• 聖呪

【聖呪】茨の門

マスター:赤山優牙

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/09/30 19:00
完成日
2015/10/05 17:47

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●軍師騎士が見た物
 グラズヘイム王国騎士団は大きく3つに分かれている。
 王都や王家直轄領の治安維持が中心の「白の隊」。
 国の内外問わず、遠い戦域へ遠征する事が中心の「赤の隊」。
 そして、騎乗だけの戦闘のみならず、築陣や工作等も得意な「青の隊」。
 騎士ノセヤは「青の隊」所属の騎士だ。父と兄は数年前の歪虚襲撃の際、国王と共に戦死している。文官肌であったノセヤは、家督を継ぐ形で騎士となった。
「まさか、王国内を飛び回る事になるとは……」
 林の中を慎重に馬を進める、ノセヤ。お世辞にも騎乗が上手いとは言えない。
 昨年、王国を襲った歪虚の襲撃後から数々の献策が用いられ、『軍師騎士』と呼ばれているが、ノセヤ自身は、その呼び名が好きではない。彼は作戦を立案するも、実行は別の者が行っており、中には、実行者の機転や工夫で、作戦が成り立ったり、成功していたからだ。
「なんだろう?」
 ノセヤが気がついたのは、不自然に木々が伐採された跡であった。
 出発地である王国北部の街ウィーダから、フォモール大街道に至る近道として、ノセヤは林を抜けていたのだ。この近くに人が住む民家は無い。
「……となると、亜人か」
 王国北部、大峡谷から溢れだした亜人達は南下を始めている。
 もしかしたら、ここにも亜人が居てもおかしくはないかもしれない。
 ノセヤは馬から降りると、周囲を慎重に調べ始めた。
 それなりの量の木々が伐採された様だ。奥に進むノセヤの歩みがある場所で止まった。遠く、視線の先に、あるものが見えたのだ。
「あれは……なんだ? 櫓でも組んでいるのか?」
 周囲には亜人らしき者も複数いるようだ。
 確認する為、ノセヤは息を殺して静かに林の中を進んだ。

●茨の門
 茨小鬼のデナバンは、『業火の禍』ダバデリの配下だ。
 得意なのはマテリアルを利用した術式や、人間の道具の解明や、群れでの生活に役立つ発明などである。
「実験を開始する!」
 デナバンの前には、それなりの大きさの門が立っていた。
 門の奥になにかがあるわけではない。ただ単に、『門』なのだ。
 その門には、至る所、茨の様な植物が絡めてある。『門』が眩い光を発したと思ったら、門の中の空間が光だす。
「よし、行け!」
 鞭でビシっと地面を叩く。
 怯えた様子でゴブリン達は光り輝く門の中へと入って行く――はずなのだが……。


 ゴツン!


 先頭のゴブリンが光の壁にぶち当たると、頭を抱える。
 そこへ、後続のゴブリン達が勢い余ったまま、ぶつかり、ゴブリン達は重なる様に倒れた。


「ええぃ! さっさと、どけ!」
 鞭を振るい、一番上に転がったゴブリンを無慈悲に叩くと、ゴブリン達は奇声をあげて逃げる。
 デナバンが行っていたのは、『転移門』の実験であった。
 大量のマテリアルとデナバンの術式を持ってすれば、『門』を構築する事ができるのではないかと思っていたのだ。
 ただ、幾度となく実験をしても、『門』としての機能が発揮できない。
「やはり、無理か。しかし、まだ、実験の余地はある」
 まだまだ、実験する事は多くある。
 例えば、入口と出口を別々に作るとか……。
「『門』が完成した暁には、我が主、ダバデリ様の炎の軍団による奇襲作戦が実行できるのに」
 悔しそうにデナバンは呟く。
 王国北部から王都まではかなりの距離がある。その間、徒歩で移動となるとかなりの労力を要する。
 だが、『門』があれば、一挙に解決できるのだ。それだけではない。油断している人間の隙を突いて、都に攻め入る事も可能なのだ。
「引き続き、実験を継続するぞ」
 デナバンは鞭を振り上げて宣言した。

●伝書鳩
「『転移門』による、奇襲作戦か」
 一部始終を観察していたノセヤは静かにその場を離れた。
 昨年の歪虚襲来時の事を思い出していた。王都の南側に突如として現れたベリアルと配下の歪虚。それらは、歪虚版の『転移門』による奇襲であった。亜人がこの事を知っているかどうかはわからない。
 しかし、『転移門』を使用しての奇襲作戦は、実行されれば、王都は甚大なる被害がでるはずだ。王城と王女は、もっとも深い街区なので安心だが、外側の街区はひとたまりもない。
「大勢の市民を危険に晒すわけにはいかない」
 馬から降りた所まで戻ったノセヤは、荷物の中から小さい籠を取りだした。
 中には、真っ白な鳩が一羽。長距離の連絡用にと、用意していたのだ。
「今から最寄りの街に戻って、騎士団を動かすより、ハンターに協力要請を出した方が早いはず」
 亜人達の実験段階がどの程度なのかは、さすがのノセヤにも分からなかった。
 できるだけ急いだ方が良いだろうと判断し、彼は一部始終を書き込んだ書面を、鳩の足に括りついている筒の中に入れる。
「頼むぞ。多くの人の命がかかっている。必ず、届けてくれ、ラ・ネージュ」
 両手で優しく包み込んでから、ノセヤは、放鳩したのであった。


 彼方へと飛び去っていった伝書鳩を見送ってから、ノセヤはテント道具の中から工具を取りだしていた。
 万が一、誰も救援に来なければ……その時は、単独で、『茨の門』に挑むつもりなのだ。
「知恵を絞って戦う。それが、青の隊だ」

リプレイ本文

●探索A班
 3人のハンターが林の中を進む。
 先頭を行くのは、エリス・ブーリャ(ka3419)だった。彼女は、トランシーバー片手に、木々が切られた場所から亜人の痕跡を探していた。
「イカルガちゃん、そっちの様子はどお? エルちゃんは亜人っぽい足跡を追跡してるってカンジぃ?」
 事あるごとになにかと別動班に連絡をいれる。
 もちろん、周囲への警戒を怠っているわけではないのだが……。
「エルちゃんだって、寂しい時はあるんだしぃ」
 会話の内容がだんだんと任務外から外れているような気もして、ストゥール(ka3669)が無駄口を注意するように冷たく言い放った。
「愛の語らいは後でしてくれないか」
「はぁ~い。それじゃ、また、変わった事があったら、連絡するねぇ」
 注意が効いたのかどうか、エリスがトランシーバーを離すと探索に集中し直した。その様子を確認しつつ、ストゥールも周囲の木々や地面を注意深く観察していた。
 林の中には亜人だけではなく、『軍師騎士』と呼ばれるグラズヘイム王国の騎士もいるはずだからだ。
(女三人寄ればやかましいとは言うものの、思ったより、静かだな)
 イーディス・ノースハイド(ka2106)が、そんな事を思いながら辺りを警戒していた。
 探索は仲間に任せ、意識は亜人との遭遇などに備えているのだ。
「それにしても、転移門など構築されては厄介極まりない。多少の無理はしてでも、敵の術者は仕留めたいね」
 依頼の内容を再確認するつもりで、イーディスが前を行く2人に声をかける。
「転移門を作られたら厄介だなー。CAMといい、敵に回ると途端に活躍しちゃうしさ。とにかく、門を敵に使われたら王国は大変だ」
 何度も頷きながらエリスが答えた。
 便利だったり強力なものだったりするほど、それが敵にまわると厄介な事この上ないものだ。
「亜人の知能もここまで来たか。敵としてもはや十二分に、不足はあるまい」
 ストゥールも答える。もし、本当に、転移門が完成するような事があれば、その技術・知能は恐るべき事である。
 というのも、ハンター達が普段利用している転移門は、神霊樹が存在しない場所に設置はできないからだ。単にマテリアルが豊富にあればできるという代物ではないし、どこにでも設置ができるというものでもない。
 もっとも、昨年、歪虚が王国に奇襲を仕掛けて来た際の、歪虚版転移門の例もあるのだが……。
「あれ、見て見て!」
 エリスが嬉しそうな表情を2人に向ける。
 指差す先に、木造で組んだ門のようなものが見えたからだ。
「確かに、『門』だね」
 茨が巻きついている門の周囲にいくつかの亜人の姿を確認しながら、イーディスは言った。
 その横で双眼鏡を覗きこむストゥール。
「別動班にも連絡だな……後は、向こうの班が、『軍師騎士』殿の探索か」
 ハンター達は林の中に潜んでいるという騎士と合流するつもりだからだ。

●探索B班
「亜人が、どんどん知力と技術を得てきているか……最悪でしか無い」
 吐き捨てるように言ったのは、カイン・マッコール(ka5336)だった。
 認識をそう変えなければならない事態だ。それまで、亜人とは知能はそれほど高くないというのが一般的だったからだ。
「転移門を亜人が作れるほどの技術力を身につけた。そう見てもいいのかもしれんな。今回も茨小鬼が絡んでいるのだろう」
 オルドレイル(ka0621)の言う通り、今回も茨小鬼が絡んでいる。
 王国北部の戦況は今の所、良くて、五分五分だ。ともかく、怪しげな企みは止めねばなるまい。
 カインは握り拳を作る。
「奴らは、弱いからこそ、とんでもない速度で成長する。ある意味では歪虚の何倍も脅威だ」
 『門』が完成してしまう前に、亜人を倒さなければ……より、多くの村や人々が危険だ。
「茨小鬼には特有の能力を持っている者もいるしな」
 研ぎ澄ませた感覚を周囲に放ちつつ、オルドレイルは、辺りを見渡しながらカインの言葉に頷き、そんな事を言った。
「北伐も開始されたというのに、王国も大変な事だねぇ」
 一休憩のつもりなのか、適当な切株に腰を落としてタバコに手を伸ばす鵤(ka3319)。
 辺境よりも北の大地。歪虚に奪われた土地に向けて、大規模な作戦が展開されている。
 王国にとっては、東方での戦いの時から二方面に戦力を割かれている状況だ。
「さて、ノセヤ君はどこにいるかなぁ~」
 別動班が『門』を発見して、そのまま様子を見てもらっている為、鵤らが騎士を探していた。
「『軍師騎士』か……」
 オルドレイルが呟く。
 彼女がいくつか受けた王国北部の依頼で名前は知っている。直接の面識はないが、彼が立案した作戦や依頼を受けていた。
 ゆくゆく、亜人とは縁がある者だなと思う。
「あれは、なんだろう」
 カインが林の先に、なにか構造物を見つけた。
 油断なく弓を構え――人影を見つけると、静かに降ろす。王国騎士団のサーコートを纏っている者だったからだ。
「どうやら、お目当てのノセヤ君みたいだねぇ」
 鵤はトランシーバーを手に取った。
 別動班へ連絡し、合流を呼び掛ける為だ。

●軍師騎士
「皆さん、依頼を受けて下さり、また、私を探して下さり、ありがとうございました。グラズヘイム王国騎士団青の隊所属の騎士、ノセヤと申します」
 各自、名乗ったハンター達に向けて深々と頭を下げてる『軍師騎士』。
 見るからに細い身体で、騎士というより、アークエルスの魔術師のようだなと、鵤はぼんやりと思った。もっとも、彼の感覚は半分正しい。ノセヤはマギステルだからだ。
「おっさんから見るに、これは、投石機かなぁ?」
「その通りです、鵤さん。なにか力に成れればと思い、造っていました」
 小さいながらも、それなりの大きさの石を射出する事は可能なようだ。
 即席とはいえ、こういうのを作れるというのは、さすが、工作を得意とする青の隊と言った所か。
「ノセヤくん、ここは大活躍して手柄を取っちゃおう!」
 エリスが特に意識したわけでもなく、騎士の背中をバンバンと叩く。
 それだけで、よろめく騎士。ひょろいにも程があるだろう。
「騎士も色々なんだな」
 優男という言葉ですらも似合わない頼りなさそうな騎士の姿にオルドレイルが小声で呟く。
「騎士とは……姿形という事ではないという事さ」
 元グラズヘイム王国騎士団所属従騎士であるイーディスがオルドレイルの言葉に応える。
 様々なタイプな騎士がいる事は不思議ではないはずだ。主君であるシスティーナ王女に忠誠を誓い、王国と民を守る者であるに変わりはない。
「ノセヤ氏の援護の元、門を破壊するのですね」
 丁寧な口調のカインの台詞に騎士は頷いた。
「そうなりますね。皆さんには、門近くで潜んでもらい、まずは、私から投石を開始します。敵は、何事かと戦力を二分するでしょう。そこを強襲して下さい」
 軍師騎士からのシンプルではあるが適切な作戦にハンター達は感嘆とした。
 『門』と敵指揮者への攻撃を優先するつもりであったが、具体的な作戦立案をしていなかっただけに、ノセヤの提案はありがたいものだった。
「それであれば、ノセヤ殿は、これを使うといい」
 騎士に自身のトランシーバーを渡したのは、ストゥールだった。
 ノセヤはそれを両手で丁寧に受け取る。
「ありがとうございます」
「『軍師騎士』の力、見せてもらいたいからな」
 そんなやり取りを見て、エリスが咳払いをしてから軽口を叩く。
「愛の語らいは後でしてくれないか~」
 その言葉に、ノセヤが慌ててなにやら言い訳したのであった。

●茨の門
「ここから見える太陽の位置と、門への方角と距離ねぇ~。おっさんが見るに……」
 鵤がトランシーバーでノセヤと連絡を取りながら、門への距離を目視する。
 後方の林の中で投石機を操作しているノセヤから連絡を受けて答えているのだ。動かない門を狙うといっても、見えない位置からの射撃である。念には念を入れているのだろう。
 程なくして、投石開始の合図がもたらされると、ゴォっと鈍い音を立てながら一抱えはある石が飛翔してきた。
「命中。さすがだな、ノセヤ殿」
 ストゥールはライフルを構えて潜みながら、その様子を目撃した。
 狙い違わず、初撃から命中したのだ。偶然なのか、それとも、計算した事であるのか。
「読み通り来た」
 弓を引き絞るカイン。
 軍師騎士が予想した通りに、亜人のうち、数体が石が飛来した方向に向かってくる。
「では、こちらも作戦に移るとするか」
 オルドレイルが刀を構えた。
 一気に門まで突入するつもりなのだ。
「私は指揮官に向かうさ」
 柄に雄々しい装飾が施された金色の刀身の剣を静かに引き抜き、タイミングを計るイーディス。
 門の破壊も大事だが、指揮していると思われる亜人を狙っていた。ストゥールのライフルの銃口もそちらを向いている。
 奴を逃せば、再度、門の研究をする可能性があるからだ。
「世界の危機も、歪虚も、僕はどうでもいい。お前たちを放っておけば、村が滅びる」
 引き絞っていた矢を放物線を描くように放つカイン。
 門近くにいた亜人に突き刺さった。
「おっさん厨房にいらっしゃい~」
 林に迫って来た亜人達に向かってファイヤスローワーを使って一掃したのは鵤だった。
 炎のマテリアルに焼かれて、亜人達は大地に転がる。
「よし、今だ!」
 オルドレイルの合図と共に前衛組が一気に突撃する。
 それを支援するように、後方からストゥールの銃撃。
「逃げられるとでも思うなよ」
 指揮官と思わしき亜人を狙撃したが、一撃で仕留める事はかなわなかった様だ。傷に耐えながら、なにか術式を唱えている。
 そこへ、門周辺の上空に飛びだす一つの影。
 エリスが機導術で飛び上がっていたのだ。
「いつもニコニコ這い寄る混沌! 終末ヒロイン機導戦士エルちゃん参上!!」
 上空でマテリアルの光り輝く三角形を形成すると、それぞれの頂点から光の筋が対象に向かって伸びる。
 門と指揮者、他の亜人にそれぞれ放たれた光。
「お、おのれ……まだ、研究途上というのに……」
 亜人の指揮官であるデナバンは、ストゥールの銃撃とエリスの機導術によって崩れ落ちた。
 茨小鬼ではあるが、耐久力があるわけではない。この亜人は特殊な術式を発動するだけで精一杯だった。
「門は時期に、爆発、する。まとめて、死ね!」
 そう言い残し事切れた。
「爆発する……のだね」
 指揮官を斬りつける為に突撃していたイーディスが動きを止めて大型の盾を構える。
「状況は聞きました。確信はありませんが、発動物自体を先に破壊する事ができれば、爆発を防げるはずです」
 トランシーバーからノセアの声が響く。
 今から逃げてもどれだけの爆発規模があるか想像できない。ならば……。
「下がれよ、今回の相手はお前達ではない」
 オルドレイルが亜人を蹴散らしながら門に斬りかかった。絡められていた茨ごと、門の柱に切り込みが入る。
 それを邪魔するかのように亜人が取り囲んだ。
「ゴブリンは殺す。それだけだ」
 それをカインは矢を放って仕留める。
 突き刺さるだけの矢では門の破壊に向かないからだ。ならば、仲間が門への攻撃に集中できる様に亜人を撃つのみ。
「おいおい、おっさんに無理させるんじゃねえよ?」
 ゆっくりと距離を詰めながら機導術を放っていた鵤が門付近まで来た。
 そして、炎のマテリアルを亜人もろとも門に向かって放つ。
「もし、爆発するような事があれば、私の後ろに隠れるといいさ」
 頼もしい言葉でイーディスが、剣を大振る。
 門の柱が基礎からズレた。
「ここで、エルちゃん、渾身の攻撃でしょ!」
 希望という意味の名を与えられた機杖を振りまわし、宙に飛びあがったエリスが上空から機導術を放つ。
 門はもはやボロボロに崩れてきている。
「一匹だって逃がさないから」
 状況を見て不利と思ったのだろうか。士気が崩壊して逃げ出す亜人に対し、カインが矢を放った。
「盾になるつもりの様だが、させない」
 別の茨小鬼が投石から門を守るように立ち塞がるが、ストゥールが撃った銃弾は茨小鬼の脚に命中する。
 バランスを崩した所に、ノセヤからの投石が直撃。そのままの勢いで門にぶつかると、支柱の一つが折れた。
 それを機に、門は崩壊したのであった。

●戦闘終えて
 生き残った亜人や茨亜人を全て打ち倒し、ハンター達は崩れた門の周囲に集まっていた。
 そこへ、投石器を馬で牽引させながらノセヤが合流する。
「無事に破壊できてなによりです。敵の指揮官も倒せたようですし」
「それにしても、よく術式の事を知っていたな」
 騎士からトランシーバーを返してもらいながら、ストゥールが感心した様子で言った。
 それにノセヤは頭を掻きながら、全員を見渡してから、口を開く。
「実は……知っていたわけじゃないんです。すみませんでした」
 その言葉にエリスが目を丸くする。
「え? じゃ、もしかして、危なかったかもしれないカンジぃ?」
 申し訳なさそうに頷く騎士。
「……なるほど、そういう事か。さすが、『軍師騎士』だな」
「機転というか決断が良いのかだね」
 オルドレイルとイーディスがそんな感想をつく。
「結果的には目論見通りだったという事ですね」
 カインが亜人の死体を確認しながら、会話に入ってきた。
 タバコに火をつけながら鵤が適当な丸太に腰をかける。
「つまり、戦うか退くか迷ってしまう時間を作らず、勢いを保たせる為だったという事だねぇ」
 珍しい事でもないだろうと謂わんばかりに淡々と話すおっさん。
 ノセヤは再び頭を下げた。
「すみませんでした」
「いいよいいよ。気にしなくたってさ」
 ヘラヘラとした表情の鵤。
 結果的には、そのおかげかともかく、門を破壊できたのだ。
「そうそう。エルちゃんも気にしないよぉ。それよりさ、亜人の転移門はどんな感じなのかな?」
 その台詞に全員が門に注目する。
「転移門とはかけ離れているように私は見えるさ」
 イーディスは王都やリゼリオにある転移門と頭の中で比べていた。
「僕もそう思いますね。これで、跳べるのでしょうか」
 全ての亜人の息の根が止まっている事を確認したカインもやってきた。
「それでも、わずかでも可能性があるのであれば、潰すだけだ」
「その通りだ」
 オルドレイルの言葉にストゥールが力強く頷いた。
「今の段階なら問題外だったかもしれません。ですが、芽は早い内から摘み取っておくのが大事ですからね」
 締め括るようにノセヤが言った。
 技術とは何の拍子で転がるか分からない。もし、敵の指揮官の逃亡を許し……転移門が完成するような未来が訪れた時には、遅いのだ。有り得たかも知れない悲劇の未来を、人知れずハンター達は救った――のかもしれない。


 亜人が実験していた転移門と実験指揮をしていた茨小鬼をハンター達は粉砕した。
 『軍師騎士』は無事に林を抜けて、王都へと戻っていったのであった。


 おしまい

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MVP一覧

  • 混沌系アイドル
    エリス・ブーリャka3419
  • 毅然たる令嬢
    ストゥールka3669

重体一覧

参加者一覧


  • オルドレイル(ka0621
    人間(紅)|23才|女性|闘狩人
  • 鍛鉄の盾
    イーディス・ノースハイド(ka2106
    人間(紅)|16才|女性|闘狩人
  • は た ら け
    鵤(ka3319
    人間(蒼)|44才|男性|機導師
  • 混沌系アイドル
    エリス・ブーリャ(ka3419
    エルフ|17才|女性|機導師
  • 毅然たる令嬢
    ストゥール(ka3669
    人間(紅)|18才|女性|機導師
  • イコニアの夫
    カイン・A・A・カーナボン(ka5336
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
カイン・A・A・カーナボン(ka5336
人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2015/09/30 17:32:17
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/09/26 22:56:44