ゲスト
(ka0000)
三つ巴の船上戦
マスター:真太郎

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/11/20 22:00
- 完成日
- 2015/11/27 04:02
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
マストを真っ直ぐ天に伸ばし、大きく張った帆に風を受け、舳先で海を切り裂きながら船が海の上を進んでゆく。
船の行き先はリゼリオの遥か沖合いにある名もない小島。
先日、漁師がその小島の近辺で歪虚化した海鳥に襲われる事件があったのだ。
その事件の一報を受けたハンターズソサイエティはその小島の調査のためにハンターを派遣したのである。
そしてそのハンター達はこの船で島に向かっている最中だった。
天気は快晴で絶好の航海日和。
空で輝く太陽が海をキラキラと輝かせ、甲板の人間達にも日差しを降り注いでいる。
「もうすぐ目的の島ね……」
司祭のステラが日差しを眩しそうに手でさえぎりながら、船の前方を眺めた。
島で歪虚の影響を抑える祈祷を捧げるため、ステラはハンター達に同行していた。
実はステラはまだ新米司祭で、歪虚を見たことすらない。
だが、今回の事案なら危険も少ないだろうという事で対処を任されたのである。
(い、祈りなら毎日捧げてる。それを島でやるだけだもの。歪虚の鳥も1羽しかいなかったって言うし。危険な事なんてない。大丈夫。大丈夫。きっと大丈夫……)
島が近づくにつれてステラの緊張がどんどんと高まり、変に高鳴ってきた心臓を抑えようと必死に自分に言い聞かせていた。
そんな時、船がガクンと大きく揺れた。
「キャ!!」
バランスを崩したステラが甲板に尻餅をつく。
「どうした! 何があった?」
不可解そうに表情を歪ませた船長が船員に尋ねる。
「分かりません。船底に何かがぶつかったようです」
「何かって何だ?」
「……岩礁でしょうか?」
「馬鹿やろう! こんな海のど真ん中に岩礁なんてあるかっ! しっかり海ん中を見ろ! 船底も見て来い。穴あいてっかもしんねーぞ!」
船長に声高に命じられた船員達が忙しく走り回る。
(いったい何が……?)
ステラは甲板の手すりに掴まり、海を覗き込んでみた。
すると、船の下に何か影のような物が見える。
(え? ホントに岩礁? こんな所に?)
船長の言うとおり、こんな海の真ん中で岩礁などある訳がないが、船の下に何かがあるのは確かだった。
(何だろう……?)
不思議に思ったステラがほんの少しだけ身を乗り出した瞬間、ガガンと先ほど以上の衝撃が船を襲った。
「え?」
体がふわりと浮き上がる感覚にステラが目を丸くする。
手すりを掴んでいた手は衝撃で弾かれ、今は何も掴んでいない。
足も甲板から離れている。
眼下に青い海が見えた。
そして浮遊感の次に訪れたのは落下感。
そう、ステアの体は衝撃で手すりを飛び越え、海へ向かって落下しようとしていたのだ。
「……へ?」
突然の事で状況の呑み込めていないステラの口から間の抜けた声が漏れる。
「キャーーーー!!」
しかし事態を理解した途端に悲鳴を上げ、空中でバタバタともがくが、その手は何も掴むことができない。
「シスター!!」
ステラの悲鳴を聞きつけた船長が大慌てで舷側に走ったが、当然間に合わない。
「キャーーーーーーーーーーーーーーー!!」
ステラの悲鳴が長く尾を引き。
ドッポーンという音と共に水しぶきを上げて着水する。
「やべぇ!! シスターが海に落っこっちまった!!」
「船長、あの人はシスターじゃなくて司祭様ですぜ」
「そんな事はどーでもいいんだよ!! 早く助けに行け!!」
ツッコミをいれてきた船員を飛び込ませようとした時、3度目の衝撃が船を襲う。
「ちくしょーー!! 何だってんだっ!!」
「船長ー!! カニです!」
「違います、エビです!」
「いや、カニだよ」
「エビだろ?」
「はぁ? エビとカニがどうしたってんだ!」
エビとカニで言い争い始めた船員に船長が怒鳴る。
「でっけえカニが船を殴ってるんですよ!」
「何だとー!」
船長は船の手すりを掴み、大きく身を乗り出して船の下を覗き込んだ。
すると、確かにカニの爪のような物が船底に突き刺さっているのが見えた。
「カニだ……ホントにでかいカニがいやがる……」
「船長、エビが尻尾で叩いてるんです!」
「いや、ありゃどう見てもカニの鋏だろ?」
「違うんです! 船の反対側にはエビもいるんです!!」
「なんだとーー!!」
船長は慌てて逆の舷側に走る。
そして船底を見ると、そこでは2本の鋏を備えたエビが船体に爪を突き立てていた。
「エビ……っていうか、ロブスターじゃねーか!」
しかもカニもエビも3m近い巨体であった。
「せんちょーー!! 浸水ヤバイです!! これ以上穴をあけられたら沈みかねません!」
船底を見てきたらしい船員が悲鳴を上げる。
「チキショー!! お前ら何としても浸水を止めろ!!」
「せんちょーーーー!!」
甲板の床穴から船員の大声が響いてくる。
「マーマンです!! マーマンが船底の穴から入り込んできやがりましたぁーー!!」
「このくっそ忙しい時にマーマンだぁ!?」
船長は床穴を覗いたが暗くて見えない。
なので再び舷側に戻り、海の中をよーく観察した。
すると人型の影らしき物が海中を泳いでいるのが見えた。
「追い出せ! これ以上厄介ごとを船に入れんなっ!!」
「船長! カニが登ってきます」
「エビもです!」
「なんだと!」
見るとエビが船体に爪を突き当てながら徐々に登ってきていた。
「海から上がって来てくれるなら好都合だ。船の上で仕留めてやる! 野郎ども戦闘準備だ!」
船長が船員達に指示を飛ばしながらサーベルを抜く。
「船長、司祭様はどうするんで?」
「やっべ! 忘れてた!」
エビ、カニ、マーマン、船の穴、司祭。
ほんの数分の間にこれだけの問題が立て続けに発生したのであった
「いったいどーすりゃいいんだぁーーーーー!!!」
あまりの事態に何から手をつけていいか分からなくなった船長が雄たけびを上げた。
船の行き先はリゼリオの遥か沖合いにある名もない小島。
先日、漁師がその小島の近辺で歪虚化した海鳥に襲われる事件があったのだ。
その事件の一報を受けたハンターズソサイエティはその小島の調査のためにハンターを派遣したのである。
そしてそのハンター達はこの船で島に向かっている最中だった。
天気は快晴で絶好の航海日和。
空で輝く太陽が海をキラキラと輝かせ、甲板の人間達にも日差しを降り注いでいる。
「もうすぐ目的の島ね……」
司祭のステラが日差しを眩しそうに手でさえぎりながら、船の前方を眺めた。
島で歪虚の影響を抑える祈祷を捧げるため、ステラはハンター達に同行していた。
実はステラはまだ新米司祭で、歪虚を見たことすらない。
だが、今回の事案なら危険も少ないだろうという事で対処を任されたのである。
(い、祈りなら毎日捧げてる。それを島でやるだけだもの。歪虚の鳥も1羽しかいなかったって言うし。危険な事なんてない。大丈夫。大丈夫。きっと大丈夫……)
島が近づくにつれてステラの緊張がどんどんと高まり、変に高鳴ってきた心臓を抑えようと必死に自分に言い聞かせていた。
そんな時、船がガクンと大きく揺れた。
「キャ!!」
バランスを崩したステラが甲板に尻餅をつく。
「どうした! 何があった?」
不可解そうに表情を歪ませた船長が船員に尋ねる。
「分かりません。船底に何かがぶつかったようです」
「何かって何だ?」
「……岩礁でしょうか?」
「馬鹿やろう! こんな海のど真ん中に岩礁なんてあるかっ! しっかり海ん中を見ろ! 船底も見て来い。穴あいてっかもしんねーぞ!」
船長に声高に命じられた船員達が忙しく走り回る。
(いったい何が……?)
ステラは甲板の手すりに掴まり、海を覗き込んでみた。
すると、船の下に何か影のような物が見える。
(え? ホントに岩礁? こんな所に?)
船長の言うとおり、こんな海の真ん中で岩礁などある訳がないが、船の下に何かがあるのは確かだった。
(何だろう……?)
不思議に思ったステラがほんの少しだけ身を乗り出した瞬間、ガガンと先ほど以上の衝撃が船を襲った。
「え?」
体がふわりと浮き上がる感覚にステラが目を丸くする。
手すりを掴んでいた手は衝撃で弾かれ、今は何も掴んでいない。
足も甲板から離れている。
眼下に青い海が見えた。
そして浮遊感の次に訪れたのは落下感。
そう、ステアの体は衝撃で手すりを飛び越え、海へ向かって落下しようとしていたのだ。
「……へ?」
突然の事で状況の呑み込めていないステラの口から間の抜けた声が漏れる。
「キャーーーー!!」
しかし事態を理解した途端に悲鳴を上げ、空中でバタバタともがくが、その手は何も掴むことができない。
「シスター!!」
ステラの悲鳴を聞きつけた船長が大慌てで舷側に走ったが、当然間に合わない。
「キャーーーーーーーーーーーーーーー!!」
ステラの悲鳴が長く尾を引き。
ドッポーンという音と共に水しぶきを上げて着水する。
「やべぇ!! シスターが海に落っこっちまった!!」
「船長、あの人はシスターじゃなくて司祭様ですぜ」
「そんな事はどーでもいいんだよ!! 早く助けに行け!!」
ツッコミをいれてきた船員を飛び込ませようとした時、3度目の衝撃が船を襲う。
「ちくしょーー!! 何だってんだっ!!」
「船長ー!! カニです!」
「違います、エビです!」
「いや、カニだよ」
「エビだろ?」
「はぁ? エビとカニがどうしたってんだ!」
エビとカニで言い争い始めた船員に船長が怒鳴る。
「でっけえカニが船を殴ってるんですよ!」
「何だとー!」
船長は船の手すりを掴み、大きく身を乗り出して船の下を覗き込んだ。
すると、確かにカニの爪のような物が船底に突き刺さっているのが見えた。
「カニだ……ホントにでかいカニがいやがる……」
「船長、エビが尻尾で叩いてるんです!」
「いや、ありゃどう見てもカニの鋏だろ?」
「違うんです! 船の反対側にはエビもいるんです!!」
「なんだとーー!!」
船長は慌てて逆の舷側に走る。
そして船底を見ると、そこでは2本の鋏を備えたエビが船体に爪を突き立てていた。
「エビ……っていうか、ロブスターじゃねーか!」
しかもカニもエビも3m近い巨体であった。
「せんちょーー!! 浸水ヤバイです!! これ以上穴をあけられたら沈みかねません!」
船底を見てきたらしい船員が悲鳴を上げる。
「チキショー!! お前ら何としても浸水を止めろ!!」
「せんちょーーーー!!」
甲板の床穴から船員の大声が響いてくる。
「マーマンです!! マーマンが船底の穴から入り込んできやがりましたぁーー!!」
「このくっそ忙しい時にマーマンだぁ!?」
船長は床穴を覗いたが暗くて見えない。
なので再び舷側に戻り、海の中をよーく観察した。
すると人型の影らしき物が海中を泳いでいるのが見えた。
「追い出せ! これ以上厄介ごとを船に入れんなっ!!」
「船長! カニが登ってきます」
「エビもです!」
「なんだと!」
見るとエビが船体に爪を突き当てながら徐々に登ってきていた。
「海から上がって来てくれるなら好都合だ。船の上で仕留めてやる! 野郎ども戦闘準備だ!」
船長が船員達に指示を飛ばしながらサーベルを抜く。
「船長、司祭様はどうするんで?」
「やっべ! 忘れてた!」
エビ、カニ、マーマン、船の穴、司祭。
ほんの数分の間にこれだけの問題が立て続けに発生したのであった
「いったいどーすりゃいいんだぁーーーーー!!!」
あまりの事態に何から手をつけていいか分からなくなった船長が雄たけびを上げた。
リプレイ本文
客室の寝台でまどろんでいた超級まりお(ka0824)は船が上下した振動で目を覚まさせられた。
「何? ナニ? 何なの?」
寝ぼけた頭で考えても状況は分からないので、とりあえず部屋から出る。
すると月影 夕姫(ka0102)、ロニ・カルディス(ka0551)、ザレム・アズール(ka0878)、保・はじめ(ka5800)も客室から出てきていた。
「ねぇ! 今この船飛び上がって落下したよね!?」
「はい、船というのは結構揺れるものですね」
「いや、あの揺れ方は普通じゃないだろ」
「何かにぶつかった……いえ、何かがぶつかってきたのかしら?」
「もしそうなら緊急事態だな。やれやれ、船に乗るといつもこうだ……」
5人で話している間に船員達の会話が耳に入り、状況も飲み込めてきた。
「ボクは上を見てくるよ」
「俺達は倉庫へ行ってくる。船を沈められてはたまらんからな」
そしてまりおは甲板へ、残る4人は船底の倉庫へ向かった。
甲板では、時音 ざくろ(ka1250)が海に落ちたステラを助けに行こうとしていた。
「アデリシア、何かあったら援護よろしくね」
ざくろはアデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)にそう言い残し、近くに転がっていた木製の椅子を掴むと『ジェットブーツ』で甲板から跳んだ。
そしてステラの傍に着水。水飛沫を高く上げる。
「キャー!! なななんですか!?」
海に落ちたショックから立ち直っていないステラが更なるパニックを起こす。
「落ち着いて、助け来たんだよ」
「え? 助け……?」
恐怖で強張っていたステラの表情がふにゃりと弛緩する。
「さぁ、ざくろにしっかり捕まって。船まで戻るから」
「……はい。ありがとうございます」
ざくろは安堵で涙目になっているステラを左手で支え、船を見据えた。
船は今も帆に風を受けて進んでいるため、先程より距離が開いてしまっている。
船まで届く確証はなかったが、ざくろは持ってきた椅子を踏み台にし、再び『ジェットブーツ』で跳んだ。
更に空中でショットアンカーを船に向かって発射する。
「届けー!」
しかし錨は届かず空を切り、体が落下を始める。
ざくろはステラの頭を抱え込んだ。
「息を止めて」
「え?」
そして頭から着水。2人分の水飛沫が上がった。
「届かなかったか……」
船は更に遠ざかっている。自力で戻る事は無理だろう。
「ごめんなさい。私が重いせいですよね。実は最近太ってしまって……」
変な勘違いをしているステラを見て、ざくろは可笑しくなった。
「ステラさんのせいじゃないよ。それに全然重くなかったし」
そんな風に2人で和んでいると、不意にざくろの足に激痛が走った。
「っ!?」
咄嗟にグレートソード「エッケザックス」で海中を薙ぎ払う。
手ごたえはなかったが、水中に何かがいるのは分かった。
しかも1体や2体じゃない。
「な、なんですか……」
ステラが不安気な様子でざくろにしがみつく。
しかし、そうしがみつかれては戦い難い上にステラも危ない。
「こっちへ」
ざくろは持って来た椅子まで泳ぐと、ステラに掴まらせた。これで両手が使える。
「少しの間だけ、じっとしててね」
ステラを安心させるために微笑みかけ、海中の敵に集中する。
そして敵が向かってきた瞬間、牽制の『デルタレイ』を放つ。
当たったかどうか分からないが、敵は離れてくれた。
しかし自分達の周囲を敵が取り囲んでいる状況は変わらない。
ざくろは敵が接近する度に『デルタレイ』を放って追い払う。
(今はデルタレイで追い払えてるけど、デルタレイが使えなくなったら……。いや、すぐにアデリシアが助けに来てくれる。それまで持ちこたえれば……)
そんな事を考えていると、不意にトライデントがステラに向かって飛んできた。
「キャー!」
「くっ!」
大剣で打ち払ってステラを守ったが、その間に敵が接近してくる。
「超・重・斬!」
ざくろは『超重練成』で巨大化させた大剣で海中を掻き斬った。
すると運悪く大剣に当たったマーマンが真っ二つになって浮かんでくる。
それでまた敵は離れてくれたが、まだ海中とトライデントの波状攻撃が続くだろう事は間違いなかった。
甲板ではアデリシアが八角棍「紫電」で、テノール(ka5676)がナックル「セルモクラスィア」で巨大エビに殴りかかっていた。
しかしエビは尾で甲板を叩いて跳躍し、2人の攻撃を避ける。
しかもエビは跳躍の瞬間、アデリシアの顎にカウンターの一撃を放っていた。
その衝撃でアデリシアの体が吹っ飛び、甲板に叩きつけられる。
「くっ!」
アデリシアはすぐに立ち上がろうとしたが、脳震盪を起こしたのか視界が眩んでいた。
「こんな時に……」
アデリシアは『ヒール』で回復させようとするが、その隙を狙ってエビが迫る。
そして逆の舷側からは巨大ガニが現れ、近くの船員に襲いかかろうとした。
(どっちに行く!?)
その両方に気づいてしまったテノールはアデリシアの援護に行くか、船員を助けるかで迷った。
「うわっ! なにこの巨大……ザリガニ?」
その時ちょうど甲板に上がってきたまりおがエビを見て驚く。
「そいつの相手頼む!」
天の助けとばかりに叫ぶと、テノールは標的をカニに定めて『震撃』を発動。カニとの間合いを一気に詰める。
「喰らえ!」
そして超加速を上乗せして放った正拳突きがカニの脚の甲殻を砕き折った。
「身が詰まってて美味そうな脚だな……後で茹でて食べるかな?」
そんな軽口を叩きつつもテノールは油断なくカニの隙を探る。
だが不意にカニは口を大きく開き、大量の泡を吐き出してきた。
途端、泡に阻まれてカニが見えなくなる。
「なに!?」
予想外の行動に虚を突かれたテノールだが、泡を避けるため後ろに跳躍する。
だがカニは泡を突き抜けてテノールに迫り、爪でテノールの体をガッチリと掴んだ。
「しまった!」
そして爪は万力の如くテノールを締めつけてくる。
「ぐああああっーー!!」
早く脱出したいが、左腕と胴が爪に挟まれている上に脚が浮いている。
踏ん張りの利かない蹴りでは威力が出せないため、右腕1本で何とかするしかない。
テノールは『練気』を発動させ、練り上げた気を右腕に集中させてゆく。
そして気が十分に練り上がったところで『鎧徹し』を発動。
「破っ!!」
右拳が叩き込まれた爪から鈍い打撃音が響き、甲殻にひびが入った。
一見その程度のダメージに見える。
だが爪から力が抜け、拘束が緩んだ。
なぜなら『鎧徹し』は甲殻ではなく、甲殻内の筋繊維をズタズタに破壊したからである。
「悪いな、人はこういった技も発達させているんだ」
テノールは爪から体を引き抜くと不敵な笑みを見せ、カニの甲羅の上に跳躍した。
「……この辺叩けば脳震盪を狙えるだろうか?」
そして適当に当たりを付け、『練気』で練り上げた気を『鎧徹し』で今度は甲羅内に叩き込んだ。
するとカニの体はガクガクと身震いを起こし、そのまま絶命したのか動かなくなった。
「脳震盪どころじゃ済まなかったな」
一方、エビの相手を任されたまりおだが、実は状況がまだよく飲み込めていなかった。
(よくわかんないけど、このままじゃ船ブッ壊れちゃうじゃーん。突撃! 突撃ー!!)
でもとりあえずそう思ったのでエビに突貫。
するとエビは再び尾の力で跳躍して避けた。
「わっ! 跳んだ!」
「やっぱり跳んだわね」
しかしアデリシアがエビの着地地点を狙って『シャドウブリット』を放つ。
頭を狙ったのだが僅かに反れ、背中の甲殻に損傷を負わせる。
するとエビは爪を盾にするかのように前面に掲げ、まっすぐ突進してきた。
今『シャドウブリット』を撃っても爪に当たるだけだろう。
アデリシアは突進を避けつつ側面に回り込もうとするが、その動きに合わせてエビも向きを変える。
「それなら」
アデリシアは武器をワイヤーウィップ「ジルベルリヒト」に持ち替え、床面ギリギリの位置で薙ぎ払う。
白銀のワイヤーは爪の盾の下をくぐって節足に絡みつき、エビの動きを封じた。
「今です!」
「らじゃー!」
まりおは動きの止まったエビの背中を『立体攻撃』で駆け上がり、エビの頭上へ跳躍。
空中で試作光斬刀「MURASAMEブレイド」を抜き放ち、煌く刃を大きく振りかぶった。
「いやっほぉ~!!」
そして前転しながら『スラッシュエッジ』。
重力加速度に回転まで加わった斬撃がエビの頭部を縦に一文字に切り裂いた。
頭を割られたエビは倒れ伏し、ピクリとも動かなくなる。
「そっちも片付いたんだな。エビも美味そうじゃないか」
カニの脚を担いでやってきたテノールは満面の笑みだった。
だが、テノールの眼前でエビとカニの体が崩れ、消え去ってしまう。
「美味しく食べるつもりだったのに……こいつら雑魔だったのかー!!」
テノールの鎮魂の叫びが海風に流れた。
一方、倉庫に向かった4人は船底に着くなり海水に足を突っ込んだ。
「冷たっ!」
「もうこんなに浸水が……」
「急がないとマズイな」
「現場は何処だ?」
水の流れや音を頼りに進むと、海水が流れ込んでいる倉庫部屋を発見した。
室内にはランプ1つしかなく薄暗いため分かり辛いが、2人の船員が複数体のマーマンと戦っているようだ。
「加勢するぞ!」
保が予め用意していた符で『禹歩』を発動し、ロニ、夕姫、ザレムが倉庫内に突入。
ロニは船員を襲っているマーマンにクロノスサイズで斬りかかった。
船員と鍔迫り合い中で動きの止まっていたマーマンは一撃で斬り伏せられる。
ザレムは『アルケミックパワー』を発動させ、バトラー・グローブで船員と戦闘中のマーマンに殴りかかったが、これは避けられてしまう。
だが船員の窮地は救うことができた。
「外から扉を締めて鍵をかけてくれ。水と敵を此処で食い止める。それと上でも戦ってるだろうから、これで様子を伝えてくれ」
ザレムは船員にそう言ってトランシーバを投げ渡す。
「分かった」
助けられた船員2人は倉庫から退避し、4人の後ろで扉がガチャリと施錠される音が響く。
すると倉庫内が密閉されたため、水位の増すスピードが上がった。
さっきまで水位はくるぶしぐらいだったが、今はもう脛に到ろうとしている。
(急がないとマズイわね)
夕姫は手近なマーマンにクロノサイズで斬りかかったが、トライデントで防がれていた。
しかし大鎌の刃はトライデントの柄を断ち、更にマーマンの右腕をも斬り飛ばす。
これで無力化はできたと判断した夕姫が次の標的を定めようとした時、海水の入り込んでいる壁の穴からマーマンが進入して来るのを目撃する。
しかもその穴を広げようとしているマーマンまでいる事が分かった。
「増援よ! それに穴を広げようとしている奴がいる!」
「僕がやります!」
保は新たに2枚の符を抜くと、まず『コンボカード』を発動。
もう一枚の符を掲げ、薄暗く見通しの悪い倉庫内の奥にいるマーマンに狙いを定める。
そして立ち位置をジリジリと変え、敵、味方、荷物などが射線に入らなくなった瞬間、『胡蝶符』を発動させて蝶の光弾を解き放つ。
「当たれー!」
光の蝶は倉庫内を明るく照らしながらそれぞれの隙間を真っ直ぐに飛ぶ。
そして光に気づいたマーマンが振り返った瞬間、その顔面に光弾が直撃した。
「GYAAAーー!!」
即死には至らなかったらしく、マーマンが顔面を押さえて悶え苦しみだす。
保は続けて穴から入り込んでくる増援にも『胡蝶符』を放ったが、これは屈んで避けられてしまった。
「外した!」
「任せて」
しかし夕姫が『ジェットブーツ』で増援のマーマンに肉薄し、大鎌を一閃。
「出てゆきなさい!」
マーマンを吹き飛ばして穴から外に追い出してしまう。
「何故船を襲う!? お前達の目的は何だ?」
ザレムが問いかけてもマーマンは答えずトライデントで突いてくる。
「くそっ」
ザレムはトライデントを巧みに避けて敵の間合いに内側に滑り込み。
「大人しく」
掌を敵の体に押し当て。
「聞く耳」
『エレクトリックショック』を発動。
「持ちやがれー!」
電撃を流し込む。
マーマンの全身が濡れていたためか身体中に紫電を帯び、そのまま黒焦げになって息絶えた。
他のマーマンも電撃に怖気づいたのか、距離を取って警戒し始める。
今が話し合いのチャンスだと思ったザレムはロングボウ「シーホース」に矢をつがえた。
「詫びを入れて退け。さもなくば全滅させるぞ」
「あの……マーマンに言葉が通じるんでしょうか?」
「……あ」
保のツッコミで今更その事に気づいたザレムが『しまった!』という顔になる。
「それに浸水がもう腰まできてる。早く何とかしないとマズイ!」
「詫びとかもういいから、早く追い出すわよ!」
堪えきれなくなった夕姫が『機導砲』を発動させて発砲。
それが引き金となり、生き残りのマーマン達が壁の穴から退散していった。
「よし! 穴を塞ぐぞ!」
ロニは手近にあった材木を取り、壁の穴に押し付けようとした。
しかしドワーフのロニの力をもってしても水圧で押し返されてしまう。
「くそっ! 凄い水圧だ!」
「僕もやります!」
「一斉に押すぞ!」
「せーの!」
保とザレムも手を貸してようやく水圧を抑え込む。
ロニは更に釘打ちをしようとしたが、流石に無理だった。
「くっ、これでは抑えるので精一杯だ」
「マーマンは退治したわ。ここを開けて!」
夕姫は施錠されていた扉を叩いて外の船員に呼びかけ、鍵を開けさせた。
そこから総出の修復作業で浸水を止め、船の沈没を防いだのだった。
船は修復作業を行いながら進路を戻し、ざくろとステラの救出に向かっていた。
「ようやく一息つけるな……やれやれ、一張羅が水浸しになってしまった」
甲板でロニが濡れた袖口を絞りながら苦笑する。
他の濡れた者達も甲板で各々服を乾かしていた。
「この騒動ってなんだったんだろうね? 巻き込まれたって事だけは分かるんだけど」
まりおが腑に落ちないといった顔で舷側に頬杖をつく。
「ともかくこれで仕事は終わり……じゃあ、ありませんか。そういえば本来のお仕事がまだ残ってましたね」
保が島での祈祷の事を思い出してげんなりした顔になる。
「司祭さん無事かしら? トラウマになってないといいんだけど」
ステラを心配する夕姫は客室で着替え済みだ。
(ざくろさん、大丈夫でしょうか……)
アデリシアは傷を負った仲間や船員を治療を行っていたが、内心ではざくろの安否が気がかりでならない。
「いたぞー!」
だからその知らせを耳にした途端、舳先へ走り出し、身を乗り出して海上に目を凝らす。
すると笑顔で手を振っているざくろとステラの姿が見えた。
2人とも深い傷を負った様子もなく元気そうだ。
「よかった……」
そこでようやく曇っていたアデリシアの顔に安堵の笑みが零れたのだった。
「何? ナニ? 何なの?」
寝ぼけた頭で考えても状況は分からないので、とりあえず部屋から出る。
すると月影 夕姫(ka0102)、ロニ・カルディス(ka0551)、ザレム・アズール(ka0878)、保・はじめ(ka5800)も客室から出てきていた。
「ねぇ! 今この船飛び上がって落下したよね!?」
「はい、船というのは結構揺れるものですね」
「いや、あの揺れ方は普通じゃないだろ」
「何かにぶつかった……いえ、何かがぶつかってきたのかしら?」
「もしそうなら緊急事態だな。やれやれ、船に乗るといつもこうだ……」
5人で話している間に船員達の会話が耳に入り、状況も飲み込めてきた。
「ボクは上を見てくるよ」
「俺達は倉庫へ行ってくる。船を沈められてはたまらんからな」
そしてまりおは甲板へ、残る4人は船底の倉庫へ向かった。
甲板では、時音 ざくろ(ka1250)が海に落ちたステラを助けに行こうとしていた。
「アデリシア、何かあったら援護よろしくね」
ざくろはアデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)にそう言い残し、近くに転がっていた木製の椅子を掴むと『ジェットブーツ』で甲板から跳んだ。
そしてステラの傍に着水。水飛沫を高く上げる。
「キャー!! なななんですか!?」
海に落ちたショックから立ち直っていないステラが更なるパニックを起こす。
「落ち着いて、助け来たんだよ」
「え? 助け……?」
恐怖で強張っていたステラの表情がふにゃりと弛緩する。
「さぁ、ざくろにしっかり捕まって。船まで戻るから」
「……はい。ありがとうございます」
ざくろは安堵で涙目になっているステラを左手で支え、船を見据えた。
船は今も帆に風を受けて進んでいるため、先程より距離が開いてしまっている。
船まで届く確証はなかったが、ざくろは持ってきた椅子を踏み台にし、再び『ジェットブーツ』で跳んだ。
更に空中でショットアンカーを船に向かって発射する。
「届けー!」
しかし錨は届かず空を切り、体が落下を始める。
ざくろはステラの頭を抱え込んだ。
「息を止めて」
「え?」
そして頭から着水。2人分の水飛沫が上がった。
「届かなかったか……」
船は更に遠ざかっている。自力で戻る事は無理だろう。
「ごめんなさい。私が重いせいですよね。実は最近太ってしまって……」
変な勘違いをしているステラを見て、ざくろは可笑しくなった。
「ステラさんのせいじゃないよ。それに全然重くなかったし」
そんな風に2人で和んでいると、不意にざくろの足に激痛が走った。
「っ!?」
咄嗟にグレートソード「エッケザックス」で海中を薙ぎ払う。
手ごたえはなかったが、水中に何かがいるのは分かった。
しかも1体や2体じゃない。
「な、なんですか……」
ステラが不安気な様子でざくろにしがみつく。
しかし、そうしがみつかれては戦い難い上にステラも危ない。
「こっちへ」
ざくろは持って来た椅子まで泳ぐと、ステラに掴まらせた。これで両手が使える。
「少しの間だけ、じっとしててね」
ステラを安心させるために微笑みかけ、海中の敵に集中する。
そして敵が向かってきた瞬間、牽制の『デルタレイ』を放つ。
当たったかどうか分からないが、敵は離れてくれた。
しかし自分達の周囲を敵が取り囲んでいる状況は変わらない。
ざくろは敵が接近する度に『デルタレイ』を放って追い払う。
(今はデルタレイで追い払えてるけど、デルタレイが使えなくなったら……。いや、すぐにアデリシアが助けに来てくれる。それまで持ちこたえれば……)
そんな事を考えていると、不意にトライデントがステラに向かって飛んできた。
「キャー!」
「くっ!」
大剣で打ち払ってステラを守ったが、その間に敵が接近してくる。
「超・重・斬!」
ざくろは『超重練成』で巨大化させた大剣で海中を掻き斬った。
すると運悪く大剣に当たったマーマンが真っ二つになって浮かんでくる。
それでまた敵は離れてくれたが、まだ海中とトライデントの波状攻撃が続くだろう事は間違いなかった。
甲板ではアデリシアが八角棍「紫電」で、テノール(ka5676)がナックル「セルモクラスィア」で巨大エビに殴りかかっていた。
しかしエビは尾で甲板を叩いて跳躍し、2人の攻撃を避ける。
しかもエビは跳躍の瞬間、アデリシアの顎にカウンターの一撃を放っていた。
その衝撃でアデリシアの体が吹っ飛び、甲板に叩きつけられる。
「くっ!」
アデリシアはすぐに立ち上がろうとしたが、脳震盪を起こしたのか視界が眩んでいた。
「こんな時に……」
アデリシアは『ヒール』で回復させようとするが、その隙を狙ってエビが迫る。
そして逆の舷側からは巨大ガニが現れ、近くの船員に襲いかかろうとした。
(どっちに行く!?)
その両方に気づいてしまったテノールはアデリシアの援護に行くか、船員を助けるかで迷った。
「うわっ! なにこの巨大……ザリガニ?」
その時ちょうど甲板に上がってきたまりおがエビを見て驚く。
「そいつの相手頼む!」
天の助けとばかりに叫ぶと、テノールは標的をカニに定めて『震撃』を発動。カニとの間合いを一気に詰める。
「喰らえ!」
そして超加速を上乗せして放った正拳突きがカニの脚の甲殻を砕き折った。
「身が詰まってて美味そうな脚だな……後で茹でて食べるかな?」
そんな軽口を叩きつつもテノールは油断なくカニの隙を探る。
だが不意にカニは口を大きく開き、大量の泡を吐き出してきた。
途端、泡に阻まれてカニが見えなくなる。
「なに!?」
予想外の行動に虚を突かれたテノールだが、泡を避けるため後ろに跳躍する。
だがカニは泡を突き抜けてテノールに迫り、爪でテノールの体をガッチリと掴んだ。
「しまった!」
そして爪は万力の如くテノールを締めつけてくる。
「ぐああああっーー!!」
早く脱出したいが、左腕と胴が爪に挟まれている上に脚が浮いている。
踏ん張りの利かない蹴りでは威力が出せないため、右腕1本で何とかするしかない。
テノールは『練気』を発動させ、練り上げた気を右腕に集中させてゆく。
そして気が十分に練り上がったところで『鎧徹し』を発動。
「破っ!!」
右拳が叩き込まれた爪から鈍い打撃音が響き、甲殻にひびが入った。
一見その程度のダメージに見える。
だが爪から力が抜け、拘束が緩んだ。
なぜなら『鎧徹し』は甲殻ではなく、甲殻内の筋繊維をズタズタに破壊したからである。
「悪いな、人はこういった技も発達させているんだ」
テノールは爪から体を引き抜くと不敵な笑みを見せ、カニの甲羅の上に跳躍した。
「……この辺叩けば脳震盪を狙えるだろうか?」
そして適当に当たりを付け、『練気』で練り上げた気を『鎧徹し』で今度は甲羅内に叩き込んだ。
するとカニの体はガクガクと身震いを起こし、そのまま絶命したのか動かなくなった。
「脳震盪どころじゃ済まなかったな」
一方、エビの相手を任されたまりおだが、実は状況がまだよく飲み込めていなかった。
(よくわかんないけど、このままじゃ船ブッ壊れちゃうじゃーん。突撃! 突撃ー!!)
でもとりあえずそう思ったのでエビに突貫。
するとエビは再び尾の力で跳躍して避けた。
「わっ! 跳んだ!」
「やっぱり跳んだわね」
しかしアデリシアがエビの着地地点を狙って『シャドウブリット』を放つ。
頭を狙ったのだが僅かに反れ、背中の甲殻に損傷を負わせる。
するとエビは爪を盾にするかのように前面に掲げ、まっすぐ突進してきた。
今『シャドウブリット』を撃っても爪に当たるだけだろう。
アデリシアは突進を避けつつ側面に回り込もうとするが、その動きに合わせてエビも向きを変える。
「それなら」
アデリシアは武器をワイヤーウィップ「ジルベルリヒト」に持ち替え、床面ギリギリの位置で薙ぎ払う。
白銀のワイヤーは爪の盾の下をくぐって節足に絡みつき、エビの動きを封じた。
「今です!」
「らじゃー!」
まりおは動きの止まったエビの背中を『立体攻撃』で駆け上がり、エビの頭上へ跳躍。
空中で試作光斬刀「MURASAMEブレイド」を抜き放ち、煌く刃を大きく振りかぶった。
「いやっほぉ~!!」
そして前転しながら『スラッシュエッジ』。
重力加速度に回転まで加わった斬撃がエビの頭部を縦に一文字に切り裂いた。
頭を割られたエビは倒れ伏し、ピクリとも動かなくなる。
「そっちも片付いたんだな。エビも美味そうじゃないか」
カニの脚を担いでやってきたテノールは満面の笑みだった。
だが、テノールの眼前でエビとカニの体が崩れ、消え去ってしまう。
「美味しく食べるつもりだったのに……こいつら雑魔だったのかー!!」
テノールの鎮魂の叫びが海風に流れた。
一方、倉庫に向かった4人は船底に着くなり海水に足を突っ込んだ。
「冷たっ!」
「もうこんなに浸水が……」
「急がないとマズイな」
「現場は何処だ?」
水の流れや音を頼りに進むと、海水が流れ込んでいる倉庫部屋を発見した。
室内にはランプ1つしかなく薄暗いため分かり辛いが、2人の船員が複数体のマーマンと戦っているようだ。
「加勢するぞ!」
保が予め用意していた符で『禹歩』を発動し、ロニ、夕姫、ザレムが倉庫内に突入。
ロニは船員を襲っているマーマンにクロノスサイズで斬りかかった。
船員と鍔迫り合い中で動きの止まっていたマーマンは一撃で斬り伏せられる。
ザレムは『アルケミックパワー』を発動させ、バトラー・グローブで船員と戦闘中のマーマンに殴りかかったが、これは避けられてしまう。
だが船員の窮地は救うことができた。
「外から扉を締めて鍵をかけてくれ。水と敵を此処で食い止める。それと上でも戦ってるだろうから、これで様子を伝えてくれ」
ザレムは船員にそう言ってトランシーバを投げ渡す。
「分かった」
助けられた船員2人は倉庫から退避し、4人の後ろで扉がガチャリと施錠される音が響く。
すると倉庫内が密閉されたため、水位の増すスピードが上がった。
さっきまで水位はくるぶしぐらいだったが、今はもう脛に到ろうとしている。
(急がないとマズイわね)
夕姫は手近なマーマンにクロノサイズで斬りかかったが、トライデントで防がれていた。
しかし大鎌の刃はトライデントの柄を断ち、更にマーマンの右腕をも斬り飛ばす。
これで無力化はできたと判断した夕姫が次の標的を定めようとした時、海水の入り込んでいる壁の穴からマーマンが進入して来るのを目撃する。
しかもその穴を広げようとしているマーマンまでいる事が分かった。
「増援よ! それに穴を広げようとしている奴がいる!」
「僕がやります!」
保は新たに2枚の符を抜くと、まず『コンボカード』を発動。
もう一枚の符を掲げ、薄暗く見通しの悪い倉庫内の奥にいるマーマンに狙いを定める。
そして立ち位置をジリジリと変え、敵、味方、荷物などが射線に入らなくなった瞬間、『胡蝶符』を発動させて蝶の光弾を解き放つ。
「当たれー!」
光の蝶は倉庫内を明るく照らしながらそれぞれの隙間を真っ直ぐに飛ぶ。
そして光に気づいたマーマンが振り返った瞬間、その顔面に光弾が直撃した。
「GYAAAーー!!」
即死には至らなかったらしく、マーマンが顔面を押さえて悶え苦しみだす。
保は続けて穴から入り込んでくる増援にも『胡蝶符』を放ったが、これは屈んで避けられてしまった。
「外した!」
「任せて」
しかし夕姫が『ジェットブーツ』で増援のマーマンに肉薄し、大鎌を一閃。
「出てゆきなさい!」
マーマンを吹き飛ばして穴から外に追い出してしまう。
「何故船を襲う!? お前達の目的は何だ?」
ザレムが問いかけてもマーマンは答えずトライデントで突いてくる。
「くそっ」
ザレムはトライデントを巧みに避けて敵の間合いに内側に滑り込み。
「大人しく」
掌を敵の体に押し当て。
「聞く耳」
『エレクトリックショック』を発動。
「持ちやがれー!」
電撃を流し込む。
マーマンの全身が濡れていたためか身体中に紫電を帯び、そのまま黒焦げになって息絶えた。
他のマーマンも電撃に怖気づいたのか、距離を取って警戒し始める。
今が話し合いのチャンスだと思ったザレムはロングボウ「シーホース」に矢をつがえた。
「詫びを入れて退け。さもなくば全滅させるぞ」
「あの……マーマンに言葉が通じるんでしょうか?」
「……あ」
保のツッコミで今更その事に気づいたザレムが『しまった!』という顔になる。
「それに浸水がもう腰まできてる。早く何とかしないとマズイ!」
「詫びとかもういいから、早く追い出すわよ!」
堪えきれなくなった夕姫が『機導砲』を発動させて発砲。
それが引き金となり、生き残りのマーマン達が壁の穴から退散していった。
「よし! 穴を塞ぐぞ!」
ロニは手近にあった材木を取り、壁の穴に押し付けようとした。
しかしドワーフのロニの力をもってしても水圧で押し返されてしまう。
「くそっ! 凄い水圧だ!」
「僕もやります!」
「一斉に押すぞ!」
「せーの!」
保とザレムも手を貸してようやく水圧を抑え込む。
ロニは更に釘打ちをしようとしたが、流石に無理だった。
「くっ、これでは抑えるので精一杯だ」
「マーマンは退治したわ。ここを開けて!」
夕姫は施錠されていた扉を叩いて外の船員に呼びかけ、鍵を開けさせた。
そこから総出の修復作業で浸水を止め、船の沈没を防いだのだった。
船は修復作業を行いながら進路を戻し、ざくろとステラの救出に向かっていた。
「ようやく一息つけるな……やれやれ、一張羅が水浸しになってしまった」
甲板でロニが濡れた袖口を絞りながら苦笑する。
他の濡れた者達も甲板で各々服を乾かしていた。
「この騒動ってなんだったんだろうね? 巻き込まれたって事だけは分かるんだけど」
まりおが腑に落ちないといった顔で舷側に頬杖をつく。
「ともかくこれで仕事は終わり……じゃあ、ありませんか。そういえば本来のお仕事がまだ残ってましたね」
保が島での祈祷の事を思い出してげんなりした顔になる。
「司祭さん無事かしら? トラウマになってないといいんだけど」
ステラを心配する夕姫は客室で着替え済みだ。
(ざくろさん、大丈夫でしょうか……)
アデリシアは傷を負った仲間や船員を治療を行っていたが、内心ではざくろの安否が気がかりでならない。
「いたぞー!」
だからその知らせを耳にした途端、舳先へ走り出し、身を乗り出して海上に目を凝らす。
すると笑顔で手を振っているざくろとステラの姿が見えた。
2人とも深い傷を負った様子もなく元気そうだ。
「よかった……」
そこでようやく曇っていたアデリシアの顔に安堵の笑みが零れたのだった。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/11/18 14:07:12 |
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船と司祭と魚介類 ロニ・カルディス(ka0551) ドワーフ|20才|男性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/11/20 01:18:22 |