ゲスト
(ka0000)
失われる命、生まれる命
マスター:真太郎

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/10/30 15:00
- 完成日
- 2015/11/06 01:17
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「大変だぁーーー!!」
とある片田舎の村で、一人の農夫が血相を変え、大声で叫びながら駆けていた。
村人が何事かと家から顔を出すと、農夫はその村人に駆け寄り、必死の形相で訴えた。
「ゴブリンだっ! ゴブリンがオラのエリザベスとハンニバルをさらってっちまったぁー!!」
エリザベスとハンニバル。
人の名前のようだが、実はこの農夫が飼っている牛の名前だ。
だが、豊かとはいえない片田舎の農夫にとって牛2頭は貴重な財産である。
それが失われては生活もままならなくなるだろう。
しかも、この農夫は牛たちを溺愛している事で有名だった。
村人はとりあえず農夫を落ち着かせると、村長に相談を持ちかけた。
「ゴブリンなど我らの手に負えん。ハンターを雇うしかあるまい」
村長はそう結論づけたが、渋い顔をする村人もいた。
ハンターを雇うには当然賃金がかかるからだ。
しかし、今回の被害は牛2頭だったが、次は人的被害が出ないとは限らない。
その被害者が自分になるかもしれないとなると、村人達もハンターを雇う金を渋ってはいられなかった。
村人達は少しずつお金を出し合うと、ハンターズソサエティにゴブリン退治を依頼したのだった。
そして依頼を受けたハンター達が村を訪れると……。
「ハンター様!! エリザベスの腹にはハンニバルの子っこがいるんだ。アイツらオラの大事な家族なんだ。頼む! 助けてくだせー!!」
いきなり農夫がひれ伏さんばかりの勢いでハンター達に頭を下げてきた。
そんな農夫の必死な態度からは、その牛達の事を本当に家族のように思い、心配しているのだという想いがひしひしと伝わってくる。
ハンター達は他の村人達からも情報を集め、ゴブリン達の居場所が東の森だと知ると、すぐさま森へと分け入っていった。
森へ入って数刻の後、一人のハンターがくんくんと鼻を鳴らした。
ある匂いが鼻をついたのだ。
次第に他のハンター達もその匂いに気づく。
それは、肉が焼けて脂が溶ける事によって生じる、香しい匂いだ。
食欲の刺激される匂いで思わず口の中によだれが分泌してくると同時に、脳裏に嫌な予感がよぎる。
ハンター達は極力気配と音を消しながら匂いが漂ってくる方へ進んでゆく。
すると、木々の合間からゴブリン達の姿がチラチラと見え始めた。
ゴブリン達がいるのはどうやら薪割り小屋らしく、森の中にポッカリと広間ができていた。
開けた広間の真ん中辺りに薪割り小屋があり、小屋の前でゴブリン達が焚き火をしている。
そして焚き火の周りでは肉塊が炙られていた。
匂いの元は間違いなく焚き火に炙られたその肉塊だ。
ゴブリン達は切り株に座り、焼きあがった肉を美味そうに喰っている。
その肉の正体は、焚き火の傍で解体されている牛の肉で間違いなさそうである。
哀れ、さらわれた牛は既にゴブリンの胃袋へと消えていた。
しかし解体されているのは1頭だけ。
もう一頭が何処かにいるはずである。
ハンター達が周囲に目を凝らすと、薪割り小屋の柱に鉄の鎖で繋がれた牛を見つける。
もう一頭は無事だ。
だが、その牛の様子がおかしい。
良く見ると、その牛のお尻のあたりから足が生えているのだ。
どうやら出産が始まってしまっているらしい。
しかも逆子なのか、子牛は足しか出ていない状態だ。
母牛の足や地面は羊水でベッタリ濡れている。
何時から出産が始まり、この状態がどれくらい続いているのか分からないが、一刻も早く産ませてあげないと子牛の命が危険な事は間違いなかった。
とある片田舎の村で、一人の農夫が血相を変え、大声で叫びながら駆けていた。
村人が何事かと家から顔を出すと、農夫はその村人に駆け寄り、必死の形相で訴えた。
「ゴブリンだっ! ゴブリンがオラのエリザベスとハンニバルをさらってっちまったぁー!!」
エリザベスとハンニバル。
人の名前のようだが、実はこの農夫が飼っている牛の名前だ。
だが、豊かとはいえない片田舎の農夫にとって牛2頭は貴重な財産である。
それが失われては生活もままならなくなるだろう。
しかも、この農夫は牛たちを溺愛している事で有名だった。
村人はとりあえず農夫を落ち着かせると、村長に相談を持ちかけた。
「ゴブリンなど我らの手に負えん。ハンターを雇うしかあるまい」
村長はそう結論づけたが、渋い顔をする村人もいた。
ハンターを雇うには当然賃金がかかるからだ。
しかし、今回の被害は牛2頭だったが、次は人的被害が出ないとは限らない。
その被害者が自分になるかもしれないとなると、村人達もハンターを雇う金を渋ってはいられなかった。
村人達は少しずつお金を出し合うと、ハンターズソサエティにゴブリン退治を依頼したのだった。
そして依頼を受けたハンター達が村を訪れると……。
「ハンター様!! エリザベスの腹にはハンニバルの子っこがいるんだ。アイツらオラの大事な家族なんだ。頼む! 助けてくだせー!!」
いきなり農夫がひれ伏さんばかりの勢いでハンター達に頭を下げてきた。
そんな農夫の必死な態度からは、その牛達の事を本当に家族のように思い、心配しているのだという想いがひしひしと伝わってくる。
ハンター達は他の村人達からも情報を集め、ゴブリン達の居場所が東の森だと知ると、すぐさま森へと分け入っていった。
森へ入って数刻の後、一人のハンターがくんくんと鼻を鳴らした。
ある匂いが鼻をついたのだ。
次第に他のハンター達もその匂いに気づく。
それは、肉が焼けて脂が溶ける事によって生じる、香しい匂いだ。
食欲の刺激される匂いで思わず口の中によだれが分泌してくると同時に、脳裏に嫌な予感がよぎる。
ハンター達は極力気配と音を消しながら匂いが漂ってくる方へ進んでゆく。
すると、木々の合間からゴブリン達の姿がチラチラと見え始めた。
ゴブリン達がいるのはどうやら薪割り小屋らしく、森の中にポッカリと広間ができていた。
開けた広間の真ん中辺りに薪割り小屋があり、小屋の前でゴブリン達が焚き火をしている。
そして焚き火の周りでは肉塊が炙られていた。
匂いの元は間違いなく焚き火に炙られたその肉塊だ。
ゴブリン達は切り株に座り、焼きあがった肉を美味そうに喰っている。
その肉の正体は、焚き火の傍で解体されている牛の肉で間違いなさそうである。
哀れ、さらわれた牛は既にゴブリンの胃袋へと消えていた。
しかし解体されているのは1頭だけ。
もう一頭が何処かにいるはずである。
ハンター達が周囲に目を凝らすと、薪割り小屋の柱に鉄の鎖で繋がれた牛を見つける。
もう一頭は無事だ。
だが、その牛の様子がおかしい。
良く見ると、その牛のお尻のあたりから足が生えているのだ。
どうやら出産が始まってしまっているらしい。
しかも逆子なのか、子牛は足しか出ていない状態だ。
母牛の足や地面は羊水でベッタリ濡れている。
何時から出産が始まり、この状態がどれくらい続いているのか分からないが、一刻も早く産ませてあげないと子牛の命が危険な事は間違いなかった。
リプレイ本文
「1頭は……手遅れですか」
ゴブリンに喰われている牛を見て、保・はじめ(ka5800)は表情を曇らせた。
「とても美味しそうな香……じゃない、牛さんが大変なのです。許せないんだから!」
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)は思わず漏れそうになった本音を唾と共に呑み込み、一転怒りを露にする。
「……だめだ。これは……ちょっと、僕も赦せないな」
水流崎トミヲ(ka4852)は幸せだったろう牛夫婦の事を想い、怒りで強く拳を握り締めた。
「せめて残った1頭は助けてあげたいですし、パパッとゴブリンを……って、お産が始まってる!?」
「おや、ホントだねえ。脚が出ちゃってるヨ」
和泉 澪(ka4070)が驚きの声を上げると、釣られてそちらを見たフォークス(ka0570)が苦笑を浮かべた。
「逆子ですか……あのままでは子牛の命が危ういやもしれません」
観那(ka4583)の声に焦りが滲む。
「時間との勝負ね、一気に同時に片付けましょう」
月影 夕姫(ka0102)はクロノスサイズを構えて戦闘態勢をとった。
「そうですね。ゴブリンに状況を把握される前に、決めてしまいましょう」
保はカードバインダー「ルーンマジック」から符を2枚引き抜き、『禹歩』を発動させる。
「お肉大好きな僕が言えた義理じゃあないかもしれないけど! あの『2匹』は、必ず、助ける……!」
そしてトミヲが『DT魔法『終末幻想七式』』の準備を始めると同時に夕姫、澪、観那は隠れ場所から飛び出し、ルンルンは忍者っぽくコッソリと小屋に近づいていった。
「……最後に見る夢は、幸せなものだといいね。――終末幻想、七式」
トミヲが魔法を発動させると焚き火の周りのゴブリン達が一瞬青白いガスに包まれ、斧持ちのゴブリンと肉を焼いていたゴブリンの1体が大きなアクビをしてから眠り込む。
「――!」
すると杖持ちのゴブリンメイジが焦った表情を浮かべた。
どうやら魔法攻撃を受けたと気づいたらしい。
「――?」
もう一方の眠らなかったゴブリンは不思議そうな顔をしている。
「間抜けめ」
カイン・マッコール(ka5336)は小さく呟くと、短弓「テムジン」を引き絞った。
シュッ
放たれた矢が風切り音を鳴らして飛び、ゴブリンの頭を貫く。
頭を射抜かれたゴブリンの体がゆっくりと横倒しになり、手に持っていた肉がポロリと落ちた。
「お前たちにかける慈悲などない。確実に、殺す」
「ギャギャ!」
それらの異常に気づいた見張りのゴブリン達が肉を捨て、慌てて弓を引き絞る。
「遅いヨ」
しかしゴブリンが矢を放つより先にフォークスが魔導拳銃「エア・スティーラー」の引き金を引く。
『ターゲッティング』により狙い違わず放たれた弾丸はゴブリンが弓を構えている左手に命中。
指が弾け飛び、ゴブリンが苦悶の表情を浮かべて弓を取り落とす。
そして自分が狙われていると悟ったゴブリンは逃げ出そうとした。
「おいおい、牛の方に逃げるなヨ」
フォークスは『シャープシューティング』を発動し、十字の模様の浮かんだ右目でゴブリンの側頭部を鋭く見据えた。
右指のワンアクションで放たれた弾丸が風の精霊の力を纏って飛び、ゴブリンの頭を撃ち貫く。
衝撃で跳ねたゴブリンの体が横倒しになり、頭の弾痕から流れ出た血が屋根の上に血溜まりを作った。
保は『禹歩』に使った符を捨てると、左右の手に1枚ずつ符を持ち、左手の符で『コンボカード』を発動。
更に右手の符を掲げて見張りのゴブリンに狙いを定めると、『胡蝶符』を発動させた。
「行け!」
符から出現した蝶の光球が光の筋を引きながら飛び、ゴブリンの顔面に命中する。
「ギャッ!」
ゴブリンは悲鳴を上げると撃たれた顔面を手で押さえながらよろめき、屋根から足を踏み外して落下。
積んであった薪に頭から突っ込んだ。
ガランガランと薪の崩れる音が鳴り響く。
「うわ、痛そー」
フォークスは言葉とは裏腹に口元に小さく笑みを浮かべ、ゴブリンが落ちた先に銃口を向ける。
だが、土煙が立っていてよく見えない。
保も新たな符を構えて土煙を見据える。
煙の中に動きはない。
やがて煙が晴れると、2人は緊張を緩めた。
なぜならゴブリンは顔が潰れ、首が折れた状態で事切れていたからだ。
逸早く襲撃に気づけていたゴブリンメイジは斧持ちゴブリンを杖で殴って起こすと、魔法を使う体勢に入る。
「させない!」
だが、夕姫は『ジェットブーツ』を発動し、足から噴出させたマテリアルの推進力で加速。
牛を背にし、ゴブリンメイジが間合いに入る距離まで一気に入り込み、クロノスサイズで薙ぎ払う。
鎌の刃は脇腹から入り、肩まで抜けた。
真っ二つになったゴブリンメイジの上半身が血と臓物を撒き散らしながら吹っ飛んでゆく。
間違いなく即死だ。
「……これなら牛の間に割って入る必要なかったかしら?」
「オォォォーーー!!」
夕姫が敵に呆気なさを感じていると、目の覚めた斧持ちゴブリンが咆哮を上げ、斧を振り下ろしてきた。
咄嗟に鎌で受けたが、衝撃が腕に響く。
「くっ!」
夕姫は衝撃を逃がすために斧を受け流しつつ後ろに跳び退った。
「なんて馬鹿力!」
夕姫は鎌で反撃したが、斧で受け止められた。
どうやらこのゴブリンだけ強さが別格らしい。
「ジュゲームリリカル……ルンルン忍法分身の術!」
誰にも聞こえない小さな声で呪文が響く。
そして『るんるん』と大きく書かれた5cm程の式神が現れ、斧持ちゴブリンの顔の前でヒラヒラと踊りだした。
それはルンルンが『式符』で呼び出した式神だ。
薪割り小屋にコッソリ潜んでいたルンルンが夕姫を援護すべく、式神を送り込んだのである。
「ガァ!」
しかし、式神はゴブリンに手で払われただけで霧散した。
「分身の術が破られた!? しかーしっ! まだ私のターンは終わってない!」
ルンルンがすかさず次の符を抜く。
「ここで畳に伏せたトラップカード発動! ……倍率どん、更に半分☆」
もちろん畳にトラップカードなど伏せてあるはずもなく、符はルンルンの手から投げつけられる。
符がゴブリンの側まで飛ぶと『桜幕符』が発動し、幻覚の桜吹雪が舞い散ってゴブリンの視界を再び塞ぐ。
その間に夕姫はマテリアルを変換したエネルギーをクロノスサイズに内包させていた。
そして幻覚の桜吹雪が消えた直後、『機導砲』を発動。
「これで終わりよ!」
クロノスサイズから眩い光が放たれ、ゴブリンの頭を撃ち抜く。
光が収まった後には首から上が消し飛んだゴブリンの死体が残っていた。
「助かったわ、ありがとう」
夕姫がルンルンに微笑を向ける。
「えへへっ。攪乱工作は、ニンジャの基本だもの」
ルンルンは得意気な笑みでVサインを作った。
「さて、残りは寝てるヤツだけ……」
フォークスがそちらを見ると、カインが寝ているゴブリンの首を切り裂き、心臓に刃を突き立てている光景が目に入った。
カインはそれを黙々と行っていた。
まるでそうするのが義務であるかのように。
「ゴブリンの死体は衛生上と他のゴブリンたちへの警告のため、1か所に集めて燃やしてしまいたいのですが」
顔に返り血を付け、目に殺意を宿しながらも無表情で告げてくるカインはなかなかの迫力であった。
「そこまでは依頼内容には含まれてないケド、焼却するのは吝かじゃないよ。なんせ家族を焼いて食ったも同然みたいだし。なんだったらゴブリン肉でも試してみるかい?」
フォークスがからかい気味に言うと、カインの表情がピクリと振るえ、瞳に怒気が宿る。
「ゴキブリ肉のあの萎びた味より、は……」
カインが睨みつけてくる目から、フォークスは何か地雷を踏んだらしいと気づいた。
「ぁー……ゴメンゴメン! からかって悪かった。あたいも燃やすの手伝うヨ」
「……お願いします」
フォークスが諸手を上げて謝ると、カインは怒気を消し、足元のゴブリンを肩に背負った。
(何かワケありなのかねェ。ま、あたいも人のコト言えないけどサ)
フォークスはタバコに火をつけて深く吸い込み、紫煙を吐き出した。
そうして一服した後、手近なゴブリンを拾ってきて焚き火に放り込んだ。
パチパチと燃える炎の中で、ゴブリンの顔が妙に恨めし気に見える。
「自分達の熾した火で自分達が焼かれる、か。これも因果応報ってヤツ?」
「これが因果だと言うのなら、全ての亜人に降りかかればいい。奴らは歪虚よりもタチの悪い最悪の敵です。だからこそ、確実に殲滅しなければなりません」
炎の中で焼け焦げてゆくゴブリンを眺めるカインの横顔からは固い決意と憎悪が伺えた。
そんな戦闘の最中、澪と観那は母牛の所に無事に辿り着いて、子牛の出産に取り掛かっていた。
「えい!」
まず澪が母牛を繋いでいる鎖を切断した。
この鎖を子牛の脚に巻いて引っ張り出す作戦だ。
「このまま巻いては脚を傷つけるやもしれません。何か布のような物があればよいのですが……」
辺りを見渡したが、適当な物が見当たらない。
「……仕方ありません」
観那は自分の着物の袖を破った。
「観那さん! そんな綺麗な着物なのに……」
「お気になさらず。衣類などより新たに生まれる命のほうが大切です」
観那はまったく気にした様子を見せず、破いた袖を子牛の脚に巻き、その上から鎖を巻いた。
「では引っ張りますよ! せーの!」
「んー!」
2人で鎖を掴んで思いっきり引っ張った。
「モォー!」
すると引く力が強すぎて母牛まで引きずってしまう。
「はわわっ!」
「きゃ!」
2人は勢い余って尻餅をついた。
「いたた……」
「子牛は?」
子牛はまったく出てきていない。
「お母さんも押さえてないと駄目ですね」
「では、私が母牛を押さえますので、澪さんは鎖を引いてください」
「うん。じゃあもう一度。せーの!」
「んー!」
母牛は動かなくなったが、澪だけの力では子牛は出てこない。
「お母さん、気張らないで力を抜いてください」
観那がそう呼びかけても牛に言葉は通じない。
「んーーーー!!」
澪が息を止め、顔を真っ赤にして引き続けたが、出てこなかった。
「プハーー!! ダメだぁー! 出てこない……」
息を荒げた澪がうなだれる。
「おーい!」
そこに戦闘を終えた、夕姫、トミヲ、ルンルン、保が駆けつけてくる。
「皆さん!」
観那の顔が希望でパッと輝いた。
「僕たちも手伝います」
「お産って何がいるんだい!? え、ええええっと……せ、清潔な水とか!? 水ならピュアウォーターで出せるよ! ほら!」
「水ならこれを使って」
いきなりテンパっているトミヲと違って冷静な夕姫がペットボトルの水を差し出した。
「ありがとうございます。でもまずは子牛を引っぱりださないといけません」
「そうね。じゃあ私と観那で母牛を押さえるわ。残りの人は子牛を引っ張って」
「はい」
「了解です」
「2匹とも助けますよー!」
「よーし! やるぞー!」
「せーのっ!」
6人で一斉に引っ張る。
すると子牛がズルリと母牛の体内から引きずり出されてきた。
そして引っ張っていた4人はそのまま後ろにバランスを崩す。
「あっ!」
2度目だった澪は踏ん張れた。
「うぉ!」
しかし最後尾のトミヲは倒れた。
「えっ?」
「キャ!」
そして残りの2人も倒れたトミヲに足をとられて倒れてしまう。
「いたた……」
「子牛は?」
「産まれてる!」
「やったぁー!」
「ヤッホー!」
3人は倒れてもみあったまま歓声をあげた。
「私は止血しますので、観那さんは体を拭いてください」
「はい」
観那はもう片方の袖を破ると、産まれた子牛の身体を拭き始める。
止血をしようとしていた澪はへその緒が既に切れている事に気づいた。
「へその緒が……」
とりあえず止血は終えたが、それよりも気がかりなことがある。
「この子、まったく動かないですけど……」
「え?」
観那が子牛の顔を拭いて、呼吸を確認する。
「……息、していません」
「え!」
「そんな!」
「もしかして……死産」
悲壮な空気が漂いそうになった時、保が前に進み出てきた。
「診せてください!」
保は簡単に容態を診て、弱くではあるが心臓が動いている事を確認すると、口で子牛の鼻から羊水を吸い出し、吐き捨てる。
そして人工呼吸を開始した。
「がんばれー!」
「息をしてー!」
「死んじゃダメです!」
「生きろー!」
周りの者たちが必死に声援を送り始める。
そんな緊迫した空気の中、子牛の足がピクピクと動きだした。
「動いた!」
「生きてる!」
喜びと安堵で一斉に歓声が上がる。
「やったぁー!」
ルンルンは嬉しさのあまり、隣りにいたトミヲの腕に抱きついた。
その瞬間、トミヲの脳髄に衝撃が走った。
金髪巨乳美少女に抱きつかれる。
そんな事は元いた世界では絶対に起こり得ない。
100パーセントあり得ない。
そんなものはファンタジーだ。
しかし腕から伝わるこの柔らかい感触は紛れもなく……。
(ふおおおおおぉぉぉぉーーーーーっ!!!)
奇声が口から飛び出しそうになったが、ギリギリ堪える事ができた。
もし出ていたら社会的に死んでいたかもしれない。
そしてトミヲは。
「……」
DT魔力によって固まった。
こういった状況にまったく慣れていないトミヲは頭の中が真っ白になってしまったのだ。
一方、ルンルンはすぐにトミヲから離れ、今は澪と両手を繋いでブンブン振っている。
それが終わると、今度は夕姫にハイタッチを求めていた。
夕姫は苦笑を浮かべていたが、素直にハイタッチに応じてあげた。
ルンルンはただ手近にいたトミヲに嬉しさを表しただけだったのだろう。
しかしDTには夢のような体験であった。
(クリムゾンウェストさいこーーーーーっ!!)
「ふぅ……」
一仕事終えた保が安堵の息を吐き、額に浮かんでいた汗をぬぐった。
「凄いです保さん!」
「感動いたしました!」
「いや、その……無我夢中でやっただけです」
尊敬の面持ちで見てくる澪と観那に照れ笑いを浮かべる保。
一方、息を吹き返した子牛はヨロヨロと立ち上がり、母牛の乳を求めて歩き出していた。
「あと少し、頑張れー」
「がんばれー」
「もうちょっとだー」
再び起こる声援。
「生命が生まれる瞬間か……やっぱり感動するわね」
夕姫が頬を緩めて見守る先で、子牛が何度も転び、何度も立ち上がる。
やがて子牛は母牛の元まで辿り着き、乳を飲み始める。
「ふぅ……これで一安心ですね。ハンニバルは間に合いませんでしたが、エリザベスとこの子があの状況で無事に出産できて良かったです」
ようやく安心できた澪が疲れた様子で一息つく。
「そうですね。それにしても、記念すべき西方での初仕事で、まさか牛の出産に立ち会う事になろうとは……。ハンターと言うのは本当に何でも屋なんですね」
同じく心身ともに疲れ果てていた保は苦笑し、空を仰ぐ。
だが、気分はとても晴れやかだった。
ゴブリンに喰われている牛を見て、保・はじめ(ka5800)は表情を曇らせた。
「とても美味しそうな香……じゃない、牛さんが大変なのです。許せないんだから!」
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)は思わず漏れそうになった本音を唾と共に呑み込み、一転怒りを露にする。
「……だめだ。これは……ちょっと、僕も赦せないな」
水流崎トミヲ(ka4852)は幸せだったろう牛夫婦の事を想い、怒りで強く拳を握り締めた。
「せめて残った1頭は助けてあげたいですし、パパッとゴブリンを……って、お産が始まってる!?」
「おや、ホントだねえ。脚が出ちゃってるヨ」
和泉 澪(ka4070)が驚きの声を上げると、釣られてそちらを見たフォークス(ka0570)が苦笑を浮かべた。
「逆子ですか……あのままでは子牛の命が危ういやもしれません」
観那(ka4583)の声に焦りが滲む。
「時間との勝負ね、一気に同時に片付けましょう」
月影 夕姫(ka0102)はクロノスサイズを構えて戦闘態勢をとった。
「そうですね。ゴブリンに状況を把握される前に、決めてしまいましょう」
保はカードバインダー「ルーンマジック」から符を2枚引き抜き、『禹歩』を発動させる。
「お肉大好きな僕が言えた義理じゃあないかもしれないけど! あの『2匹』は、必ず、助ける……!」
そしてトミヲが『DT魔法『終末幻想七式』』の準備を始めると同時に夕姫、澪、観那は隠れ場所から飛び出し、ルンルンは忍者っぽくコッソリと小屋に近づいていった。
「……最後に見る夢は、幸せなものだといいね。――終末幻想、七式」
トミヲが魔法を発動させると焚き火の周りのゴブリン達が一瞬青白いガスに包まれ、斧持ちのゴブリンと肉を焼いていたゴブリンの1体が大きなアクビをしてから眠り込む。
「――!」
すると杖持ちのゴブリンメイジが焦った表情を浮かべた。
どうやら魔法攻撃を受けたと気づいたらしい。
「――?」
もう一方の眠らなかったゴブリンは不思議そうな顔をしている。
「間抜けめ」
カイン・マッコール(ka5336)は小さく呟くと、短弓「テムジン」を引き絞った。
シュッ
放たれた矢が風切り音を鳴らして飛び、ゴブリンの頭を貫く。
頭を射抜かれたゴブリンの体がゆっくりと横倒しになり、手に持っていた肉がポロリと落ちた。
「お前たちにかける慈悲などない。確実に、殺す」
「ギャギャ!」
それらの異常に気づいた見張りのゴブリン達が肉を捨て、慌てて弓を引き絞る。
「遅いヨ」
しかしゴブリンが矢を放つより先にフォークスが魔導拳銃「エア・スティーラー」の引き金を引く。
『ターゲッティング』により狙い違わず放たれた弾丸はゴブリンが弓を構えている左手に命中。
指が弾け飛び、ゴブリンが苦悶の表情を浮かべて弓を取り落とす。
そして自分が狙われていると悟ったゴブリンは逃げ出そうとした。
「おいおい、牛の方に逃げるなヨ」
フォークスは『シャープシューティング』を発動し、十字の模様の浮かんだ右目でゴブリンの側頭部を鋭く見据えた。
右指のワンアクションで放たれた弾丸が風の精霊の力を纏って飛び、ゴブリンの頭を撃ち貫く。
衝撃で跳ねたゴブリンの体が横倒しになり、頭の弾痕から流れ出た血が屋根の上に血溜まりを作った。
保は『禹歩』に使った符を捨てると、左右の手に1枚ずつ符を持ち、左手の符で『コンボカード』を発動。
更に右手の符を掲げて見張りのゴブリンに狙いを定めると、『胡蝶符』を発動させた。
「行け!」
符から出現した蝶の光球が光の筋を引きながら飛び、ゴブリンの顔面に命中する。
「ギャッ!」
ゴブリンは悲鳴を上げると撃たれた顔面を手で押さえながらよろめき、屋根から足を踏み外して落下。
積んであった薪に頭から突っ込んだ。
ガランガランと薪の崩れる音が鳴り響く。
「うわ、痛そー」
フォークスは言葉とは裏腹に口元に小さく笑みを浮かべ、ゴブリンが落ちた先に銃口を向ける。
だが、土煙が立っていてよく見えない。
保も新たな符を構えて土煙を見据える。
煙の中に動きはない。
やがて煙が晴れると、2人は緊張を緩めた。
なぜならゴブリンは顔が潰れ、首が折れた状態で事切れていたからだ。
逸早く襲撃に気づけていたゴブリンメイジは斧持ちゴブリンを杖で殴って起こすと、魔法を使う体勢に入る。
「させない!」
だが、夕姫は『ジェットブーツ』を発動し、足から噴出させたマテリアルの推進力で加速。
牛を背にし、ゴブリンメイジが間合いに入る距離まで一気に入り込み、クロノスサイズで薙ぎ払う。
鎌の刃は脇腹から入り、肩まで抜けた。
真っ二つになったゴブリンメイジの上半身が血と臓物を撒き散らしながら吹っ飛んでゆく。
間違いなく即死だ。
「……これなら牛の間に割って入る必要なかったかしら?」
「オォォォーーー!!」
夕姫が敵に呆気なさを感じていると、目の覚めた斧持ちゴブリンが咆哮を上げ、斧を振り下ろしてきた。
咄嗟に鎌で受けたが、衝撃が腕に響く。
「くっ!」
夕姫は衝撃を逃がすために斧を受け流しつつ後ろに跳び退った。
「なんて馬鹿力!」
夕姫は鎌で反撃したが、斧で受け止められた。
どうやらこのゴブリンだけ強さが別格らしい。
「ジュゲームリリカル……ルンルン忍法分身の術!」
誰にも聞こえない小さな声で呪文が響く。
そして『るんるん』と大きく書かれた5cm程の式神が現れ、斧持ちゴブリンの顔の前でヒラヒラと踊りだした。
それはルンルンが『式符』で呼び出した式神だ。
薪割り小屋にコッソリ潜んでいたルンルンが夕姫を援護すべく、式神を送り込んだのである。
「ガァ!」
しかし、式神はゴブリンに手で払われただけで霧散した。
「分身の術が破られた!? しかーしっ! まだ私のターンは終わってない!」
ルンルンがすかさず次の符を抜く。
「ここで畳に伏せたトラップカード発動! ……倍率どん、更に半分☆」
もちろん畳にトラップカードなど伏せてあるはずもなく、符はルンルンの手から投げつけられる。
符がゴブリンの側まで飛ぶと『桜幕符』が発動し、幻覚の桜吹雪が舞い散ってゴブリンの視界を再び塞ぐ。
その間に夕姫はマテリアルを変換したエネルギーをクロノスサイズに内包させていた。
そして幻覚の桜吹雪が消えた直後、『機導砲』を発動。
「これで終わりよ!」
クロノスサイズから眩い光が放たれ、ゴブリンの頭を撃ち抜く。
光が収まった後には首から上が消し飛んだゴブリンの死体が残っていた。
「助かったわ、ありがとう」
夕姫がルンルンに微笑を向ける。
「えへへっ。攪乱工作は、ニンジャの基本だもの」
ルンルンは得意気な笑みでVサインを作った。
「さて、残りは寝てるヤツだけ……」
フォークスがそちらを見ると、カインが寝ているゴブリンの首を切り裂き、心臓に刃を突き立てている光景が目に入った。
カインはそれを黙々と行っていた。
まるでそうするのが義務であるかのように。
「ゴブリンの死体は衛生上と他のゴブリンたちへの警告のため、1か所に集めて燃やしてしまいたいのですが」
顔に返り血を付け、目に殺意を宿しながらも無表情で告げてくるカインはなかなかの迫力であった。
「そこまでは依頼内容には含まれてないケド、焼却するのは吝かじゃないよ。なんせ家族を焼いて食ったも同然みたいだし。なんだったらゴブリン肉でも試してみるかい?」
フォークスがからかい気味に言うと、カインの表情がピクリと振るえ、瞳に怒気が宿る。
「ゴキブリ肉のあの萎びた味より、は……」
カインが睨みつけてくる目から、フォークスは何か地雷を踏んだらしいと気づいた。
「ぁー……ゴメンゴメン! からかって悪かった。あたいも燃やすの手伝うヨ」
「……お願いします」
フォークスが諸手を上げて謝ると、カインは怒気を消し、足元のゴブリンを肩に背負った。
(何かワケありなのかねェ。ま、あたいも人のコト言えないけどサ)
フォークスはタバコに火をつけて深く吸い込み、紫煙を吐き出した。
そうして一服した後、手近なゴブリンを拾ってきて焚き火に放り込んだ。
パチパチと燃える炎の中で、ゴブリンの顔が妙に恨めし気に見える。
「自分達の熾した火で自分達が焼かれる、か。これも因果応報ってヤツ?」
「これが因果だと言うのなら、全ての亜人に降りかかればいい。奴らは歪虚よりもタチの悪い最悪の敵です。だからこそ、確実に殲滅しなければなりません」
炎の中で焼け焦げてゆくゴブリンを眺めるカインの横顔からは固い決意と憎悪が伺えた。
そんな戦闘の最中、澪と観那は母牛の所に無事に辿り着いて、子牛の出産に取り掛かっていた。
「えい!」
まず澪が母牛を繋いでいる鎖を切断した。
この鎖を子牛の脚に巻いて引っ張り出す作戦だ。
「このまま巻いては脚を傷つけるやもしれません。何か布のような物があればよいのですが……」
辺りを見渡したが、適当な物が見当たらない。
「……仕方ありません」
観那は自分の着物の袖を破った。
「観那さん! そんな綺麗な着物なのに……」
「お気になさらず。衣類などより新たに生まれる命のほうが大切です」
観那はまったく気にした様子を見せず、破いた袖を子牛の脚に巻き、その上から鎖を巻いた。
「では引っ張りますよ! せーの!」
「んー!」
2人で鎖を掴んで思いっきり引っ張った。
「モォー!」
すると引く力が強すぎて母牛まで引きずってしまう。
「はわわっ!」
「きゃ!」
2人は勢い余って尻餅をついた。
「いたた……」
「子牛は?」
子牛はまったく出てきていない。
「お母さんも押さえてないと駄目ですね」
「では、私が母牛を押さえますので、澪さんは鎖を引いてください」
「うん。じゃあもう一度。せーの!」
「んー!」
母牛は動かなくなったが、澪だけの力では子牛は出てこない。
「お母さん、気張らないで力を抜いてください」
観那がそう呼びかけても牛に言葉は通じない。
「んーーーー!!」
澪が息を止め、顔を真っ赤にして引き続けたが、出てこなかった。
「プハーー!! ダメだぁー! 出てこない……」
息を荒げた澪がうなだれる。
「おーい!」
そこに戦闘を終えた、夕姫、トミヲ、ルンルン、保が駆けつけてくる。
「皆さん!」
観那の顔が希望でパッと輝いた。
「僕たちも手伝います」
「お産って何がいるんだい!? え、ええええっと……せ、清潔な水とか!? 水ならピュアウォーターで出せるよ! ほら!」
「水ならこれを使って」
いきなりテンパっているトミヲと違って冷静な夕姫がペットボトルの水を差し出した。
「ありがとうございます。でもまずは子牛を引っぱりださないといけません」
「そうね。じゃあ私と観那で母牛を押さえるわ。残りの人は子牛を引っ張って」
「はい」
「了解です」
「2匹とも助けますよー!」
「よーし! やるぞー!」
「せーのっ!」
6人で一斉に引っ張る。
すると子牛がズルリと母牛の体内から引きずり出されてきた。
そして引っ張っていた4人はそのまま後ろにバランスを崩す。
「あっ!」
2度目だった澪は踏ん張れた。
「うぉ!」
しかし最後尾のトミヲは倒れた。
「えっ?」
「キャ!」
そして残りの2人も倒れたトミヲに足をとられて倒れてしまう。
「いたた……」
「子牛は?」
「産まれてる!」
「やったぁー!」
「ヤッホー!」
3人は倒れてもみあったまま歓声をあげた。
「私は止血しますので、観那さんは体を拭いてください」
「はい」
観那はもう片方の袖を破ると、産まれた子牛の身体を拭き始める。
止血をしようとしていた澪はへその緒が既に切れている事に気づいた。
「へその緒が……」
とりあえず止血は終えたが、それよりも気がかりなことがある。
「この子、まったく動かないですけど……」
「え?」
観那が子牛の顔を拭いて、呼吸を確認する。
「……息、していません」
「え!」
「そんな!」
「もしかして……死産」
悲壮な空気が漂いそうになった時、保が前に進み出てきた。
「診せてください!」
保は簡単に容態を診て、弱くではあるが心臓が動いている事を確認すると、口で子牛の鼻から羊水を吸い出し、吐き捨てる。
そして人工呼吸を開始した。
「がんばれー!」
「息をしてー!」
「死んじゃダメです!」
「生きろー!」
周りの者たちが必死に声援を送り始める。
そんな緊迫した空気の中、子牛の足がピクピクと動きだした。
「動いた!」
「生きてる!」
喜びと安堵で一斉に歓声が上がる。
「やったぁー!」
ルンルンは嬉しさのあまり、隣りにいたトミヲの腕に抱きついた。
その瞬間、トミヲの脳髄に衝撃が走った。
金髪巨乳美少女に抱きつかれる。
そんな事は元いた世界では絶対に起こり得ない。
100パーセントあり得ない。
そんなものはファンタジーだ。
しかし腕から伝わるこの柔らかい感触は紛れもなく……。
(ふおおおおおぉぉぉぉーーーーーっ!!!)
奇声が口から飛び出しそうになったが、ギリギリ堪える事ができた。
もし出ていたら社会的に死んでいたかもしれない。
そしてトミヲは。
「……」
DT魔力によって固まった。
こういった状況にまったく慣れていないトミヲは頭の中が真っ白になってしまったのだ。
一方、ルンルンはすぐにトミヲから離れ、今は澪と両手を繋いでブンブン振っている。
それが終わると、今度は夕姫にハイタッチを求めていた。
夕姫は苦笑を浮かべていたが、素直にハイタッチに応じてあげた。
ルンルンはただ手近にいたトミヲに嬉しさを表しただけだったのだろう。
しかしDTには夢のような体験であった。
(クリムゾンウェストさいこーーーーーっ!!)
「ふぅ……」
一仕事終えた保が安堵の息を吐き、額に浮かんでいた汗をぬぐった。
「凄いです保さん!」
「感動いたしました!」
「いや、その……無我夢中でやっただけです」
尊敬の面持ちで見てくる澪と観那に照れ笑いを浮かべる保。
一方、息を吹き返した子牛はヨロヨロと立ち上がり、母牛の乳を求めて歩き出していた。
「あと少し、頑張れー」
「がんばれー」
「もうちょっとだー」
再び起こる声援。
「生命が生まれる瞬間か……やっぱり感動するわね」
夕姫が頬を緩めて見守る先で、子牛が何度も転び、何度も立ち上がる。
やがて子牛は母牛の元まで辿り着き、乳を飲み始める。
「ふぅ……これで一安心ですね。ハンニバルは間に合いませんでしたが、エリザベスとこの子があの状況で無事に出産できて良かったです」
ようやく安心できた澪が疲れた様子で一息つく。
「そうですね。それにしても、記念すべき西方での初仕事で、まさか牛の出産に立ち会う事になろうとは……。ハンターと言うのは本当に何でも屋なんですね」
同じく心身ともに疲れ果てていた保は苦笑し、空を仰ぐ。
だが、気分はとても晴れやかだった。
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相談卓 カイン・A・A・カーナボン(ka5336) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/10/30 01:57:39 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/10/26 20:55:04 |