ゲスト
(ka0000)
商船と幽霊海賊船
マスター:天田洋介

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/09/27 12:00
- 完成日
- 2015/10/04 18:43
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
グラズヘイム王国の南西部沿岸の港から一隻の帆船が出航した。
交易商人が所有するこの帆船には地方の果樹園で採れた林檎や梨が詰められた木箱がこれでもかと積まれている。
向かう先は港街【ガンナ・エントラータ】。そこで各地の商人達相手に林檎や梨を売り捌く予定になっていた。
空は晴れて海原は穏やか。とてもよい風が吹いていて帆船の進みも順調。しかし問題が一つ。
「これから通過しなけりゃならねぇ海域には海賊がでるのさ。それもただの海賊じゃねぇ。幽霊船の海賊らしいんだ」
「俺達も海の男だからよ。そこらの海賊相手に負けるつもりはないが……幽霊はいけねぇ。相手が悪すぎる。それであんたらを雇ったわけよ」
船乗り達が依頼を受けて乗り込んでいたハンター一行にあらためて事情を話してくれる。
「まず凪いで船が止まってしまうんだ。さらに霧が発生して遠くが見えなくなってよ。知らぬ間に幽霊船が近くにあって後は……って感じさ」
幽霊船がでる前には異変が起こるらしい。船乗り達は幽霊船の出没を信じているようだが、ハンター一行は事前に仮説を立てていた。
可能性として精霊の悪戯もゼロではないがおそらく違う。歪虚に関係する何かしらの集団が一番しっくりとくる。どこかで奪った帆船を使って海賊を演じていると考えれば辻褄が合う。
空が茜色に染まった頃に凪ぐ。夕闇の訪れと合わせるようにして霧が発生して視界が悪くなっていく。
噂のような状況に陥り、船乗り達が口々に幽霊船のことを触れだす。ハンター一行はもしもの事態に備えて戦闘の準備を始めた。
立ちこめる霧の中、『皆殺し』を賞賛する不気味な歌が各自の耳に届く。
甲板の篝火によって霧向こうにうっすらと輪郭が浮かび上がる。それは激しく傷んだ帆船の船首だった。
交易商人が所有するこの帆船には地方の果樹園で採れた林檎や梨が詰められた木箱がこれでもかと積まれている。
向かう先は港街【ガンナ・エントラータ】。そこで各地の商人達相手に林檎や梨を売り捌く予定になっていた。
空は晴れて海原は穏やか。とてもよい風が吹いていて帆船の進みも順調。しかし問題が一つ。
「これから通過しなけりゃならねぇ海域には海賊がでるのさ。それもただの海賊じゃねぇ。幽霊船の海賊らしいんだ」
「俺達も海の男だからよ。そこらの海賊相手に負けるつもりはないが……幽霊はいけねぇ。相手が悪すぎる。それであんたらを雇ったわけよ」
船乗り達が依頼を受けて乗り込んでいたハンター一行にあらためて事情を話してくれる。
「まず凪いで船が止まってしまうんだ。さらに霧が発生して遠くが見えなくなってよ。知らぬ間に幽霊船が近くにあって後は……って感じさ」
幽霊船がでる前には異変が起こるらしい。船乗り達は幽霊船の出没を信じているようだが、ハンター一行は事前に仮説を立てていた。
可能性として精霊の悪戯もゼロではないがおそらく違う。歪虚に関係する何かしらの集団が一番しっくりとくる。どこかで奪った帆船を使って海賊を演じていると考えれば辻褄が合う。
空が茜色に染まった頃に凪ぐ。夕闇の訪れと合わせるようにして霧が発生して視界が悪くなっていく。
噂のような状況に陥り、船乗り達が口々に幽霊船のことを触れだす。ハンター一行はもしもの事態に備えて戦闘の準備を始めた。
立ちこめる霧の中、『皆殺し』を賞賛する不気味な歌が各自の耳に届く。
甲板の篝火によって霧向こうにうっすらと輪郭が浮かび上がる。それは激しく傷んだ帆船の船首だった。
リプレイ本文
●
輸送帆船はとても騒がしい。幽霊船が迫る現在、少しでも策を打とうとしていた。
「大砲窓と甲板の開閉扉はお願いするね」
「内側にもバリケードを用意してくださいませ」
甲板室の水流崎トミヲ(ka4852)と弥栄(ka4950)が船内の船乗り達に声をかけてから扉を閉じる。内側と外側の両方から板を宛がい、玄翁と釘で打ちつけていく。
敵がどのようなものであれ船内に突入されたら対処のしようがなかった。甲板上に残るのはハンターと戦闘要員の船乗りのみである。
船倉室前にもバリケードを用意。並木 怜(ka3388)と檜ケ谷 樹(ka5040)が船乗り達と一緒に木箱を積み上げていく。こちらも動かないよう釘で板を打ちつける。
「幽霊船というからには幽霊がいても不思議ではないからね」
並木怜は船倉室内の様々な場所に四神護符を貼っておいた。効くか定かではないが通り抜け能力を危惧してのことだ。
並木怜は不安げにため息をついた船乗りの肩に手を置く。
「臆病者の目には、常に敵が大軍に見える、と、昔の武将は言いました。あなたの目にはどう映りますか?」
「俺、こうした戦いは初めてで」
「大丈夫です。バリケードを守ってくれれば後は私たちが何とかします」
試作型魔導銃「狂乱せしアルコル」に触れながら柔らかい笑みを零した並木怜だった。
貨物を船倉へ降ろすためにある甲板開閉扉の封鎖も行われている。
「板を張り終えたら、バリケードを用意してください。それに砲台の扉を封印するのも忘れないように――」
「わかりました!」
開閉扉越しにGacrux(ka2726)が船内に残ってもらった船乗り六名へと声をかける。もしもに備えて船内に残ってもらったのである。更に甲板上にある樽等の物品を移動させて開閉扉を見つかりにくくしておく。
エルバッハ・リオン(ka2434)は幽霊船が望める右舷にて瞼を半開きにする。霧向こうにぼんやりと浮かぶ帆船から皆殺しを賞賛する歌声が今も届いていた。
「幽霊船ですか。まあ、幽霊船だろうが、海賊船だろうが、討ち取るだけですね」
歌で敵なのは確定済み。覚醒したエルバッハは躊躇なくファイアーボールを叩き込んだ。
幽霊船を包み込むようにして炎が爆散。これによって耳障りな歌声は止んだ。炎弾は範囲攻撃なので近すぎると使えなくなってしまう。今のうちにすべてを撃ち込んでいく。
その様子をマスト上部にある檣楼から最上 風(ka0891)とシャルル=L=カリラ(ka4262)が望んでいた。
「幽霊船はあまり壊れていませんね。機関部に直撃して、そのまま沈んでくれたら、楽なんですがねー」
「威力のすべてが伝わってない感じカナ? でも甲板にいる敵には効果絶大だよネ」
二人が話した通り炎弾の威力は船体には限定的なようだ。それでも三本立っていたマストのうち一本が折れた。また甲板に待機していた海賊らしき存在も手傷を負ったはずである。
「海賊の正体はスケルトンの、骸骨の雑魔ですね」
檣楼に上ってきたGacruxが幽霊船を望遠鏡で確認して海賊の正体が判明した。装備されていた砲台は酷い有様で使い物にはならなそうである。
「海賊……いいよネ! 山賊と違って野蛮で泥臭いカンジじゃなくて……こう、クールでさ、スマートなんだケド、ワイルドで……」
シャルルは仲間二人の前で瞳を輝かせたがすぐに曇らせる。
「こんなコト言うと……アタマを疑われるケド…ボクは海賊って憧れなんだよネ。だからこそ…海賊を騙る幽霊船なんて存在自体が許せナイ」
最後に『消えてくれル?』とシャルルは強い眼光で呟いた。
●
「ははー……幽霊船。あったなあ、そういうゲーム。特定の時間に船に乗っていると……あの時は怖かったなぁ……」
水流崎はマストを上りながら独り言を呟く。Gacrux、シャルルは先程下りたので檣楼で最上風と二人になった。
「……でも、僕もいい年した大人だしね。ゾンビやゴーストくらいなんてことはないさ」
「膝、笑っていますよ」
最上風に突っ込まれた水流崎は笑って誤魔化す。
「うーん、絶景かな、絶景かな……。さ、て……始めよう。化けてでないでくれよ!」
エルバッハに続いて水流崎の炎弾も霧濃い闇の世界を真っ赤に焦がす。
「ふはは! 雑魔がゴミのようだ!」
爆散の輝きの中に甲板から吹き飛ぶ複数の影が浮かび上がった。ダメージが蓄積された残り二本のマストに亀裂が走り、激しく音を立てながら倒れていく。巻き添えになった骸骨雑魔もかなりにいたはずである。
「ここからなら届くでしょう」
甲板に下りた最上風が船縁へと立つ。間近まで迫った幽霊船にセイクリッドフラッシュの波動を放った。中心にしたのは幽霊船の船倉室付近。船内から甲板へ躍りでようとしている骸骨雑魔が激しい衝撃に奇声をあげる。
光の波動と炎弾の爆散。霧は未だ濃かったものの、これらの輝きで幽霊船の様子が人々の目に晒された。
三連マストの巨大帆船上にスケルトンの雑魔が蠢いている。噂通り、幽霊海賊船の名にふさわしい情景が広がっていた。
乱暴な接舷によって船同士が激突。輸送帆船側も大きく揺れる。
デリンジャー「デッドリーキッス」で銃撃していたシャルルが身を屈めた。まもなくジェットブーツの勢いで高く舞い上がる。降り立ったのは幽霊船甲板室の屋根の上だ。
「これでどうダイ?」
彼が出現させたデルタレイの輝く三角形から三本の光条が放たれた。屋根によじ登ろうとしていた骸骨を貫いてバラバラに吹き飛ばす。
(……何だか統率が取れ過ぎてナイ?)
シャルルは戦いながら疑問を感じる。甲板室に集る一団と接舷中の船へ移ろうとしている一団の戦闘行動はくっきりと分かれていた。
普通なら入り乱れて混乱するはず。それを期待しての特攻だったが、その意味での目論見は途絶える。但し有利な条件で敵を予め減らすことには成功していた。
折れたマストの上に移動して攻撃を再開。光条すべてを放ち尽くしたところでジェットで跳んで帰還する。
接舷を待たずに幽霊船側から渡り板がいくつも架けられた。なだれ込もうとする骸骨雑魔共。先手必勝を自らに付与した弥栄が大太刀「物干竿」を構える。
「覚悟はよいで御座いますね」
大太刀の長い刀身で渡り板を進んできた骸骨雑魔を薙ぎ払う。次々と暗い海中へ落ちていく。
まもなく接舷は果たされたが何かしらで二隻を繋げているわけではない。凪とはいえ船の距離は微妙に変わっていく。近いときには渡り板を使わずに骸骨雑魔が直接乗り込んできた。
「ほらほら、お前の相手はそちらでは無いでしょう。この私と遊んではくれないのですか」
薙ぎ払いでだけでなく電光石火で骸骨雑魔の逃げ道を断って刃を煌めかせる。仲間の範囲攻撃のおかげで殆どが一度の攻撃で塵へと還っていく。極一部は骨として甲板に散らばった。
「そこの船乗りさん、風と一緒にサボリ‥‥ではなく、回りに立って護衛してくれませんか?」
甲板室のバリケード内で最上風は護衛を頼んだ。レクイエムはこの位置からでも幽霊船まで充分に届く。幽霊船の甲板に密集する骸骨雑魔共に向けて鎮魂歌を唄う。
ぐらりと身体を揺らして倒れていく骸骨雑魔共。一部はすぐに目覚めるが、しばらく動かない個体もかなりいる。
数にものをいわせて突撃されるのが輸送帆船側にとって一番の危険。それをレクイエムで未然に防いでいった。
(頭はあまりよさそうではないのにね。どうしたんだろうね)
檜ケ谷樹は帆船後部の見晴台から身を乗りだして右舷側部を見張っていた。
二隻の砲台位置は似通っているので、接舷していると比較的乗り移りやすい。いくら頑丈に開閉扉を封印したとしても弱点には違いなかった。事実、幽霊船の砲台部分にいる骸骨雑魔共が閉じた扉を破壊しようと斧を振るっている。
それを許すつもりがない檜ケ谷樹はエレクトリックショックで時間を稼ぎつつ、頭や胸部を魔導拳銃「ペンタグラム」で狙って撃ち倒していく。
そしてもう一つ、すでに傷んでいる幽霊船側板に銃弾を撃ち込んでいった。喫水線の間近なので穴が空ければ浸水間違いなしである。
エルバッハは輸送帆船甲板室の屋根上に陣取っていた。味方の背後へ忍び寄る骸骨雑魔を狙い、ウィンドスラッシュとアースバレットを使い分けて撃ち倒す。そこへシャルルが現れた。
「さっきトミヲと話したんだヨ。この霧を作ったのは誰かなのかって」
「確かに不思議ですね。スケルトンにその能力があるとは考えにくいです」
「だよネ。で、歪虚か堕落者がどこかにいるんじゃないかって思うのサ」
「なるほどです。一理あります」
会話の途中で二人が激しく身体を動かす。飛んできた多数の銃弾を避けるためだ。
その様子をGacruxは離れた位置から目撃していた。即座に望遠鏡で弾が飛んできた方角を確認。幽霊船の折られた最後尾のマスト裏に何者かが隠れたのを目視する。おそらくその者が狙撃したに違いない。
「敵狙撃者は幽霊船の最後のマストの辺りにいます!」
そう叫びながら彼は幽霊船へと飛び移った。特殊強化鋼製ワイヤーウィップをマストへと巻き付けて瞬時に敵狙撃者へと近づく。
エルバッハの風刃による援護攻撃おかげで敵狙撃者は動けない。シャルルもジェットブーツで上空からマストへと近づいた。
焦れた敵狙撃者が攻撃を受ける覚悟で飛びだして銃弾をまき散らす。そして船尾へと走っていく。
(攻撃を一点に集約して)
仲間達の状況を把握していた並木怜が膝射で狙い定める。
遠距離からの重い精密射撃の怖さは並木自身がよくわかっていた。優先して倒すべき相手として敵狙撃者を魔導銃で撃つ。急所は外れたものの腹部に命中。二射目を肩に当てたところで幽霊船内へ逃げ込んだ。
暗い船内に一瞬躊躇したものの、Gacruxとシャルルは船内へ飛び込む。姿を見失ったらこちらが絶対的に不利。Gacruxが所持していたLEDライトで照らし続けて追いかける。
これまでの味方の攻撃によって敵狙撃者は傷ついていた。特に足が速いというわけではなく廊下の行き止まりまで追い詰めることに成功する。
敵狙撃者が転がす大樽をGacruxのワイヤーウィップが破壊。呼吸を合わせるかのようにシャルルがデリンジャーを叩き込んでいく。
敵射撃者も銃器で反撃。薄暗い船内で銃弾が飛び交い、火花が散る。ワイヤーウィップが次々と障害物を壊すことで、やがて敵狙撃者は隠れるところがなくなった。
「もしかしてその格好、海賊なのカナ?」
「黒幕なら名乗りでてはどうですかねぇ?」
二人がいくら話しかけても敵狙撃者からの返事はない。
その直後、船体の震えと同時に轟音が鳴り響く。まもなく床に海水があふれ出す。檜ケ谷樹の攻撃によって幽霊船の側板に穴が空いたための浸水である。
ちなみに二人はこうすることを檜ケ谷樹から事前に教えてもらっていた。だからこそ潜り込む前に躊躇したのである。覚悟の上での行動だ。
シャルルが援護射撃を担当することに。Gacruxが武器をシュテルンシュピースに持ち替える。
シャルルの銃撃に誘われて敵狙撃者も撃つ。わずかに空いた間、飛びだしたGacruxの刺突一閃による突きが敵狙撃者の喉元に深く突き刺さる。
敵狙撃者が塵となって消えていく。歪虚の一味である堕落者で間違いなかった。そのまま放置して船内からの脱出を図る。
ところが船倉室の扉周辺で骸骨雑魔が群れていた。一撃で倒せるが数が多くて前に進むことができない。そうこうするうちに幽霊船が傾いていく。
そのときである。船倉室の扉を抜けるようにして一条の稲妻が走り、骸骨雑魔がまとめて消滅していった。残っていた骸骨雑魔も次々と大太刀の獲物として処理される。
「急ぐのでございます」
「は、早くにげないと!」
弥栄と水流崎が駆けつけてくれた。Gacruxとシャルルは幽霊船内から無事脱出を果たす。弥栄は置き土産として燃えさかる松明を船倉室内にあった布団に投げてから立ち去る。
「いやー、なんというか、こんな状態はファンタジーだね」
幽霊船の甲板上に残る骸骨雑魔は檜ケ谷樹が魔導拳銃で倒していた。おかげで退路が確保されている。
勢いをつけたハンター達が船縁を強く踏み込んで跳んだ。幽霊船に移っていた仲間全員が輸送帆船へと戻るのだった。
●
「風が吹いています」
「凪は終わったようですね」
最上風が被っていた帽子を抑え、エルバッハの長い髪が靡く。二人は甲板に落ちていた骨を拾って海へと投げ捨てる。
安全が確認されたので出入り口が開放された。頑丈な打ちつけが剥がされて船乗り達が甲板に出てくる。
自己回復できる者はそれで傷を癒やす。そうでない者は最上風による注射器乱舞によって治療が行われた。
「これで大丈夫ですよ」
並木怜は治療を手伝う。怪我をした船乗りの腕に包帯を巻いてあげた。
輸送帆船に残った骸骨雑魔を殲滅したのは並木怜、エルバッハ、最上風の成果だ。
「とりあえず、ご飯にしましょう。お腹ぺこぺこで餓死寸前です」
注射器のハリネズミとなった患者達を横にして最上風がお腹を抑える。夕食時に狙われていたので誰もがお腹を空かせていた。
「そういうと思ったてな」
船内に潜んでいた料理人が海鮮のパエリアと魚介スープを用意してくれていた。少し温め直すだけですぐに食べられる。
「よく頑張ってくれたぞ!」
船長からの慰労として木箱が開けられる。林檎と梨が食後のデザートとして振る舞われた。
「ごっこ遊び君にいってやりたかったな。君は海賊のなんたるを解ってない……! とかね」
水流崎は美味しそうに目を細めながら梨を囓る。
「格好は海賊風だったヨ。憧れていたのは間違いないだろうネ」
シャルルは林檎を頬張った。
「この梨、甘くて美味しいですね」
「貴族に献上されてもおかしくない見事さですね」
デザートは別腹として最上風とエルバッハもしっかりと頂いた。
「海賊に憧れて、それで間違ってしまったんですね。きっと」
「それで歪虚になるなんて……いえ、何でもありません」
少し遅れて食べ始めたGacruxと並木怜はまずパエリアを味わった。
「先程燃えさかる幽霊船が沈没するところを望遠鏡で確認したでございます」
「これで一安心ですね。どうです? スープをもう一杯」
肩の荷がおりた弥栄と檜ケ谷樹も食事を楽しんだ。
輸送帆船が港街【ガンナ・エントラータ】に寄港したのはそれから二日後のことである。
港に泊まっている商船は少なかった。港の者達に聞いてみると幽霊海賊船の噂で尻込みしていた商船持ちが多かったようである。そのせいか、この時期の市場は商品に飢えていた。林檎と梨が詰まった木箱はわずかな時間で売り切れてしまう。
「おかげで助かったぜ!」
ハンター一行は船乗り一同に見送られて帆船を下りる。支部へ立ち寄り、転移門にて帰路に就くのだった。
輸送帆船はとても騒がしい。幽霊船が迫る現在、少しでも策を打とうとしていた。
「大砲窓と甲板の開閉扉はお願いするね」
「内側にもバリケードを用意してくださいませ」
甲板室の水流崎トミヲ(ka4852)と弥栄(ka4950)が船内の船乗り達に声をかけてから扉を閉じる。内側と外側の両方から板を宛がい、玄翁と釘で打ちつけていく。
敵がどのようなものであれ船内に突入されたら対処のしようがなかった。甲板上に残るのはハンターと戦闘要員の船乗りのみである。
船倉室前にもバリケードを用意。並木 怜(ka3388)と檜ケ谷 樹(ka5040)が船乗り達と一緒に木箱を積み上げていく。こちらも動かないよう釘で板を打ちつける。
「幽霊船というからには幽霊がいても不思議ではないからね」
並木怜は船倉室内の様々な場所に四神護符を貼っておいた。効くか定かではないが通り抜け能力を危惧してのことだ。
並木怜は不安げにため息をついた船乗りの肩に手を置く。
「臆病者の目には、常に敵が大軍に見える、と、昔の武将は言いました。あなたの目にはどう映りますか?」
「俺、こうした戦いは初めてで」
「大丈夫です。バリケードを守ってくれれば後は私たちが何とかします」
試作型魔導銃「狂乱せしアルコル」に触れながら柔らかい笑みを零した並木怜だった。
貨物を船倉へ降ろすためにある甲板開閉扉の封鎖も行われている。
「板を張り終えたら、バリケードを用意してください。それに砲台の扉を封印するのも忘れないように――」
「わかりました!」
開閉扉越しにGacrux(ka2726)が船内に残ってもらった船乗り六名へと声をかける。もしもに備えて船内に残ってもらったのである。更に甲板上にある樽等の物品を移動させて開閉扉を見つかりにくくしておく。
エルバッハ・リオン(ka2434)は幽霊船が望める右舷にて瞼を半開きにする。霧向こうにぼんやりと浮かぶ帆船から皆殺しを賞賛する歌声が今も届いていた。
「幽霊船ですか。まあ、幽霊船だろうが、海賊船だろうが、討ち取るだけですね」
歌で敵なのは確定済み。覚醒したエルバッハは躊躇なくファイアーボールを叩き込んだ。
幽霊船を包み込むようにして炎が爆散。これによって耳障りな歌声は止んだ。炎弾は範囲攻撃なので近すぎると使えなくなってしまう。今のうちにすべてを撃ち込んでいく。
その様子をマスト上部にある檣楼から最上 風(ka0891)とシャルル=L=カリラ(ka4262)が望んでいた。
「幽霊船はあまり壊れていませんね。機関部に直撃して、そのまま沈んでくれたら、楽なんですがねー」
「威力のすべてが伝わってない感じカナ? でも甲板にいる敵には効果絶大だよネ」
二人が話した通り炎弾の威力は船体には限定的なようだ。それでも三本立っていたマストのうち一本が折れた。また甲板に待機していた海賊らしき存在も手傷を負ったはずである。
「海賊の正体はスケルトンの、骸骨の雑魔ですね」
檣楼に上ってきたGacruxが幽霊船を望遠鏡で確認して海賊の正体が判明した。装備されていた砲台は酷い有様で使い物にはならなそうである。
「海賊……いいよネ! 山賊と違って野蛮で泥臭いカンジじゃなくて……こう、クールでさ、スマートなんだケド、ワイルドで……」
シャルルは仲間二人の前で瞳を輝かせたがすぐに曇らせる。
「こんなコト言うと……アタマを疑われるケド…ボクは海賊って憧れなんだよネ。だからこそ…海賊を騙る幽霊船なんて存在自体が許せナイ」
最後に『消えてくれル?』とシャルルは強い眼光で呟いた。
●
「ははー……幽霊船。あったなあ、そういうゲーム。特定の時間に船に乗っていると……あの時は怖かったなぁ……」
水流崎はマストを上りながら独り言を呟く。Gacrux、シャルルは先程下りたので檣楼で最上風と二人になった。
「……でも、僕もいい年した大人だしね。ゾンビやゴーストくらいなんてことはないさ」
「膝、笑っていますよ」
最上風に突っ込まれた水流崎は笑って誤魔化す。
「うーん、絶景かな、絶景かな……。さ、て……始めよう。化けてでないでくれよ!」
エルバッハに続いて水流崎の炎弾も霧濃い闇の世界を真っ赤に焦がす。
「ふはは! 雑魔がゴミのようだ!」
爆散の輝きの中に甲板から吹き飛ぶ複数の影が浮かび上がった。ダメージが蓄積された残り二本のマストに亀裂が走り、激しく音を立てながら倒れていく。巻き添えになった骸骨雑魔もかなりにいたはずである。
「ここからなら届くでしょう」
甲板に下りた最上風が船縁へと立つ。間近まで迫った幽霊船にセイクリッドフラッシュの波動を放った。中心にしたのは幽霊船の船倉室付近。船内から甲板へ躍りでようとしている骸骨雑魔が激しい衝撃に奇声をあげる。
光の波動と炎弾の爆散。霧は未だ濃かったものの、これらの輝きで幽霊船の様子が人々の目に晒された。
三連マストの巨大帆船上にスケルトンの雑魔が蠢いている。噂通り、幽霊海賊船の名にふさわしい情景が広がっていた。
乱暴な接舷によって船同士が激突。輸送帆船側も大きく揺れる。
デリンジャー「デッドリーキッス」で銃撃していたシャルルが身を屈めた。まもなくジェットブーツの勢いで高く舞い上がる。降り立ったのは幽霊船甲板室の屋根の上だ。
「これでどうダイ?」
彼が出現させたデルタレイの輝く三角形から三本の光条が放たれた。屋根によじ登ろうとしていた骸骨を貫いてバラバラに吹き飛ばす。
(……何だか統率が取れ過ぎてナイ?)
シャルルは戦いながら疑問を感じる。甲板室に集る一団と接舷中の船へ移ろうとしている一団の戦闘行動はくっきりと分かれていた。
普通なら入り乱れて混乱するはず。それを期待しての特攻だったが、その意味での目論見は途絶える。但し有利な条件で敵を予め減らすことには成功していた。
折れたマストの上に移動して攻撃を再開。光条すべてを放ち尽くしたところでジェットで跳んで帰還する。
接舷を待たずに幽霊船側から渡り板がいくつも架けられた。なだれ込もうとする骸骨雑魔共。先手必勝を自らに付与した弥栄が大太刀「物干竿」を構える。
「覚悟はよいで御座いますね」
大太刀の長い刀身で渡り板を進んできた骸骨雑魔を薙ぎ払う。次々と暗い海中へ落ちていく。
まもなく接舷は果たされたが何かしらで二隻を繋げているわけではない。凪とはいえ船の距離は微妙に変わっていく。近いときには渡り板を使わずに骸骨雑魔が直接乗り込んできた。
「ほらほら、お前の相手はそちらでは無いでしょう。この私と遊んではくれないのですか」
薙ぎ払いでだけでなく電光石火で骸骨雑魔の逃げ道を断って刃を煌めかせる。仲間の範囲攻撃のおかげで殆どが一度の攻撃で塵へと還っていく。極一部は骨として甲板に散らばった。
「そこの船乗りさん、風と一緒にサボリ‥‥ではなく、回りに立って護衛してくれませんか?」
甲板室のバリケード内で最上風は護衛を頼んだ。レクイエムはこの位置からでも幽霊船まで充分に届く。幽霊船の甲板に密集する骸骨雑魔共に向けて鎮魂歌を唄う。
ぐらりと身体を揺らして倒れていく骸骨雑魔共。一部はすぐに目覚めるが、しばらく動かない個体もかなりいる。
数にものをいわせて突撃されるのが輸送帆船側にとって一番の危険。それをレクイエムで未然に防いでいった。
(頭はあまりよさそうではないのにね。どうしたんだろうね)
檜ケ谷樹は帆船後部の見晴台から身を乗りだして右舷側部を見張っていた。
二隻の砲台位置は似通っているので、接舷していると比較的乗り移りやすい。いくら頑丈に開閉扉を封印したとしても弱点には違いなかった。事実、幽霊船の砲台部分にいる骸骨雑魔共が閉じた扉を破壊しようと斧を振るっている。
それを許すつもりがない檜ケ谷樹はエレクトリックショックで時間を稼ぎつつ、頭や胸部を魔導拳銃「ペンタグラム」で狙って撃ち倒していく。
そしてもう一つ、すでに傷んでいる幽霊船側板に銃弾を撃ち込んでいった。喫水線の間近なので穴が空ければ浸水間違いなしである。
エルバッハは輸送帆船甲板室の屋根上に陣取っていた。味方の背後へ忍び寄る骸骨雑魔を狙い、ウィンドスラッシュとアースバレットを使い分けて撃ち倒す。そこへシャルルが現れた。
「さっきトミヲと話したんだヨ。この霧を作ったのは誰かなのかって」
「確かに不思議ですね。スケルトンにその能力があるとは考えにくいです」
「だよネ。で、歪虚か堕落者がどこかにいるんじゃないかって思うのサ」
「なるほどです。一理あります」
会話の途中で二人が激しく身体を動かす。飛んできた多数の銃弾を避けるためだ。
その様子をGacruxは離れた位置から目撃していた。即座に望遠鏡で弾が飛んできた方角を確認。幽霊船の折られた最後尾のマスト裏に何者かが隠れたのを目視する。おそらくその者が狙撃したに違いない。
「敵狙撃者は幽霊船の最後のマストの辺りにいます!」
そう叫びながら彼は幽霊船へと飛び移った。特殊強化鋼製ワイヤーウィップをマストへと巻き付けて瞬時に敵狙撃者へと近づく。
エルバッハの風刃による援護攻撃おかげで敵狙撃者は動けない。シャルルもジェットブーツで上空からマストへと近づいた。
焦れた敵狙撃者が攻撃を受ける覚悟で飛びだして銃弾をまき散らす。そして船尾へと走っていく。
(攻撃を一点に集約して)
仲間達の状況を把握していた並木怜が膝射で狙い定める。
遠距離からの重い精密射撃の怖さは並木自身がよくわかっていた。優先して倒すべき相手として敵狙撃者を魔導銃で撃つ。急所は外れたものの腹部に命中。二射目を肩に当てたところで幽霊船内へ逃げ込んだ。
暗い船内に一瞬躊躇したものの、Gacruxとシャルルは船内へ飛び込む。姿を見失ったらこちらが絶対的に不利。Gacruxが所持していたLEDライトで照らし続けて追いかける。
これまでの味方の攻撃によって敵狙撃者は傷ついていた。特に足が速いというわけではなく廊下の行き止まりまで追い詰めることに成功する。
敵狙撃者が転がす大樽をGacruxのワイヤーウィップが破壊。呼吸を合わせるかのようにシャルルがデリンジャーを叩き込んでいく。
敵射撃者も銃器で反撃。薄暗い船内で銃弾が飛び交い、火花が散る。ワイヤーウィップが次々と障害物を壊すことで、やがて敵狙撃者は隠れるところがなくなった。
「もしかしてその格好、海賊なのカナ?」
「黒幕なら名乗りでてはどうですかねぇ?」
二人がいくら話しかけても敵狙撃者からの返事はない。
その直後、船体の震えと同時に轟音が鳴り響く。まもなく床に海水があふれ出す。檜ケ谷樹の攻撃によって幽霊船の側板に穴が空いたための浸水である。
ちなみに二人はこうすることを檜ケ谷樹から事前に教えてもらっていた。だからこそ潜り込む前に躊躇したのである。覚悟の上での行動だ。
シャルルが援護射撃を担当することに。Gacruxが武器をシュテルンシュピースに持ち替える。
シャルルの銃撃に誘われて敵狙撃者も撃つ。わずかに空いた間、飛びだしたGacruxの刺突一閃による突きが敵狙撃者の喉元に深く突き刺さる。
敵狙撃者が塵となって消えていく。歪虚の一味である堕落者で間違いなかった。そのまま放置して船内からの脱出を図る。
ところが船倉室の扉周辺で骸骨雑魔が群れていた。一撃で倒せるが数が多くて前に進むことができない。そうこうするうちに幽霊船が傾いていく。
そのときである。船倉室の扉を抜けるようにして一条の稲妻が走り、骸骨雑魔がまとめて消滅していった。残っていた骸骨雑魔も次々と大太刀の獲物として処理される。
「急ぐのでございます」
「は、早くにげないと!」
弥栄と水流崎が駆けつけてくれた。Gacruxとシャルルは幽霊船内から無事脱出を果たす。弥栄は置き土産として燃えさかる松明を船倉室内にあった布団に投げてから立ち去る。
「いやー、なんというか、こんな状態はファンタジーだね」
幽霊船の甲板上に残る骸骨雑魔は檜ケ谷樹が魔導拳銃で倒していた。おかげで退路が確保されている。
勢いをつけたハンター達が船縁を強く踏み込んで跳んだ。幽霊船に移っていた仲間全員が輸送帆船へと戻るのだった。
●
「風が吹いています」
「凪は終わったようですね」
最上風が被っていた帽子を抑え、エルバッハの長い髪が靡く。二人は甲板に落ちていた骨を拾って海へと投げ捨てる。
安全が確認されたので出入り口が開放された。頑丈な打ちつけが剥がされて船乗り達が甲板に出てくる。
自己回復できる者はそれで傷を癒やす。そうでない者は最上風による注射器乱舞によって治療が行われた。
「これで大丈夫ですよ」
並木怜は治療を手伝う。怪我をした船乗りの腕に包帯を巻いてあげた。
輸送帆船に残った骸骨雑魔を殲滅したのは並木怜、エルバッハ、最上風の成果だ。
「とりあえず、ご飯にしましょう。お腹ぺこぺこで餓死寸前です」
注射器のハリネズミとなった患者達を横にして最上風がお腹を抑える。夕食時に狙われていたので誰もがお腹を空かせていた。
「そういうと思ったてな」
船内に潜んでいた料理人が海鮮のパエリアと魚介スープを用意してくれていた。少し温め直すだけですぐに食べられる。
「よく頑張ってくれたぞ!」
船長からの慰労として木箱が開けられる。林檎と梨が食後のデザートとして振る舞われた。
「ごっこ遊び君にいってやりたかったな。君は海賊のなんたるを解ってない……! とかね」
水流崎は美味しそうに目を細めながら梨を囓る。
「格好は海賊風だったヨ。憧れていたのは間違いないだろうネ」
シャルルは林檎を頬張った。
「この梨、甘くて美味しいですね」
「貴族に献上されてもおかしくない見事さですね」
デザートは別腹として最上風とエルバッハもしっかりと頂いた。
「海賊に憧れて、それで間違ってしまったんですね。きっと」
「それで歪虚になるなんて……いえ、何でもありません」
少し遅れて食べ始めたGacruxと並木怜はまずパエリアを味わった。
「先程燃えさかる幽霊船が沈没するところを望遠鏡で確認したでございます」
「これで一安心ですね。どうです? スープをもう一杯」
肩の荷がおりた弥栄と檜ケ谷樹も食事を楽しんだ。
輸送帆船が港街【ガンナ・エントラータ】に寄港したのはそれから二日後のことである。
港に泊まっている商船は少なかった。港の者達に聞いてみると幽霊海賊船の噂で尻込みしていた商船持ちが多かったようである。そのせいか、この時期の市場は商品に飢えていた。林檎と梨が詰まった木箱はわずかな時間で売り切れてしまう。
「おかげで助かったぜ!」
ハンター一行は船乗り一同に見送られて帆船を下りる。支部へ立ち寄り、転移門にて帰路に就くのだった。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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質問卓 Gacrux(ka2726) 人間(クリムゾンウェスト)|25才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/09/26 23:31:12 |
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ゆうれいせん 水流崎トミヲ(ka4852) 人間(リアルブルー)|27才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/09/27 08:05:29 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/09/27 01:15:37 |