ゲスト
(ka0000)
【深棲】海辺の村を覆う影
マスター:cr

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/07/29 12:00
- 完成日
- 2014/08/03 19:26
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●とある村にて
「やっとまた船を出せるな」
「畑仕事もいいけどよ、やっぱり男は海に出ないとな」
浅黒く日焼けした二人の男が、軽口を叩きつつ海岸へ向かって歩いていた。
ここはとある海辺の村。この村の人々は漁に出られない季節は畑で野菜を作り、漁に出られるようになれば各々が船に乗って海へ漕ぎ出す。そうやって魚を獲って生活していた。そして季節は廻り、また漁が行える時期がやってきた。
海は男を引きつける。村の男たちは再び漁に出る準備をするため、村から1キロほど離れた漁小屋へ向かっていた。
だが、そこは何かがおかしかった。
●発端
「おかしいな……」
「あ?何がおかしいんだ?」
一人の男が海岸の風景を見て疑問を感じる。去年の漁が終わった時に、船の上には布を掛けていたはずなのだ。先月見に来たときも確かに布は掛けられたままだった。しかしそれが無い。風が吹いても飛んで行かないように紐もしっかり結わえたはずだ。ならば誰かが取り払ったのか。
二人はもう少し詳しく様子を見ようと船に近づく。その時だった。
船の中から人型の影が一つ、二つと現れる。魚の頭、左半身に鱗をまとった肉体。それは異形の怪物だった。
「バ、バケモンだーっ!!」
男たちは一目散に逃げ出す。先に逃げだした男に振り向いている余裕はない。ただひたすら走る、その男の横をもう一人の男が吹っ飛んで行った。
悲鳴を上げ地面に倒れ伏した男を担ぎ、ひたすら逃げるもう一人の男。
その様子を見て、半魚半人の雑魔たちは勝ち誇るかのように空中に水を噴き出していた。
●敵は何者
かくしてハンターズソサエティに依頼が掲出された。請け負ったハンターたちにオペレーターが状況を説明する。
依頼内容は漁小屋周辺に住みついた雑魔の排除。ギルマンと呼ばれる半魚半人のモンスターを全て排除して欲しいということだ。
ギルマンの姿形や、場所の説明をし終えたオペレーターは最後に一つ付け加えた。
「ギルマンは口から水を噴き出します。これに注意してください。威力はそれほどでもありませんが、相手を吹き飛ばすだけの勢いがあります。現に村人が一人、吹き飛ばされました」
「やっとまた船を出せるな」
「畑仕事もいいけどよ、やっぱり男は海に出ないとな」
浅黒く日焼けした二人の男が、軽口を叩きつつ海岸へ向かって歩いていた。
ここはとある海辺の村。この村の人々は漁に出られない季節は畑で野菜を作り、漁に出られるようになれば各々が船に乗って海へ漕ぎ出す。そうやって魚を獲って生活していた。そして季節は廻り、また漁が行える時期がやってきた。
海は男を引きつける。村の男たちは再び漁に出る準備をするため、村から1キロほど離れた漁小屋へ向かっていた。
だが、そこは何かがおかしかった。
●発端
「おかしいな……」
「あ?何がおかしいんだ?」
一人の男が海岸の風景を見て疑問を感じる。去年の漁が終わった時に、船の上には布を掛けていたはずなのだ。先月見に来たときも確かに布は掛けられたままだった。しかしそれが無い。風が吹いても飛んで行かないように紐もしっかり結わえたはずだ。ならば誰かが取り払ったのか。
二人はもう少し詳しく様子を見ようと船に近づく。その時だった。
船の中から人型の影が一つ、二つと現れる。魚の頭、左半身に鱗をまとった肉体。それは異形の怪物だった。
「バ、バケモンだーっ!!」
男たちは一目散に逃げ出す。先に逃げだした男に振り向いている余裕はない。ただひたすら走る、その男の横をもう一人の男が吹っ飛んで行った。
悲鳴を上げ地面に倒れ伏した男を担ぎ、ひたすら逃げるもう一人の男。
その様子を見て、半魚半人の雑魔たちは勝ち誇るかのように空中に水を噴き出していた。
●敵は何者
かくしてハンターズソサエティに依頼が掲出された。請け負ったハンターたちにオペレーターが状況を説明する。
依頼内容は漁小屋周辺に住みついた雑魔の排除。ギルマンと呼ばれる半魚半人のモンスターを全て排除して欲しいということだ。
ギルマンの姿形や、場所の説明をし終えたオペレーターは最後に一つ付け加えた。
「ギルマンは口から水を噴き出します。これに注意してください。威力はそれほどでもありませんが、相手を吹き飛ばすだけの勢いがあります。現に村人が一人、吹き飛ばされました」
リプレイ本文
●
さんさんと輝く太陽。空には雲ひとつ無い快晴である。
目の前には透き通った青い海が広がる。
「いかに! いかに食い扶持稼ぐためとはいえ……何が悲しくて大悪漢たるこの僕がこんな爽やか極まりない場所へ繰り出してこなければならないのか!?」
白衣の男、自称悪の天才科学者、ジョナサン・キャラウェイ(ka1084)はそうボヤいていた。
確かにこの光景だけ見ればまさか雑魔による危機が迫っているとは思えない。
「うわっ、懐かし……くもないや。あたし、リアルブルーのこと覚えてないし」
ウーナ(ka1439)もその美しい光景を見て思わず言葉を漏らす。
「でもなんか違う感じするんだよねー。カンってやつ?」
ウーナの勘はともかく、少なくともリアルブルーには無いものが一つある。
「漁師達を襲うギルマンですか…。連中がいる限り、漁師達が漁に出る事が出来ないみたいですね」
ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)が言う通り、船上にはギルマンの姿が見える。このままでは漁に出られない。だからこそハンターが呼ばれたのだ。
「はい、村の方々が安心して漁に出られるように頑張らなきゃ」
トレイシー・ヴィッカー(ka1208)もユーリの言葉に同意する。彼女は敬虔なエクラ教信者に育てられた。エクラ教の教義通り、歪虚には苛烈に当たり、人々を安心させたい、そう決意を固めていた。
「ああ、早く漁にでれるように、雑魔は退治しなければな」
騎士然としたたたずまいのレオン・フォイアロート(ka0829)は凛々しくそう答える。レオンは最近クリムゾンウェストで起こっている一連の出来事を気にしていた。何かが起ころうとしている。だが、今レオンがやるべきことは目の前に起きている出来事を解決する事だ。
「この先に答えが見えてくるだろうからな」
レオンはそう決意を口にする。
「でも隠れている者がいると面倒ですね」
一方天央 観智(ka0896)はそう答える。彼が言うとおり、ギルマン達が隠れる場所はいくつもある。まず目の前にある漁小屋。そして何より海の中。美しい海は、しかしながら今はハンターにとって危険な存在でしかない。
「ええ、船底や桟橋の影に伏兵が居ると、困りますから……そうですね……例えば、その近くに移動する前に、海に向け石を投げてみて敵が勘違いし、出てきた所を迎え撃つ、とかそう言った方法が考えられるでしょうか」
ユキヤ・S・ディールス(ka0382)が伏兵をおびき出す方法を提案する。あとは誰が何をするか、二三言葉を交わし、目で合図して役割が決まる。
「でも警戒ばかりしていても埒が明きません。漁のためにも必ず敵は殲滅します!」
白神 霧華(ka0915)の言う通り誰かが先陣を切らなければギルマンを倒すことはままならない。どこから隠れたギルマンが出てくるか、見逃さないよう注意を払い、最後は出てきたときに対応する他無い。霧華は決意とともに――自らの服を脱ぎ捨てた。
●
霧華が服を脱ぎ捨てたのが作戦開始の合図になった。
まず霧華が一歩前に出て漁小屋の前に立つ。他の者達は少し離れた間合いで待機する。万が一、そこに敵が居て先頭になったとしても小屋の辺りでは複数人で戦うにはスペースが足りない。それに桟橋の先にはギルマンが居る。漁小屋で戦っている最中に背後から襲われる形になったらたまったものではない。そこで他の者達は全体に注意を配りつつ、いつでも戦いに備えられるようにしていた。
特に矢面に立つ形のユーリとレオンは、桟橋入り口で警戒していた。レオンは適当な石を拾いそれを海面に投げ込む。桟橋を通っている最中に横から水中に隠れたギルマンが飛び出してくること、それを警戒しての行動だ。
ボチャンと音がして、水面に波紋が広がる。ややあって波紋は消えたが反応は無い。確認して頷くレオン。
その頷きを見て、霧華が脱いだ服を扉を開けて小屋の中に投げ込む。それと同時に、開けた扉の中から何かが飛び出してきた。ギルマンだ。
恐らく船上のギルマンに直行した場合、不意をついて小屋から飛び出し、挟み撃ちにしようという考えだったのだろう。だがその企みはハンター達によって破られた。
突っ込んできたギルマンに正対する形になった霧華が、手にした刀を横に斬り払らう。その白刃がギルマンの腹部を切り裂く。その一撃はギルマンの分厚い鱗に威力を殺されつつも、痛烈な一撃を与えた。
●
挟み撃ちを狙った作戦が破られた事を悟ったギルマン達は桟橋を越えて海岸側を襲撃しようとする。
それに対し、ハンター達も桟橋を進み後衛が攻められるのを守ろうとする。
まずフラメアを腰だめに構えたユーリが桟橋を駆ける。レオンの投げた石に対して反応は無かったが、まだ水中から別のギルマンが現れる可能性がある。だがその前に船上に辿り着ければ――そう思い走り抜けるユーリにジョナサンが魔導機械からマテリアルを流し込む。
「これで海に落とされたりなんてことが起こる確率も少しは下げられるはずだ」
流入したマテリアルはユーリの動きを補助し、命中精度、そして何より回避性能を向上させる。
さらにユキヤは聖なる光をユーリ目掛け放つ。放った光は柔らかくユーリの体を包み、その身を守る。
「レオン・フォイアロート参る」
続けてレオンも前進する。その前進に合わせ、トレイシーはユキヤがユーリにしたのと同じように、聖なる力をレオンに纏わせ彼の体を守ろうとする。
前進するユーリとレオン、前進するギルマン達。結果、桟橋を6メートルほど進んだところ、ちょうど船が係留され始めている所が最前線になった。
ビュッ!
一番前に立ったギルマンのうち一体はレオン目がけ水を吹き付ける。レオンは盾で水を受け止めるが、勢いを止めきれず押されてしまう。結果、ユーリが孤立する形になった。
「しまったっ!」
天央は慌ててマテリアルを手に集中すると、立ちふさがるギルマンに光の矢を放つ。天央が放ったマジックアローはギルマンの腕に突き刺さり多大なダメージを与えるが、排除にまでは至らない。
そして孤立したユーリの元に船上の残りのギルマン達が殺到する。
そばに居たギルマンが横から鉄砲水を吹き付ける。かわし損ねたユーリの細い身体が弾き飛ばされ、船上に着地する。そこにほかのギルマンが襲い掛かる。1発、2発、ユーリは鉄砲水をかわすが、3発目がユーリの身体を捉え、ユーリの身体が宙を舞った。
ザッバーンッ!
ユーリは船上から押し出され海に落ちる。白い水柱が立ち上がる。ユキヤが掛けてくれたプロテクションのおかげもあって、ダメージは大したことがない。だが、ユーリは圧倒的に不利な状況に陥っていた。伏兵がそこに潜んでいたのだ。とどめを刺すべく船の下に隠れていたギルマンが海面から飛び上がり、ユーリの頭を砕こうと爪を振り下ろす。
海面を飛び上がったギルマンを、しかし見逃さない者が居た。
「伏兵を始末するのがあたしの出番、ってね!」
ウーナの手にしたオートマチックピストルから鉛弾が発射される。その弾は常識の範囲を超え一直線に空を切り裂き、飛び上がったギルマンの左腕に突き刺さる。
腕に銃弾を受けたギルマンの一撃は反れる。水に足をとられながら、ユーリは体を反らしギルマンの必殺の一撃をかわして見せた。
●
一方小屋ではギルマンと霧華の一対一の戦いが続いていた。痛烈な一撃を浴びつつもギルマンは霧華に対して爪を振り下ろす。だが、身軽になった霧華を捉えることは出来ない。
ギルマンが爪を振り下ろして出来た大きな隙を見逃さず、霧華は刀を振り上げる。次の瞬間、返しの刃がきらめき、ギルマンの頭と体は永遠に分かれることになった。
●
一方 水に落ちたユーリは体勢を建て直しギルマン達と向かい合っていた。状況は1対3のままだが、ユーリは余裕を崩さなかった。その余裕を見て腹を立てたのか、ギルマンがもう一度飛び上がり、上から爪を振り下ろす。その胸に天央が放った光の矢が突き刺さる。そして、その隙をユーリは逃さなかった。手にしたフラメアを突き出すとギルマンの串刺しが一つ出来上がった。
伏兵を討ち取られたギルマンは怒りの表情で船首に集まり、その爪をユーリ目掛けて振り下ろす。ユーリは爪をかわし、槍で受け止めるが交わし損ねた一撃がユーリの頭を捉える。
水面に赤いものが広がっていく。だが、ユーリは倒れなかった。なぜなら視線の端に桟橋で戦う仲間達の姿が映ったからである。
レオンはギルマンの壁を突破すべく再び桟橋を踏み込みマテリアルをグラディウスに込めて突き出す。それをサポートすべくジョナサンはユーリにしたのと同じように、手にした機械からマテリアルを流入させる。ジョナサンのサポートを受けて鋭く突き出された一撃に、天央のマジックアローに傷ついていたギルマンはかわすことかなわず、桟橋に倒れ伏した。
さらに戦線を押し上げるべくユキヤが前に出て聖なる光の弾を放つ。ウーナが前に出て銃弾を発射する。光の弾が、鉛の弾が立ちふさがるギルマンの元に集まり、その体を傷つける。
一方ギルマン達も前に出て加勢する。桟橋の上で、ハンター達を食い止めるべくギルマン達は壁を作る。ギルマン達は後ろから遠距離攻撃を連続して飛ばしてくる3人に一撃を浴びせようと、鉄砲水を何発も吹きつけレオンを排除しようとする。
レオンはギルマン達の攻撃を一身に浴びながら、しかし敵の狙い通りにはさせなかった。鉄砲水を交わし続け、戦線が崩されるのだけは避ける。前でレオンが守っているからこそ、後ろから援護を行う者達は勇気を持って前に出られるのだ。
トレイシーも同じように前に出たが、彼女はギルマンを攻撃しなかった。トレイシーが視線を送ったのは水に落ちたユーリ。傷ついたユーリに応えるべく、精霊に祈りを捧げる。その祈りが届き、ユーリの体を癒していく。
「ほら、こっちこっち!」
さらにトレイシーは盾を構え、声を出してギルマンの気を引く。ギルマン達は怒りに我を見失い、目の前のハンター達を打ち滅ぼすべく向かってくる。
●
「さっさと片付けてついでに半魚人の魚拓でもおみやげにしなきゃ気が済まないな。レオン、やってくれ」
ジョナサンはマテリアルを今度は一度エネルギーに変換し、レオンに流し込む。レオンは増大した攻撃力を生かしもう一方のギルマン目掛けグラディウスを振り下ろす。目の前の敵を排除し突破すべく、二人は連携して攻め立てていく。
そこに白刃が駆け抜けた。小屋にいたギルマンを斬り伏せた霧華が加勢すべく、桟橋を突っ切ってきた。レオンとギルマンの間で繰り広げられていた一進一退の攻防は、バランスが崩れたことにより一気に転回する。
レオンと霧華、二人の連続攻撃を浴び体勢を崩したギルマンにウーナの放った銃弾が吸い込まれ、その頭に風穴が開いた。
一方船首に集まったギルマン達はユーリにもう一度襲い掛かる。水しぶきを上げながら、海中にいるユーリはギルマンの爪を交わす。攻めるギルマン、守るユーリ。だが、攻めているはずのギルマンの背中に光弾が炸裂する。ユキヤが放った聖なる光にギルマンは身を焼かれ、塵と化す。そして光が晴れたとき、そこにはレオンと霧華が立っていた。
ユーリを追い詰めたと思っていたギルマンはもはや追い詰められていた。海中に逃げ出そうにも、逆にユーリが立ちふさがる。策をめぐらしたギルマン達は、しかしながらハンター達の策にはまっていたのだった。
挟まれたギルマンに槍が突き出される。直剣が振り下ろされる。刀が払われる。光弾が爆発する。光の矢が突き刺さる。銃弾が飛び込む。ハンター達の一気呵成の攻めを止める術は、ギルマン達にはもう残されていなかった。
●
「うはははっ。美学なき悪に鉄槌下す、悪の天才ジョナサン・キャラウェイここにあり!」
ギルマン達が居なくなり静かになった海岸で、ジョナサンの勝どきの声が響く。
「悪の天才?誰のことだ?」
そこに村の人達がやってくる。まさか聞かれていたとは思わなかったジョナサンは思わず慌てふためく他無かったのだった。
「あ、村の人達ですね。船の修復の仕方を教えていただきたいのですが……」
戦闘で付いた船の傷が無いか確認していたユキヤが、救いの手を出すように声を掛ける。
「ああ、この程度なら大丈夫だ」
村人はユキヤが指し示した傷を確認してそう返す。ハンター達の素早く的確な攻撃が、船の被害を最小限に抑えていた。
「それでは漁に出るんですね!お手伝いします!」
「それじゃあお言葉に甘えるかね。助かるよ」
村人達も漁に出る日を相当待ち遠しく思っていたらしい。霧華の申し入れはまさに渡りに船とばかりに受け入れられ、あっという間に漁の準備が整う。
「もうギルマンは潜んでいないでしょう。お待たせしました」
いよいよ出航しようと村人達が集まったところで、全員に向け改めてトレイシーが結果を報告する。「ここからはあなた方の戦いです。負けないでくださいね!」
「「おお、任せておけ!」」
霧華の激励に村人達が答えたのが合図になった。1年振りにロープがほどかれ、船が次々と大海原に向けて走り出す。走る船に向け手を振りながら、トレイシーはその背中に向けて祈りの言葉を唱えたのであった。
「また美味しいお魚を沢山獲ってくださいね」
さんさんと輝く太陽。空には雲ひとつ無い快晴である。
目の前には透き通った青い海が広がる。
「いかに! いかに食い扶持稼ぐためとはいえ……何が悲しくて大悪漢たるこの僕がこんな爽やか極まりない場所へ繰り出してこなければならないのか!?」
白衣の男、自称悪の天才科学者、ジョナサン・キャラウェイ(ka1084)はそうボヤいていた。
確かにこの光景だけ見ればまさか雑魔による危機が迫っているとは思えない。
「うわっ、懐かし……くもないや。あたし、リアルブルーのこと覚えてないし」
ウーナ(ka1439)もその美しい光景を見て思わず言葉を漏らす。
「でもなんか違う感じするんだよねー。カンってやつ?」
ウーナの勘はともかく、少なくともリアルブルーには無いものが一つある。
「漁師達を襲うギルマンですか…。連中がいる限り、漁師達が漁に出る事が出来ないみたいですね」
ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)が言う通り、船上にはギルマンの姿が見える。このままでは漁に出られない。だからこそハンターが呼ばれたのだ。
「はい、村の方々が安心して漁に出られるように頑張らなきゃ」
トレイシー・ヴィッカー(ka1208)もユーリの言葉に同意する。彼女は敬虔なエクラ教信者に育てられた。エクラ教の教義通り、歪虚には苛烈に当たり、人々を安心させたい、そう決意を固めていた。
「ああ、早く漁にでれるように、雑魔は退治しなければな」
騎士然としたたたずまいのレオン・フォイアロート(ka0829)は凛々しくそう答える。レオンは最近クリムゾンウェストで起こっている一連の出来事を気にしていた。何かが起ころうとしている。だが、今レオンがやるべきことは目の前に起きている出来事を解決する事だ。
「この先に答えが見えてくるだろうからな」
レオンはそう決意を口にする。
「でも隠れている者がいると面倒ですね」
一方天央 観智(ka0896)はそう答える。彼が言うとおり、ギルマン達が隠れる場所はいくつもある。まず目の前にある漁小屋。そして何より海の中。美しい海は、しかしながら今はハンターにとって危険な存在でしかない。
「ええ、船底や桟橋の影に伏兵が居ると、困りますから……そうですね……例えば、その近くに移動する前に、海に向け石を投げてみて敵が勘違いし、出てきた所を迎え撃つ、とかそう言った方法が考えられるでしょうか」
ユキヤ・S・ディールス(ka0382)が伏兵をおびき出す方法を提案する。あとは誰が何をするか、二三言葉を交わし、目で合図して役割が決まる。
「でも警戒ばかりしていても埒が明きません。漁のためにも必ず敵は殲滅します!」
白神 霧華(ka0915)の言う通り誰かが先陣を切らなければギルマンを倒すことはままならない。どこから隠れたギルマンが出てくるか、見逃さないよう注意を払い、最後は出てきたときに対応する他無い。霧華は決意とともに――自らの服を脱ぎ捨てた。
●
霧華が服を脱ぎ捨てたのが作戦開始の合図になった。
まず霧華が一歩前に出て漁小屋の前に立つ。他の者達は少し離れた間合いで待機する。万が一、そこに敵が居て先頭になったとしても小屋の辺りでは複数人で戦うにはスペースが足りない。それに桟橋の先にはギルマンが居る。漁小屋で戦っている最中に背後から襲われる形になったらたまったものではない。そこで他の者達は全体に注意を配りつつ、いつでも戦いに備えられるようにしていた。
特に矢面に立つ形のユーリとレオンは、桟橋入り口で警戒していた。レオンは適当な石を拾いそれを海面に投げ込む。桟橋を通っている最中に横から水中に隠れたギルマンが飛び出してくること、それを警戒しての行動だ。
ボチャンと音がして、水面に波紋が広がる。ややあって波紋は消えたが反応は無い。確認して頷くレオン。
その頷きを見て、霧華が脱いだ服を扉を開けて小屋の中に投げ込む。それと同時に、開けた扉の中から何かが飛び出してきた。ギルマンだ。
恐らく船上のギルマンに直行した場合、不意をついて小屋から飛び出し、挟み撃ちにしようという考えだったのだろう。だがその企みはハンター達によって破られた。
突っ込んできたギルマンに正対する形になった霧華が、手にした刀を横に斬り払らう。その白刃がギルマンの腹部を切り裂く。その一撃はギルマンの分厚い鱗に威力を殺されつつも、痛烈な一撃を与えた。
●
挟み撃ちを狙った作戦が破られた事を悟ったギルマン達は桟橋を越えて海岸側を襲撃しようとする。
それに対し、ハンター達も桟橋を進み後衛が攻められるのを守ろうとする。
まずフラメアを腰だめに構えたユーリが桟橋を駆ける。レオンの投げた石に対して反応は無かったが、まだ水中から別のギルマンが現れる可能性がある。だがその前に船上に辿り着ければ――そう思い走り抜けるユーリにジョナサンが魔導機械からマテリアルを流し込む。
「これで海に落とされたりなんてことが起こる確率も少しは下げられるはずだ」
流入したマテリアルはユーリの動きを補助し、命中精度、そして何より回避性能を向上させる。
さらにユキヤは聖なる光をユーリ目掛け放つ。放った光は柔らかくユーリの体を包み、その身を守る。
「レオン・フォイアロート参る」
続けてレオンも前進する。その前進に合わせ、トレイシーはユキヤがユーリにしたのと同じように、聖なる力をレオンに纏わせ彼の体を守ろうとする。
前進するユーリとレオン、前進するギルマン達。結果、桟橋を6メートルほど進んだところ、ちょうど船が係留され始めている所が最前線になった。
ビュッ!
一番前に立ったギルマンのうち一体はレオン目がけ水を吹き付ける。レオンは盾で水を受け止めるが、勢いを止めきれず押されてしまう。結果、ユーリが孤立する形になった。
「しまったっ!」
天央は慌ててマテリアルを手に集中すると、立ちふさがるギルマンに光の矢を放つ。天央が放ったマジックアローはギルマンの腕に突き刺さり多大なダメージを与えるが、排除にまでは至らない。
そして孤立したユーリの元に船上の残りのギルマン達が殺到する。
そばに居たギルマンが横から鉄砲水を吹き付ける。かわし損ねたユーリの細い身体が弾き飛ばされ、船上に着地する。そこにほかのギルマンが襲い掛かる。1発、2発、ユーリは鉄砲水をかわすが、3発目がユーリの身体を捉え、ユーリの身体が宙を舞った。
ザッバーンッ!
ユーリは船上から押し出され海に落ちる。白い水柱が立ち上がる。ユキヤが掛けてくれたプロテクションのおかげもあって、ダメージは大したことがない。だが、ユーリは圧倒的に不利な状況に陥っていた。伏兵がそこに潜んでいたのだ。とどめを刺すべく船の下に隠れていたギルマンが海面から飛び上がり、ユーリの頭を砕こうと爪を振り下ろす。
海面を飛び上がったギルマンを、しかし見逃さない者が居た。
「伏兵を始末するのがあたしの出番、ってね!」
ウーナの手にしたオートマチックピストルから鉛弾が発射される。その弾は常識の範囲を超え一直線に空を切り裂き、飛び上がったギルマンの左腕に突き刺さる。
腕に銃弾を受けたギルマンの一撃は反れる。水に足をとられながら、ユーリは体を反らしギルマンの必殺の一撃をかわして見せた。
●
一方小屋ではギルマンと霧華の一対一の戦いが続いていた。痛烈な一撃を浴びつつもギルマンは霧華に対して爪を振り下ろす。だが、身軽になった霧華を捉えることは出来ない。
ギルマンが爪を振り下ろして出来た大きな隙を見逃さず、霧華は刀を振り上げる。次の瞬間、返しの刃がきらめき、ギルマンの頭と体は永遠に分かれることになった。
●
一方 水に落ちたユーリは体勢を建て直しギルマン達と向かい合っていた。状況は1対3のままだが、ユーリは余裕を崩さなかった。その余裕を見て腹を立てたのか、ギルマンがもう一度飛び上がり、上から爪を振り下ろす。その胸に天央が放った光の矢が突き刺さる。そして、その隙をユーリは逃さなかった。手にしたフラメアを突き出すとギルマンの串刺しが一つ出来上がった。
伏兵を討ち取られたギルマンは怒りの表情で船首に集まり、その爪をユーリ目掛けて振り下ろす。ユーリは爪をかわし、槍で受け止めるが交わし損ねた一撃がユーリの頭を捉える。
水面に赤いものが広がっていく。だが、ユーリは倒れなかった。なぜなら視線の端に桟橋で戦う仲間達の姿が映ったからである。
レオンはギルマンの壁を突破すべく再び桟橋を踏み込みマテリアルをグラディウスに込めて突き出す。それをサポートすべくジョナサンはユーリにしたのと同じように、手にした機械からマテリアルを流入させる。ジョナサンのサポートを受けて鋭く突き出された一撃に、天央のマジックアローに傷ついていたギルマンはかわすことかなわず、桟橋に倒れ伏した。
さらに戦線を押し上げるべくユキヤが前に出て聖なる光の弾を放つ。ウーナが前に出て銃弾を発射する。光の弾が、鉛の弾が立ちふさがるギルマンの元に集まり、その体を傷つける。
一方ギルマン達も前に出て加勢する。桟橋の上で、ハンター達を食い止めるべくギルマン達は壁を作る。ギルマン達は後ろから遠距離攻撃を連続して飛ばしてくる3人に一撃を浴びせようと、鉄砲水を何発も吹きつけレオンを排除しようとする。
レオンはギルマン達の攻撃を一身に浴びながら、しかし敵の狙い通りにはさせなかった。鉄砲水を交わし続け、戦線が崩されるのだけは避ける。前でレオンが守っているからこそ、後ろから援護を行う者達は勇気を持って前に出られるのだ。
トレイシーも同じように前に出たが、彼女はギルマンを攻撃しなかった。トレイシーが視線を送ったのは水に落ちたユーリ。傷ついたユーリに応えるべく、精霊に祈りを捧げる。その祈りが届き、ユーリの体を癒していく。
「ほら、こっちこっち!」
さらにトレイシーは盾を構え、声を出してギルマンの気を引く。ギルマン達は怒りに我を見失い、目の前のハンター達を打ち滅ぼすべく向かってくる。
●
「さっさと片付けてついでに半魚人の魚拓でもおみやげにしなきゃ気が済まないな。レオン、やってくれ」
ジョナサンはマテリアルを今度は一度エネルギーに変換し、レオンに流し込む。レオンは増大した攻撃力を生かしもう一方のギルマン目掛けグラディウスを振り下ろす。目の前の敵を排除し突破すべく、二人は連携して攻め立てていく。
そこに白刃が駆け抜けた。小屋にいたギルマンを斬り伏せた霧華が加勢すべく、桟橋を突っ切ってきた。レオンとギルマンの間で繰り広げられていた一進一退の攻防は、バランスが崩れたことにより一気に転回する。
レオンと霧華、二人の連続攻撃を浴び体勢を崩したギルマンにウーナの放った銃弾が吸い込まれ、その頭に風穴が開いた。
一方船首に集まったギルマン達はユーリにもう一度襲い掛かる。水しぶきを上げながら、海中にいるユーリはギルマンの爪を交わす。攻めるギルマン、守るユーリ。だが、攻めているはずのギルマンの背中に光弾が炸裂する。ユキヤが放った聖なる光にギルマンは身を焼かれ、塵と化す。そして光が晴れたとき、そこにはレオンと霧華が立っていた。
ユーリを追い詰めたと思っていたギルマンはもはや追い詰められていた。海中に逃げ出そうにも、逆にユーリが立ちふさがる。策をめぐらしたギルマン達は、しかしながらハンター達の策にはまっていたのだった。
挟まれたギルマンに槍が突き出される。直剣が振り下ろされる。刀が払われる。光弾が爆発する。光の矢が突き刺さる。銃弾が飛び込む。ハンター達の一気呵成の攻めを止める術は、ギルマン達にはもう残されていなかった。
●
「うはははっ。美学なき悪に鉄槌下す、悪の天才ジョナサン・キャラウェイここにあり!」
ギルマン達が居なくなり静かになった海岸で、ジョナサンの勝どきの声が響く。
「悪の天才?誰のことだ?」
そこに村の人達がやってくる。まさか聞かれていたとは思わなかったジョナサンは思わず慌てふためく他無かったのだった。
「あ、村の人達ですね。船の修復の仕方を教えていただきたいのですが……」
戦闘で付いた船の傷が無いか確認していたユキヤが、救いの手を出すように声を掛ける。
「ああ、この程度なら大丈夫だ」
村人はユキヤが指し示した傷を確認してそう返す。ハンター達の素早く的確な攻撃が、船の被害を最小限に抑えていた。
「それでは漁に出るんですね!お手伝いします!」
「それじゃあお言葉に甘えるかね。助かるよ」
村人達も漁に出る日を相当待ち遠しく思っていたらしい。霧華の申し入れはまさに渡りに船とばかりに受け入れられ、あっという間に漁の準備が整う。
「もうギルマンは潜んでいないでしょう。お待たせしました」
いよいよ出航しようと村人達が集まったところで、全員に向け改めてトレイシーが結果を報告する。「ここからはあなた方の戦いです。負けないでくださいね!」
「「おお、任せておけ!」」
霧華の激励に村人達が答えたのが合図になった。1年振りにロープがほどかれ、船が次々と大海原に向けて走り出す。走る船に向け手を振りながら、トレイシーはその背中に向けて祈りの言葉を唱えたのであった。
「また美味しいお魚を沢山獲ってくださいね」
依頼結果
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作戦相談用スレッド ジョナサン・キャラウェイ(ka1084) 人間(リアルブルー)|28才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/07/29 09:45:13 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/25 18:22:03 |