ゲスト
(ka0000)
深い深い洞窟
マスター:天田洋介

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 13日
- 締切
- 2015/09/07 22:00
- 完成日
- 2015/09/08 18:20
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
グラズヘイム王国の北東山岳地帯には『ゴールドプライス』と名付けられた洞窟が存在する。その名をつけたのは今は亡き盗賊との噂だが真偽は定かではない。
酒場での与太話として聞いた者はかなりにのぼる。そんなとき、このような会話が交わされるという。
「その洞窟にはスライムの変種『ゴルデン』が棲んでいるのさ。その数はとんでもねぇがめちゃくちゃ弱くてよ。普通強酸がかかったら焼けるように痛てえだろ? でもな、ゴルデンの強酸は大したことねぇんだ。肌がぴりっとする程度さ」
「それはわかったが、何でゴールドプライスなんだ? ゴールドってことはもしかして金が採れるとか?」
「正解! 大正解! ゴルデンは身体の中に千切れた金貨の欠片を取り込んでいるのさ。それ目当てでみんな洞窟に挑戦するわけよ」
「面白い話だが妙だな。そんなにおいしい話なら、すぐに退治されそうなもんだ。塵も積もれば何とやらで金もすごいことになりそうだし」
「ま、うまい話には裏があらぁ。洞窟を丸一日潜った辺りじゃないとゴルデンはでてこないんだとよ。ようやく着いたら、ゴルデンを狩って金を手に入れていくだろ? で、調子に乗っていつの間にか奥へ進んで……遭っちまうのさ」
「遭う?」
「そう、ゴルデンの親玉にな。こいつだけはめちゃくちゃ強いんだってよ」
「その話が本当なら……生還者がいるってことだろ? 親玉の存在が知れ渡っているんだからな。倒したのか? それとも命からがら逃げ帰った?」
「噂だと一回だけ倒した奴らがいるらしい。だが不思議なことに一ヶ月ぐらいでゴルデンは復活したんだとよ。おそらくだが親玉もな」
「金は?」
「金もだ。きっとゴルデンの発生場所に誰かが隠したお宝でもあるんだろうさ」
こんな話を聞いても多くの者は信じたりはしない。酔っ払っての馬鹿話で終わる。しかし青の隊所属の下級騎士ミルトンは違った。
スライム系は魔法生物だが雑魔に変じる可能性が非常に高い。辺境の地とはいえ出没するのであれば退治しなければならないと判断する。ミルトンは非常に生真面目な性格だった。
「隊にご迷惑をかけるつもりはありません。いいだした私一人で調査に向かうことにします」
「いや、それはさすがにまずいだろう」
単独で向かうつもりだったミルトンに上司はハンターの同行を義務づける。
ミルトンは納得し、ハンターの助力を仰いだ上で洞窟『ゴールドプライス』が本当に存在しているのかを調査することにした。噂が真実ならば殲滅も考慮に入れておく。
ハンターズソサエティー支部で依頼手続きを終えたミルトンは旅支度を始めるのだった。
酒場での与太話として聞いた者はかなりにのぼる。そんなとき、このような会話が交わされるという。
「その洞窟にはスライムの変種『ゴルデン』が棲んでいるのさ。その数はとんでもねぇがめちゃくちゃ弱くてよ。普通強酸がかかったら焼けるように痛てえだろ? でもな、ゴルデンの強酸は大したことねぇんだ。肌がぴりっとする程度さ」
「それはわかったが、何でゴールドプライスなんだ? ゴールドってことはもしかして金が採れるとか?」
「正解! 大正解! ゴルデンは身体の中に千切れた金貨の欠片を取り込んでいるのさ。それ目当てでみんな洞窟に挑戦するわけよ」
「面白い話だが妙だな。そんなにおいしい話なら、すぐに退治されそうなもんだ。塵も積もれば何とやらで金もすごいことになりそうだし」
「ま、うまい話には裏があらぁ。洞窟を丸一日潜った辺りじゃないとゴルデンはでてこないんだとよ。ようやく着いたら、ゴルデンを狩って金を手に入れていくだろ? で、調子に乗っていつの間にか奥へ進んで……遭っちまうのさ」
「遭う?」
「そう、ゴルデンの親玉にな。こいつだけはめちゃくちゃ強いんだってよ」
「その話が本当なら……生還者がいるってことだろ? 親玉の存在が知れ渡っているんだからな。倒したのか? それとも命からがら逃げ帰った?」
「噂だと一回だけ倒した奴らがいるらしい。だが不思議なことに一ヶ月ぐらいでゴルデンは復活したんだとよ。おそらくだが親玉もな」
「金は?」
「金もだ。きっとゴルデンの発生場所に誰かが隠したお宝でもあるんだろうさ」
こんな話を聞いても多くの者は信じたりはしない。酔っ払っての馬鹿話で終わる。しかし青の隊所属の下級騎士ミルトンは違った。
スライム系は魔法生物だが雑魔に変じる可能性が非常に高い。辺境の地とはいえ出没するのであれば退治しなければならないと判断する。ミルトンは非常に生真面目な性格だった。
「隊にご迷惑をかけるつもりはありません。いいだした私一人で調査に向かうことにします」
「いや、それはさすがにまずいだろう」
単独で向かうつもりだったミルトンに上司はハンターの同行を義務づける。
ミルトンは納得し、ハンターの助力を仰いだ上で洞窟『ゴールドプライス』が本当に存在しているのかを調査することにした。噂が真実ならば殲滅も考慮に入れておく。
ハンターズソサエティー支部で依頼手続きを終えたミルトンは旅支度を始めるのだった。
リプレイ本文
●
馬車に揺られて三日で現地へ到着。さらに二日かけて一行は『ゴールドプライス』らしき洞窟を探しだした。
「間違いなさそうですね」
ミルトンが真っ暗な洞窟の中を覗き込む。
「もしかして罠……でござるかな?」
藤林みほ(ka2804)は側にあった大岩の溝を指先でなぞってみる。誰が刻んだかわからないが『GOLD』と記されていた。
(……冗談みたいな話だが、儲け話としては悪くねェな)
ステラ・レッドキャップ(ka5434)が洞窟を眺めながらニヤリと笑う。
「あのステラさん、ランタンの油はどこにありますか?」
「少しお待ち下さいね。落とさないよう気をつけて」
荷物の中から油壺を取りだしてミルトンに手渡す。旅の間、ステラは猫かぶりのお淑やかな少女を演じ続けていた。
「さぁ、冒険に出発だ! 隠された財宝とか、ワクワクしちゃうよね」
「結婚資金、たくさん必要だもね~?」
張り切る時音 ざくろ(ka1250)を上目遣いで見つめつつ、アルラウネ(ka4841)が意味ありげな笑みを浮かべる。
「うん、もちろん結婚資金にも……って、けっ結婚?!」
アルラウネの言葉を反復した時音はわたわたと慌てだす。
そうこうするうちに洞窟探検の準備が整った。
「んじゃ、先行くよー。男子は荷物よろしくねー♪」
哨戒役のエルネスタ・バックハウス(ka0899)がライフルを構えながら洞窟へと足を踏み入れる。
「それにしても金を取り込むスライムか。ボスは金色で冠でも被ってそうだな」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)は食料等が積まれた荷車に制動をかけながら進んだ。
「小石が転がっているので気をつけましょう」
「押すのではなく、転がさないよう引っ張りながら進むとは想像していませんでしたね」
荷車係のユナイテル・キングスコート(ka3458)をステラが手伝う。
マッピングはミルトンが担当。画板に載せた紙にペンで記していく。背中の棒を介して頭上から吊られたランタンがユーモラスである。
「ほい、ざっとだけど地形メモったよ」
途中、エルネスタがミルトンに紙切れを手渡した。
「次は右でござるよ」
藤林みほも五色米を撒いたりしてマッピングに協力。こうして洞窟の内部が暴かれていく。
午後六時には本日の探検が終わる。保存食で空腹を満たして早々に休むのだった。
●
探検が再開されたのは翌日の午前八時頃からである。
「丸一日っていうのが歩きづめならもっと先だよね?」
「寝ている時間も含めてならもうそろそろかしら?」
「強力なボスが居るって話だし、洞窟自体も何があるかわからないもんね」
「それにしても広いわね」
時音とアルラウネが進行方向の闇に眼を凝らす。
高さ二、三Mの洞窟はすでに終わっている。今歩いているのは大空洞で、足元から天井までは二十Mほどの高さがあった。
「かすかに轟音が聞こえませんか?」
「水音、でしょうか?」
ユナイテルとステラが顔を見合わせる。しばらく歩くと大空洞に沿って流れる地下水脈が見つかった。
「落ちたらひとたまりもないとありませんね」
ミルトンが思わず息を呑んだ。
地下水脈は三百Mほどで途切れてしまう。大空洞はまだまだ続く。
「んっ?」
レイオスが目の端で何かを捉えた。
「どうしたの?」
「いや、右の方に何かいたような?」
レイオスから事情を聞いたエルネスタが迷彩ジャケットのポケットに手を突っ込む。
「テレレレッテレー♪ LEDライトー」
わざとだみ声で呟きながらLEDライトを頭上に掲げた。レイオスが指さした先を照らしてみると黄緑色の物体が一瞬見える。照射で追いかけてついに闇から姿を浮かび上がらせた。
「点のような輝きは金貨の反射だよな?」
「きっとそうだろうねぇ。こう、金ぴかだと暗闇でも目立つね」
二人は一同に声を掛けまくる。そしてもう一度、ライトでゴルデンを照らす。
「一匹だけでござるな」
「あれが例のスライムですか。本当に金が埋まっていますね」
藤林みほとユナイテルがゴルデンの体内に埋まっている金貨をはっきりと目視した。
アルラウネが覚醒なしでゴルデンに挑む。すると大太刀の一刺しで風船が割れるように破裂してしまう。
「本当に弱いのね……。柔らかいから耐性があってもおかしくないのに」
あまりの肩すかしにアルラウネは大いに呆れる。
「腕にかかったが……なんでもないな」
「さっき汲んでおいた水で一応洗っておくでござるよ」
藤林みほが念のためにレイオスの腕に水をかける。噂通りに強酸の威力はとても弱かった。
地上は暮れなずむ頃である。一同は相談の末に一時間分ほど引き返した。一晩充分に休んでからゴルデン退治を行うことにする。
「明日は大仕事ですからね」
「温かい料理で力をつけるのもいいかもね」
ミルトンとアルラウネは地面や岩に生えている苔の塊を仲間達に集めてもらう。それを燃料にして焚き火を熾す。
食材として使ったソーセージは鍋専用のもの。そのままでは塩気と香辛料が強すぎて食べられたものではないが、根野菜と一緒に煮込めば素晴らしい料理となる。
「地下は肌寒いからちょうどいいな。リアルブルーの西欧という土地にも似たような料理があるらしいぞ」
「それは初耳ですね」
ミルトンとレイオスは鍋談義に花を咲かす。
食事が終わると就寝と見張りの時間になる。
「アルラ、ざくろちゃんとテント用意してきたよ……二人用だから大丈夫」
時音はアルラウネにしばらく見つめられてようやく気がついた。
「……へっ、変な意味じゃないから」
顔や耳を赤くしながらあたふたする時音。アルラウネは先にテントへと潜り込んだ。
「ざくろん、早く寝た方がいいわ」
「う、うん!」
時音もテントに入ってもぞもぞと。見張り担当の時間が来るまで何をしていたのかは二人だけの秘密であった。
●
翌朝。
(……朝からたりぃ……)
そう思いながらもステラは作業をこなす。地下での照明確保は最優先。ランタンすべてに油を補充し終わる。その他にも灯りは用意してあった。
「蝋燭の長さを見ればランタンの残り時間がすぐにわかります」
「確かにそうですね。そこまで気が回りませんでした」
ステラは感心しているミルトンに布袋を預ける。金貨を見つけたら拾い集めて欲しいと。仲間全員に配布して自分も腰にぶら下げた。
「これも点けるでござるよ」
藤林みほは松明を用意。蝋燭用のガンドウを取り揃えたのも彼女だ。
「これがあればランタンを点け直す時間も稼げるはずだからね」
エルネスタが持ち込んだLEDライトは最終手段である。炎と違って水や風の影響を受けにくい。
準備が整ったところで前進開始。覚醒なしで行けるところまで行くことに。
「あっちにゴルデンが三匹匹居るよ」
エルネスタはライフルのスコープを双眼鏡代わりにしてゴルデンの位置を報告する。灯りが届く範囲を確認したところで一部を倒していく。大空洞内に銃声が木霊した。
「すごい数だけどよわよわだね」
「これだとついつい奥に進んでしまうかもね。お金は人を惑わすっていうしね……」
時音とアルラウネが背中合わせで刀剣を振るう。数十のゴルデンの群れに襲われても恐くはなかった。
(まっすぐとはいえ微妙に右に逸れているでござる)
藤林みほは戦いながら五色米を壁沿いに置いていく。五十歩毎の作業なのでこれで大まかな距離を計ることができた。
(倒すと確かに金貨、もしくは欠片が手に入りますが……、地面に落ちていないのが気になりますね)
ユナイテルは周辺のゴルデンを一掃した後、落ちている金貨や欠片を拾って袋にしまう。
(ま、こんなところかねぇ)
ステラは仲間達が置いていった荷車の周辺でライフルを構える。敗走しようとしている個体を優先して銃弾を見舞っていく。
灯りが届く周辺一帯のゴルデンが片付いたら全体で前進。戦闘を繰り返す。
「一匹ずつ倒すのも面倒だ。まとめて来やがれ、一気に蹴散らしてやる」
大量のゴルデンが押し寄せてくる状況にレイオスは決断した。覚醒の上で迫る敵との距離を計って一気に薙ぎ払う。
一旦撤退か、それとも維持して進むのかの判断にミルトンは迫られる。
「親玉ゴルデン、見つけたよ!」
迷っているミルトンの耳にエルネスタの声が届くのだった。
●
「あれは……?!」
ミルトンがランタンを片手に二十Mほど進むと遠くの闇に親玉ゴルデンが浮かび上がった。高さは十M前後。ほんのわずかだが全体が黄金色に発光している。
親玉ゴルデンの体内中央には大きめの影があった。眼を凝らしてもはっきりと見えないが、影の輪郭から蓋が開いた宝箱だと気がつく。周囲に散らばる小さな影は金貨やその欠片で間違いない。
「つまり小さなゴルデンはこいつの分身でござるな」
藤林みほとユナイテルが覚醒。藤林みほの周囲に煙、闇、木の葉が纏う。微妙に姿もぶれだした。
「分身するときに金貨が混じり込むようですね。前に出ます! ミルトン殿は後衛組の直衛を願います!」
ユナイテルの瞳は普段の青から鮮やかな赤へと変わる。まずは周囲に屯っている雑魚ゴルデンを倒していく。
レイオスは一旦後方に下がって魔導銃「フリューゲル」を手に取った。覚醒のエルネスタとレイオスが遠距離から親玉ゴルデンに銃弾を撃ち込んでいく。
「めり込んだだけか」
「うーん、物理攻撃に強くて、おそらく飛び道具持ちか……。なかなか厄介だねぇ」
通常の銃撃はほとんど効かないことがわかってやり方を変える。エルネスタが強弾を用いると一部が千切れるように吹き飛んだ。その部分がザクゴルデン数体と化す。こうして親玉ゴルデンを倒す道筋が見つかった。
「なら俺は接近戦だな!」
レイオスは再び試作雷撃刀を手に親玉ゴルデンへと突進。勢いのまま刀身を叩きつけて身体の一部を吹き飛ばす。
「ミルトンさんはそこから動かないようにしてくださいね。灯りの番をお願いします」
「わかりました」
ミルトンに注意を促したステラもアサルトライフルで狙い撃つ。単に強弾を当たるだけでは一匹か二匹分が千切れる程度で終わる。端に当てることが急所狙いへと繋がった。大量に飛び散った部位が雑魚ゴルデン十匹以上に変化する。
(千切れたり、くっついたりが自由自在かよ。めんどぅくせぇー)
心の中で悪態をつきながらもちゃんと仕事もこなしていくステラだ。
「普通のゴルデンは任せてだよ。アルラ、やるよ!」
ジェットブーツで高く舞い上がった時音が親玉ゴルデンの頭上を跳び越えながら、機導剣で斬り裂く。
鬱陶しそうな態度をみせた親玉ゴルデンが強酸を吐いた。かかった岩から激しい煙が立ちのぼる。一部が溶けてどろどろの半個体が流れだす。雑魚ゴルデンのものとは比べものにならない威力があった。
「ざくろん、無理はしないでね」
アルラウネは二刀の刃で雑魚を次々と破裂させながら大きく息を吸い込んだ。気息充溢に満ちた鋭い一撃が親玉ゴルデンに突き刺さる。
時音とアルラウネは息の合った戦い方で親玉ゴルデンを翻弄した。
「あなたの敵は私です。間違えてはいけませんよ」
強打で親玉ゴルデンの気を引いたユナイテルは吐きだされた強酸をラウンドシールドで受け止めた。避けることもできたがここは一手に親玉ゴルデンからの攻撃を引き受ける。
「親玉ゴルデンにくっつかれたら面倒でござるよ」
藤林みほは洞窟奥からのそりと移動してきた雑魚ゴルデンの群れを発見。無線で仲間に知らせるとレイオスが駆けつけてくれた。
「行かせないでござる」
藤林みほは俊敏な身のこなしで縦横無尽に駆け回って雑魚ゴルデンを仕留めていく。
「薙ぎ払いにもってこいだな!」
レイオスはわざと逃げる振りをして自分を追いかけさせる。数がまとまったところで踵を返して大地を踏みつけた。薙ぎ払いの刃にかかった雑魚ゴルデンが一斉に破裂。まるで豪雨が降ったかの如く滴が散らばる。それらはわずかな時間で消え去っていく。
親玉ゴルデンとの戦いが始まって十五分が経過した。半分にまで削った辺りで普通の攻撃がそれなりに通るようになってくる。
それまで雑魚ゴルデンを退治していた仲間も集結。一気に叩いて親玉ゴルデンを分裂させた。
宝箱や金貨、欠片が地面へと散らばる。同時に約百の雑魚ゴルデンが出現したものの、破裂させて仕留めるのに三分もかからなかった。
まずは全員が地下水脈のところまで戻り、行水でかかった強酸を洗い流す。大事はないと思うが念のためである。
例え残存の雑魚ゴルデンが合わさったとしても強大な敵にはなり得ない。覚醒が切れたこともあって一行は休息を優先した。
●
翌日、親玉ゴルデンを倒した場所に向かうと宝箱や大量の金貨が残っていた。
「宝箱も金でできているわねぇ」
「だから溶けなかったのですね」
エルネスタとユナイテルが倒れていた宝箱を起こす。全員で金貨やその欠片を拾い集める。
(財宝を少し頂けないかしら?)
アルラウが金の誘惑にかられたものの我慢した。すべての金は宝箱へと仕舞われる。
広大な地下空洞なので雑魚ゴルデンが潜んでいると考えられた。そこでレイオスが金貨を餌にした罠を仕掛ける。鍾乳石の何本かにロープで金貨を吊しておく。
「本当にいるでござるよ」
翌朝、ロープを貸した藤林みほが眼を見開いた。
罠一つにつきゴルデン三匹ぐらいが集まっている。さくっと倒して今後の憂いを無くす。罠を仕掛け直して更に半日待ち続けたが、もう雑魚ゴルデンは現れなかった。
ゴルデンの退治は終わったとして一行はゴールドプライスを去ることにする。実は行きよりも帰りの坂道が大変だった。
「に、荷車が壊れそうだな……」
覚醒したレイオスが宝箱を載せた荷車を押し上げていく。
金貨や欠片は分散して全員で担いでいたので宝箱の中身は空っぽだ。それでも宝箱は超重量級である。一時間ごとに交代して覚醒状態のハンターが宝箱を運ぶ。
「が、がんばったよ……」
「ざくろん、大丈夫?」
地上到達のときに宝箱担当だった時音が足元をふらつかせる。一緒に押してくれたアルラウネが抱きついてお互いに支え合った。
すぐに待機していた馬車で帰路に就く。成果は上々。旅路の宿で報告書を書くミルトンはご機嫌だった。
「使って壊れたり、消耗した品々は補填させてもらいます。それとほんの少しですが――」
ミルトンはせめてものお礼だとハンター達に謝礼金の入った袋を手渡す。
これでゴールデンプライスにゴルデンは出没しないはずである。あの洞窟も店仕舞いだとお喋りしながら、ハンター一行は転移門でリゼリオへと帰っていくのだった。
馬車に揺られて三日で現地へ到着。さらに二日かけて一行は『ゴールドプライス』らしき洞窟を探しだした。
「間違いなさそうですね」
ミルトンが真っ暗な洞窟の中を覗き込む。
「もしかして罠……でござるかな?」
藤林みほ(ka2804)は側にあった大岩の溝を指先でなぞってみる。誰が刻んだかわからないが『GOLD』と記されていた。
(……冗談みたいな話だが、儲け話としては悪くねェな)
ステラ・レッドキャップ(ka5434)が洞窟を眺めながらニヤリと笑う。
「あのステラさん、ランタンの油はどこにありますか?」
「少しお待ち下さいね。落とさないよう気をつけて」
荷物の中から油壺を取りだしてミルトンに手渡す。旅の間、ステラは猫かぶりのお淑やかな少女を演じ続けていた。
「さぁ、冒険に出発だ! 隠された財宝とか、ワクワクしちゃうよね」
「結婚資金、たくさん必要だもね~?」
張り切る時音 ざくろ(ka1250)を上目遣いで見つめつつ、アルラウネ(ka4841)が意味ありげな笑みを浮かべる。
「うん、もちろん結婚資金にも……って、けっ結婚?!」
アルラウネの言葉を反復した時音はわたわたと慌てだす。
そうこうするうちに洞窟探検の準備が整った。
「んじゃ、先行くよー。男子は荷物よろしくねー♪」
哨戒役のエルネスタ・バックハウス(ka0899)がライフルを構えながら洞窟へと足を踏み入れる。
「それにしても金を取り込むスライムか。ボスは金色で冠でも被ってそうだな」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)は食料等が積まれた荷車に制動をかけながら進んだ。
「小石が転がっているので気をつけましょう」
「押すのではなく、転がさないよう引っ張りながら進むとは想像していませんでしたね」
荷車係のユナイテル・キングスコート(ka3458)をステラが手伝う。
マッピングはミルトンが担当。画板に載せた紙にペンで記していく。背中の棒を介して頭上から吊られたランタンがユーモラスである。
「ほい、ざっとだけど地形メモったよ」
途中、エルネスタがミルトンに紙切れを手渡した。
「次は右でござるよ」
藤林みほも五色米を撒いたりしてマッピングに協力。こうして洞窟の内部が暴かれていく。
午後六時には本日の探検が終わる。保存食で空腹を満たして早々に休むのだった。
●
探検が再開されたのは翌日の午前八時頃からである。
「丸一日っていうのが歩きづめならもっと先だよね?」
「寝ている時間も含めてならもうそろそろかしら?」
「強力なボスが居るって話だし、洞窟自体も何があるかわからないもんね」
「それにしても広いわね」
時音とアルラウネが進行方向の闇に眼を凝らす。
高さ二、三Mの洞窟はすでに終わっている。今歩いているのは大空洞で、足元から天井までは二十Mほどの高さがあった。
「かすかに轟音が聞こえませんか?」
「水音、でしょうか?」
ユナイテルとステラが顔を見合わせる。しばらく歩くと大空洞に沿って流れる地下水脈が見つかった。
「落ちたらひとたまりもないとありませんね」
ミルトンが思わず息を呑んだ。
地下水脈は三百Mほどで途切れてしまう。大空洞はまだまだ続く。
「んっ?」
レイオスが目の端で何かを捉えた。
「どうしたの?」
「いや、右の方に何かいたような?」
レイオスから事情を聞いたエルネスタが迷彩ジャケットのポケットに手を突っ込む。
「テレレレッテレー♪ LEDライトー」
わざとだみ声で呟きながらLEDライトを頭上に掲げた。レイオスが指さした先を照らしてみると黄緑色の物体が一瞬見える。照射で追いかけてついに闇から姿を浮かび上がらせた。
「点のような輝きは金貨の反射だよな?」
「きっとそうだろうねぇ。こう、金ぴかだと暗闇でも目立つね」
二人は一同に声を掛けまくる。そしてもう一度、ライトでゴルデンを照らす。
「一匹だけでござるな」
「あれが例のスライムですか。本当に金が埋まっていますね」
藤林みほとユナイテルがゴルデンの体内に埋まっている金貨をはっきりと目視した。
アルラウネが覚醒なしでゴルデンに挑む。すると大太刀の一刺しで風船が割れるように破裂してしまう。
「本当に弱いのね……。柔らかいから耐性があってもおかしくないのに」
あまりの肩すかしにアルラウネは大いに呆れる。
「腕にかかったが……なんでもないな」
「さっき汲んでおいた水で一応洗っておくでござるよ」
藤林みほが念のためにレイオスの腕に水をかける。噂通りに強酸の威力はとても弱かった。
地上は暮れなずむ頃である。一同は相談の末に一時間分ほど引き返した。一晩充分に休んでからゴルデン退治を行うことにする。
「明日は大仕事ですからね」
「温かい料理で力をつけるのもいいかもね」
ミルトンとアルラウネは地面や岩に生えている苔の塊を仲間達に集めてもらう。それを燃料にして焚き火を熾す。
食材として使ったソーセージは鍋専用のもの。そのままでは塩気と香辛料が強すぎて食べられたものではないが、根野菜と一緒に煮込めば素晴らしい料理となる。
「地下は肌寒いからちょうどいいな。リアルブルーの西欧という土地にも似たような料理があるらしいぞ」
「それは初耳ですね」
ミルトンとレイオスは鍋談義に花を咲かす。
食事が終わると就寝と見張りの時間になる。
「アルラ、ざくろちゃんとテント用意してきたよ……二人用だから大丈夫」
時音はアルラウネにしばらく見つめられてようやく気がついた。
「……へっ、変な意味じゃないから」
顔や耳を赤くしながらあたふたする時音。アルラウネは先にテントへと潜り込んだ。
「ざくろん、早く寝た方がいいわ」
「う、うん!」
時音もテントに入ってもぞもぞと。見張り担当の時間が来るまで何をしていたのかは二人だけの秘密であった。
●
翌朝。
(……朝からたりぃ……)
そう思いながらもステラは作業をこなす。地下での照明確保は最優先。ランタンすべてに油を補充し終わる。その他にも灯りは用意してあった。
「蝋燭の長さを見ればランタンの残り時間がすぐにわかります」
「確かにそうですね。そこまで気が回りませんでした」
ステラは感心しているミルトンに布袋を預ける。金貨を見つけたら拾い集めて欲しいと。仲間全員に配布して自分も腰にぶら下げた。
「これも点けるでござるよ」
藤林みほは松明を用意。蝋燭用のガンドウを取り揃えたのも彼女だ。
「これがあればランタンを点け直す時間も稼げるはずだからね」
エルネスタが持ち込んだLEDライトは最終手段である。炎と違って水や風の影響を受けにくい。
準備が整ったところで前進開始。覚醒なしで行けるところまで行くことに。
「あっちにゴルデンが三匹匹居るよ」
エルネスタはライフルのスコープを双眼鏡代わりにしてゴルデンの位置を報告する。灯りが届く範囲を確認したところで一部を倒していく。大空洞内に銃声が木霊した。
「すごい数だけどよわよわだね」
「これだとついつい奥に進んでしまうかもね。お金は人を惑わすっていうしね……」
時音とアルラウネが背中合わせで刀剣を振るう。数十のゴルデンの群れに襲われても恐くはなかった。
(まっすぐとはいえ微妙に右に逸れているでござる)
藤林みほは戦いながら五色米を壁沿いに置いていく。五十歩毎の作業なのでこれで大まかな距離を計ることができた。
(倒すと確かに金貨、もしくは欠片が手に入りますが……、地面に落ちていないのが気になりますね)
ユナイテルは周辺のゴルデンを一掃した後、落ちている金貨や欠片を拾って袋にしまう。
(ま、こんなところかねぇ)
ステラは仲間達が置いていった荷車の周辺でライフルを構える。敗走しようとしている個体を優先して銃弾を見舞っていく。
灯りが届く周辺一帯のゴルデンが片付いたら全体で前進。戦闘を繰り返す。
「一匹ずつ倒すのも面倒だ。まとめて来やがれ、一気に蹴散らしてやる」
大量のゴルデンが押し寄せてくる状況にレイオスは決断した。覚醒の上で迫る敵との距離を計って一気に薙ぎ払う。
一旦撤退か、それとも維持して進むのかの判断にミルトンは迫られる。
「親玉ゴルデン、見つけたよ!」
迷っているミルトンの耳にエルネスタの声が届くのだった。
●
「あれは……?!」
ミルトンがランタンを片手に二十Mほど進むと遠くの闇に親玉ゴルデンが浮かび上がった。高さは十M前後。ほんのわずかだが全体が黄金色に発光している。
親玉ゴルデンの体内中央には大きめの影があった。眼を凝らしてもはっきりと見えないが、影の輪郭から蓋が開いた宝箱だと気がつく。周囲に散らばる小さな影は金貨やその欠片で間違いない。
「つまり小さなゴルデンはこいつの分身でござるな」
藤林みほとユナイテルが覚醒。藤林みほの周囲に煙、闇、木の葉が纏う。微妙に姿もぶれだした。
「分身するときに金貨が混じり込むようですね。前に出ます! ミルトン殿は後衛組の直衛を願います!」
ユナイテルの瞳は普段の青から鮮やかな赤へと変わる。まずは周囲に屯っている雑魚ゴルデンを倒していく。
レイオスは一旦後方に下がって魔導銃「フリューゲル」を手に取った。覚醒のエルネスタとレイオスが遠距離から親玉ゴルデンに銃弾を撃ち込んでいく。
「めり込んだだけか」
「うーん、物理攻撃に強くて、おそらく飛び道具持ちか……。なかなか厄介だねぇ」
通常の銃撃はほとんど効かないことがわかってやり方を変える。エルネスタが強弾を用いると一部が千切れるように吹き飛んだ。その部分がザクゴルデン数体と化す。こうして親玉ゴルデンを倒す道筋が見つかった。
「なら俺は接近戦だな!」
レイオスは再び試作雷撃刀を手に親玉ゴルデンへと突進。勢いのまま刀身を叩きつけて身体の一部を吹き飛ばす。
「ミルトンさんはそこから動かないようにしてくださいね。灯りの番をお願いします」
「わかりました」
ミルトンに注意を促したステラもアサルトライフルで狙い撃つ。単に強弾を当たるだけでは一匹か二匹分が千切れる程度で終わる。端に当てることが急所狙いへと繋がった。大量に飛び散った部位が雑魚ゴルデン十匹以上に変化する。
(千切れたり、くっついたりが自由自在かよ。めんどぅくせぇー)
心の中で悪態をつきながらもちゃんと仕事もこなしていくステラだ。
「普通のゴルデンは任せてだよ。アルラ、やるよ!」
ジェットブーツで高く舞い上がった時音が親玉ゴルデンの頭上を跳び越えながら、機導剣で斬り裂く。
鬱陶しそうな態度をみせた親玉ゴルデンが強酸を吐いた。かかった岩から激しい煙が立ちのぼる。一部が溶けてどろどろの半個体が流れだす。雑魚ゴルデンのものとは比べものにならない威力があった。
「ざくろん、無理はしないでね」
アルラウネは二刀の刃で雑魚を次々と破裂させながら大きく息を吸い込んだ。気息充溢に満ちた鋭い一撃が親玉ゴルデンに突き刺さる。
時音とアルラウネは息の合った戦い方で親玉ゴルデンを翻弄した。
「あなたの敵は私です。間違えてはいけませんよ」
強打で親玉ゴルデンの気を引いたユナイテルは吐きだされた強酸をラウンドシールドで受け止めた。避けることもできたがここは一手に親玉ゴルデンからの攻撃を引き受ける。
「親玉ゴルデンにくっつかれたら面倒でござるよ」
藤林みほは洞窟奥からのそりと移動してきた雑魚ゴルデンの群れを発見。無線で仲間に知らせるとレイオスが駆けつけてくれた。
「行かせないでござる」
藤林みほは俊敏な身のこなしで縦横無尽に駆け回って雑魚ゴルデンを仕留めていく。
「薙ぎ払いにもってこいだな!」
レイオスはわざと逃げる振りをして自分を追いかけさせる。数がまとまったところで踵を返して大地を踏みつけた。薙ぎ払いの刃にかかった雑魚ゴルデンが一斉に破裂。まるで豪雨が降ったかの如く滴が散らばる。それらはわずかな時間で消え去っていく。
親玉ゴルデンとの戦いが始まって十五分が経過した。半分にまで削った辺りで普通の攻撃がそれなりに通るようになってくる。
それまで雑魚ゴルデンを退治していた仲間も集結。一気に叩いて親玉ゴルデンを分裂させた。
宝箱や金貨、欠片が地面へと散らばる。同時に約百の雑魚ゴルデンが出現したものの、破裂させて仕留めるのに三分もかからなかった。
まずは全員が地下水脈のところまで戻り、行水でかかった強酸を洗い流す。大事はないと思うが念のためである。
例え残存の雑魚ゴルデンが合わさったとしても強大な敵にはなり得ない。覚醒が切れたこともあって一行は休息を優先した。
●
翌日、親玉ゴルデンを倒した場所に向かうと宝箱や大量の金貨が残っていた。
「宝箱も金でできているわねぇ」
「だから溶けなかったのですね」
エルネスタとユナイテルが倒れていた宝箱を起こす。全員で金貨やその欠片を拾い集める。
(財宝を少し頂けないかしら?)
アルラウが金の誘惑にかられたものの我慢した。すべての金は宝箱へと仕舞われる。
広大な地下空洞なので雑魚ゴルデンが潜んでいると考えられた。そこでレイオスが金貨を餌にした罠を仕掛ける。鍾乳石の何本かにロープで金貨を吊しておく。
「本当にいるでござるよ」
翌朝、ロープを貸した藤林みほが眼を見開いた。
罠一つにつきゴルデン三匹ぐらいが集まっている。さくっと倒して今後の憂いを無くす。罠を仕掛け直して更に半日待ち続けたが、もう雑魚ゴルデンは現れなかった。
ゴルデンの退治は終わったとして一行はゴールドプライスを去ることにする。実は行きよりも帰りの坂道が大変だった。
「に、荷車が壊れそうだな……」
覚醒したレイオスが宝箱を載せた荷車を押し上げていく。
金貨や欠片は分散して全員で担いでいたので宝箱の中身は空っぽだ。それでも宝箱は超重量級である。一時間ごとに交代して覚醒状態のハンターが宝箱を運ぶ。
「が、がんばったよ……」
「ざくろん、大丈夫?」
地上到達のときに宝箱担当だった時音が足元をふらつかせる。一緒に押してくれたアルラウネが抱きついてお互いに支え合った。
すぐに待機していた馬車で帰路に就く。成果は上々。旅路の宿で報告書を書くミルトンはご機嫌だった。
「使って壊れたり、消耗した品々は補填させてもらいます。それとほんの少しですが――」
ミルトンはせめてものお礼だとハンター達に謝礼金の入った袋を手渡す。
これでゴールデンプライスにゴルデンは出没しないはずである。あの洞窟も店仕舞いだとお喋りしながら、ハンター一行は転移門でリゼリオへと帰っていくのだった。
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依頼についての質問卓 ステラ・レッドキャップ(ka5434) 人間(クリムゾンウェスト)|14才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2015/08/29 18:22:26 |
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相談卓 ステラ・レッドキャップ(ka5434) 人間(クリムゾンウェスト)|14才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2015/09/07 20:59:42 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/08/28 09:11:24 |