ゲスト
(ka0000)
【深棲】浜辺の長い一日
マスター:植田誠

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/08/05 09:00
- 完成日
- 2014/08/12 23:34
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
帝国における最高決定機関である騎士議会。ここでの話し合いで、帝国は今回の同盟における歪虚出現に積極的には関与しない方針が決定していた。
尤も、これは派兵を禁じる類の物ではなく、散発的ではあるが同盟への派兵は開始している。
第五師団長のロルフとしても同盟を援護するために派兵するべきだと思ってはいた。ただ、師団の現戦力ではそんなに大規模な出撃を行えない。国内の防空に専念したほうが得策だろうと考えていた。
だが今、港町ベルトルード上空には多数のグリフォンライダーが同盟への援護を行うべく展開している。作戦中における輸送、威力偵察等における航空戦力の重要性は大きく、皇帝ヴィルヘルミナの弟であるカッテから比較的強い出撃命令が下ったのがその理由だった。
●
「カッテ様の頼みって言ってもなぁ……なんで俺がこんなとこまで来なきゃいけねぇんだよ……なぁ、ブリッツよぉ……」
第五師団に所属する兵長の一人、オットー・アルトリンゲンは自らのグリフォンにそう愚痴をこぼした。
師団長であるロルフの命を受け彼がいるのは、ベルトルード付近の海上。
海路を用いた派兵。その前段階として港付近の偵察飛行を行っている最中だ。
「……ん? いたか?」
グリフォンが小さく鳴いたのを聴いて海上に目を向けるオットー。そこには確かに歪虚らしき影が見えた。
「陸の方に向かってんな……狙いはやっぱり町か? まぁなんでもいいか。早速……あぁ、でも俺が戦っちゃまずいのか?」
彼の役割はあくまでも敵の発見とその報告である。敵はどこから来るか、どの程度の量が来るかも不明であり、一つの集団に構っているだけでは他の敵を見落とす可能性がある……とは、団長の言である。
これには騎士議会において皇帝から、APVを通じてハンターへ依頼し、彼らを起用し、そのサポートをしろと指示があったことも理由の一つとなっていた。尤も、当のオットーはそこまで知らされてはいなかったが。
「しょうがねぇなぁ……」
オットーは懐から照明弾を取り出し、空に放つ。強い光が一気に広がり周囲を照らす。次いで、信号弾を後方……浜辺の方に向かって撃ちだす。これで敵の侵攻ルートを陸の味方に伝えているのだ。
「これで、後は向こうのハンターがなんとかすんだろ……さて 俺達はこのまま別ルートの探索だ。今日は帰れねぇから、気張ってくれよ!」
そう言って、オットーは軽くグリフォンの背を叩いた。
帝国における最高決定機関である騎士議会。ここでの話し合いで、帝国は今回の同盟における歪虚出現に積極的には関与しない方針が決定していた。
尤も、これは派兵を禁じる類の物ではなく、散発的ではあるが同盟への派兵は開始している。
第五師団長のロルフとしても同盟を援護するために派兵するべきだと思ってはいた。ただ、師団の現戦力ではそんなに大規模な出撃を行えない。国内の防空に専念したほうが得策だろうと考えていた。
だが今、港町ベルトルード上空には多数のグリフォンライダーが同盟への援護を行うべく展開している。作戦中における輸送、威力偵察等における航空戦力の重要性は大きく、皇帝ヴィルヘルミナの弟であるカッテから比較的強い出撃命令が下ったのがその理由だった。
●
「カッテ様の頼みって言ってもなぁ……なんで俺がこんなとこまで来なきゃいけねぇんだよ……なぁ、ブリッツよぉ……」
第五師団に所属する兵長の一人、オットー・アルトリンゲンは自らのグリフォンにそう愚痴をこぼした。
師団長であるロルフの命を受け彼がいるのは、ベルトルード付近の海上。
海路を用いた派兵。その前段階として港付近の偵察飛行を行っている最中だ。
「……ん? いたか?」
グリフォンが小さく鳴いたのを聴いて海上に目を向けるオットー。そこには確かに歪虚らしき影が見えた。
「陸の方に向かってんな……狙いはやっぱり町か? まぁなんでもいいか。早速……あぁ、でも俺が戦っちゃまずいのか?」
彼の役割はあくまでも敵の発見とその報告である。敵はどこから来るか、どの程度の量が来るかも不明であり、一つの集団に構っているだけでは他の敵を見落とす可能性がある……とは、団長の言である。
これには騎士議会において皇帝から、APVを通じてハンターへ依頼し、彼らを起用し、そのサポートをしろと指示があったことも理由の一つとなっていた。尤も、当のオットーはそこまで知らされてはいなかったが。
「しょうがねぇなぁ……」
オットーは懐から照明弾を取り出し、空に放つ。強い光が一気に広がり周囲を照らす。次いで、信号弾を後方……浜辺の方に向かって撃ちだす。これで敵の侵攻ルートを陸の味方に伝えているのだ。
「これで、後は向こうのハンターがなんとかすんだろ……さて 俺達はこのまま別ルートの探索だ。今日は帰れねぇから、気張ってくれよ!」
そう言って、オットーは軽くグリフォンの背を叩いた。
リプレイ本文
●
「ふんっ!」
バルバロス(ka2119)の攻撃が止めとなった。槍を構えた半魚人はその場に倒れ動かなくなる。
「あっけない……雑魚も群れれば脅威となる……とはいえこれでは張り合いがないのう」
「とはいえ、油断はできませんわ。とりあえずはこれで全部ですわね……怪我などはありませんわね?」
ベアトリス・ド・アヴェーヌ(ka0458)はそう言って辺りを見回す。だが、怪我と呼べるレベルのダメージを負った者はいないようだ。
海からやってきた半魚人達。それが浜辺に上がってきた時、そこにはすでに8人のハンターたちが迎撃の為に待ち構えていた。
迎撃の準備は万端であり、数の上でも8対6とハンターたちが有利。苦戦などしようはずもなく、すでに2つの集団を殲滅していた。
「無論、油断は禁物だが……恐れるには足らんな」
ユルゲンス・クリューガー(ka2335)はそう言いながら大剣を納める。
「うん、そうだね……やっぱり海の中での戦いは避けるようにしないと……」
ロイ・J・ラコリエス(ka0620)は以前の戦闘経験を踏まえた上でそう言った。確かに、半魚人は水の中だとかなりの強さを発揮する。だが、今回はわざわざ上陸してこようというのだ。やはり待ち構えて出てきたところを叩いていくのが得策だろう。
「ん~、それにしても……」
弓月 幸子(ka1749)は銃を持ちながら何やら考えていた。
「どうしたんですの?」
「いやね。銃なんて撃ったことないから構えとかがね……こうだっけ?」
気になったベアトリスが尋ねると、幸子はそう言いながら射撃態勢を取る。西部劇等でガンマンがやっていそうな打ち方だ。
「……その撃ち方だと精度が落ちそうですし、正面に構えたほうがいいかもしれませんわね……どうしました?」
不意に、ダラントスカスティーヤ(ka0928)無言のまま剣を抜いた。不審に思ったベアトリスだったが、空を見ると納得した。
「敵発見の連絡ダネ」
海上を見上げたアルヴィン = オールドリッチ(ka2378)の言う通り、新たな信号弾が上がっていたのだ。
それも、2発……
「グリフォンの猛禽の目……さすがですね」
複数の敵を見逃さずキッチリと報告してくる点にヴァルナ=エリゴス(ka2651)は感嘆した……が、問題はこの対応をどうするか。
「それでは、ここからは分散ですわね」
いや、ハンターたちはこの状況への対応もすでに考え、班分けまで終わらせていた。
ベアトリスの言葉通り、ハンターたちは2手に分かれて接近予定の半魚人たちへの対応へ向かう。ここまで、全員でまとまって行動できていたため数的有利も確保できていた。だが、ここから先はそうもいかない。
時間はすでに30分が経過していたが、戦闘はむしろ、ここからが本番だった。
●
「……いました!」
こちらはA班。メンバーはダラン、ユルゲンス、アルヴィン、ヴァルナの4人だ。
ヴァルナが声を上げた時には、敵はすでに海から上がり、浜辺を歩きだしているところだった。
尤も、海には入らず浜辺に上がってくるのを待ち構えるというのは大凡全員の共通見解だったので、そこは大した問題にはならない。
「小細工は抜きだ……」
まず前に出たのはユルゲンス。
「正面からゆくぞ」
攻めの構えを取り真正面から敵に突っ込んでいくユルゲンス。全身を甲冑に包んだ大男が突っ込んでくる様はかなりの威圧感を伴っていただろう。だが、狂気の歪虚である半魚人たちにはそう言う感覚は無いのだろうか。最も近くにいた半魚人はそれまでと変わらぬ様子で槍を構え、突き出す。ユルゲンスは剣で受けつつ、返す刃で半魚人を両断する。
ユルゲンスの後ろにはすでにダランが走り込んできている。これならば一人で突出するという事もない。さらにダランはユルゲンスが攻撃した半魚人に対し強打を使用。一気に止めを刺す。
この間にヴァルナは敵の進行方向に割って入るように回り込む。こうして敵が町へと向かう事を優先することを防ぐつもりだ。ユルゲンス、ダランの攻撃で1体減ったものの、槍持ちだけでもまだ3体。そのうち1体がヴァルナへ向かって攻撃する。
「クッ……」
槍は軽く脇腹を掠める。だが、まだ問題になるほどのダメージではない。
「この程度……自ら膝を着いたとあってはお父様に顔向けできません!」
突きこまれた槍をそのまま脇で固めるヴァルナ。動きが取れなくなった半魚人にお返しとばかりに突きをお見舞いする。急所を突かれたのか、一撃で半魚人は槍から手を離し、その場に倒れた。
なおも歩みを止めない他の半魚人。だが、ただ歩いているわけではない。槍を持った半魚人のやや後方から歩いて来ていた、弓を持った半魚人。この2体が前方に向かって矢を放つ。狙いは最初に攻撃を仕掛けたユルゲンスと、その次だったダラン。
ダランは矢を躱すが、ユルゲンスは避けきれず直撃。さらに、別の槍持ちがユルゲンスを攻撃、連続してダメージを負う。
だが、このダメージはすぐに回復した。アルヴィンがヒールを使用したのだ。
(防衛戦ハ消耗戦にナリガチ。そして、僕の本分ハ守護だからネ)
「シッカリ皆を回復するヨ! 後ろは任せといテ!」
回復する、と言いつつも。アルヴィンは一歩下がった位置から全体に目を向けるのを忘れない。敵が抜けようとしてきても即応できる態勢だ。これなら突破される心配はないだろう。
「助かった、礼を言う……さぁ、今度はこちらの番だ。覚悟はいいか、歪虚共」
体力の回復したユルゲンスは再度攻撃を仕掛ける。それに合わせダラン、ヴァルナも攻撃。狙いを集中さて、槍持ち、弓持ちと着実に敵を撃破していった。
●
一方、こちらはB班。
メンバーはベアトリス、ロイ、幸子、バルバロスの4人だ。
「よっしゃ! 一杯狩るぞー!」
ランアウトと瞬脚を併用して走ってきたロイが、まず接敵する。その後ろには馬に乗っていたベアトリスと幸子。途中まではロイの前を走っていたのだが、戦闘に入ると馬が逃げ出す可能性もあったため、その手前で降りていた。バルバロスはさらにその後方。やはり移動力の差は大きいようだ。他と比べると多少遅れる可能性があるか。
「とりあえず足止めかな……」
自身が打たれ弱いことを自覚しているロイ。とりあえずは無理をせず、回避中心の立ち回りを心がける。その甲斐あってか、前衛一人で槍持ちや弓持ちの攻撃が集中しているにも関わらず致命打は避けられている。
その間に、後衛二人が攻撃を開始する。
「突破させるわけにはいきませんわ!」
弓持ちに注意を払いながら、ベアトリスは水中銃で前衛槍持ちを攻撃。名前の通り水中でも使用可能な銃だが、地上でも問題なく使用可能だ。
銃撃は難なく命中。態勢が崩れたところをロイが攻撃、止めを刺す。
「ボクのターン……ドロー!」
続いて幸子。今度は下手に奇をてらわず正面に銃を構え、発砲。槍持ちに命中し、ダメージを与える。
敵も黙ってやられてはいない。
槍持ちの狙いはロイに集中。1撃、2撃と攻撃を躱すが、3度目の攻撃をかわし切れず腕を穂先が掠める。
「っ……やったな!」
反撃するロイ。すでに幸子の銃撃でダメージを受けていたためか、腹部への一撃で、そのまま倒れる。
この間に、矢を放ちながら弓持ちが徐々に町の方へと進行していく。
「む、逃がさないよ。ボクのターン、ドロー!」
幸子がカードを取り出すとともに、魔法によって作り出された風の刃が弓持ちを斬りつける。さらに、同じ目標を狙ってベアトリスが銃撃。弓持ちを撃破する。
「すまんな、待たせた」
ここで、遅れていたバルバロスが合流。すぐさまロイの援護の為にクラッシュブロウを使用。長い療養で実力が酷く落ちている……等という事を感じさせないパワフルな一撃で、槍持ちを吹き飛ばす。
「たわいもない……このまま全員叩き潰してくれるわ!」
残りは槍持ち1体、弓持ち1体。
その槍持ちがバルバロスを狙って攻撃。
「甘いよ!」
しかし、一歩引いた位置からロイがナイフを投げ込む。ナイフは半魚人の手に命中。半魚人は思わず槍を取りこぼす。その隙を、バルバロスは逃がさない。
「ウォォォッ!」
雄叫びを上げながら振り抜かれた大剣が、胴の部分を真っ二つにした。
「……終わった?」
ベアトリスがそう声をかける。
もう一体の弓持ちもベアトリスと幸子の遠距離攻撃の前に倒れたようだ。
ここでやっと、B班は一息つくことが出来た。
ロイとバルバロスはこの間に受けた傷をマテリアルヒーリングで回復。その間ベアトリスと幸子は、近くで戦闘が行われたことで興奮状態だった馬をなだめる。
「何か見えたりしないかなー……」
治療しつつ、ロイは海を見る。敵が接近してきていないか確認するためだ。だが、その兆候はない。先ほどの敵で接近してきていたのは全部だったのか。
「いないかー……ん?」
だが、不意に空を見ると……
「新しい信号弾ですわね。さぁ、休憩は終わりですわ!」
B班は、再度敵の侵攻を防ぐため移動を開始した。
●
「……さすがに疲れテきたネ」
最後のホーリーライトで、弓持ちを撃破したアルヴィン。その表情は変わらず笑顔だが……やはり、疲労の色が濃い。それは常に無言なダランや、ヴァルナも同様。唯一表情から読み取れないのはユルゲンスだけだったが、そちらも多少動きが鈍くなってきてはいるようだった。
すでに2時間近くの戦闘となっていた。A班とB班が分散してからは合流する間もない。
ただ、ダメージ自体はそれほど大きくない。各自が適宜マテリアルヒーリングで回復していたことや、敵の狙いが突破であり撃破ではなかったことから、攻撃が散発的だったのもプラスに働いたのかもしれない。
「……どちらにせよあと数分ですね……」
ダランの攻撃で態勢を崩した半魚人。その首を刎ねながら、ヴァルナが呟いた。
もうすぐ覚醒が切れる。アルヴィンなどは多少タイミングをずらして覚醒を行っていたが、それも誤差の範囲。そうなれば敵がいようがいまいが関係ない。それ以上の戦闘は難しい。
「そうなった場合どうするか……」
いや、仮に覚醒が切れたとしても敵がまだ眼前にあるならば戦わなければ……そうユルゲンスは考えた。だが、結果としてその必要はなかった。
空を見上げていたダランが剣をしまった。見ると、海上には今まで見たことの無い色の信号弾が上がっていた。これは、周辺に敵影なし……つまり、戦闘終了の合図だ。
「……ふぅ……これで終わりダネ……あ、B班も来たみたいダヨ?」
ホッと一息ついたアルヴィン。その視線の先には、B班の面々がいた。
「終わったね! 疲れた~」
幸子の言うように、B班の面々も表情にはやはり疲れが見えた。だが、こちらもかすり傷程度のダメージしか負っていないようだ。
こうして、浜辺の長い一日は終わりを告げる。
この戦闘において、両班合わせた戦闘回数は7回。総撃破数は42体に及んだ。
それに対し、味方の被害は極めて少ない。
この依頼は大成功に終わったと言って間違いないだろう。
「そういえば……グリフォンの乗り心地ってどうなんでしょう?」
浜辺から引き揚げていく最中。未だ海上で飛行中のグリフォンライダー。そのことを考えながら、ヴァルナはふとそんなことを呟いた。
「さぁ……この辺りは乗ってみないと分からないわね……ところで、あれは何をやってるのかしら?」
ベアトリスがそう答えている間、アルヴィンが海に近づいて、その水を飲もうとしていた。
彼は海の水がどんな味をしているか、実際には知らない。それを体験してみたかったようだ。その結果は……まぁ言うまでもないだろう。
「ふんっ!」
バルバロス(ka2119)の攻撃が止めとなった。槍を構えた半魚人はその場に倒れ動かなくなる。
「あっけない……雑魚も群れれば脅威となる……とはいえこれでは張り合いがないのう」
「とはいえ、油断はできませんわ。とりあえずはこれで全部ですわね……怪我などはありませんわね?」
ベアトリス・ド・アヴェーヌ(ka0458)はそう言って辺りを見回す。だが、怪我と呼べるレベルのダメージを負った者はいないようだ。
海からやってきた半魚人達。それが浜辺に上がってきた時、そこにはすでに8人のハンターたちが迎撃の為に待ち構えていた。
迎撃の準備は万端であり、数の上でも8対6とハンターたちが有利。苦戦などしようはずもなく、すでに2つの集団を殲滅していた。
「無論、油断は禁物だが……恐れるには足らんな」
ユルゲンス・クリューガー(ka2335)はそう言いながら大剣を納める。
「うん、そうだね……やっぱり海の中での戦いは避けるようにしないと……」
ロイ・J・ラコリエス(ka0620)は以前の戦闘経験を踏まえた上でそう言った。確かに、半魚人は水の中だとかなりの強さを発揮する。だが、今回はわざわざ上陸してこようというのだ。やはり待ち構えて出てきたところを叩いていくのが得策だろう。
「ん~、それにしても……」
弓月 幸子(ka1749)は銃を持ちながら何やら考えていた。
「どうしたんですの?」
「いやね。銃なんて撃ったことないから構えとかがね……こうだっけ?」
気になったベアトリスが尋ねると、幸子はそう言いながら射撃態勢を取る。西部劇等でガンマンがやっていそうな打ち方だ。
「……その撃ち方だと精度が落ちそうですし、正面に構えたほうがいいかもしれませんわね……どうしました?」
不意に、ダラントスカスティーヤ(ka0928)無言のまま剣を抜いた。不審に思ったベアトリスだったが、空を見ると納得した。
「敵発見の連絡ダネ」
海上を見上げたアルヴィン = オールドリッチ(ka2378)の言う通り、新たな信号弾が上がっていたのだ。
それも、2発……
「グリフォンの猛禽の目……さすがですね」
複数の敵を見逃さずキッチリと報告してくる点にヴァルナ=エリゴス(ka2651)は感嘆した……が、問題はこの対応をどうするか。
「それでは、ここからは分散ですわね」
いや、ハンターたちはこの状況への対応もすでに考え、班分けまで終わらせていた。
ベアトリスの言葉通り、ハンターたちは2手に分かれて接近予定の半魚人たちへの対応へ向かう。ここまで、全員でまとまって行動できていたため数的有利も確保できていた。だが、ここから先はそうもいかない。
時間はすでに30分が経過していたが、戦闘はむしろ、ここからが本番だった。
●
「……いました!」
こちらはA班。メンバーはダラン、ユルゲンス、アルヴィン、ヴァルナの4人だ。
ヴァルナが声を上げた時には、敵はすでに海から上がり、浜辺を歩きだしているところだった。
尤も、海には入らず浜辺に上がってくるのを待ち構えるというのは大凡全員の共通見解だったので、そこは大した問題にはならない。
「小細工は抜きだ……」
まず前に出たのはユルゲンス。
「正面からゆくぞ」
攻めの構えを取り真正面から敵に突っ込んでいくユルゲンス。全身を甲冑に包んだ大男が突っ込んでくる様はかなりの威圧感を伴っていただろう。だが、狂気の歪虚である半魚人たちにはそう言う感覚は無いのだろうか。最も近くにいた半魚人はそれまでと変わらぬ様子で槍を構え、突き出す。ユルゲンスは剣で受けつつ、返す刃で半魚人を両断する。
ユルゲンスの後ろにはすでにダランが走り込んできている。これならば一人で突出するという事もない。さらにダランはユルゲンスが攻撃した半魚人に対し強打を使用。一気に止めを刺す。
この間にヴァルナは敵の進行方向に割って入るように回り込む。こうして敵が町へと向かう事を優先することを防ぐつもりだ。ユルゲンス、ダランの攻撃で1体減ったものの、槍持ちだけでもまだ3体。そのうち1体がヴァルナへ向かって攻撃する。
「クッ……」
槍は軽く脇腹を掠める。だが、まだ問題になるほどのダメージではない。
「この程度……自ら膝を着いたとあってはお父様に顔向けできません!」
突きこまれた槍をそのまま脇で固めるヴァルナ。動きが取れなくなった半魚人にお返しとばかりに突きをお見舞いする。急所を突かれたのか、一撃で半魚人は槍から手を離し、その場に倒れた。
なおも歩みを止めない他の半魚人。だが、ただ歩いているわけではない。槍を持った半魚人のやや後方から歩いて来ていた、弓を持った半魚人。この2体が前方に向かって矢を放つ。狙いは最初に攻撃を仕掛けたユルゲンスと、その次だったダラン。
ダランは矢を躱すが、ユルゲンスは避けきれず直撃。さらに、別の槍持ちがユルゲンスを攻撃、連続してダメージを負う。
だが、このダメージはすぐに回復した。アルヴィンがヒールを使用したのだ。
(防衛戦ハ消耗戦にナリガチ。そして、僕の本分ハ守護だからネ)
「シッカリ皆を回復するヨ! 後ろは任せといテ!」
回復する、と言いつつも。アルヴィンは一歩下がった位置から全体に目を向けるのを忘れない。敵が抜けようとしてきても即応できる態勢だ。これなら突破される心配はないだろう。
「助かった、礼を言う……さぁ、今度はこちらの番だ。覚悟はいいか、歪虚共」
体力の回復したユルゲンスは再度攻撃を仕掛ける。それに合わせダラン、ヴァルナも攻撃。狙いを集中さて、槍持ち、弓持ちと着実に敵を撃破していった。
●
一方、こちらはB班。
メンバーはベアトリス、ロイ、幸子、バルバロスの4人だ。
「よっしゃ! 一杯狩るぞー!」
ランアウトと瞬脚を併用して走ってきたロイが、まず接敵する。その後ろには馬に乗っていたベアトリスと幸子。途中まではロイの前を走っていたのだが、戦闘に入ると馬が逃げ出す可能性もあったため、その手前で降りていた。バルバロスはさらにその後方。やはり移動力の差は大きいようだ。他と比べると多少遅れる可能性があるか。
「とりあえず足止めかな……」
自身が打たれ弱いことを自覚しているロイ。とりあえずは無理をせず、回避中心の立ち回りを心がける。その甲斐あってか、前衛一人で槍持ちや弓持ちの攻撃が集中しているにも関わらず致命打は避けられている。
その間に、後衛二人が攻撃を開始する。
「突破させるわけにはいきませんわ!」
弓持ちに注意を払いながら、ベアトリスは水中銃で前衛槍持ちを攻撃。名前の通り水中でも使用可能な銃だが、地上でも問題なく使用可能だ。
銃撃は難なく命中。態勢が崩れたところをロイが攻撃、止めを刺す。
「ボクのターン……ドロー!」
続いて幸子。今度は下手に奇をてらわず正面に銃を構え、発砲。槍持ちに命中し、ダメージを与える。
敵も黙ってやられてはいない。
槍持ちの狙いはロイに集中。1撃、2撃と攻撃を躱すが、3度目の攻撃をかわし切れず腕を穂先が掠める。
「っ……やったな!」
反撃するロイ。すでに幸子の銃撃でダメージを受けていたためか、腹部への一撃で、そのまま倒れる。
この間に、矢を放ちながら弓持ちが徐々に町の方へと進行していく。
「む、逃がさないよ。ボクのターン、ドロー!」
幸子がカードを取り出すとともに、魔法によって作り出された風の刃が弓持ちを斬りつける。さらに、同じ目標を狙ってベアトリスが銃撃。弓持ちを撃破する。
「すまんな、待たせた」
ここで、遅れていたバルバロスが合流。すぐさまロイの援護の為にクラッシュブロウを使用。長い療養で実力が酷く落ちている……等という事を感じさせないパワフルな一撃で、槍持ちを吹き飛ばす。
「たわいもない……このまま全員叩き潰してくれるわ!」
残りは槍持ち1体、弓持ち1体。
その槍持ちがバルバロスを狙って攻撃。
「甘いよ!」
しかし、一歩引いた位置からロイがナイフを投げ込む。ナイフは半魚人の手に命中。半魚人は思わず槍を取りこぼす。その隙を、バルバロスは逃がさない。
「ウォォォッ!」
雄叫びを上げながら振り抜かれた大剣が、胴の部分を真っ二つにした。
「……終わった?」
ベアトリスがそう声をかける。
もう一体の弓持ちもベアトリスと幸子の遠距離攻撃の前に倒れたようだ。
ここでやっと、B班は一息つくことが出来た。
ロイとバルバロスはこの間に受けた傷をマテリアルヒーリングで回復。その間ベアトリスと幸子は、近くで戦闘が行われたことで興奮状態だった馬をなだめる。
「何か見えたりしないかなー……」
治療しつつ、ロイは海を見る。敵が接近してきていないか確認するためだ。だが、その兆候はない。先ほどの敵で接近してきていたのは全部だったのか。
「いないかー……ん?」
だが、不意に空を見ると……
「新しい信号弾ですわね。さぁ、休憩は終わりですわ!」
B班は、再度敵の侵攻を防ぐため移動を開始した。
●
「……さすがに疲れテきたネ」
最後のホーリーライトで、弓持ちを撃破したアルヴィン。その表情は変わらず笑顔だが……やはり、疲労の色が濃い。それは常に無言なダランや、ヴァルナも同様。唯一表情から読み取れないのはユルゲンスだけだったが、そちらも多少動きが鈍くなってきてはいるようだった。
すでに2時間近くの戦闘となっていた。A班とB班が分散してからは合流する間もない。
ただ、ダメージ自体はそれほど大きくない。各自が適宜マテリアルヒーリングで回復していたことや、敵の狙いが突破であり撃破ではなかったことから、攻撃が散発的だったのもプラスに働いたのかもしれない。
「……どちらにせよあと数分ですね……」
ダランの攻撃で態勢を崩した半魚人。その首を刎ねながら、ヴァルナが呟いた。
もうすぐ覚醒が切れる。アルヴィンなどは多少タイミングをずらして覚醒を行っていたが、それも誤差の範囲。そうなれば敵がいようがいまいが関係ない。それ以上の戦闘は難しい。
「そうなった場合どうするか……」
いや、仮に覚醒が切れたとしても敵がまだ眼前にあるならば戦わなければ……そうユルゲンスは考えた。だが、結果としてその必要はなかった。
空を見上げていたダランが剣をしまった。見ると、海上には今まで見たことの無い色の信号弾が上がっていた。これは、周辺に敵影なし……つまり、戦闘終了の合図だ。
「……ふぅ……これで終わりダネ……あ、B班も来たみたいダヨ?」
ホッと一息ついたアルヴィン。その視線の先には、B班の面々がいた。
「終わったね! 疲れた~」
幸子の言うように、B班の面々も表情にはやはり疲れが見えた。だが、こちらもかすり傷程度のダメージしか負っていないようだ。
こうして、浜辺の長い一日は終わりを告げる。
この戦闘において、両班合わせた戦闘回数は7回。総撃破数は42体に及んだ。
それに対し、味方の被害は極めて少ない。
この依頼は大成功に終わったと言って間違いないだろう。
「そういえば……グリフォンの乗り心地ってどうなんでしょう?」
浜辺から引き揚げていく最中。未だ海上で飛行中のグリフォンライダー。そのことを考えながら、ヴァルナはふとそんなことを呟いた。
「さぁ……この辺りは乗ってみないと分からないわね……ところで、あれは何をやってるのかしら?」
ベアトリスがそう答えている間、アルヴィンが海に近づいて、その水を飲もうとしていた。
彼は海の水がどんな味をしているか、実際には知らない。それを体験してみたかったようだ。その結果は……まぁ言うまでもないだろう。
依頼結果
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![]() |
相談卓 ベアトリス・ド・アヴェーヌ(ka0458) 人間(リアルブルー)|19才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/08/05 02:08:54 |
|
![]() |
仮プレ置き場 ダラントスカスティーヤ(ka0928) 人間(クリムゾンウェスト)|30才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/08/04 22:49:18 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/31 23:54:16 |