ゲスト
(ka0000)
【聖呪】新たなる力、戦場を駆ける
マスター:秋風落葉

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 10~12人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 7日
- 締切
- 2015/09/18 19:00
- 完成日
- 2015/09/23 16:45
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●戦模様
グラズヘイム王国と茨小鬼軍との争いが小規模な戦闘から大規模な紛争へ様変わりするのに、さして時はかからなかった。
八月上旬、敵軍がルサスール領より北、グルノアと呼ばれる村を占領、これを拠点とする。
八月中旬、ウェルズ・クリストフ・マーロウ大公を盟主とする王国・貴族軍、北方三州へ展開。敵軍、活動を激化。
八月十三日、王国北西部アルテリア地方にて千人規模の敵軍と接敵、膠着。
八月十七日、王国北東部フェルダー地方にて敵山岳部隊が幾つかの集落を強襲。北方各地で接敵。
八月二十一日、ルサスール領より東、マイラ盆地にて敵軍を発見。
八月二十三日、マーロウを中心とした貴族私兵軍及びハンター、敵軍との小競り合いを繰り返しながら西へ移動。
八月二十五日、敵軍に強力な個体を確認。南西へ後退。
八月二十六日、貴族軍左翼、ナーファ伯爵軍が独断専行して敵左翼を強襲、撃退さる。ナーファ伯爵戦死。
八月二十七日、貴族軍中央、ネッサラン子爵及びシャロワ侯爵軍が敵軍を圧倒するも、敵両翼の挟撃により一時分断さる。マーロウ本隊の突撃により両氏脱出。
八月二十八日、マーロウ本隊及びラスリド伯爵軍の奮闘により戦線膠着、戦場は西へ移動。
八月二十九日、ハンターによる強襲で敵軍を崩し、数km単位で北へ押すも、敵の数は然程変わらず。
八月三十日、貴族軍右翼、敵を包み込む動きをするも敵軍は速やかに渡河、後退。マーロウは訝しんで制止するがシャロワ侯爵を中心に進軍。両軍がヨーク丘陵の南北に布陣。
そして八月三十一日。――それは、始まった。
――――とある古ぼけた紙片より
(執筆:???)
●八月三十一日・ヨーク丘陵の戦い
「報告は正確にしろ!」
ウェルズ・クリストフ・マーロウが声を荒げて戦場を見晴かすと、薄く戦塵の広がる先に、惑う騎兵の姿が見えた。中央、左翼にある丘の麓辺りか。戦場を穿つように伸びていた土煙が、とある一点で途切れている。
「奸計により騎兵突撃は防がれたのだな?」
「は! なだらかな丘陵の影に濠のように横長い穴があるようです!」
「濠? ここには戦場の推移によって偶然布陣したのだぞ、そのような……」
不意に湧き上がる不安。その勘に従って指示を出そうとしたマーロウだが――突如、眼前が爆発した。
幕僚の悲鳴。馬の高い嘶き。大量の土砂が落ちる鈍い音。
慌てるな。マーロウは叫んだ。が、声に出ていない。いつの間にか落馬し、その身が地面に横たわっている。
土の爆発。投石器による砲撃か? 今までこの敵軍に投石器はなかった。つまり。
――読んでおったか。
敵は端からこのヨーク丘陵を戦場と設定し、準備していたのだ。
やはり昨日、強権を以て進軍を留めるべきだった。マーロウは忸怩たる思いで土に腕をつく。そして気勢を吐くように命令した。
「全軍、死力を尽くせ! ハンターを中心として確固たる戦闘単位を作り、敵に当たるのだ!」
立ち上がりかけたマーロウはしかし、力尽くように倒れ伏した。自らの意識が遠のいていく感覚。マーロウは皺だらけの拳を握り、思った。
戦闘は止まらない。時代も止まらない。故に私もまた止まる事などできぬ、と。
●新たなる力
「銃を操る部隊……『秩序の禍』 デルギンの軍か!!」
亜人の群れから放たれる弾丸の雨にハンターは吠えた。まだ銃の射程外であり、仲間のハンターに被害はない。ただの威嚇行為といったところだろう。
この地にはゴブリン達の王も布陣していると聞く。自分が相対している部隊が、ゴブリンの王でないことをいささかがっかりするハンター。デルギンは魔導銃を操る一団を指揮すると耳にしていたが、これまでハンター達によって何度か打ち負かされていることも同時に風の噂で聞いている。
「ふん! 鉄砲隊は鈍足だと相場が決まっている! 突撃して切り崩してやる!」
男が伝聞したところによると、戦馬や魔導バイクに跨ったハンター達によってかき回され、彼らの鉄砲隊はその真価を発揮できなかったという。やはりゴブリンなどその程度の連中にすぎないのだ。
馬の腹を蹴り、一斉に駆け出すハンター達。それにあわせ、ゴブリン達もリトルラプターに騎乗した一団を迎撃に繰り出した。
亜人達が跨るリトルラプターは普段見かけるそれよりも大柄で、威圧感がある。しかし、歴戦のハンター達はその程度でひるむことはなかった。むしろ大柄のリトルラプターに跨っているせいで、後衛の鉄砲隊が誤射をする可能性が高まっているとも言える。
ハンターのリーダーは鼻で笑った。しばらくゴブリンどもの鉄砲を受けることはなさそうだ、と。
「敵も出てきたか! 地の利も活かせないとは愚かなやつらだ! よし! あいつ等とはまともにやりあうな! 目指すは後衛の鉄砲部隊だ! トカゲ連中を突破した直後に射撃が来るはずだ! 気をつけろよ!」
リーダーは仲間に指示を飛ばし、ひたすらに前を目指す。
リトルラプターを駆るゴブリンの機動力は侮れない。しかし、所詮はゴブリン。警戒すべきは後ろに控えている鉄砲部隊だけのはずだ。
しかしハンター達が思っていたよりも早く一斉射撃が行われた。それも彼らの至近距離から。ハンター達は突然の衝撃に馬上でよろけ、痛みに呻いた。
砲火が生まれたのは、今しがた彼らが突破しようとしたリトルラプターの一団からだった。リーダーは全身から流れる血のことも忘れて唖然とする。
「馬鹿な……騎乗したまま銃を操るだと……? ゴブリン……が……そんな器用な真似……」
馬上から倒れていくハンター達を尻目に、リトルラプターに跨るゴブリン達は颯爽と駆け抜けていく。手に持つ魔導銃を誇らしげに掲げて。
「シシシ……ワシとしたことがなぜこの組み合わせを思いつかなかったのか!」
他のゴブリン達と一緒に前線でリトルラプターを駆るデルギン。その手にはもちろん魔導銃が握られている。
デルギンはハンター達が戦場で駆る馬やバイクに何度も苦い思いをさせられてきた。その経験がこの発想につながったといっても良いだろう。
「忌々しいハンターども! 貴様たちのおかげだ! ……その礼にワシが直々に殲滅してくれるわ!」
デルギンとその直属の部下達は土煙をあげ、戦場を縦横無尽に駆け抜ける。彼らが銃を撃つその姿、まさに竜が火を吹くがごとしであった。
さらに彼らの後ろには歩兵であるゴブリン達もつき従い、デルギンの隊が崩した王国軍の部隊へと次々に襲い掛かった。大した時間もかからず王国軍の一隊を葬ったデルギンは首をぐるりとめぐらす。
リトルラプターに跨るデルギンの視線の先に、また別の一団が見える。デルギンは笑みを浮かべ、新たな獲物へと向かって突撃した。
グラズヘイム王国と茨小鬼軍との争いが小規模な戦闘から大規模な紛争へ様変わりするのに、さして時はかからなかった。
八月上旬、敵軍がルサスール領より北、グルノアと呼ばれる村を占領、これを拠点とする。
八月中旬、ウェルズ・クリストフ・マーロウ大公を盟主とする王国・貴族軍、北方三州へ展開。敵軍、活動を激化。
八月十三日、王国北西部アルテリア地方にて千人規模の敵軍と接敵、膠着。
八月十七日、王国北東部フェルダー地方にて敵山岳部隊が幾つかの集落を強襲。北方各地で接敵。
八月二十一日、ルサスール領より東、マイラ盆地にて敵軍を発見。
八月二十三日、マーロウを中心とした貴族私兵軍及びハンター、敵軍との小競り合いを繰り返しながら西へ移動。
八月二十五日、敵軍に強力な個体を確認。南西へ後退。
八月二十六日、貴族軍左翼、ナーファ伯爵軍が独断専行して敵左翼を強襲、撃退さる。ナーファ伯爵戦死。
八月二十七日、貴族軍中央、ネッサラン子爵及びシャロワ侯爵軍が敵軍を圧倒するも、敵両翼の挟撃により一時分断さる。マーロウ本隊の突撃により両氏脱出。
八月二十八日、マーロウ本隊及びラスリド伯爵軍の奮闘により戦線膠着、戦場は西へ移動。
八月二十九日、ハンターによる強襲で敵軍を崩し、数km単位で北へ押すも、敵の数は然程変わらず。
八月三十日、貴族軍右翼、敵を包み込む動きをするも敵軍は速やかに渡河、後退。マーロウは訝しんで制止するがシャロワ侯爵を中心に進軍。両軍がヨーク丘陵の南北に布陣。
そして八月三十一日。――それは、始まった。
――――とある古ぼけた紙片より
(執筆:???)
●八月三十一日・ヨーク丘陵の戦い
「報告は正確にしろ!」
ウェルズ・クリストフ・マーロウが声を荒げて戦場を見晴かすと、薄く戦塵の広がる先に、惑う騎兵の姿が見えた。中央、左翼にある丘の麓辺りか。戦場を穿つように伸びていた土煙が、とある一点で途切れている。
「奸計により騎兵突撃は防がれたのだな?」
「は! なだらかな丘陵の影に濠のように横長い穴があるようです!」
「濠? ここには戦場の推移によって偶然布陣したのだぞ、そのような……」
不意に湧き上がる不安。その勘に従って指示を出そうとしたマーロウだが――突如、眼前が爆発した。
幕僚の悲鳴。馬の高い嘶き。大量の土砂が落ちる鈍い音。
慌てるな。マーロウは叫んだ。が、声に出ていない。いつの間にか落馬し、その身が地面に横たわっている。
土の爆発。投石器による砲撃か? 今までこの敵軍に投石器はなかった。つまり。
――読んでおったか。
敵は端からこのヨーク丘陵を戦場と設定し、準備していたのだ。
やはり昨日、強権を以て進軍を留めるべきだった。マーロウは忸怩たる思いで土に腕をつく。そして気勢を吐くように命令した。
「全軍、死力を尽くせ! ハンターを中心として確固たる戦闘単位を作り、敵に当たるのだ!」
立ち上がりかけたマーロウはしかし、力尽くように倒れ伏した。自らの意識が遠のいていく感覚。マーロウは皺だらけの拳を握り、思った。
戦闘は止まらない。時代も止まらない。故に私もまた止まる事などできぬ、と。
●新たなる力
「銃を操る部隊……『秩序の禍』 デルギンの軍か!!」
亜人の群れから放たれる弾丸の雨にハンターは吠えた。まだ銃の射程外であり、仲間のハンターに被害はない。ただの威嚇行為といったところだろう。
この地にはゴブリン達の王も布陣していると聞く。自分が相対している部隊が、ゴブリンの王でないことをいささかがっかりするハンター。デルギンは魔導銃を操る一団を指揮すると耳にしていたが、これまでハンター達によって何度か打ち負かされていることも同時に風の噂で聞いている。
「ふん! 鉄砲隊は鈍足だと相場が決まっている! 突撃して切り崩してやる!」
男が伝聞したところによると、戦馬や魔導バイクに跨ったハンター達によってかき回され、彼らの鉄砲隊はその真価を発揮できなかったという。やはりゴブリンなどその程度の連中にすぎないのだ。
馬の腹を蹴り、一斉に駆け出すハンター達。それにあわせ、ゴブリン達もリトルラプターに騎乗した一団を迎撃に繰り出した。
亜人達が跨るリトルラプターは普段見かけるそれよりも大柄で、威圧感がある。しかし、歴戦のハンター達はその程度でひるむことはなかった。むしろ大柄のリトルラプターに跨っているせいで、後衛の鉄砲隊が誤射をする可能性が高まっているとも言える。
ハンターのリーダーは鼻で笑った。しばらくゴブリンどもの鉄砲を受けることはなさそうだ、と。
「敵も出てきたか! 地の利も活かせないとは愚かなやつらだ! よし! あいつ等とはまともにやりあうな! 目指すは後衛の鉄砲部隊だ! トカゲ連中を突破した直後に射撃が来るはずだ! 気をつけろよ!」
リーダーは仲間に指示を飛ばし、ひたすらに前を目指す。
リトルラプターを駆るゴブリンの機動力は侮れない。しかし、所詮はゴブリン。警戒すべきは後ろに控えている鉄砲部隊だけのはずだ。
しかしハンター達が思っていたよりも早く一斉射撃が行われた。それも彼らの至近距離から。ハンター達は突然の衝撃に馬上でよろけ、痛みに呻いた。
砲火が生まれたのは、今しがた彼らが突破しようとしたリトルラプターの一団からだった。リーダーは全身から流れる血のことも忘れて唖然とする。
「馬鹿な……騎乗したまま銃を操るだと……? ゴブリン……が……そんな器用な真似……」
馬上から倒れていくハンター達を尻目に、リトルラプターに跨るゴブリン達は颯爽と駆け抜けていく。手に持つ魔導銃を誇らしげに掲げて。
「シシシ……ワシとしたことがなぜこの組み合わせを思いつかなかったのか!」
他のゴブリン達と一緒に前線でリトルラプターを駆るデルギン。その手にはもちろん魔導銃が握られている。
デルギンはハンター達が戦場で駆る馬やバイクに何度も苦い思いをさせられてきた。その経験がこの発想につながったといっても良いだろう。
「忌々しいハンターども! 貴様たちのおかげだ! ……その礼にワシが直々に殲滅してくれるわ!」
デルギンとその直属の部下達は土煙をあげ、戦場を縦横無尽に駆け抜ける。彼らが銃を撃つその姿、まさに竜が火を吹くがごとしであった。
さらに彼らの後ろには歩兵であるゴブリン達もつき従い、デルギンの隊が崩した王国軍の部隊へと次々に襲い掛かった。大した時間もかからず王国軍の一隊を葬ったデルギンは首をぐるりとめぐらす。
リトルラプターに跨るデルギンの視線の先に、また別の一団が見える。デルギンは笑みを浮かべ、新たな獲物へと向かって突撃した。
リプレイ本文
●
「銃を使う騎兵か。恐竜に乗ってるから文字通り竜騎兵だな」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)は戦場を駆けてくる一団を見てそう呟いた。
彼の故郷であるリアルブルーでは火器を用いる騎兵のことを、竜が火を吹く姿に見立てて竜騎兵と呼称することがある。レイオスの視界の先にいるデルギン達は銃を手に巨大なトカゲに跨っている……まさしく竜騎兵そのものというわけだ。
「あんな連中がいると王国軍の被害がデカそうだし、とっととブッ潰さねぇとな」
まずは和弓「蒼天」に矢を番えるレイオス。
「Wow!! ゴブリンの騎馬鉄砲隊ですカ! 相手にとって不足なし! ですネー!! まあ、ワタシはいつも通り、近づいて殴るだけなんですケド!」
クロード・N・シックス(ka4741)はそう口にしながらトンファーを握る両の手に力を込める。
「……上等だ。やってやるさ」
ウィンス・デイランダール(ka0039)はミラージュグレイブを構え、大地を揺るがす大群を前に小さく、しかし力強く囁いた。
そんなウィンスの隣に一頭の戦馬が並ぶ。
「武器は盗んで戦術も真似て、連中も熱心なこった……戦争で狡いも何もねーが、それで有頂天になってんのは見てて腹立つな」
戦馬に跨り、敵を見据えて不機嫌さを隠さないのはジャック・エルギン(ka1522)。彼の馬は戦いの気配を感じてか、いなないている。
「落ち着け、お前の足を活かすのはもうちょい後だからな」
自分の愛馬に言い聞かせ、今はまだ仕掛ける機を待っているジャック。彼は後方を振り向いた。
「頼むぜ。俺らが蜂の巣になるかは、お前らの腕にかかってんだからよ」
広範囲へ効果を及ぼすスキルを持つ仲間達。彼らが攻撃を行うまで守ってみせると、ジャックは敵の射線に立って盾を構えた。
「やーねぇ御大層にゾロゾロ引き連れちゃってまあ……ここらで潰しておきたいトコだわな」
そう言いつつ双眼鏡を覗くのは鵤(ka3319)。デルギンの所在を確認しようというのだ。
「姿は以前みたことあるからねぇ。たぶん分かるだろ」
鵤はやがて見つけた。ラプターに跨るゴブリンの指揮官、デルギンを。鵤は声を張り上げ、仲間達に伝えた。ハンター達は素早く配置につく。その中の一人が、自分が先行して突撃することを宣言した。
準備を整えるハンター達の陣へと、デルギン直属の部隊が迫る。
最初に攻撃の口火を切ったのはハンター達だ。
「生意気なゴブリンはお仕置きだよ! 魔導銃なんて没収ー!」
リンカ・エルネージュ(ka1840)は馬上からファイアーボールを放つ。ラプターともども数体のゴブリンは爆発に巻き込まれ、悲鳴をあげる。
爆炎にまぎれる形で一台のバイクが突撃した。その魔導バイク「グローサーベーア」に跨るのはエヴァンス・カルヴィ(ka0639)。先ほど、敵陣に突っ込むと宣言したのは彼であった。
エヴァンスは愛剣、グレートソード「テンペスト」を思い切り振りかぶると、ラプターの群れへと振り下ろした。たちまち彼の剣から衝撃波が生まれ、亜人の群れを襲う。
「前にてめぇの作戦を邪魔してやった男の顔を覚えてるか、デルギン? ま、覚えてようとなかろうと……俺らが戦いに参加した時点でてめぇら鉄砲隊の運命は決まってるってことだ」
「シシシ……もちろん覚えておるとも!」
エヴァンスの呟きに応えたのは笑いを含んだ声と、発砲音。
エヴァンスは咄嗟に剣をかざした。すんでのところで刃の腹に弾かれた弾丸は明後日の方へと弾かれる。
剣を下ろしたエヴァンスは見た。駆け抜けていくデルギンの醜悪な微笑みを。
「さんざんワシの邪魔をしてくれた者ども……この場にいたのがお主達の不幸であったのだ!」
疾風のように進軍するラプター部隊。その後から続く雑兵の群れ。
前に出ていたエヴァンスへと、剣を持ったゴブリン達が襲い掛かる。しかしエヴァンスは素早く剣を薙ぎ払い、亜人をまとめて切り裂いた。
●
「ほー、前に読んだ報告書よりもだいぶ賢いじゃないか。だがまあなんだ。武器が強いだけで勝てるなら、戦争は長引きゃしないもんさ」
アーヴィン(ka3383)の短弓「テムジン」から無数の矢が放たれ、それは雨となって戦場へと降り注ぐ。彼のスキル、フォールシュートの矢の雨にまみれた亜人達は苦痛の叫びを上げる。
しかしラプターを駆る彼らはまだ健在だ。デルギンらは銃を構え、ハンター達へとそれぞれ狙いをつける。魔導銃が立て続けに火を吹き、凶弾がハンター達へと襲い掛かる。
「ちっ、こいつら、銃の腕上げてやがる、です」
前傾姿勢でバイクにぴったりと体をくっつけている八城雪(ka0146)の頭上ぎりぎりのところを、一発の銃弾が飛来していった。
デルギン率いる部族との戦闘経験のある雪は、敵の射撃の腕が明らかに向上していることに驚く。
しかし即座に気を取り直し、武器を構えた。
「罠に嵌められて、王国軍の士気もだだ下がり、です。ここは景気付けに、あの首とる、です」
ラプター隊を指揮するデルギン。その首を求め、雪はバイクの速度を上げた。
「ゴブリンだらけで嫌になっちまうな。歪虚とは違う相手ってのも、ああいう事なんだろうな。やることはわかってるよ……」
ハンター達の中央に陣取っているのはクルス(ka3922)。先の銃撃で傷ついた仲間達へと即座にヒーリングスフィアを放った。柔らかい光が周囲を照らし、ハンター達の傷が癒されていく。しかし魔導銃の威力は大きく、まだ完治には至らない。
「んもう、下手な小知恵なんてつけちゃって生意気なゴブリンねー。その銃はもともと私達のものよー? 返してちょうだいな」
ノアール=プレアール(ka1623)は危険な場にそぐわない、のほほんとした口調で呟きながらも仲間達に攻性強化、運動強化を順次使用していた。
あらかたの支援が終わると彼女は自分も魔導銃を取り出し、ゴブリン達のそれへと狙いをつける。
「……魔導銃、もったいないのだけれど、この際仕方ないものねぇ」
ノアールの射撃は一体のゴブリンが持つ魔導銃の銃身を見事に潰した。
ウィンスはミラージュグレイブを振るい、間合いに入ってきたラプターを即座に切った。ラプターは痛みと衝撃にバランスを崩し、跨っていたゴブリンも宙へと投げ出される。
「その首置いてきやがれ、です」
雪はデルギンの下へと近づこうとするが、他のゴブリンに阻まれて近づけない。腹立ちまぎれに振るわれた彼女のアックス「ライデンシャフト」が、一体の騎乗するゴブリンを切り裂いた。
ハンターとゴブリンが入り混じる乱戦の中を駆け抜けながら、次の標的を探すデルギン。そんな彼の前に一人のハンターが立ち塞がる。
「Leader自ら前に出てくるなんて……迂闊ですネ!」
デルギンの正面に現れたのはクロードだ。見覚えのある顔に、デルギンも歯をむき出しにして笑った。
彼女は旋棍「光輝燦然」をデルギンの跨るリトルラプターへと思い切り叩き込む。強い踏み込みと共に繰り出された、力ある一撃。
「将を射んとせば先ず馬を射よ! 騎馬武者相手の基本デス!」
しかしデルギンは上手くラプターを操り、その一撃を紙一重でかわした。あまつさえ、彼女に銃口を向けるとトリガーを引く。
その銃弾を彼女が烈光旋棍で受けることが出来たのは幸運に他ならない。しかし衝撃は完全には殺せず、彼女はよろめいた。
デルギンは舌打ちしながら彼女の側を通り過ぎていく。もちろん悔しがっているのはクロードも同様だ。立ち直った彼女は腹いせとばかりに、手近な他のラプターを文字通りぶっ飛ばした。
●
「創意工夫の姿勢は共感するところもあるけれど……敵にした時の怖さもわかる。だから……ここで、必ず、殺す」
アルケミストのクレール(ka0586)は殺意と共に、機杖「ピュアホワイト」を振った。それと同時に三振りの三日月刀が現れ、各々がゴブリン達へと襲い掛かる。
「敵のヒットアンドアウェイの、アウェイを潰す!」
三振りの刃が振りぬかれた時、二体のゴブリンが絶命していた。残りの一体はからくも光の剣の魔の手から逃れる。
「接近戦に弱い竜騎兵が銃しか装備してないなんて付け焼刃の戦術だ。だが付け焼刃でも危険な刃物だ、今の内に圧し折ってやる!」
レイオスは雄雄しく叫び、試作雷撃刀「ダークMASAMUNE」でラプターを駆る亜人を狙う。渾身の力が篭った斬撃が、ゴブリンへと襲い掛かった。
「立て直しなんざさせっかよ!」
気を吐くジャックもラプター隊に切り込み、デルギン直属らしきゴブリン目掛けて剣を突き出す。バスタードソード「フォルティス」はゴブリンを見事に刺し貫く。手ごたえは十分だ。
ひと時の交錯を経て、再び距離を取ろうと駆け抜けていくラプター達。ハンター達の活躍により、突入してきた時に比べて鉄砲部隊の数は明らかに減っていた。
しかしそれと入れ替わるように、新たな亜人の大群がハンター達を呑み込んで行く。鉄砲隊の後から突撃してきた、ゴブリンの雑兵たちである。その数、200はいよう。
●
距離を取っていくデルギンを追いかけようとした雪をゴブリンの群れが取り囲んだ。それならばと逃げる亜人の背に衝撃波を放った雪であったが、その一撃は残念ながらデルギンに届かなかった。
ゴブリンの繰り出した槍が雪の太ももへと突き刺さる。痛みに顔をしかめながらも、斧を振り下ろして亜人達を絶命させる雪。
乱戦から離れたところにいたアーヴィンは、雪に代わってデルギンの一隊を追い、ゴースロンを走らせる。
「状況は悪いが教育してやろうじゃないか」
――弓を上手に撃てるだけじゃ戦士として半人前
――弓手は逃げ隠れができて一人前
彼はデルギン達を逃がさないように距離を取って威嚇射撃を行う。うるさそうに彼を狙うゴブリン達だったが、魔導銃からの弾丸は彼へと効果をあげることはなかった。
ウィンスはゴブリンが繰り出した槍を弾き、返す刃で一帯をなぎ払う。ゴブリン達は真っ二つとなり、血を撒き散らしながら宙を舞う。それならばと数を頼りに彼を包囲しようとするゴブリン達。
「――上等だ!」
ウィンスは先ほど自分がこじ開けたスペースに転がり込み、再び得物を振るった。ミラージュグレイブの七色に輝く刃がゆらめき、ゴブリン達を新たに葬り去る。
エヴァンスはバイク上で剣を振り回し、近づくゴブリンを次々と切り捨てていた。数だけは多いゴブリンの攻撃を全てさばくのは難しく、彼の鎧に傷が増えていく。雲霞のように群がるゴブリン達を一掃するため、エヴァンスは思い切り剣を横薙ぎに振った。ゴブリン達は風に舞う木の葉のように吹き飛ぶが、また新たな敵が彼の側に纏わりつく。
マテリアルヒーリングで先の交戦の傷を癒したジャックもゴブリンの群れに囲まれていた。治った怪我の上から新たな裂傷が彼の体に刻まれる。しかし致命傷になるような攻撃は上手くラウンドシールドでさばき、逆に剣を一閃させて亜人の首筋を切り裂いた。
彼は、この戦いの前にデルギンへと挑んでいた他のハンター達の生死を気にしており、もし生きていたのならその撤退を支援しようと考えていたのだが……この状況ではそれも難しい。
「動けるなら早いとこ引いて、復帰してくれ。手が足りねーんだからよ」
名も知らぬハンター達の生存を願うように独白し、今は自分が生き延びるためにその剣を振るうジャックであった。
その後ろでマテリアルを集中させているのはクレールだ。
「私のもう一つの刃! 紋章剣、火竜っ!! 18m先まで……纏めて薙ぎ払うっ!! ゴブリンども! くたばれぇぇーー!!」
クレールから放たれた紅蓮の炎。巨大な剣の姿をかたどったそれは、彼女の言葉通りゴブリン達をまとめてなぎ払った。
ノアールも同じようにファイアスローワーを亜人の群れに放つ。
レイオスはバイク上でひたすら刀を振っていた。
「流石に数が多いな。こいつらを全部倒すのは骨が折れそうだ」
切っても切ってもその数は中々減らない。
ゴブリンとはいえ、さすがにこれだけの大群となると脅威である。
リンカも剣を構え、肉薄してきたゴブリンを切り払いながら、隙を見てファイアーボールでゴブリンの一群を焼き尽くす。
鵤は仲間達……特に回復役を務めるクルスを守る為、持てるスキルを活かして迎撃していた。時にはデルタレイで。時にはファイアスローワーで。
さらにはクルスへと向かう敵の間に立ち塞がり、その剣を盾で受け止める。
クルスは自衛の為に杖を構えながらも、傷つく仲間を回復する為、ひたすらに癒しの力を行使していた。
その状況の最中、再び戻ってきたラプター部隊。
アーヴィンの矢もラプター部隊にある程度の効果をあげてはいたが、敵を完全に足止めすることは難しかったのである。
ゴブリン達は地を駆りながらハンター達に狙いをつけ、各々引き金を引く。竜のブレスのように吐き出された破滅的な弾丸が、ハンター達を痛めつけた。
鵤は身を挺して弾雨からクルスを守る。ムーバブルシールドを行使することにより、自分に注がれる銃弾をなんとか防ぐ鵤。
その背後でクルスは、前線が崩れてしまわないよう回復の力を行使し続ける。
「守ってくれる味方には頭が下がる思いだぜ……誰一人欠けさせたくねえからよ」
クルスは仲間達に報いるべく、ヒーリングスフィアの光を生み出した。
暖かい癒しの力を感じながら、戦場を駆け回るクロード。
「烏合の衆が調子に乗るとヒドイ目に遭いますヨ?」
彼女は左右のトンファーでゴブリンたちを手当たり次第ぶちのめしている。
「ワタシの双旋棍の餌食になりたいヤツから血祭りにしてあげマス!! Bring it on!!」
西方言葉の挑発を繰り出しつつ、彼女は亜人達の中央でひたすらに戦いの演舞を続けた。
●
草は赤く染まり、多くの戦士達が土にまみれていた。
長いようで短い戦いの中、ゴブリン達は多くの数がその命を散らしていた。逆にハンター達の中に命を落とした者はいないが、皆、満身創痍だ。
しかし、疲労困憊の彼らの目にはまだ強い意志が宿っている。倒すべき敵が残っているからだ。
もちろん狙うは敵の指揮官、デルギンだ。雑兵達の数も減り、デルギンの取り巻きももはやそれほど多くない。今がチャンスだ。
機杖「ピュアホワイト」をデルギンへと突きつけ、クレールが声高に叫ぶ。
「月雫! 狙いは、ラプターと、デルギン本体! 逃がすかぁぁっ!!」
クレールから生まれた光の三日月刀が空を滑る。
「撤退を阻止すれば、必ず皆さんがやってくれる……! そしたら、後は残りの部隊を潰すだけ!」
光の刃が亜人の指揮官へと吸い込まれていく。悲鳴をあげるデルギン。ハンター達の間から歓喜の声があがる。
だが、クレールには分かってしまった。放った光の刃の一刀はデルギンの魔導銃ごと確かにその体を切り裂いた。しかし、彼と彼の乗物はまだ健在であることを。
「グッ……下僕ども! ワシを守らんか!」
デルギンは無様ともとれる姿勢でラプターにしがみ付くと配下達に叫び、自分は素早く退こうとする。ラプターは一声吠えると走りだした。
デルギンのカバーに入ろうとした敵をウィンスが牽制する。そのウィンスに狙いをつけたゴブリンの一体が発砲し、逆に彼へと手傷を負わせる。そこに殺到するゴブリンの群れ。
エヴァンスがフォローに入り、ゴブリン達を切り飛ばした。ウィンスも共同して亜人の群れへと武器を振るう。
ノアールのファイアスローワー、リンカのファイアーボールが新たに群がろうとする雑兵ゴブリンを焼き払った。
しかし、デルギンの背中はどんどん小さくなっていく。デルギンと同じようにラプターを駆る他のゴブリン達も、指揮官の後を追い戦場を離脱していく。
「今日は絶対、逃がさねー、です」
目前の敵を仕留めた後、雪は言葉と共にバイクを最大速度で走らせる。しかし、亜人達の猛攻撃が彼女へと襲い掛かった。雪は近づく敵を斧で切り裂き、銃弾の雨あられを何とか防ごうとしたものの……この時、恐るべき魔導銃のほとんどが彼女へと同時に向けられていたのだ。雪はついにいくつもの銃弾をまともに受け、大地へと転がり落ちる。
彼女にとどめをさそうと殺到したゴブリンだったが、ハンター達がかけつけ、亜人達をすばやく切り伏せた。
仲間達は雪に近づき、ほっと胸を撫で下ろした。幸い、雪の命の灯火はまだ消えてはいない。クルスがすぐさま彼女の傷を癒す為に祈った。
アーヴィンも名声の為、金の為にデルギンを追いかけたが、取り巻き達が放つ射撃の前に断念せざるを得なかった。彼が最後にデルギンへと向けて放った矢が当たったかどうかは、神のみぞ知るところだ。
雑兵ゴブリン達も一体、また一体と戦場を離れていき、ついにハンター達の側から一人残らずいなくなる。戦場は先ほどまでの狂騒が嘘のように静かになり、クルスの捧げる祈りの声だけが彼らの鼓膜を震わせた。
●
ハンター達とデルギン達との戦いはひとまず終結した。
無勢で多勢の猛攻を何とか凌いだのだ。その戦果は誇るべきものである。しかし、デルギンの首をあげられなかったこと。それが、彼らの中で小さな敗北感となって、いつまでもわだかまり続けていた……。
「銃を使う騎兵か。恐竜に乗ってるから文字通り竜騎兵だな」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)は戦場を駆けてくる一団を見てそう呟いた。
彼の故郷であるリアルブルーでは火器を用いる騎兵のことを、竜が火を吹く姿に見立てて竜騎兵と呼称することがある。レイオスの視界の先にいるデルギン達は銃を手に巨大なトカゲに跨っている……まさしく竜騎兵そのものというわけだ。
「あんな連中がいると王国軍の被害がデカそうだし、とっととブッ潰さねぇとな」
まずは和弓「蒼天」に矢を番えるレイオス。
「Wow!! ゴブリンの騎馬鉄砲隊ですカ! 相手にとって不足なし! ですネー!! まあ、ワタシはいつも通り、近づいて殴るだけなんですケド!」
クロード・N・シックス(ka4741)はそう口にしながらトンファーを握る両の手に力を込める。
「……上等だ。やってやるさ」
ウィンス・デイランダール(ka0039)はミラージュグレイブを構え、大地を揺るがす大群を前に小さく、しかし力強く囁いた。
そんなウィンスの隣に一頭の戦馬が並ぶ。
「武器は盗んで戦術も真似て、連中も熱心なこった……戦争で狡いも何もねーが、それで有頂天になってんのは見てて腹立つな」
戦馬に跨り、敵を見据えて不機嫌さを隠さないのはジャック・エルギン(ka1522)。彼の馬は戦いの気配を感じてか、いなないている。
「落ち着け、お前の足を活かすのはもうちょい後だからな」
自分の愛馬に言い聞かせ、今はまだ仕掛ける機を待っているジャック。彼は後方を振り向いた。
「頼むぜ。俺らが蜂の巣になるかは、お前らの腕にかかってんだからよ」
広範囲へ効果を及ぼすスキルを持つ仲間達。彼らが攻撃を行うまで守ってみせると、ジャックは敵の射線に立って盾を構えた。
「やーねぇ御大層にゾロゾロ引き連れちゃってまあ……ここらで潰しておきたいトコだわな」
そう言いつつ双眼鏡を覗くのは鵤(ka3319)。デルギンの所在を確認しようというのだ。
「姿は以前みたことあるからねぇ。たぶん分かるだろ」
鵤はやがて見つけた。ラプターに跨るゴブリンの指揮官、デルギンを。鵤は声を張り上げ、仲間達に伝えた。ハンター達は素早く配置につく。その中の一人が、自分が先行して突撃することを宣言した。
準備を整えるハンター達の陣へと、デルギン直属の部隊が迫る。
最初に攻撃の口火を切ったのはハンター達だ。
「生意気なゴブリンはお仕置きだよ! 魔導銃なんて没収ー!」
リンカ・エルネージュ(ka1840)は馬上からファイアーボールを放つ。ラプターともども数体のゴブリンは爆発に巻き込まれ、悲鳴をあげる。
爆炎にまぎれる形で一台のバイクが突撃した。その魔導バイク「グローサーベーア」に跨るのはエヴァンス・カルヴィ(ka0639)。先ほど、敵陣に突っ込むと宣言したのは彼であった。
エヴァンスは愛剣、グレートソード「テンペスト」を思い切り振りかぶると、ラプターの群れへと振り下ろした。たちまち彼の剣から衝撃波が生まれ、亜人の群れを襲う。
「前にてめぇの作戦を邪魔してやった男の顔を覚えてるか、デルギン? ま、覚えてようとなかろうと……俺らが戦いに参加した時点でてめぇら鉄砲隊の運命は決まってるってことだ」
「シシシ……もちろん覚えておるとも!」
エヴァンスの呟きに応えたのは笑いを含んだ声と、発砲音。
エヴァンスは咄嗟に剣をかざした。すんでのところで刃の腹に弾かれた弾丸は明後日の方へと弾かれる。
剣を下ろしたエヴァンスは見た。駆け抜けていくデルギンの醜悪な微笑みを。
「さんざんワシの邪魔をしてくれた者ども……この場にいたのがお主達の不幸であったのだ!」
疾風のように進軍するラプター部隊。その後から続く雑兵の群れ。
前に出ていたエヴァンスへと、剣を持ったゴブリン達が襲い掛かる。しかしエヴァンスは素早く剣を薙ぎ払い、亜人をまとめて切り裂いた。
●
「ほー、前に読んだ報告書よりもだいぶ賢いじゃないか。だがまあなんだ。武器が強いだけで勝てるなら、戦争は長引きゃしないもんさ」
アーヴィン(ka3383)の短弓「テムジン」から無数の矢が放たれ、それは雨となって戦場へと降り注ぐ。彼のスキル、フォールシュートの矢の雨にまみれた亜人達は苦痛の叫びを上げる。
しかしラプターを駆る彼らはまだ健在だ。デルギンらは銃を構え、ハンター達へとそれぞれ狙いをつける。魔導銃が立て続けに火を吹き、凶弾がハンター達へと襲い掛かる。
「ちっ、こいつら、銃の腕上げてやがる、です」
前傾姿勢でバイクにぴったりと体をくっつけている八城雪(ka0146)の頭上ぎりぎりのところを、一発の銃弾が飛来していった。
デルギン率いる部族との戦闘経験のある雪は、敵の射撃の腕が明らかに向上していることに驚く。
しかし即座に気を取り直し、武器を構えた。
「罠に嵌められて、王国軍の士気もだだ下がり、です。ここは景気付けに、あの首とる、です」
ラプター隊を指揮するデルギン。その首を求め、雪はバイクの速度を上げた。
「ゴブリンだらけで嫌になっちまうな。歪虚とは違う相手ってのも、ああいう事なんだろうな。やることはわかってるよ……」
ハンター達の中央に陣取っているのはクルス(ka3922)。先の銃撃で傷ついた仲間達へと即座にヒーリングスフィアを放った。柔らかい光が周囲を照らし、ハンター達の傷が癒されていく。しかし魔導銃の威力は大きく、まだ完治には至らない。
「んもう、下手な小知恵なんてつけちゃって生意気なゴブリンねー。その銃はもともと私達のものよー? 返してちょうだいな」
ノアール=プレアール(ka1623)は危険な場にそぐわない、のほほんとした口調で呟きながらも仲間達に攻性強化、運動強化を順次使用していた。
あらかたの支援が終わると彼女は自分も魔導銃を取り出し、ゴブリン達のそれへと狙いをつける。
「……魔導銃、もったいないのだけれど、この際仕方ないものねぇ」
ノアールの射撃は一体のゴブリンが持つ魔導銃の銃身を見事に潰した。
ウィンスはミラージュグレイブを振るい、間合いに入ってきたラプターを即座に切った。ラプターは痛みと衝撃にバランスを崩し、跨っていたゴブリンも宙へと投げ出される。
「その首置いてきやがれ、です」
雪はデルギンの下へと近づこうとするが、他のゴブリンに阻まれて近づけない。腹立ちまぎれに振るわれた彼女のアックス「ライデンシャフト」が、一体の騎乗するゴブリンを切り裂いた。
ハンターとゴブリンが入り混じる乱戦の中を駆け抜けながら、次の標的を探すデルギン。そんな彼の前に一人のハンターが立ち塞がる。
「Leader自ら前に出てくるなんて……迂闊ですネ!」
デルギンの正面に現れたのはクロードだ。見覚えのある顔に、デルギンも歯をむき出しにして笑った。
彼女は旋棍「光輝燦然」をデルギンの跨るリトルラプターへと思い切り叩き込む。強い踏み込みと共に繰り出された、力ある一撃。
「将を射んとせば先ず馬を射よ! 騎馬武者相手の基本デス!」
しかしデルギンは上手くラプターを操り、その一撃を紙一重でかわした。あまつさえ、彼女に銃口を向けるとトリガーを引く。
その銃弾を彼女が烈光旋棍で受けることが出来たのは幸運に他ならない。しかし衝撃は完全には殺せず、彼女はよろめいた。
デルギンは舌打ちしながら彼女の側を通り過ぎていく。もちろん悔しがっているのはクロードも同様だ。立ち直った彼女は腹いせとばかりに、手近な他のラプターを文字通りぶっ飛ばした。
●
「創意工夫の姿勢は共感するところもあるけれど……敵にした時の怖さもわかる。だから……ここで、必ず、殺す」
アルケミストのクレール(ka0586)は殺意と共に、機杖「ピュアホワイト」を振った。それと同時に三振りの三日月刀が現れ、各々がゴブリン達へと襲い掛かる。
「敵のヒットアンドアウェイの、アウェイを潰す!」
三振りの刃が振りぬかれた時、二体のゴブリンが絶命していた。残りの一体はからくも光の剣の魔の手から逃れる。
「接近戦に弱い竜騎兵が銃しか装備してないなんて付け焼刃の戦術だ。だが付け焼刃でも危険な刃物だ、今の内に圧し折ってやる!」
レイオスは雄雄しく叫び、試作雷撃刀「ダークMASAMUNE」でラプターを駆る亜人を狙う。渾身の力が篭った斬撃が、ゴブリンへと襲い掛かった。
「立て直しなんざさせっかよ!」
気を吐くジャックもラプター隊に切り込み、デルギン直属らしきゴブリン目掛けて剣を突き出す。バスタードソード「フォルティス」はゴブリンを見事に刺し貫く。手ごたえは十分だ。
ひと時の交錯を経て、再び距離を取ろうと駆け抜けていくラプター達。ハンター達の活躍により、突入してきた時に比べて鉄砲部隊の数は明らかに減っていた。
しかしそれと入れ替わるように、新たな亜人の大群がハンター達を呑み込んで行く。鉄砲隊の後から突撃してきた、ゴブリンの雑兵たちである。その数、200はいよう。
●
距離を取っていくデルギンを追いかけようとした雪をゴブリンの群れが取り囲んだ。それならばと逃げる亜人の背に衝撃波を放った雪であったが、その一撃は残念ながらデルギンに届かなかった。
ゴブリンの繰り出した槍が雪の太ももへと突き刺さる。痛みに顔をしかめながらも、斧を振り下ろして亜人達を絶命させる雪。
乱戦から離れたところにいたアーヴィンは、雪に代わってデルギンの一隊を追い、ゴースロンを走らせる。
「状況は悪いが教育してやろうじゃないか」
――弓を上手に撃てるだけじゃ戦士として半人前
――弓手は逃げ隠れができて一人前
彼はデルギン達を逃がさないように距離を取って威嚇射撃を行う。うるさそうに彼を狙うゴブリン達だったが、魔導銃からの弾丸は彼へと効果をあげることはなかった。
ウィンスはゴブリンが繰り出した槍を弾き、返す刃で一帯をなぎ払う。ゴブリン達は真っ二つとなり、血を撒き散らしながら宙を舞う。それならばと数を頼りに彼を包囲しようとするゴブリン達。
「――上等だ!」
ウィンスは先ほど自分がこじ開けたスペースに転がり込み、再び得物を振るった。ミラージュグレイブの七色に輝く刃がゆらめき、ゴブリン達を新たに葬り去る。
エヴァンスはバイク上で剣を振り回し、近づくゴブリンを次々と切り捨てていた。数だけは多いゴブリンの攻撃を全てさばくのは難しく、彼の鎧に傷が増えていく。雲霞のように群がるゴブリン達を一掃するため、エヴァンスは思い切り剣を横薙ぎに振った。ゴブリン達は風に舞う木の葉のように吹き飛ぶが、また新たな敵が彼の側に纏わりつく。
マテリアルヒーリングで先の交戦の傷を癒したジャックもゴブリンの群れに囲まれていた。治った怪我の上から新たな裂傷が彼の体に刻まれる。しかし致命傷になるような攻撃は上手くラウンドシールドでさばき、逆に剣を一閃させて亜人の首筋を切り裂いた。
彼は、この戦いの前にデルギンへと挑んでいた他のハンター達の生死を気にしており、もし生きていたのならその撤退を支援しようと考えていたのだが……この状況ではそれも難しい。
「動けるなら早いとこ引いて、復帰してくれ。手が足りねーんだからよ」
名も知らぬハンター達の生存を願うように独白し、今は自分が生き延びるためにその剣を振るうジャックであった。
その後ろでマテリアルを集中させているのはクレールだ。
「私のもう一つの刃! 紋章剣、火竜っ!! 18m先まで……纏めて薙ぎ払うっ!! ゴブリンども! くたばれぇぇーー!!」
クレールから放たれた紅蓮の炎。巨大な剣の姿をかたどったそれは、彼女の言葉通りゴブリン達をまとめてなぎ払った。
ノアールも同じようにファイアスローワーを亜人の群れに放つ。
レイオスはバイク上でひたすら刀を振っていた。
「流石に数が多いな。こいつらを全部倒すのは骨が折れそうだ」
切っても切ってもその数は中々減らない。
ゴブリンとはいえ、さすがにこれだけの大群となると脅威である。
リンカも剣を構え、肉薄してきたゴブリンを切り払いながら、隙を見てファイアーボールでゴブリンの一群を焼き尽くす。
鵤は仲間達……特に回復役を務めるクルスを守る為、持てるスキルを活かして迎撃していた。時にはデルタレイで。時にはファイアスローワーで。
さらにはクルスへと向かう敵の間に立ち塞がり、その剣を盾で受け止める。
クルスは自衛の為に杖を構えながらも、傷つく仲間を回復する為、ひたすらに癒しの力を行使していた。
その状況の最中、再び戻ってきたラプター部隊。
アーヴィンの矢もラプター部隊にある程度の効果をあげてはいたが、敵を完全に足止めすることは難しかったのである。
ゴブリン達は地を駆りながらハンター達に狙いをつけ、各々引き金を引く。竜のブレスのように吐き出された破滅的な弾丸が、ハンター達を痛めつけた。
鵤は身を挺して弾雨からクルスを守る。ムーバブルシールドを行使することにより、自分に注がれる銃弾をなんとか防ぐ鵤。
その背後でクルスは、前線が崩れてしまわないよう回復の力を行使し続ける。
「守ってくれる味方には頭が下がる思いだぜ……誰一人欠けさせたくねえからよ」
クルスは仲間達に報いるべく、ヒーリングスフィアの光を生み出した。
暖かい癒しの力を感じながら、戦場を駆け回るクロード。
「烏合の衆が調子に乗るとヒドイ目に遭いますヨ?」
彼女は左右のトンファーでゴブリンたちを手当たり次第ぶちのめしている。
「ワタシの双旋棍の餌食になりたいヤツから血祭りにしてあげマス!! Bring it on!!」
西方言葉の挑発を繰り出しつつ、彼女は亜人達の中央でひたすらに戦いの演舞を続けた。
●
草は赤く染まり、多くの戦士達が土にまみれていた。
長いようで短い戦いの中、ゴブリン達は多くの数がその命を散らしていた。逆にハンター達の中に命を落とした者はいないが、皆、満身創痍だ。
しかし、疲労困憊の彼らの目にはまだ強い意志が宿っている。倒すべき敵が残っているからだ。
もちろん狙うは敵の指揮官、デルギンだ。雑兵達の数も減り、デルギンの取り巻きももはやそれほど多くない。今がチャンスだ。
機杖「ピュアホワイト」をデルギンへと突きつけ、クレールが声高に叫ぶ。
「月雫! 狙いは、ラプターと、デルギン本体! 逃がすかぁぁっ!!」
クレールから生まれた光の三日月刀が空を滑る。
「撤退を阻止すれば、必ず皆さんがやってくれる……! そしたら、後は残りの部隊を潰すだけ!」
光の刃が亜人の指揮官へと吸い込まれていく。悲鳴をあげるデルギン。ハンター達の間から歓喜の声があがる。
だが、クレールには分かってしまった。放った光の刃の一刀はデルギンの魔導銃ごと確かにその体を切り裂いた。しかし、彼と彼の乗物はまだ健在であることを。
「グッ……下僕ども! ワシを守らんか!」
デルギンは無様ともとれる姿勢でラプターにしがみ付くと配下達に叫び、自分は素早く退こうとする。ラプターは一声吠えると走りだした。
デルギンのカバーに入ろうとした敵をウィンスが牽制する。そのウィンスに狙いをつけたゴブリンの一体が発砲し、逆に彼へと手傷を負わせる。そこに殺到するゴブリンの群れ。
エヴァンスがフォローに入り、ゴブリン達を切り飛ばした。ウィンスも共同して亜人の群れへと武器を振るう。
ノアールのファイアスローワー、リンカのファイアーボールが新たに群がろうとする雑兵ゴブリンを焼き払った。
しかし、デルギンの背中はどんどん小さくなっていく。デルギンと同じようにラプターを駆る他のゴブリン達も、指揮官の後を追い戦場を離脱していく。
「今日は絶対、逃がさねー、です」
目前の敵を仕留めた後、雪は言葉と共にバイクを最大速度で走らせる。しかし、亜人達の猛攻撃が彼女へと襲い掛かった。雪は近づく敵を斧で切り裂き、銃弾の雨あられを何とか防ごうとしたものの……この時、恐るべき魔導銃のほとんどが彼女へと同時に向けられていたのだ。雪はついにいくつもの銃弾をまともに受け、大地へと転がり落ちる。
彼女にとどめをさそうと殺到したゴブリンだったが、ハンター達がかけつけ、亜人達をすばやく切り伏せた。
仲間達は雪に近づき、ほっと胸を撫で下ろした。幸い、雪の命の灯火はまだ消えてはいない。クルスがすぐさま彼女の傷を癒す為に祈った。
アーヴィンも名声の為、金の為にデルギンを追いかけたが、取り巻き達が放つ射撃の前に断念せざるを得なかった。彼が最後にデルギンへと向けて放った矢が当たったかどうかは、神のみぞ知るところだ。
雑兵ゴブリン達も一体、また一体と戦場を離れていき、ついにハンター達の側から一人残らずいなくなる。戦場は先ほどまでの狂騒が嘘のように静かになり、クルスの捧げる祈りの声だけが彼らの鼓膜を震わせた。
●
ハンター達とデルギン達との戦いはひとまず終結した。
無勢で多勢の猛攻を何とか凌いだのだ。その戦果は誇るべきものである。しかし、デルギンの首をあげられなかったこと。それが、彼らの中で小さな敗北感となって、いつまでもわだかまり続けていた……。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談用スレッド ジャック・エルギン(ka1522) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/09/18 10:21:11 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/09/14 03:07:16 |