取り戻した絆と共に

マスター:のどか

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~4人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/08/01 12:00
完成日
2014/08/10 00:36

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

  うだるような夏の暑さが続く冒険都市リゼリオ。
 海から運ばれてくる潮風で心地よい空気の流れはあるものの、その突き刺すような日差しは人々の精気を奪うに十分。
 新米受付嬢もその例に漏れず、オフィスのカウンターにぐでーっと突っ伏し視点の定まらない目でどこか遠くの景色を眺めていた。
「あづい……」
 そう言葉に出したからと言って涼しくなるわけでもなく、むしろ認識することで余計暑くも感じるものだが、それでもついつい口にしてしまう。そんな人間の心理的作用がそこにあった。
「クーラー欲しいよ……扇風機でも良いよ……」
 そんな文明の産物がクリムゾンウェストにある訳も無く、その欲求は潮風と共に何処かへと流れていってしまう。
 そんな暑さの中でのオフィスには依頼を探すハンター達が足繁く通ってきており、そんな彼らの熱気もまた体感温度を上昇させる要因となっていた。
 
 そんな中、今だ定まらない焦点の中に『何か』を捉えた受付嬢は静かにその顔を上げる。
 ゆっくりその身を起こし、目をこすり、焦点を合わせる。
 彼女が見たのは少女――息を切らし、この暑さの中汗だくになりながら、必死にオフィスに駆け込んでくる一人の年端も行かぬ少女だった。
 少女はオフィスの一角に文字通り転がり込むと、汗と涙でぐっしょりの顔でひぃひぃと息をすると、そのまま床に倒れ込んだ。
「ち、ちょっとちょっと……!」
 受付嬢は慌ててカウンターを乗り越えると少女の下へと駆け寄る。
「大丈夫!? 意識、ある!?」
 倒れた少女を静かに抱き起こすとその身体が酷い熱を持っているのを感じた。
 風邪や病気のそれではない。膨大な運動から発せられる汗が湯気となったような、そんな熱。それだけで、この少女がどれだけの道のりを走ってきたのかが分かる。
 少女はぐったりとして激しく息を切らしているが、それでもその今にも消えそうな光を灯した視線がゆっくりと受付嬢の瞳と重なる。
 そうして振るえる手でぎゅっと受付嬢の制服の袖を掴み、その小さな口からか細い声を絞り出す。
「お願い……パパを助けて――」
 そのままぷつりと糸が切れたように意識を失った。
 力なく垂れたその手から、赤い服を着た人形がぽとりと零れ落ちた。
 
 
 少女が目を覚ましたのは数時間後。
 なし崩し的に彼女の面倒を見ていた新米受付嬢だったが、目を覚ました少女は慌ててその胸元に縋るように飛び込むと事のあらましをまくし立てるように語った。
 
――村が、コボルドの集団に襲われた。
 1ヶ月ほど前に村周辺の雑木林に巣食ったコボルドはその繁殖力で膨大な数と化していた。
 しかしその多くは所謂『子ボルド』で脅威自体はそれほど大きくなく、共生とは言わないもののヤツらは静かに雑木林で過ごしていた。
 しかしある日、その場所が村人の予想以上に住み心地の良い環境だったのか他のコボルドの群れも雑木林へ集まってくるようになってきた。
 今や林の中は右を見ても左を見てもコボルドまみれという状況。
 そんな中でついには林の食料も尽き果ててきたのだろう、ついに村へと出向き人々の持つ食料を漁りにやってくるようになった。
 大人数で家屋に押し入り食べ物を食い散らかし、抵抗する人間は集団で囲い込み袋叩きにする。
 嵐のようなその一件で村は深刻な被害を受けている状態だと言う。
 
「パ、パパがわたしを守って犬の化け物に斧で……その隙にリタに逃げろって……」
 少女が震える声で語るその声は恐怖と絶望に満ちており、どれだけの想いをしてここまでやってきたのかそれだけでも語るに及ばない。
 少女の話を一通り聞き終えた受付嬢はなんと声を掛けたらよいものか少し唸った後、思い出したようにポケットに入れていた人形を取り出し少女に差し出した。
 先ほど少女の手から零れた赤い服の手作りの人形だった。
「これ、リタちゃんの?」
 少女はその人形を見ると一瞬、暗雲が晴れたかのようにぱぁっと優しい表情へと変わり、ぎゅっとその胸元に抱きかかえた。
「前にハンターさん達が、怖い化け物から取り返してくれたの……リタの大事なお人形」
「なるほどね、それでここに来たら助けてくれるだろうって思ったんだ」
 その言葉に少女は小さくコクリと頷く。
 それを見て、受付嬢はうーんと再び腕を組んで唸る。
 そうして、少女を諭すような口調で語りかけた。
「ハンターに正式に依頼を出すにはね、報酬も準備しなきゃいけないの。依頼の対価として十分な……まあ、主にお金なんだけど」
 彼らもそれで生活しているからね、と受付嬢は付け加える。
 それを聞いて少女は一瞬悲しそうな表情をするも、暫く俯いて何事か考えた後、そっと手に持った人形を受付嬢へ差し出した。
「リタの大事なお人形……これじゃダメ……?」
 今にも泣きそうな瞳で縋るように見つめる少女に、受付嬢は苦笑しながら頭を掻く。
「別に、苛めるつもりじゃ無かったんだけど……よしっ」
 そう言って人形を少女の胸に再び抱きかかえさせると、受付嬢はうんと背伸びをしながら椅子から立ち上がる。
 驚いて見上げる少女にニッコリとお得意の営業スマイルを浮かべながら。
「このルミちゃんが特別に依頼書、書いてあげる。報酬は……まあ、どっかでなんとかなるでしょ☆」
 そう言って帽子を正しながら、少女を元気付けるように一言付け加えた。

――あたしと、その大事な人形を救ってくれたハンターさん達を信じて……ね♪

リプレイ本文

●逆襲のコボルド
 ハンター達がその村を訪れたのはオフィスに依頼が張り出されてからしばらくしての事だった。
 彼らが目にした村の様子は一言で言えば「無残」。
 家々の扉や窓は破壊され、そこから覗く屋内は強盗に押し入られたかのような有様。家具はひっくり返され、あちらこちらに食い捨てられた食物の破片が散らばっていた。
「これは酷い有様ですね……」
 ハンターの一人、クロード・エクルストン(ka1683)は口元に軽く手を当てながら怪訝な表情でそれらの惨状に目を配る。
「どうやら、嵐は既に去った後のようですね」
 その隣でレイ・T・ベッドフォード(ka2398)が静かに口走った。彼らは依頼主である少女の村の安否を確かめると共に、もしコボルドが残っているようであれば掃討する事を第一にここを訪れていた。しかしレイが言うように嵐は既に去った後のようで、残るのはその残骸と包帯を巻いて苦しむ重軽傷者の村人のみであった。
 そうして村の様子を一通り眺めて回るハンター達を前に、不意に沸き起こる喧騒。何事かと掛け寄ってみると、村の外を目指そうと暴れる包帯巻き男と、それを止めようとする数人の村人達の姿があった。
「離してくれ! 俺は娘を探しに行かなければならないんだ!」
 村人の手を押しのけながら包帯巻きの男が言う。
「そうは言ってもアンタ、その怪我で動くのは無理だろう!」
「あの時咄嗟に逃がした娘が……リタがどこかで泣いているかもしれないんだ!」
 そう叫んだ所で急に胸元を抑えてその場に膝を突く包帯巻きの男。その包帯にじんわりと赤黒い血が滲む。慌てて男を担いで避難所と思われる建物へと運ぼうとする村人達を男がなおも振りほどこうとした所でハンター達はその喧騒に割って入っていた。
「あなた……リタちゃんのお父さんですね?」
 夕影 風音(ka0275)がふら付く男の身体を支えるのをそっと手伝いながらそう語りかけた。その言葉に、男の目が一瞬見張られる。
「あ、あんた達、何者だ……?」
 村人の一人が、割って入った余所者達へ不安と不審の眼差しを向ける。
「俺達はリゼリオから派遣されたハンターだ。親父さん……アンタの娘の依頼を受けてね」
「リタが生きているのか!?」
 村人の質問に答えたティーア・ズィルバーン(ka0122)の言葉に、男は縋るようにして繰り返しその名を口にする。
「無事に逃げて来て、今はオフィスでぐっすり眠ってるよー」
 男を安心させるかのように、やや軽快な口ぶりでソフィア =リリィホルム(ka2383)が答える。
「リタがリゼリオに……どうして?」
「仲間の事を覚えていたのでしょう。我々の元を訪れれば村を、お父上を救って貰えるのだと。そうしてボロボロになりながら駆けこんできたのがリタ様でございます」
 メリル・E・ベッドフォード(ka2399)はニッコリと微笑みながら暴れて解けかかった男の包帯をしっかりと巻き直してやる。
 その言葉を聞いて、男はどっと疲れが押し寄せたかのようにその場に尻から座りこむと静かに空を仰いだ。
「そうか……リタは無事か」
 そうして静かに微笑みを浮かべると、思い出したかのように傷口を押さえ呻き声を上げた。慌ててクロードがヒールを掛け、男は少し楽になったように息を落ちつけた。
「娘の安否も分かったんだ、けが人はゆっくり休んでな。こっからはあたしたちの仕事だよ」
 ふぅとキセルから吸い込んだ白い煙を空に吐き出すと、少し強い口調でマダム・スルタナ(ka2561)が男の目を見据えた。
「……抱き締めるその胸で、娘を真っ赤に汚す気かい?」
 そう、一言付け加えて。
「私たちはこれから林でがんばってコボルドをたおして来るから……」
 ややおどおどとした自信なさげな口ぶりでエルレーン(ka1020)が村人に語る。
「そう言う事だ。俺達がきっとこの村をコボルドの恐怖から解放してみせる。そして娘さんに会わせてやる……だから、きついと思うが待っててくれよ」
 そう、男を元気づけるように語るティーア。その一言に、男は「ああ……頼んだ」と静かに頷いてみせた。
 その後、村を警備してくれるハンターの到着と共に専任の8人のハンター達は林へと足を踏み入れたのだった。

●クリンナップオペレーション
 村の様子を一言で「無残」と言うのであれば、林の様子は一言で表すと「有象無象」であろう。
 足を踏み入れるや否や、ハンター達は大量のコボルド達の襲撃を受ける事となったのである。文字通り有象無象の集団であるコボルド達。しかしそのあまりに膨大な数は止まる所を知らず、仕留めては別の1匹が林の奥から現れ、また仕留めては別の個体が現れ――個々の力は脆弱であれど、その終わりの見えない増援に次ぐ増援にハンター達の精神的な疲労は言わずもがな蓄積されてゆくのである。
 今もまた一つの銃声が響き、その弾丸に頭部を吹き飛ばされたコボルドの身体が宙を舞う。
「えっへっへー、どうどう、見てたっ?」
 銀色に輝く魔導銃に次弾を詰め込みながらソフィアは自慢げに声を上げる。彼女の一撃で空いた穴にティーアとエルレーンが突っ込み、それぞれの一刀の下に連携を崩されたコボルドの一角を掃討する。
「うえぇ、コボルトいっぱい……まだでてくるよぉ」
 なおもワラワラと湧いて来るコボルドを前に思わず泣き事も出るエルレーン。
「……これで何匹目だよキリがねぇな」
 その横で刀に付いた亜人の血を振り落としながらティーアは小さく舌打ちする。
 彼らの通って来た林道には既に大量のコボルドの死体の山。それでも見えない『終わり』に、彼らは掃討戦の真の恐怖を知る事となる。
「これは早い所巣を叩いてしまわないと……いずれはその数で囲まれ、退くも進むも出来ない状況になりかねませんね」
 その状況に苦言を漏らすクロードであるが、それでも湧いて進路をふさぐコボルドの勢いは止まる所を知らない。
 そんなコボルドの群れに一刃の風が吹き荒む。その風は先頭のコボルドの身体を微塵に切り刻み、群れの一点に再び小さな綻びを作る。
「ってことは、つまりこう言う事さね」
 その風を放った主、マダム・スルタナはキセルをふかしながらその場にスタッフを突きたて、ギロリとコボルドの群れに鋭い視線を向ける。
「行きな! ここいらはあたしが任された。あんた達は巣を目指すんだよ!」
 そう奮い立てるマダムを前に、彼女が作った穴に切りこむ影。
「そういうカッコイイ事を独り占めは良く無いですよ!」
 言いながらロッドのフルスイングをその顔面にぶち当てる風音。その不意の強打にふらふらとその場に膝を突くコボルド。そのまま数多の群れに対して仁王立ちを決め込む風音に目がけて襲いかかるコボルド達。その猛攻をひらりと凌いで見せるも囲まれた状況ではどうしても死角は生まれてしまう。
 そうして風音に背後から飛びかかった一匹の個体を、すんでの所で煌めく刃が両断した。
「えいっ、えいっ……しんぢゃえよっ!」
 涙目でコボルドをめった刺しにしながらエルレーンは風音に降り注いだ窮地から彼女を救う。
「あ、ありがとう。助かったわ」
 一瞬冷や汗の流れた風音に対し、エルレーンはまたおどおどと答えた。
「わ、私もおてつだい……こまってる人たちがいるなら、がんばる」
「そうね、よろしく頼むわ」
 そうしてお互い背を預けるようにコボルドに対峙する。
「そういう事だ、引き付けてる間に急ぎな!」
 残る事を決めた2人を見据え、マダムが再び叱咤を掛ける。
「すみません……任せます!」
 苦渋の選択ながらも頷き、駆け出したクロードに他のハンター達も続く。
「ぁ……その、良かったらこれ、持っていって」
 そう言いながらエルレーンが先を急ぐハンター達に何かを放り投げる。ティーアがキャッチしたその物は数本の松明だった。
「あの、何か使えるかもしれないから……」
「感謝するぜ、ありがとう!」
 そうして、残る3人の姿を振り切り林の奥を目指すハンター達。当然その後を追おうとするコボルドも居たものの、それらの個体は風の刃とどこぞより投げつけられた別の個体、そして閃く一閃が遮った。
「彼らに追いつこうってんなら私を倒してから行きなさい!」
 そう言って群れを前に啖呵を切った風音達を、周囲のコボルドはそれ好機と囲い込んだのであった。

 群れを引きつけたハンター達のおかげで包囲網を突破し、残る5人のハンターは目標とされていたコボルドの巣の付近へと到着していた。
 包帯の男――木こりであるリタの父親の作業場のすぐ近くにその巣穴は存在していた。
「あれがこの森や村を蝕む元凶……ですか」
 藪の影から巣の様子を覗き見るレイはその周囲に群がるコボルド達の姿を目の当たりにしながら誰に言うでもなく呟いた。
 巣の周囲には既に十数匹のコボルド達が蔓延り、尚も巣からはコボルドが溢れて来る。一体あの穴の中にどれだけの数の個体が居るのだろうか。想像できるわけもなく、想像したくもない。
「それにしてもこの数……正直、一匹一匹相手にするよりも『巣』自体を何とかした方が話は早そうだよねー」
 そう口走るソフィアにとりわけ反対の意を示す者は居なかった。実際のところこれ以上の消耗戦がいかに危険であるかはハンター達自身がよく分かっていた。
「火攻めなどどうでしょう。巣の中に火を放てばその熱と煙で一網打尽にする事も可能かと」
 ティーアがエルレーンより預かった松明を見ながらレイはその策を提案する。
「悪く無い案ですが……そうなるとまずは巣からでて来るコボルドの勢いをなんとかしなければなりませんね」
「巣に蓋でもできりゃ早いんだかな」
 静かに思案を巡らすクロードにティーアがぽつりと呟く。
「ならばその『蓋』、私がお引き受けしましょう」
 そんなティーアの呟きに、レイが反応を示す。
「……できるのか?」
「自信はありませんが、それしか無いのであれば尽力しましょう」
 そう強い意志を瞳に灯して。
 ハンター達はすぐさま行動へと移る。これまでそうして来たように、ソフィアとメリルの後衛からの一撃により巣の前の群れに穴を作り、その隙間にティーアとクロードがその身をねじ込み穴を広げる。そうして出来た道を、レイは巣に向かって一目散に駆け抜けた。
「自然の摂理と言えばそれは本来受け入れるべきものなのかもしれません……しかし、私たちは人間なのです。仲間が傷付けば、それに抗おうとする。それもまた一つの摂理。その本質は同じ……私はそう思います」
 静かに口にしながら、己の身に防御の祖霊を降ろすレイ。
「機を照らすまで、僭越ながら抑えさせていただきます」
 そうしてレイは単身、その巣の入口へと立ちふさがった。
 当然ながら奥から現れては彼の下に群がり始めるコボルド達。それらの攻撃を時に避け、時に受け、盾としての存在を全うして行く。
「貴方の壁があってこそ活きる存在もあるのでございます、レイ」
 そう弟に投げかけるメリルの言葉はどこかからかいめいたものであったが、彼を完全に取り囲もうとするコボルドの連携を後衛の2人が確実に欠損させて行く。
「今は少しでも燃やすための『モノ』が欲しいんだ。村を襲ったそのツケ……文字通りその身で払って貰おうか」
 レイの背後を守りながらこちらもまた1匹ずつ確実にコボルドを仕留めて行くティーア。その討ち倒した死骸は巣の中へと放り投げて行く。
 レイ自身もまた自らが倒したコボルドの死骸を放り投げ、巣の中に少しずつ死骸の山が築き上げられて行く。
「もう一息ですレイさん、踏ん張ってください!」
 囲まれたコボルドの連撃に流石に無傷とは言えないレイの様子を気にしつつ、時にコボルドを殴り倒し山築きに貢献し、時にレイの傷を癒す、この消耗戦の中核を担うクロード。
 やがてその山が入口を塞ごうかと言う時、レイが上がり切った息で絞り出すように叫んだ。
「今です……!」
 同時に携帯した松明全てに火を付け、その死骸の山へと放り込むティーア。
 新鮮な死肉にそうすぐに火は付かないものの、その毛皮から次第に火の手が上がり始め、しばらくの時間を置いて巣の内部入口に巨大な火の玉が出来上がる。
「巣の中でなら木々に引火する事も無いでしょう。あとは時間の問題です」
 めらめらと燃え盛る炎を間近でその瞳に映しながら、静かに胸を撫で下ろすレイ。しかしその時、揺らめく炎の中から一匹のコボルドが飛び出した。その生存本能から、文字通り火事場の馬鹿力で炎を潜り抜けて来たのだろう。飛び出したコボルドはその勢いのままに目の前で一瞬の気を抜いたレイに襲い掛かる。その不意打ちにレイも応対できる事無く、ただただその目が見開かれるのみ。
 だが、そのコボルドの額を1本のマテリアルの矢が貫き、その身は燃え盛る炎の中へと包まれていった。
「愚弟とは言え家族でございます。即ち私のものであり、私以外の存在にその命を託すわけには参りません」
 そう言い放ったメリルの瞳にもまた、レイと同じ燃え盛る炎が映り込んで居た。
 やがてその火は文字通り巣を『蓋』すると共に、煙で内部に居る残るコボルド達も一斉に燻して行く。その後同じようにコボルドが飛び出して来る事も無く、逃げ場も通気口も無い巣の中が煙で満たされるのは時間の問題であり、それは誰が見ても確かに巣が陥落した瞬間であった。

●取り戻した絆と共に
 それから数日、アフターケアとしてハンター達は村へとその身を投じていた。
 巣、攻略の際に林のコボルドを引きつけた3人も無事村に帰還しており、健在なその姿で再会を果たしていた。
 また、森から逃げ出し村の方へと向かったコボルドの襲撃はサポートハンター達が撃退し、その役目をしっかりと果たした功績も忘れるわけにはいかない。
「お嬢ちゃん、大工うめぇな」
「えへへっ、こう言うの得意なんだっ!」
 村人に交じって壊された家屋の修理を手伝うソフィア。彼女のように村自体の復興を手伝う者も居れば林にコボルドの残党狩りに出かけるハンター達も居る。
 林道に残った3人が巣のあるであろう方角以外からも増援があった事を受け調査を続けると、他にも林にはいくつかの小さな巣が点在している事が分かった。脅威を目の当たりにして巣を残す理由も無く、それらの巣は一つ一つ確実に潰して回っていた。このまま2~3日もあれば全ての巣を掃討するができるだろう。
 村人達はかき集めた資金でハンター達に報酬を支払った。中には辞退したハンターも居たが、村の救世主に気持ちとして受け取って欲しいという強い要望に押し切られてしまう一面もあった。

 そして……それらの報告を受け、村へと帰って来たもう一人の勇敢な救世主。
 赤い服の人形を抱きしめた少女は、大好きな父親の胸の中へと笑顔で飛び込んで行ったのだった。

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MVP一覧

  • ぽわわんはわわん
    エルレーンka1020
  • SKMコンサルタント
    レイ・T・ベッドフォードka2398

重体一覧

参加者一覧

  • アックスブレード「ツヴァイシュトースツァーン」マイスター
    ティーア・ズィルバーン(ka0122
    人間(蒼)|22才|男性|疾影士
  • 心強き癒し手
    夕影 風音(ka0275
    人間(蒼)|20才|女性|聖導士
  • ぽわわんはわわん
    エルレーン(ka1020
    人間(紅)|14才|女性|疾影士
  • 優しき治癒者
    クロード・エクルストン(ka1683
    人間(紅)|22才|男性|聖導士
  • 大工房
    ソフィア =リリィホルム(ka2383
    ドワーフ|14才|女性|機導師
  • SKMコンサルタント
    レイ・T・ベッドフォード(ka2398
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士
  • 闊叡の蒼星
    メリル・E・ベッドフォード(ka2399
    人間(紅)|23才|女性|魔術師
  • 老婆の知恵袋
    マダム・スルタナ(ka2561
    ドワーフ|50才|女性|魔術師

サポート一覧

  • 伊吹 ハスロ(ka0391)
  • 鞍馬 ハスロ(ka0608)
  • ガーベラ・M・ベッドフォード(ka2401)
  • エイラ・エラル(ka2464)

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン コボルト倒すよっ
ソフィア =リリィホルム(ka2383
ドワーフ|14才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2014/08/01 11:13:49
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/07/27 22:22:58