怪異を討ち払う依頼を受けたハンター達は、その謎に包まれた生態系の疑問に対し『昼の所在を探す』と言う手段で臨んでいた。
村の住人達の話によれば怪異は夜にしか目撃情報が無く、その昼の生態は謎とされていた。夜行性であるのならば昼はどこかで休んでいるのでは……?
そんな素朴な疑問の下で彼らは村の聞き込みを続け、大きく2つのポイントを割り出した。
その一つがここ――漁村の近くにある海岸沿いの石洞窟。
海岸の断崖絶壁を長い年月を掛け波が削り取って行ったのだろう。大きく、そして深く刻まれたその断崖の洞窟は太陽が高く上る真夏の日中でありながらヒンヤリと冷たい空気が流れ、ハンター達の首筋や足元をゾクリと撫で上げる。
そんな洞窟を散策するエカテリーナ(ka0628)、ウィアズ(ka1187)、バレル・ブラウリィ(ka1228)の3人は濡れて滑りやすい足元に注意しながら慎重に洞窟の散策に励んでいた。
「それにしても物騒な事件です……これ以上被害が出ないうちに解決したいものです」
 ランタンの灯りで周囲を注意深く照らしながらエカテリーナは口走った。
「その為にこうして昼の所在を探しているんだからな」
 その言葉にバレルが淡々と答える。
「聞くに夜の活動が好きな相手だ。それなら昼に撃退さえしてしまえば……それだけ被害は減らせるだろう」
 そう言いながら、バレルもまた天井や足元の水中などを注意深く照らし出す。相手は巷を騒がせる半魚系の雑魔である可能性が非常に高いのだ。その上、村人の話では空を飛ぶことも出来ると言う。
 陸・海・空――どこから攻めてくるのか全く想定の付かない相手。これほど厄介な敵はおそらく今回依頼を受けたハンター達の誰もが経験したことが無い相手であろう。
「にしてもこの依頼の内容自体ホラーだけどさ……俺にとってはあの依頼書の時点で軽くホラーだったんだけど。なんか血、付いてんだけど」
 依頼を受けてからと言うもの、説明を受けるオフィスでも、敵の詳細を聞いた村での聞き込みでも、そしてココでも、終始怪訝な表情を浮かべていたウィアズ。話を聞けば聞くだけその全てが気持ち悪いこの一連の事件の内容に背筋をゾクリと撫でられるような嫌な気配を感じ取っていた。
 ちなみにその積み重なる恐怖のうちの1つが人為的なモノである事は知らないほうが幸せであるのかもしれない。
「……ぁ」
 先頭で正面を照らしていたエカテリーナが小さな声を上げる。
「行き止まり、みたいですね」
 彼女が灯りを翳すその先には最深部を告げる物言わぬ岩の壁が照らし出されていた。
「どうやらここはハズレのようだな」
 バレルはやれやれと肩をすくめながらトランシーバーを取り出しスピーカーを口元へ寄せる。
「こちら洞窟班。どうやらパーティ会場はココじゃないらしい、オーバー」
 数秒の間……しかしもう一方の班からの返事は返ってこない。
「聞こえてるか、オーバー?」
 もう一度、事務的に電波に乗せてへ語りかける。それでも、返事が返ってくる様子は無い。
「奥まった所で電波が届いてないのか……?」
 トランシーバーを目の前に掲げゆらゆらと揺らしながらため息を吐くバレル。
「あちらの班に何かあったので無ければ良いのですが……」
 そう、返事の無い別班の安否を気遣うエカテリーナ。
「……やっぱりこの依頼、ホラーなんですけど」
 そんな二人の傍らでウィアズは一層怪訝な表情を浮かべてまるで冬の寒さにでも耐えるようにその両方二の腕をさすり上げた。
 
 ――その頃、海岸を重点的に捜索していた満月美華(ka0515)、ロイ・J・ラコリエス(ka0620)、スズカ ケイ(ka2515)の3人は見通しの良い浜辺での捜索を成果無しと早めに切り上げるともう一方の本命である水中へとその身を投じていた。
 初めてその身を投じるであろう水中という戦場……普段とは違う勝手の中、ハンター達は手探りで何とか捜索を進めていた。一番大きいのはやはり会話ができないこと……ハンドサインやジェスチャーも慣れてきたものだが、細かい方針の相談はいちいち海面に出る必要があり、捜索は難航していた。
 そうして何度目かの潜水の時だった。
 3人が差し掛かったのはやや沖合いにある暗礁地帯……慎重に捜索を行うハンター達のすぐ傍の暗礁を、謎の黒い影がぼうっと横切る。その姿を一瞬視認したのはロイ。その目を見開きながら激しく指を挿し、2人に見たモノを伝えようとする。しかし2人が指の先を振り返った時……そこに謎の影は既に無かった。
 そんな彼らをあざ笑うかのように、再び黒い影は岩の隙間を横切る。今度は逆に、美華とケイが視認する。手早いジェスチャーでその事をロイに伝えると、3人は背中を預け会うように固まり己の武器を抜き放った。まるでサメでも彷彿とさせるようなスピードでハンター達を取り囲むかのように周囲を泳ぎ回る黒い影……不意に、その姿が消えた。忙しなく動き回っていた影がぴたりと見えなくなったのだ。3人の間に静かな緊張が走る。
 その緊張を破るように、真上の水面から異形のモノが彼らを襲ったのはそのすぐ後の事であった。
 咄嗟に寄せ合った背中を離し散会する3人。頭上から恐ろしい速度で振り下ろされたその巨大なハサミを寸前のところで回避する。同時に、3人はその異形のモノのその姿を目の当たりにした。
 巨大な海老のような多脚の図体。その大きさは人間の大人にも等しく、その最大の特徴であるハサミはその全長の半分にも届くかと思えるほど巨大であった。その背に生える悪魔的な翼。そしてその頭部。イソギンチャクのような――いや、まるで人間の脳をそのまま取り付けたかのような、一般人では直視することすら憚られる異様なその頭。
 まさしくそれは名状しがたき、異形の怪物であった。
 そんな怪物を目の当たりにしたハンター達を他所に、怪物は立て続けにもう片方のハサミを振り下ろした。間髪入れずに放たれたその一撃は散会したハンターの動きを的確に捉え――傍に居たケイの頭部目掛け振り下ろされる。蒼い海が血の紅に染まる。
 ケイのぼやけた視界の先に美華とロイが水面に上がれと必死に指示を出しているのが見える。その指示を受け、残る力を振り絞り水面を目指した。
 離脱する隙を作るために美華はマテリアルで石つぶてを作り出し、ロイはその手にジャダマハルを構え怪物へと放つ。しかし、怪物はその翼を一つ大きく羽ばたかせ水をかくと驚異的な加速力で石つぶてとロイの一撃を回避する。その圧倒的な水中適正を前に美華とロイは一瞬目を疑い……怪物が離れたその隙に海面を目指し全力で離脱を図る。
「……っぷはぁ!」
 地上の新鮮な空気を肺いっぱいに吸い込みながらロイは水中を顧みた。
 光指す水面へ向かったハンター達を怪物は追うことは無く、暗く深い海の底へとその姿を消していくのが見えた。
「何なんでしょうアイツは……」
 ロイと同じように肩で息をしながら水面を漂う美華。
 海岸を見やると先に上がっていたケイが傷の処置を行っているのが見える。その傷は非常に深く、怪物の一撃がいかに強烈であるかを物語っていた。
 
●闇に囁くモノ
 漁村へと戻って来たハンター達はすぐに情報共有を行った。敵の住処を見つけた事、しかしそれが海中で敵の力を十二分に発揮する場であること。話し合いの結果、夜中に敵が海から村へと徘徊して来たその時を狙う事となった。住人は既に村の外に避難して貰っている。ハンター達は見通しの良い屋根の上で海岸を見張る後衛組と村の中央で怪物の襲来に備える前衛組とで別れ陣を敷く。近接組の傍らにはケイの案で村人に集めて貰った薪の山……油を染み込ませ、燃えやすくしてあった。
「傷の具合は大丈夫ですか……?」
 エカテリーナが昼に大怪我を負ったケイの体調を気遣う。
「気遣いありがとうございます。傷は回復させましたし、存分に戦えますよ」
 そう言いながら水中銃のマガジンを陸戦用のそれに換装するケイ。
「……皆、来たよ!」
 感覚を研ぎ澄ませ海岸を見張っていたウィアズが不意に声を上げた。
 その視線の先には、身体から海水を滴らせ、まるで悪魔が地上に舞い降りたかのように漆黒の闇の中を飛ぶ怪物の禍々しき姿があった。
「攻性強化を掛けます。初撃は任せましたよ、ウィアズさん」
「ОK……!」
 エカテリーナの掛けた支援術式によりウィアズの身にマテリアルのエネルギーが流れ込む。そうしてウィアズはその緋色の瞳の中心に怪物を捉えると、ゆっくりとその弓を引き絞った。
 村の領域へとその身を投じる怪物、しかしまだウィアズは動かない。もう少し……もう少し引き付けてから――
「――今だッ!」
 引き絞られた矢が闇夜を切り裂いて飛翔する。その矢は空中を漂う怪物の腹に深々と突き刺さった。
 怪物がこの世のものとは思えない不快な声を上げ、その身を震わせる。
「攻撃、開始します!」
 矢の一撃に怯んだ怪物へケイの弾丸と美華の風の刃が立て続けに襲い掛かり、青い体液を撒き散らす。
「流石に地上じゃ水中ほどの機動力は無いようですね」
 暗所のため狙いから外れてはいたが、それでも的確に当たる攻撃を前に美華は確かな手ごたえを感じる。
 強襲を受けた怪物は一時的によろよろと高度を落とし村の深部へと足を踏み入れた。
「バレルさん、今です!」
「カニだかハエだか知らないが、夜を楽しむにはちと薄暗いぜ?」
 ケイの掛け声と共にタバコを薪の山へと投じるバレル。油の染み込んだ薪は、その種火を元に一気に燃え上がった。立ち上る火柱に周囲が一瞬真昼のように照らされる。
 その光をまともに受け、怪物は全身を痙攣させその場で硬直した。
「やっぱり! 水上を漂って恰好の的だってのに襲って来なかったから変だと思ったんだ!」
 怪物の様子をみてロイがパチンと指を鳴らす。
「この怪物は典型的な夜行性……いえ、単純に明所を嫌う性質なのでしょう。だから太陽の光が差し込む海面へは追って来なかった」
 美華はその火柱に照らされた炎に負けない紅い髪を潮風に靡かせる。
 焚き木の灯りを前にトンボ返りを決める怪物。そのまま目の無い顔で焚き木から最も遠い手近な相手――ウィアズへとその的を絞った。
 振り下ろされる大ハサミ。ウィアズはその一撃をバックステップで回避する。
「気をつけて、続けざまに2発目が来ます!」
 そう叫んだ美華の助言の通り、2本目のハサミが下がったウィアズの頭部を勝ち割ろうと振るわれる所であった。
 その一撃をそのまま後ろに倒れこむ事で紙一重でかわしたウィアズ。その切っ先に触れた白銀の髪がはらりと宙を舞った。
「あっぶねぇ……!」
 怪物はそのまま空中を回転するように飛び回ると、続けざまにケイへとその目標を定める。
 水中でそうであったように無慈悲に振るわれる大バサミ。しかしケイの背後に揺れる炎で目測を誤ったか、初撃を大きく外し空を切るハサミ。咄嗟に追の一撃を回避するべく身を屈めるケイ。だがより鋭く振るわれたその二撃目を前に完全に避けきる事は敵わず傷跡の残る頭部をその切っ先が掠め取った。
「ぐうぅぅぅぅぅぅ!」
 額から血を噴出しその場によろめくケイ、しかしその足でしっかりと踏み止まると仲間達へ向かって叫んだ。
「い……一度焚き木の傍へ移動しましょう! そこなら安全なハズです!」
 掛け声に呼応して後衛の4人は吹き上がる火柱の傍へと転がり込む。
「エカテリーナさん、俺にも攻性強化を!」
「しかしケイさん、傷口が……!」
「気にしている余裕があったらその分アイツを倒すこと考えましょう!」
 血の滴る額を引きちぎった衣類でギュッと縛りながらケイは言う。エカテリーナはその言葉に従い、ケイへと攻性強化を掛ける。
「いい加減降りて来いよー! 卑怯だろー!」
 なおも空を支配する怪物にロイが地団駄を踏む。その肩をバレルが静かに叩いた。
「そうだな……そろそろアイツには地べたを這いずり回って貰おうか」
 そう言いながらバレルは焚き木の安全地帯から静かに闇へと躍り出る。
「俺たち前衛で敵を引き付ける。その隙に翼を狙い撃ってくれ。できるな、ロイ?」
「もちろん! 寧ろ俺の得意分野だね!」
 不意にその身を屈めるとその踏み込む足にマテリアルを集めてゆく。
「位置について、ヨーイ……ドン!」
 同時に爆発的な加速で怪物への距離を詰めるロイ。
「いないいないばぁ! なんちゃって」
 その俊足は一般人から見ればまさしく瞬間移動のようにも見えただろう、その速度に当てられてか怪物も目標を目の前に迫ったロイへと定めた。
「前を向いたら後ろに注意しな」
 高度を落とした怪物の背後からバレルの渾身の一撃が振り下ろされる。その一撃は翼をもぎ取るまで行かなかったがその背中を確実に引き裂いた。
「その隙、逃さない……!」
 ウィアズの放った強弾が大きく広げられた翼を正確に射抜く。
 がくりと、怪物の体勢が傾いた。
「美華さん……お願いします!」
 その怪物の翼を真正面から捉えた美華にエカテリーナが己のマテリアルの力を流し込む。
「大人しく地面にキスしてなさい!」
 そうして放たれた美華の風の刃がその異形の片翼を根元から引き裂いた。
 飛行能力を失い、地面に叩きつけられる怪物。それでも本能か、目の前のロイにその大ハサミを振り下ろすが、疲弊し速度を失った一撃はロイの前にひらりとかわされる。
「追撃は頭……だったっけ?」
 横なぎに振り回された2撃目、しかしその怪物の疲弊がその時のロイには災いした。頭部を狙うと思われた一撃は、その疲弊からか袈裟のように斜めに切り下ろされたのである。それは頭部への攻撃を避けようと屈んだロイの足に引っかかり、そのまま彼の機動力の源である足を切り裂いた。
「あぁぁぁぁぁぁ! 足、足が……!」
 不意の足への一撃に蹲り叫ぶロイ。
「援護します、離れてください!」
 なおもロイを狙おうとする怪物の腹へ銃撃を浴びせ隙を作るケイ。ロイはその隙に這い出すように怪物の懐から退避する。
「ロイ、ありがとう……今度はこっちが引き付ける番ですね!」
 美華は水中でもそうしたように石のつぶてを作り出し一斉に怪物へと放つ。その一撃をモロに全身に受けた怪物は身体を気持ち悪く痙攣させながらその場に硬直した。
 そんな怪物にバスタードソードの剣先を地面に引きずりながら、炎を背に静かに近づくバレル。放心状態の怪物の前でその剣を振り上げると、その足でどっしりと地面を踏みしめた。
「バカンスするには少しはしゃぎ過ぎたな、脳ミソ野郎」
 そうして彼が振り下ろした一撃は怪物の頭部を叩き割り、異形の半魚系雑魔は完全に沈黙したのだった。

依頼結果

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MVP一覧

  • 緋弾の射手
    ウィアズka1187

  • スズカ ケイka2515

重体一覧

参加者一覧

  • 《潜在》する紅蓮の炎
    半月藍花(ka0515
    人間(蒼)|17才|女性|魔術師
  • 韋駄天
    ロイ・J・ラコリエス(ka0620
    人間(紅)|12才|男性|疾影士

  • エカテリーナ(ka0628
    人間(紅)|13才|女性|機導師
  • 緋弾の射手
    ウィアズ(ka1187
    人間(紅)|17才|女性|猟撃士
  • 堕落者の暗躍を阻止した者
    バレル・ブラウリィ(ka1228
    人間(蒼)|21才|男性|闘狩人

  • スズカ ケイ(ka2515
    人間(蒼)|19才|男性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 作戦会議室
バレル・ブラウリィ(ka1228
人間(リアルブルー)|21才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2014/07/24 10:00:01
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/07/20 01:17:07