ゲスト
(ka0000)
【聖呪】南進、その裏で……。
マスター:御影堂

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/10/23 19:00
- 完成日
- 2015/10/30 10:58
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
ゴブリン本隊の南下……その一報は北部一円の貴族領にも届けられていた。
戦端を開いていたルサスール領も、多分に漏れず対応に追われていた。
幸いなことに一団の動きはルサスール領を外れ、迂回するルートをとっている。
だが、油断はできない。
ルサスール家の執務室では、領主カフェ・W・ルサスールと息女サチコ・W・ルサスールが話をしていた。その表情は硬く、瞳は卓上の地図を睨んでいた。
ゴブリンの動きを朱で示せば、ルサスール領が危機を回避できたことが、一目にしてわかる。
「ですが、油断することは出来ませんわ」
「そういうことだ。長兄と次兄には、戦列に加わってもらう。そこで……」
カフェは言葉を区切り、腰をかけ直す。
「ワルワル団に……領内の警らを一任しようと思う」
「……随分と思い切りましたわね」
「暫定的措置だ。恒常的に任せるわけではないし、今回の一件が終わったら、今一度話し合う必要があるだろうな」
カフェの娘、サチコは花嫁修業の逃亡の末、絶賛家出中の身である。
そして、彼女はワルワル団という謎の一団の総帥を勝手に名乗っていた。一団の目的は、今となってはルサスール領民の平和のために尽くすことである。
その思いが精霊に届いたのか、彼女は今回の騒動の中で覚醒をも果たす。
カフェの複雑な胸の内は、語るまでもない。
「……まぁ、そのときがきましたら」とサチコはカフェから目をそらす。
「とりあえず、巡回ルートだが……」
その反応を見なかったことにして、カフェが続けようとした、その時だ。
サチコの従者、タロが慌てた様子で執務室を訪れた。
「サチコ様、カフェ様。直接的なゴブリンではないのですが、奇妙なものを見たとの一報が……」
「奇妙なもの?」
小首を傾げるサチコへ、タロは気を静めてゆっくりと言葉を紡ぐ。
おおよそ、それは次のようなものであった。
人間のような姿をした何か。
「ざっくりしすぎですわ!?」
「どうやら、雑魔であると思われますが……」
「ゴブリンではなく?」
最近の騒動といえば、ほぼ間違いなくゴブリン絡みであった。本隊が移動を開始しているとはいえ、はみ出し者が事件を起こすというのは想像に難くない。
だが、雑魔となれば原因は異なる。
「自然発生にしては、人間に近い姿というのが気になるな……」
「それが、歪な姿をしており、継ぎ接ぎをしたような感じだそうです」
「継ぎ接ぎ、ですか?」
眉を寄せ、顎に手を当ててサチコは思案する。
「手足に動物と思しきものを当てているような。歪んだ造形だといいます」
「場所はどこですの?」
サチコの質問に、タロは言葉に詰まる。視線が泳ぎ、助けを求めるようにカフェへ向いた。
「構わん。サチ……ワルサー総帥には今しがた警らを頼んだところだ」
「では……」
一息置いて、タロは続ける。
それは、サチコにとって許しがたい場所であった。
ルサスール領北部の町、オーレフェルト。
そこよりやや南に位置する小さな村……ガレットという男が村長を務めている場所だ。サチコは今回の騒動の中で、ガレットと約束を交わし、避難を願った。
そのガレットの村が、歪虚出現の地点であるという。
「……おと……カフェ様。早速ですが、出たいと思います」
「部隊を編成してからにしなさい。雑魔相手となれば、準備がいるだろう」
気が急くサチコを諌め、カフェは書状を認める。
早馬を出し、ハンターを募る。
サチコは屋敷を出て、北の空を仰ぎ見る。歯噛みするように口を歪ませ、睨みつけるように目を細めるのであった。
ゴブリン本隊の南下……その一報は北部一円の貴族領にも届けられていた。
戦端を開いていたルサスール領も、多分に漏れず対応に追われていた。
幸いなことに一団の動きはルサスール領を外れ、迂回するルートをとっている。
だが、油断はできない。
ルサスール家の執務室では、領主カフェ・W・ルサスールと息女サチコ・W・ルサスールが話をしていた。その表情は硬く、瞳は卓上の地図を睨んでいた。
ゴブリンの動きを朱で示せば、ルサスール領が危機を回避できたことが、一目にしてわかる。
「ですが、油断することは出来ませんわ」
「そういうことだ。長兄と次兄には、戦列に加わってもらう。そこで……」
カフェは言葉を区切り、腰をかけ直す。
「ワルワル団に……領内の警らを一任しようと思う」
「……随分と思い切りましたわね」
「暫定的措置だ。恒常的に任せるわけではないし、今回の一件が終わったら、今一度話し合う必要があるだろうな」
カフェの娘、サチコは花嫁修業の逃亡の末、絶賛家出中の身である。
そして、彼女はワルワル団という謎の一団の総帥を勝手に名乗っていた。一団の目的は、今となってはルサスール領民の平和のために尽くすことである。
その思いが精霊に届いたのか、彼女は今回の騒動の中で覚醒をも果たす。
カフェの複雑な胸の内は、語るまでもない。
「……まぁ、そのときがきましたら」とサチコはカフェから目をそらす。
「とりあえず、巡回ルートだが……」
その反応を見なかったことにして、カフェが続けようとした、その時だ。
サチコの従者、タロが慌てた様子で執務室を訪れた。
「サチコ様、カフェ様。直接的なゴブリンではないのですが、奇妙なものを見たとの一報が……」
「奇妙なもの?」
小首を傾げるサチコへ、タロは気を静めてゆっくりと言葉を紡ぐ。
おおよそ、それは次のようなものであった。
人間のような姿をした何か。
「ざっくりしすぎですわ!?」
「どうやら、雑魔であると思われますが……」
「ゴブリンではなく?」
最近の騒動といえば、ほぼ間違いなくゴブリン絡みであった。本隊が移動を開始しているとはいえ、はみ出し者が事件を起こすというのは想像に難くない。
だが、雑魔となれば原因は異なる。
「自然発生にしては、人間に近い姿というのが気になるな……」
「それが、歪な姿をしており、継ぎ接ぎをしたような感じだそうです」
「継ぎ接ぎ、ですか?」
眉を寄せ、顎に手を当ててサチコは思案する。
「手足に動物と思しきものを当てているような。歪んだ造形だといいます」
「場所はどこですの?」
サチコの質問に、タロは言葉に詰まる。視線が泳ぎ、助けを求めるようにカフェへ向いた。
「構わん。サチ……ワルサー総帥には今しがた警らを頼んだところだ」
「では……」
一息置いて、タロは続ける。
それは、サチコにとって許しがたい場所であった。
ルサスール領北部の町、オーレフェルト。
そこよりやや南に位置する小さな村……ガレットという男が村長を務めている場所だ。サチコは今回の騒動の中で、ガレットと約束を交わし、避難を願った。
そのガレットの村が、歪虚出現の地点であるという。
「……おと……カフェ様。早速ですが、出たいと思います」
「部隊を編成してからにしなさい。雑魔相手となれば、準備がいるだろう」
気が急くサチコを諌め、カフェは書状を認める。
早馬を出し、ハンターを募る。
サチコは屋敷を出て、北の空を仰ぎ見る。歯噛みするように口を歪ませ、睨みつけるように目を細めるのであった。
リプレイ本文
▼
「……っ! 振り切られないよう、しっかり捕まってて!」
閑散とした村の中を、一匹の軍馬が走る。
騎乗しているのは、天竜寺 舞(ka0377)。そして、彼女にしがみつくサチコである。
彼女たちを追いたてるのは、一匹の鳥……いや翼を持ったゴブリンである。
鳥ゴブリンは、両腕の代わりになる翼で地面を滑空し、魔法の矢を飛ばしてくる。
「もとはシャーマンだったのでしょうか」
「もう知性なさそうだけどね!」
魔法の矢を何とか躱しながら、舞は進む。
「新手ですわ!」
後ろを見たサチコは、四足歩行で走り来るゴブリンを見た。足や腕が狼にすげ替えられているのだ。身体と頭部がゴブリンなだけに、気味が悪い。
「おっと!」
すかさず、陽山 神樹(ka0479)が割って入り、雷撃を放つ。
疾駆する狼ゴブリンに雷撃がかすめ、行動を奪う。その隙に、神樹も舞たちを追う。
「ヒーローが逃げるのは心が痛いけど、戦闘放棄じゃないから……いいよね」
「……」
神樹に同行するマホラ(ka5614)が大丈夫と頷く。
指折り数え、マホラは敵の数を確認していた。
「てき きた」とハンドサインで告げ、マホラが駆け出す。神樹も並走する。
サチコらが村に入ったのは、ほんの十分ほど前のこと。
村に到着した時、サチコたちは北側の丘を陣取っていた。
●
「サチコさーん、気負いすぎていませんか? お顔が般若のようになっていますよー」
険しい表情を見せるサチコに、最上 風(ka0891)はそう声をかけた。
「そんなこと、ありませんわ」と否定するサチコだが、表情は変わらない。
「噂は聞いてるけど、冷静にね。まぁ、逆上するとは思わないけどね」
神樹もサチコを宥めるようにいう。
「サチコさま。安心してください。あの祠はここの住民の魂だ。見過ごしませんよ」
ヴォーイ・スマシェストヴィエ(ka1613)は、槍を携えて宣言する。
「なるほど、サチコさんにとって、大事なものがあるんですね」
ヴォーイの言に、央崎 遥華(ka5644)がむんっと気合を入れる。
仲間とのやり取りに、サチコの表情がわずかに緩む。
「それで、様子はいかがですか?」
「まさかとは思うが、こないだここで屠った奴らじゃないだろうな」
「ふむ。素体はゴブリンのようだけど……」
何か妙な術でも使ったのかな、とイーディス・ノースハイド(ka2106)は評する。
茨小鬼なる存在が、暗躍する中、様々な考えが巡る。
「何だかキマイラとか鵺とかそんな感じの雑魔だね。見た目で判断できるのが救いかな……?」
『ちゅうい とか ある?』
距離をおいていたマホラも、地理情報を確認しに会話に混ざる。
近くで見て、マホラは本当に角がないことを改めて思った。
地図と合わせて、サチコから情報を聞き、それぞれ準備に入る。
「一緒に乗る?」
舞に誘われたサチコは、状況を見て頷きを返すのだった。
●
そして、今に戻る。
「戦え、ゴブリンども! 獲物として、ハンターたる私と!」
槍を携え、堂々と宣言する不動シオン(ka5395)が狼ゴブリンを誘い出す。
「広場に誘い出すまでは、我慢だぞ」
「わかってるって」
傍らで騎乗したイーディスが声をかける。シオンがうなずいたのを見て、さらに一体現れた狼ゴブリンを誘引する。目指すは中央にある広場だ。
散っていたキメラゴブリンを、広場へ集める。それが提示された作戦だった。
北側から入り、まっすぐに祠を目指す舞とサチコ。
巡りながら、あぶれたキメラゴブリンを引きつける役をイーディスとシオンらが担っていた。
「祠に精霊が宿ってるかもしんねー! 頼むぜ!」
広場に向かう途中、そんなことをヴォーイが告げていた。
サチコと舞は、覚醒状態を見せつけるように広場を目指す。舞は酒を開け、匂いでも誘っていた。これが功を奏したのか、それとも野生の習性か。
二体を引きつけ、舞たちは広場へとたどり着く。
「先着ですねー」
囮役とは別ルートでやってきた風も、ほぼ同着だった。
すぐさま祠を確認した彼女は、扉を閉めてサチコに中に誰もいないことを告げる。
「無事に退治して、ガレットさんに恩を売る……ではなく、吉報を届けたいですねー」
「そのためにも、守りきらないとね」
舞が下馬し、向かい来るゴブリンを睨む。
そのときだ、サチコが天を仰いだ。
「舞さん、二時の方向からなにか来ますわ!」
「……っと!」
振り下ろされた鉤爪を軽やかに避け、舞は敵を見た。双眼鏡で確認された、猫ゴブリンである。両腕が猫のそれ。立体的で素早い動きを見せる猫ゴブリンの二撃目を、更に避ける。
洗練された斬撃を繰り出し、相対する。
そうしている間に、ヴォーイらも追いついてきた。
「痛くないですから、ひとまず回復を受けてくださいねー」
「ぜぇぜぇ、帰ったらアーマースーツの手入れをしないと……」
神樹、ヴォーイを含め複数人が負傷していた。並のゴブリンに比べ、明らかに身体能力が向上しているのだ。
注射器の手厚い歓迎を受け、ヴォーイはすかさず戰槍を構えた。
「ここから先へは、行かせねーってんだ!」
祠を背に大きく身体を回し、迫り来る狼と猫のゴブリンへ穂先を振るう。
別の方角から合流したイーディスもヴォーイ同様、祠に背中を向ける。
「斬れば死ぬのは変わりない」
前方の敵を薙ぎ払い、戦線を定める。そこから先へは向かわせない意志を示していた。
「……」
舞が引き受けていた狼ゴブリンをマホラが手招きで挑発し、切り結ぶ。
静かなマホラと対照的にシオンは、
「さあ来い! 誰も巻き込まず、我々と貴様らで真剣勝負だ!」
宣戦布告をして、槍を突き立てる。
シオンたちの後ろで、神樹と遥華は少し上を見ていた。
「あいつらは俺たちがやるしかないね」
「はい、頑張ります!」
そこにいたのは、鳥ゴブリンたちだ。元シャーマンなのか、マジックアローを放つ。
地上戦の邪魔にならないよう、神樹たちの戦いも始まった。
▼
神樹が三角の光を紡ぎ、地と空それぞれの敵を狙う。光が奔るが、奇しくも身体を捉えることができない。
返すように鳥ゴブリンが魔法の矢を撃ち、神樹の腕をかすめた。
「くっ」
「私もあわせて行きますよ!」
遥華がマジックアローを放つ。鳥ゴブリンの数は、三体。
そのうちの一体に狙いを定め、翼を穿つ。
「負けてられないね」
畳み掛けるように神樹も再びデルタレイを発動する。一体の鳥ゴブリンが、両翼を失い、地に落ちる頃、イーディスとヴォーイに迫り来る影があった。
「やっと、おでましか」
誘引されていながら、様子を伺っていた熊ゴブリンである。いわずもがな身体に似合わぬ巨大な熊の手足を操るゴブリンだ。
その巨体から繰り出される一撃を盾で捌き、イーディスは熊ゴブリンを含めた敵を薙ぐ。
薙ぎ払いの隙をつき、抜けだそと猫ゴブリンが跳躍した。着地地点には、すでにシオンが踏み込んでいた。振り下ろされた強烈な一撃に、猫ゴブリンは後退する。
「私を無視するな。戦え!」
間合いを詰めながらの熾烈な打ち合い、無論、シオンも無事では済まない。
適度に自身の傷を癒しつつ、猫ゴブリンを追いたてる。
ヴォーイ側にも、同様に熊ゴブリンが襲いかかっていた。
「ひとりで引受すぎですよー」
「んなこといったって!」
加えて狼ゴブリンと猫ゴブリンが、周りを囲う。
すり抜けようとするものには、すかさず槍を振るって弾き飛ばす。同時に襲いかかろうと狙うのであれば、「せいのっ!」と槍をぶん回して対抗する。
適度に動物霊の力を借り俊敏さを高め、風から護りの光を受けながら奮戦する。
「何しに来たのかしんないけど、この村は荒らさせないよ!」
舞は飛びかかる狼ゴブリンをするりとかわし、背中に刃を突き立てる。
継ぎ目を狙うような一撃に、狼ゴブリンが地に伏せた。
「次は……」
「……」
もう一匹引きつけていた猫ゴブリンは、マホラが担う。
すばしっこい動きに、傷を負うも攻撃の手は緩めない。
「まだ やれる」とアイコンタクトで伝えるマホラに、そのまま任せて舞はヴォーイの応援に走る。
マホラは舞を見送ると、しかりと猫ゴブリンを見る。
司令官のような存在はいないらしい。熊ゴブリンも、そういう仕草は見せていない。
烏合の衆といったところか。
猫ゴブリンの一撃を受け、少し距離を取る。痛みがある間は、死んでないということ。
精神を統一し、小太刀を水平に構える。敵の動きを見定め、地を蹴った。
距離を詰めて、一文字に胴を撫で切りにする。
「……」
それが止めとなり、猫ゴブリンは倒れこんだ。猫ゴブリンを見下ろし、動かないことを確認すると次の獲物を探す。ふと、見上げれば一匹の鳥ゴブリンが落ちてきた。
●
「二体目も堕ちたね」
神樹のデルタレイに射抜かれ、二体目の鳥ゴブリンが墜落する。
風の注射器乱舞を受けながら、神樹と遥華は最後の鳥ゴブリンに狙いを定める。
「狙い撃ちますよ」
遥華は水弾を放ち、鳥ゴブリンの羽根を撃つ。その影響か、鳥ゴブリンがバランスを崩して高度を下げた。
「お」と見ている間に、猫ゴブリンを仕留めたばかりのマホラが距離を詰める。
逃げ場を塞ぐようにマホラは斬りかかりざまに踏み込む。刃が真っ直ぐに突き立てられる。
体勢を立て直そうとした鳥ゴブリンは、二度と飛ぶことができないのであった。
「順調ですよ、サチコさん!」
「えぇ、ですが油断せずに……」
サチコの視線の先では、熊ゴブリンが豪腕を振るっていた。
未だ残るは、猫、狼、熊ゴブリンがそれぞれ二体である。
そのうち、猫ゴブリンの一体をシオンが引き受けていた。
踏み込んざまに気合一閃。力強い打撃をシオンは繰り出す。
外れれば、猫ゴブリンの猫パンチがカウンターで返ってくる。受けたダメージを体内のマテリアルを活性化させ、治癒しながら一合、二合と打ち合いに入る。
「どうした、そんなものか!」
煽るようなことを口走りながら、次第にシオンが優位に立つ。振り下ろされた右腕をツーステップで躱すと、脳天へフラメアを叩き込んだ。
ぐらつく身体へ追撃を与え、とどめを刺す。
「次の相手は、どいつだ?」
見ればイーディスの薙ぎ払いの前に、狼ゴブリンが崩れ落ちていた。
残る熊ゴブリンは、いまだ体力を残している。
「よしっ」と気合を入れ、シオンは駆け出すのだった。
「ここまで守りを固めれば、怖くないぜ」
ヴォーイは風のプロテクションに加え、遥華から砂の鎧を与えられていた。
狼および猫ゴブリンは度重なる槍撃に、虫の息。熊ゴブリンは、傷を追いながらも猛威を振るっていた。だが、その危険性も重ねに重ねた防御によって和らぐ。
その場に飛び込んできたのは、舞だった。
「一気に終わらせるよ」
「おたくも来たのか! なら、終わらせるぜ」
猫ゴブリンを足場に、舞は跳躍し熊ゴブリンの死角から肩へ刃を斬り入れる。
足場にされた猫ゴブリンには、ヴォーイが槍撃を与えた。ゴブリンの身体と猫の腕。その継ぎ目を狙って放たれた一撃が、猫ゴブリンを猫とゴブリンに分かつ。
崩壊した腕を置き、残された側で反撃を狙う。
「おっと」
やや後退しつつも、まっすぐに敵を見据える。動きは早いが、知能が落ちているのか。単調な動きは、見飽きてきた。
もう片方の腕を叩き切ると、猫ゴブリンはそこで正体をなくす。崩れたところに、トドメの一撃を与え、地面に縫い付けた。
熊ゴブリンに跳びかかった舞は、振り払われた腕から逃れると、体勢を立て直した。
視界の端に、狼ゴブリンの姿が見える。
だが、手の空いたマホラに行き場を塞がれ、神樹と遥華の連携を前に亡きものとなっていた。
視線を戻し、熊ゴブリンを見上げる。
「んー、大きいけど」
いつか見た茨小鬼に比べれば、マシだ。手脚だけが大きく、むしろバランスが悪い。
近くにあった木箱を蹴って、飛びざまに一撃。
着地地点へ振り下ろされた腕を避けつつ、さらに切り結ぶ。
「せいっ!」
合わせてヴォーイが熊ゴブリンの頭を突く、バランスを崩し背中から熊ゴブリンが転がる。
立ち上がるより先に、舞の刃が腕を継ぎ目から切り落とす。再び転倒した熊ゴブリンは、二度と起き上がることはなかった。
「重いっ……」
のしかかるような熊の左腕を受け止め、その場で踏ん張りを利かす。連撃に右腕を振り上げた熊ゴブリンの側面から、シオンが踏み込みざまに一撃を見舞った。
合わせるようにイーディスが熊ゴブリンを押し返し、がら空きの胴を突く。
「貴様はここで終わりだ!」
シオンが立て続けに、熊ゴブリンの腱を切った。
膝から崩れた熊ゴブリンをイーディスが弾き飛ばす。倒れこんだ先に、愛馬エクレールの姿があった。足を振り上げ、全体重をもって熊ゴブリンの頭蓋を粉砕する。
だが、歪虚化した体はなおも動かんとする。
「一筋縄では、いかんか」
駈け出したイーディスの横を、魔法の矢が通過していった。
胸を穿たれ、頭のない熊ゴブリンはそのまま崩れ始めた。
「サチコさんの大切な村、守りぬきましたよ」
振り返る遥華に、サチコは安堵の表情を浮かべるのだった。
▼
「回復しますよ―」
「精霊の祠も無事そうだし、よかったぜ」
「私はおもいっきり戦えて満足だ」
風がヴォーイやシオンに注射器を乱舞させる中、神樹はサチコに改めて報告に向かう。
「殲滅完了しましたワルサー指揮官……じゃなくてワルサー総帥!!」
「ありがとうございました」
「ここって総帥にとってどんな場所なのかな? ワルワル団初期メンバーとの思い出の場所とか?」
「私も、できれば総帥の口からお聞きしたいです」
遥華も加わり、サチコに尋ねる。
サチコはおずおずと、ゴブリンの脅威から逃れるために村を空けてもらったこと。そのときに、村長と力を尽くして村を護ると約束したことを語る。
「そうだったんですね」
「ここがきみにとって、護りたい場所ということか」
いつの間にか、エクレールを労りながらイーディスも話に加わっていた。
一方で、舞はゴブリンの姿を確かめようとしたのだが……。
「あれ……消えた?」
いや、消えて当然かと思い直す。もし歪虚だとすれば、消えることのほうが多いのだ。
難しい顔をしていると、マホラが近づいてきた。
『とくちょう かいた』とキメラゴブリンについてまとめたものを渡してくれた。
「ありがとう。やっぱり報告しないとね」
一息ついて村を見渡す。
ゴブリンたちとの決着は近い。静かな村に人の声が戻るまで、戦いは続く。
嫌な予感を首筋に感じつつ、サチコは仲間たちと空を仰ぐのだった。
「……っ! 振り切られないよう、しっかり捕まってて!」
閑散とした村の中を、一匹の軍馬が走る。
騎乗しているのは、天竜寺 舞(ka0377)。そして、彼女にしがみつくサチコである。
彼女たちを追いたてるのは、一匹の鳥……いや翼を持ったゴブリンである。
鳥ゴブリンは、両腕の代わりになる翼で地面を滑空し、魔法の矢を飛ばしてくる。
「もとはシャーマンだったのでしょうか」
「もう知性なさそうだけどね!」
魔法の矢を何とか躱しながら、舞は進む。
「新手ですわ!」
後ろを見たサチコは、四足歩行で走り来るゴブリンを見た。足や腕が狼にすげ替えられているのだ。身体と頭部がゴブリンなだけに、気味が悪い。
「おっと!」
すかさず、陽山 神樹(ka0479)が割って入り、雷撃を放つ。
疾駆する狼ゴブリンに雷撃がかすめ、行動を奪う。その隙に、神樹も舞たちを追う。
「ヒーローが逃げるのは心が痛いけど、戦闘放棄じゃないから……いいよね」
「……」
神樹に同行するマホラ(ka5614)が大丈夫と頷く。
指折り数え、マホラは敵の数を確認していた。
「てき きた」とハンドサインで告げ、マホラが駆け出す。神樹も並走する。
サチコらが村に入ったのは、ほんの十分ほど前のこと。
村に到着した時、サチコたちは北側の丘を陣取っていた。
●
「サチコさーん、気負いすぎていませんか? お顔が般若のようになっていますよー」
険しい表情を見せるサチコに、最上 風(ka0891)はそう声をかけた。
「そんなこと、ありませんわ」と否定するサチコだが、表情は変わらない。
「噂は聞いてるけど、冷静にね。まぁ、逆上するとは思わないけどね」
神樹もサチコを宥めるようにいう。
「サチコさま。安心してください。あの祠はここの住民の魂だ。見過ごしませんよ」
ヴォーイ・スマシェストヴィエ(ka1613)は、槍を携えて宣言する。
「なるほど、サチコさんにとって、大事なものがあるんですね」
ヴォーイの言に、央崎 遥華(ka5644)がむんっと気合を入れる。
仲間とのやり取りに、サチコの表情がわずかに緩む。
「それで、様子はいかがですか?」
「まさかとは思うが、こないだここで屠った奴らじゃないだろうな」
「ふむ。素体はゴブリンのようだけど……」
何か妙な術でも使ったのかな、とイーディス・ノースハイド(ka2106)は評する。
茨小鬼なる存在が、暗躍する中、様々な考えが巡る。
「何だかキマイラとか鵺とかそんな感じの雑魔だね。見た目で判断できるのが救いかな……?」
『ちゅうい とか ある?』
距離をおいていたマホラも、地理情報を確認しに会話に混ざる。
近くで見て、マホラは本当に角がないことを改めて思った。
地図と合わせて、サチコから情報を聞き、それぞれ準備に入る。
「一緒に乗る?」
舞に誘われたサチコは、状況を見て頷きを返すのだった。
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そして、今に戻る。
「戦え、ゴブリンども! 獲物として、ハンターたる私と!」
槍を携え、堂々と宣言する不動シオン(ka5395)が狼ゴブリンを誘い出す。
「広場に誘い出すまでは、我慢だぞ」
「わかってるって」
傍らで騎乗したイーディスが声をかける。シオンがうなずいたのを見て、さらに一体現れた狼ゴブリンを誘引する。目指すは中央にある広場だ。
散っていたキメラゴブリンを、広場へ集める。それが提示された作戦だった。
北側から入り、まっすぐに祠を目指す舞とサチコ。
巡りながら、あぶれたキメラゴブリンを引きつける役をイーディスとシオンらが担っていた。
「祠に精霊が宿ってるかもしんねー! 頼むぜ!」
広場に向かう途中、そんなことをヴォーイが告げていた。
サチコと舞は、覚醒状態を見せつけるように広場を目指す。舞は酒を開け、匂いでも誘っていた。これが功を奏したのか、それとも野生の習性か。
二体を引きつけ、舞たちは広場へとたどり着く。
「先着ですねー」
囮役とは別ルートでやってきた風も、ほぼ同着だった。
すぐさま祠を確認した彼女は、扉を閉めてサチコに中に誰もいないことを告げる。
「無事に退治して、ガレットさんに恩を売る……ではなく、吉報を届けたいですねー」
「そのためにも、守りきらないとね」
舞が下馬し、向かい来るゴブリンを睨む。
そのときだ、サチコが天を仰いだ。
「舞さん、二時の方向からなにか来ますわ!」
「……っと!」
振り下ろされた鉤爪を軽やかに避け、舞は敵を見た。双眼鏡で確認された、猫ゴブリンである。両腕が猫のそれ。立体的で素早い動きを見せる猫ゴブリンの二撃目を、更に避ける。
洗練された斬撃を繰り出し、相対する。
そうしている間に、ヴォーイらも追いついてきた。
「痛くないですから、ひとまず回復を受けてくださいねー」
「ぜぇぜぇ、帰ったらアーマースーツの手入れをしないと……」
神樹、ヴォーイを含め複数人が負傷していた。並のゴブリンに比べ、明らかに身体能力が向上しているのだ。
注射器の手厚い歓迎を受け、ヴォーイはすかさず戰槍を構えた。
「ここから先へは、行かせねーってんだ!」
祠を背に大きく身体を回し、迫り来る狼と猫のゴブリンへ穂先を振るう。
別の方角から合流したイーディスもヴォーイ同様、祠に背中を向ける。
「斬れば死ぬのは変わりない」
前方の敵を薙ぎ払い、戦線を定める。そこから先へは向かわせない意志を示していた。
「……」
舞が引き受けていた狼ゴブリンをマホラが手招きで挑発し、切り結ぶ。
静かなマホラと対照的にシオンは、
「さあ来い! 誰も巻き込まず、我々と貴様らで真剣勝負だ!」
宣戦布告をして、槍を突き立てる。
シオンたちの後ろで、神樹と遥華は少し上を見ていた。
「あいつらは俺たちがやるしかないね」
「はい、頑張ります!」
そこにいたのは、鳥ゴブリンたちだ。元シャーマンなのか、マジックアローを放つ。
地上戦の邪魔にならないよう、神樹たちの戦いも始まった。
▼
神樹が三角の光を紡ぎ、地と空それぞれの敵を狙う。光が奔るが、奇しくも身体を捉えることができない。
返すように鳥ゴブリンが魔法の矢を撃ち、神樹の腕をかすめた。
「くっ」
「私もあわせて行きますよ!」
遥華がマジックアローを放つ。鳥ゴブリンの数は、三体。
そのうちの一体に狙いを定め、翼を穿つ。
「負けてられないね」
畳み掛けるように神樹も再びデルタレイを発動する。一体の鳥ゴブリンが、両翼を失い、地に落ちる頃、イーディスとヴォーイに迫り来る影があった。
「やっと、おでましか」
誘引されていながら、様子を伺っていた熊ゴブリンである。いわずもがな身体に似合わぬ巨大な熊の手足を操るゴブリンだ。
その巨体から繰り出される一撃を盾で捌き、イーディスは熊ゴブリンを含めた敵を薙ぐ。
薙ぎ払いの隙をつき、抜けだそと猫ゴブリンが跳躍した。着地地点には、すでにシオンが踏み込んでいた。振り下ろされた強烈な一撃に、猫ゴブリンは後退する。
「私を無視するな。戦え!」
間合いを詰めながらの熾烈な打ち合い、無論、シオンも無事では済まない。
適度に自身の傷を癒しつつ、猫ゴブリンを追いたてる。
ヴォーイ側にも、同様に熊ゴブリンが襲いかかっていた。
「ひとりで引受すぎですよー」
「んなこといったって!」
加えて狼ゴブリンと猫ゴブリンが、周りを囲う。
すり抜けようとするものには、すかさず槍を振るって弾き飛ばす。同時に襲いかかろうと狙うのであれば、「せいのっ!」と槍をぶん回して対抗する。
適度に動物霊の力を借り俊敏さを高め、風から護りの光を受けながら奮戦する。
「何しに来たのかしんないけど、この村は荒らさせないよ!」
舞は飛びかかる狼ゴブリンをするりとかわし、背中に刃を突き立てる。
継ぎ目を狙うような一撃に、狼ゴブリンが地に伏せた。
「次は……」
「……」
もう一匹引きつけていた猫ゴブリンは、マホラが担う。
すばしっこい動きに、傷を負うも攻撃の手は緩めない。
「まだ やれる」とアイコンタクトで伝えるマホラに、そのまま任せて舞はヴォーイの応援に走る。
マホラは舞を見送ると、しかりと猫ゴブリンを見る。
司令官のような存在はいないらしい。熊ゴブリンも、そういう仕草は見せていない。
烏合の衆といったところか。
猫ゴブリンの一撃を受け、少し距離を取る。痛みがある間は、死んでないということ。
精神を統一し、小太刀を水平に構える。敵の動きを見定め、地を蹴った。
距離を詰めて、一文字に胴を撫で切りにする。
「……」
それが止めとなり、猫ゴブリンは倒れこんだ。猫ゴブリンを見下ろし、動かないことを確認すると次の獲物を探す。ふと、見上げれば一匹の鳥ゴブリンが落ちてきた。
●
「二体目も堕ちたね」
神樹のデルタレイに射抜かれ、二体目の鳥ゴブリンが墜落する。
風の注射器乱舞を受けながら、神樹と遥華は最後の鳥ゴブリンに狙いを定める。
「狙い撃ちますよ」
遥華は水弾を放ち、鳥ゴブリンの羽根を撃つ。その影響か、鳥ゴブリンがバランスを崩して高度を下げた。
「お」と見ている間に、猫ゴブリンを仕留めたばかりのマホラが距離を詰める。
逃げ場を塞ぐようにマホラは斬りかかりざまに踏み込む。刃が真っ直ぐに突き立てられる。
体勢を立て直そうとした鳥ゴブリンは、二度と飛ぶことができないのであった。
「順調ですよ、サチコさん!」
「えぇ、ですが油断せずに……」
サチコの視線の先では、熊ゴブリンが豪腕を振るっていた。
未だ残るは、猫、狼、熊ゴブリンがそれぞれ二体である。
そのうち、猫ゴブリンの一体をシオンが引き受けていた。
踏み込んざまに気合一閃。力強い打撃をシオンは繰り出す。
外れれば、猫ゴブリンの猫パンチがカウンターで返ってくる。受けたダメージを体内のマテリアルを活性化させ、治癒しながら一合、二合と打ち合いに入る。
「どうした、そんなものか!」
煽るようなことを口走りながら、次第にシオンが優位に立つ。振り下ろされた右腕をツーステップで躱すと、脳天へフラメアを叩き込んだ。
ぐらつく身体へ追撃を与え、とどめを刺す。
「次の相手は、どいつだ?」
見ればイーディスの薙ぎ払いの前に、狼ゴブリンが崩れ落ちていた。
残る熊ゴブリンは、いまだ体力を残している。
「よしっ」と気合を入れ、シオンは駆け出すのだった。
「ここまで守りを固めれば、怖くないぜ」
ヴォーイは風のプロテクションに加え、遥華から砂の鎧を与えられていた。
狼および猫ゴブリンは度重なる槍撃に、虫の息。熊ゴブリンは、傷を追いながらも猛威を振るっていた。だが、その危険性も重ねに重ねた防御によって和らぐ。
その場に飛び込んできたのは、舞だった。
「一気に終わらせるよ」
「おたくも来たのか! なら、終わらせるぜ」
猫ゴブリンを足場に、舞は跳躍し熊ゴブリンの死角から肩へ刃を斬り入れる。
足場にされた猫ゴブリンには、ヴォーイが槍撃を与えた。ゴブリンの身体と猫の腕。その継ぎ目を狙って放たれた一撃が、猫ゴブリンを猫とゴブリンに分かつ。
崩壊した腕を置き、残された側で反撃を狙う。
「おっと」
やや後退しつつも、まっすぐに敵を見据える。動きは早いが、知能が落ちているのか。単調な動きは、見飽きてきた。
もう片方の腕を叩き切ると、猫ゴブリンはそこで正体をなくす。崩れたところに、トドメの一撃を与え、地面に縫い付けた。
熊ゴブリンに跳びかかった舞は、振り払われた腕から逃れると、体勢を立て直した。
視界の端に、狼ゴブリンの姿が見える。
だが、手の空いたマホラに行き場を塞がれ、神樹と遥華の連携を前に亡きものとなっていた。
視線を戻し、熊ゴブリンを見上げる。
「んー、大きいけど」
いつか見た茨小鬼に比べれば、マシだ。手脚だけが大きく、むしろバランスが悪い。
近くにあった木箱を蹴って、飛びざまに一撃。
着地地点へ振り下ろされた腕を避けつつ、さらに切り結ぶ。
「せいっ!」
合わせてヴォーイが熊ゴブリンの頭を突く、バランスを崩し背中から熊ゴブリンが転がる。
立ち上がるより先に、舞の刃が腕を継ぎ目から切り落とす。再び転倒した熊ゴブリンは、二度と起き上がることはなかった。
「重いっ……」
のしかかるような熊の左腕を受け止め、その場で踏ん張りを利かす。連撃に右腕を振り上げた熊ゴブリンの側面から、シオンが踏み込みざまに一撃を見舞った。
合わせるようにイーディスが熊ゴブリンを押し返し、がら空きの胴を突く。
「貴様はここで終わりだ!」
シオンが立て続けに、熊ゴブリンの腱を切った。
膝から崩れた熊ゴブリンをイーディスが弾き飛ばす。倒れこんだ先に、愛馬エクレールの姿があった。足を振り上げ、全体重をもって熊ゴブリンの頭蓋を粉砕する。
だが、歪虚化した体はなおも動かんとする。
「一筋縄では、いかんか」
駈け出したイーディスの横を、魔法の矢が通過していった。
胸を穿たれ、頭のない熊ゴブリンはそのまま崩れ始めた。
「サチコさんの大切な村、守りぬきましたよ」
振り返る遥華に、サチコは安堵の表情を浮かべるのだった。
▼
「回復しますよ―」
「精霊の祠も無事そうだし、よかったぜ」
「私はおもいっきり戦えて満足だ」
風がヴォーイやシオンに注射器を乱舞させる中、神樹はサチコに改めて報告に向かう。
「殲滅完了しましたワルサー指揮官……じゃなくてワルサー総帥!!」
「ありがとうございました」
「ここって総帥にとってどんな場所なのかな? ワルワル団初期メンバーとの思い出の場所とか?」
「私も、できれば総帥の口からお聞きしたいです」
遥華も加わり、サチコに尋ねる。
サチコはおずおずと、ゴブリンの脅威から逃れるために村を空けてもらったこと。そのときに、村長と力を尽くして村を護ると約束したことを語る。
「そうだったんですね」
「ここがきみにとって、護りたい場所ということか」
いつの間にか、エクレールを労りながらイーディスも話に加わっていた。
一方で、舞はゴブリンの姿を確かめようとしたのだが……。
「あれ……消えた?」
いや、消えて当然かと思い直す。もし歪虚だとすれば、消えることのほうが多いのだ。
難しい顔をしていると、マホラが近づいてきた。
『とくちょう かいた』とキメラゴブリンについてまとめたものを渡してくれた。
「ありがとう。やっぱり報告しないとね」
一息ついて村を見渡す。
ゴブリンたちとの決着は近い。静かな村に人の声が戻るまで、戦いは続く。
嫌な予感を首筋に感じつつ、サチコは仲間たちと空を仰ぐのだった。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/10/22 00:29:25 |
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相談卓 最上 風(ka0891) 人間(リアルブルー)|10才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/10/22 20:31:50 |