ゲスト
(ka0000)
【闇光】幻醒の夢
マスター:鷹羽柊架

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/10/22 12:00
- 完成日
- 2015/10/29 06:32
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
秋が深まり行く中、ファリフへ一通の手紙が届いた。
「ボクが隊長に……?」
内容を読んだファリフは目を瞬かせて手紙を見つめる。
連合軍で何人かの隊長を任命することになり、ファリフが推薦されていた。
驚きもつかの間、ファリフは推薦を受けるか迷う表情を見せる。
先日、東方と辺境の境目に雑魔が出現しているということで、調査依頼をハンターと共に向かっていた。
人間の目から逃げるかのような動きをする雑魔は幻獣ツキウサギであり、その近くに幻獣の森が存在していた。
幻獣の森は白龍の結界に守られており、歪虚は幻獣の潤沢なマテリアルを渇望している為、いつ目の前に迫ってくるかもわからない状態。
以前のナルガンド塔で見た壁画でトリシュヴァーナが嘆き悲しむ姿にファリフは幻獣を助けたいという気持ちが強くあり、早く助けに行きたいと考えていた。
そんな折りに出てきた連合軍の隊長職。
今までのファリフなら幻獣の森の保護を優先させただろう。
しかし、彼女は隊長職を受けた。
幻獣の森を守るとするのは自分だけじゃない事を分かっているからだ。
更に歪虚が幻獣の森を狙わないようにくい止める為に。
隊長職を受ける旨の書状を返したファリフに舞い込んできたのが夢幻城の調査。
ファリフ自身は地上からの調査を考えていたが、帝国が第五師団が有するグリフォンで偵察をする話が出てきた。
帝国への圧力はファリフとて忘れられるものではない。
彼女自身、ハンターと共に経験し、帝国の人間がひどい人間ばかりではないことを知ってしまったから。
ファリフの様子が気になったのか、フェンリルが寄り添い、白く長い尻尾でファリフの顎をくすぐった。
「お嬢ちゃん」
「ごめんなさい。フェンリルを連れていけなくて」
戦場では重要な戦力として活躍するフェンリルではあるが、同時に幻獣らしくマテリアルの固まりとも言える存在だ。
万が一、マテリアルに惹かれて敵がフェンリルに集まれば、偵察が失敗するかもしれない。それ故、ファリフはグリフォンを借り受ける事にした。
「俺がトリシュの所へ行っている間に浮気されるとはな」
からかいを含んだフェンリルの言葉にファリフは不満そうに尻尾を払いのける。
「帝国の力を借りるのは正直、嫌だけど、そうも言ってられない。グリフォンに乗る事で辺境の皆やフェンリルを、幻獣達を守れるならいいと思う」
青い瞳が揺れるフェンリルの尻尾の先を追い、手を尻尾に添えて撫でる。
あの空に浮かぶ城になにがいるのか、何が待ち受けるのか、ハンターと共に見極めようとファリフは思った。
「ボクが隊長に……?」
内容を読んだファリフは目を瞬かせて手紙を見つめる。
連合軍で何人かの隊長を任命することになり、ファリフが推薦されていた。
驚きもつかの間、ファリフは推薦を受けるか迷う表情を見せる。
先日、東方と辺境の境目に雑魔が出現しているということで、調査依頼をハンターと共に向かっていた。
人間の目から逃げるかのような動きをする雑魔は幻獣ツキウサギであり、その近くに幻獣の森が存在していた。
幻獣の森は白龍の結界に守られており、歪虚は幻獣の潤沢なマテリアルを渇望している為、いつ目の前に迫ってくるかもわからない状態。
以前のナルガンド塔で見た壁画でトリシュヴァーナが嘆き悲しむ姿にファリフは幻獣を助けたいという気持ちが強くあり、早く助けに行きたいと考えていた。
そんな折りに出てきた連合軍の隊長職。
今までのファリフなら幻獣の森の保護を優先させただろう。
しかし、彼女は隊長職を受けた。
幻獣の森を守るとするのは自分だけじゃない事を分かっているからだ。
更に歪虚が幻獣の森を狙わないようにくい止める為に。
隊長職を受ける旨の書状を返したファリフに舞い込んできたのが夢幻城の調査。
ファリフ自身は地上からの調査を考えていたが、帝国が第五師団が有するグリフォンで偵察をする話が出てきた。
帝国への圧力はファリフとて忘れられるものではない。
彼女自身、ハンターと共に経験し、帝国の人間がひどい人間ばかりではないことを知ってしまったから。
ファリフの様子が気になったのか、フェンリルが寄り添い、白く長い尻尾でファリフの顎をくすぐった。
「お嬢ちゃん」
「ごめんなさい。フェンリルを連れていけなくて」
戦場では重要な戦力として活躍するフェンリルではあるが、同時に幻獣らしくマテリアルの固まりとも言える存在だ。
万が一、マテリアルに惹かれて敵がフェンリルに集まれば、偵察が失敗するかもしれない。それ故、ファリフはグリフォンを借り受ける事にした。
「俺がトリシュの所へ行っている間に浮気されるとはな」
からかいを含んだフェンリルの言葉にファリフは不満そうに尻尾を払いのける。
「帝国の力を借りるのは正直、嫌だけど、そうも言ってられない。グリフォンに乗る事で辺境の皆やフェンリルを、幻獣達を守れるならいいと思う」
青い瞳が揺れるフェンリルの尻尾の先を追い、手を尻尾に添えて撫でる。
あの空に浮かぶ城になにがいるのか、何が待ち受けるのか、ハンターと共に見極めようとファリフは思った。
リプレイ本文
ファリフの呼びかけに反応したハンター達は彼女の前に現れた。
「今回もだね」
以前も似たような偵察依頼をしていた八島 陽(ka1442)はどうリアクションをしていいか戸惑う感情を隠すように笑顔でごまかす。
「ハンターをやっていれば、色んな依頼がありますよね」
おっとりと返すネージュ(ka0049)の言葉に「そうだね」と陽は頷く。当時の依頼にはネージュも一緒にいた。
「お待たせ」
ノーマン・コモンズ(ka0251)が拾った小石を小袋に入れて集合場所にきたら、妙な空気に不思議そうな表情を見せる。
「再会シーンっぽいのだぁ~」
明るい調子のでノーマンに声をかけるのは玄間 北斗(ka5640)だ。
「一期一会って言葉があるけど、何度も会う縁もあるよね」
叢雲 伊織(ka5091)が人懐っこい笑顔を見せると、北斗は目を細める。
「お~、いいこというのだぁ~」
「グリフォンの用意ができたようよ」
マーゴット(ka5022)がいえば、全員が表情を引き締めた。
これから向かう先は歪虚が巣くっているであろう、空飛ぶ城、夢幻城。
今回、帝国より協力を受けて夢幻城の中へと偵察へ向かう。
グリフォンの勇壮とも言える姿に伊織が目を見張って感嘆の声を上げる。
その反対に顔を顰めるのはファリフだ。
「さ、空の散歩を楽しむのだぁ~♪」
ファリフの背後からひょっこり姿を現す北斗に彼女は目を見張ったが、彼の軽口に凝り固まった気持がほぐれたのか、ファリフは少し笑った。
グリフォンの翼が羽ばたけば、風の抵抗を感じたのもつかの間、風向きが変わるように髪が吹き上がる。
「わ、わ」
胃が浮くような感覚に襲われたファリフは声を上げてしまう。気が付けば、グリフォンの足は地を離れていた。
ネージュが恐る恐る振り向けば、自分たちがいた建物の屋根越えそうになっていた。
グリフォンのスピードは体感で早く感じるし、風が冷たい。
帝国軍人に捕まりつつもノーマンは外套を胸元へ少し手繰る。
マーゴットの頬は冷たい風で赤くなっていたが、黒い瞳は眼前の夢幻城を見据えた。
もう少しで夢幻城。舞い上がる気持を押さえられない伊織は目を輝かせる。
●
「ありがとうなのだぁ~。気をつけて帰ってほしいのだぁ」
にこやかに手を振る北斗に第五師団のメンバーは素早くグリフォンで城を離れていく。
ここからは自分達で何とかしなければならない。
見送るのも束の間、ハンター達に襲い掛かったのは敵の攻撃ではなかった。
「うわ……」
ぽそりと呟いたのはネージュだ。
「なんだか……はぁ……嫌な感じです……」
眉を顰めるネージュは喋るのもだるそうであり、いつもは伸ばしている背筋も肩を前に出して丸くしてだるそうにしてしまう。
その隣のマーゴットは口には出さないが、愛らしい顔を歪めて力が抜けていくような感覚に襲われており、気をしっかり保とうとしていた。
「行くか……」
ノーマンが呟くと、他のメンバーもぞろぞろと隊列を成していく。
乾いた音を立てて、一つだけ小石が通路の端に転がった。
先行してノーマンと陽が歩いていき、敵がいないかの確認を取っていく。
北斗が周囲を計り、記録をとる。後方はネージュが守り、伊織とマーゴットが挟み撃ちや背後からの攻撃を防ぐ。
城の中は常識の範疇にはなく、造りも何か違う気がするし、気力が奪われていくので、思考するのも億劫になってくる。
「……気休めに……」
「……ありがとう」
マーゴットが皆にキャンディを分ける。食べるということすら面倒くさく感じており、キャンディを舐める事すら億劫になってて、ひたすら唾液で溶かして糖分を補給するような状態。
自ら声を発するのを控えている北斗は只管にマッピングに集中することにした。
視界も狭まっているような感覚に襲われつつも、ノーマンは分かれ道の影などに石を置くというか、石から手を離す。
城の中は思ったより通路が多くあり、部屋へ通じるだろうドアも見受けられたが、中を入るのも躊躇うというよりは、面倒くさくなっていく。
最低限、伊織がドアに耳を当てて、中の様子を探ろうとすると、動きは特にない気がした。
「……部屋がちゃんと成立してるのか、分らなくなってくるのだぁ……」
ペンを持った手の平で北斗は自身のこめかみを押さえる。自身の弱音に心のどこかで驚きつつも、それを意識するのも億劫と感じてしまうのも事実。
「あ……」
陽がくぐもったような声を上げる。
その向こうにはオーガの姿があった。余所見をしていて、まだこちらに気付いてはいない。
今回は偵察がメイン。無闇な戦闘は避けるべきだし、現状の状態ではあのオーガを倒しても騒ぎを起こした場合はデメリットしかない。
行こうとした道とは違う方向に抜け道を見つけたネージュが声をかけると、全員がそのまま従った。
細い道に潜り込んだ七人はオーガの姿が消えるのを待つ。
息もするのも面倒になるのも時間の問題かもしれない事を案ずるノーマンは気力を振り絞り、石を音もなく置いた。
注意するという意識すらも奪われる状態である事にノーマンは歯がゆさも覚えてしまう。
ノーマンの気持ちは他のハンターも同じであり、かつ、オーガが中々動かなく、待つという事も面倒になってきたハンター達は細い小道を進んでいく。
人一人が入れそうな小道を歩くと、通路の壁から時折、歪虚の声だろうか、けたたましい声も聞こえてきた。
薄暗い細い通路を歩いていき、突き当りの通路に出た瞬間、トロルが目の前に現れる。
今回はトロルも気付かれた。
陽が顔を顰め、ざっと周囲を見回す。小さな小道を見つけた陽はノーマンへ顔を向けると、彼は陽が言わんとしている事に気付き、頷いた。
「……あの小さい通路だ」
ノーマンが言えば、全員が従う。
「陽さ……」
進もうとするファリフは陽だけが動かない事に気付く。
「彼に任せるのだぁ」
振り向こうとするファリフの背を軽く叩く北斗が彼女の足を進ませる。
「俺がいるよ」
ファリフの後ろから伊織が声をかけて陽の隣へと駆けて行く。
陽がジェットブーツを発動させてトロルを誘導し始めた。蹴りとばそうと足を上げるトロルに伊織が背後へ回り込む。
伊織の動きに気付いていないトロルは陽へと標準を向けている。頃合を見計らっている伊織は、軸にしている足を斬りつける。
短く低い声を上げたトロルは体制を崩してしまう。伊織が皆が走っていった方向へ駆けていくと、トロルは逃がさないとばかりに腕を伸ばして振り下ろす。
危険を察知した陽はジェットブーツで距離を縮めて伊織の方へ急ぐ。
「え……」
気配を察した伊織が見たのは自身に襲い掛かるトロルの腕と急いでこちらへ向かう陽の姿。
肩に衝撃を受けて飛ばされた伊織は難を逃れたが、陽は逃げ切れずに肩から背中にかけてトロルの歪な指に引っかかれてしまう。
痛みを堪える陽にマーゴットとネージュが飛び出して陽を引っ張った。
「マテリアルヒーリングはもう少し待っててください……」
ネージュが陽に声をかけて通路を進んでいく。
更に進んで少し広い場所にハンター達は休憩とする。マーゴットが携帯したキャンディの詰め合わせも一つなくなりそうである。
書き留めた紙を確認していた北斗は唸るしかなかった。
「広いけど、迷路というほど入り組んではいないようなのだぁ」
「北斗さん……こちらに繋がる道は歪虚はいなさそうです」
ネージュの感想を考慮して、北斗が更に書き足していく。
「こことここは部屋がありそうなのだぁ~」
通路の中に出来た空間を北斗がペンで指し示す。
「あまり、歪虚の姿って見えないんだな」
周囲を警戒しているノーマンが素直な感想を言うが、その声音は気力をそがれているような気だるそうな様子だ。
「……この気力の減退の原因を考えていたんだが」
ぽつりと呟いたのは陽だ。
「暴食系歪虚によるものか、城の浮遊装置による周囲のマテリアル吸収が原因と思っていたんだが、後者なら該当する装置が点在するかと思っていたんだ……」
「ロッソの反重力装置に該当するものなのかなぁ~?」
「サルヴァトーレ・ロッソって、大きな船って聞いた」
少しぐったりしたような様子をしていた伊織が、ロッソの名前を聞いて顔を明るくさせる。
「それに該当するものはなかったけど」
調度品の類があまりなかったとノーマンが言う。降りた場所が置いてない場所だったかはさだかではないと続けたかったが、話すのも面倒くさくなる。
「ファリフさん?」
マーゴットがファリフの様子に気づく。彼女は休憩ということで、床にあぐらをかいて座っていた。
「……大丈夫だよ……」
立ち上がらなかったが、ファリフは少し落ち込んだ様子。
「ハイルタイの事を思い出してたんだ……」
その名は聞いた者も少なからずいる。十三魔に席を連ねる歪虚、ハイルタイ。その力は強大であることをハンター達は思い知らされている。
「ここに入ってから、どんどん面倒くさく感じてきて、今にも面倒くさいって言いそうでさ」
「それが、ハイルタイの口癖みたいってことですか?」
ネージュが言葉を続ければ、ファリフは照れ隠しで笑った。
「足音が聞こえる」
マーゴットが声を出すと、全員が鈍い動きでそれぞれ動き出した。
再び陽とノーマンが先行をとり、通路を歩いていく。
「歪虚はこちらの動きに気づいていないようですね」
ネージュが言えば、全員は安堵したが、一瞬でも気を抜くことはできない。
気力減退による戦闘が面倒くさいから避けるという考えがこの一行を支配し、功をなしているのかもしれない。
「あ……」
陽が愕然と呟く。
通路を曲がった先にオーガが三体いた。内一体は棍棒を携帯していた。スキルを使ったことで放出されたマテリアルに気付かれたのかと内心考える者もいる。
普段なら、倒せただろう数だが、今は逃げるしかない。
前に出たマーゴットと伊織が武器を構える。
「早く……」
逃走を催促しているマーゴットが言うが早いかのタイミングで武器を携帯しているオーガが棍棒をハンター達へと投げつけた。
「危ないのだぁ!」
棍棒の行く先に気付いた北斗が地を駆けるものを喚び、ネージュの肩を押して自身も間合をとるため、跳躍した。
北斗の視界に入ったのは拳を突き出そうとしているオーガの姿。
危機を察知したかのようにマーゴットが駆け出したが、オーガは北斗を殴っていた。
「ぐっ……」
殴られた衝撃で壁へ打ち付けられた北斗は倒れることはなかったが、よろけてしまう。
ネージュに北斗の付き添いを頼んだノーマンが人差し指に引っ掛けたチャクラムをゆっくり回すと、素早く腕を伸ばした。
薄暗い中、虚空を裂くチャクラムは仲間を追わんとするオーガを背後からこめかみから目の端を切り裂き、ノーマンの指へと戻っていく。
チャクラムは目玉も斬り、オーガは悶えるように両腕を振るわせる。
暴れるオーガに他のオーガが集中している隙を狙って、マーゴットと伊織が暴れているオーガの足を斬りつける。巨体のオーガが他のオーガを巻き込むように倒れていった。
ノーマンと伊織が動いたのを確認して、マーゴットも駆けて行く。
敵の様子を伺い、仲間の背を見る彼女は辛そうに息を吐いた。
伊織達がファリフ達に追いついた時も四人はマッピングを怠らずに確認をしている。
その限界はもう近い。
マーゴットはぎゅっと目を瞑る。
「……マーゴットさん……?」
ネージュがマーゴットに声をかけると、彼女は目をひらく。
「撤退しよう」
言わなければ、突き進み、敵に当たるのではないかと思ったからだ。
彼女自体、限界であり、動きたくないと言いたくなる自分を堪えている状態。他の皆も同じと思うからこそ、撤退の言葉を吐き出した。
「……うん。そうだね」
ファリフがマーゴットの手を握り締める。
そして、撤退が始まった。
幸い、外の風音が強いので、大きな通路を歩いていけば、外に出られるだろうと思い、進む。
「窓だ」
陽が窓に気づいて皆に注意を促す。
きっと、壁伝いに行けば出られるのかもしれないと全員が信じ、その扉を開く。
周囲に建物があり、外というよりは中庭のような場所。
「迎えに来てくれるかな……」
陽がトランシーバーを動かして帝国のグリフォンライダーへ応答を願う。幸い、行くときに確認した塔のような建物の天辺に掲げられたボロ切れのような旗を目印にきてくれるという。
ほっとしたのもつかの間、全員は庭園の中を見回せば、全員が一点に視線を集めた。
屋根付の東屋のような場所には椅子ではなく、ベッドが置かれている。
「なんだが、お洒落なお部屋みたいなのだぁ」
北斗が見上げる東屋は部屋の入り口と窓がはめ込んである壁まであった。
ハンター達が現在いる場所には屋根がどういった形状をしているか分からないが、瀟洒なつくりだと皆が感想を持つものの、反対側……ハンターの手前には柵があるのが気になった。
「……ん、ん~~~。にゃぁ……?」
寝ぼけたような女の子の声が全員の耳に届く。
いくら気力がもうゼロだとはいえ、そんな言葉は発してないと全員が思う。
「……この中からだよな……」
伊織が呟けば、赤い布がひとりでに動き、全員がはっとなる。
ゆっくりと布が更に動き、ハンターとファリフの眼前に起き上がる一人の少女の姿があった。
朱金と思われるような髪はとても長く、少女の身長を優に超えるほどだ。眠っていた為か、結わえていた髪が解れてリボンが緩んでいる。
着ているドレスは豪奢なのだが、だらしなく着崩している。
まだ眠たいのだろうか、異様に伸びた爪が肌に触れないように目をこすって口をへの字に曲げるのが可愛らしい。
薄目を開いた瞳は薔薇色の赤目だ。重たそうに首を傾げ、ハンター達を見つめている。
「……おは……よ……」
柔らかく微笑む少女に緊張感を抜けさせられたと感じる間もなく、数名のハンターが膝から力が抜けてしまう。
城に入ったときとは比べ物にならないほどの気だるさがハンター達を襲う。
「君は……」
北斗が尋ねると、少女は傍らのクマのぬいぐるみを抱き寄せて、うつらうつらとしている。
「んー……めんどぉ……なの……ふぁあ~~……」
少女は特に攻撃をしている様子ではない。そこで眠っているだけだ。
しかし、ハンター達やファリフは締め付けられるような頭痛や、眩暈のような症状がでてきている。
気力が只管に殺がれ、何もしたくなくなる。
そう、脱出すらも……。
背後で大きな羽ばたきが聞こえた。
グリフォンライダーの迎えが来てくれて、全員が少女に後ろ髪を引かれながらも脱出する。
「また……ね……?」
ぽつりと、落とされた声は届かなかった。
「今回もだね」
以前も似たような偵察依頼をしていた八島 陽(ka1442)はどうリアクションをしていいか戸惑う感情を隠すように笑顔でごまかす。
「ハンターをやっていれば、色んな依頼がありますよね」
おっとりと返すネージュ(ka0049)の言葉に「そうだね」と陽は頷く。当時の依頼にはネージュも一緒にいた。
「お待たせ」
ノーマン・コモンズ(ka0251)が拾った小石を小袋に入れて集合場所にきたら、妙な空気に不思議そうな表情を見せる。
「再会シーンっぽいのだぁ~」
明るい調子のでノーマンに声をかけるのは玄間 北斗(ka5640)だ。
「一期一会って言葉があるけど、何度も会う縁もあるよね」
叢雲 伊織(ka5091)が人懐っこい笑顔を見せると、北斗は目を細める。
「お~、いいこというのだぁ~」
「グリフォンの用意ができたようよ」
マーゴット(ka5022)がいえば、全員が表情を引き締めた。
これから向かう先は歪虚が巣くっているであろう、空飛ぶ城、夢幻城。
今回、帝国より協力を受けて夢幻城の中へと偵察へ向かう。
グリフォンの勇壮とも言える姿に伊織が目を見張って感嘆の声を上げる。
その反対に顔を顰めるのはファリフだ。
「さ、空の散歩を楽しむのだぁ~♪」
ファリフの背後からひょっこり姿を現す北斗に彼女は目を見張ったが、彼の軽口に凝り固まった気持がほぐれたのか、ファリフは少し笑った。
グリフォンの翼が羽ばたけば、風の抵抗を感じたのもつかの間、風向きが変わるように髪が吹き上がる。
「わ、わ」
胃が浮くような感覚に襲われたファリフは声を上げてしまう。気が付けば、グリフォンの足は地を離れていた。
ネージュが恐る恐る振り向けば、自分たちがいた建物の屋根越えそうになっていた。
グリフォンのスピードは体感で早く感じるし、風が冷たい。
帝国軍人に捕まりつつもノーマンは外套を胸元へ少し手繰る。
マーゴットの頬は冷たい風で赤くなっていたが、黒い瞳は眼前の夢幻城を見据えた。
もう少しで夢幻城。舞い上がる気持を押さえられない伊織は目を輝かせる。
●
「ありがとうなのだぁ~。気をつけて帰ってほしいのだぁ」
にこやかに手を振る北斗に第五師団のメンバーは素早くグリフォンで城を離れていく。
ここからは自分達で何とかしなければならない。
見送るのも束の間、ハンター達に襲い掛かったのは敵の攻撃ではなかった。
「うわ……」
ぽそりと呟いたのはネージュだ。
「なんだか……はぁ……嫌な感じです……」
眉を顰めるネージュは喋るのもだるそうであり、いつもは伸ばしている背筋も肩を前に出して丸くしてだるそうにしてしまう。
その隣のマーゴットは口には出さないが、愛らしい顔を歪めて力が抜けていくような感覚に襲われており、気をしっかり保とうとしていた。
「行くか……」
ノーマンが呟くと、他のメンバーもぞろぞろと隊列を成していく。
乾いた音を立てて、一つだけ小石が通路の端に転がった。
先行してノーマンと陽が歩いていき、敵がいないかの確認を取っていく。
北斗が周囲を計り、記録をとる。後方はネージュが守り、伊織とマーゴットが挟み撃ちや背後からの攻撃を防ぐ。
城の中は常識の範疇にはなく、造りも何か違う気がするし、気力が奪われていくので、思考するのも億劫になってくる。
「……気休めに……」
「……ありがとう」
マーゴットが皆にキャンディを分ける。食べるということすら面倒くさく感じており、キャンディを舐める事すら億劫になってて、ひたすら唾液で溶かして糖分を補給するような状態。
自ら声を発するのを控えている北斗は只管にマッピングに集中することにした。
視界も狭まっているような感覚に襲われつつも、ノーマンは分かれ道の影などに石を置くというか、石から手を離す。
城の中は思ったより通路が多くあり、部屋へ通じるだろうドアも見受けられたが、中を入るのも躊躇うというよりは、面倒くさくなっていく。
最低限、伊織がドアに耳を当てて、中の様子を探ろうとすると、動きは特にない気がした。
「……部屋がちゃんと成立してるのか、分らなくなってくるのだぁ……」
ペンを持った手の平で北斗は自身のこめかみを押さえる。自身の弱音に心のどこかで驚きつつも、それを意識するのも億劫と感じてしまうのも事実。
「あ……」
陽がくぐもったような声を上げる。
その向こうにはオーガの姿があった。余所見をしていて、まだこちらに気付いてはいない。
今回は偵察がメイン。無闇な戦闘は避けるべきだし、現状の状態ではあのオーガを倒しても騒ぎを起こした場合はデメリットしかない。
行こうとした道とは違う方向に抜け道を見つけたネージュが声をかけると、全員がそのまま従った。
細い道に潜り込んだ七人はオーガの姿が消えるのを待つ。
息もするのも面倒になるのも時間の問題かもしれない事を案ずるノーマンは気力を振り絞り、石を音もなく置いた。
注意するという意識すらも奪われる状態である事にノーマンは歯がゆさも覚えてしまう。
ノーマンの気持ちは他のハンターも同じであり、かつ、オーガが中々動かなく、待つという事も面倒になってきたハンター達は細い小道を進んでいく。
人一人が入れそうな小道を歩くと、通路の壁から時折、歪虚の声だろうか、けたたましい声も聞こえてきた。
薄暗い細い通路を歩いていき、突き当りの通路に出た瞬間、トロルが目の前に現れる。
今回はトロルも気付かれた。
陽が顔を顰め、ざっと周囲を見回す。小さな小道を見つけた陽はノーマンへ顔を向けると、彼は陽が言わんとしている事に気付き、頷いた。
「……あの小さい通路だ」
ノーマンが言えば、全員が従う。
「陽さ……」
進もうとするファリフは陽だけが動かない事に気付く。
「彼に任せるのだぁ」
振り向こうとするファリフの背を軽く叩く北斗が彼女の足を進ませる。
「俺がいるよ」
ファリフの後ろから伊織が声をかけて陽の隣へと駆けて行く。
陽がジェットブーツを発動させてトロルを誘導し始めた。蹴りとばそうと足を上げるトロルに伊織が背後へ回り込む。
伊織の動きに気付いていないトロルは陽へと標準を向けている。頃合を見計らっている伊織は、軸にしている足を斬りつける。
短く低い声を上げたトロルは体制を崩してしまう。伊織が皆が走っていった方向へ駆けていくと、トロルは逃がさないとばかりに腕を伸ばして振り下ろす。
危険を察知した陽はジェットブーツで距離を縮めて伊織の方へ急ぐ。
「え……」
気配を察した伊織が見たのは自身に襲い掛かるトロルの腕と急いでこちらへ向かう陽の姿。
肩に衝撃を受けて飛ばされた伊織は難を逃れたが、陽は逃げ切れずに肩から背中にかけてトロルの歪な指に引っかかれてしまう。
痛みを堪える陽にマーゴットとネージュが飛び出して陽を引っ張った。
「マテリアルヒーリングはもう少し待っててください……」
ネージュが陽に声をかけて通路を進んでいく。
更に進んで少し広い場所にハンター達は休憩とする。マーゴットが携帯したキャンディの詰め合わせも一つなくなりそうである。
書き留めた紙を確認していた北斗は唸るしかなかった。
「広いけど、迷路というほど入り組んではいないようなのだぁ」
「北斗さん……こちらに繋がる道は歪虚はいなさそうです」
ネージュの感想を考慮して、北斗が更に書き足していく。
「こことここは部屋がありそうなのだぁ~」
通路の中に出来た空間を北斗がペンで指し示す。
「あまり、歪虚の姿って見えないんだな」
周囲を警戒しているノーマンが素直な感想を言うが、その声音は気力をそがれているような気だるそうな様子だ。
「……この気力の減退の原因を考えていたんだが」
ぽつりと呟いたのは陽だ。
「暴食系歪虚によるものか、城の浮遊装置による周囲のマテリアル吸収が原因と思っていたんだが、後者なら該当する装置が点在するかと思っていたんだ……」
「ロッソの反重力装置に該当するものなのかなぁ~?」
「サルヴァトーレ・ロッソって、大きな船って聞いた」
少しぐったりしたような様子をしていた伊織が、ロッソの名前を聞いて顔を明るくさせる。
「それに該当するものはなかったけど」
調度品の類があまりなかったとノーマンが言う。降りた場所が置いてない場所だったかはさだかではないと続けたかったが、話すのも面倒くさくなる。
「ファリフさん?」
マーゴットがファリフの様子に気づく。彼女は休憩ということで、床にあぐらをかいて座っていた。
「……大丈夫だよ……」
立ち上がらなかったが、ファリフは少し落ち込んだ様子。
「ハイルタイの事を思い出してたんだ……」
その名は聞いた者も少なからずいる。十三魔に席を連ねる歪虚、ハイルタイ。その力は強大であることをハンター達は思い知らされている。
「ここに入ってから、どんどん面倒くさく感じてきて、今にも面倒くさいって言いそうでさ」
「それが、ハイルタイの口癖みたいってことですか?」
ネージュが言葉を続ければ、ファリフは照れ隠しで笑った。
「足音が聞こえる」
マーゴットが声を出すと、全員が鈍い動きでそれぞれ動き出した。
再び陽とノーマンが先行をとり、通路を歩いていく。
「歪虚はこちらの動きに気づいていないようですね」
ネージュが言えば、全員は安堵したが、一瞬でも気を抜くことはできない。
気力減退による戦闘が面倒くさいから避けるという考えがこの一行を支配し、功をなしているのかもしれない。
「あ……」
陽が愕然と呟く。
通路を曲がった先にオーガが三体いた。内一体は棍棒を携帯していた。スキルを使ったことで放出されたマテリアルに気付かれたのかと内心考える者もいる。
普段なら、倒せただろう数だが、今は逃げるしかない。
前に出たマーゴットと伊織が武器を構える。
「早く……」
逃走を催促しているマーゴットが言うが早いかのタイミングで武器を携帯しているオーガが棍棒をハンター達へと投げつけた。
「危ないのだぁ!」
棍棒の行く先に気付いた北斗が地を駆けるものを喚び、ネージュの肩を押して自身も間合をとるため、跳躍した。
北斗の視界に入ったのは拳を突き出そうとしているオーガの姿。
危機を察知したかのようにマーゴットが駆け出したが、オーガは北斗を殴っていた。
「ぐっ……」
殴られた衝撃で壁へ打ち付けられた北斗は倒れることはなかったが、よろけてしまう。
ネージュに北斗の付き添いを頼んだノーマンが人差し指に引っ掛けたチャクラムをゆっくり回すと、素早く腕を伸ばした。
薄暗い中、虚空を裂くチャクラムは仲間を追わんとするオーガを背後からこめかみから目の端を切り裂き、ノーマンの指へと戻っていく。
チャクラムは目玉も斬り、オーガは悶えるように両腕を振るわせる。
暴れるオーガに他のオーガが集中している隙を狙って、マーゴットと伊織が暴れているオーガの足を斬りつける。巨体のオーガが他のオーガを巻き込むように倒れていった。
ノーマンと伊織が動いたのを確認して、マーゴットも駆けて行く。
敵の様子を伺い、仲間の背を見る彼女は辛そうに息を吐いた。
伊織達がファリフ達に追いついた時も四人はマッピングを怠らずに確認をしている。
その限界はもう近い。
マーゴットはぎゅっと目を瞑る。
「……マーゴットさん……?」
ネージュがマーゴットに声をかけると、彼女は目をひらく。
「撤退しよう」
言わなければ、突き進み、敵に当たるのではないかと思ったからだ。
彼女自体、限界であり、動きたくないと言いたくなる自分を堪えている状態。他の皆も同じと思うからこそ、撤退の言葉を吐き出した。
「……うん。そうだね」
ファリフがマーゴットの手を握り締める。
そして、撤退が始まった。
幸い、外の風音が強いので、大きな通路を歩いていけば、外に出られるだろうと思い、進む。
「窓だ」
陽が窓に気づいて皆に注意を促す。
きっと、壁伝いに行けば出られるのかもしれないと全員が信じ、その扉を開く。
周囲に建物があり、外というよりは中庭のような場所。
「迎えに来てくれるかな……」
陽がトランシーバーを動かして帝国のグリフォンライダーへ応答を願う。幸い、行くときに確認した塔のような建物の天辺に掲げられたボロ切れのような旗を目印にきてくれるという。
ほっとしたのもつかの間、全員は庭園の中を見回せば、全員が一点に視線を集めた。
屋根付の東屋のような場所には椅子ではなく、ベッドが置かれている。
「なんだが、お洒落なお部屋みたいなのだぁ」
北斗が見上げる東屋は部屋の入り口と窓がはめ込んである壁まであった。
ハンター達が現在いる場所には屋根がどういった形状をしているか分からないが、瀟洒なつくりだと皆が感想を持つものの、反対側……ハンターの手前には柵があるのが気になった。
「……ん、ん~~~。にゃぁ……?」
寝ぼけたような女の子の声が全員の耳に届く。
いくら気力がもうゼロだとはいえ、そんな言葉は発してないと全員が思う。
「……この中からだよな……」
伊織が呟けば、赤い布がひとりでに動き、全員がはっとなる。
ゆっくりと布が更に動き、ハンターとファリフの眼前に起き上がる一人の少女の姿があった。
朱金と思われるような髪はとても長く、少女の身長を優に超えるほどだ。眠っていた為か、結わえていた髪が解れてリボンが緩んでいる。
着ているドレスは豪奢なのだが、だらしなく着崩している。
まだ眠たいのだろうか、異様に伸びた爪が肌に触れないように目をこすって口をへの字に曲げるのが可愛らしい。
薄目を開いた瞳は薔薇色の赤目だ。重たそうに首を傾げ、ハンター達を見つめている。
「……おは……よ……」
柔らかく微笑む少女に緊張感を抜けさせられたと感じる間もなく、数名のハンターが膝から力が抜けてしまう。
城に入ったときとは比べ物にならないほどの気だるさがハンター達を襲う。
「君は……」
北斗が尋ねると、少女は傍らのクマのぬいぐるみを抱き寄せて、うつらうつらとしている。
「んー……めんどぉ……なの……ふぁあ~~……」
少女は特に攻撃をしている様子ではない。そこで眠っているだけだ。
しかし、ハンター達やファリフは締め付けられるような頭痛や、眩暈のような症状がでてきている。
気力が只管に殺がれ、何もしたくなくなる。
そう、脱出すらも……。
背後で大きな羽ばたきが聞こえた。
グリフォンライダーの迎えが来てくれて、全員が少女に後ろ髪を引かれながらも脱出する。
「また……ね……?」
ぽつりと、落とされた声は届かなかった。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/10/18 10:38:51 |
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質問卓 ノーマン・コモンズ(ka0251) 人間(クリムゾンウェスト)|24才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/10/17 17:41:48 |
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相談卓 ノーマン・コモンズ(ka0251) 人間(クリムゾンウェスト)|24才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/10/22 00:06:01 |