ゲスト
(ka0000)
腹ペコゴブリンにイモは固く
マスター:練子やきも

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/11/15 09:00
- 完成日
- 2015/11/24 03:57
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「ヴァ〜ン? やァ〜んのがゴァウァェア〜!」
人間同士でも言葉として認識されるか微妙な言語でゴブリンを威嚇する男が居た。
「ギャッ! ガーッ! ギャギャッ!」
威嚇されたゴブリンの方も負けじと怒鳴り返す。男の持っている、イモの入った袋が欲しい様子で、引く気も無いようだ。
●遡ることしばし
「ふっふぅーん、こんだけありゃ当分はイモにゃ不自由しねぇな」
海際の小さな忘れられた漁村で、孤児たちとその日暮らしを送っているその男は、いつもの魚釣りの帰り道、通りすがりの行商人と出会った。
行商人から持ち掛けられた、魚籠一杯の採れたてフィッシュとイモ一袋という好条件のトレードに応じ、イモ袋を背負って歩き出したのだが……。
「……あ、そうか、ついでに村まで乗せてって貰えば良かったな」
後悔先に立たず。イロイロ足りてない男が、ゴブリンと遭遇したのは、その後すぐの事だった。
「ゼァー、ゼァァ〜〜。……フン! ゴブリンなんぞに負けてらるぇっかよァ〜〜!」
フラフラになりながらも何とかゴブリンを倒したその男は、愛用の木刀を杖にしながらイモ袋を背負うと、再び歩き出し……
「っといけねぇ、トドメはちゃんと刺しとかねー……とァアーっ!」
背負いかけた袋を一旦降ろし、木刀を握り締めながら振り返った男が見たのは、全力ダッシュで走り去るゴブリンの後ろ姿だった。
●フラグへの備え
「おっちゃん達は例の秘密通路のとこでで槍構えててくれ! ガキ共は家ん中から出て来んじゃねぇぞ!」
「おい、本当にゴブリンが攻めて来るのか?」
村に帰り着くや否や、村中を走り回って戦える大人達をかき集め、戦闘準備を始めさせる男に、村の大人のうちの1人が疑問の声を投げ掛けるが……。
「来る、なんかもうフラグ的にぜってー来る、すげー数で攻めて来る。……おい! 協会に援護の知らせは出したか?」
「……やれやれ、ハンターに依頼出すのも無料じゃないんだぞ?」
言葉の後半は近くに居た他の者に投げ掛けつつ忙しそうに走り回る男の、やたら頼もしい確定情報? に肩を竦めながら、全く秘密になっていない秘密通路へと準備に戻るおっちゃんの前方の門の辺りで、騒めきが起こる。
「コボルドの群れだ、こっちに押し寄せて来るぞ!」
「おいおい本当に来やがった……コボルドだけど」
事前情報の敵とは若干違うが、まぁ敵が攻めて来た事には変わりはない。
村の大人達は基本的に出稼ぎや漁に出ていたりでなかなか人数が揃わず、此方からそのまま打って出るのも難しい為、ハンターが到着するまでは防戦のため門を閉ざす事で皆の意見が一致する。
秘密通路の扉の前で、汗ばむ手に槍を構える村人達の目の前で、牙を剥き出し舌を垂らした、飢えたコボルドの群れが村の門に向けて押し寄せて来た。
人間同士でも言葉として認識されるか微妙な言語でゴブリンを威嚇する男が居た。
「ギャッ! ガーッ! ギャギャッ!」
威嚇されたゴブリンの方も負けじと怒鳴り返す。男の持っている、イモの入った袋が欲しい様子で、引く気も無いようだ。
●遡ることしばし
「ふっふぅーん、こんだけありゃ当分はイモにゃ不自由しねぇな」
海際の小さな忘れられた漁村で、孤児たちとその日暮らしを送っているその男は、いつもの魚釣りの帰り道、通りすがりの行商人と出会った。
行商人から持ち掛けられた、魚籠一杯の採れたてフィッシュとイモ一袋という好条件のトレードに応じ、イモ袋を背負って歩き出したのだが……。
「……あ、そうか、ついでに村まで乗せてって貰えば良かったな」
後悔先に立たず。イロイロ足りてない男が、ゴブリンと遭遇したのは、その後すぐの事だった。
「ゼァー、ゼァァ〜〜。……フン! ゴブリンなんぞに負けてらるぇっかよァ〜〜!」
フラフラになりながらも何とかゴブリンを倒したその男は、愛用の木刀を杖にしながらイモ袋を背負うと、再び歩き出し……
「っといけねぇ、トドメはちゃんと刺しとかねー……とァアーっ!」
背負いかけた袋を一旦降ろし、木刀を握り締めながら振り返った男が見たのは、全力ダッシュで走り去るゴブリンの後ろ姿だった。
●フラグへの備え
「おっちゃん達は例の秘密通路のとこでで槍構えててくれ! ガキ共は家ん中から出て来んじゃねぇぞ!」
「おい、本当にゴブリンが攻めて来るのか?」
村に帰り着くや否や、村中を走り回って戦える大人達をかき集め、戦闘準備を始めさせる男に、村の大人のうちの1人が疑問の声を投げ掛けるが……。
「来る、なんかもうフラグ的にぜってー来る、すげー数で攻めて来る。……おい! 協会に援護の知らせは出したか?」
「……やれやれ、ハンターに依頼出すのも無料じゃないんだぞ?」
言葉の後半は近くに居た他の者に投げ掛けつつ忙しそうに走り回る男の、やたら頼もしい確定情報? に肩を竦めながら、全く秘密になっていない秘密通路へと準備に戻るおっちゃんの前方の門の辺りで、騒めきが起こる。
「コボルドの群れだ、こっちに押し寄せて来るぞ!」
「おいおい本当に来やがった……コボルドだけど」
事前情報の敵とは若干違うが、まぁ敵が攻めて来た事には変わりはない。
村の大人達は基本的に出稼ぎや漁に出ていたりでなかなか人数が揃わず、此方からそのまま打って出るのも難しい為、ハンターが到着するまでは防戦のため門を閉ざす事で皆の意見が一致する。
秘密通路の扉の前で、汗ばむ手に槍を構える村人達の目の前で、牙を剥き出し舌を垂らした、飢えたコボルドの群れが村の門に向けて押し寄せて来た。
リプレイ本文
「わぁー、すごいやすごいや〜」
遠くで何やらガッチャンガッチャン暴れているコボルドの群れを岩陰から眺めて目をキラキラさせ、何やら奇妙な方向にテンションを上げつつ。冬毛に生え変わった真っ白な毛をモコモコと震わせながら、肩から背負った『イモ袋』とデカデカと書かれた袋を担ぎ直すのは、ピーター……ではなくウサミカヤ(ka0490)。
「村人にとっても大切な食料だからな」
同じく『作戦』のためにハンターオフィスで準備して来た、見た目よりは随分軽い『イモ袋』を軽く担ぎ直しながら、門を攻撃しているコボルドの群れを厳しい目で見据えるアスワド・ララ(ka4239)。袋からは、辛酸っぱ苦そうな、デンジャラスな芳香を漂わせている。
「隠密行動は忍者の基本なのです……。うわぁ、いるいる……ワンちゃんが沢山居ます……あ、あそこにゴブも」
プロのカードゲーマーにして符術師でニンジャという、もはや何処へ向かっているのかが謎に満ちた魔法少女ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)だが、その表情は至って真面目であり……。とりあえずはニンジャとして、先行して偵察を敢行しているようだ。
「何というのか……。食べ物の恨みは怖い、とでも言うべきなのかな」
それとはまた別の岩陰で、肩を竦めながらコボルドの群れを見つめ、呟くのはリズレット・ウォルター(ka3580)。
「……イモ……」
ザッ、と足を踏み鳴らし、自転車で岩陰に隠れ、口から垂れそうになるヨダレをそっと拭い去りつつ杖を構える最上 風(ka0891)。片足を自転車のペダルに掛けながら突撃に備えるその頭にあるのは、フライド……チップ……ベークド……スィート……。既に右目がジャガイモ料理、左目がサツマイモ料理のオッドアイとなっていた。
「さてさて、美味しい美味しい焼き芋の時間だ……」
先行するカヤの方を少し気にしながら、最上の隣で覚醒するチマキマル(ka4372)。その言葉にクゥ〜〜〜、と妙に可愛い返事を返す、風の腹の虫。
ハンター達の準備は、ここに整った……。
ーーいっぽうーー
「ああ、ここまでで良い。ありがとう」
旅の途中で通りかかった行商人の馬車に便乗させて貰っていたエスクラーヴ(ka5688)は、十字路を別方向へ向かう行商人の馬車から飛び降り、大きく手を振る。
「何だ!?」
手を振り返す商人を見送って歩き出した前方で巻き起こった爆発音に、何か騒ぎが起こっている事を理解したエスクラーヴは、好奇心のまま、そちらへ向けて走り出した。
さらに一方、門の中。たまたまこの村を訪れていた瑞葉 美奈(ka5691)は、仮面を外して村人達に自らがハンターである事を明かし、協力を要請していた。
「おう、一緒に戦ってくれるってんなら大歓迎だぜ!」
チーグマと名乗ったその男……その場の村人の中で一番やかましい男は、どうやら以前覚醒者を目指して街に出たものの、精霊に選ばれず村に戻って来たらしい。
美奈の姿と作戦を聞いて何やら思い付いた様子のチーグマが走り去り、残された美奈は村人と共に秘密通路でハンターの増援が来るのを待っていた。
「ずっと門に篭っていても状況は良くはなりませんね……」
戻って来たチーグマが村人に何かを渡しているのを横目に、壁の向こうで暴れ回るコボルドが武器を振るって門を殴り付ける音に焦れながら、手櫛で髪を払い仮面を被り直した美奈が再度覗き窓に目をやったその時……状況が動いた。
●仮面、覆面
「ジュゲームリリカルクルクルマジカル……ルンルン忍法花占い!」
好き、嫌い、好き……と、何処からともなく取り出した花の花弁を引き抜きつつ、花弁と共にポイっと放り出したルンルンの符がスッと消え、禹歩の符呪が
「今年のお芋は豊作です!」
……何故か発動する。
「お前達の欲しがっているイモはここだ!」
「いもー! いもいもいも〜♪」
隠れていた岩陰から飛び出したアスワドとカヤが、『イモ袋』をコボルド達に見せ付けながら、互いにバラけるように走り出す。
文字は読めないし言葉もわからないものの(なんか食い物っぽい!)と咄嗟に認識したゴブリン達の声が、袋を奪うようコボルド達へと指示を出し、2人に向けて殺到するコボルドの群れ。
(みーつけた♪)
ピンと立ったカヤのウサ耳は、その声でゴブリン達のだいたいの位置を把握していた。
イモ袋にまんまと釣られたコボルドの群れのその間隙を縫うように、閃光のように走る……bicycle。
立ち漕ぎで走り抜ける風が放った光の波動がコボルド達を弾き飛ばして門への道を開き
「マテリアル解放……燃え尽きろ」
チマキマルのローブの隙間から現れた『瞳』から流れた黒い涙がチマキマルの全身に纏わりつき、その魔力を増幅する。そして放たれたファイアボールがコボルドの群れの真ん中に着弾し、数匹のコボルドが一瞬で炭になった。
「……これだけ騒がしくては、眠らせるのは無理か」
呟いたリズレットは、風が拓いた道を走り抜け、辿り着いた門をアースウォールで補強する。
一緒に走り込んでいたルンルンの位置まで移動した所で
「……これは、壁に亀裂か? ここも塞いでおくか」
ふと気付いた、気付いてしまった、壁に入った不自然な切れ込み。リズレットが再度土壁の魔法を唱えようとした所で、ガタッと開く『秘密通路』そして……。
劇画チックな表情で固まり、思わず悲鳴を上げるリズレットの前に闇の中から迫り来る、白い仮面を被った怪人と、顔を麻袋で隠し、槍を振り上げる奇怪な男達。異様な風体のその部隊に、数秒の間、戦場は静寂に包まれた。
パチパチと炎が爆ぜる音だけが響く戦場で、仮面の怪……美奈は、秘密通路のすぐ側で固まっていたリズレットとルンルン、そして瞬間的にリズレットを盾にしていたチマキマルの間を素早く走り抜けると、手近なコボルドの腕を取り、そのまま関節を極めながらクルリと引き倒してポイっと転がし、全体重を掛ける。
美奈がそのままコボルドからスッと離れた所に村人達の槍が飛び、あっさり動かなくなったコボルドの断末魔と共に、戦場に再び音が戻った。
「……何……あれ……?」
一瞬混乱しながらも頭を切り換えて、此方側に逃走して来たコボルドにメイア・ルーア・ジ・コンパッソ……コンパスのように回転しながらの回し蹴りを叩き込む。……手伝えば依頼料くれるかな?と、打算を働かせたエスクラーヴは、次のコボルドに向けてステップを踏み、まるで踊るような独特のカポエイラの構えを取った。
●乱戦、終戦
イモ袋を追い回す者、炎に巻かれ逃げ出そうとする者、果敢にハンター達に襲いかかる者、コボルドの群れは、統率を乱しながらも暴れまわって……
『薙ぎ払え!』
凛々しい掛け声と共に、風の帽子の目玉が輝き、放たれた光弾に撃ち貫かれたりもしている。何故か目玉から硝煙が漂ったりもしているが、原理は未だ解明されてはいない……。
「リーダーは……アレだな!」
走り回り、ある程度門から引き離したコボルドの群れの中に混ざるゴブリン、そのうちの一匹目掛けて、アスワドがイモ袋を投げ付ける!
周囲のコボルド達とゴブリンが、ストップモーションのように一斉に袋に飛び付いて……。
「同士討ちでもしていると良……」
「えい」
……轟く爆発音。
コボルドが纏まった所に、チマキマルのファイアーボールが着弾する。辺り一面にスパイシーな大人の辛さの激辛ポテトの香りが漂い、誰かの腹がグー、と音を立てる。……数瞬の後、何となく悟りきった表情で、剣を抜いてコボルドの群れへと斬り込んで行くアスワドの姿があった。
ニヤリ、と微笑みつつ、今度は村人の背後に回り込み、ちゃっかりコボルドへの盾として便利に使うチマキマル。
(食欲なのか、仲間の敵討ちなのか……。命を賭けるほどの事とも思えないけど)
さりとて逃がしてやる言われも無く、むしろ逃がせば後でまた敵対する事になるだけで2度手間でしかない。割り切ったリズレットの瞳が逃走を選択したコボルドの姿を捉え、その背を魔力の水球で狙い撃つ。
そして……
四方投げで引き倒した次のコボルドを更にカクンカクンと折り曲げながらコボルドの群れを見据える、白い仮面。何処を見据えているのかわからないその白面と、徐々に全身が四角くなっていくコボルドの悲鳴が響く。
(お前行けよ……)(いやお前の方が行けよ)
そんな空気が漂い始める周囲。瑞葉達に接近戦を仕掛けようとする者は流石に激減し、威嚇効果としてはどうやら充分過ぎる程に充分な効果を上げていた。
「ジュゲームリリカル……ルンルン忍法、三雷神の術! めがね! うくれれ! おいーっす!!」
フリーハンドバックラーに三枚の符を設置したルンルンが、謎の掛け声と共に符を次々にピンと指で空中に弾き、雷光となった符がコボルドを貫く。
「そろそろいいかな〜」
途中でイモ袋を放り捨てて、うさうさと騒ぎながら飛び跳ね回っていたカヤだったが、そろそろ数も少なくなって来たコボルドを見て攻めに転じる。
「勝負だー! 闘心昂揚!」
既に超聴覚で目星をつけていたリーダーのゴブリンに向けて一瞬で踏み込んだカヤのウサパンチが、肉食獣の顎となってゴブリンを抉る。そのままウサキックでゴブリンを吹っ飛ばし、勝利のポーズを取ったカヤの後方で、ボロボロになったゴブリンがドサッと地面とキスをしていた。
「せぇーのっ!」
高く飛び上がったエスクラーヴの蹴りが、最後のコボルドを冥府へと弾き飛ばす。キョロキョロと周囲を確認してファイティングポーズを解いたエスクラーヴのナックルがマテリアルの供給を断たれ、高速回転モードを終了する小さな音が、戦闘の終わりを告げた。
●イモイモ焼き焼き
「チマちゃ……フーちゃん、カヤさんもう疲れちゃったぁ〜」
誰かにひっつこうとキョロキョロしていたカヤが、チマキマルの姿を見て一歩、歩を進め……コボゴブの首を刎ねているチマキマルの楽しそうな様子に、シャキンと振り向き風に甘えかかる。
「そうですね、とても疲れてお腹が空きましたねー。そこの村人さん、何か食べる物とかありませんかー? 具体的にはイモとか、或いはイモとか」
「そうだな、何となく焼き芋とか無性に食べたい気分だ」
いつの間にか気配すらなく背後に立っていたチマキマルが、言いたい事だけ告げると再び作業に戻ってゆく。
「イモは余り食べないのだが……彼女達の反応からするとやっぱりイモというのは命を賭けて勝ち取る物なのだろうか……? いやしかし……」
何やら葛藤しているリズレットの後方では、準備を終えたチーグマ達がイモを焼き始めているのだが
「おかしいですね……コボルド達に不味いと教える為だった筈なのだけど……」
なんだか激辛スパイシーポテトを作り始めている雰囲気の村人達に、いやそれはそんな大量に入れる物では無いから……と香辛料の量を調節させるアスワド。どうやら、アスワドのお陰で人間が食べられる範囲内に収まったようだ。
「けっこう美味いな。……あ、俺の分の依頼料は直接現金で宜しく!」
ナチュラルに輪に混ざってイモを食べているエスクラーヴだったが、戦力として働いたのは間違いない事でもあり、きちんと報酬も支払われる事となった。
……そして……
「回収した首は、このあたりに晒し首にしておくと良いと思うが」
「いやいやいやいやちょっとまって流石に無理」
そのまま空に飛んで行きそうな勢いで首を振るチーグマを見て
「そうですね、これはちょっと……仮面とは言いませんがせめて覆面とか」
生首にそっと袋を被せる美奈と
「あ、覆面ですか? ニンジャ的にけっこう覆面にはこだわりがギャァー!」
大量に積まれた生首の前にドロンと現れて、そのままルンルン忍法全力ダッシュを披露するルンルン。
晒し台を作るとまでは行かなかったチマキマルが丁寧に並べた晒し首は、感染症とか子供が怖がって家から出られなくなると言った弊害のため、残念ながらすぐさま焼き払われる事となったそうな。
最後尾で残念そうにチラチラと振り返るチマキマル達ハンター一行を、焼きコボゴブの煙はいつまでも見送っていた。
遠くで何やらガッチャンガッチャン暴れているコボルドの群れを岩陰から眺めて目をキラキラさせ、何やら奇妙な方向にテンションを上げつつ。冬毛に生え変わった真っ白な毛をモコモコと震わせながら、肩から背負った『イモ袋』とデカデカと書かれた袋を担ぎ直すのは、ピーター……ではなくウサミカヤ(ka0490)。
「村人にとっても大切な食料だからな」
同じく『作戦』のためにハンターオフィスで準備して来た、見た目よりは随分軽い『イモ袋』を軽く担ぎ直しながら、門を攻撃しているコボルドの群れを厳しい目で見据えるアスワド・ララ(ka4239)。袋からは、辛酸っぱ苦そうな、デンジャラスな芳香を漂わせている。
「隠密行動は忍者の基本なのです……。うわぁ、いるいる……ワンちゃんが沢山居ます……あ、あそこにゴブも」
プロのカードゲーマーにして符術師でニンジャという、もはや何処へ向かっているのかが謎に満ちた魔法少女ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)だが、その表情は至って真面目であり……。とりあえずはニンジャとして、先行して偵察を敢行しているようだ。
「何というのか……。食べ物の恨みは怖い、とでも言うべきなのかな」
それとはまた別の岩陰で、肩を竦めながらコボルドの群れを見つめ、呟くのはリズレット・ウォルター(ka3580)。
「……イモ……」
ザッ、と足を踏み鳴らし、自転車で岩陰に隠れ、口から垂れそうになるヨダレをそっと拭い去りつつ杖を構える最上 風(ka0891)。片足を自転車のペダルに掛けながら突撃に備えるその頭にあるのは、フライド……チップ……ベークド……スィート……。既に右目がジャガイモ料理、左目がサツマイモ料理のオッドアイとなっていた。
「さてさて、美味しい美味しい焼き芋の時間だ……」
先行するカヤの方を少し気にしながら、最上の隣で覚醒するチマキマル(ka4372)。その言葉にクゥ〜〜〜、と妙に可愛い返事を返す、風の腹の虫。
ハンター達の準備は、ここに整った……。
ーーいっぽうーー
「ああ、ここまでで良い。ありがとう」
旅の途中で通りかかった行商人の馬車に便乗させて貰っていたエスクラーヴ(ka5688)は、十字路を別方向へ向かう行商人の馬車から飛び降り、大きく手を振る。
「何だ!?」
手を振り返す商人を見送って歩き出した前方で巻き起こった爆発音に、何か騒ぎが起こっている事を理解したエスクラーヴは、好奇心のまま、そちらへ向けて走り出した。
さらに一方、門の中。たまたまこの村を訪れていた瑞葉 美奈(ka5691)は、仮面を外して村人達に自らがハンターである事を明かし、協力を要請していた。
「おう、一緒に戦ってくれるってんなら大歓迎だぜ!」
チーグマと名乗ったその男……その場の村人の中で一番やかましい男は、どうやら以前覚醒者を目指して街に出たものの、精霊に選ばれず村に戻って来たらしい。
美奈の姿と作戦を聞いて何やら思い付いた様子のチーグマが走り去り、残された美奈は村人と共に秘密通路でハンターの増援が来るのを待っていた。
「ずっと門に篭っていても状況は良くはなりませんね……」
戻って来たチーグマが村人に何かを渡しているのを横目に、壁の向こうで暴れ回るコボルドが武器を振るって門を殴り付ける音に焦れながら、手櫛で髪を払い仮面を被り直した美奈が再度覗き窓に目をやったその時……状況が動いた。
●仮面、覆面
「ジュゲームリリカルクルクルマジカル……ルンルン忍法花占い!」
好き、嫌い、好き……と、何処からともなく取り出した花の花弁を引き抜きつつ、花弁と共にポイっと放り出したルンルンの符がスッと消え、禹歩の符呪が
「今年のお芋は豊作です!」
……何故か発動する。
「お前達の欲しがっているイモはここだ!」
「いもー! いもいもいも〜♪」
隠れていた岩陰から飛び出したアスワドとカヤが、『イモ袋』をコボルド達に見せ付けながら、互いにバラけるように走り出す。
文字は読めないし言葉もわからないものの(なんか食い物っぽい!)と咄嗟に認識したゴブリン達の声が、袋を奪うようコボルド達へと指示を出し、2人に向けて殺到するコボルドの群れ。
(みーつけた♪)
ピンと立ったカヤのウサ耳は、その声でゴブリン達のだいたいの位置を把握していた。
イモ袋にまんまと釣られたコボルドの群れのその間隙を縫うように、閃光のように走る……bicycle。
立ち漕ぎで走り抜ける風が放った光の波動がコボルド達を弾き飛ばして門への道を開き
「マテリアル解放……燃え尽きろ」
チマキマルのローブの隙間から現れた『瞳』から流れた黒い涙がチマキマルの全身に纏わりつき、その魔力を増幅する。そして放たれたファイアボールがコボルドの群れの真ん中に着弾し、数匹のコボルドが一瞬で炭になった。
「……これだけ騒がしくては、眠らせるのは無理か」
呟いたリズレットは、風が拓いた道を走り抜け、辿り着いた門をアースウォールで補強する。
一緒に走り込んでいたルンルンの位置まで移動した所で
「……これは、壁に亀裂か? ここも塞いでおくか」
ふと気付いた、気付いてしまった、壁に入った不自然な切れ込み。リズレットが再度土壁の魔法を唱えようとした所で、ガタッと開く『秘密通路』そして……。
劇画チックな表情で固まり、思わず悲鳴を上げるリズレットの前に闇の中から迫り来る、白い仮面を被った怪人と、顔を麻袋で隠し、槍を振り上げる奇怪な男達。異様な風体のその部隊に、数秒の間、戦場は静寂に包まれた。
パチパチと炎が爆ぜる音だけが響く戦場で、仮面の怪……美奈は、秘密通路のすぐ側で固まっていたリズレットとルンルン、そして瞬間的にリズレットを盾にしていたチマキマルの間を素早く走り抜けると、手近なコボルドの腕を取り、そのまま関節を極めながらクルリと引き倒してポイっと転がし、全体重を掛ける。
美奈がそのままコボルドからスッと離れた所に村人達の槍が飛び、あっさり動かなくなったコボルドの断末魔と共に、戦場に再び音が戻った。
「……何……あれ……?」
一瞬混乱しながらも頭を切り換えて、此方側に逃走して来たコボルドにメイア・ルーア・ジ・コンパッソ……コンパスのように回転しながらの回し蹴りを叩き込む。……手伝えば依頼料くれるかな?と、打算を働かせたエスクラーヴは、次のコボルドに向けてステップを踏み、まるで踊るような独特のカポエイラの構えを取った。
●乱戦、終戦
イモ袋を追い回す者、炎に巻かれ逃げ出そうとする者、果敢にハンター達に襲いかかる者、コボルドの群れは、統率を乱しながらも暴れまわって……
『薙ぎ払え!』
凛々しい掛け声と共に、風の帽子の目玉が輝き、放たれた光弾に撃ち貫かれたりもしている。何故か目玉から硝煙が漂ったりもしているが、原理は未だ解明されてはいない……。
「リーダーは……アレだな!」
走り回り、ある程度門から引き離したコボルドの群れの中に混ざるゴブリン、そのうちの一匹目掛けて、アスワドがイモ袋を投げ付ける!
周囲のコボルド達とゴブリンが、ストップモーションのように一斉に袋に飛び付いて……。
「同士討ちでもしていると良……」
「えい」
……轟く爆発音。
コボルドが纏まった所に、チマキマルのファイアーボールが着弾する。辺り一面にスパイシーな大人の辛さの激辛ポテトの香りが漂い、誰かの腹がグー、と音を立てる。……数瞬の後、何となく悟りきった表情で、剣を抜いてコボルドの群れへと斬り込んで行くアスワドの姿があった。
ニヤリ、と微笑みつつ、今度は村人の背後に回り込み、ちゃっかりコボルドへの盾として便利に使うチマキマル。
(食欲なのか、仲間の敵討ちなのか……。命を賭けるほどの事とも思えないけど)
さりとて逃がしてやる言われも無く、むしろ逃がせば後でまた敵対する事になるだけで2度手間でしかない。割り切ったリズレットの瞳が逃走を選択したコボルドの姿を捉え、その背を魔力の水球で狙い撃つ。
そして……
四方投げで引き倒した次のコボルドを更にカクンカクンと折り曲げながらコボルドの群れを見据える、白い仮面。何処を見据えているのかわからないその白面と、徐々に全身が四角くなっていくコボルドの悲鳴が響く。
(お前行けよ……)(いやお前の方が行けよ)
そんな空気が漂い始める周囲。瑞葉達に接近戦を仕掛けようとする者は流石に激減し、威嚇効果としてはどうやら充分過ぎる程に充分な効果を上げていた。
「ジュゲームリリカル……ルンルン忍法、三雷神の術! めがね! うくれれ! おいーっす!!」
フリーハンドバックラーに三枚の符を設置したルンルンが、謎の掛け声と共に符を次々にピンと指で空中に弾き、雷光となった符がコボルドを貫く。
「そろそろいいかな〜」
途中でイモ袋を放り捨てて、うさうさと騒ぎながら飛び跳ね回っていたカヤだったが、そろそろ数も少なくなって来たコボルドを見て攻めに転じる。
「勝負だー! 闘心昂揚!」
既に超聴覚で目星をつけていたリーダーのゴブリンに向けて一瞬で踏み込んだカヤのウサパンチが、肉食獣の顎となってゴブリンを抉る。そのままウサキックでゴブリンを吹っ飛ばし、勝利のポーズを取ったカヤの後方で、ボロボロになったゴブリンがドサッと地面とキスをしていた。
「せぇーのっ!」
高く飛び上がったエスクラーヴの蹴りが、最後のコボルドを冥府へと弾き飛ばす。キョロキョロと周囲を確認してファイティングポーズを解いたエスクラーヴのナックルがマテリアルの供給を断たれ、高速回転モードを終了する小さな音が、戦闘の終わりを告げた。
●イモイモ焼き焼き
「チマちゃ……フーちゃん、カヤさんもう疲れちゃったぁ〜」
誰かにひっつこうとキョロキョロしていたカヤが、チマキマルの姿を見て一歩、歩を進め……コボゴブの首を刎ねているチマキマルの楽しそうな様子に、シャキンと振り向き風に甘えかかる。
「そうですね、とても疲れてお腹が空きましたねー。そこの村人さん、何か食べる物とかありませんかー? 具体的にはイモとか、或いはイモとか」
「そうだな、何となく焼き芋とか無性に食べたい気分だ」
いつの間にか気配すらなく背後に立っていたチマキマルが、言いたい事だけ告げると再び作業に戻ってゆく。
「イモは余り食べないのだが……彼女達の反応からするとやっぱりイモというのは命を賭けて勝ち取る物なのだろうか……? いやしかし……」
何やら葛藤しているリズレットの後方では、準備を終えたチーグマ達がイモを焼き始めているのだが
「おかしいですね……コボルド達に不味いと教える為だった筈なのだけど……」
なんだか激辛スパイシーポテトを作り始めている雰囲気の村人達に、いやそれはそんな大量に入れる物では無いから……と香辛料の量を調節させるアスワド。どうやら、アスワドのお陰で人間が食べられる範囲内に収まったようだ。
「けっこう美味いな。……あ、俺の分の依頼料は直接現金で宜しく!」
ナチュラルに輪に混ざってイモを食べているエスクラーヴだったが、戦力として働いたのは間違いない事でもあり、きちんと報酬も支払われる事となった。
……そして……
「回収した首は、このあたりに晒し首にしておくと良いと思うが」
「いやいやいやいやちょっとまって流石に無理」
そのまま空に飛んで行きそうな勢いで首を振るチーグマを見て
「そうですね、これはちょっと……仮面とは言いませんがせめて覆面とか」
生首にそっと袋を被せる美奈と
「あ、覆面ですか? ニンジャ的にけっこう覆面にはこだわりがギャァー!」
大量に積まれた生首の前にドロンと現れて、そのままルンルン忍法全力ダッシュを披露するルンルン。
晒し台を作るとまでは行かなかったチマキマルが丁寧に並べた晒し首は、感染症とか子供が怖がって家から出られなくなると言った弊害のため、残念ながらすぐさま焼き払われる事となったそうな。
最後尾で残念そうにチラチラと振り返るチマキマル達ハンター一行を、焼きコボゴブの煙はいつまでも見送っていた。
依頼結果
参加者一覧
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依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/11/14 20:37:53 |
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相談卓 アスワド・ララ(ka4239) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/11/14 21:39:22 |