叩きのめせ ゾンビども

マスター:からた狐

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~20人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
3日
締切
2015/09/28 07:30
完成日
2015/10/13 15:27

このシナリオは3日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 それらは森の奥からやって来た。
 数は十五。年も性別も分かる限りではバラバラ。共通点は皆死んでおり、なのに動いているということ。
 仲良く異様な臭気を振りまき、おぼつかない足取りながら、倒れもせずに突き進んでいる。
 腐敗した身体は肉が垂れ、骨がむき出しになっている箇所もある。
 白濁した目は何を見るのか。そもそも、その目を持たず、ぽっかり穴が開いただけの奴も多い。
 だというのに。森のそばを通る道。交通量の多いその光当たる場所へと、彼らは進み続ける。
「きゃああああ!」
 気付いた人たちが悲鳴をあげ、方々に逃げ始める。
「ウ.ウアアアアアアア――」
 彼らに向けて声とも音ともつかない何かを叫びながら、汚らしい手を伸ばして、死人たちは走り出していた。


 ハンターオフィスに至急の連絡が入る。
「街道沿いにある森から、ゾンビの雑魔が出現。道行く人が襲われました。逃げ遅れた人が近くの水車小屋に立てこもり、救助を待っています」
 移動に便利な街道。足に自身のある者、馬などの移動手段を持つ者などは、異様な姿を見つけると即座に逃げた。
 つまり逃げ遅れたのはそういう移動手段を持たない――非力な女子供や老人など。
 ゾンビたちは逃げた人は追わず、今はこの立てこもった人たちを引き釣り出そうと、小屋の周囲で暴れている。
 水車小屋は石造りで頑丈には作られているようだが、出入り口は粗末な木の扉になっている。そもそも立てこもるには向いてはいない。
 粗末な木戸を中から必死に抑えているが、破られるのも時間の問題だ。
「中にいるのは子供含めても十名にも満たない数ですが、見捨ててはおけません。至急現場に赴き、このゾンビたちを討伐して下さい」
 閉じ込められた人たちを助けても、ゾンビたちが逃げたなら、またどこかで暴れるのに違いない。
 ゾンビたちが犠牲を出す前に。何としても食い止めなければ。

リプレイ本文

 森から現れたゾンビが、人々を襲う。逃げ遅れた人がいると聞き、ハンターたちは彼らが立てこもっている水車小屋へと急ぐ。
 襲撃からハンターオフィスに連絡。さらにハンターを集め、出撃し、駆けつけるその時間まで、一体どのぐらいの時間を費やすのか……。
「こういうのは間に合うと、映画じゃ相場が決まっているけど!」
 先を急ぎながらも、メル・アイザックス(ka0520)は不安を拭えない。
 虚構と現実は違う、というのも覚悟しなければならない。着いた先で生者が誰もいなかったという光景は見たくはないが、可能性としては無くはない。
 だがそれを、クライヴ・バンフィールド(ka4999)は軽く笑い飛ばす。
「状況は単純。事態はひっ迫。いやぁ、分かりやすい。細かく考える必要はない。考えてる時間も無い。それじゃあ行くとしましょうか」
 間に合うと判断したからこそ、オフィスも救出も含めた依頼を出したはず。
 救助を求める人がいる。それに何よりも倒すべき敵がいる。
 戦いを求める高揚を自覚しながらも、クライヴはそれに惹かれるように先を急ぐ。
 幸い、交通量の多い道沿いで事件は起きた。移動には困らず、すんなりと襲撃があった近くまで辿りつく。
「あの水車小屋ですよね。周りに人影……。いいえ、あれはゾンビです! あれがゾンビです!」
 目のいいミオレスカ(ka3496)が目を細めて確認すると、大きく体を震わせてその正体を口にする。
 近くを流れる川と、その流れを利用した水車小屋。その周囲で動く人影も見つけられた。
 遠目では牧歌的な光景にも見えた。周囲にいる人影も、多少のぎこちない動きは、負傷したからなどとも考えられる。
 しかし、駆けつけ距離を縮めるごとに、その異質さが分かってくる。骨や内臓をむき出しで平気な人間はさすがにいない。
 動くはずの無い死人たち。血の気の無い手を水車小屋に叩きつけている。
 薄そうな扉だが、開く気配はない。何かで中から押さえているのだろう。
 街道から水車小屋まで。ハンターたちはゾンビの群れへと距離を詰める。隠れて進む気も無い。
 近付いてくるハンターたちに、ゾンビたちも気付いた。一体、また一体と水車小屋から目を離し、ハンターたちの方へ向かってくる。
「……しかし、どうやって僕たちを把握しているのでしょうね?」
「医学の知識では計り知れないません。――けど。それを探るよりも、今は速やかにあるべき場所へお帰り頂かなくてはなりませんね」
 首を傾げるユキヤ・S・ディールス(ka0382)に、日下 菜摘(ka0881)も哀しげに目を細める。
「死後に為すのがこんな事では浮かばれないでしょう。ここで灰に還して差し上げます」
 ヴァルナ=エリゴス(ka2651)も胸を痛める。
 小屋の中にいる人たちを助けるのは勿論。雑魔として蠢くこの遺体たちもまた、安易に見捨ててはおけない。
 手心を加える気は無い。むしろ彼らをまた死へ戻すことこそ、彼らへの供養となる。


 ミオレスカは連れていた戦馬を待機させると、銀の髪から七色の光が溢れさせ、魔導銃「サラマンダー」にマテリアルを込めて放つ。
 屍たちとの距離はまだあるが、構わない。轟音と同時に弾は限界を超えて加速し、彼方の屍の肉を弾いた。
「ウアアアアアア……」
 悲鳴のような呻きのような。半端な声を上げて死人はのけぞり……何事も無かったようにまたゆっくりと歩いてくる。
 仕留めきれなかったことを今は悔やまない。それよりも相手が逃げなかったことにひとまずほっとする。
「火属性のサラマンダー。恐れてばらけられてしまうと、面倒ですからね」
 逃がしてはならない相手。纏まってかかってくれる方が断然やりやすい。
 水車小屋の扉は固く閉ざされ、ゾンビも一部がまだ群がっている。
 けれど、銃声は中まで届いたのだろう。
 小屋からはっきりとした声が聞こえてきた。
「お願い、助けて! 子供や怪我人がまだここに――きゃあ!!」
 上げた声は、ゾンビたちの注意も引いた。
 さらに激しくゾンビたちが扉を叩き出し、助けを求める声は悲鳴に変わった。
「やめなさい!」
 菜摘がホーリーナイトを放つ。飛んだ光がゾンビを撃ち、確実にダメージを与えている。それでも、ゾンビが動きを止める気配はない。
 回り込んでいたユキヤが、ゾンビの注意がよそに向けないよう、立ち回る。
「こちらにも構ってくれませんか。なかなかありつけない御馳走よりも、少々刺激的な味ですが、手っ取り早く食える方が良いのでは?」
 クライヴは円舞で眼前のゾンビたちを踊るようにすり抜けると、執拗に小屋にこだわる方のゾンビたちにバスタードソード「フォルティス」を叩きこむ。
「普段なら、背中からなど卑怯な真似はやりたくないのですが。今はえり好みしている場合ではありませんね」
 ヴァルナもとにかく注意を自分たちに向けるのが大事と、容赦なくハルバード「ヴァフラーム」を振り回す。ヴァルナ自身が纏う黄金の光は武器も包む。
 金の光と火の加護を纏った巨大な凶器は、ゾンビたちにとっても危険極まりない。
 無防備に背を向けていても構わない。何体いようとも構わず、ヴァルナは薙ぎ払い一閃。まとめて敵を払いのける。
 さすがに頭がすっからかんのゾンビでも、そこまで暴れられて無視できるものでもない。
 次々と標的を水車小屋からハンターたちに変え、襲い掛かって来る。
 ミオレスカは気を自分の方へと退きながらも、水車小屋へと一旦近寄る。隙見て扉に近付くと、中に呼びかける。
「ハンターです。安心してください。今、事態を解決していますので、ちょっとだけ、待っていて下さい」
「大丈夫。すぐに片付けますから」
 ユキヤからも優しい声がかかる。
「……はい!」
 中からの返事は短かった。
 扉を挟んで中の様子はうかがえない。けれど、絞り出すような声は震えていた。やがて、嗚咽のような響きが漏れ聞こえてくる。
 だが、安堵させるにはまだ早い。
「さしづめ冥土への先導役、か。……明るくないなァ」
 メルは深いため息を吐くと、一転、ゾンビたちを強烈に睨みつける。
 目先のゾンビが大きくのけぞっていた。身を起こす反動を利用して、何かの液体を撒き散らす。
 それが降りかかる前に、メルの全身が装甲のような幻影で覆われ、大きく跳躍していた。
 立っていた場所では秋の草が急速に萎れ、嫌な匂いが立ち込める。強酸だ。
「そう来るのは予測済みだよ! さあ、追いかけておいで!」
 瓢箪型の魔導機械・杭打「太陽針」を腰だめに構えると、ゾンビたちに向けて撃ち放つ。
 何体かに穴を開けると、メルはあっさり身を翻し、逃走するような姿勢を取った。
 合わせて、他のハンターたちもそれとなく、けれど確実に水車小屋から離れていく。
 そして、そんなハンターたちを追い、ゾンビたちも移動を始めていた。


 動き出した獲物に向かって、ゾンビたちも移動を始める。
 本能で動き回るような歪虚だ。ハンターたちの思惑を読む知性などない。目先の獲物に釣られて、戦場を移っていく。
 だが、誘導にも注意が必要。近付きすぎると襲われるし、離れすぎると興味を失い他の獲物を探そうとする。水車小屋に戻ろうとするゾンビには、ミオレスカが戦馬で駆けて回りこみ、自分たちへ集中させ直す。
 微妙な適度な距離を保ちながら、挑発を幾度か繰り返し。
 そして、水車小屋から十二分に引き離した。ゾンビが引き返してもハンターたちが大暴れしても、被害が及ぶことは無い。
「では。参りましょうか」
 クライヴが笑って身構える。他のハンターたちと共に、本格的な攻撃に転じていった。

「改めてお相手させていただきます。最後までお付き合い下さい」
 足を止め、迫るゾンビと向き合うと、菜摘は大きく息を吸った。
 歌い上げるレクイエム。鎮魂の言葉は死者にのみ届く。メロディに乗せて朗々と歌いあげると、ゾンビたちの動きがさらに遅くなった。
 菜摘はそんなゾンビの集団にあえて踏み込んでいく。ぎこちない動きのままでも、ゾンビたちは周囲を取り囲み、彼女に食いつこうとする。囲んだ中に生者がいないのを確かめると、菜摘はセイクリッドフラッシュを放っていた。
 広範囲に広がる光の波動。包まれた敵たちは、歪な声を上げて悶えている。
 それでもなお近付いてくる者には、ホーリーパニッシャーが容赦なく振る舞われた。
「同じ事を繰り返さない。一体とて逃がすつもりはありません」
 ユキヤも魔杖「スキールニル」を構えると、あぶれたゾンビを率先して始末にかかる。
 逃走するようならと戦馬を連れてきていたが、どうやら本当にその必要はなさそう。ならば不要な傷を与える必要も無いと、戦馬は一旦戦場から退ける。
「川で足が止まってくれたらと思ったのですけど、これなら行けますね。小屋を巻き込む心配ももうありません」
 ミオレスカは銃にマテリアルを込めると、次々と弾丸の雨が飛び散る。
 増した精度でゾンビたちが避けようもない。代りに威力が削がれているが、ゾンビを襤褸に変えるには十分。
 度重なる攻撃で感覚が狂ったか。ゾンビの一体がくるくると妙な動きをしている。
「さらにもう一発」
 さっさと倒すべきと、ミオレスカは再装填を行うと、きっちり狙いをつける。引き金を引く瞬間にマテリアルを乗せる。弾丸は一気に加速し、ゾンビの頭部を丁寧に貫いた。わずかな痙攣を繰り返した後に、力尽き、動かなくなる。
 しかし。
「嗚呼アアアァアウぁ――」
 他のゾンビが吠えた。虚ろな声が響き渡るや、倒れたはずのゾンビがまた蠢きだす。
 明らかに鈍くなった動きのまま起き上がると、今にもまた倒れそうな体を引き釣りながらハンターたちに黄色い爪を伸ばす。
「死んでもまた生き返る、ですか。……面倒だな。さすがゾンビという事かい」
 言葉とは裏腹、どこか楽し気にクライヴは身軽な体さばきでゾンビとの距離を詰めていた。
 大ぶりに振られたゾンビの腕をかいくぐる。勢い余って、ゾンビの腕が千切れて、あらぬ方向にすっ飛んでるが、それも気にしない。
 むしろ腕を失った好機。空いた胴体に向けて、バスタードソード「フォルティス」を振りぬく。
 ゾンビの体がくの字に折れた。敵をすり抜け、退路を断つ位置取りで向き直したクライヴだが、警戒の必要はもう無いと悟る。
「他のゾンビを呼び返す能力はあるようですが、返った方のゾンビのダメージはほぼそのまま。ヒーリングのような技が使えないようなら、もう一度死に追いやるのは難しくないですね」
 切り捨てたはずのゾンビが、また動き出そうとしている。
 起き上がる前に、クライヴは剣を敵の頭部に叩き込む。何度起き上がろうとしても、その都度また滅ぼすのみ。
 それでも、単純に敵の数が多い。群れ集うゾンビを払いのけても、その陰から別のゾンビが酸を吐いてかかれば、それだけでも結構な痛手だ。 
 クライヴはマテリアルヒーリングで治すが、その間にもゾンビはわらわらと襲い掛かって来る。
「甦る暇も無いように、手早く薙ぎ払ってしまえば」
 ヴァルナは守りを捨ててひたすらに攻め続ける。
 火炎のような光を纏ったハルバードが振るわれるごとに、その前にいたゾンビたちの体が激しく損壊。吹き飛んでいく。
 恐れを知らず――そもそもそんな感情ももう無いようなゾンビたち。けれども、ヴァルナの迫力に押され、その豪快に振られる武器に本能的にしり込みしている。
 逃走はしないが、避けるぐらいはする。それでふらふらと動いている内に、川辺にゾンビが追いつめられていく。
 そこにメルの溶融パイルが射出された。
「せめて最後は……人の灯りに焼かれて眠ろうかッ!」
 撃ち出されたマテリアルが炸裂・拡散。
 たちまちゾンビたちを冥土に送る熱波に変わる。
 すでにダメージが蓄積していたゾンビが次々と倒れた。倒れず踏ん張るゾンビには、何度でも熱波が降り注ぐ。肉が焦げ、崩れていくその体……。
「アアアアア――」
 それでもゾンビたちは表情も変えず。メルたちへと焼けた手を伸ばす。
 呼び起こすゾンビも、応えて起き上がろうとするゾンビも、すべてをまとめて火の中に。
「迷いで退場、土に返すのがわたしの責務です。魂の無い虚ろな器を放置しておいて、死者の尊厳を汚すわけにはいきません」
 取りこぼした相手には、菜摘がホーリーライトを放つ。
 
 確実に死者の動きが止まるまで。武器を振るい、技が使える限界まで、ハンターたちはゾンビたちを葬り続けた。


 倒れたゾンビが川へと落ち、水しぶきが上がった。水底に横たわる遺体は、もう起き上がる気配もない。
「流れて還る、か。感傷的になっちゃうよねェ。……相手がアレだと」
 敵の姿が消えたのを確認して、メルは何とも複雑な表情をして杭打を撫でた。
 蘇り、歪虚と化した死体。生前どんな相手だったかは知らないが、こんな破壊されるほどの悪行を積んで来たとも限らない。
「……今度は安らかに眠れますように」
 ヴァルナが遺体を前にひざまずくと、祈りを捧げる。
 雑魔と化してどのくらいか。すでに破損が酷く形を崩しており、おそらくそのまま消えるだろう。
 埋めるか燃やすかを考えていたミオレスカも、風葬に任せて、ただ今は祈る。
 死者への念も大事だが、それよりも大事なのは生きている者の安否だ。
 ユキヤは水車小屋に戻ると、ぼろぼろで掻き傷だらけの扉をノックする。
「もう大丈夫。全て終わりました。よく頑張りましたね」
 おそるおそると扉が開かれ、隙間から女性が少しだけ顔を出す。改めてユキヤが事情を説明すると、ようやく大きく開け放たれた。
 中は作業スペース程度。広くも無い場所に、怪我人が倒れ、子供たちが震えている。

 怪我をしている人には応急手当てをして、近くの街まで移動させる。
 その街では、ゾンビ出現の報告を受け、警戒態勢を取っていた。ハンターたちから事情を聞くと、胸をなでおろし、小屋にいた人たちを保護を約束すると負傷者の治療も請け負う。

 死者は死に。生者は穏やかな生活へ。
 その光景を見届けると、ハンターたちはオフィスへと報告に戻った。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 遙けき蒼空に心乗せて
    ユキヤ・S・ディールス(ka0382
    人間(蒼)|16才|男性|聖導士
  • 「ししょー」
    岩井崎 メル(ka0520
    人間(蒼)|17才|女性|機導師
  • 冥土へと還す鎮魂歌
    日下 菜摘(ka0881
    人間(蒼)|24才|女性|聖導士
  • 誓槍の騎士
    ヴァルナ=エリゴス(ka2651
    人間(紅)|18才|女性|闘狩人
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • 剣心一撃
    クライヴ・バンフィールド(ka4999
    人間(蒼)|35才|男性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/09/26 17:45:01
アイコン 単純で危急な依頼
クライヴ・バンフィールド(ka4999
人間(リアルブルー)|35才|男性|舞刀士(ソードダンサー)
最終発言
2015/09/27 17:43:51