ゲスト
(ka0000)
百年旅~ヒトジゴク
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 4日
- 締切
- 2015/10/13 22:00
- 完成日
- 2015/10/22 01:02
このシナリオは1日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「そーです。『テニスウエア』ですっ!」
同盟領のどこぞの田舎村で、赤い蝶ネクタイをした商人が甲高い声を張っている。なんだなんだ、と村人がさらに群がる。
「見て下さい、この軽やかな素材。身も心も若やぐようでしょう?」
ほら、と紹介するように手を伸ばす商人。
その横には、白地に紫の爽やかなテニスウエアに身を包んだフラ・キャンディ(kz0121)がいた。
「え? こ、こうかな?」
急に振られて慌てたものの、少しステップして手にしたテニスラケットを振り抜く。
ふわっ、とミニスカートがなびきひらめく。まるで妖精の飛翔のよう。見る者のため息を誘う。
「どうです、いいでしょう? 今、テニスウエアを購入の方には何と、もう一着無料で差し上げますっ!」
まあ、すごい、などの声とともに「私、買います」、「こっちにも頼む」と一気に押し寄せる人波。
「す、すごすぎ……」
フラも巻き込まれてもみくちゃにされたり。
閑話休題。
「いやあ、可愛らしいフラさんがモデルをしてくれると飛ぶように売れますね~」
先の商人、喫茶店に落ち着いてゆったりと紅茶を飲んでいる。フラはジュースをちゅうちゅう。
「それより、もう商いは終わりじゃろ?」
フラの後見人であるジルが首を突っ込む。どうやら商人、テニスウエアのおまけをだしにして、どさくさ紛れにいろんなものを売りつけとても良い商売をしたらしい。
「まあまあ。フラさんは世の中を見るために里を旅立ったんでしょう? この土地ももう少し見て……」
そこまで商人が言った時だった!
「た、大変だ。ヒトジゴクだっ!」
男一人が目をひん剥いて駆け込んできた。
「もう二人、カラカラにされてやられた! 何とかしてくれ」
「何だって?」
途端にざわめく店内。
「ボク、行ってみる」
フラも駆けつけることにした。
現地は村から結構離れた草原だった。
そこに、まるで砂漠のようにカラカラに乾いた砂がこんもりと土手を作っていた。
「一体……」
フラ、土手に登って覗き込んで理解した。
眼下には、乾いた砂でできたすり鉢状の巣があったのだ。まるでウスバカゲロウの幼虫「アリジゴク」の巣だ。
ただ、でかい。
幅半径5メートル、深さ5メートルほどで、アリを獲物にしたものでないことが容易に想像される。今、底の砂の中から巨大なクワガタムシのような頭部が現れ何かを投げ出した。ぽーんと飛んで巣の外に落ちたのは、カラカラに干からびた人――いや、もう死んでいるので死体――だった。
「うわっ!」
すぐに悲鳴が上がった。フラとは別の場所に立っていた村人に、「ヒトジゴク」が液体を吹き掛けたのだ。しかも二連射。ふらつくと足場が崩れ、滑落。
「ダメっ!」
助けに飛び込むフラ。落ちた勢いで打撃専用ラケットを敵に叩きつけ仰け反らせる。この隙に落ちた人を救助。
「これを使ってください!」
商人が垂らしたロープに括り付けたが今度はフラが集中攻撃を受けた。まずは液体の二連射。フラ、寒気を覚えるが肌などは痛くない。ただ、激烈に口の中が乾き体全体がだるくなるのを感じる。
「フラ、もういいぞ!」
「うんっ。……『風の翼』!」
ジルからの引き上げ完了合図を受けたフラ、相手の頭部に蹴りをかましつつジャンプ。何とかヒトジゴクの巣を脱出した。
しかし、フラはこの後急激な脱水症状のせいか寝込むことになる。
村はハンターオフィスに駆除を頼むことになる。
この間に何と、雑魔「ヒトジゴク」は先の巣を放棄し新たな巣を構築した。以前の巣より大きな、半径8メートル、深さ8メートルの巣である。
弱ったことに、村により近い場所だという。
「そーです。『テニスウエア』ですっ!」
同盟領のどこぞの田舎村で、赤い蝶ネクタイをした商人が甲高い声を張っている。なんだなんだ、と村人がさらに群がる。
「見て下さい、この軽やかな素材。身も心も若やぐようでしょう?」
ほら、と紹介するように手を伸ばす商人。
その横には、白地に紫の爽やかなテニスウエアに身を包んだフラ・キャンディ(kz0121)がいた。
「え? こ、こうかな?」
急に振られて慌てたものの、少しステップして手にしたテニスラケットを振り抜く。
ふわっ、とミニスカートがなびきひらめく。まるで妖精の飛翔のよう。見る者のため息を誘う。
「どうです、いいでしょう? 今、テニスウエアを購入の方には何と、もう一着無料で差し上げますっ!」
まあ、すごい、などの声とともに「私、買います」、「こっちにも頼む」と一気に押し寄せる人波。
「す、すごすぎ……」
フラも巻き込まれてもみくちゃにされたり。
閑話休題。
「いやあ、可愛らしいフラさんがモデルをしてくれると飛ぶように売れますね~」
先の商人、喫茶店に落ち着いてゆったりと紅茶を飲んでいる。フラはジュースをちゅうちゅう。
「それより、もう商いは終わりじゃろ?」
フラの後見人であるジルが首を突っ込む。どうやら商人、テニスウエアのおまけをだしにして、どさくさ紛れにいろんなものを売りつけとても良い商売をしたらしい。
「まあまあ。フラさんは世の中を見るために里を旅立ったんでしょう? この土地ももう少し見て……」
そこまで商人が言った時だった!
「た、大変だ。ヒトジゴクだっ!」
男一人が目をひん剥いて駆け込んできた。
「もう二人、カラカラにされてやられた! 何とかしてくれ」
「何だって?」
途端にざわめく店内。
「ボク、行ってみる」
フラも駆けつけることにした。
現地は村から結構離れた草原だった。
そこに、まるで砂漠のようにカラカラに乾いた砂がこんもりと土手を作っていた。
「一体……」
フラ、土手に登って覗き込んで理解した。
眼下には、乾いた砂でできたすり鉢状の巣があったのだ。まるでウスバカゲロウの幼虫「アリジゴク」の巣だ。
ただ、でかい。
幅半径5メートル、深さ5メートルほどで、アリを獲物にしたものでないことが容易に想像される。今、底の砂の中から巨大なクワガタムシのような頭部が現れ何かを投げ出した。ぽーんと飛んで巣の外に落ちたのは、カラカラに干からびた人――いや、もう死んでいるので死体――だった。
「うわっ!」
すぐに悲鳴が上がった。フラとは別の場所に立っていた村人に、「ヒトジゴク」が液体を吹き掛けたのだ。しかも二連射。ふらつくと足場が崩れ、滑落。
「ダメっ!」
助けに飛び込むフラ。落ちた勢いで打撃専用ラケットを敵に叩きつけ仰け反らせる。この隙に落ちた人を救助。
「これを使ってください!」
商人が垂らしたロープに括り付けたが今度はフラが集中攻撃を受けた。まずは液体の二連射。フラ、寒気を覚えるが肌などは痛くない。ただ、激烈に口の中が乾き体全体がだるくなるのを感じる。
「フラ、もういいぞ!」
「うんっ。……『風の翼』!」
ジルからの引き上げ完了合図を受けたフラ、相手の頭部に蹴りをかましつつジャンプ。何とかヒトジゴクの巣を脱出した。
しかし、フラはこの後急激な脱水症状のせいか寝込むことになる。
村はハンターオフィスに駆除を頼むことになる。
この間に何と、雑魔「ヒトジゴク」は先の巣を放棄し新たな巣を構築した。以前の巣より大きな、半径8メートル、深さ8メートルの巣である。
弱ったことに、村により近い場所だという。
リプレイ本文
●
「フラさん!」
ばたん、と小屋の扉を元気よく開けたのは、緋乃宮 姫翠(ka5031)だった。幼少時の自らの記憶からか、本当に心配そう。
「姫翠さん……わっ!」
ベッドに横になっていたフラは上体を起こして友人の見舞いを喜んだが……すぐに「わっ!」と倒れ込むことになる。
「はふ、げ、元気でよかったですよー。ちょ、ちょっと心配してたのですっ」
姫翠の横から弓月・小太(ka4679)が駆け寄って来て来たのだ。
「うん……小太さんにも心配かけてごめんなさい」
「……って、はわわ!? ご、ごめんなさいですー!?」
ほっとした小太、思わずむぎゅりと抱き着き押し倒してしまっていた。フラに謝られて我に返ると慌てて真っ赤になり離れる。二人ともうつむき加減で、ちらと相手を見て同じ行動したのを見て、くすり。それをみて姫翠もくすりと微笑していたり。
そんな小屋の窓の外。
「あの子はだいじょーぶそーだけど……水、いる? この天気で乾いてそうだけど?」
屋内の様子を見てから横を向いたのは、キーリ(ka4642)。持参したミネラルウオーターを差し出す。今日も視線は眠そうだ。天気が良くてポカポカのお昼寝日和ではあるが、それとは全く関係なく日々そんな感じなのでお間違えなく。
「両生類というわけではないので心配ご無用」
そこにいたのは三里塚 一(ka5736)。アマガエルの頭を模した被り物をしているが、人間である。
「それよりアレは脱水症状をもたらすらしいな。であれば巣もアレが作ったもので間違いは無いだろう」
一、舌が長いかどうかはともかく、よく回る。
「脱水症状対策に僕も持ってきた。すべて終わった後でフラさんをお見舞いして安心させてあげたいね」
キーリの横で霧雨 悠月(ka4130)が頷きながらミネラルウオーターを出して見せる。
おっと。
村人と話している仲間もいるぞ。
「井戸はどこにあります? できれば多めの水を用意しておきたいのですが」
雨月彩萌(ka3925)である。
「桶があればそれを。後方に置いておけばいざという時に役立つ」
アデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)も一緒に手際よく事前準備を進める。
「もちろん、液体を受けないようにする」
ほかに持参した八角棍「紫電」とロープも確認する。
しかしこの時、アデリシアは夢にも思わなかった。
周到な準備があのような事態を引き起こすことになろうとは。
●
さて、村から外れた草原で。
「あー、大きいね。ただならぬ大きさ」
キーリが目を細めて呟いた。眠そうというより呆れているといった感じの視線は、こんもりと砂が盛り上がっている場所に。
「悪くない、悪くない面白いモノだなアレは」
一は頭を左右に小さく揺らしながらそんなことを。もしかしたら興味深く笑っているのかもしれない。
横からそうっ、と悠月が巣に近付く。
巨大なすり鉢状の蟻地獄の巣を覗き込んで一言。
「流石に姿は見せてないかな。被害者も出てるし、早く退治しないと大変だ」
「蟻地獄型の何かなのか、何か型の蟻地獄なのか……ともかく、気をつけていきましょうですー」
小太もついてきたようで、悠月の肩越しにふむふむしたあと、後ろに報告。
おっと、アデリシアも来ていた。
「成る程……これはまさに、蟻地獄ならぬ人地獄……!」
覗いて言う腰には、命綱。背後の大地に八角棍「紫電」を突き立て縛っている。伸び切っているので下に落ちることはない。
「巣を構築するタイプの歪虚ですか」
慎重なアデリシアと対称的に、彩萌がいつもと変わらない様子でつかつかと近寄り覗き込む。
下には悠月の言うように、敵はいない。
「うわ。地面がサラサラです」
姫翠も来て覗き込む。水を含んでいるはずの草原の大地が、砂漠の砂のように変貌しているのだ。
「まったく。もっと砂漠の秘境とかに生息しなさいよ」
ふん、と鼻息荒くキーリ。
「……脱水症状をもたらす、か。であればこの場もアレが作ったもので間違いは無いだろう」
一も縁まで来て確認すると断言する。
「正常ではありませんね。とにかく、巣を構築するタイプの歪虚。相手に有利なフィールドで戦わないのが勝利の鉄則です」
「巻き込まれれば全ての体の水分を奪われて死に至るというわけか。恐ろしいやつだ。巣の外に引きずり出せればいいな」
彩萌とアデリシアが頷き合った。
これで方針は決まった。
姫翠がリカーブボウを構え……中心ではなく巣を崩すようにすり鉢の中間を狙って撃った。
瞬間――。
ざっ!
すり鉢の底の砂が舞った。
「うわっ!」
縁で下を狙う者たちが想定外の攻撃に一瞬ひるむ。転落を狙った攻撃だ。
同時に誰もが目を見開いた!
巣の主、アリジゴクがその頭部を現したのだ。大きなクワガタムシのような顎角が禍々しい。
そしてここでの狩りに慣れている。
砂を引っ掻けつつ出現し、同時に毒液を発射。
狙われたのは……。
「戦闘開始ですね。速やかに殲滅しましょう」
彩萌。
顔を狙って飛んで来た毒液はシールド「フンケルン」でしっかりガード。眼鏡すら濡らせない。
しかしッ!
「ん?!」
足元がぐらついた。
何と、敵は二連射できる様子。足元の砂も狙ったのだ。
当然、砂が崩れ彩萌の黒髪が宙に舞う。
――ぱしっ!
滑落が止まって振り返る彩萌。
「大丈夫?」
背後には悠月がいた。彩萌の手を掴んでいる。
「ありがとう」
静かに言って体勢を立て直すと魔導銃「フリューゲル」で、敵の姿を消した巣の底に機導砲をぶち込むのだった。
●
時は一瞬だけ遡る。
ざっ、と敵が姿を現した時。
「砂に籠っている貴様に光をくれてやろう!」
うわっ、とひるんだ後、アデリシアはすぐにマイヤワンドを掲げホーリーライトをぶち込む。
「体はスライムのようにぶよぶよですね~」
同時に小太、醜く太った敵の体に少し嫌悪感を浮かべて魔導銃「魔弾」をぶち込む。
この間に別の場所で彩萌が集中攻撃を食らっていた。
敵は一撃離脱。
砂に再び潜るとしーんとなった。
「素早いのです」
姫翠、もう一撃いきましょうか、という感じに仲間をちらと見る。
「これはまた厄介ねー。一枚作っておくから活用して」
キーリ、魔杖「スキールニル」を振るい奇襲対策のアースウォールを作っておく。
「今度は直接ぶち込んでみるわ」
一撃後、すぐに頭を引っ込めていたアデリシアが再び縁から顔を出す。
「顔を出したら狙います!」
「キーリさん、この壁借りますねぇ。……銃がどの程度効いているのかですが…これで凍らせてみるのですよー」
姫翠と小太もやる気である。
「ありがとう。次に狙われてももう大丈夫です」
彩萌は眼鏡の位置を整えつつ、悠月に感謝。
「それじゃ、僕も……」
悠月、クナイを構えた。
「ふむ。悠月君の代わりに精々に動き守りとなろう」
一も呪符をつまんで構えた。
これで準備完了。待ちの敵の次の一手は分かっている。
「行きます。……闇が好きなら存分に食らうがいい!」
アデリシア、巣の底に向けて今度はシャドウブリットを放った。
「これで顔を出すといいわ!」
同時にキーリがアースバレット。石つぶてで砂の上からダメージを狙う。
どうん、と命中すると砂が舞い散り、同時に周囲の砂が崩れた。
「……来なさい」
彩萌、遺恨の念とともに呟く。
そして砂が舞った。先ほどと同じだッ!
狙われたのは、悠月。
「悠月さん!」
姫翠が叫びつつ矢を放つ。
「ユッキー!」
悠月を狙った毒液はキーリの出した土壁に当たる。すぐに乾燥し崩れるが……。
「キーリさん、ありがとう」
悠月、壁がなくなると同時にクナイ投擲。
「どこを見ているんですか! あなたの相手はわたしです」
彩萌、こっちに来なかった不満を込め機導砲どーん。
もちろんこれらは命中。
が、すぐに敵は引っ込む。
ちなみに今回、もう一発は別の人物を狙っていた。
「一さん!」
振り向き叫ぶアデリシア。
その時見たものは。
「ふむ。使える」
一、符を光り輝く鳥の姿に変えて投げつけ、攻撃を受け止めていた。上体が仰け反っているのは、もしも失敗したときのため。成功し、その格好のまま手ごたえをかみしめる。
そして巣の方では。
「そっちが乾燥ならこっちは冷凍なのですー」
小太が渾身のレイターコールドショット。敵の動きは跳ね上がって戻るだけなのでこの一発はあまり影響ないようで。
またも砂に潜り、沈黙が訪れた。
ただし、今回はこちらの手数が多かった。
「このままならこの調子でいいだろう」
「土竜叩きじみてきたな」
彩萌とアデリシアの呟き。
「アースウォールってこんな感じなのね。格好いいわ。こう、大地の精霊使いっぽくて。どう?」
「格好いいけど、呑気です」
キーリと姫翠は「間がある」と読んでちょっと息抜き。
「なるべく近寄られないように…撃つべし、撃つべし、なのですっ」
「巣は歩きづらいかな? もしも出てこないなら……」
もちろん小太は近寄らない分、警戒継続。ただ、間があることはあるようで、悠月はこのまま籠られるかも、と腰の日本刀に手を掛け突撃も考慮に入れていた。
「踏み込むのは諸君らに任せるとも」
聞いた一、悠月の意見もやむなしと考えている。
と、その時だった!
●
――ざばあっ!
底から砂が舞った!
今までより多い。
一瞬、全員が砂の雨に腕をかざし目を細めた。
その前を、巨体が一瞬のうちに上に!
「跳躍?」
彩萌、見上げて息を飲む。
「気を付けて下さい。押しつぶしがあるかもですっ!」
姫翠の注意が響く。自身はバスタードソード「ガラティン」に持ち替え。
これにニヤリとする人物がいたッ!
「待ってたよ」
白銀のワイヤーウィップ「ジルベルリヒト」が煌き舞う。
アデリシアだ。
すでに敵の飛び上がりを絡めていた! 渾身の力で引く。
――どしぃ……ん。
うまいこと跳躍途中で引き倒すことができた。
しかし、その衝撃で敵の全身から毒液が全方位に飛んで来た。誰も予測できずさすがに回避不能。
それだけではない。
「ん?」
アデリシア、察した。
再び毒液を振りまきつつ起き上がるアリジゴクの可動範囲を。
そして自分の可動範囲をッ!
ゆらり、と振り向くアリジゴク。まだウイップは絡んでいる。こっちに来る公算が高い。
「あー、危ない」
キーリの声。
アリジゴク、アデリシアに突進していた。キーリが土壁を作るが鎧袖一触。しかし、勢いは減じた。それでも狙われている。
「撃つべし、撃つべし!」
小太の援護が入るが、これも止めるに至らず。
おっと。
アデリシア、狙われているのに動かない。
いや、少し左に移動したか?
ピンと張った命綱をほどくよりちょっとの移動を優先したッ!
ここで桜吹雪が舞った。
「アデリシア君、かわし給え」
一、桜幕符で渾身の援護。敵の行動阻害を狙ったが……。
――ドゴッ……ズシャァァ。
跳ね飛ばされたアデリシア、命綱の衝撃もあり半ば気を失ったようにぐしゃりと大地に落ちた。棍も地から抜けて落ちる。
そのままうずくまり、動かない。
●
敵、突進して止まると再び毒液を全身から拭き出しつつ振り返った。
いや、ぐるぐる回っている。周りの草が枯れ、大地はカラカラの砂になっている。
「巣を作るつもり……ですか?」
させじと小太の必死の長距離攻撃。
「誰か……あ」
射程外の悠月は、隣から出てきた一に気付く。
驚いたのは蝶が舞っていた――いや、蝶に似た光が一から飛んでいき敵に命中していたから。胡蝶符だ。
「ふむ。蛙から蝶が飛んでは可笑しいかね?」
着こなすスーツの合わせに手を添え整えながら、悠月に向き直る一だった。
ともかく、二人の遠距離射撃を受けたアリジゴクは狂ったようにまた暴れはじめた。死に物狂いだ。
やがて一番手近でようやく動き始めたアデリシアにまた向かっていく。
「汎用性に長けているのが機導師。矛となり、盾となるのがわたしの仕事です」
彩萌、突進経路に身体を入れ全力全開で防御障壁。突進は止めたが障壁のガラスが散る。
「二つ持ってきたけど一つずつしか出せないってのがねぇ」
次に割り込んできたのは朱い姿。キーリがアースウォールでアデリシアを守る。
この時、小太。
「アデリシアさん、敵が巣に落ちないように左に……」
遠くから見ていたので分かる。
彼女は命綱を外すより自ら回避するより、突っ込んだ敵がまた巣に戻らないよう、我が身を的にして軌道を逸らしたのだ。
そして、村人を救うため身を投げたと聞くフラの姿が脳裏に浮かんだ。
「僕も……。こ、こっちですー」
小太、無防備に駆け出し射撃した。
敵は土壁で勢いをそがれた後、小太に向かった。
「わわっ!」
後ろに巣はない。もちろん避けるが小脇に食らい吹っ飛ぶ。
この姿を見て、彩萌の、姫翠の、そして悠月の心の中で何かのスイッチが入った!
「無防備になるので支援おねがいします……わたしらしくない戦法ですが、効率を優先します」
駆け出す彩萌。振り返った敵が毒液を吐きびっしゃりと食らうが意に介さない。
というか、その口が彼女の狙いだ。
「敵には散り際に死に花を咲かせてもらおう」
一が桜幕符で援護。
そしてッ!
「肉を切らせて骨を断つ」
銃口を突っ込み、ゼロ距離で機導砲発射!
続いて、姫翠。
「やあっ!」
その横から出てくると、電光石火で疾風剣。半身のまま横一文字で敵を斬る。
――逃げる!
直後、敵を見る者だれもが感じた。
それを止めたのは、悠月。姫翠とは逆から出てきて、ブロウビートから日本刀を大上段。
「これが僕の全力!」
叩き斬った!
ふら、と毒液を撒き後退するアリジゴク。
そこへ小太のコールドショットとキーリのアースバレットが集中。
最後にぶしゅう、と毒液を垂れ流し力尽きた。
一同、喉に渇きを覚えたが事前準備した飲料の補給で事足りた。アデリシアのダメージは大きかったが、すでに起き上がっている。
●
「別の個体や危険個所はないようです」
周りを巡回した彩萌が戻って来て報告する。
「これでよし。……フラさんをお見舞いしに行こう」
残った巣の付近では、悠月が巣を埋めて汗を拭っていた。
「まさか私自身にキュアを使うことになるとは……」
「だいじょーぶ? 焼石に水かもだけど」
アデリシアはもう大丈夫の様子。キーリから受け取り飲んだ水がこぼれ、豊かな胸元を伝っている。
「おーい……」
「あ、フラさん! 出てきていいんですか?」
ここでやって来たフラに姫翠が気付く。
「あ、フラさん。なんとか無事に終わったので……はわわわ!?」
小走りに駆け寄った小太だが、こつんとつまずきまたもフラに抱き着き押し倒すことに。
「なかなか楽しい通りすがりだった。縁があればまた会うこともあるだろう」
一はすべてに背を向け、空を見る。
どこへ蛙……もとい、帰るかは、謎である。
こうして、後にフラが旅先でする話に「ヒトジゴク退治」が加わった。
「フラさん!」
ばたん、と小屋の扉を元気よく開けたのは、緋乃宮 姫翠(ka5031)だった。幼少時の自らの記憶からか、本当に心配そう。
「姫翠さん……わっ!」
ベッドに横になっていたフラは上体を起こして友人の見舞いを喜んだが……すぐに「わっ!」と倒れ込むことになる。
「はふ、げ、元気でよかったですよー。ちょ、ちょっと心配してたのですっ」
姫翠の横から弓月・小太(ka4679)が駆け寄って来て来たのだ。
「うん……小太さんにも心配かけてごめんなさい」
「……って、はわわ!? ご、ごめんなさいですー!?」
ほっとした小太、思わずむぎゅりと抱き着き押し倒してしまっていた。フラに謝られて我に返ると慌てて真っ赤になり離れる。二人ともうつむき加減で、ちらと相手を見て同じ行動したのを見て、くすり。それをみて姫翠もくすりと微笑していたり。
そんな小屋の窓の外。
「あの子はだいじょーぶそーだけど……水、いる? この天気で乾いてそうだけど?」
屋内の様子を見てから横を向いたのは、キーリ(ka4642)。持参したミネラルウオーターを差し出す。今日も視線は眠そうだ。天気が良くてポカポカのお昼寝日和ではあるが、それとは全く関係なく日々そんな感じなのでお間違えなく。
「両生類というわけではないので心配ご無用」
そこにいたのは三里塚 一(ka5736)。アマガエルの頭を模した被り物をしているが、人間である。
「それよりアレは脱水症状をもたらすらしいな。であれば巣もアレが作ったもので間違いは無いだろう」
一、舌が長いかどうかはともかく、よく回る。
「脱水症状対策に僕も持ってきた。すべて終わった後でフラさんをお見舞いして安心させてあげたいね」
キーリの横で霧雨 悠月(ka4130)が頷きながらミネラルウオーターを出して見せる。
おっと。
村人と話している仲間もいるぞ。
「井戸はどこにあります? できれば多めの水を用意しておきたいのですが」
雨月彩萌(ka3925)である。
「桶があればそれを。後方に置いておけばいざという時に役立つ」
アデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)も一緒に手際よく事前準備を進める。
「もちろん、液体を受けないようにする」
ほかに持参した八角棍「紫電」とロープも確認する。
しかしこの時、アデリシアは夢にも思わなかった。
周到な準備があのような事態を引き起こすことになろうとは。
●
さて、村から外れた草原で。
「あー、大きいね。ただならぬ大きさ」
キーリが目を細めて呟いた。眠そうというより呆れているといった感じの視線は、こんもりと砂が盛り上がっている場所に。
「悪くない、悪くない面白いモノだなアレは」
一は頭を左右に小さく揺らしながらそんなことを。もしかしたら興味深く笑っているのかもしれない。
横からそうっ、と悠月が巣に近付く。
巨大なすり鉢状の蟻地獄の巣を覗き込んで一言。
「流石に姿は見せてないかな。被害者も出てるし、早く退治しないと大変だ」
「蟻地獄型の何かなのか、何か型の蟻地獄なのか……ともかく、気をつけていきましょうですー」
小太もついてきたようで、悠月の肩越しにふむふむしたあと、後ろに報告。
おっと、アデリシアも来ていた。
「成る程……これはまさに、蟻地獄ならぬ人地獄……!」
覗いて言う腰には、命綱。背後の大地に八角棍「紫電」を突き立て縛っている。伸び切っているので下に落ちることはない。
「巣を構築するタイプの歪虚ですか」
慎重なアデリシアと対称的に、彩萌がいつもと変わらない様子でつかつかと近寄り覗き込む。
下には悠月の言うように、敵はいない。
「うわ。地面がサラサラです」
姫翠も来て覗き込む。水を含んでいるはずの草原の大地が、砂漠の砂のように変貌しているのだ。
「まったく。もっと砂漠の秘境とかに生息しなさいよ」
ふん、と鼻息荒くキーリ。
「……脱水症状をもたらす、か。であればこの場もアレが作ったもので間違いは無いだろう」
一も縁まで来て確認すると断言する。
「正常ではありませんね。とにかく、巣を構築するタイプの歪虚。相手に有利なフィールドで戦わないのが勝利の鉄則です」
「巻き込まれれば全ての体の水分を奪われて死に至るというわけか。恐ろしいやつだ。巣の外に引きずり出せればいいな」
彩萌とアデリシアが頷き合った。
これで方針は決まった。
姫翠がリカーブボウを構え……中心ではなく巣を崩すようにすり鉢の中間を狙って撃った。
瞬間――。
ざっ!
すり鉢の底の砂が舞った。
「うわっ!」
縁で下を狙う者たちが想定外の攻撃に一瞬ひるむ。転落を狙った攻撃だ。
同時に誰もが目を見開いた!
巣の主、アリジゴクがその頭部を現したのだ。大きなクワガタムシのような顎角が禍々しい。
そしてここでの狩りに慣れている。
砂を引っ掻けつつ出現し、同時に毒液を発射。
狙われたのは……。
「戦闘開始ですね。速やかに殲滅しましょう」
彩萌。
顔を狙って飛んで来た毒液はシールド「フンケルン」でしっかりガード。眼鏡すら濡らせない。
しかしッ!
「ん?!」
足元がぐらついた。
何と、敵は二連射できる様子。足元の砂も狙ったのだ。
当然、砂が崩れ彩萌の黒髪が宙に舞う。
――ぱしっ!
滑落が止まって振り返る彩萌。
「大丈夫?」
背後には悠月がいた。彩萌の手を掴んでいる。
「ありがとう」
静かに言って体勢を立て直すと魔導銃「フリューゲル」で、敵の姿を消した巣の底に機導砲をぶち込むのだった。
●
時は一瞬だけ遡る。
ざっ、と敵が姿を現した時。
「砂に籠っている貴様に光をくれてやろう!」
うわっ、とひるんだ後、アデリシアはすぐにマイヤワンドを掲げホーリーライトをぶち込む。
「体はスライムのようにぶよぶよですね~」
同時に小太、醜く太った敵の体に少し嫌悪感を浮かべて魔導銃「魔弾」をぶち込む。
この間に別の場所で彩萌が集中攻撃を食らっていた。
敵は一撃離脱。
砂に再び潜るとしーんとなった。
「素早いのです」
姫翠、もう一撃いきましょうか、という感じに仲間をちらと見る。
「これはまた厄介ねー。一枚作っておくから活用して」
キーリ、魔杖「スキールニル」を振るい奇襲対策のアースウォールを作っておく。
「今度は直接ぶち込んでみるわ」
一撃後、すぐに頭を引っ込めていたアデリシアが再び縁から顔を出す。
「顔を出したら狙います!」
「キーリさん、この壁借りますねぇ。……銃がどの程度効いているのかですが…これで凍らせてみるのですよー」
姫翠と小太もやる気である。
「ありがとう。次に狙われてももう大丈夫です」
彩萌は眼鏡の位置を整えつつ、悠月に感謝。
「それじゃ、僕も……」
悠月、クナイを構えた。
「ふむ。悠月君の代わりに精々に動き守りとなろう」
一も呪符をつまんで構えた。
これで準備完了。待ちの敵の次の一手は分かっている。
「行きます。……闇が好きなら存分に食らうがいい!」
アデリシア、巣の底に向けて今度はシャドウブリットを放った。
「これで顔を出すといいわ!」
同時にキーリがアースバレット。石つぶてで砂の上からダメージを狙う。
どうん、と命中すると砂が舞い散り、同時に周囲の砂が崩れた。
「……来なさい」
彩萌、遺恨の念とともに呟く。
そして砂が舞った。先ほどと同じだッ!
狙われたのは、悠月。
「悠月さん!」
姫翠が叫びつつ矢を放つ。
「ユッキー!」
悠月を狙った毒液はキーリの出した土壁に当たる。すぐに乾燥し崩れるが……。
「キーリさん、ありがとう」
悠月、壁がなくなると同時にクナイ投擲。
「どこを見ているんですか! あなたの相手はわたしです」
彩萌、こっちに来なかった不満を込め機導砲どーん。
もちろんこれらは命中。
が、すぐに敵は引っ込む。
ちなみに今回、もう一発は別の人物を狙っていた。
「一さん!」
振り向き叫ぶアデリシア。
その時見たものは。
「ふむ。使える」
一、符を光り輝く鳥の姿に変えて投げつけ、攻撃を受け止めていた。上体が仰け反っているのは、もしも失敗したときのため。成功し、その格好のまま手ごたえをかみしめる。
そして巣の方では。
「そっちが乾燥ならこっちは冷凍なのですー」
小太が渾身のレイターコールドショット。敵の動きは跳ね上がって戻るだけなのでこの一発はあまり影響ないようで。
またも砂に潜り、沈黙が訪れた。
ただし、今回はこちらの手数が多かった。
「このままならこの調子でいいだろう」
「土竜叩きじみてきたな」
彩萌とアデリシアの呟き。
「アースウォールってこんな感じなのね。格好いいわ。こう、大地の精霊使いっぽくて。どう?」
「格好いいけど、呑気です」
キーリと姫翠は「間がある」と読んでちょっと息抜き。
「なるべく近寄られないように…撃つべし、撃つべし、なのですっ」
「巣は歩きづらいかな? もしも出てこないなら……」
もちろん小太は近寄らない分、警戒継続。ただ、間があることはあるようで、悠月はこのまま籠られるかも、と腰の日本刀に手を掛け突撃も考慮に入れていた。
「踏み込むのは諸君らに任せるとも」
聞いた一、悠月の意見もやむなしと考えている。
と、その時だった!
●
――ざばあっ!
底から砂が舞った!
今までより多い。
一瞬、全員が砂の雨に腕をかざし目を細めた。
その前を、巨体が一瞬のうちに上に!
「跳躍?」
彩萌、見上げて息を飲む。
「気を付けて下さい。押しつぶしがあるかもですっ!」
姫翠の注意が響く。自身はバスタードソード「ガラティン」に持ち替え。
これにニヤリとする人物がいたッ!
「待ってたよ」
白銀のワイヤーウィップ「ジルベルリヒト」が煌き舞う。
アデリシアだ。
すでに敵の飛び上がりを絡めていた! 渾身の力で引く。
――どしぃ……ん。
うまいこと跳躍途中で引き倒すことができた。
しかし、その衝撃で敵の全身から毒液が全方位に飛んで来た。誰も予測できずさすがに回避不能。
それだけではない。
「ん?」
アデリシア、察した。
再び毒液を振りまきつつ起き上がるアリジゴクの可動範囲を。
そして自分の可動範囲をッ!
ゆらり、と振り向くアリジゴク。まだウイップは絡んでいる。こっちに来る公算が高い。
「あー、危ない」
キーリの声。
アリジゴク、アデリシアに突進していた。キーリが土壁を作るが鎧袖一触。しかし、勢いは減じた。それでも狙われている。
「撃つべし、撃つべし!」
小太の援護が入るが、これも止めるに至らず。
おっと。
アデリシア、狙われているのに動かない。
いや、少し左に移動したか?
ピンと張った命綱をほどくよりちょっとの移動を優先したッ!
ここで桜吹雪が舞った。
「アデリシア君、かわし給え」
一、桜幕符で渾身の援護。敵の行動阻害を狙ったが……。
――ドゴッ……ズシャァァ。
跳ね飛ばされたアデリシア、命綱の衝撃もあり半ば気を失ったようにぐしゃりと大地に落ちた。棍も地から抜けて落ちる。
そのままうずくまり、動かない。
●
敵、突進して止まると再び毒液を全身から拭き出しつつ振り返った。
いや、ぐるぐる回っている。周りの草が枯れ、大地はカラカラの砂になっている。
「巣を作るつもり……ですか?」
させじと小太の必死の長距離攻撃。
「誰か……あ」
射程外の悠月は、隣から出てきた一に気付く。
驚いたのは蝶が舞っていた――いや、蝶に似た光が一から飛んでいき敵に命中していたから。胡蝶符だ。
「ふむ。蛙から蝶が飛んでは可笑しいかね?」
着こなすスーツの合わせに手を添え整えながら、悠月に向き直る一だった。
ともかく、二人の遠距離射撃を受けたアリジゴクは狂ったようにまた暴れはじめた。死に物狂いだ。
やがて一番手近でようやく動き始めたアデリシアにまた向かっていく。
「汎用性に長けているのが機導師。矛となり、盾となるのがわたしの仕事です」
彩萌、突進経路に身体を入れ全力全開で防御障壁。突進は止めたが障壁のガラスが散る。
「二つ持ってきたけど一つずつしか出せないってのがねぇ」
次に割り込んできたのは朱い姿。キーリがアースウォールでアデリシアを守る。
この時、小太。
「アデリシアさん、敵が巣に落ちないように左に……」
遠くから見ていたので分かる。
彼女は命綱を外すより自ら回避するより、突っ込んだ敵がまた巣に戻らないよう、我が身を的にして軌道を逸らしたのだ。
そして、村人を救うため身を投げたと聞くフラの姿が脳裏に浮かんだ。
「僕も……。こ、こっちですー」
小太、無防備に駆け出し射撃した。
敵は土壁で勢いをそがれた後、小太に向かった。
「わわっ!」
後ろに巣はない。もちろん避けるが小脇に食らい吹っ飛ぶ。
この姿を見て、彩萌の、姫翠の、そして悠月の心の中で何かのスイッチが入った!
「無防備になるので支援おねがいします……わたしらしくない戦法ですが、効率を優先します」
駆け出す彩萌。振り返った敵が毒液を吐きびっしゃりと食らうが意に介さない。
というか、その口が彼女の狙いだ。
「敵には散り際に死に花を咲かせてもらおう」
一が桜幕符で援護。
そしてッ!
「肉を切らせて骨を断つ」
銃口を突っ込み、ゼロ距離で機導砲発射!
続いて、姫翠。
「やあっ!」
その横から出てくると、電光石火で疾風剣。半身のまま横一文字で敵を斬る。
――逃げる!
直後、敵を見る者だれもが感じた。
それを止めたのは、悠月。姫翠とは逆から出てきて、ブロウビートから日本刀を大上段。
「これが僕の全力!」
叩き斬った!
ふら、と毒液を撒き後退するアリジゴク。
そこへ小太のコールドショットとキーリのアースバレットが集中。
最後にぶしゅう、と毒液を垂れ流し力尽きた。
一同、喉に渇きを覚えたが事前準備した飲料の補給で事足りた。アデリシアのダメージは大きかったが、すでに起き上がっている。
●
「別の個体や危険個所はないようです」
周りを巡回した彩萌が戻って来て報告する。
「これでよし。……フラさんをお見舞いしに行こう」
残った巣の付近では、悠月が巣を埋めて汗を拭っていた。
「まさか私自身にキュアを使うことになるとは……」
「だいじょーぶ? 焼石に水かもだけど」
アデリシアはもう大丈夫の様子。キーリから受け取り飲んだ水がこぼれ、豊かな胸元を伝っている。
「おーい……」
「あ、フラさん! 出てきていいんですか?」
ここでやって来たフラに姫翠が気付く。
「あ、フラさん。なんとか無事に終わったので……はわわわ!?」
小走りに駆け寄った小太だが、こつんとつまずきまたもフラに抱き着き押し倒すことに。
「なかなか楽しい通りすがりだった。縁があればまた会うこともあるだろう」
一はすべてに背を向け、空を見る。
どこへ蛙……もとい、帰るかは、謎である。
こうして、後にフラが旅先でする話に「ヒトジゴク退治」が加わった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談場所 雨月彩萌(ka3925) 人間(リアルブルー)|20才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/10/13 01:06:17 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/10/12 17:32:16 |