ゲスト
(ka0000)
【聖呪】前と後ろと、ベリベリデンジャー
マスター:練子やきも

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/10/17 22:00
- 完成日
- 2015/10/25 21:34
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「お姉さんお姉さん、知ってましたか!? あのリゼリオのおっきな建物って、空を飛んで人間の形に変形するんだそうですよ!」
「冷やかしなら帰って下さい」
「ハンターさんに聞いたんだから間違いないんですよ〜!」
黄色いポニーテールをピコピコ揺らしながら、ブー、と頬を膨らませ、ハンターオフィスの受付嬢へとなおも言い募るその少女の名はエルミィ。機導師ではないアルケミストを目指す、酒造りの腕だけ確かな新米ハンターである。
そのエルミィを鼻であしらいつつも、気を逸らさなければ静かになりそうもない彼女を宥めるために依頼を見繕う受付嬢だったが
「……これ位しかありませんけど、あなたの場合安全な筈の依頼でも襲われた前例があるんですよね……」
「わかりました! 行ってきま〜す!」
渋る受付嬢の手から机の上をスライディングして引ったくるように依頼書を奪い取ると、エルミィは『準備』をするため自宅へと走った。
●補給戦
グラズヘイム王国が北方、茨ゴブリンとの戦地の後方の補給部隊と向かう森の中を横切る輸送路。速度を重視して選択された、茨ゴブリン達の勢力圏に程近いルートを、輸送隊の馬車は走っていた。人間を丸呑みにできそうな大蛇の目撃情報のあった場所にも近い場所を通るのだが、その大蛇は既にハンターにより退治されたとの報告もあってルート選択の支障とはならなかった。
薬品、弾薬、食料、運ぶべき物は山ほどある。その5台の馬車にはハンターも配備され、万全の体制かと思われた。
「ゴブリンが居るな……。クソっ、奴らの偵察範囲からはかなり南に逸れている筈なのに」
「というかこいつら、ゴブリンにしては妙だ。生気が感じられないというか、これじゃまるで……」
続ける言葉を飲み込んだ兵士の視線の先、それは隊の横手の林の中。
まるで雑魔のように、負のマテリアルを漲らせたそのゴブリン達は、肉を持ったスケルトンの群れのように整然と武器を構える。その姿は茨のゴブリン達の統率された軍隊の動きにも似て……。
「だいじょうぶ、ハンターさん達がついてますよー! ってわたしもハンターでした! ……わたしもハンターですよ!」
何故か2回言う少女の呑気な声に、戦闘前の緊張に張り詰めた兵士達の心に軽い余裕が生まれる。
「そうだな、ハンターさん達も戦闘準備を……ってもう済んでますね。我々は補給部隊、戦うのが仕事ではありません、切り抜けましょう!」
隊長格のその男がそう告げながら馬にムチを入れ、先頭を走り始めた直後、その身体が悲鳴と共に木の上に飛び上がった。
嘶きながら逃げていった馬に目もくれず、男を咥えたまま樹上からドサッと落ちて来たのは、10メートルはあろうかという、浅黒い斑の鱗を纏った巨大なヘビ。その赤く光る瞳と、負の方向へと歪にゆがんだマテリアルは……雑魔。
期せずして挟み討ちされる形となった輸送隊に向け、感情を見せず、言葉すら発しないゴブリンの群れが、陣形を保ちつつ前進を開始した。
「冷やかしなら帰って下さい」
「ハンターさんに聞いたんだから間違いないんですよ〜!」
黄色いポニーテールをピコピコ揺らしながら、ブー、と頬を膨らませ、ハンターオフィスの受付嬢へとなおも言い募るその少女の名はエルミィ。機導師ではないアルケミストを目指す、酒造りの腕だけ確かな新米ハンターである。
そのエルミィを鼻であしらいつつも、気を逸らさなければ静かになりそうもない彼女を宥めるために依頼を見繕う受付嬢だったが
「……これ位しかありませんけど、あなたの場合安全な筈の依頼でも襲われた前例があるんですよね……」
「わかりました! 行ってきま〜す!」
渋る受付嬢の手から机の上をスライディングして引ったくるように依頼書を奪い取ると、エルミィは『準備』をするため自宅へと走った。
●補給戦
グラズヘイム王国が北方、茨ゴブリンとの戦地の後方の補給部隊と向かう森の中を横切る輸送路。速度を重視して選択された、茨ゴブリン達の勢力圏に程近いルートを、輸送隊の馬車は走っていた。人間を丸呑みにできそうな大蛇の目撃情報のあった場所にも近い場所を通るのだが、その大蛇は既にハンターにより退治されたとの報告もあってルート選択の支障とはならなかった。
薬品、弾薬、食料、運ぶべき物は山ほどある。その5台の馬車にはハンターも配備され、万全の体制かと思われた。
「ゴブリンが居るな……。クソっ、奴らの偵察範囲からはかなり南に逸れている筈なのに」
「というかこいつら、ゴブリンにしては妙だ。生気が感じられないというか、これじゃまるで……」
続ける言葉を飲み込んだ兵士の視線の先、それは隊の横手の林の中。
まるで雑魔のように、負のマテリアルを漲らせたそのゴブリン達は、肉を持ったスケルトンの群れのように整然と武器を構える。その姿は茨のゴブリン達の統率された軍隊の動きにも似て……。
「だいじょうぶ、ハンターさん達がついてますよー! ってわたしもハンターでした! ……わたしもハンターですよ!」
何故か2回言う少女の呑気な声に、戦闘前の緊張に張り詰めた兵士達の心に軽い余裕が生まれる。
「そうだな、ハンターさん達も戦闘準備を……ってもう済んでますね。我々は補給部隊、戦うのが仕事ではありません、切り抜けましょう!」
隊長格のその男がそう告げながら馬にムチを入れ、先頭を走り始めた直後、その身体が悲鳴と共に木の上に飛び上がった。
嘶きながら逃げていった馬に目もくれず、男を咥えたまま樹上からドサッと落ちて来たのは、10メートルはあろうかという、浅黒い斑の鱗を纏った巨大なヘビ。その赤く光る瞳と、負の方向へと歪にゆがんだマテリアルは……雑魔。
期せずして挟み討ちされる形となった輸送隊に向け、感情を見せず、言葉すら発しないゴブリンの群れが、陣形を保ちつつ前進を開始した。
リプレイ本文
大蛇に襲われた隊長の上げた悲鳴に応えたのは、ひとひらの花弁。覚醒したモニカ(ka1736)の周囲に舞う色とりどりの花弁が一斉に赤黒く染まりゆき、木に登ろうとした大蛇の鼻先に花の幻影を散らす。
「隊長さんを、食べたらメッ!! なのよっ!」
やたら緩い気合の声と共に放たれた一撃に、大蛇の動きが一瞬止まり、虫の音すらない周囲に静寂が満ちる。
その刹那の静寂を破ったのは、フルスロットルの魔導バイクの轟音と、軍馬の嘶き。
「そいつはテメーの餌じゃねーんだ、とりあえず返しやがれ!!」
軍馬シーザーで駆け付けた岩井崎 旭(ka0234)が、騎馬の勢いのままに遠心力を込めて叩きつけた巨斧が、大蛇が上りかけていた木を叩き斬りながら大蛇の鱗を激しく撃ち付け
「素直にゴブリンでも食ってろってんだよ!」
倒れる巨木と大蛇の間を縫うように、エンジン全開のまま通り抜けざまに振るったエヴァンス・カルヴィ(ka0639)の大剣が大蛇を殴り付ける。
「……チッ、前より硬くなってやがるな……っと!」
生前の大蛇を斃したうちの1人であるエヴァンスだったが、以前とは違う……まるで岩を叩いたような手応え。僅かに痺れる手に顔をしかめる暇もなく、すれ違いざまに大蛇が横殴りに振り回して来た丸太のような尾を各々の武器で受け止め、各々の乗騎ごと飛び下がるエヴァンスと旭。
倒れかかって来た木を押し退け、怒りの声を上げる大蛇は、確実にダメージは与えている筈だが、未だ隊長を離す様子は無い。
(エルミィにアレをぶつけて欲しいとこなんだが……)
チラッとエルミィを振り返るレイオス・アクアウォーカー(ka1990)。エルミィの方はフラスコを構えてやる気満々といった表情だが、彼女が乗っていた馬車は後方、まだ距離がある上に……投げるのはエルミィである。不安要素しか無かったが
「……エルミィ、俺(と隊長)ごとやれー!」
「はいっ!」
タイミングを見計らって蛇の頭に飛び付いたレイオスが、大蛇の口に刀を突き入れながら指示を出す。
レイオスの言葉に合わせて投げられたエルミィのフラスコが……狙い過ち、隊長の顔面に命中した。
「ぐあーっ! 目が! 目がーっ!」
「蛇が毒を吐きやがったな! 大丈夫か!」
大蛇の口を開けさせる為、突っ込んだ刀の背を渾身の力で殴り付けつつ、迷わず大蛇に責任を押し付けるレイオスだったが、とりあえず大蛇の口を開かせる事には成功する。
「まだ閉じちゃ駄目よッ!」
レイオスと共に大蛇の頭に飛び付いたメル・アイザックス(ka0520)が
「ついでに鉄分も受け取りッ!」
つっかい棒代わりにガンシールドを大蛇の口に突っ込み、閉じられないようにして……隊長を全力で引き抜いた。
「よし!」
最初の作戦の成功に軽く拳を握る誰かの声と共に、メルがガンシールドの引き金を……引いた。
●違和たるゴブリン
「……どうぞ、お通り下さい……我々を倒す事が出来ましたら」
それは拒絶する言の葉。竜面の奥で目を細めたシルヴィア=ライゼンシュタイン(ka0338)が、両手に構えたアサルトライフルの引き金を引き、放たれた銃弾がゴブリン達が走り踏み出す足元を撃ち抜き、その足を止める。
「大蛇と隊長さんはお願いするね、ざくろは後ろのゴブリンをやっつけて来るから!」
仲間にそう告げて魔導バイクで後方に走り出していた時音 ざくろ(ka1250)は、既に間近へと走り来ていたゴブリンと遭遇する事となった。
「馬車には近付けさせないもん……喰らえ、必殺、デルタエンド!」
武装は取り付けられていないバイクから放たれた機導術の光条が、白い光の放物線を描きながらゴブリン達を貫く。離れた位置で攻撃の効果を確認しながらバイクに跨り不敵な笑みを浮かべるざくろは、再度アクセルを捻った。
「この先に行きたきゃ、ミィリア達を倒してからにしなさい……でござる!」
背後に兵士達を引き連れて、なんだか戦国武将っぽくなっているミィリア(ka2689)が馬上から名乗りを上げ、槍を振り回しながらゴブリンの群れへと討ち入る。
その後を徒歩にて攻め寄せる兵士達も相まって、そこだけプチ戦国絵巻となっていた。
対するゴブリン達の様子は、勢い任せの突撃以外何もない通常のゴブリンの様子とは異なり、淡々と陣形を整え、武器を振るう。
声すら発さず陣を組み、ハンターと兵士を迎え討つその動きは1個の生物のようでもあった。
●転
「よしパスだ! 片付いたら、ゴブリンが本腰入れて攻め込んで来る前に移動の準備頼むぜ!」
メルが大蛇から引き抜いた隊長の身体を、旭がすかさず斧で器用に引っ掛けて、大蛇に再度飲まれないよう後方へと放り投げる。
奪われた獲物を惜しむようにそちらに首を曲げる、口から硝煙と若干スパイシーな臭いの混じった煙を吐いている大蛇の頭と格闘しているメルが
「エルミィ君、隊長を馬車にッ!」
エルミィの方を振り返って指示を出す。その言葉に頷いて、グッタリ倒れたままの隊長の足を持って引きずっていくエルミィだが……
ガン、ゴン、と色々な物に隊長の頭がぶつかる音は、聞かなかった事にする方向で全員の意思が一致した。
隊長を運ぶエルミィを守るように後退を見届けてから、ゴブリンの方へと軍馬の首を廻らせる旭。
「ここはもう大丈夫、ゴブリンの方も苦戦するかもだから、移動の早い人はそっちにッ!」
「いやいやいや、全然大丈夫そうには見えねぇけどな!」
大蛇の頭にしがみ付き、どちらかというと大蛇に飲まれかけているヒトっぽいビジュアルになっているメルの言葉に全力でツッコミを入れつつ、戦馬を走らせる。
片足を軸にしてバイクをターンさせながらチラッとゴブリンとの戦闘に視線を移すエヴァンス。
メルの言いたい事は分かっている。ハンターはともかく、それに付いて走って行った兵士達の方は放っておく訳にもいかなそうだった。
「……チッ、任せるぞ!」
どちらも見捨てる訳には行かない。……仲間を信じ、全開でアクセルを吹かしたエヴァンスのバイクは、後方で戦う仲間の元へ走った。
「蛇さん、ほらほらー、お口あーんして、なのよ〜」
木々が盾となるように軍馬を走らせつつ、タイミングを見計らいながら牽制の射撃を繰り返すモニカの前で
「厄介な尻尾しやがって……テメーぜってー後で酒のツマミにしてやるからな!」
受けたダメージにマテリアルヒーリングで耐えながら、忙しなく走り回っては雷撃刀を叩き付けるレイオス。
……そして……
「絡むのは慣れてるけど、絡まれるのはァァァァ〜!」
頭にしがみついたままのメルに焦れた大蛇がメルに狙いを定め、巻きつこうとし始める。
それでも離れないメルを援護するために走り込むレイオスとモニカの前で、大蛇がメルに向けてその口を大きく開き……
「いい加減倒れやがれ!」
「お行儀の悪いお口は、閉じちゃえ! なのよっ!」
そのタイミングを見計らって一斉に叩き込んだ攻撃が大蛇の口を貫き、ゆっくりとその動きを止めた大蛇は、やがて崩れるように黒い粒子の塊となり……風に流されるように中空へと散っていった。
●乱戦
一方ゴブリンとの戦闘は、少しずつ、だが確実に、徐々に徐々にと不利な状況へと持って行かれていた。
「ざくろに引き付けたいんだけど……乗ってこないなぁ」
「そうですね、一体誰が教えたんでしょうか……。ゴブリンは頭が良くないというイメージがあったのですが、これでは私達はともかく兵士さん達が……」
光条を放ちながら戦地をバイクで駆け抜けるざくろだったが、引き付けようにも乗って来ず。最終的には、槍を振り回して楽しそうに暴れ回るミィリアの周りで敵味方、ゴブリンと兵士の入り乱れた乱戦となっていた。
ハンターに攻撃を引き付けたいこちらと、先ずはハンターを避けて倒しやすい兵士から攻めようとするゴブリン。
その戦術的な動きはあまりに普通のゴブリンとかけ離れていて、ざくろとシルヴィア、ミィリアの3人が奮闘していたものの、兵士を守り切れる所までには足りない、手数……。
「要はミィリア達がぜんぶ倒せば良いのでござる!」
傷付いた兵士を後ろに庇い、薙ぎ払う槍と共に、割り切るミィリア。
「そうですね、やらせませんよ」
ひとつ頷いてシルヴィアが降らせた冷たい矢の雨がゴブリン達の動きを鈍らせる。
「……うん、そうだね! 先ずはできる事からだよ! 必殺! 超・重・斬!」
気持ちを切り替えるが早いか、早速とばかりにとりあえず必殺技から入ったざくろのグレートソードが巨大化し、ゴブリンのうちの1体を斬り潰し、トドメを刺す。
調子良く勢い付く兵士達とハンター達の背後から響く、軍馬の蹄とバイクのエンジン音。
「待たせたな」
「って言っても、もう俺達の出番は無さそうなんだが……」
声と共に振るわれた、吹き荒れる巨斧のひと薙ぎと『嵐』の名を持つ大剣の一閃が、戦いの終わりを告げていた。
●超時空要塞的合体ロボット サルヴァトーレ・ロッソ
「補給部隊という話だった筈なのに、まさかの戦闘だったねー」
走り始めた馬車の中、依頼の予定外だった戦闘について話し始めるメル。死者は出なかったとは言え、兵士の中にはそれなりの怪我人が出ていた。
「べりべりでんじゃーだったなのよっ!」
それに応じたモニカが身振り手振りを交じえながら、全身でべりべりでんじゃーを表現している。べりべりでんじゃーとは、何やらウネウネした物らしい。
「ええ、兵士の方々もどちらかと言うと後方支援が得意な方々のようですしね」
シルヴィアとしては、兵士達の戦力や練度の不足が気になる所だったが、今はゴブリンとの戦争中、輸送部隊に回せる兵士はそう多くはないのかもしれなかった。
「まぁ何にせよ、ゴブリンの増援が来ても厄介だ、勝ち逃げって事で、気分良くずらかろうぜ!」
「そうだね、撤退しようでござる〜」
油断なく周囲に目を光らせながらも、軽く伸びをしながらの旭の提案に、ミィリアが隣で一緒に伸びをしながら答える。
戦いは終わり、ひとときの休息もまた戦士の務めだろう。そしてその脇では一時の休息がおかしな方向へと……。
「ほんとですか!?」
いきなり叫んだエルミィの声に驚く者、納得する者、そして
「ああ、勿論。実はアレが人型に変形するには別の船が必要なんだ!」
「へぇー、それ本当!? ざくろ知らなかったなぁ〜……やっぱり腕に空母がくっ付いてパンチしたりするのかな!? 人型になるとこ、見てみたいよね」
レイオスのホラ話を、エルミィと一緒になって目をキラキラさせながら信じ込んでいるざくろと、更に積み重なってゆく勘違いの連鎖。
「……そんな訳ねーだろ……」
脱力感に頭を抱えたエヴァンスのツッコミの声は誰にも届かず……。
レイオスのホラ話大会は、信じやすい若干名への感染拡大を招きつつ、夕飯の時間まで続いたそうな。
「隊長さんを、食べたらメッ!! なのよっ!」
やたら緩い気合の声と共に放たれた一撃に、大蛇の動きが一瞬止まり、虫の音すらない周囲に静寂が満ちる。
その刹那の静寂を破ったのは、フルスロットルの魔導バイクの轟音と、軍馬の嘶き。
「そいつはテメーの餌じゃねーんだ、とりあえず返しやがれ!!」
軍馬シーザーで駆け付けた岩井崎 旭(ka0234)が、騎馬の勢いのままに遠心力を込めて叩きつけた巨斧が、大蛇が上りかけていた木を叩き斬りながら大蛇の鱗を激しく撃ち付け
「素直にゴブリンでも食ってろってんだよ!」
倒れる巨木と大蛇の間を縫うように、エンジン全開のまま通り抜けざまに振るったエヴァンス・カルヴィ(ka0639)の大剣が大蛇を殴り付ける。
「……チッ、前より硬くなってやがるな……っと!」
生前の大蛇を斃したうちの1人であるエヴァンスだったが、以前とは違う……まるで岩を叩いたような手応え。僅かに痺れる手に顔をしかめる暇もなく、すれ違いざまに大蛇が横殴りに振り回して来た丸太のような尾を各々の武器で受け止め、各々の乗騎ごと飛び下がるエヴァンスと旭。
倒れかかって来た木を押し退け、怒りの声を上げる大蛇は、確実にダメージは与えている筈だが、未だ隊長を離す様子は無い。
(エルミィにアレをぶつけて欲しいとこなんだが……)
チラッとエルミィを振り返るレイオス・アクアウォーカー(ka1990)。エルミィの方はフラスコを構えてやる気満々といった表情だが、彼女が乗っていた馬車は後方、まだ距離がある上に……投げるのはエルミィである。不安要素しか無かったが
「……エルミィ、俺(と隊長)ごとやれー!」
「はいっ!」
タイミングを見計らって蛇の頭に飛び付いたレイオスが、大蛇の口に刀を突き入れながら指示を出す。
レイオスの言葉に合わせて投げられたエルミィのフラスコが……狙い過ち、隊長の顔面に命中した。
「ぐあーっ! 目が! 目がーっ!」
「蛇が毒を吐きやがったな! 大丈夫か!」
大蛇の口を開けさせる為、突っ込んだ刀の背を渾身の力で殴り付けつつ、迷わず大蛇に責任を押し付けるレイオスだったが、とりあえず大蛇の口を開かせる事には成功する。
「まだ閉じちゃ駄目よッ!」
レイオスと共に大蛇の頭に飛び付いたメル・アイザックス(ka0520)が
「ついでに鉄分も受け取りッ!」
つっかい棒代わりにガンシールドを大蛇の口に突っ込み、閉じられないようにして……隊長を全力で引き抜いた。
「よし!」
最初の作戦の成功に軽く拳を握る誰かの声と共に、メルがガンシールドの引き金を……引いた。
●違和たるゴブリン
「……どうぞ、お通り下さい……我々を倒す事が出来ましたら」
それは拒絶する言の葉。竜面の奥で目を細めたシルヴィア=ライゼンシュタイン(ka0338)が、両手に構えたアサルトライフルの引き金を引き、放たれた銃弾がゴブリン達が走り踏み出す足元を撃ち抜き、その足を止める。
「大蛇と隊長さんはお願いするね、ざくろは後ろのゴブリンをやっつけて来るから!」
仲間にそう告げて魔導バイクで後方に走り出していた時音 ざくろ(ka1250)は、既に間近へと走り来ていたゴブリンと遭遇する事となった。
「馬車には近付けさせないもん……喰らえ、必殺、デルタエンド!」
武装は取り付けられていないバイクから放たれた機導術の光条が、白い光の放物線を描きながらゴブリン達を貫く。離れた位置で攻撃の効果を確認しながらバイクに跨り不敵な笑みを浮かべるざくろは、再度アクセルを捻った。
「この先に行きたきゃ、ミィリア達を倒してからにしなさい……でござる!」
背後に兵士達を引き連れて、なんだか戦国武将っぽくなっているミィリア(ka2689)が馬上から名乗りを上げ、槍を振り回しながらゴブリンの群れへと討ち入る。
その後を徒歩にて攻め寄せる兵士達も相まって、そこだけプチ戦国絵巻となっていた。
対するゴブリン達の様子は、勢い任せの突撃以外何もない通常のゴブリンの様子とは異なり、淡々と陣形を整え、武器を振るう。
声すら発さず陣を組み、ハンターと兵士を迎え討つその動きは1個の生物のようでもあった。
●転
「よしパスだ! 片付いたら、ゴブリンが本腰入れて攻め込んで来る前に移動の準備頼むぜ!」
メルが大蛇から引き抜いた隊長の身体を、旭がすかさず斧で器用に引っ掛けて、大蛇に再度飲まれないよう後方へと放り投げる。
奪われた獲物を惜しむようにそちらに首を曲げる、口から硝煙と若干スパイシーな臭いの混じった煙を吐いている大蛇の頭と格闘しているメルが
「エルミィ君、隊長を馬車にッ!」
エルミィの方を振り返って指示を出す。その言葉に頷いて、グッタリ倒れたままの隊長の足を持って引きずっていくエルミィだが……
ガン、ゴン、と色々な物に隊長の頭がぶつかる音は、聞かなかった事にする方向で全員の意思が一致した。
隊長を運ぶエルミィを守るように後退を見届けてから、ゴブリンの方へと軍馬の首を廻らせる旭。
「ここはもう大丈夫、ゴブリンの方も苦戦するかもだから、移動の早い人はそっちにッ!」
「いやいやいや、全然大丈夫そうには見えねぇけどな!」
大蛇の頭にしがみ付き、どちらかというと大蛇に飲まれかけているヒトっぽいビジュアルになっているメルの言葉に全力でツッコミを入れつつ、戦馬を走らせる。
片足を軸にしてバイクをターンさせながらチラッとゴブリンとの戦闘に視線を移すエヴァンス。
メルの言いたい事は分かっている。ハンターはともかく、それに付いて走って行った兵士達の方は放っておく訳にもいかなそうだった。
「……チッ、任せるぞ!」
どちらも見捨てる訳には行かない。……仲間を信じ、全開でアクセルを吹かしたエヴァンスのバイクは、後方で戦う仲間の元へ走った。
「蛇さん、ほらほらー、お口あーんして、なのよ〜」
木々が盾となるように軍馬を走らせつつ、タイミングを見計らいながら牽制の射撃を繰り返すモニカの前で
「厄介な尻尾しやがって……テメーぜってー後で酒のツマミにしてやるからな!」
受けたダメージにマテリアルヒーリングで耐えながら、忙しなく走り回っては雷撃刀を叩き付けるレイオス。
……そして……
「絡むのは慣れてるけど、絡まれるのはァァァァ〜!」
頭にしがみついたままのメルに焦れた大蛇がメルに狙いを定め、巻きつこうとし始める。
それでも離れないメルを援護するために走り込むレイオスとモニカの前で、大蛇がメルに向けてその口を大きく開き……
「いい加減倒れやがれ!」
「お行儀の悪いお口は、閉じちゃえ! なのよっ!」
そのタイミングを見計らって一斉に叩き込んだ攻撃が大蛇の口を貫き、ゆっくりとその動きを止めた大蛇は、やがて崩れるように黒い粒子の塊となり……風に流されるように中空へと散っていった。
●乱戦
一方ゴブリンとの戦闘は、少しずつ、だが確実に、徐々に徐々にと不利な状況へと持って行かれていた。
「ざくろに引き付けたいんだけど……乗ってこないなぁ」
「そうですね、一体誰が教えたんでしょうか……。ゴブリンは頭が良くないというイメージがあったのですが、これでは私達はともかく兵士さん達が……」
光条を放ちながら戦地をバイクで駆け抜けるざくろだったが、引き付けようにも乗って来ず。最終的には、槍を振り回して楽しそうに暴れ回るミィリアの周りで敵味方、ゴブリンと兵士の入り乱れた乱戦となっていた。
ハンターに攻撃を引き付けたいこちらと、先ずはハンターを避けて倒しやすい兵士から攻めようとするゴブリン。
その戦術的な動きはあまりに普通のゴブリンとかけ離れていて、ざくろとシルヴィア、ミィリアの3人が奮闘していたものの、兵士を守り切れる所までには足りない、手数……。
「要はミィリア達がぜんぶ倒せば良いのでござる!」
傷付いた兵士を後ろに庇い、薙ぎ払う槍と共に、割り切るミィリア。
「そうですね、やらせませんよ」
ひとつ頷いてシルヴィアが降らせた冷たい矢の雨がゴブリン達の動きを鈍らせる。
「……うん、そうだね! 先ずはできる事からだよ! 必殺! 超・重・斬!」
気持ちを切り替えるが早いか、早速とばかりにとりあえず必殺技から入ったざくろのグレートソードが巨大化し、ゴブリンのうちの1体を斬り潰し、トドメを刺す。
調子良く勢い付く兵士達とハンター達の背後から響く、軍馬の蹄とバイクのエンジン音。
「待たせたな」
「って言っても、もう俺達の出番は無さそうなんだが……」
声と共に振るわれた、吹き荒れる巨斧のひと薙ぎと『嵐』の名を持つ大剣の一閃が、戦いの終わりを告げていた。
●超時空要塞的合体ロボット サルヴァトーレ・ロッソ
「補給部隊という話だった筈なのに、まさかの戦闘だったねー」
走り始めた馬車の中、依頼の予定外だった戦闘について話し始めるメル。死者は出なかったとは言え、兵士の中にはそれなりの怪我人が出ていた。
「べりべりでんじゃーだったなのよっ!」
それに応じたモニカが身振り手振りを交じえながら、全身でべりべりでんじゃーを表現している。べりべりでんじゃーとは、何やらウネウネした物らしい。
「ええ、兵士の方々もどちらかと言うと後方支援が得意な方々のようですしね」
シルヴィアとしては、兵士達の戦力や練度の不足が気になる所だったが、今はゴブリンとの戦争中、輸送部隊に回せる兵士はそう多くはないのかもしれなかった。
「まぁ何にせよ、ゴブリンの増援が来ても厄介だ、勝ち逃げって事で、気分良くずらかろうぜ!」
「そうだね、撤退しようでござる〜」
油断なく周囲に目を光らせながらも、軽く伸びをしながらの旭の提案に、ミィリアが隣で一緒に伸びをしながら答える。
戦いは終わり、ひとときの休息もまた戦士の務めだろう。そしてその脇では一時の休息がおかしな方向へと……。
「ほんとですか!?」
いきなり叫んだエルミィの声に驚く者、納得する者、そして
「ああ、勿論。実はアレが人型に変形するには別の船が必要なんだ!」
「へぇー、それ本当!? ざくろ知らなかったなぁ〜……やっぱり腕に空母がくっ付いてパンチしたりするのかな!? 人型になるとこ、見てみたいよね」
レイオスのホラ話を、エルミィと一緒になって目をキラキラさせながら信じ込んでいるざくろと、更に積み重なってゆく勘違いの連鎖。
「……そんな訳ねーだろ……」
脱力感に頭を抱えたエヴァンスのツッコミの声は誰にも届かず……。
レイオスのホラ話大会は、信じやすい若干名への感染拡大を招きつつ、夕飯の時間まで続いたそうな。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 岩井崎 旭(ka0234) 人間(リアルブルー)|20才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2015/10/17 21:57:51 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/10/15 21:16:56 |