ゲスト
(ka0000)
ゴブリンと黒髪の少女
マスター:雨龍一

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/08/04 09:00
- 完成日
- 2014/08/26 01:31
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「わわっ、どいてなのですよっ」
ふわりと黒髪の少女が駆け抜けていく。
細い体には似合わない、大きな荷物を背負っているが、きっと楽器なのだろう。
麻布に包まれていた。
古都から王都へと向かうには大きな街道が存在する。そこから少し外れると長閑な林があった。
林の先には町があり、商人たちは定期的に物を運んだり旅人が通ったりする意外はあまり使われてはいない道があった。
木々は深く日は入りが浅い。そのため、そこを通り抜けるのは昼間の時間か、もしくは護衛を頼んだ馬車で行き来するのがほとんどである。まぁ、歩いてもそれほど時間を掛からずに途中の村たちを通ることができる。
「そういや……さっきの子は森を抜けるころには夜になるんじゃ」
すれ違った男はそんなことを思いながらも、取引先である村へ足を急がせていた。
「だーかーらー。通行止めですって」
村につき馬を降りると、大げさな仕草で村人に説明をする人がいる。
腕章をしているところを見ると、どうやら街から来たハンターギルド事務所の人だろう。
「だってばよ、そんだらこと言われてもおらだぢだっで用事がば」
「でーすーかーらー、そのために早急に通れるようにするのに手配は済ませてありますから。二・三日で大丈夫です。すぐに彼らは解決してくれますから」
それならば……といった感じで、詰め寄っていた村人たちが消えた中、到着したばかりの男が近づいた。
「あら、ちょうどよかったですね」
ニコリと笑って男の到着を喜んでくれる。
「いやぁ、どうやら近くでゴブリンの群れを見かけたと連絡がありましてね。騎士隊に頼もうかと思ったのですが、ハンターたちが来てくれたほうが早いと判断しまして――」
そのため、先程あなたが通ってきた道は少しの間危険と判断して封鎖するんですよ。と、説明をしてくれた。
「え……大変だ」
男が真っ青になるのを見てギルド員は首をかしげる。
「大丈夫ですよ? あちら側のほうも封鎖されるとのことですから。同時に連絡がいっているのでもう手配も済んだと思います」
「いえっ! 僕がさっきすれ違った女の子のことです!」
先程すれ違ったただの旅人(貧乏)な彼女のことだ。途中野宿をして森を抜けるだろう。あの様子では、武器を携帯しているようにも見えなかった。
「え……人、入り込んでいたんですか?」
表情が歪む。ここの村から、次の村までは森に囲まれてるとは言え一本道である。そして、歩けば3.4日はかかるだろう。
「めんどくさいなぁ……まぁ、ハンターには伝えておきますけど」
ぼそりと告げられた言葉に、男は女の子の無事を祈るのだった。
ふわりと黒髪の少女が駆け抜けていく。
細い体には似合わない、大きな荷物を背負っているが、きっと楽器なのだろう。
麻布に包まれていた。
古都から王都へと向かうには大きな街道が存在する。そこから少し外れると長閑な林があった。
林の先には町があり、商人たちは定期的に物を運んだり旅人が通ったりする意外はあまり使われてはいない道があった。
木々は深く日は入りが浅い。そのため、そこを通り抜けるのは昼間の時間か、もしくは護衛を頼んだ馬車で行き来するのがほとんどである。まぁ、歩いてもそれほど時間を掛からずに途中の村たちを通ることができる。
「そういや……さっきの子は森を抜けるころには夜になるんじゃ」
すれ違った男はそんなことを思いながらも、取引先である村へ足を急がせていた。
「だーかーらー。通行止めですって」
村につき馬を降りると、大げさな仕草で村人に説明をする人がいる。
腕章をしているところを見ると、どうやら街から来たハンターギルド事務所の人だろう。
「だってばよ、そんだらこと言われてもおらだぢだっで用事がば」
「でーすーかーらー、そのために早急に通れるようにするのに手配は済ませてありますから。二・三日で大丈夫です。すぐに彼らは解決してくれますから」
それならば……といった感じで、詰め寄っていた村人たちが消えた中、到着したばかりの男が近づいた。
「あら、ちょうどよかったですね」
ニコリと笑って男の到着を喜んでくれる。
「いやぁ、どうやら近くでゴブリンの群れを見かけたと連絡がありましてね。騎士隊に頼もうかと思ったのですが、ハンターたちが来てくれたほうが早いと判断しまして――」
そのため、先程あなたが通ってきた道は少しの間危険と判断して封鎖するんですよ。と、説明をしてくれた。
「え……大変だ」
男が真っ青になるのを見てギルド員は首をかしげる。
「大丈夫ですよ? あちら側のほうも封鎖されるとのことですから。同時に連絡がいっているのでもう手配も済んだと思います」
「いえっ! 僕がさっきすれ違った女の子のことです!」
先程すれ違ったただの旅人(貧乏)な彼女のことだ。途中野宿をして森を抜けるだろう。あの様子では、武器を携帯しているようにも見えなかった。
「え……人、入り込んでいたんですか?」
表情が歪む。ここの村から、次の村までは森に囲まれてるとは言え一本道である。そして、歩けば3.4日はかかるだろう。
「めんどくさいなぁ……まぁ、ハンターには伝えておきますけど」
ぼそりと告げられた言葉に、男は女の子の無事を祈るのだった。
リプレイ本文
村に着いた時に依頼について詳細の説明があった。
一人、どうやら旅人が紛れ込んでいるらしいと。
「あー、でも気にすることないっすよ。旅人ならば平気で避けれれますって」
など、ハンター事務所から派遣されていた者はいう。
「いやいや、あの子は何も装備がなかった! しかも絶対考えなしで突き進んでいたように見えたよ!」
目撃者のおじさんは必死の形相で訴えてくる。
「……然しまァ、間の悪ィ女も居たもンだ」
「無事であれば良いのですが」
ロクス・カーディナー(ka0162)の言葉に上泉 澪(ka0518)が答えた。
アレン=プレアール(ka1624)は数日かかるとのことで初の依頼の前の装備を調べなおす。
東條 克己(ka1076)が馬を撫でながら男から旅人の容姿を聞いていた。
「わかった……保護対象の確保を優先することにしよう。俺と……金刀比良が馬で先に行くが」
もう一人馬を連れてきていた金刀比良 十六那(ka1841)へ確認するように目配せをする。
「ええ、この子――メアで行くわ」
「俺も乗せて貰えないだろうか」
加藤博道(ka0767)が先攻部隊に名乗り上げると速度的に金刀比良の後ろへと乗ることへとなったのだった。
木々は村から離れるほど深く茂ってきていた。
馬で進む中でも足下の暗さは不安に駆られる。
一本道とはいえ、先程から盛り上がる木の根を避けながら走らせていると時間の経過は掛かるものである。
ちょうど走らせてしばらく経った頃だろうか、すでに後方の徒歩部隊の姿もさすがに確認ができなくなっていた。
そこに、小さな物音が聞こえてくる。
どうやら、何かが近くにいるらしい。
加藤は素早く馬から下りると、様子を伺うように先に歩き始めた。
他の二人も馬からおり、近くの木々に繋ぐ。
鈍い金属音が聞こえる。そして、慌てるような人の声も。
「保護を頼む」
東條が素早く魔導銃を構えると金刀比良も魔力を集中させながら様子を見て目配せをした。
加藤はその様子を確認すると、足を急がせたのだった。
先方隊から遅れること半刻だろうか。アレンを始めロクスと上泉は足を急がせていた。
走って入るものの、やはり馬よりは遅くなってしまうのは仕方ないだろう。
村で馬を借りようとしたが、さすがに余分な馬はいなく、借りることはできなかった。
願わくば、自分たちが追いつくまでゴブリンとの接触がないように。
薄暗さも進むに従って深くなっていく。
もうじき明かりが必要になってくるだろう。そんなことをぼんやりと考えていたときだった。
前方から眩しい光が見える。
攻撃魔法だ。
どうやら、願いは通じなかったようである。
「俺らが着くまでは無理だったか、その悪運」
でも、先行部隊と合流していることを考えると悪運は十分強いと言えるだろう。
すぐに戦えるように武器を構えながら、彼らは足を急がせるのだった。
「ひぃ~」
目の前で火の玉に包まれるゴブリンを見ながら少女は尻餅をついた体勢で後ろへと下がろうとしていた。
ゴブリンの不気味な手で捕まえられそうな瞬間の出来事である。
近くの木には突き刺さった斧を抜こうとするゴブリンもいたりする。
鼻歌を歌いながら急ぎ足で森を抜けようと考えていたときにばったり遭ってしまったゴブリン。
木に登って避けようとしていたところに、後ろから声がかかったのだ。
「避けろ」と。
その言葉に思わず足下の木の根に躓いて体勢が低くなったのも悪運のなせる技なのだろう。
とたんに明るい衝撃がゴブリンを包み込んでいたのだった。
「大丈夫かい?」
後ろからかかった声に振り向こうとしたとき、ふわりと体が浮き上がった。
「ふひゃ!?」
「どうもお嬢さん、このような行為はおそらくこの世界でも大変ご無礼だとおもいますが、しばしのご容赦を」
わけわからずにこくこくと顔を真っ赤にして頷くとそれを見て少し安心したのか、加藤は東條や金刀比良の元へと舞い戻る。
「まあ、今回は他のメンバーが闘う役割ってだけなので、俺の仕事は貴方の安全を確保することです」
抱えたまま走り出す加藤をゴブリンが遮ろうとするところへ、また光の矢が突き刺さってのばす腕を牽制していたのだった。
「待たせたな」
放心する少女を抱えたままゴブリンを牽制しているときだった。
後続部隊のロクスたちが追いついてきた。
すぐさま上泉は太刀を抜き切り掛かっていく。
アレンがスピアを構えると、隙間を縫うように突き出していった。
「頼むわ」
金刀比良がまだ放心状態の少女の様子を見ながら加藤から受け取ると、ロクスと東條は射程内に仲間が入らない位置を選びながら撃ち仕留めていく。
既に牽制攻撃を受けていたゴブリンは切り落とされ、後ろに控えていたものたちも武器を持つ手を中心に撃たれ、段々と後退しだしていた。
「戦場に立つなら……命を、賭けろよ……」
アレンが足下へとナイフを投げた。
それにつまずき転んだところへとスピアで貫く。
「……隙だらけですね」
上泉が最後の一匹の足を斬りつけたところに、ロクスが縄で縛り上げる。
すでに足下には4匹のゴブリンが転がり落ちていた。
目撃情報は5匹ほど――まだ警戒は解けないが、無事依頼の目的は遂げたといえよう。
「大丈夫?」
ゴブリンの襲撃現場から離れた場所へと移り、金刀比良が放心状態だった少女を覗き込むように伺う。
「……ふぁっ!?」
目の前に現れた顔に驚いたのだろう、変な声を上げて覚醒したようだ。
「あちらに落ちてましたーー中身が無事か確認してもらえますか?」
加藤が麻布に包まれた楽器をちょうどゴブリンの襲撃があった方向を指しながら差し出してくる。
ちょっと頬を赤く染めて受け取ると、そこからはリュートに似た楽器が顔を見せ、少女は心配そうに外見を確かめた後、ぽろりとつま弾いて確かめた。
「あ、ありがとうございます。大丈夫そうです」
ぺこりとお辞儀すると、よかったとばかりに笑顔が返された。
「色々とご事情はあるとおもいます、それでもどうかこの一本道を抜けるまではご同行させていただきたい」
唐突に告げられた言葉に、少女はかくりと首を傾げる。
「あたし、何もしてないですよ?」
依頼も、犯罪もと。やや不審そうに告げる少女へロクスは頭をかきながら答えた。
「いやぁ、悪運強い君に説明するとな。何だ、今この道は封鎖されててな、まださっきみたいなゴブリンがうろついてる可能性があるんだ。それと――封鎖している関係上、俺たちといないと面倒な手続きが必要な可能性があるぞ」
おそらくだが、と。
「とりあえず、俺はロクスっていう。ま、よろしくな」
差し出された手を見つめると、少し笑顔を返して握り返した。
「あたしはスウィル。お返しはできないけど、よろしくね」
見ての通り何もないわと、先程まで身を包んでいたマントをひらひらとさせながら答えたのだった。
その日はもうすぐ日が暮れるということもあり、少し離れたところで野宿をすることとなった。
手際よく準備をするハンターたちを見ながら、少女は少し離れた場所の切り株で頬杖を突いていた。
先程木の上になっている実を器用に持っていた鞭で叩き落とし、かじりついていた。
「食べる?」
金刀比良がカバンから出したパンを見ると、みるみる目が輝きだした。
「えっ!?」
どうぞと手渡すと、しきりにパンと金刀比良の顔を見比べる。
「……高い?」
どうやら貰えるとは思わなかったらしく、やたらと気にしているようだ。
「いいわよ。みんなで食べるように用意してきたのだから」
そういって他の人にも配りだすのを見ると、余計驚いたように目を丸めた。
「ふわぁ……いい人。――おべんとうみたい」
最後の言葉は聞こえなかったものの、感動する様子に思わず赤面をしてしまう。
「ふ、ふつうよ。ほら、他にもあるかちゃんと食べて」
徒歩で進むと後3日はかかるだろう。きちんと休めるときに栄養を補給しておかなければ、いざ戦う場面となったときに足手纏いにも繋がるのだ。
「丁度1日の距離を走りつめたようだな……あと少なくとも3日くらいかかるやもしれない」
この先何もなければいいが、と呟く東條に森の奥から戻ってきたロクスが皆へと告げる。
「一応これ以上はいなさそうだ。まァ、奴らのことだから嘘をついている可能性もあるが――警戒だけはとけねェがな」
何やら先程捕まえた一匹を縛り上げてジェスチャーを交えて訊問していたらしい。
キョトンと見上げてくるスウィルの膝に置かれている楽器を見ると、少し笑みを漏らす。
「なんだ、弾くのか?」
その顔と自分の膝の上を見比べ、何を言っているか気づくと、うれしそうに頷く。
「へへ……これ商売道具なんだ」
大事そうに抱える楽器をみると、少し複雑な模様が描かれていた。
「機会があるなら、聴きたいねぇ」
そうすると、布から取り出し、ぽろりと調弦し始める。
「丁度いいわ。助けてもらったお礼――あたしには、これくらいしか返せないし」
燃える火を囲うように座ると、切り株の上で少し足を組み奏でだした。
既に月明かりが見えている。どこからか妖精たちの光も舞いだしてきた。
静かにかき鳴らす楽器からは、どこか懐かしい優しい音が響いてきた。
緊張した日々を過ごしつつも、森の中を進んで3日。
進む道に光が射し伸びてきた。森を抜けたのだ。
「わわっ、着いた♪」
金刀比良の後ろに乗せてもらったスウィルは嬉しそうに目を細める。
「無事、抜けたな」
最初の戦闘以来、ちょっとした獣はいたものの、ゴブリンなどは見ることはなかった。
もちろん、サバイバル技術によって遭遇した獣は彼らの胃袋へとおさまったわけだが。一番喜んだのはスウィルなのは言うまでもないかもしれない。
話によると、どうやら野宿の際には獣を捕まえることは難しいらしく、果物などで凌いでいたとのことだった。
もちろん、ここ最近パンなどお目にかかったこともなかったらしく、金刀比良さまさまですとばかりに拝んでいたりもするが。
「……あの雲、猫に似てると……思わないか……?」
アレンが青空を見上げながら雲を指差す。
「あたしには鶏肉の丸焼きに見えます!」
違うだろという心の突込みが他の者の空気から滲み出るものの、アレンとスウィルの間では存在しない。
「……似てない? そうか? ……そうか……」
猫ではなく犬かなぁ――など、どうも先程から二人で雲を指差しながらアレンは動物を、スウィルは食べ物を出していく。
「ふんわかさんは、動物好きなのです?」
かくりと訊ねれば、かくりと首を返されるだけで。そんなやり取りを見ていると、思わず無言で頭を抱えたくなるのは現実を見つめる仕事人だろう。
「さ、着いたぞ」
町の門をくぐると、目の前に開けた広場が見える。
「わわっ。ありがとなのです」
メアから降りると、深々とお辞儀をする。
「ハンターさーん、討伐終わりましたぁ?」
始まった村にいた事務所員がバタバタと駆けつけてくると、加わっている少女の姿に目を丸める。
「うげ、まじいたんだ――ま、まぁ無事だったからいいっか」
その言葉に、なぜか脱力しか感じなかったのだった。
一人、どうやら旅人が紛れ込んでいるらしいと。
「あー、でも気にすることないっすよ。旅人ならば平気で避けれれますって」
など、ハンター事務所から派遣されていた者はいう。
「いやいや、あの子は何も装備がなかった! しかも絶対考えなしで突き進んでいたように見えたよ!」
目撃者のおじさんは必死の形相で訴えてくる。
「……然しまァ、間の悪ィ女も居たもンだ」
「無事であれば良いのですが」
ロクス・カーディナー(ka0162)の言葉に上泉 澪(ka0518)が答えた。
アレン=プレアール(ka1624)は数日かかるとのことで初の依頼の前の装備を調べなおす。
東條 克己(ka1076)が馬を撫でながら男から旅人の容姿を聞いていた。
「わかった……保護対象の確保を優先することにしよう。俺と……金刀比良が馬で先に行くが」
もう一人馬を連れてきていた金刀比良 十六那(ka1841)へ確認するように目配せをする。
「ええ、この子――メアで行くわ」
「俺も乗せて貰えないだろうか」
加藤博道(ka0767)が先攻部隊に名乗り上げると速度的に金刀比良の後ろへと乗ることへとなったのだった。
木々は村から離れるほど深く茂ってきていた。
馬で進む中でも足下の暗さは不安に駆られる。
一本道とはいえ、先程から盛り上がる木の根を避けながら走らせていると時間の経過は掛かるものである。
ちょうど走らせてしばらく経った頃だろうか、すでに後方の徒歩部隊の姿もさすがに確認ができなくなっていた。
そこに、小さな物音が聞こえてくる。
どうやら、何かが近くにいるらしい。
加藤は素早く馬から下りると、様子を伺うように先に歩き始めた。
他の二人も馬からおり、近くの木々に繋ぐ。
鈍い金属音が聞こえる。そして、慌てるような人の声も。
「保護を頼む」
東條が素早く魔導銃を構えると金刀比良も魔力を集中させながら様子を見て目配せをした。
加藤はその様子を確認すると、足を急がせたのだった。
先方隊から遅れること半刻だろうか。アレンを始めロクスと上泉は足を急がせていた。
走って入るものの、やはり馬よりは遅くなってしまうのは仕方ないだろう。
村で馬を借りようとしたが、さすがに余分な馬はいなく、借りることはできなかった。
願わくば、自分たちが追いつくまでゴブリンとの接触がないように。
薄暗さも進むに従って深くなっていく。
もうじき明かりが必要になってくるだろう。そんなことをぼんやりと考えていたときだった。
前方から眩しい光が見える。
攻撃魔法だ。
どうやら、願いは通じなかったようである。
「俺らが着くまでは無理だったか、その悪運」
でも、先行部隊と合流していることを考えると悪運は十分強いと言えるだろう。
すぐに戦えるように武器を構えながら、彼らは足を急がせるのだった。
「ひぃ~」
目の前で火の玉に包まれるゴブリンを見ながら少女は尻餅をついた体勢で後ろへと下がろうとしていた。
ゴブリンの不気味な手で捕まえられそうな瞬間の出来事である。
近くの木には突き刺さった斧を抜こうとするゴブリンもいたりする。
鼻歌を歌いながら急ぎ足で森を抜けようと考えていたときにばったり遭ってしまったゴブリン。
木に登って避けようとしていたところに、後ろから声がかかったのだ。
「避けろ」と。
その言葉に思わず足下の木の根に躓いて体勢が低くなったのも悪運のなせる技なのだろう。
とたんに明るい衝撃がゴブリンを包み込んでいたのだった。
「大丈夫かい?」
後ろからかかった声に振り向こうとしたとき、ふわりと体が浮き上がった。
「ふひゃ!?」
「どうもお嬢さん、このような行為はおそらくこの世界でも大変ご無礼だとおもいますが、しばしのご容赦を」
わけわからずにこくこくと顔を真っ赤にして頷くとそれを見て少し安心したのか、加藤は東條や金刀比良の元へと舞い戻る。
「まあ、今回は他のメンバーが闘う役割ってだけなので、俺の仕事は貴方の安全を確保することです」
抱えたまま走り出す加藤をゴブリンが遮ろうとするところへ、また光の矢が突き刺さってのばす腕を牽制していたのだった。
「待たせたな」
放心する少女を抱えたままゴブリンを牽制しているときだった。
後続部隊のロクスたちが追いついてきた。
すぐさま上泉は太刀を抜き切り掛かっていく。
アレンがスピアを構えると、隙間を縫うように突き出していった。
「頼むわ」
金刀比良がまだ放心状態の少女の様子を見ながら加藤から受け取ると、ロクスと東條は射程内に仲間が入らない位置を選びながら撃ち仕留めていく。
既に牽制攻撃を受けていたゴブリンは切り落とされ、後ろに控えていたものたちも武器を持つ手を中心に撃たれ、段々と後退しだしていた。
「戦場に立つなら……命を、賭けろよ……」
アレンが足下へとナイフを投げた。
それにつまずき転んだところへとスピアで貫く。
「……隙だらけですね」
上泉が最後の一匹の足を斬りつけたところに、ロクスが縄で縛り上げる。
すでに足下には4匹のゴブリンが転がり落ちていた。
目撃情報は5匹ほど――まだ警戒は解けないが、無事依頼の目的は遂げたといえよう。
「大丈夫?」
ゴブリンの襲撃現場から離れた場所へと移り、金刀比良が放心状態だった少女を覗き込むように伺う。
「……ふぁっ!?」
目の前に現れた顔に驚いたのだろう、変な声を上げて覚醒したようだ。
「あちらに落ちてましたーー中身が無事か確認してもらえますか?」
加藤が麻布に包まれた楽器をちょうどゴブリンの襲撃があった方向を指しながら差し出してくる。
ちょっと頬を赤く染めて受け取ると、そこからはリュートに似た楽器が顔を見せ、少女は心配そうに外見を確かめた後、ぽろりとつま弾いて確かめた。
「あ、ありがとうございます。大丈夫そうです」
ぺこりとお辞儀すると、よかったとばかりに笑顔が返された。
「色々とご事情はあるとおもいます、それでもどうかこの一本道を抜けるまではご同行させていただきたい」
唐突に告げられた言葉に、少女はかくりと首を傾げる。
「あたし、何もしてないですよ?」
依頼も、犯罪もと。やや不審そうに告げる少女へロクスは頭をかきながら答えた。
「いやぁ、悪運強い君に説明するとな。何だ、今この道は封鎖されててな、まださっきみたいなゴブリンがうろついてる可能性があるんだ。それと――封鎖している関係上、俺たちといないと面倒な手続きが必要な可能性があるぞ」
おそらくだが、と。
「とりあえず、俺はロクスっていう。ま、よろしくな」
差し出された手を見つめると、少し笑顔を返して握り返した。
「あたしはスウィル。お返しはできないけど、よろしくね」
見ての通り何もないわと、先程まで身を包んでいたマントをひらひらとさせながら答えたのだった。
その日はもうすぐ日が暮れるということもあり、少し離れたところで野宿をすることとなった。
手際よく準備をするハンターたちを見ながら、少女は少し離れた場所の切り株で頬杖を突いていた。
先程木の上になっている実を器用に持っていた鞭で叩き落とし、かじりついていた。
「食べる?」
金刀比良がカバンから出したパンを見ると、みるみる目が輝きだした。
「えっ!?」
どうぞと手渡すと、しきりにパンと金刀比良の顔を見比べる。
「……高い?」
どうやら貰えるとは思わなかったらしく、やたらと気にしているようだ。
「いいわよ。みんなで食べるように用意してきたのだから」
そういって他の人にも配りだすのを見ると、余計驚いたように目を丸めた。
「ふわぁ……いい人。――おべんとうみたい」
最後の言葉は聞こえなかったものの、感動する様子に思わず赤面をしてしまう。
「ふ、ふつうよ。ほら、他にもあるかちゃんと食べて」
徒歩で進むと後3日はかかるだろう。きちんと休めるときに栄養を補給しておかなければ、いざ戦う場面となったときに足手纏いにも繋がるのだ。
「丁度1日の距離を走りつめたようだな……あと少なくとも3日くらいかかるやもしれない」
この先何もなければいいが、と呟く東條に森の奥から戻ってきたロクスが皆へと告げる。
「一応これ以上はいなさそうだ。まァ、奴らのことだから嘘をついている可能性もあるが――警戒だけはとけねェがな」
何やら先程捕まえた一匹を縛り上げてジェスチャーを交えて訊問していたらしい。
キョトンと見上げてくるスウィルの膝に置かれている楽器を見ると、少し笑みを漏らす。
「なんだ、弾くのか?」
その顔と自分の膝の上を見比べ、何を言っているか気づくと、うれしそうに頷く。
「へへ……これ商売道具なんだ」
大事そうに抱える楽器をみると、少し複雑な模様が描かれていた。
「機会があるなら、聴きたいねぇ」
そうすると、布から取り出し、ぽろりと調弦し始める。
「丁度いいわ。助けてもらったお礼――あたしには、これくらいしか返せないし」
燃える火を囲うように座ると、切り株の上で少し足を組み奏でだした。
既に月明かりが見えている。どこからか妖精たちの光も舞いだしてきた。
静かにかき鳴らす楽器からは、どこか懐かしい優しい音が響いてきた。
緊張した日々を過ごしつつも、森の中を進んで3日。
進む道に光が射し伸びてきた。森を抜けたのだ。
「わわっ、着いた♪」
金刀比良の後ろに乗せてもらったスウィルは嬉しそうに目を細める。
「無事、抜けたな」
最初の戦闘以来、ちょっとした獣はいたものの、ゴブリンなどは見ることはなかった。
もちろん、サバイバル技術によって遭遇した獣は彼らの胃袋へとおさまったわけだが。一番喜んだのはスウィルなのは言うまでもないかもしれない。
話によると、どうやら野宿の際には獣を捕まえることは難しいらしく、果物などで凌いでいたとのことだった。
もちろん、ここ最近パンなどお目にかかったこともなかったらしく、金刀比良さまさまですとばかりに拝んでいたりもするが。
「……あの雲、猫に似てると……思わないか……?」
アレンが青空を見上げながら雲を指差す。
「あたしには鶏肉の丸焼きに見えます!」
違うだろという心の突込みが他の者の空気から滲み出るものの、アレンとスウィルの間では存在しない。
「……似てない? そうか? ……そうか……」
猫ではなく犬かなぁ――など、どうも先程から二人で雲を指差しながらアレンは動物を、スウィルは食べ物を出していく。
「ふんわかさんは、動物好きなのです?」
かくりと訊ねれば、かくりと首を返されるだけで。そんなやり取りを見ていると、思わず無言で頭を抱えたくなるのは現実を見つめる仕事人だろう。
「さ、着いたぞ」
町の門をくぐると、目の前に開けた広場が見える。
「わわっ。ありがとなのです」
メアから降りると、深々とお辞儀をする。
「ハンターさーん、討伐終わりましたぁ?」
始まった村にいた事務所員がバタバタと駆けつけてくると、加わっている少女の姿に目を丸める。
「うげ、まじいたんだ――ま、まぁ無事だったからいいっか」
その言葉に、なぜか脱力しか感じなかったのだった。
依頼結果
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼相談スレッド ロクス・カーディナー(ka0162) 人間(クリムゾンウェスト)|28才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/08/04 05:59:51 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/30 12:59:11 |