ゲスト
(ka0000)
【王国始動】飯マズ王国?
マスター:馬車猪

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/06/16 12:00
- 完成日
- 2014/06/19 09:43
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「皆さま、我がグラズヘイム王国へようこそ」
グラズヘイム王国、王都イルダーナはその王城。
謁見の間に集められたハンターたちは、正面、二つ並べられた椅子のうち右の椅子の前に立った少女に目を向けた。
落ち着いた、けれど幼さの残る声。椅子に腰を下ろした少女、もとい王女は胸に手を当て、
「はじめまして、私はシスティーナ・グラハムと申します。よろしくお願いしますね。さて、今回皆さまをお呼び立てしたのは他でもありません……」
やや目を伏せた王女が、次の瞬間、意を決したように言い放った。
「皆さまに、王国を楽しんでいただきたかったからですっ」
…………。王女なりに精一杯らしい大音声が、虚しく絨毯に吸い込まれた。
「あれ? 言葉が通じなかったのかな……えっと、オリエンテーションですっ」
唖然としてハンターたちが見上げるその先で、王女はふにゃっと破顔して続ける。
「皆さまの中にはリアルブルーから転移してこられた方もいるでしょう。クリムゾンウェストの人でもハンターになったばかりの方が多いと思います。そんな皆さまに王国をもっと知ってほしい。そう思ったのです」
だんだん熱を帯びてくる王女の言葉。
マイペースというか視野狭窄というか、この周りがついてきてない空気で平然とできるのはある意味まさしく貴族だった。
「見知らぬ地へやって来て不安な方もいると思います。歪虚と戦う、いえ目にするのも初めての方もいると思います。そんな皆さまの支えに私はなりたい! もしかしたら王国には皆さま――特にリアルブルーの方々に疑いの目を向ける人がいるかもしれない、けれどっ」
王女が息つく間すら惜しむように、言った。
「私は、あなたを歓迎します」
大国だからこその保守気質。それはそれで何かと面倒があるのだろう、とハンターはぼんやり考えた。
「改めて」
グラズヘイム王国へようこそ。
王女のか細く透き通った声が、ハンターたちの耳朶を打った。
●きゃんぷふぁいやー?
そんな華やかな時と場所から離れること数日。
王国西部。海岸線に近い野営地で、焚き火から溢れる眩い光が警邏の兵を照らしていた。
昇る煙が天に通じたのだろうか。
夜間移動の危険をおかして辿り着いた避難民家族が、あなたを含むハンターに気付き安堵してへたり込む。
毛布を持って駆け寄るハンター、携帯食料を取り出すハンターや近くの大瓶から水を汲み出すハンターまでいるが、全く足りないものがある。
「お肉堅い」
「水の臭いが」
「野菜が酸っぱ過ぎて涙が止まりません」
美味しさが足りない。全部まとめて美味しくない!
固すぎて非覚醒者ではかみ切れないパン。保存状態がよくない水。野菜の酢漬けというより元は野菜だった何か。
王国に騙された訳でも兵による嫌がらせでもない。ここにはこんなものしかないのだ。
あなたの手元には未開封のリアルブルー産保存食がある。
そのまま食べれば兵士1人の3日分にしかならないけれども、野営地に備蓄された食料と組み合わせることで大量の美味しい……のは高望みかもだが普通レベルの食事にはできるかもしれない。
闇夜と寒さに耐えながら頑張る兵士や、ヴォイドから逃れなんとかここまで来た避難民に満足を提供できるかどうか、全てあなたの発想と料理技術にかかっている。
グラズヘイム王国、王都イルダーナはその王城。
謁見の間に集められたハンターたちは、正面、二つ並べられた椅子のうち右の椅子の前に立った少女に目を向けた。
落ち着いた、けれど幼さの残る声。椅子に腰を下ろした少女、もとい王女は胸に手を当て、
「はじめまして、私はシスティーナ・グラハムと申します。よろしくお願いしますね。さて、今回皆さまをお呼び立てしたのは他でもありません……」
やや目を伏せた王女が、次の瞬間、意を決したように言い放った。
「皆さまに、王国を楽しんでいただきたかったからですっ」
…………。王女なりに精一杯らしい大音声が、虚しく絨毯に吸い込まれた。
「あれ? 言葉が通じなかったのかな……えっと、オリエンテーションですっ」
唖然としてハンターたちが見上げるその先で、王女はふにゃっと破顔して続ける。
「皆さまの中にはリアルブルーから転移してこられた方もいるでしょう。クリムゾンウェストの人でもハンターになったばかりの方が多いと思います。そんな皆さまに王国をもっと知ってほしい。そう思ったのです」
だんだん熱を帯びてくる王女の言葉。
マイペースというか視野狭窄というか、この周りがついてきてない空気で平然とできるのはある意味まさしく貴族だった。
「見知らぬ地へやって来て不安な方もいると思います。歪虚と戦う、いえ目にするのも初めての方もいると思います。そんな皆さまの支えに私はなりたい! もしかしたら王国には皆さま――特にリアルブルーの方々に疑いの目を向ける人がいるかもしれない、けれどっ」
王女が息つく間すら惜しむように、言った。
「私は、あなたを歓迎します」
大国だからこその保守気質。それはそれで何かと面倒があるのだろう、とハンターはぼんやり考えた。
「改めて」
グラズヘイム王国へようこそ。
王女のか細く透き通った声が、ハンターたちの耳朶を打った。
●きゃんぷふぁいやー?
そんな華やかな時と場所から離れること数日。
王国西部。海岸線に近い野営地で、焚き火から溢れる眩い光が警邏の兵を照らしていた。
昇る煙が天に通じたのだろうか。
夜間移動の危険をおかして辿り着いた避難民家族が、あなたを含むハンターに気付き安堵してへたり込む。
毛布を持って駆け寄るハンター、携帯食料を取り出すハンターや近くの大瓶から水を汲み出すハンターまでいるが、全く足りないものがある。
「お肉堅い」
「水の臭いが」
「野菜が酸っぱ過ぎて涙が止まりません」
美味しさが足りない。全部まとめて美味しくない!
固すぎて非覚醒者ではかみ切れないパン。保存状態がよくない水。野菜の酢漬けというより元は野菜だった何か。
王国に騙された訳でも兵による嫌がらせでもない。ここにはこんなものしかないのだ。
あなたの手元には未開封のリアルブルー産保存食がある。
そのまま食べれば兵士1人の3日分にしかならないけれども、野営地に備蓄された食料と組み合わせることで大量の美味しい……のは高望みかもだが普通レベルの食事にはできるかもしれない。
闇夜と寒さに耐えながら頑張る兵士や、ヴォイドから逃れなんとかここまで来た避難民に満足を提供できるかどうか、全てあなたの発想と料理技術にかかっている。
リプレイ本文
●ハンター参上!
素朴な木製椅子の上に立って、えへんと咳払い。
ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)の銀髪が、海原に沈む夕日に照らされまぶしく輝いた。
「ボクの名は大王ディアドラ!」
彼女の瞳に奢りはない。
「この世界に光をもたらす者だ!」
世を憂い自らの足で状況を打破しようという覇気に溢れていた。
なお、長時間の大荷物輸送で手足の筋肉が震え息も荒い。
「すごいな嬢ちゃんっ」
「大盤振舞だな!」
「歓迎するぜ」
非番の兵士達が機嫌良く歓迎してくれる。
ディアドラの言動に好意的だが、それ以上にディアドラ達ハンターが運んできた物資に目がくらんでいた。
風下でないのに香ってくる強烈な香辛料の香り。
紳士であり続けるのに苦労するほど魅力的な女性陣が運んできた牛乳。
最前線のストレスにさらされた兵達にとっては、これだけでも十分な楽しみだ。
「お主ら元気そうだな」
ディアドラは兵士達の視線が己に向けられていないことに気付く。
まあこれで腹を立てるほど狭量ではない。
彼女の背後では、ジナイーダ・ドラグノーヴァ(ka0802)が手際よくかまどを組んでいた。
熱に強い煉瓦や石を組み合わせ頑丈な網を載せ、熱を無駄にしない形へ調整。
完成させて胸の前で手を伸ばすと、視線が遮られた兵達が残念そうな声を出した。
「ちょうど良い大きさね」
アミグダ・ロサ(ka0144)は大型テントを張り終え目を細めている。
入り口を開けると清潔なマットの上にそれ以上に清潔な机とまな板を含む各種料理器具が揃っている。
これで吹きっ晒しの下でまな板という事態は避けられるはずだ。
「ナッツにチーズに……ヒュー、この牛乳生で飲めそうだぜ!」
目を血走らせてにじり寄る兵士達の真後ろで、ごほんと咳払い。
「これは料理の材料だ。お前等はこれでも食ってろ」
春日 啓一(ka1621)が小さなものを弾く。
兵士は危なげなく受け取り自分の目の前に持ってきた。
「菓子?」
行儀悪く鼻で嗅ぎ、軽く舐め、指先で折った欠片を口に含む。
「ウッヒョー! 焼きたてのパンの味がしやがるっ。もっとくれよ兄ちゃん!」
もとはロッソに積まれていた非常食の乾パンはとても好評だった。
「しばらく待ってろ」
ふんと鼻を鳴らしてかまど用資材へ向かう。
この場だけでも兵士の数は10人以上、ハンターをあわせれば20人を越え、近くで巡回中の兵をあわせれば30人近い。1人に多く配れば乾パンも足りないし、かまども2つや3つでは到底足りない。啓一だけでできれば2つは完成させたいところだ。
「これを置けるのをお願いね♪」
自身の体重の3分の1はありそうな大鍋を軽々とかかげるのはレベッカ・ヘルフリッヒ(ka0617)。
元は新米オペレーターだったのに、歴戦の武人に負けない握力と腕力だ。覚醒状態でなくても強化の度合いはすごい。
「やってはみるがよ」
啓一はぶっきらぼうに返事をして煉瓦を並べていく。
数十人用鍋を載せられるかまど造りは初挑戦だ。が、事前にやり方を調べてきたので時間はかかっても失敗はない。
「とったぞっ」
落ち着いているのに強烈な情熱の籠もった声が啓一の耳を直撃する。
危うくつま先に落としそうになった煉瓦を人差し指と中指で挟んで止める。
じろりと声の主を見る。メンター・ハート(ka1966)は食べられる各種ハーブと枯れ草の山を抱えているので前と啓一が見えない。
「場所が場所だから味は落ちてるだろうが」
メンターの強い視線が胸の見物に来た兵士に突き刺さる。
「焼けば食える」
「おう」
「た、確かに」
圧倒的な気合が兵士達を完全に押していた。
「後何個つくればいいんだ?」
リアルブルー出身者として王国の常識を期待してたずねる啓一。
「水の煮沸用にひとつ、煮込み料理用にひとつ、ローテーション用に最低ひとつ。ローテーション用大鍋でやりくりして合計4つ欲しいな。おう、貴重な男手なんだから頼むぜ!」
ハーブ類と着火用の枯れ草を別けて置いて啓一の背中を叩く。
服と皮膚越しに武術家の筋肉に触れ、メンターの目が戦士を見る目に変わる。
「へいへい」
不満じみた口ぶりとは対照的に慎重確実な手つきで煉瓦を積む。仕事で手を抜くつもりは全くなかった。
●魅惑の白いおしる
「これが食料」
遥・シュテルンメーア(ka0914)は頭痛に襲われていた。
調理開始前に食材の確認を行ったところ、出てきたのは野菜の酢漬けと表現するのが躊躇われる代物と、携帯と保存のし易さ最優先の靴底風干し肉だった。
リアルブルーの糧食とはあらゆる意味で違いすぎ、試しにレーションを渡したところ兵士同士で殴り合いが始まりかねない様子だった。
遥から数歩の距離で、野菜酢漬けと干し肉を丁寧かつ大胆に揉むのは爪の先から肌の隅々まで手入れの行き届いた白い手だ。
よく揉んでなじませたものを絞って酢を分離。
多少は柔らかくなった肉を野菜ごと包丁で切って熱く熱せられたフライパンに入れる。
刺激的な、けれど決して不味くはない臭いがかまどの周囲に広がっていく。
ヴィーズリーベ・メーベルナッハ(ka0115)は器用にチーズを薄く切り焼き色のつきつつある肉の上に降らせ、包丁をまな板の上に置いてからフライパンの柄を持って炎との距離を調節する。
「アレが美味くなるなんてスゲー」
「すっげー」
一部前屈みになった兵士が勤務中の兵士に連れられていく。
ヴィーズリーベの硬質な雰囲気から滲み出る濃密な色香に惑わされたのだ。
「ボクも負けないよ」
隣のかまど担当だったレベッカが胸を張る。
もともと胸を目立たせる衣装がさらに胸を強調し、紳士でいたかった兵士達の視線を引きつけた。
愛想を振りまきつつ鍋からお玉を引き抜く。お玉の中では異様に固いはずのパンが煮崩れていた。
ナッツを砕いて適量散らしたミルク粥は本格的な店で出てきても違和感がない出来映えだ。でも兵士達の反応は妙に鈍い。
「薄味でお上品なのは勘弁だぜ」
「まーまーそう言わず食べてみてよ♪」
中をくりぬいた極固パンに粥を注ぎ、食べさせた。
兵士数人の目が見開かれ全身から玉のような汗が噴き出す。
生まれてからこれまで使ったことのなかった部分の味覚が激しく反応し、快楽が舌から脳を直撃する。新鮮な牛乳を大量に使い、疲れた胃に優しくそれでいて旨味に満ちた料理は兵士達が初めて知る美味だった。
涙が溢れ、嗚咽が漏れ、けれど器を持つ手は微動だにせず、舌が焼けるのも気にせず飲み込んでいく。
レベッカは優しく微笑んで注ぎ続ける。騒ぎに気付いた兵士達が野営地全体から集まって来ていた。
「はーい、ヴィズちゃん。どんどん配っちゃってっ♪」
「はい」
白く艶やかな手が粥入りのパンを兵士に手渡す。
「俺、手洗わねぇ」
「俺も」
だらしない表情の兵士があっという間に量産されていく。
レベッカは男の悲しい性質に呆れと理解と茶目っ気の混じった視線を向けていたが、ふと気付いてヴィーズリーベにウィンクする。
「とろみ湯を入れたの試食してくれる?」
こくりとうなずき手に取るヴィーズリーベ。
上品にパンに口をつけ、しかし少々古くなっていたらしくひび割れからとろみのある白い液が溢れた。
どう手入れすればこれだけ張りと艶を保てるのかさっぱり分からない肌に張り付き汚す。
兵士達の顎が落ち、ついでに熱っついパンを取り落としかけて熱い粥で手を火傷してしまうのだった。
●避難民
「盛り上がってるな」
一瞬視線を向けてから作業を再開する。
美味と娯楽に飢えている兵士達がとてつもない速度で消費するシチュー皿とその中身を供給するため、メンターはナイフを使ってパンをくりぬき十数個まとめてディアドラ調達の食卓へ運ばせる。
残ったパンの中身の固形物をちぎって火を通してじっと見る。
落ち着き払った表情とは逆の、とても元気な腹の音が聞こえた。
「あたしも食べたい所だが、ここは、我慢、我慢」
日没直後の薄明かりにいくつもの影が見え徐々に近づいてくる。
装備と歩き方から判断して、近くの本営に所属している兵士達だろう。なにせ王国西部という前線勤務だ。危険と隣り合わせな上、ろくな娯楽もないので、料理の噂を聞けば非番の連中全員が駆けつけてもおかしくない。
「あらあら、まぁ」
アミグダは料理用の水確保のための煮沸、ミルク粥の味見にシチューの仕上げを同時にしても余裕は失わない。
途切れず訪れる兵士達には料理を、仕事のため本営や巡回に向かう兵士には甘味のあるジュースを贅沢に使ったでんぷん餅を渡す。
腹一杯食った非番兵士にはエールを使った干し肉煮込み岩塩風だ。これまでとは違う味と香りは兵士の食欲をさらに引き出し腹を鳴らせた。
「ん?」
メンターがナイフを置いた。
いつでも覚醒状態に移行できる準備を整え、巡回中の兵士の動きを注視する。
兵士とは明らかに違う大小4つの影が、ゆっくりとこちらへ、正確にはかまどの光と光に照らされた煙を目指し近づいてくる。
「いかん!」
椅子を蹴っ飛ばしてディアドラが立ち上がる。
机の上の肉スープをそのままに駆け出す……前に休憩中の兵士をたたき起こす。
「おいあんたそっち持ってくれ。担架にする。食器はそのままでいい」
たたき起こされた兵士にジナイーダが直接指示。10人近くでディアドラの机数個を大皿ごと運んでいく。
地面は乾いている。
なのに堅くはなく脆い。
まるで、重要な何かが吸い取られでもしてしまったようだ。
「もう安全だ。運ぶからじっとしてろ」
兵が自前のマントを机の上に広げる。
疲れがひどい子供を最初に乗せる。
ジナイーダが優しく声をかけて手を握ってやると、荒れた小さなてのひらが弱い力で握り替えしてきた。
「しっかりせい。意識はあるか?」
痩せた若夫婦と若夫婦よりは大丈夫そうな子供2人を担架代わりの机の上に乗せ、ディアドラが彼等の目の前で指を振る。
「あ、なたは……」
「おにくのにおい」
唇が乾燥している。水分が危険なほど足りていない可能性がある。
「いくらでも食わしてやる。まだ寝るんじゃないぞ」
クリムゾンウェストでは聞き慣れない、ビニール包装を破る音が何度も聞こえた。
「これをなめて。大丈夫。お菓子のようなものよ」
遥が子供の近くにかがみ込み、視線をあわせてチョコレートを舌にのせる。
切れのよい音をたててペットボトルを開封し、喉に詰まらせないよう角度に注意しながら口にミネラルウォーターを含ませる。
高カロリーの食品を食べるのは初めてだったのかもしれない。子供達の青白い顔が見る間に桜色に変わった。
「焦るでないぞ」
あまーいチョコの誘惑には気合いで抵抗してから、ディアドラは若夫婦の面倒を見る。
ちょっとだけ冷めた肉スープをそれぞれに渡すと止める間もなく飲み尽くされた。時間と手間をかけて戻した干し肉からスープ全体に旨味がしみ出し、干し肉も体力が衰えた者達でも美味しく食べられる柔らかさになっていたのだ。
「道を空けよ!」
担架を先導しつつディアドラが小さな手を伸ばす。兵達が素晴らしい反応で直立、運び込まれる避難民家族4人を迎え入れた。
アミグダが子供と担架担当兵士の分のでんぷん餅を大皿に入れ持ってくる。
特に子供の反応は激烈で、甘く腹にたまりそうな香りを少しでも口にいれようとして大きく口を開けていた。
アミグダが兵士を見る。兵士がそういう事情なら仕方がないという顔でうなずく。
「ゆっくり食べるのよ」
頭を下げる母親に微笑み、等分して子供2人に与える。
慌てて食べても喉に詰まらせないよう細かく切ってから渡すあたり、見事という他なかった。
「これで元気になって下さい」
父親に対し、肉スープより濃くて消化の良いミルク粥をヴィーズリーベが手渡す。
胸が強調される体勢で男の鼻息が荒くなるのに気づくより早く、ヴィーズリーベが向きを変え妻の分の粥を渡した。
「これ、お肌にも良いそうですよ」
機先を制せられ、若い奥さんは怒ることもできずにスプーンを口に含む。
体の足りない要素が口から直接入って埋められていく。安堵と食の快楽でこぼれた涙が女性の頬を濡らしていた。
●王国の明日
深夜になると夜番の兵士を除いたほとんどが眠りについた。
啓一は夜番に志願したことを4分の1ほど後悔しつつかまどに薪を放り込む。
火の粉が舞う。その動きを見きった啓一の頬を赤い光がすれすれに横切り闇の中へ消えていった。
「危ないからこっちにくんな」
子供の視線に気づき即座に声をかける。
避難民は十分な食事を得てある程度回復した。そのため明日の朝には無事な人里を目指して出発するしかない。ここは最前線、避難民を抱える余裕はないのだ。
「これやるからあっちのお姉さんたちがいるほうに行け」
ちょっとだけ煮詰まったスープを器に注いでやる。
子供達は声をそろえてありがとうと頭を下げる。
「明けない夜なんてないからとにかく生きて戦い続けなさい」
残酷な現実を可能な限り柔らかな声で伝える遥。
お母さん達と明日のご飯にしなさいと、夜番の兵士に配った残りのシチューを鍋ごと渡してやった。賽の目に細かく刻んだ干し肉と固いパンに豆まで入った遥お手製シチューは、避難民の体と心に強い力を与えるはずだ。
何度も頭を下げてテントに戻っていく子供達を見送る。
そして、さすがに疲れの隠せない息を吐いて夜空を見上げた。
「ここは……院生時代に地球で見た星空より遥かに綺麗に見えるのね」
リアルブルーの南半球でも北半球でもあり得ない配置の星々が、ずっと綺麗に見えた。
「元からの住民としては素直にうなずけないな」
メンターが無造作にかまどに近づき使い残しの野草を炙る。
舌に乗せ、味を確かめ、咀嚼し飲み込む。
全てではないがマテリアルが奪われているとしか思えない、薄い味だ。
「深刻になりすぎるのは良くないぜ」
ジナイーダが手を離す。
縄できつく縛られた薪が勢いよく地面にぶつかり、めり込んだ。
啓一が見ているかまどとは別のかまどの灰をつついて火を掘り起こし、メンターが渡した枯れ草で着火して薪を入れて本格的に火をつける。
それを2度繰り返し火を適度な大きさにする。これだけあれば、作り置きの朝食を兵達が美味しく食べられるはずだ。
「これから今日が始まるか、はてさて幸せか不幸せの夜明けとなるか、それは歩む者次第ってところかね」
啓一は東から差し始めた朝日を反射する水平線を睨み付ける。
水平線の中に、ヴォイドに冒された島がうっすらと見えていた。
「そろそろ行くか」
ディアドラが己の倍はある大きさの荷物を背負う。
とっくに疲労は抜けている。予め所有者の了解を得ていた椅子や食事は兵に引き取らせたので行きに比べれば軽い軽い。
「元気でな!」
起き出してきた避難民夫婦と兵達に挨拶する。
ハンター達は感謝の言葉を背に受けながら、王都の方向へ歩いて行った。
素朴な木製椅子の上に立って、えへんと咳払い。
ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)の銀髪が、海原に沈む夕日に照らされまぶしく輝いた。
「ボクの名は大王ディアドラ!」
彼女の瞳に奢りはない。
「この世界に光をもたらす者だ!」
世を憂い自らの足で状況を打破しようという覇気に溢れていた。
なお、長時間の大荷物輸送で手足の筋肉が震え息も荒い。
「すごいな嬢ちゃんっ」
「大盤振舞だな!」
「歓迎するぜ」
非番の兵士達が機嫌良く歓迎してくれる。
ディアドラの言動に好意的だが、それ以上にディアドラ達ハンターが運んできた物資に目がくらんでいた。
風下でないのに香ってくる強烈な香辛料の香り。
紳士であり続けるのに苦労するほど魅力的な女性陣が運んできた牛乳。
最前線のストレスにさらされた兵達にとっては、これだけでも十分な楽しみだ。
「お主ら元気そうだな」
ディアドラは兵士達の視線が己に向けられていないことに気付く。
まあこれで腹を立てるほど狭量ではない。
彼女の背後では、ジナイーダ・ドラグノーヴァ(ka0802)が手際よくかまどを組んでいた。
熱に強い煉瓦や石を組み合わせ頑丈な網を載せ、熱を無駄にしない形へ調整。
完成させて胸の前で手を伸ばすと、視線が遮られた兵達が残念そうな声を出した。
「ちょうど良い大きさね」
アミグダ・ロサ(ka0144)は大型テントを張り終え目を細めている。
入り口を開けると清潔なマットの上にそれ以上に清潔な机とまな板を含む各種料理器具が揃っている。
これで吹きっ晒しの下でまな板という事態は避けられるはずだ。
「ナッツにチーズに……ヒュー、この牛乳生で飲めそうだぜ!」
目を血走らせてにじり寄る兵士達の真後ろで、ごほんと咳払い。
「これは料理の材料だ。お前等はこれでも食ってろ」
春日 啓一(ka1621)が小さなものを弾く。
兵士は危なげなく受け取り自分の目の前に持ってきた。
「菓子?」
行儀悪く鼻で嗅ぎ、軽く舐め、指先で折った欠片を口に含む。
「ウッヒョー! 焼きたてのパンの味がしやがるっ。もっとくれよ兄ちゃん!」
もとはロッソに積まれていた非常食の乾パンはとても好評だった。
「しばらく待ってろ」
ふんと鼻を鳴らしてかまど用資材へ向かう。
この場だけでも兵士の数は10人以上、ハンターをあわせれば20人を越え、近くで巡回中の兵をあわせれば30人近い。1人に多く配れば乾パンも足りないし、かまども2つや3つでは到底足りない。啓一だけでできれば2つは完成させたいところだ。
「これを置けるのをお願いね♪」
自身の体重の3分の1はありそうな大鍋を軽々とかかげるのはレベッカ・ヘルフリッヒ(ka0617)。
元は新米オペレーターだったのに、歴戦の武人に負けない握力と腕力だ。覚醒状態でなくても強化の度合いはすごい。
「やってはみるがよ」
啓一はぶっきらぼうに返事をして煉瓦を並べていく。
数十人用鍋を載せられるかまど造りは初挑戦だ。が、事前にやり方を調べてきたので時間はかかっても失敗はない。
「とったぞっ」
落ち着いているのに強烈な情熱の籠もった声が啓一の耳を直撃する。
危うくつま先に落としそうになった煉瓦を人差し指と中指で挟んで止める。
じろりと声の主を見る。メンター・ハート(ka1966)は食べられる各種ハーブと枯れ草の山を抱えているので前と啓一が見えない。
「場所が場所だから味は落ちてるだろうが」
メンターの強い視線が胸の見物に来た兵士に突き刺さる。
「焼けば食える」
「おう」
「た、確かに」
圧倒的な気合が兵士達を完全に押していた。
「後何個つくればいいんだ?」
リアルブルー出身者として王国の常識を期待してたずねる啓一。
「水の煮沸用にひとつ、煮込み料理用にひとつ、ローテーション用に最低ひとつ。ローテーション用大鍋でやりくりして合計4つ欲しいな。おう、貴重な男手なんだから頼むぜ!」
ハーブ類と着火用の枯れ草を別けて置いて啓一の背中を叩く。
服と皮膚越しに武術家の筋肉に触れ、メンターの目が戦士を見る目に変わる。
「へいへい」
不満じみた口ぶりとは対照的に慎重確実な手つきで煉瓦を積む。仕事で手を抜くつもりは全くなかった。
●魅惑の白いおしる
「これが食料」
遥・シュテルンメーア(ka0914)は頭痛に襲われていた。
調理開始前に食材の確認を行ったところ、出てきたのは野菜の酢漬けと表現するのが躊躇われる代物と、携帯と保存のし易さ最優先の靴底風干し肉だった。
リアルブルーの糧食とはあらゆる意味で違いすぎ、試しにレーションを渡したところ兵士同士で殴り合いが始まりかねない様子だった。
遥から数歩の距離で、野菜酢漬けと干し肉を丁寧かつ大胆に揉むのは爪の先から肌の隅々まで手入れの行き届いた白い手だ。
よく揉んでなじませたものを絞って酢を分離。
多少は柔らかくなった肉を野菜ごと包丁で切って熱く熱せられたフライパンに入れる。
刺激的な、けれど決して不味くはない臭いがかまどの周囲に広がっていく。
ヴィーズリーベ・メーベルナッハ(ka0115)は器用にチーズを薄く切り焼き色のつきつつある肉の上に降らせ、包丁をまな板の上に置いてからフライパンの柄を持って炎との距離を調節する。
「アレが美味くなるなんてスゲー」
「すっげー」
一部前屈みになった兵士が勤務中の兵士に連れられていく。
ヴィーズリーベの硬質な雰囲気から滲み出る濃密な色香に惑わされたのだ。
「ボクも負けないよ」
隣のかまど担当だったレベッカが胸を張る。
もともと胸を目立たせる衣装がさらに胸を強調し、紳士でいたかった兵士達の視線を引きつけた。
愛想を振りまきつつ鍋からお玉を引き抜く。お玉の中では異様に固いはずのパンが煮崩れていた。
ナッツを砕いて適量散らしたミルク粥は本格的な店で出てきても違和感がない出来映えだ。でも兵士達の反応は妙に鈍い。
「薄味でお上品なのは勘弁だぜ」
「まーまーそう言わず食べてみてよ♪」
中をくりぬいた極固パンに粥を注ぎ、食べさせた。
兵士数人の目が見開かれ全身から玉のような汗が噴き出す。
生まれてからこれまで使ったことのなかった部分の味覚が激しく反応し、快楽が舌から脳を直撃する。新鮮な牛乳を大量に使い、疲れた胃に優しくそれでいて旨味に満ちた料理は兵士達が初めて知る美味だった。
涙が溢れ、嗚咽が漏れ、けれど器を持つ手は微動だにせず、舌が焼けるのも気にせず飲み込んでいく。
レベッカは優しく微笑んで注ぎ続ける。騒ぎに気付いた兵士達が野営地全体から集まって来ていた。
「はーい、ヴィズちゃん。どんどん配っちゃってっ♪」
「はい」
白く艶やかな手が粥入りのパンを兵士に手渡す。
「俺、手洗わねぇ」
「俺も」
だらしない表情の兵士があっという間に量産されていく。
レベッカは男の悲しい性質に呆れと理解と茶目っ気の混じった視線を向けていたが、ふと気付いてヴィーズリーベにウィンクする。
「とろみ湯を入れたの試食してくれる?」
こくりとうなずき手に取るヴィーズリーベ。
上品にパンに口をつけ、しかし少々古くなっていたらしくひび割れからとろみのある白い液が溢れた。
どう手入れすればこれだけ張りと艶を保てるのかさっぱり分からない肌に張り付き汚す。
兵士達の顎が落ち、ついでに熱っついパンを取り落としかけて熱い粥で手を火傷してしまうのだった。
●避難民
「盛り上がってるな」
一瞬視線を向けてから作業を再開する。
美味と娯楽に飢えている兵士達がとてつもない速度で消費するシチュー皿とその中身を供給するため、メンターはナイフを使ってパンをくりぬき十数個まとめてディアドラ調達の食卓へ運ばせる。
残ったパンの中身の固形物をちぎって火を通してじっと見る。
落ち着き払った表情とは逆の、とても元気な腹の音が聞こえた。
「あたしも食べたい所だが、ここは、我慢、我慢」
日没直後の薄明かりにいくつもの影が見え徐々に近づいてくる。
装備と歩き方から判断して、近くの本営に所属している兵士達だろう。なにせ王国西部という前線勤務だ。危険と隣り合わせな上、ろくな娯楽もないので、料理の噂を聞けば非番の連中全員が駆けつけてもおかしくない。
「あらあら、まぁ」
アミグダは料理用の水確保のための煮沸、ミルク粥の味見にシチューの仕上げを同時にしても余裕は失わない。
途切れず訪れる兵士達には料理を、仕事のため本営や巡回に向かう兵士には甘味のあるジュースを贅沢に使ったでんぷん餅を渡す。
腹一杯食った非番兵士にはエールを使った干し肉煮込み岩塩風だ。これまでとは違う味と香りは兵士の食欲をさらに引き出し腹を鳴らせた。
「ん?」
メンターがナイフを置いた。
いつでも覚醒状態に移行できる準備を整え、巡回中の兵士の動きを注視する。
兵士とは明らかに違う大小4つの影が、ゆっくりとこちらへ、正確にはかまどの光と光に照らされた煙を目指し近づいてくる。
「いかん!」
椅子を蹴っ飛ばしてディアドラが立ち上がる。
机の上の肉スープをそのままに駆け出す……前に休憩中の兵士をたたき起こす。
「おいあんたそっち持ってくれ。担架にする。食器はそのままでいい」
たたき起こされた兵士にジナイーダが直接指示。10人近くでディアドラの机数個を大皿ごと運んでいく。
地面は乾いている。
なのに堅くはなく脆い。
まるで、重要な何かが吸い取られでもしてしまったようだ。
「もう安全だ。運ぶからじっとしてろ」
兵が自前のマントを机の上に広げる。
疲れがひどい子供を最初に乗せる。
ジナイーダが優しく声をかけて手を握ってやると、荒れた小さなてのひらが弱い力で握り替えしてきた。
「しっかりせい。意識はあるか?」
痩せた若夫婦と若夫婦よりは大丈夫そうな子供2人を担架代わりの机の上に乗せ、ディアドラが彼等の目の前で指を振る。
「あ、なたは……」
「おにくのにおい」
唇が乾燥している。水分が危険なほど足りていない可能性がある。
「いくらでも食わしてやる。まだ寝るんじゃないぞ」
クリムゾンウェストでは聞き慣れない、ビニール包装を破る音が何度も聞こえた。
「これをなめて。大丈夫。お菓子のようなものよ」
遥が子供の近くにかがみ込み、視線をあわせてチョコレートを舌にのせる。
切れのよい音をたててペットボトルを開封し、喉に詰まらせないよう角度に注意しながら口にミネラルウォーターを含ませる。
高カロリーの食品を食べるのは初めてだったのかもしれない。子供達の青白い顔が見る間に桜色に変わった。
「焦るでないぞ」
あまーいチョコの誘惑には気合いで抵抗してから、ディアドラは若夫婦の面倒を見る。
ちょっとだけ冷めた肉スープをそれぞれに渡すと止める間もなく飲み尽くされた。時間と手間をかけて戻した干し肉からスープ全体に旨味がしみ出し、干し肉も体力が衰えた者達でも美味しく食べられる柔らかさになっていたのだ。
「道を空けよ!」
担架を先導しつつディアドラが小さな手を伸ばす。兵達が素晴らしい反応で直立、運び込まれる避難民家族4人を迎え入れた。
アミグダが子供と担架担当兵士の分のでんぷん餅を大皿に入れ持ってくる。
特に子供の反応は激烈で、甘く腹にたまりそうな香りを少しでも口にいれようとして大きく口を開けていた。
アミグダが兵士を見る。兵士がそういう事情なら仕方がないという顔でうなずく。
「ゆっくり食べるのよ」
頭を下げる母親に微笑み、等分して子供2人に与える。
慌てて食べても喉に詰まらせないよう細かく切ってから渡すあたり、見事という他なかった。
「これで元気になって下さい」
父親に対し、肉スープより濃くて消化の良いミルク粥をヴィーズリーベが手渡す。
胸が強調される体勢で男の鼻息が荒くなるのに気づくより早く、ヴィーズリーベが向きを変え妻の分の粥を渡した。
「これ、お肌にも良いそうですよ」
機先を制せられ、若い奥さんは怒ることもできずにスプーンを口に含む。
体の足りない要素が口から直接入って埋められていく。安堵と食の快楽でこぼれた涙が女性の頬を濡らしていた。
●王国の明日
深夜になると夜番の兵士を除いたほとんどが眠りについた。
啓一は夜番に志願したことを4分の1ほど後悔しつつかまどに薪を放り込む。
火の粉が舞う。その動きを見きった啓一の頬を赤い光がすれすれに横切り闇の中へ消えていった。
「危ないからこっちにくんな」
子供の視線に気づき即座に声をかける。
避難民は十分な食事を得てある程度回復した。そのため明日の朝には無事な人里を目指して出発するしかない。ここは最前線、避難民を抱える余裕はないのだ。
「これやるからあっちのお姉さんたちがいるほうに行け」
ちょっとだけ煮詰まったスープを器に注いでやる。
子供達は声をそろえてありがとうと頭を下げる。
「明けない夜なんてないからとにかく生きて戦い続けなさい」
残酷な現実を可能な限り柔らかな声で伝える遥。
お母さん達と明日のご飯にしなさいと、夜番の兵士に配った残りのシチューを鍋ごと渡してやった。賽の目に細かく刻んだ干し肉と固いパンに豆まで入った遥お手製シチューは、避難民の体と心に強い力を与えるはずだ。
何度も頭を下げてテントに戻っていく子供達を見送る。
そして、さすがに疲れの隠せない息を吐いて夜空を見上げた。
「ここは……院生時代に地球で見た星空より遥かに綺麗に見えるのね」
リアルブルーの南半球でも北半球でもあり得ない配置の星々が、ずっと綺麗に見えた。
「元からの住民としては素直にうなずけないな」
メンターが無造作にかまどに近づき使い残しの野草を炙る。
舌に乗せ、味を確かめ、咀嚼し飲み込む。
全てではないがマテリアルが奪われているとしか思えない、薄い味だ。
「深刻になりすぎるのは良くないぜ」
ジナイーダが手を離す。
縄できつく縛られた薪が勢いよく地面にぶつかり、めり込んだ。
啓一が見ているかまどとは別のかまどの灰をつついて火を掘り起こし、メンターが渡した枯れ草で着火して薪を入れて本格的に火をつける。
それを2度繰り返し火を適度な大きさにする。これだけあれば、作り置きの朝食を兵達が美味しく食べられるはずだ。
「これから今日が始まるか、はてさて幸せか不幸せの夜明けとなるか、それは歩む者次第ってところかね」
啓一は東から差し始めた朝日を反射する水平線を睨み付ける。
水平線の中に、ヴォイドに冒された島がうっすらと見えていた。
「そろそろ行くか」
ディアドラが己の倍はある大きさの荷物を背負う。
とっくに疲労は抜けている。予め所有者の了解を得ていた椅子や食事は兵に引き取らせたので行きに比べれば軽い軽い。
「元気でな!」
起き出してきた避難民夫婦と兵達に挨拶する。
ハンター達は感謝の言葉を背に受けながら、王都の方向へ歩いて行った。
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打ち合わせ用テーブル アミグダ・ロサ(ka0144) 人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2014/06/16 00:12:16 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/06/11 15:28:02 |