ゲスト
(ka0000)
【深棲】真夏のビーチに浮かぶ毒
マスター:桐咲鈴華

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/07/24 19:00
- 完成日
- 2014/07/30 21:25
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
夏、海開き。
水平線に入道雲が浮かぶ季節。リゼリオ近辺の海岸でも、海水浴のシーズンが訪れていた。
しかし、本来ならば人でごった返しになる季節であるにも関わらず。海岸に人の気配は無かった。
「ちくしょう……」
この海岸の海の家の店主は恨めしそうに海を見る。
海には、ぷかぷかと……半透明のクラゲが無数に浮かんでいたのだ。
●
「っつー訳だ、お願いだ、助けてくれぇ!」
頭にタオルを巻いた、シャツに短パンといった装いでガタイの良い、いかにもな風貌の海の家の店主が、集まったハンター達に勢いよく頭を下げる。
「て、店主さん落ち着いて下さい……何が『つー訳』なのかをきちんと説明しませんと……」
「お、おぉ!そうだな」
スタッフの声に頭を上げた海の家の店主は、改めて集まったハンター達に説明を始める。
「折角の海開きのシーズンだっつーのに、オレの店があるビーチには全く利用客がこねぇ! それは何故かって? 出たんだよ、雑魔が! 海に!」
張りのある大きな声が室内に響く。非常に元気な声であるが、締め切ったオフィス内では少々うるさい。
「店主さんのお話をお聞きするに、雑魔はクラゲのような姿をした、魔獣型雑魔ですね。それらが海にたくさん出現してしまって、そのせいですっかりビーチを利用するお客さんが居なくなってしまったそうです」
スタッフが丁寧な説明を改めて行う。
「近辺でマテリアルの異常は観測されていませんので、おそらくどこからか流れついた雑魔群だと予測されます。このようなケースは今までになく、最近噂になっている、南海の異変に関連があるのかもしれません……」
初夏の初めごろから、自由都市同盟の商人達が、南回りのルートを避けるようになってきたらしい。何やら不穏な噂が流れているようだが……
「肝心の今回の雑魔ですが、毒の触手を持っているようで、利用客は主にそれに刺されたようですね。ただ、その他にも抉られたような傷口の被害者も居るようなので、注意が必要です」
「死者こそ出ていねぇが、今月に入って数々の被害者が出ちまってる。今までこんな事、無かった筈なんだが……そのせいで皆怖がって海水浴に来ねぇんだ! 頼む、雑魔を駆除してくれ! 海の家はオレの生きがい。この季節こそ、オレの一年の中で最も輝ける一時なんだ!」
改めて、店主は深々とハンター達に頭を下げる。その必死な願いは、この店主の海の家に賭ける情熱を表していた。
「被害が出てしまってる以上、我々ハンターズソサエティとしても雑魔を放っておく理由はありません。海岸に赴き、雑魔の殲滅をお願いいたします。何より、これからの季節。海で安心して遊べないというのも、気持ちの良い話ではありませんからね。どうか、よろしくお願いします」
そう言ってスタッフはハンター達を見送るのだった。
夏、海開き。
水平線に入道雲が浮かぶ季節。リゼリオ近辺の海岸でも、海水浴のシーズンが訪れていた。
しかし、本来ならば人でごった返しになる季節であるにも関わらず。海岸に人の気配は無かった。
「ちくしょう……」
この海岸の海の家の店主は恨めしそうに海を見る。
海には、ぷかぷかと……半透明のクラゲが無数に浮かんでいたのだ。
●
「っつー訳だ、お願いだ、助けてくれぇ!」
頭にタオルを巻いた、シャツに短パンといった装いでガタイの良い、いかにもな風貌の海の家の店主が、集まったハンター達に勢いよく頭を下げる。
「て、店主さん落ち着いて下さい……何が『つー訳』なのかをきちんと説明しませんと……」
「お、おぉ!そうだな」
スタッフの声に頭を上げた海の家の店主は、改めて集まったハンター達に説明を始める。
「折角の海開きのシーズンだっつーのに、オレの店があるビーチには全く利用客がこねぇ! それは何故かって? 出たんだよ、雑魔が! 海に!」
張りのある大きな声が室内に響く。非常に元気な声であるが、締め切ったオフィス内では少々うるさい。
「店主さんのお話をお聞きするに、雑魔はクラゲのような姿をした、魔獣型雑魔ですね。それらが海にたくさん出現してしまって、そのせいですっかりビーチを利用するお客さんが居なくなってしまったそうです」
スタッフが丁寧な説明を改めて行う。
「近辺でマテリアルの異常は観測されていませんので、おそらくどこからか流れついた雑魔群だと予測されます。このようなケースは今までになく、最近噂になっている、南海の異変に関連があるのかもしれません……」
初夏の初めごろから、自由都市同盟の商人達が、南回りのルートを避けるようになってきたらしい。何やら不穏な噂が流れているようだが……
「肝心の今回の雑魔ですが、毒の触手を持っているようで、利用客は主にそれに刺されたようですね。ただ、その他にも抉られたような傷口の被害者も居るようなので、注意が必要です」
「死者こそ出ていねぇが、今月に入って数々の被害者が出ちまってる。今までこんな事、無かった筈なんだが……そのせいで皆怖がって海水浴に来ねぇんだ! 頼む、雑魔を駆除してくれ! 海の家はオレの生きがい。この季節こそ、オレの一年の中で最も輝ける一時なんだ!」
改めて、店主は深々とハンター達に頭を下げる。その必死な願いは、この店主の海の家に賭ける情熱を表していた。
「被害が出てしまってる以上、我々ハンターズソサエティとしても雑魔を放っておく理由はありません。海岸に赴き、雑魔の殲滅をお願いいたします。何より、これからの季節。海で安心して遊べないというのも、気持ちの良い話ではありませんからね。どうか、よろしくお願いします」
そう言ってスタッフはハンター達を見送るのだった。
リプレイ本文
●輝く砂浜にハンター達
晴れ渡る蒼穹に太陽が照りつけ、白い砂浜と澄んだ水が反射光でキラキラと輝く。高い気温で染み出る汗が、吹き抜ける潮風によって拭われる。絶好の海水浴日和だ。今すぐにでも透明な海に飛び込んでみたくなる……
が、そういう訳にはいかない。澄んだ海に、所々白いクラゲが浮かんでいるのだ。
あれがハンター達の今回の標的、雑魔である。あの雑魔達のせいで、美しいビーチには人の気配が全くなくなってしまった。
「綺麗な海ですね……誰もいない海は静かで良いですが、それでも寂しいものですね」
クリスティア・オルトワール(ka0131)は、美しくも閑散としたビーチを見て、早く取り戻してあげないと、と思った。
「ここが海か、綺麗じゃのう! じゃが、お騒がせな雑魔がおるようじゃな」
シルヴェーヌ=プラン(ka1583)は山林育ち故に、海に来るのは初めてなようだ。美しい景色に感動するが、その前に先ずは仕事をしなければ、と決意を固める。
「綺麗なビーチか。懐かしいぜ。故郷のビーチは汚れちまったからな……」
デュオ=ラングウィッチ(ka1015)はかつての故郷のビーチに思いを馳せる。だからこそ、この美しいビーチを守りたいと思っているのだろう。
「お嬢様が海水浴を御所望です。先んじて掃除をしておきませんと」
アミグダ・ロサ(ka0144)は主の命よりやってきたようだ。水中用アサルトライフルのメンテナンスを手際よく行っている。
「……」
Luegner(ka1934)は、一足先に浅瀬に入り、ラウンドシールドの使用感を試していた。やはり水の抵抗が邪魔をするのか、思うようには動かせない……が、体ごと動かす等の工夫をすれば、水中戦闘にも差し支えはないと判断した。
「……地上と同じようには……いかないみたいですね……ですが……それはそれで、やりようがありそうです……」
Luegnerは浅瀬から上がると、仲間達に、水中での武具の使用感を伝えた。
「覚醒者の身体能力を……持ってすれば、通常の装備でも戦う事は……出来そうです。ですがやはり……ある程度、水の抵抗などは受けるみたいですね……」
「Luegner様、ありがとうございますわ」
アミグダが丁寧に礼をする。今後の戦闘においても、この知識は役に立つだろう。
「水着姿の方が泳ぎ易いのは言うまでもないことでしょうが、あえて装備を外す事はないという事ですね……」
オウカ・カゲツ(ka0830)も同じく、浅瀬からあがってくる。予め敵の位置を確認する為だ。水着の上からの通常装備を着込んでいる彼女もまた、水の抵抗こそは感じたが戦闘する分に支障はないと判断した。
「さて、それじゃあ戦闘開始といくかのう!」
「ええ。全体の位置も確認できましたし」
シルヴェーヌの言葉に、クリスティアが、海に浮かぶクラゲに目をやりつつ答える。アミグダとLuegnerも銃を構える。
「……攻撃開始としましょう」
クリスティアとシルヴェーヌが息を合わせてウィンドスラッシュを放ち、アミグダとLuegnerが射撃する。それぞれが分散したクラゲを狙う。ばちゅんっ、という音を立ててクラゲが4体弾け飛んだ。
「本当に、耐久力は低いんですね……あ、透明に」
オウカが敵の様を見ていると、他のクラゲ達がすうっと、水面から姿を消す。
「ここからは水中戦だな、班を分けて各個撃破するぞ」
デュオの言葉と共に、予め海の家で打ち合わせをしていた通り、班を分け、戦闘を開始した。
●クラゲ駆除
全員が海の中へと入っていく。透き通った海の水は冷たく、火照っていた身体が冷えてゆくようだ。
それぞれが2人ずつの3班に分かれて、各所に散開する。念のため、皆がそれぞれすぐに救援に迎える距離を保っていた。
「ふぇ~、気持ち良いのう……っといかんいかん。仕事に集中せねば」
「シルヴィは海、初めてですものね。海の水は塩辛いので、お気をつけて」
うむ、と相槌をうち、2人で水中眼鏡をつけて海中へと潜る。すると、透明になっていたクラゲがよく見えた。水面の光屈折を操作して透明になるとの事だったので、水中からはその姿が丸見えだった。
(上手いこと分散しておるのう、初手の狙いが効いたようじゃ)
クラゲ達は攻撃を受けると、そちらの方向へと向かっていく習性を持つ。最初の攻撃で上手く散ってくれていたようだ。目の前には、3体のクラゲが浮いている。それぞれこちらに気付いたのか、少しずつ近づいてきた。
2人のウィンドスラッシュが、再びクラゲを迎撃する。水が切り裂かれ、クラゲが2体両断される。もう一体のクラゲが、毒の触手でクリスティアを刺してくる。
(っ!)
緩慢な速度とはいえ、やはり水中では水棲生物の方が動きは早い。クリスティアは腕に毒の触手を受けてしまう。
(ティアっ!)
シルヴェーヌは魔法によって最後のクラゲを弾けさせると、クリスティアを連れて海面へ浮上した。
「痛たた……腫れちゃってますね」
「まずは海水で洗うのじゃ」
シルヴェーヌが予め調べてきたのか、適切な処理をしてゆく。その甲斐あってか、クリスティアの腫れは早めに引いた。
こちらはアミグダ、Luegnerの班。左右にそれぞれクラゲが浮かんでおり、背中合わせの形をとっている。
2人が水中銃を構え、クラゲを攻撃する。アミグダの銃弾がクラゲの胴体を捉え、弾き飛ばす……が、Luegnerの弾丸は、波の動きに合わせるようにふわりと動いたクラゲに回避されてしまう。
(……っ)
そのままクラゲが近づき、毒の触手を伸ばしてくる。
(マスクドフォームにございます)
アミグダは一切の無駄のない、洗練された動きで鮮やかにポーズを決めつつ、ストーンアーマーでLuegnerを守った。土砂の壁が触手を遮断する。そのままLuegnerはエストックに持ち替え、踏込の要領で身体ごとクラゲを貫いた。
海面へ浮上すると、Luegnerが感謝と疑問を口にした。
「助かりました、ありがとうございます……ところで、あのポーズは必要だったのですか……?」
「『美しい所作は無駄な装飾ではない、一切の無駄なく行為を表現する物が美しい所作である』ュリウス家技芸のひとつにございます」
アミグダが胸を張って説明をする。何はともあれ、こちらのクラゲも難なく撃破できた。
オウカとデュオの班。こちらは三方に分かれて3体のクラゲが近づいてきていた。2人は他とは違い、遠距離用の攻撃を持たないが故に、かなり接近する必要があったのだ。
デュオの持つシュノーケルによって、正確な位置を把握しつつ近付けたので、敵を効率的に相手に出来そうだ。
(さて、南海の異変との関連は解りませんが、まずは目の前の敵をしっかりと倒さなければ)
オウカは動物霊の力を借り、身体能力を向上させる。鞘から抜き放った刀の一閃が、クラゲを真っ二つに両断させた。
デュオも同じく、グレートソードを強打の要領でクラゲに振りぬく。抵抗も何のそのと言った一撃が、クラゲを粉々に弾けさせた。
(これで、残るは一体……!?)
最後の目標を見据えようとしたデュオが目を見開く。最後のクラゲの方から何か不自然なマテリアルの震動が伝わってくる。
(いけない、自爆っ……!)
本能的に攻撃を察知した2人は回避行動をとる。次の瞬間、パァンッ! という破裂音が響き、散弾の如く異物が飛来してくる。
予めクラゲの動きに注意していた2人は上手く攻撃をいなせたが、それでも回避しきれない酸弾が身を抉る。結果掠った程度だが、ダメージを二人とも受けてしまった。
「ぷはっ、デュオさん、大丈夫ですか?」
「あぁ、大した怪我じゃねぇ……思った以上に、広範囲に及ぶ攻撃だったな」
少々のダメージは受けてしまったが、これにて、視認した全てのクラゲを撃破する事に成功した。
●さあ、遊ぼう!
蔓延っていたクラゲ型雑魔も無事掃討が完了した。デュオの提案により、ビーチに簡素ながらネットが張られる。南海の異変が収まるまで、暫くは同じ被害が来るかもしれないと考えたからだ。店主もそのつもりだったようで、予め大きなネットが用意されており、ハンター達が協力して、ネットを張る事が出来たのだ。
「さて、一通り事も終えたし、遊ぶとするか」
「そうですわね……折角海が使えるようになっても、ビーチが閑散としていては、お嬢様も喜びません」
「水着で浅瀬を遊んでいれば、安全性のアピールにもなるでしょうしね」
デュオの提案に、アミグダとLuegnerが賛同する。皆水着はしっかりと用意してきているようだ。
「決まりだな。これから休める時間もあまり取れなくなってくるだろうし、遊べる時に思いっきり遊ぼうぜ」
こうしてハンター達は、夏まっさかりの海で遊ぶことにした。未だ日は高く、眩しい太陽がキラキラと水や砂浜を輝かせる。
「改めて、海とは綺麗なところじゃのう! 水も綺麗で、底が透き通って見えるぞ! さて、どんな生物がおるかの!」
ビキニに姿のシルヴェーヌがわくわくした調子で期待に胸を膨らませている。そこへクリスティアが、何やらぶよぶよした生き物を持ってくる。
「な、なんじゃティア? そのヌメヌメしたものは!」
「いえ、ちょうど良いところにナマコが居たもので……この機会に海の生き物を知って頂こうかと。触るとぷにぷにして可愛いと思うのですが……ちょっと触ってみませんか?」
そう言いつつクリスティアはナマコを差し出す。ナマコを『可愛い』と評するのには様々な協議が必要となりそうだが、それは一先ず置いておこう。問題はシルヴェーヌは明らかにナマコに嫌悪感を示している。
「ち、近付けるでない! ってひぃ!? 何かぶしゅって! ぶしゅって吐き出したぞ!?」
あまりにクリスティアに触られ過ぎたのか、ナマコが白い粘液を吐き出す。しかしクリスティアは意に介した様子もなく説明を続ける。
「あぁ、これはキュビエ器官と言いまして。外敵に襲われたナマコはこの器官を体内から放出して、外敵の動きを封じるので……」
「ひぃぃぃぃ! 後生じゃ! もうやめてたもれ!」
あまりの不気味さにシルヴェーヌは涙目になりつつクリスティアにしがみつく。
「あらあら、怖がらせてしまいましたか……ごめんなさいシルヴィ、悪ふざけが過ぎました。海には他にももっと普通の生き物もいますから、そちらも見せて差し上げますね」
「う、うぅ……ほんと、か?」
すっかり怯え切ったシルヴェーヌが、涙目のまま上目遣いでクリスティアの方を向く。
(……怯えるシルヴィも、ちょっと可愛いですね)
ちょっぴり嗜虐心が芽生えつつも、なんだかんだ友達想いなクリスティアは、比較的普通な蟹とかをシルヴェーヌに紹介していくのだった。
デュオはトランクス水着姿で、持参したバナナボートに乗っている。波はあまり高くなく、やや沖でプカプカと浮いている。そこへビキニに着替えたオウカがゆるやかに泳ぎ、辿り着いた。
「ぷはっ、変わった感じのボートですね」
「そうだろ? リアルブルーじゃ結構メジャーなボートなんだぜ。良かったら、乗ってみるか?」
「よろしいのですか? では、折角なので……」
オウカがバナナボートに乗る。波でふよふよと上下している。
「……ふむ、楽しいものですね……」
ゴムボートに乗って沖をゆったりするというのはそれだけでも楽しいものだ。水の上に浮かんでるお陰で、海の底がよく見える。透き通った海面から、バナナボートの下を魚が泳いでいくのが見えた。
「……魚が下を潜ってく……新鮮な体験です」
「さて、それじゃあちょっと動かしてみるか」
「動かし……? って、ひゃっ」
オウカが聞き返す前にデュオがバナナボートから飛び乗り、バナナボートを引っ張って泳ぎ始めた。
(おや……楽しそうですね)
ワンピース水着に着替えたLuegnerは、引っ張られるバナナボートと、戸惑いつつもどこか楽しそうなオウカを眺める。
ひとしきり泳いだ彼女は陸に上がると、海の家で何やら店主と話していたアミグダに声をかける。
「アミグダさんは……泳がないの、ですか?」
「私はメイドです故、皆様が楽しそうにしている姿が何よりなのでございますよ。それに、店主さんにお話して、安全性が確保されたと噂を広めてもらおうかと」
「おう! ありがとな、ハンターさん達! クラゲが居なくなったと知れりゃ、この自慢のビーチだ! 客もすぐに戻ってくるだろう!」
店主はすっかり元気を取り戻したようで、眩しいばかりの笑顔で応えてくれる。
「それは、良かった……もしも、継続しての警戒などの……人員が必要であれば……可能な限り、意向に沿えるよう、努力しますので……」
「おう、ありがとなねーちゃん! そうだ、そろそろハラ減らねーか? 皆呼んできてくれや! 今日はオレの奢りで、たらふく食わせてやるぜ!」
どうやら店主が、海の家の料理でもてなしてくれるようだ。Luegnerは一礼すると、沖で遊んでいる他の皆を呼びにいった。
「竈に火を。煙が人を呼んでくれるでしょう。あとは……店主さん、私にもお手伝いさせて下さいな」
「お、いいのか? それじゃあカレーを煮込むから、材料を切ってくれ!」
「畏まりましたわ」
●水平線に沈む太陽を
日がそろそろ落ちる、夕刻。水平線へと沈んでいく夕日を眺めつつ、一行は海の家でゆったりとした時間を過ごしていた。
「ふー、食べたのじゃあ……なぜじゃ、いつも食べるカレーよりも数段旨く思えたぞい……」
「不思議なものでしょう? これが海の家のロケーション効果ですよ」
振舞われたカレーを食べ終わり、シルヴェーヌとクリスティアが一息つく。海の家で食べるカレーや焼き蕎麦は何故か美味しいものだ。
「ぷはっ、仕事終わりに飲む酒はやっぱ格別だな、おやじ、もう一缶くれよ」
「ふふ、デュオ様。こういうのも如何です?」
「お、唐揚げか、いいねぇ」
デュオは缶ビールを開けていた。仕事と遊びで火照った身体に、冷えた缶ビールが染み込んでいく感覚を堪能する。そこへアミグダが唐揚げを差し出してきたのだ。冷えたビールに肉汁迸る唐揚げの組み合わせは、まさに絶品と言えるだろう。
Luegnerは少し離れた所で、皆の様子を微笑ましく見守りながら炭酸飲料を飲んでいる。
そんな中、オウカは沈み往く夕日を見て、物思いに耽っていた。
(今まで居なかった場所に現れた、雑魔……気になります。南海の異変が、関連しているのでしょうか)
今回の依頼、噂になっている歪虚の影響かもしれない。そう思うオウカは今を楽しみつつも、これから来るであろう脅威についての予感を感じ取っていた。
歪虚『狂気』襲来の噂。その波紋。
ハンター達は誰もが『これでは終わらない』という予感を抱きつつも、今は英気を養う為に、美しいビーチを堪能するのであった。
晴れ渡る蒼穹に太陽が照りつけ、白い砂浜と澄んだ水が反射光でキラキラと輝く。高い気温で染み出る汗が、吹き抜ける潮風によって拭われる。絶好の海水浴日和だ。今すぐにでも透明な海に飛び込んでみたくなる……
が、そういう訳にはいかない。澄んだ海に、所々白いクラゲが浮かんでいるのだ。
あれがハンター達の今回の標的、雑魔である。あの雑魔達のせいで、美しいビーチには人の気配が全くなくなってしまった。
「綺麗な海ですね……誰もいない海は静かで良いですが、それでも寂しいものですね」
クリスティア・オルトワール(ka0131)は、美しくも閑散としたビーチを見て、早く取り戻してあげないと、と思った。
「ここが海か、綺麗じゃのう! じゃが、お騒がせな雑魔がおるようじゃな」
シルヴェーヌ=プラン(ka1583)は山林育ち故に、海に来るのは初めてなようだ。美しい景色に感動するが、その前に先ずは仕事をしなければ、と決意を固める。
「綺麗なビーチか。懐かしいぜ。故郷のビーチは汚れちまったからな……」
デュオ=ラングウィッチ(ka1015)はかつての故郷のビーチに思いを馳せる。だからこそ、この美しいビーチを守りたいと思っているのだろう。
「お嬢様が海水浴を御所望です。先んじて掃除をしておきませんと」
アミグダ・ロサ(ka0144)は主の命よりやってきたようだ。水中用アサルトライフルのメンテナンスを手際よく行っている。
「……」
Luegner(ka1934)は、一足先に浅瀬に入り、ラウンドシールドの使用感を試していた。やはり水の抵抗が邪魔をするのか、思うようには動かせない……が、体ごと動かす等の工夫をすれば、水中戦闘にも差し支えはないと判断した。
「……地上と同じようには……いかないみたいですね……ですが……それはそれで、やりようがありそうです……」
Luegnerは浅瀬から上がると、仲間達に、水中での武具の使用感を伝えた。
「覚醒者の身体能力を……持ってすれば、通常の装備でも戦う事は……出来そうです。ですがやはり……ある程度、水の抵抗などは受けるみたいですね……」
「Luegner様、ありがとうございますわ」
アミグダが丁寧に礼をする。今後の戦闘においても、この知識は役に立つだろう。
「水着姿の方が泳ぎ易いのは言うまでもないことでしょうが、あえて装備を外す事はないという事ですね……」
オウカ・カゲツ(ka0830)も同じく、浅瀬からあがってくる。予め敵の位置を確認する為だ。水着の上からの通常装備を着込んでいる彼女もまた、水の抵抗こそは感じたが戦闘する分に支障はないと判断した。
「さて、それじゃあ戦闘開始といくかのう!」
「ええ。全体の位置も確認できましたし」
シルヴェーヌの言葉に、クリスティアが、海に浮かぶクラゲに目をやりつつ答える。アミグダとLuegnerも銃を構える。
「……攻撃開始としましょう」
クリスティアとシルヴェーヌが息を合わせてウィンドスラッシュを放ち、アミグダとLuegnerが射撃する。それぞれが分散したクラゲを狙う。ばちゅんっ、という音を立ててクラゲが4体弾け飛んだ。
「本当に、耐久力は低いんですね……あ、透明に」
オウカが敵の様を見ていると、他のクラゲ達がすうっと、水面から姿を消す。
「ここからは水中戦だな、班を分けて各個撃破するぞ」
デュオの言葉と共に、予め海の家で打ち合わせをしていた通り、班を分け、戦闘を開始した。
●クラゲ駆除
全員が海の中へと入っていく。透き通った海の水は冷たく、火照っていた身体が冷えてゆくようだ。
それぞれが2人ずつの3班に分かれて、各所に散開する。念のため、皆がそれぞれすぐに救援に迎える距離を保っていた。
「ふぇ~、気持ち良いのう……っといかんいかん。仕事に集中せねば」
「シルヴィは海、初めてですものね。海の水は塩辛いので、お気をつけて」
うむ、と相槌をうち、2人で水中眼鏡をつけて海中へと潜る。すると、透明になっていたクラゲがよく見えた。水面の光屈折を操作して透明になるとの事だったので、水中からはその姿が丸見えだった。
(上手いこと分散しておるのう、初手の狙いが効いたようじゃ)
クラゲ達は攻撃を受けると、そちらの方向へと向かっていく習性を持つ。最初の攻撃で上手く散ってくれていたようだ。目の前には、3体のクラゲが浮いている。それぞれこちらに気付いたのか、少しずつ近づいてきた。
2人のウィンドスラッシュが、再びクラゲを迎撃する。水が切り裂かれ、クラゲが2体両断される。もう一体のクラゲが、毒の触手でクリスティアを刺してくる。
(っ!)
緩慢な速度とはいえ、やはり水中では水棲生物の方が動きは早い。クリスティアは腕に毒の触手を受けてしまう。
(ティアっ!)
シルヴェーヌは魔法によって最後のクラゲを弾けさせると、クリスティアを連れて海面へ浮上した。
「痛たた……腫れちゃってますね」
「まずは海水で洗うのじゃ」
シルヴェーヌが予め調べてきたのか、適切な処理をしてゆく。その甲斐あってか、クリスティアの腫れは早めに引いた。
こちらはアミグダ、Luegnerの班。左右にそれぞれクラゲが浮かんでおり、背中合わせの形をとっている。
2人が水中銃を構え、クラゲを攻撃する。アミグダの銃弾がクラゲの胴体を捉え、弾き飛ばす……が、Luegnerの弾丸は、波の動きに合わせるようにふわりと動いたクラゲに回避されてしまう。
(……っ)
そのままクラゲが近づき、毒の触手を伸ばしてくる。
(マスクドフォームにございます)
アミグダは一切の無駄のない、洗練された動きで鮮やかにポーズを決めつつ、ストーンアーマーでLuegnerを守った。土砂の壁が触手を遮断する。そのままLuegnerはエストックに持ち替え、踏込の要領で身体ごとクラゲを貫いた。
海面へ浮上すると、Luegnerが感謝と疑問を口にした。
「助かりました、ありがとうございます……ところで、あのポーズは必要だったのですか……?」
「『美しい所作は無駄な装飾ではない、一切の無駄なく行為を表現する物が美しい所作である』ュリウス家技芸のひとつにございます」
アミグダが胸を張って説明をする。何はともあれ、こちらのクラゲも難なく撃破できた。
オウカとデュオの班。こちらは三方に分かれて3体のクラゲが近づいてきていた。2人は他とは違い、遠距離用の攻撃を持たないが故に、かなり接近する必要があったのだ。
デュオの持つシュノーケルによって、正確な位置を把握しつつ近付けたので、敵を効率的に相手に出来そうだ。
(さて、南海の異変との関連は解りませんが、まずは目の前の敵をしっかりと倒さなければ)
オウカは動物霊の力を借り、身体能力を向上させる。鞘から抜き放った刀の一閃が、クラゲを真っ二つに両断させた。
デュオも同じく、グレートソードを強打の要領でクラゲに振りぬく。抵抗も何のそのと言った一撃が、クラゲを粉々に弾けさせた。
(これで、残るは一体……!?)
最後の目標を見据えようとしたデュオが目を見開く。最後のクラゲの方から何か不自然なマテリアルの震動が伝わってくる。
(いけない、自爆っ……!)
本能的に攻撃を察知した2人は回避行動をとる。次の瞬間、パァンッ! という破裂音が響き、散弾の如く異物が飛来してくる。
予めクラゲの動きに注意していた2人は上手く攻撃をいなせたが、それでも回避しきれない酸弾が身を抉る。結果掠った程度だが、ダメージを二人とも受けてしまった。
「ぷはっ、デュオさん、大丈夫ですか?」
「あぁ、大した怪我じゃねぇ……思った以上に、広範囲に及ぶ攻撃だったな」
少々のダメージは受けてしまったが、これにて、視認した全てのクラゲを撃破する事に成功した。
●さあ、遊ぼう!
蔓延っていたクラゲ型雑魔も無事掃討が完了した。デュオの提案により、ビーチに簡素ながらネットが張られる。南海の異変が収まるまで、暫くは同じ被害が来るかもしれないと考えたからだ。店主もそのつもりだったようで、予め大きなネットが用意されており、ハンター達が協力して、ネットを張る事が出来たのだ。
「さて、一通り事も終えたし、遊ぶとするか」
「そうですわね……折角海が使えるようになっても、ビーチが閑散としていては、お嬢様も喜びません」
「水着で浅瀬を遊んでいれば、安全性のアピールにもなるでしょうしね」
デュオの提案に、アミグダとLuegnerが賛同する。皆水着はしっかりと用意してきているようだ。
「決まりだな。これから休める時間もあまり取れなくなってくるだろうし、遊べる時に思いっきり遊ぼうぜ」
こうしてハンター達は、夏まっさかりの海で遊ぶことにした。未だ日は高く、眩しい太陽がキラキラと水や砂浜を輝かせる。
「改めて、海とは綺麗なところじゃのう! 水も綺麗で、底が透き通って見えるぞ! さて、どんな生物がおるかの!」
ビキニに姿のシルヴェーヌがわくわくした調子で期待に胸を膨らませている。そこへクリスティアが、何やらぶよぶよした生き物を持ってくる。
「な、なんじゃティア? そのヌメヌメしたものは!」
「いえ、ちょうど良いところにナマコが居たもので……この機会に海の生き物を知って頂こうかと。触るとぷにぷにして可愛いと思うのですが……ちょっと触ってみませんか?」
そう言いつつクリスティアはナマコを差し出す。ナマコを『可愛い』と評するのには様々な協議が必要となりそうだが、それは一先ず置いておこう。問題はシルヴェーヌは明らかにナマコに嫌悪感を示している。
「ち、近付けるでない! ってひぃ!? 何かぶしゅって! ぶしゅって吐き出したぞ!?」
あまりにクリスティアに触られ過ぎたのか、ナマコが白い粘液を吐き出す。しかしクリスティアは意に介した様子もなく説明を続ける。
「あぁ、これはキュビエ器官と言いまして。外敵に襲われたナマコはこの器官を体内から放出して、外敵の動きを封じるので……」
「ひぃぃぃぃ! 後生じゃ! もうやめてたもれ!」
あまりの不気味さにシルヴェーヌは涙目になりつつクリスティアにしがみつく。
「あらあら、怖がらせてしまいましたか……ごめんなさいシルヴィ、悪ふざけが過ぎました。海には他にももっと普通の生き物もいますから、そちらも見せて差し上げますね」
「う、うぅ……ほんと、か?」
すっかり怯え切ったシルヴェーヌが、涙目のまま上目遣いでクリスティアの方を向く。
(……怯えるシルヴィも、ちょっと可愛いですね)
ちょっぴり嗜虐心が芽生えつつも、なんだかんだ友達想いなクリスティアは、比較的普通な蟹とかをシルヴェーヌに紹介していくのだった。
デュオはトランクス水着姿で、持参したバナナボートに乗っている。波はあまり高くなく、やや沖でプカプカと浮いている。そこへビキニに着替えたオウカがゆるやかに泳ぎ、辿り着いた。
「ぷはっ、変わった感じのボートですね」
「そうだろ? リアルブルーじゃ結構メジャーなボートなんだぜ。良かったら、乗ってみるか?」
「よろしいのですか? では、折角なので……」
オウカがバナナボートに乗る。波でふよふよと上下している。
「……ふむ、楽しいものですね……」
ゴムボートに乗って沖をゆったりするというのはそれだけでも楽しいものだ。水の上に浮かんでるお陰で、海の底がよく見える。透き通った海面から、バナナボートの下を魚が泳いでいくのが見えた。
「……魚が下を潜ってく……新鮮な体験です」
「さて、それじゃあちょっと動かしてみるか」
「動かし……? って、ひゃっ」
オウカが聞き返す前にデュオがバナナボートから飛び乗り、バナナボートを引っ張って泳ぎ始めた。
(おや……楽しそうですね)
ワンピース水着に着替えたLuegnerは、引っ張られるバナナボートと、戸惑いつつもどこか楽しそうなオウカを眺める。
ひとしきり泳いだ彼女は陸に上がると、海の家で何やら店主と話していたアミグダに声をかける。
「アミグダさんは……泳がないの、ですか?」
「私はメイドです故、皆様が楽しそうにしている姿が何よりなのでございますよ。それに、店主さんにお話して、安全性が確保されたと噂を広めてもらおうかと」
「おう! ありがとな、ハンターさん達! クラゲが居なくなったと知れりゃ、この自慢のビーチだ! 客もすぐに戻ってくるだろう!」
店主はすっかり元気を取り戻したようで、眩しいばかりの笑顔で応えてくれる。
「それは、良かった……もしも、継続しての警戒などの……人員が必要であれば……可能な限り、意向に沿えるよう、努力しますので……」
「おう、ありがとなねーちゃん! そうだ、そろそろハラ減らねーか? 皆呼んできてくれや! 今日はオレの奢りで、たらふく食わせてやるぜ!」
どうやら店主が、海の家の料理でもてなしてくれるようだ。Luegnerは一礼すると、沖で遊んでいる他の皆を呼びにいった。
「竈に火を。煙が人を呼んでくれるでしょう。あとは……店主さん、私にもお手伝いさせて下さいな」
「お、いいのか? それじゃあカレーを煮込むから、材料を切ってくれ!」
「畏まりましたわ」
●水平線に沈む太陽を
日がそろそろ落ちる、夕刻。水平線へと沈んでいく夕日を眺めつつ、一行は海の家でゆったりとした時間を過ごしていた。
「ふー、食べたのじゃあ……なぜじゃ、いつも食べるカレーよりも数段旨く思えたぞい……」
「不思議なものでしょう? これが海の家のロケーション効果ですよ」
振舞われたカレーを食べ終わり、シルヴェーヌとクリスティアが一息つく。海の家で食べるカレーや焼き蕎麦は何故か美味しいものだ。
「ぷはっ、仕事終わりに飲む酒はやっぱ格別だな、おやじ、もう一缶くれよ」
「ふふ、デュオ様。こういうのも如何です?」
「お、唐揚げか、いいねぇ」
デュオは缶ビールを開けていた。仕事と遊びで火照った身体に、冷えた缶ビールが染み込んでいく感覚を堪能する。そこへアミグダが唐揚げを差し出してきたのだ。冷えたビールに肉汁迸る唐揚げの組み合わせは、まさに絶品と言えるだろう。
Luegnerは少し離れた所で、皆の様子を微笑ましく見守りながら炭酸飲料を飲んでいる。
そんな中、オウカは沈み往く夕日を見て、物思いに耽っていた。
(今まで居なかった場所に現れた、雑魔……気になります。南海の異変が、関連しているのでしょうか)
今回の依頼、噂になっている歪虚の影響かもしれない。そう思うオウカは今を楽しみつつも、これから来るであろう脅威についての予感を感じ取っていた。
歪虚『狂気』襲来の噂。その波紋。
ハンター達は誰もが『これでは終わらない』という予感を抱きつつも、今は英気を養う為に、美しいビーチを堪能するのであった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
依頼相談掲示板 | |||
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海岸の海の家(交流板) デュオ=ラングウィッチ(ka1015) 人間(リアルブルー)|21才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/07/23 22:38:37 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/20 17:16:59 |