忘れ花

マスター:鷹羽柊架

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/09/16 15:00
完成日
2015/09/22 20:09

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 ドワーフ工房へとある兵士が現れた。
 まずは、工房管理官のアルフェッカへ話が通される。
 兵士がどこに配属されているのか知らされたアルフェッカは内心の穏やかさがなくなっていた。
 渡されたのは一通の手紙。
「中を改めていいと」
「はい」
 兵士が答えると、アルフェッカは他の部下にある人物を呼び出すように伝えた。
 金属加工を主に取り扱うクレムトのリーダー格の一人、シェダルを。
 過酷な鍛冶場で流した汗をざっと拭いただけのシェダルが管理官の執務室まで現れるのに十分
とかからなかった。
 普段より勝手知ったるたむろ場もとい、管理官執務室が一種異様な状態なのは、あの監獄の兵
士がいるからだろう。
「​監獄【デッドウェスト・ジェイル】にて収監されている、​ムルジム受刑囚より手紙を預かってきたそう
だ。
 念の為、私に手紙の確認をしてほしいと言われたが、流石に人の手紙を勝手に開封するのは気
が引ける。了解をもらいたい」
「仕事ならしかたあるまい」
 アルフェッカの言葉にシェダルは事もなく言い放つ。
「では、開封しよう」
 即座に手紙を開封したアルフェッカは手紙以外に何か入ってないか確認する。監獄の者も確認を
したそうだが、念には念を入れる。
 読み終えたアルフェッカはすぐにシェダルへと手紙を渡した。
 二度、目を通したシェダルは兵士へ持って来てくれたことに礼を述べる。
 何事もなく、兵士が工房の門を抜けて監獄へと戻る後姿を確認するとアルフェッカがシェダルを静
かに見据えた。
「手紙の差出人は確か、元要塞管理官の側近だったよな?」
「ああ……」
 ため息をつくように頷くシェダルは執務室の隅にある水差しの方へと向かう。
「ヴェルナーさん着任前の要塞管理官が職務怠慢で、それに倣って他の連中も随分と横暴でな
……だが、あの人だけは違っていたな。俺もフォニケもヤバい所をよく助けてもらっていた」
 アルフェッカもとい、ヴェルナー着任前の要塞内の腐敗ぶりはとても酷く、女子供が容易に歩く事
も危険だったと聞いている。
「しかし、横領が確認されたんだよな」
「ああ……」
 ムルジムの横領の理由は当時、通っていた娼館にいた女を引き取るためだという。
 しかし、ヴェルナー着任後に横領が発覚してしまい、失脚。のちに監獄へと入れられた。
 手紙には、娼館がなくなってしまっていたという話を聞いたらしく、自分が熱を上げていた娼婦が
どこへ行ったかもわからない。
 せめて、花を手向けてほしいとあった。
「で、フォニケちゃんには言うの?」
 シェダルの様子を聞いて、フォニケの性格ならば、彼に恩を感じていただろうと考えられる。
 花を手向けてほしいとなれば、彼女も行くとごねるだろう。
「娼館だぞ?」
「過保護だな」
「お前は?」
「言わないな」
 くすくす笑うアルフェッカにシェダルはため息をついた。
 
 数日後、シェダルはアルフェッカと共に要塞郊外にある娼館へむかう。
「花、高いな」
「辺境じゃあんまり自生してないしね。金属で加工したものでもよかったんじゃない?」
「それならできる」
 取り留めのない話をしながら二人が目的の娼館につく。
「娼館のことを調べたんだけどさ、ムルジムの件で取締りの対象に遭ったようなんだ」
 ぽつりと、アルフェッカが呟く。
 横領を行っていた事もあり、娼館の調査をしたところ、そこの娼婦たちは借金で連れてこられた
り、人攫いにあった者もいたようだった。
「人身売買した挙句に売春行為なんて犯罪だからな。運営は捕まって、裁きを受けたらしい」
「女達は?」
「親元に帰ったり、要塞内で下働きとかしてる。下働きしてる人と話することが出来たんだけど、該
当する女は行方が知れない。最後に会った時はムルジムを待ちたいと言ってたそうだ」
 いつの間に調べたんだと思うシェダルだが、昨日、アルフェッカが急遽不在となってカペラが代理
をやるハメになって「どこにいったの!」と半ギレしていた事をシェダルは思い出した。
 ちなみに、今日も代理でカペラが仕切っている。

 目的の場所に着けば、人が住まなくなった建物が傷んでしまっているのが分かった。
「一年は経過してるとはいえ、何か早いな」
 窓の中から見える部屋は昼間だというのに暗く、中がよく見えない。
 二人は中に入ると、玄関ホールがあり、真正面に階段がある。二階には左右に分かれていた。
 そのまま進んで階段を上がれば、二人は埃の跡に気づく。
 通路には埃が落ちているが、引きずったような跡が見えるのだ。
 シェダルが下を向けば同様に似たような跡が大小見られる。
「……なんだ?」
 二人は跡を追って奥の方へと歩き、開け放たれた奥の部屋へと足を踏み入れた。

 しゅぅぅぅぅぅぅ
       しゅるぅぅぅぅぅぅ

 独特な呼吸音に二人は目を凝らす。
 奥の天幕のベッドに何かいる。
 一瞬、人にも見えたが、ゆっくり視界を床へずらしていけば否となる。
 その影には人にはない長い尻尾がうねっていたのだ。
 微かに差し込む光にぬめぬめした皮膚が照らし出され、それが何か気づかされる。
「やばくね……」
 引きつったアルフェッカにシェダルも同感と答え、花束を蛇の眼前に投げつけて二人は一気に逃
げ出した。
 退路に蛇が四体現れ、二人に襲い掛かってくる。
「くっそ……!」
 シェダルが剣を抜き、退路の邪魔をする蛇の一体を真っ二つにしてしまう。
 二人が館の外に出ると、蛇は追ってこなかった。
「まさかいただなんて……」
「郊外だからな……このままじゃ危険だ」
 二人はそのままハンターオフィスへと駆けていった。

リプレイ本文

 依頼に応じてくれたハンター達と依頼人であるシェダルの待ち合わせ場所は要塞内のハンターオフィスだった。
 成人したばかりだろう少女のハンターを間近に見て、武器がどのようなものが出回っているのかシェダルとしては興味が湧く。
「義理の為ですか」
 紫条京真(ka0777)の言葉にシェダルは頷いた。
「彼には世話になったからな。フォニケも彼の助け無しでは、無事で済まなかっただろう」
「人の欲求を満たす闇の影に歪虚が湧く……ですか……」
「腐敗の要塞の中で俺達にしてきた優しさの裏で何をしていても、俺達に迷惑をかけるような事はしていなかった。応えられるからそうする」
 それだけシェダルが言えば、京真はそれ以上何も言わなかった。
 二人の会話を他所に、全身鎧「ソリッドハート」を身に纏った小柄なハンターがどこか興味を持っていることを隠しきれていない様子を見せている。
「出発するようですね」
 声音は明るく品のある少女のもの。
「はい、先に出ましょうか。お嬢さ……っっ!」
 カミル=ラング(ka4619)がソリッドハートのハンターに畏まって言葉を返すと、足を踏まれ、痛みを堪える。
 お嬢様と呼ばれかけたハンターは顔をカミルへと近づける。
「カミル。今はその呼び方、ダメよ?」
「か……畏まりました……」
 感情が顔に出にくいタイプのカミルだが、痛いものは痛い。
「ノルトリ……いえ、その……ノル。これで構いませんでしょうか……?」
 少し戸惑いつつも、カミルが懸命に訂正すると、ノルと訂正させたノルトリーゼ・レーゲンヴォルフ(ka4618)はにこやかな雰囲気を見せる。
 カミルとノルトリーゼの様子を見ていた榎本 かなえ(ka3567)は、フルメイルに踏まれたカミルに大丈夫かなと思いつつも、ハンターオフィスから見える煙突の煙に興味を示す。
「あの方向にはドワーフ工房がありますね」
「工房? 何か作っているのかな」
 かなえの視線に気づいた京真が声をかける。叢雲 伊織(ka5091)も気づいたようで、かなえの隣で窓を見上げる。
「今日は鋼の焼成する日だな。行くか」
 シェダルが言えば、ネリー・ベル(ka2910)が続いた。


 目的の場所は要塞郊外にあり、現要塞管理官であるヴェルナーが着任する前は飲み屋が点在してたりしていたが、今はその影は見えなくなっていった。
「ここが、娼館」
 ぽつりと伊織が呟く。
「ちょっとしたお屋敷のようですね……営業していた頃はもう少し雰囲気とか、大人だったんですよね……」
 最後の語尾を濁しつつ、かなえが言えば、ちらりとシェダルが彼女を見下ろす。
「し、仕事なんで大丈夫です……!」
 はっとなるかなえが慌ててしまうが、年頃の好奇心からくるものであるのはシェダルも承知の上なので、特に何も言わないで玄関の方へと歩く。
「マイペースで行きましょう」
 落ち着いた声の京真が声をかけると、かなえはしっかり返事を返した。
「フォニケさんも、ああいった態度を取るのでしょうか」
「それはない」
 断言したシェダルはドアを開けた。
 放置されていたドアは建付けが悪く、軋みながら薄暗い室内をハンター達へ見せ付ける。
 七人が中へ入ると、ネリーは細い指先で鼻と口を覆う。
「嫌な臭いだわ」
 薄紅蓮色の瞳を細め、館の中を睨みつけるネリーに伊織とノルトリーゼは首を傾げる。
「確かに、埃っぽいですが」
 人の出入りもなく、窓が全く閉まっている状態では埃のにおいも篭もってしまう。
 しかし、ネリーが言いたかったのは現状の匂いではなく、ここが何の為にあった理由を知った故の嫌悪だ。
 あるわけのないその負の匂いを嗅覚ではなく、肌や本能で感じてしまう。
「分からないでもありません」
 京真がネリーの言葉に賛同すると、彼女の隣より前に出た。
「玄関ホールに書斎にあるような机がありますね」
 ノルトリーゼが見やったのは隅にあった机。玄関挟んで向こうにはクロークのような場所も見える。
 ひょっこり伊織がクロークのような部屋に入ると、衣服を保管するような場所となっていた。
「上着ばっかり」
「監査が入ったと伺ってます。客も事情聴取で連行されたのでしょう」
 京真の言葉に成程と、伊織が納得する。
 階段下の右側の通路へ入っていけば、簡易ベッドがいくつも並んでいる部屋や調理場があった。
「まるで宿泊施設ね」
 ノルトリーゼが言えば、後ろに控えているカミルが曖昧に応じている。
「カミルはここがどういう場所かわかる?」
「えっ!」
 虚を疲れたかのように訪ねられたカミルは慌てるばかり。
「知ってるの?」
 好奇心を交えたノルトリーゼの表情はカミルの期待に満ちている。
「そ、それ……っは、ですね……ノルの推察どおり、宿泊施設と思います……!」
 狼狽を隠せない状態のカミルは何とか言い切るも、ノルトリーゼは動揺するカミルの様子を伺ってしまう。
「カミルさんの言葉に賛同します」
「わっ!」
 カミルの肩に首を載せるように後ろから京真が首を出して代わりに回答する。
「確かに、クロークや調理場もあるし、簡易ベッドは従業員の仮眠ベッドかしらね」
 更に考えるノルトリーゼにカミルは「多分、そうでしょう」とあやふやに肯定した。
「ここには敵がいませんね。左側へ行きましょう」
 かなえも目視で確認してハンター達を促した。

 階段下左側は運営側の仕事場といったところだろう。
 応接間や連れてこられた女を閉じ込めるような部屋も見受けられる。
 運営主の執務室の書棚は書籍も帳簿の類は全てなかった。おそらくは監査の手が伸びたのだろう。
「荒らされた形跡はありませんね。監査が入った際、全て押収されたのでしょうか」
「だろうな」
 ネリーの言葉にシェダルが頷き、次を捜索しようと促そうとした時、伊織が小さく声を上げた。
「いた」
 ハンター達が気づき、辺りを警戒する。
「ノルトリーゼ、カミル。広間へおびき寄せろ」
「わかりました」
 シェダルが言えば、二人は蛇の注意を引きつつ、広間へと下がる。
「こちらは任せて」
 ネリーがライト片手に退路の殿を引き受け、シェダルは「頼む」とだけ言って後退し始めた。
「……増えてます」
 複雑そうな表情を見せているのはかなえ。
 薄暗い広間へおびき出された蛇の数は二体。
 しかし、今回の仕事は蛇退治。かなえはしっかりライトを持ち直す。
「今は二体……前情報を考えると、小さい蛇は後一体かな」
 確認する伊織は殿となったネリーと京真を気遣うように振り向いた。
 前衛を買って出たのはノルトリーゼとカミル。
 広間は十分な広さがあり、長剣を振るっても影響がない。
 ライトに照らされる蛇が狙ったのは重厚装備のノルトリーゼよりも軽装なカミル。彼としても、ノルトリーゼが狙われないのは好機でもある。
 前に出たノルトリーゼはカミルを狙う蛇を狙って剣を振るう。予想以上に蛇の動きは早く、切っ先が蛇の胴体の一部を切り裂いた。
 負傷し、跳ねた蛇の下をかいくぐってもう一体の蛇がノルトリーゼを狙う。
 蛇の狙いを察したカミルがランアウトを発動させ、片刃のナイフを横に凪ぐ。
 カミルのナイフを尻尾を犠牲にして本体を交わさせた蛇だが、待ち構えていたのは伊織だ。
 蛇が床に着地するタイミングを狙って飛び出し、頭を狙ったが、突き刺したのは首。
「目を庇いなさい」
 ノルトリーゼの言葉に従い、伊織は自身の目へ手をかざした。
 鈍く斬れる音と振動がナイフを介して伊織へ伝わり、動きが止まれば、蛇の頭と胴体は切り離されていた。
「ありがとう……」
「毒液かもしれません。大型の時もお気をつけて」
 伊織の礼を受け取ったノルトリーゼは彼を気遣う。幸い、蛇の体液は伊織の肌や目には付着しなかった。
 ノルトリーゼが切り裂いた蛇は斬られたことで勢いが反れてしまい、体制を整えるように着地して再びハンターの方へと飛び掛ろうとする。
 機会を見据えていたかなえはライトの光を蛇に向けて視界を奪う。
 大きく身体を震わせた蛇が動きを止めた隙をかなえは見逃さなかった。ナックルの先にある熊手に蛇の傷口に引っ掛けてマテリアルを流し込むと同時にエレクトリックショックを発動させる。
 傷口より電流が蛇の中に走って胴体が痺れて動かなくなった。
「大丈夫かな……」
 伊織が心配した先では、調理場との陰に隠れていた蛇と格闘する羽目になっていた。
「ネリー、左を頼む」
 シェダルの言葉に呼応したネリーが後ろから回り込もうとする蛇を目で追って確認する。
「いきますよ。視界を奪われないように」
 後衛の京真がネリーとシェダルに声をかけると、二人が京真の動きを察した。
 京真が神楽鈴を振るえば、鈴の振動と共に光が生み出され、蛇達が照らし出され動きを止めた。
 マテリアルの循環を感じつつ、ネリーはランアウトを発動させて駆け出す。
 ホーリーライトに視界を奪われた蛇はネリーの手にあるジャマダハルに標準を定められ、首と胴体を切断させられる。
 もう一体の蛇は京真のホーリーライトに焼かれたが、微かに動いているので念のため、シェダルが切断する。
「向こうも終わったようですね」
 ネリーが言えば、二人も広間へと向かった。


 蛇の数はこの時点でシェダルが確認した数よりも一匹多かった。
「これだけで済めばいいですが」
 ため息混じりにかなえが階段を見上げる。
 階段を上がって先に向かうのは左側ではなく、右側。
 ベッドと簡素なテーブルセットがある部屋が見られた。
 広いだけのベッドで何があったかは容易に想像でき、かなえは頬を染めてしまう。
「ねずみ……」
 ある部屋ではベッドの近くでネズミの死体が干からびていた。
「食われたのでしょうかね」
 ぽつりとネリーが呟く。
 何に食われたかは想像したくはない。
 
 左側に行くと、伊織は部屋の装飾の格の違いに気づく。
「天蓋がついてる」
「右側にはありませんでしたね。部屋によってランクがあるのでしょう」
 伊織の指摘にノルトリーゼが返した。
 大人達は間違ってはいないと心の中で頷く。
 手前の部屋には蛇が居らず、一行は奥の部屋へと向かう。
 もしかしたら、受刑囚が入れ込んだ娼婦は館の中でもランクが高い娼婦だったのかもしれない。
 一番最奥の部屋に着き、前にでたのはノルトリーゼとカミル。
「いきます」
 小声でノルトリーゼが声をかけてドアを開けた。
 部屋の中は静かであり、入った部屋の中で一番広い。逆光が差しこむベッドの上に女が座っているように思えた。
 客を待つ娼婦のように。
 それが自分達が討つ敵であることを知らしめたのはちろりと覗く細く長い舌。
 獲物を見つけた事を喜んでいるかのようにベッドからしな垂れ落ちていた尻尾がゆっくり跳ねている。
 全員が睨み合う状況の中、口火を切ったのは蛇の方からだ。
 前衛のノルトリーゼが盾を構え、蛇の突進を防ぐ。
「く……っ!」
 盾より鈍い衝撃音が響き、プロテクションに包まれたノルトリーゼの全身が淡い光が弾ける。蛇はそのまま横へ移動し、ノルトリーゼに巻きつこうとする。
「お嬢様への狼藉は許さん」
 カミルがランアウトでノルトリーゼを庇い、更にネリーが蛇の眼前へ飛び込み、右目を掻き切った。
 短い悲鳴を上げて蛇が間合を取ろうと後ろへ下がり、ネリーへ威嚇の叫び声をあげた。
 全員が一気に撤退し、一階エントランスへ逃げようとする。
 蛇がネリーへ狙いをつけたので、ネリーを殿に出して逃げる。蛇は獲物を狙い素早く動く。
 二階のエントランスに蛇が頭を出した瞬間、かなえと伊織が銃を構えだし、ネリーが右側へと飛び退るなり、蛇へ一斉射撃を行った。
 銃弾は蛇の胴体に撃ちこめられ、衝撃でエントランスの手すりへ胴体をぶつけてしまう。
 人がいなくなったことで更に傷みが進んだ手すりは衝撃に耐え切れず、軋んだ音を立てて折れていく。
 更に追い討ちで京真がホーリーライトを発動させ、ネリーが一階へ落とすために銃弾を撃ち込むと、かなえと伊織も参加する。
 追撃で一階へと落ちた蛇はエレクトリックショックで動きが鈍くなっているものの、まだ動いていた。
「しぶといですね」
「蛇だから仕方ありません」
 顔を顰めて階段を降りるかなえに京真が返す。
 蛇が受けた麻痺は回復してしまい、再び、ハンター狙って動き出した。大きく口を開けて牙をむき出しに飛び掛ってきたのに対して、ノルトリーゼは盾を水平にして蛇の口の中へ差し込んだ。
 そのまま蛇の口を固定させて蛇の頭を止める。
「その牙……皆の素肌に突き立てさせる訳にはいかないの……っ!」
 猛烈な力が盾と蛇との間で拮抗しているが、蛇は尻尾でノルトリーゼを払おうと動かせた。
 カミルとシェダルが尻尾を斬り裂き、一度離脱した。
 ネリーが弾丸が仲間に当たらないように配慮した立ち位置を取り、更に射撃を行う。
 蛇は拮抗した力を抜き、ノルトリーゼのバランスを崩した。
 バランスを崩したノルトリーゼだが、剣で蛇の皮を裂き、蛇はのたうつ。
 カミルが追い、蛇の頭を切り落とそうとするが、骨が思った以上に硬く、レイピアを肉を突いて床に差して固定させた。
 カミルが間合を取り、それでも動こうとする蛇へ一斉に射撃が始まった。
 伊織の強弾がノルトリーゼが切り裂いた傷口から打ち込まれると、蛇がのた打ち回る。ホーリーライトで更に胴体を焼き、銃弾でズタズタにされた皮や肉が焼け焦げる。
 音が静まり、静寂が広間を落とす。
 大蛇はもう動かなくなった。
「念を押しましょうか」
 京真が言えば、全員が賛成した。


 歪虚の姿はなかったが、伊織は確認と称した探検にわくわくしている。かなえは大型がいた奥の部屋を確認していた。
「あの、話にあった娼婦さんって、待とうとしてたんですよね」
「この館でな」
 かなえが問うと、シェダルが頷いた。
「一人でずっと待つって寂しいですよね……」
 嫌な思い出しかない中、娼婦は一人で待つことを決めた。
 そして、歪虚が現れてきっと彼女は命を奪われたのだろう。蛇がいたベッドには血がこびりついていたから。
 かなえは棚の上に冊子を見つけた。
「あの……」
 シェダルに中を改めてもらうと、ムルジムを待つ娼婦の日記の書きとめだった。
「土産が出来た。ありがとう」
 淡々と礼を言うシェダルが胸ポケットから花を一輪差し出し、ベッドの上に放る。
「撤退だ」
 依頼人、シェダルが声をかけると、伊織はもう少し探検したかったなと思いつつも従い、京真が殿となって外へ出る。
 ネリーとノルトリーゼ、カミルが先に待っていた。
「その冊子は?」
 ノルトリーゼが言えば、「恋文みたいなものだ」とシェダルが返す。
「高級士官と娼婦の恋……なんだか、ちょっとロマンチックです」
 皆が帰る中、かなえが振り返る。
 娼婦の死が二人を別ける結果となったが、彼女の眠りが少しでも安らかになることを願うばかり
である。

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MVP一覧

  • 咎の翻刃
    ネリー・ベルka2910
  • 電脳シューター
    榎本 かなえka3567

重体一覧

参加者一覧

  • 打鞠拳の哲学
    紫条京真(ka0777
    人間(蒼)|28才|男性|聖導士
  • 咎の翻刃
    ネリー・ベル(ka2910
    人間(紅)|19才|女性|疾影士
  • 電脳シューター
    榎本 かなえ(ka3567
    人間(蒼)|13才|女性|機導師

  • ノルトリーゼ・レーゲンヴォルフ(ka4618
    人間(紅)|14才|女性|闘狩人

  • カミル=ラング(ka4619
    人間(蒼)|18才|男性|疾影士
  • 双星の兆矢
    叢雲 伊織(ka5091
    人間(紅)|14才|男性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/09/13 20:33:56
アイコン 依頼相談掲示板
カミル=ラング(ka4619
人間(リアルブルー)|18才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2015/09/15 22:40:35