ゲスト
(ka0000)
それは何かの前兆か
マスター:大林さゆる

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/09/15 07:30
- 完成日
- 2015/09/21 00:38
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
蒸気工場都市「フマーレ」から少し離れた場所に小さな町工場があった。
「親方、ここ最近は晴れているのに、空が霞んでいるように見えて、少し肌寒いね」
作業員がそう告げると、町工場の親方は両腕を組み、思案していた。
「一週間前から作業中に怪我する者も増えたな。軽い怪我とは言え、こうも続くと、何かの前兆にも思えるな」
「だったら、ハンターたちに調査してもらいましょうか?」
「そうだな……万が一ってこともあるからな。調べてもらうか」
親方は早速、ハンター本部に依頼して、街を調査してもらうことにした。
●
翌日。
調査隊のハンターが4人、小さな町に訪れ、隅から隅まで調査することになった。
この町に住んでいる人々は、すでに隣の村に避難している。そのせいか、辺りは静まり返り、時折、風が吹いていた。
しばらくして、町工場の近くを偵察していると、物陰から風の刃が飛んできた。
「まさか、歪虚の仕業か?!」
一人のハンターが軽い怪我をしたが、調査は続行することにした。
ハンターたちは町工場に入り、注意深く周囲を窺う。
「……天井と壁に、何か青い物体らしきものが…」
慎重に接近して、その物体の正体を突き止めることにした。
青い物体は煙のように浮遊して、所構わず、風の刃で攻撃していた。
「何故、こんなところに、風のヴォイドがいるんだ?」
ハンターたちが青い物体に気を取られているうちに、いつのまにかゾンビに取り囲まれていた。
「しまった! 罠か?!」
無数のゾンビがハンターたちに襲いかかってきた。
なんとか町工場から抜け出すことができたが、調査隊のハンターは退治できる者を集めることにした。
「ゾンビに、風のヴォイドか……この土地も、少しずつ浸食されているということか?」
確信は持てなかったが、町に歪虚が住みついている可能性がある。
このまま放置しておけば、この町もいずれは人も住めないほどの廃墟となるかもしれない。
それだけは、なんとしてでも阻止したいところだ。
浸食……。
歪虚の進行は、確実に進んでいた。
それはまるで、何かを貪るようにも思えた。
「親方、ここ最近は晴れているのに、空が霞んでいるように見えて、少し肌寒いね」
作業員がそう告げると、町工場の親方は両腕を組み、思案していた。
「一週間前から作業中に怪我する者も増えたな。軽い怪我とは言え、こうも続くと、何かの前兆にも思えるな」
「だったら、ハンターたちに調査してもらいましょうか?」
「そうだな……万が一ってこともあるからな。調べてもらうか」
親方は早速、ハンター本部に依頼して、街を調査してもらうことにした。
●
翌日。
調査隊のハンターが4人、小さな町に訪れ、隅から隅まで調査することになった。
この町に住んでいる人々は、すでに隣の村に避難している。そのせいか、辺りは静まり返り、時折、風が吹いていた。
しばらくして、町工場の近くを偵察していると、物陰から風の刃が飛んできた。
「まさか、歪虚の仕業か?!」
一人のハンターが軽い怪我をしたが、調査は続行することにした。
ハンターたちは町工場に入り、注意深く周囲を窺う。
「……天井と壁に、何か青い物体らしきものが…」
慎重に接近して、その物体の正体を突き止めることにした。
青い物体は煙のように浮遊して、所構わず、風の刃で攻撃していた。
「何故、こんなところに、風のヴォイドがいるんだ?」
ハンターたちが青い物体に気を取られているうちに、いつのまにかゾンビに取り囲まれていた。
「しまった! 罠か?!」
無数のゾンビがハンターたちに襲いかかってきた。
なんとか町工場から抜け出すことができたが、調査隊のハンターは退治できる者を集めることにした。
「ゾンビに、風のヴォイドか……この土地も、少しずつ浸食されているということか?」
確信は持てなかったが、町に歪虚が住みついている可能性がある。
このまま放置しておけば、この町もいずれは人も住めないほどの廃墟となるかもしれない。
それだけは、なんとしてでも阻止したいところだ。
浸食……。
歪虚の進行は、確実に進んでいた。
それはまるで、何かを貪るようにも思えた。
リプレイ本文
……これこそ、無情の喜び。
……全てを呑み込むのだ。
……なんと、美味であろう。
……どこまでも、どこまでも、広がっていく。
……嗚呼、君はどこにいるのだ。
……今すぐ、会いたい……。
ワタシは、ここにいるのだ。
気が付いておくれ。
ワタシは、ここだ……。
甘美に満ちた、この世界よ……。
全てを包み込むのだ……。
……ふふふ……あはは……。
もっと、もっと、ワタシに近づくのだ。
……そうだ。
……こっちだ……。
●
小さな町に辿り着いたコルネリア・S(ka5302)は乗用馬から降りると、周囲の様子を見渡した。
「完全に侵食されていないとは言え、住人たちがいないと、まるで廃墟のようだな」
それとも地獄への入口か。コルネリアは深呼吸すると、徒歩で町の中へ入ることにした。
ザレム・アズール(ka0878)は、今回の依頼内容が気になり、考え込んでいた。
「……歪虚を全て退治することは前提で、他にも何かあるのかもしれない」
「ボクの勘だけど、歪虚は外から来たのではなくて、『内側』から湧いて出てきたんじゃないかな?」
水流崎トミヲ(ka4852)の推測が当たっていれば、場所は特定できる。
「そう、例えば、墓地とか、町工場があるなら廃棄施設もありそうだよね」
トミヲがそう言うと、リュー・グランフェスト(ka2419)が調査隊のハンターから借りた町の地図を広げた。
「ビンゴだ。町の南側に墓地があって、町工場の近くには廃棄場所もある。これで敵の動向も絞れそうだぜ」
それを聞いて、超級まりお(ka0824)が右の拳を掲げた。
「まずはゾンビを全部退治してから、次に風のヴォイドとの対戦だね!」
「風のヴォイドは『風属性』の能力が使える歪虚だと聞きましたが、今のところ町工場から出たという報告はないようです」
クオン・サガラ(ka0018)も、何かが起きている予感をしていた。
「歪虚退治が済んだら、時間の許す限り、調査もしておきたいね。気候の変化とかも気になるから」
トミヲの言葉に、ザレムが同意するように頷く。
「ああ、俺も工場や気候が気になっていた。調査しておけば、今後の指針にもなるだろう」
ハンターたちは話し合った後、持ち場につくことにした。
●
町工場まで辿り着くには、まずは広場まで進むことが地図で判明した。
クオンは広場を見渡せる家を見つけて、ショットアンカーで屋根の窪みに錨を打ち込むことにした。錨には紐が結ばれていたが、しっかりと固定されていることを確認してから、クオンは紐をつたって登り始めた。錨を打ち込むことができても、登るには相当の能力が必要だ。
「……なんとか、屋根の上に登れましたが、思っていたよりも難しいですね」
今回は登ることに成功したが、状況によっては難易度も変わる。クオンは屋根から動向を伺っていた。
見れば、広場へと続く道にはゾンビが数体、ゆらゆらと身体を動かしながら強酸を吐き、歩いていた。
ハンターたちは射程外にいたこともあり、強酸でダメージを受けることはなかった。
「さっそくゾンビが現れたな」
コルネリアはシールド「エスペランサ」で『堅守』を発動させ、受けに専念…移動できない分、防御に徹した技だ。友を守るため、盾を構えるコルネリア。
「一歩も引かぬ…それこそが、私の流儀」
「コルネリアくん、あ…ありがとう」
トミヲは照れながらも、的確に『ライトニングボルト』を放った。道の中央から一直線に電撃が走り、ゾンビが6体、灰となるが、残りのゾンビはゆっくりとハンターたちに接近してきた。
まりおは『瞬脚』で移動し、試作光斬刀「MURASAMEブレイド」でゾンビを切り裂き、前方への道を確保した。
「もう少しで広場に出るよ。準備はいいかな」
陽気に言いながらも、まりおはゾンビに噛まれたらどうなるのか想像していた。
「ゾンビの仲間入りはごめんだね」
情報が正しければ、ゾンビの呼び声で、死亡した同種の歪虚1体をHP1の状態で復活させることができるのだ。
ゾンビが一体でも残っている限り、増える可能性がある。
ならば、全て退治することが先決だと、まりおは考えていた。
そのための前方確保だ。
まりおのおかげで、最低限の距離を取ることが可能になり、リューは試作振動刀「オートMURAMASA」で『刺突一閃』を繰り出した。2体のゾンビが衝撃で消え去り、広場へと入ることができた。
だが、残りのゾンビは呼び声で仲間を呼び寄せ、広場には4体のゾンビが姿を現した。
クオンは建物の屋根に上り、ゾンビの動きに注意を払っていた。
「南からゾンビが出てくるようですね」
仲間を支援するため、リュミエールボウで矢を放つクオン。
矢が突き刺さりゾンビ一体が崩れかかったところを、ザレムが『デルタレイ』を放った。光の三角形が現れ、その頂点一つ一つから伸びた光がゾンビを貫き、三体のゾンビが霧のように消え去った。
ハンターたちは、さらに身構えた。続々とゾンビが出現したからだ。
「僕たちの動向に気が付いたのか、ゾンビが次々と広場に入ってきたね。ここで纏めて倒してしまおう!」
トミヲはワンド「ゴールデン・バウ」を掲げて『ファイアーボール』を放った。広場に炎の球が爆発し、ゾンビ数体があっというまに火に包まれたかと思うと、炎が消えると同時に7体のゾンビが消滅していた。
射程外にいたゾンビたちは、クオンの『ファイアスローワー』による扇状の炎によって3体が消え去り、リューの『刺突一閃』が炸裂してゾンビ2体が消滅していく。
「逃しはしない!」
コルネリアは南へと続く道にいるゾンビに気付き、魔導機械「くまんてぃーぬ」の内部にある引き金を引いた。クマの口が開くと、弾丸が発射され、ゾンビの頭を貫通する。
ゾンビはふらつきながらも、その場に立ち尽くしていた。
「残らず、倒すのみ!」
ザレムが魔導銃「サラマンダー」で狙いを定めて撃つと、炎を纏った弾丸がゾンビの胴体を貫き、残りのゾンビを倒すことができた。
「まだ油断はできないな」
ザレムは銃を構えたまま、周囲の様子を窺っていた。風のヴォイドは広場に現れなかったが、南の方角が気になっていた。
「墓場まで行ってみよう」
トミヲの推測は当たっていた。クオンも仲間たちの後を追って、合流する。
南の墓場に辿り着くと、ゾンビがまだ3体残っていた。ハンターたちに気付いたゾンビたちは悲しみとも憎しにとも感じるような呼び声で、仲間を復活させた。見れば、合わせて6体のゾンビが目を真っ赤にさせて、ハンターたちを睨みつけていた。
「まるで、私たちを憎んでいるようですね」
クオンはそう言いつつも、今後のことも考慮して『ファイアスローワー』を放った。3体のゾンビが炎で消滅……ザレムが『デルタレイ』の光で、ゾンビを3体貫くと、その場で消え去った。
「どうか…安らかに…」
思わず祈りの言葉を告げるザレム。
ゾンビは消え去る際、解き放たれたように安堵の表情をしていた。
「そこにもいたね!」
とっさにトミヲが『ファイアアロー』でゾンビ一体を焼き尽くした。敵は強酸を吐く余裕もなく、ゾンビの群れを撃退することができた。
「しばらく、ここで様子を見た方が良いだろうな」
ザレムはゾンビがまだいるのではないかと考え、皆にそう告げた。
「そうだな。ゾンビを全て退治しないと、住人達も戻ってこれないからな」
リューは同行していた桜型妖精「アリス」に周辺を偵察してくるように指示したが、アリスは緊張気味にリューにしがみ付いたまま離れなかった。
アリスが震えていることを悟り、リューは一緒に墓場を見回ることにした。一時間ほど巡回してみたが、ゾンビの気配はなく、静まり返っていた。
「不意打ちはなかったねー。敵も僕たちを警戒してるのかもね」
まりおはそうぼやいていたが、不思議と墓場が落ち着いているようにも思えた。
●
墓場の警護は調査隊に任せて、トミヲたちは町工場へと向かった。
「風のヴォイドは町の外へ出たという報告はなかったけど、工場の中か周辺にいるはずだ」
トミヲはコルネリアと共に一階の入口から工場の中へと入っていった。
「俺は二階から侵入してみるぜ」
そう言って、リューは特殊強化鋼製ワイヤーウィップで二階のベランダの柵にワイヤーを絡めて、登ることにした。こうした一連の行動は、個人の能力と状況次第で成否が決まる。時折、身体が揺れたが、ギリギリで二階のベランダに辿り着いた。
「派手な動きをしたら、建物が壊れるな」
工場や建物は破壊しないように注意という依頼事項を思い出し、リューはふと呟いた。
モーターで巻き上げる機能はないため、ぶら下っている武器を引き上げて、ワイヤーを柵から取り外す。
リューが二階から工場の中へと入った頃には、他の仲間たちは一階の作業場で風のヴォイドと対峙していた。
ハンターたち目がけて風の刃が飛んできたが、抵抗に打ち勝ち、怪我をする者はいなかった。
風のヴォイドは名の通り『風属性の能力が使える歪虚』であることが分かった。
幸いにも、工場内部には引火するような物はなかったため、火属性の魔法を使っても、ある程度は工場も持ちこたえることができた。だが、さすがにファイアーボールでは射程が長い上に威力も攻撃範囲も凄まじい。そう考えたトミヲはファイアアローで攻撃していたのだ。
「燃え盛れ、ボクのDT魔力ゥ……!!」
トミヲの放った『ファイアアロー』が浮遊する青い物体に突き刺さり、風のヴォイドは衝撃で身体が半分ほどになった。
すかさずコルネリアが『守りの構え』を取り、ザレムは『ファイアスローワー』を噴射……一体はさらに小さくなり、もう一体は半分くらいの大きさになったが、それでも浮遊していた。
クオンは半分の大きさになった青い物体に『エレクトリックショック』を食らわすと、電撃で麻痺したのか浮遊したまま動かなくなっていた。もう一体の小さな青い物体はリューの『刺突一閃』の攻撃により、飛び散るように消滅していった。
「これも倒しておかないとねー」
まりおが『スラッシュエッジ』を発動させ、麻痺している風のヴォイドに攻撃をしかけた。斬り裂かれた部分だけ消滅したが、完全に消えた訳ではなかった。まだ身動きできないまま、青い不定形のヴォイドはハンターたちの目の前に浮かんでいた。
コルネリアが魔導機械「くまんてぃーぬ」で敵を貫き、ザレムは『ジェットブーツ』でヴォイドに接近してバーンブレイドで切り刻む。さらにクオンが距離を計ってリュミエールボウを構えて、矢を放った。敵に矢が命中すると、煙のように青い物体は消えていった。
●
町工場の廃棄場所に行ってみると、壊れた部品が山積みになっていた。隙間から、微かに蒸気が流れていた。
「あくまでも仮説だけど、ここから風のヴォイドが発生して、作業員たちが仕事に集中している間に『青い物体』になって、町工場に住み着いた可能性もあるね」
トミヲが『内側』から湧き出たという予想も、もしかしたら……?
ハンターたちは念の為、山積みになった部品を片付けて、その場を綺麗にすることにした。気が付けば、気温も穏やかになり、過ごし易いようにも感じられた。
「これで近隣の村や蒸気工場地帯にも被害が広がるのを阻止できたな」
ザレムが言うように、ここで阻止していなったら、さらに被害は拡大していただろう。
だが、ハンターたちが風のヴォイドを倒し、廃棄場所を整理したことで、依頼は達成することができた。
「作業員たちが怪我したって言うのも、ヴォイドが風の刃で攻撃していたせいかもな」
リューの懸念通り、作業員たちは揃って『見えない刃みたいなものが飛んできた』と後日、話していた。
「調査隊のハンターから聞いたが、今回の歪虚は人語も理解できず、話すこともできなかったようだ」
何か手掛かりがつかめないかと、ザレムも少し調査してみたが、ゾンビが操られていた形跡はなく、残りの真実まで辿り着くことはできなかった。
それでも、ハンターたちのおかげで、歪虚の被害を食い止めることができたのは確かだ。住人たちも、一週間後には、この町に戻ることができるようになった。
……全てを呑み込むのだ。
……なんと、美味であろう。
……どこまでも、どこまでも、広がっていく。
……嗚呼、君はどこにいるのだ。
……今すぐ、会いたい……。
ワタシは、ここにいるのだ。
気が付いておくれ。
ワタシは、ここだ……。
甘美に満ちた、この世界よ……。
全てを包み込むのだ……。
……ふふふ……あはは……。
もっと、もっと、ワタシに近づくのだ。
……そうだ。
……こっちだ……。
●
小さな町に辿り着いたコルネリア・S(ka5302)は乗用馬から降りると、周囲の様子を見渡した。
「完全に侵食されていないとは言え、住人たちがいないと、まるで廃墟のようだな」
それとも地獄への入口か。コルネリアは深呼吸すると、徒歩で町の中へ入ることにした。
ザレム・アズール(ka0878)は、今回の依頼内容が気になり、考え込んでいた。
「……歪虚を全て退治することは前提で、他にも何かあるのかもしれない」
「ボクの勘だけど、歪虚は外から来たのではなくて、『内側』から湧いて出てきたんじゃないかな?」
水流崎トミヲ(ka4852)の推測が当たっていれば、場所は特定できる。
「そう、例えば、墓地とか、町工場があるなら廃棄施設もありそうだよね」
トミヲがそう言うと、リュー・グランフェスト(ka2419)が調査隊のハンターから借りた町の地図を広げた。
「ビンゴだ。町の南側に墓地があって、町工場の近くには廃棄場所もある。これで敵の動向も絞れそうだぜ」
それを聞いて、超級まりお(ka0824)が右の拳を掲げた。
「まずはゾンビを全部退治してから、次に風のヴォイドとの対戦だね!」
「風のヴォイドは『風属性』の能力が使える歪虚だと聞きましたが、今のところ町工場から出たという報告はないようです」
クオン・サガラ(ka0018)も、何かが起きている予感をしていた。
「歪虚退治が済んだら、時間の許す限り、調査もしておきたいね。気候の変化とかも気になるから」
トミヲの言葉に、ザレムが同意するように頷く。
「ああ、俺も工場や気候が気になっていた。調査しておけば、今後の指針にもなるだろう」
ハンターたちは話し合った後、持ち場につくことにした。
●
町工場まで辿り着くには、まずは広場まで進むことが地図で判明した。
クオンは広場を見渡せる家を見つけて、ショットアンカーで屋根の窪みに錨を打ち込むことにした。錨には紐が結ばれていたが、しっかりと固定されていることを確認してから、クオンは紐をつたって登り始めた。錨を打ち込むことができても、登るには相当の能力が必要だ。
「……なんとか、屋根の上に登れましたが、思っていたよりも難しいですね」
今回は登ることに成功したが、状況によっては難易度も変わる。クオンは屋根から動向を伺っていた。
見れば、広場へと続く道にはゾンビが数体、ゆらゆらと身体を動かしながら強酸を吐き、歩いていた。
ハンターたちは射程外にいたこともあり、強酸でダメージを受けることはなかった。
「さっそくゾンビが現れたな」
コルネリアはシールド「エスペランサ」で『堅守』を発動させ、受けに専念…移動できない分、防御に徹した技だ。友を守るため、盾を構えるコルネリア。
「一歩も引かぬ…それこそが、私の流儀」
「コルネリアくん、あ…ありがとう」
トミヲは照れながらも、的確に『ライトニングボルト』を放った。道の中央から一直線に電撃が走り、ゾンビが6体、灰となるが、残りのゾンビはゆっくりとハンターたちに接近してきた。
まりおは『瞬脚』で移動し、試作光斬刀「MURASAMEブレイド」でゾンビを切り裂き、前方への道を確保した。
「もう少しで広場に出るよ。準備はいいかな」
陽気に言いながらも、まりおはゾンビに噛まれたらどうなるのか想像していた。
「ゾンビの仲間入りはごめんだね」
情報が正しければ、ゾンビの呼び声で、死亡した同種の歪虚1体をHP1の状態で復活させることができるのだ。
ゾンビが一体でも残っている限り、増える可能性がある。
ならば、全て退治することが先決だと、まりおは考えていた。
そのための前方確保だ。
まりおのおかげで、最低限の距離を取ることが可能になり、リューは試作振動刀「オートMURAMASA」で『刺突一閃』を繰り出した。2体のゾンビが衝撃で消え去り、広場へと入ることができた。
だが、残りのゾンビは呼び声で仲間を呼び寄せ、広場には4体のゾンビが姿を現した。
クオンは建物の屋根に上り、ゾンビの動きに注意を払っていた。
「南からゾンビが出てくるようですね」
仲間を支援するため、リュミエールボウで矢を放つクオン。
矢が突き刺さりゾンビ一体が崩れかかったところを、ザレムが『デルタレイ』を放った。光の三角形が現れ、その頂点一つ一つから伸びた光がゾンビを貫き、三体のゾンビが霧のように消え去った。
ハンターたちは、さらに身構えた。続々とゾンビが出現したからだ。
「僕たちの動向に気が付いたのか、ゾンビが次々と広場に入ってきたね。ここで纏めて倒してしまおう!」
トミヲはワンド「ゴールデン・バウ」を掲げて『ファイアーボール』を放った。広場に炎の球が爆発し、ゾンビ数体があっというまに火に包まれたかと思うと、炎が消えると同時に7体のゾンビが消滅していた。
射程外にいたゾンビたちは、クオンの『ファイアスローワー』による扇状の炎によって3体が消え去り、リューの『刺突一閃』が炸裂してゾンビ2体が消滅していく。
「逃しはしない!」
コルネリアは南へと続く道にいるゾンビに気付き、魔導機械「くまんてぃーぬ」の内部にある引き金を引いた。クマの口が開くと、弾丸が発射され、ゾンビの頭を貫通する。
ゾンビはふらつきながらも、その場に立ち尽くしていた。
「残らず、倒すのみ!」
ザレムが魔導銃「サラマンダー」で狙いを定めて撃つと、炎を纏った弾丸がゾンビの胴体を貫き、残りのゾンビを倒すことができた。
「まだ油断はできないな」
ザレムは銃を構えたまま、周囲の様子を窺っていた。風のヴォイドは広場に現れなかったが、南の方角が気になっていた。
「墓場まで行ってみよう」
トミヲの推測は当たっていた。クオンも仲間たちの後を追って、合流する。
南の墓場に辿り着くと、ゾンビがまだ3体残っていた。ハンターたちに気付いたゾンビたちは悲しみとも憎しにとも感じるような呼び声で、仲間を復活させた。見れば、合わせて6体のゾンビが目を真っ赤にさせて、ハンターたちを睨みつけていた。
「まるで、私たちを憎んでいるようですね」
クオンはそう言いつつも、今後のことも考慮して『ファイアスローワー』を放った。3体のゾンビが炎で消滅……ザレムが『デルタレイ』の光で、ゾンビを3体貫くと、その場で消え去った。
「どうか…安らかに…」
思わず祈りの言葉を告げるザレム。
ゾンビは消え去る際、解き放たれたように安堵の表情をしていた。
「そこにもいたね!」
とっさにトミヲが『ファイアアロー』でゾンビ一体を焼き尽くした。敵は強酸を吐く余裕もなく、ゾンビの群れを撃退することができた。
「しばらく、ここで様子を見た方が良いだろうな」
ザレムはゾンビがまだいるのではないかと考え、皆にそう告げた。
「そうだな。ゾンビを全て退治しないと、住人達も戻ってこれないからな」
リューは同行していた桜型妖精「アリス」に周辺を偵察してくるように指示したが、アリスは緊張気味にリューにしがみ付いたまま離れなかった。
アリスが震えていることを悟り、リューは一緒に墓場を見回ることにした。一時間ほど巡回してみたが、ゾンビの気配はなく、静まり返っていた。
「不意打ちはなかったねー。敵も僕たちを警戒してるのかもね」
まりおはそうぼやいていたが、不思議と墓場が落ち着いているようにも思えた。
●
墓場の警護は調査隊に任せて、トミヲたちは町工場へと向かった。
「風のヴォイドは町の外へ出たという報告はなかったけど、工場の中か周辺にいるはずだ」
トミヲはコルネリアと共に一階の入口から工場の中へと入っていった。
「俺は二階から侵入してみるぜ」
そう言って、リューは特殊強化鋼製ワイヤーウィップで二階のベランダの柵にワイヤーを絡めて、登ることにした。こうした一連の行動は、個人の能力と状況次第で成否が決まる。時折、身体が揺れたが、ギリギリで二階のベランダに辿り着いた。
「派手な動きをしたら、建物が壊れるな」
工場や建物は破壊しないように注意という依頼事項を思い出し、リューはふと呟いた。
モーターで巻き上げる機能はないため、ぶら下っている武器を引き上げて、ワイヤーを柵から取り外す。
リューが二階から工場の中へと入った頃には、他の仲間たちは一階の作業場で風のヴォイドと対峙していた。
ハンターたち目がけて風の刃が飛んできたが、抵抗に打ち勝ち、怪我をする者はいなかった。
風のヴォイドは名の通り『風属性の能力が使える歪虚』であることが分かった。
幸いにも、工場内部には引火するような物はなかったため、火属性の魔法を使っても、ある程度は工場も持ちこたえることができた。だが、さすがにファイアーボールでは射程が長い上に威力も攻撃範囲も凄まじい。そう考えたトミヲはファイアアローで攻撃していたのだ。
「燃え盛れ、ボクのDT魔力ゥ……!!」
トミヲの放った『ファイアアロー』が浮遊する青い物体に突き刺さり、風のヴォイドは衝撃で身体が半分ほどになった。
すかさずコルネリアが『守りの構え』を取り、ザレムは『ファイアスローワー』を噴射……一体はさらに小さくなり、もう一体は半分くらいの大きさになったが、それでも浮遊していた。
クオンは半分の大きさになった青い物体に『エレクトリックショック』を食らわすと、電撃で麻痺したのか浮遊したまま動かなくなっていた。もう一体の小さな青い物体はリューの『刺突一閃』の攻撃により、飛び散るように消滅していった。
「これも倒しておかないとねー」
まりおが『スラッシュエッジ』を発動させ、麻痺している風のヴォイドに攻撃をしかけた。斬り裂かれた部分だけ消滅したが、完全に消えた訳ではなかった。まだ身動きできないまま、青い不定形のヴォイドはハンターたちの目の前に浮かんでいた。
コルネリアが魔導機械「くまんてぃーぬ」で敵を貫き、ザレムは『ジェットブーツ』でヴォイドに接近してバーンブレイドで切り刻む。さらにクオンが距離を計ってリュミエールボウを構えて、矢を放った。敵に矢が命中すると、煙のように青い物体は消えていった。
●
町工場の廃棄場所に行ってみると、壊れた部品が山積みになっていた。隙間から、微かに蒸気が流れていた。
「あくまでも仮説だけど、ここから風のヴォイドが発生して、作業員たちが仕事に集中している間に『青い物体』になって、町工場に住み着いた可能性もあるね」
トミヲが『内側』から湧き出たという予想も、もしかしたら……?
ハンターたちは念の為、山積みになった部品を片付けて、その場を綺麗にすることにした。気が付けば、気温も穏やかになり、過ごし易いようにも感じられた。
「これで近隣の村や蒸気工場地帯にも被害が広がるのを阻止できたな」
ザレムが言うように、ここで阻止していなったら、さらに被害は拡大していただろう。
だが、ハンターたちが風のヴォイドを倒し、廃棄場所を整理したことで、依頼は達成することができた。
「作業員たちが怪我したって言うのも、ヴォイドが風の刃で攻撃していたせいかもな」
リューの懸念通り、作業員たちは揃って『見えない刃みたいなものが飛んできた』と後日、話していた。
「調査隊のハンターから聞いたが、今回の歪虚は人語も理解できず、話すこともできなかったようだ」
何か手掛かりがつかめないかと、ザレムも少し調査してみたが、ゾンビが操られていた形跡はなく、残りの真実まで辿り着くことはできなかった。
それでも、ハンターたちのおかげで、歪虚の被害を食い止めることができたのは確かだ。住人たちも、一週間後には、この町に戻ることができるようになった。
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
---|
面白かった! | 4人 |
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ポイントがありませんので、拍手できません
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MVP一覧
- DTよ永遠に
水流崎トミヲ(ka4852)
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 コルネリア・S(ka5302) 人間(クリムゾンウェスト)|19才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/09/14 08:29:10 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/09/14 08:23:27 |