畑とお肉と、メとメとデリバリー

マスター:練子やきも

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/08/25 09:00
完成日
2015/09/08 18:17

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「じゃあこれ、置いとくね〜」
 黄色いポニーテールをピョンピョン揺らしながら、既に顔馴染みとなった酒場の親父に新作の酒樽を渡し、ひと息つく少女が居た。少女の名前はエルミィ。機導師ではない錬金術師に憧れ、独学の錬金術? で色々変な物と酒類を作っている新米ハンターである。
 料金を受け取り、手を振って店から出ながら、次はどんなお酒にしようかな、と考えながら歩くその前を、子供達が走り抜ける。どうやらハンターごっこに興じているようで、棒切れを振り回す姿がちょっと危なっかしい。

 その姿を見て、ふと足が止まるエルミィ。
「……あれ?」
 つい先日、精霊との契約を無事に済ませ、昔からの憧れだったハンターとなった少女だったのだが……結局それ以降、怪しい薬品っぽいナニカと酒しか作っていない事に
「これじゃ村に居た時と変わんないじゃない!」
 町の通りのど真ん中で突如叫んだ少女は、どうやらたった今気付いたようだ。

●ハンターオフィス
「なにか変わった事がしたいんです!」
「冷やかしなら帰って下さい」
 その足でハンターオフィスへと駆け込み、受付の机に駆け上りそうな勢いで受付嬢に話し掛けるエルミィに、シッシッと手でも振りそうな冷淡さで対応する受付嬢。
「わ、わたしもハンターになったから依頼受けられますし、たまにはお酒作る以外の事したいなーって」
 走り込んだら壁に激突した、的な受付嬢の対応に若干怯みながらも言い募るエルミィに
「カクテルでも作ってれば良いんじゃないですか?」
「もういっぱい作りました!」
「……あ……本当に作ってたんですね……」
 受付嬢が投げやりに出した折衷案は不発に終わる。……そう言えば、前にこれ言った後に行きつけの酒場でカクテル扱い始めた気がするなぁ、などとぼんやり考えながら、諦めてなるべく危険がなさそうな、戦闘の無さそうな依頼を見繕う受付嬢。
 その姿をキラキラした目で見つめるエルミィの前に、一つの依頼書が提示された。


●村人たちの決意
「おらが村でも戦のためにできることがあんべ!」
「おう! 村の野菜食えば元気百倍だでよ!」
 ゴブリンとの決戦に沸くグラズヘイム王国北部のとある小さな村で、補給物資の集積所に畑の野菜を届けるために、立ち上がった村人達が居た。
 戦える人手は全て駆り出されているので人手が足りず、逆に近くにいた輸送隊のハンターをとっ捕まえて畑の野菜を掘り出して持って行かせる、という暴挙……作戦に出ていた。

「わかりました! これ引っこ抜いて補給物資の集積所に持っていけばいいんですね!」
「おう! 持てるだけ持ってってくれ!」
 補給部隊の手伝いに来ていてしっかりとっ捕まった、エルミィと数人のハンター達。

「だいこん、にんじん、Burdock〜」
 鼻歌を歌いながら野菜を引っこ抜いてはポイポイ放り投げるエルミィと、畑仕事をしているハンター達の、大根を抜いた穴から赤い物が見えるようになって来て……ふと、その赤い物の中に開いた目と目が合ってしまった。
 周りの者も同様のようで、にわかに騒めく畑の中。
「こっ、これはっ!」
「知っているのですか村長!」
「Taisaiじゃ! タイサイが出たぞぉ〜!」
 お決まりのやりとりをしつつ、どうやら腰を抜かしたらしく、仰向けにひっくり返ったままカサカサとバックして逃げ出す村長達。
「たいさい?」
「うむ、土の中に居る赤くて目玉だらけの謎の生物での、掘り出したら呪いで一族郎党死に絶えるという恐ろしい生物じゃ。あと食うと美味い」
「へー、美味しいんですね〜」
 重要っぽい前半部分をまるっとスルーして、目玉だらけの赤い物体を眺めるエルミィにツッコむ間も無く、畑の地面が弾けると、赤い巨大な物体が地中から飛び出して来た。

リプレイ本文

 柵で囲まれたその場の、中央が爆発するように弾け、抉れた畑の中、その陥没した中央に鎮座する、目玉だらけの巨大な赤い肉塊、タイサイ。
 慌ててキョロキョロしているエルミィを横目に、いち早く我に返ったハンター達はアイコンタクトを取りつつ、自らの行動を開始した。

「タイサイには私達が対応します! 村長様達は私達が行くまで動かずに!」
 腰を抜かして倒れた村長達老人連中にレイ・T・ベッドフォード(ka2398)の指示が飛び、カサカサとバックを始めた村長達の動きがピタリと止まる。
 それを見たのやら見ていないのやら、タイサイの大量の目玉は、どうやら村長達に興味を示すような動きは見せていないようだ。
「……さて、悪名高いそうですが……護ってみせます」
 あえて何を、と明言しない事でピシッと決まったレイのイケメンポーズだったが、……実は人命に近いポジションの優先順位で、胃袋の保全が含まれていた事は、その表情から伺い知れる物ではなかった。

 その村長達の避難の手伝いに向かったクィーロ・ヴェリル(ka4122)とエルミィだったが
「チンタラすんな、さっさと動け! 敵は待っちゃくれねぇぞ!」
「ほぁっ!?」
 覚醒の影響による性格の変化により、先刻までの優しげな様子から一転して、いきなり態度が荒くなったクィーロの豹変に驚くエルミィと、驚きで今度は逆にひっくり返って、バタフライで前進を始める長老達。
 自主的に泥だらけになった村長達に手を貸して立ち上がらせるクィーロとエルミィだったが、どうやらタイサイは他のメンバーに興味を集中させたようで、タイサイの視線がそれ以降村長達に向かう事は無かった。

「フフフ……」
 赤く煌めくルビーに彩られた大型の魔導拳銃を嬉しそうに弄りながら、タイサイにピタリと照準を合わせるジェニファー・ラングストン(ka4564)の脳内で、
 (いーしやぁ〜〜きぃ、いもぉ〜)
 何故か再生される石焼き芋の呼び声。……レイジオブマルスの炎属性を含め、戦いが始まる前から既に、焼いて食べる気満々のジェニファーだった。

「太歳か、久しいのう……」
 落ち着き払い、静かに流れるように刀を構える守屋 昭二(ka5069)。
「まともに相対した事は無いが、まぁ何度か見ておるしの」
 近接攻撃の間合いを見切り、ピタリと正眼に構えた刀が、見る物に、そこに聳え立つ刃の壁の存在を伝えていた。


「とりあえず、作物を荒らされるのは防がねばですね!」
 愛馬のジールを呼び寄せながら、その辺に置いてあったリヤカーを引っ張って来るメリエ・フリョーシカ(ka1991)と、
「ソルト、シュガー、出来るだけ見付からないように頼むぜ」
 その辺に転がっていたカゴを拾い上げ、自分のパルムにもカゴを持たせるレイオス・アクアウォーカー(ka1990)。
 元々集積所まで運搬する予定だった事もあり、野菜を運ぶ道具に事欠く事は無かった。


●戦いのお時間
 仲間達が戦うために動き回るスペースを確保するため、レイオスとメリエ2人の手が地面に積んであった野菜にかけられた時、……場の空気が変わった。
「!!!!?」
 音として表すとモギョー! とでも言うべきだろうか、タイサイの鳴き声? は、どうやら怒りを表しているのだろう、ほとんどの目がメリエとレイオスの方を向いており、どうやら野菜を持って行かせたくないらしい。……もしかしたらこのタイサイ、野菜目当てで現れたのかも知れない。
 それはともかくとして、その赤い目に紅い光が明滅し、なんだかいかにもナニカをチャージ中っぽい雰囲気を醸し出す。
「頑張れジール! 美味しいニンジンが待ってるぞー!」
「ソルト! シュガー! 急げぇー!」
 詰めるだけの野菜を積み込み走り出したリヤカーに乗ったメリエとレイオスの背を追うように、タイサイのその瞳から放たれた大量の光線が浴びせられた。

 無論の事、タイサイの側で戦っていた3人も被害を受けない物でもなく……。

「突進とか移動は防げるんじゃが、飛び道具ばかりはどうしようもないからのう……」
 無念そうに、老練の足捌きで光の帯を捌く守屋と、自分が避ければ背後に庇っていたメリエとレイオスへの攻撃が更に増える事に思い至り、敢えてその身で攻撃を受けざるを得ないジェニファー。

(此方に注意を引き付けなければ……)
 ジェニファーと同じく敢えてその身で攻撃を防いだレイは
「……とにかく! いっぱい殴ります!」
 積極的に攻撃を仕掛ける事で引き付ける作戦に入る事にしたようだ。さりげなく守屋が射界に入らないようにしようとはしているものの、……正直サイズと攻撃範囲的にちょっと無理っぽい感じはある。

「……ちっ。おい、爺さん! アレは何回も撃って来るのか?」
「うむ! まさか野菜運びの方をメインで狙うとは思わなんだが、何回でも撃って来るぞい!」
 怒鳴るように問いかけるクィーロに、村長ではなく守屋が応じる。爺さん違いではあるが、まぁ爺さんには違いない。
 エルミィに野菜を運ぶ手伝いをさせるつもりだったクィーロだが、集中砲火を受けたメリエとレイオスを見ては、エルミィに野菜運びをやらせるのは無理と判断するしかなかった。
「エルミィは避な……村長達を護衛しときな。護衛なんだからこっちには来んじゃねーぞ?」
「わかりました! 頑張って守ります!」
 ギリギリで言い直したクィーロの言葉に素直に従った、返事だけはとても良い、機械を持っていない機導師を村長達の護衛として安全な位置に移動させ、自分は野菜の回収に回るクィーロだった。


「ほりゃっ! 迂闊に進めば真っ二つじゃぞ?」
 右かと思えば左に、進むかと思えば退く。老獪な動きと熟練の読みで、タイサイが移動して野菜を踏み潰してしまう事を防ぎながら、少しずつ斬り付けては地道にタイサイを削っていく守屋。ーーその横から、チラリと後ろを見て後方がクリアになったのを確認したジェニファーが、ここぞとばかり、ストレスを発散するように走り出す。タイサイの上に駆け登りながら、紅く煌めく銃をぶっ放しつつ、転んだように顔面を足下のタイサイに近付けると……あろうことか、タイサイにガブリと噛み付き、そのまま喰い千切る!
「一足お先に、味見じゃー!」
 味見というレベルではなくがっつり頬張った生肉を、モグモグごっくんとそのまま飲み込んでニヤリと微笑むジェニファー、ふと目が合ったタイサイの目の1つは、明らかに涙目になっていた。そしてタイサイは生でも美味かった。

(……注意を引くには確かにかなり効果的そうですね……)
 白いハルバードを大きく振り抜いてタイサイを攻撃しながら一瞬考えて、ちょっぴり口を開けてはみたが……静かに口を閉じて首を振るレイ。生はちょっと勇気が足りなかった。
 

 その後ろで、皆が動き易いよう野菜をカゴに回収しているクィーロの所に、リヤカーを引いたゴースロンと共にメリエとレイオスが戻って来た。
「クィーロも来てくれたか、3人でやれば早いな……ってまたあいつ光ってんぞ!」
「どんだけ野菜運ばせたくないんですか!」
「ぅおあー! 急げーー!!」
 再度紅く明滅し始めたタイサイの瞳を見て、カゴやリヤカーに野菜を放り込みながら慌てて走り出すクィーロ、メリエ、レイオスの3人と、そのペット達だった。


●反撃のお時間
「よし皆揃ったの、後は若いもんに任せるぞい。良いか? 奴の目は狙いを付ける目とビームを撃つ目に分かれておるから、ビームを撃つ目を潰せば後はただの肉じゃ」
 野菜を運び終え、戻って来たレイオス、メリエ、クィーロの気配を背後に感じながら、そろそろプルプルし始めた足を気合いで持たせつつ、最後の仕事として仲間に指示を出す守屋。

「さあこっからが本番だ! とにかく死ぬまで斬りゃいいよね!」
 散々攻撃された腹いせとばかりに、タイサイに飛びかかり、手に持った太刀を大振りに薙ぎ払うメリエのその刃の軌跡を追うように
「散々好き勝手やりやがって!」
 軌跡を交差させ、激しく振り下ろしたクィーロの刀が、タイサイの目玉の幾つかを断ち切り。
 その背後から、守りを棄てて全力で走り込んだレイオスの雷撃刀の突きがーー
「肉なら肉らしく、串刺しにでもなりやがれ!」
 ーーその刃の根元まで突き刺さり、肉を抉る。

 いくらしぶといとは言え、最大の攻撃手段を封じられた上でハンターの攻撃にいつまでも耐えられる物でもなく。しばらくは体当たりと言うべきかパンチと言うべきか、体を伸ばして攻撃を繰り返していたタイサイだったが、やがて力尽きたのか、動かなくなった。

……ついでに覚醒時間の切れた守屋も、燃え尽きたように白くなりつつ、刀を杖にしてプルプルしていたりもしたが、まぁ既に問題は解決していたのでその身に危険が及ぶような事もなく。突発したタイサイ狩りは、無事に完遂される事となった。

●実食のお時間
「貴方がたは調理法を御存知な様子でしたが……」
 倒れたタイサイを眺めつつ、ふと思い出したように村長に話し掛けるレイ。その全身から迸る食べてみたいオーラは、この場のほぼ全員の意思を代弁していた。

「おう! 鉄板焼きが美味いですじゃよ、すぐに道具を持って来ますでな!」
 村長の方も、ウキウキした様子で準備に走る。……その背を見送りながら
「生でもいけるぞえ」
 にこやかに、誰にともなく呟くジェニファーの言葉に、覚醒中とはうって変わって穏やかな、若干胡散臭いその笑顔をウッ……と翳らせるクィーロ。
「アレ見た後だと、美味しいとか言われても食欲は湧かないよね……」
 眉を寄せながらそのクィーロの表情に同意を見せるメリエだったが、
「ところで七輪とかありますか〜?」
 明るい声で準備に湧く村長と、何故か増えて来た村人たちに道具を借りに向かうメリエ。前言とは裏腹に、食べる気は満々だった。


 とにかく仕切りたがる焼き肉奉行が現れたり、老人達の為に肉を小さく切り分ける焼き肉執事が現れたり、ただひたすら全てを食い荒らす、暴れん坊な焼き肉大将軍が現れたり。各々が思い思いに鉄板の上で焼かれる焼きタイサイに舌鼓を打つ。焼きタイサイの程良く脂の乗ったその肉は柔らかく、噛むだけで千切れ、村長がタイサイを見てすぐの特徴として美味いと言うだけの事はあり、これなら味付けは塩だけでもいくらでも食べられそうだった。

 レイオスがエルミィをからかってタイサイの目玉の部分を焼いたら、赤い部分が黄色くなって本当に目玉焼きっぽくなってしまい、エルミィが目玉焼きの元ネタとして本気で信じ込んだりもしつつ……。

「ところで、この肉も補給物資として運ぶのか?」
 ふと思い出したように村長に確認するレイオス。
「おお! そうですな! 喜ばれる事間違いないですしの!」
「あ、ついでに私、お土産として少し持って帰っても良いでしょうか?」
 さりげなくお土産を確保するレイに
「あ、じゃあみんなが持って帰るぶんは私が干し肉にしちゃいますね。そうしないと帰る頃には食べられなくなっちゃうかもですし」
 料理を買って出るエルミィ。あまり時間もかけられないため、加工は馬車で移動しながら、という話に落ち着く事となった。

「ところで、タイサイなんで逃げなかったんでしょう? 地面から出てきたんだから地面にもぐれば逃げられたのに」
「あれだけのサイズともなると、圧力の関係で、そのまま潜るには時間がかかるのじゃよ」
「野菜食いたかったみたいだし、そんだけ腹減ってたのかもな」
 燻煙をたなびかせながら、物資を肉肉野菜肉の割合で詰め込まれて走り行く馬車。
 元の予定からやたらと増量したその補給物資の、野菜と、原料は内緒とされた謎の肉は、その後、北部地域でゴブリンと戦う兵士達の間で好評を博したとか何とか。

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MVP一覧

  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカーka1990
  • 新聞号外・犯人逮捕貢献者
    ジェニファー・ラングストンka4564

重体一覧

参加者一覧

  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカー(ka1990
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • 強者
    メリエ・フリョーシカ(ka1991
    人間(紅)|17才|女性|闘狩人
  • SKMコンサルタント
    レイ・T・ベッドフォード(ka2398
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士
  • 差し出されし手を掴む風翼
    クィーロ・ヴェリル(ka4122
    人間(蒼)|25才|男性|闘狩人
  • 新聞号外・犯人逮捕貢献者
    ジェニファー・ラングストン(ka4564
    人間(蒼)|17才|女性|疾影士

  • 守屋 昭二(ka5069
    人間(蒼)|92才|男性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン Taisai
レイ・T・ベッドフォード(ka2398
人間(リアルブルー)|26才|男性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2015/08/25 01:36:18
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/08/23 17:23:42