ゲスト
(ka0000)
林の中の悪魔
マスター:赤山優牙

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/11/26 09:00
- 完成日
- 2015/11/30 01:40
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●王国騎士団本部の一室にて
「クイーンシスティーナ号? と、とりあえず、構想だけは聞きますね」
『軍師騎士』ノセヤは突拍子もない事を言い出した技術者に向かって言う。
まず、システィーナ様が女王でない時点で、その命名には色々問題があるのではないかと。
北伐と茨小鬼の戦いで忙しいこの時期に、一体、なんの用かと思えば、巨大な船を作りたいので、ぜひ、アイデアをとの事だったのだ。
「王国には大河があります。今後、更なる河川利用の可能性を思えば、河川船は必要だと思うのです」
技術者が力説する。
「必要ありませんね」
ノセヤが即答した。
確かに、王国には大河が存在する。
王都の傍を流れる大河は、王国北西部を抜け海に繋がっている。その先は、歪虚に支配されているイスルダ島があり、当然の如く、周囲の海は危険である。
かつては、王都から帝国に貿易船も出ていたというが……。
「活動場所を河川だけに絞るのは勿体ないです。外洋にも出られるようにして下さい」
「も、もちろん、そのつもりです。刻令術を用いた外輪船ですので」
魔術師のはしくれでもあるノセヤは首を傾げた。
動力として刻令術を用いる位であれば、魔導エンジンを積んだ方が効率的と思ったからだ。
「……帝国か同盟に発注した方が良いですよ」
「ふ、普通の船ではない、画期的な船を作りたいのです! 蒼き世界から来た巨大な船のような!」
身を乗り出すように技術者が食いついてきた。
わざわざ訊ねてくるだけはあって、藁にもすがる思いなのだろう。
「……システィーナ様は、戦場で先頭立って戦う御方ではありません」
しばしの逡巡の後、ノセヤはそんな台詞を口にした。
技術者は『軍師騎士』の言葉を一つも洩らさないぞという勢いで手帳にメモする。
「戦場に立つ兵士達の心の支えなのです……姫様の名を冠するのであれば、そのイメージでもって船を作ってみては?」
「と言いますと?」
「軍艦ではなく、巨大な輸送船です。それも、ただの輸送船ではなく、様々な機能を持ちあわせた……」
そう言って、ノセヤは適当なメモ用紙を掴むと筆を走らせた。
舷側ではなく、艦尾に外輪を描く。船体は長細く――。
「こんな感じですね」
書き上がったそれを見て技術者は驚いていた。
「マスト……が無いですが……」
「メイン動力としてやれる位、技術開発して下さい」
うぐりと技術者が唸る。その難しさは相当な道のりだからだ。
「か、甲板が平らですが……」
画を見る限り、上甲板は凹凸がない甲板の様だ。
「馬車を直接乗り降りさせる事ができれば、積み込みは楽ですからね。それに、船内に馬車を収納できるようにリフトを設置しましょう」
遠慮なく付け足すノセヤ。
「そういえば、帝国には、グリフォンを扱う部隊がいると聞きます。彼らとの共闘を考え、グリフォンが船に降りられるように、上甲板の強度は増しますか」
「あ、あの……」
「コンセプトとしては、輸送船という枠ではなくなりますね……これは、一考の価値があるかもしれません」
もはや、技術者がいるという事は目に入っていないようだ。
ノセヤは真剣な眼差しで考え込み始めたのであった。
●実情
王国海軍は劣っている。
これは、もはや、公然の秘密として認識されていてもおかしくない程であった。例えば、帝国には魔導エンジンを搭載した最新鋭艦船があるし、同盟には高速帆船がある。
そのいずれにも王国海軍は達していなかったし、そもそも、維持費がかかる巨大船舶の必要性は低かった。
だが、状況が一辺する出来事がいくつか発生する。
王国歴1009年歪虚によって王国西方のイスルダ島が占領。
続いて1013年リアルブルーより巨大戦艦が転移し、同盟領内に停泊。
更には1015年東方が解放される。
これらの事から、王国内部でも一部の貴族達から、海軍力の増強が提案されたのである。
「王国海軍の目的は、イスルダ島と東方への船舶ルートの開拓である」
煌びやかな衣装を纏った貴族が後援者達に向かって高らかと宣言する。
現在、歪虚によって支配されているイスルダ島の奪還は、王国にとって、悲願でもある。王国は先王と共にイスルダ島も失ったのだから。
更に東方への船舶ルートに関しては、現在、転移門に依存している。この状況を打破し、物資輸送能力を高める事により、鬼らの移住を後押しするという意味もある。
「その為に、水面下である計画が実行されようとされています」
パルムが映し出した映像は、ある模型だった。
会場からどよめきがおこる。それほど、これまでの常識を打ち破る画期的な船の模型だったからだ。
「現在の平均的な帆船よりも、4~5倍ほどの大きさになります。動力は刻令術であります。既に刻令術を応用した船舶の開発には一定の成果を治めています」
別の映像には、刻令術式外輪船が映し出された。
「王女の名を冠する、巨大船の開発の為に、ぜひとも、皆さまの援助を賜りたいのです」
会場のどよめきは更に大きくなったのであった。
●とあるハンターオフィスにて
「あんなに大きな金属の船が空を飛ぶのだから、リアルブルーって凄いわ~」
受付嬢兼報告官のミノリがある資料に目を通しながらそんな感想をついた。
「それに比べて……王国は……」
リアルブルーから転移してきた軍艦と比べると見劣りするのは仕方がないものだ。
今更、手を出すのかという気もするが、王国も海軍力の増強を図りたいという様子が伺える。
「で、造船ドック予定地に雑魔が出現と……」
王都から西にやや外れた場所にある林を切り開いて造船所を作る予定なのだが、林の中で雑魔が姿を見せたという。
雑魔発生の原因は不明だが、傲慢の歪虚襲撃時に、なにかあったとかなかったとか、誰かよろしくない物を不法投棄したとか色々噂はあるが、調査するには一先ず、雑魔を討伐しなければならない。
幸い、目撃者の中に負傷者はいないが、雑魔がいる限り、工事も進められない。
「変な特殊能力があるみたいだけ、あまり戦いには影響しなそうだし」
花粉の様なものを辺り一帯にまき散らすという。
その空間内に一度入った者は――もれなく、体内のマテリアル環境がうんぬん、もしくは、なんたらして数時間影響が出るという。
「さてと……」
ミノリは息を整えると、依頼を受けるハンターを求め、大声で叫んだ。
「胸が大きくなりたいハンターさんに朗報の依頼ですよぉぉぉ!」
「クイーンシスティーナ号? と、とりあえず、構想だけは聞きますね」
『軍師騎士』ノセヤは突拍子もない事を言い出した技術者に向かって言う。
まず、システィーナ様が女王でない時点で、その命名には色々問題があるのではないかと。
北伐と茨小鬼の戦いで忙しいこの時期に、一体、なんの用かと思えば、巨大な船を作りたいので、ぜひ、アイデアをとの事だったのだ。
「王国には大河があります。今後、更なる河川利用の可能性を思えば、河川船は必要だと思うのです」
技術者が力説する。
「必要ありませんね」
ノセヤが即答した。
確かに、王国には大河が存在する。
王都の傍を流れる大河は、王国北西部を抜け海に繋がっている。その先は、歪虚に支配されているイスルダ島があり、当然の如く、周囲の海は危険である。
かつては、王都から帝国に貿易船も出ていたというが……。
「活動場所を河川だけに絞るのは勿体ないです。外洋にも出られるようにして下さい」
「も、もちろん、そのつもりです。刻令術を用いた外輪船ですので」
魔術師のはしくれでもあるノセヤは首を傾げた。
動力として刻令術を用いる位であれば、魔導エンジンを積んだ方が効率的と思ったからだ。
「……帝国か同盟に発注した方が良いですよ」
「ふ、普通の船ではない、画期的な船を作りたいのです! 蒼き世界から来た巨大な船のような!」
身を乗り出すように技術者が食いついてきた。
わざわざ訊ねてくるだけはあって、藁にもすがる思いなのだろう。
「……システィーナ様は、戦場で先頭立って戦う御方ではありません」
しばしの逡巡の後、ノセヤはそんな台詞を口にした。
技術者は『軍師騎士』の言葉を一つも洩らさないぞという勢いで手帳にメモする。
「戦場に立つ兵士達の心の支えなのです……姫様の名を冠するのであれば、そのイメージでもって船を作ってみては?」
「と言いますと?」
「軍艦ではなく、巨大な輸送船です。それも、ただの輸送船ではなく、様々な機能を持ちあわせた……」
そう言って、ノセヤは適当なメモ用紙を掴むと筆を走らせた。
舷側ではなく、艦尾に外輪を描く。船体は長細く――。
「こんな感じですね」
書き上がったそれを見て技術者は驚いていた。
「マスト……が無いですが……」
「メイン動力としてやれる位、技術開発して下さい」
うぐりと技術者が唸る。その難しさは相当な道のりだからだ。
「か、甲板が平らですが……」
画を見る限り、上甲板は凹凸がない甲板の様だ。
「馬車を直接乗り降りさせる事ができれば、積み込みは楽ですからね。それに、船内に馬車を収納できるようにリフトを設置しましょう」
遠慮なく付け足すノセヤ。
「そういえば、帝国には、グリフォンを扱う部隊がいると聞きます。彼らとの共闘を考え、グリフォンが船に降りられるように、上甲板の強度は増しますか」
「あ、あの……」
「コンセプトとしては、輸送船という枠ではなくなりますね……これは、一考の価値があるかもしれません」
もはや、技術者がいるという事は目に入っていないようだ。
ノセヤは真剣な眼差しで考え込み始めたのであった。
●実情
王国海軍は劣っている。
これは、もはや、公然の秘密として認識されていてもおかしくない程であった。例えば、帝国には魔導エンジンを搭載した最新鋭艦船があるし、同盟には高速帆船がある。
そのいずれにも王国海軍は達していなかったし、そもそも、維持費がかかる巨大船舶の必要性は低かった。
だが、状況が一辺する出来事がいくつか発生する。
王国歴1009年歪虚によって王国西方のイスルダ島が占領。
続いて1013年リアルブルーより巨大戦艦が転移し、同盟領内に停泊。
更には1015年東方が解放される。
これらの事から、王国内部でも一部の貴族達から、海軍力の増強が提案されたのである。
「王国海軍の目的は、イスルダ島と東方への船舶ルートの開拓である」
煌びやかな衣装を纏った貴族が後援者達に向かって高らかと宣言する。
現在、歪虚によって支配されているイスルダ島の奪還は、王国にとって、悲願でもある。王国は先王と共にイスルダ島も失ったのだから。
更に東方への船舶ルートに関しては、現在、転移門に依存している。この状況を打破し、物資輸送能力を高める事により、鬼らの移住を後押しするという意味もある。
「その為に、水面下である計画が実行されようとされています」
パルムが映し出した映像は、ある模型だった。
会場からどよめきがおこる。それほど、これまでの常識を打ち破る画期的な船の模型だったからだ。
「現在の平均的な帆船よりも、4~5倍ほどの大きさになります。動力は刻令術であります。既に刻令術を応用した船舶の開発には一定の成果を治めています」
別の映像には、刻令術式外輪船が映し出された。
「王女の名を冠する、巨大船の開発の為に、ぜひとも、皆さまの援助を賜りたいのです」
会場のどよめきは更に大きくなったのであった。
●とあるハンターオフィスにて
「あんなに大きな金属の船が空を飛ぶのだから、リアルブルーって凄いわ~」
受付嬢兼報告官のミノリがある資料に目を通しながらそんな感想をついた。
「それに比べて……王国は……」
リアルブルーから転移してきた軍艦と比べると見劣りするのは仕方がないものだ。
今更、手を出すのかという気もするが、王国も海軍力の増強を図りたいという様子が伺える。
「で、造船ドック予定地に雑魔が出現と……」
王都から西にやや外れた場所にある林を切り開いて造船所を作る予定なのだが、林の中で雑魔が姿を見せたという。
雑魔発生の原因は不明だが、傲慢の歪虚襲撃時に、なにかあったとかなかったとか、誰かよろしくない物を不法投棄したとか色々噂はあるが、調査するには一先ず、雑魔を討伐しなければならない。
幸い、目撃者の中に負傷者はいないが、雑魔がいる限り、工事も進められない。
「変な特殊能力があるみたいだけ、あまり戦いには影響しなそうだし」
花粉の様なものを辺り一帯にまき散らすという。
その空間内に一度入った者は――もれなく、体内のマテリアル環境がうんぬん、もしくは、なんたらして数時間影響が出るという。
「さてと……」
ミノリは息を整えると、依頼を受けるハンターを求め、大声で叫んだ。
「胸が大きくなりたいハンターさんに朗報の依頼ですよぉぉぉ!」
リプレイ本文
(ご注意)
ちょっと際どい表現がありますが、これは戦闘依頼の報告書です。
大事な事なので(以下略
――林の中に踏み入ったハンター達は、雑魔を見つけ、各々、駆け出した……そこに、ヒゲキが待っているとは知らぬままに――
●破壊の魔術師-メトロノーム・ソングライト(ka1267)
×蒼き姫騎士-ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)
「木の雑魔なら、そこまで大した事なさそうね。数も多くないだろうし、早い所討伐して造船所が出来る様にしないとね」
刀身を蒼く染めた刀を抜き放ったユーリは林の中に見える木の雑魔を一瞥している。
その隣に並ぶのは、青髪が美しい少女メトロノームであった。
「過日のマシュマロ雑魔に続いて、今度は杉の木の雑魔ですか。王国海軍は奇妙な雑魔に縁がありますね……」
溜め息混じりの言葉を紡ぐ。
船の中に出現した雑魔を討伐したのは以前の事。今回の雑魔は見るからに怪しそうな雰囲気を醸し出していた。
「たいして強そうにも感じませんけれど……」
「まぁ、何やら厄介な能力? を持っているって話だけど、あまり気にする必要もないわよね」
メトロノームとユーリの言葉を、人はフラグと呼ぶのだが、当の本人達がそんな事に気がつくはずがない。
麗しき破壊の魔術師と凛々しき蒼き姫騎士――そこから導き出される、なんたらはもはや、語る必要はない。
なにか風が吹き抜けた瞬間、それは訪れる。
「え……っ? どういう事……子供の姿になってる!?」
急に視点が低くなったと思ったユーリが驚く。
そもそも元から外見年齢が10代である彼女が感じる程、子供の姿になっているという事は、かなりの子供だ。
ちょんと立っている姿が可愛いが、同時に、刀が不気味な程、映えている。これは所謂、闘う幼女という奴ですね。
「ちょっと待って、こんなんじゃまともに戦えないじゃないっ!?」
誰に向かってのツッコミなのか、甲高い声で叫ぶ幼女ユーリ。
(あ……凄く可愛いです、ヴァレンティヌスさん)
自身を見上げてくるユーリに、戦闘中というのに不覚にも和んでしまったメトロノーム。
ふと、気がつくと、なんだかいつもより、視点が高い。
「…………大人になっています」
少女から階段を登って大人になった感じだ。
具体的に言うと、20代半ばと言った感じか。諸事情により、服も大きくなった事は幸いだったかもしれない。
破けてしまえばいいだろうという謎の声が聞こえてきそうだが、それはそれ、これはこれである。
「服は破けなかったみたいです。もっとも、裸は見られてもあまり気にしませんが」
なんというサービス精神!
「……そもそも、女性しかいませんし」
そうでした。今回の雑魔討伐依頼、全員が女性という偶然! なんという僥倖! まさに、奇跡!
視点の高さに少し戸惑いながらも、淡々として装いで、マテリアルを操り、魔法を唱えるメトロノーム。
風が刃のように切り裂いて枝葉を切り落としていく。
ユーリの身体が大人になったり子供になったりと落ち着きがない。
「もう!」
雑魔が伸ばしてくる枝触手を剣で払い続ける。
無数の枝がユーリとメトロノームを捕まえようとして全方位から襲いかかって来た。雑魔が本気を出したようだ。
「まずいです」
メトロノームが言った台詞の意味をユーリは理解できた。
このままだと、二人一緒に掴まってしまう。
「ここは、私に任せて!」
仲間を庇うように飛び出るユーリ。まさに姫騎士の名に相応しい行動だった。
獲物が飛び込んできたといわんばかりに、雑魔の枝触手がユーリの身体に絡みついてきた。
「っく、このてい……」
そんな言葉が聞こえたような聞こえなかったような。
次の瞬間、ユーリの悲鳴が響き渡った。
「だ、だめぇ! そ、こ……はっ! ア……ルュ……し……」
這いついてくる様な枝触手が鎧の隙間からユーリの身体に迫る。
必死に悶える程、その動きが艶めかしい。おまけになんだか、ごちそうさまです。
思ったより抵抗する為か、それとも飽きっぽい雑魔だったのか、ユーリを解放する雑魔。
「た、助かりました……わ……」
「ヴァレンティヌスさん!」
ホッとしたのも束の間、メトロノームの言葉に我に返ったが、時既に遅し。
白い樹液が枝触手の先から大量に放たれ、それらをもろに受けたからだ。全身が白液――した樹液まみれになるユーリ。
「…………」
ユーリは自身になにが起こったのか理解できなかったのか、茫然としている。
「だ、大丈夫ですか?」
メトロノームの言葉にプルプルと首を横に振る。
ユーリの姿は徐々に小さくなり、先程の幼女な姿になるとメトロノームに向かって駆け出した。
「ご、ごめんなさいー!」
謝っているが白液まみれでのまま、メトロノームに飛びつく。
「え、えーと……」
あまりの事にメトロノームもどうしていいか分からず、幼女ユーリの頭を優しく撫でる。
パッと見、親子のようにも……見えなくもない……が、そんな事を雑魔が求めているわけでもなく、再び枝触手を向けてきた。
「いい加減にして下さい」
片手で撫でながら、もう片方の手を突き出す。
母性本能? に目覚めた彼女が放った白雷が一直線に雑魔へと迸った。
●爆乳爆弾-フローレンス・レインフォード(ka0443)
×残念食欲-ネフィリア・レインフォード(ka0444)
林を切り開いて造船所を作る計画。当然、造船所では船を作る事になるのだが……。
「巨大な船、ね。いったいどんなものになるのかしら? ともあれ、今は駆除を優先ね」
フローレンスが建造されるであろう甲板胸の船とは正反対の豊満なそれを天空に向けとばかり胸を反って向けた。
依頼の為には、雑魔を頑張って駆除する必要がある。
「随分と妙な雑魔見たいだけれど……」
視界の中にいる雑魔は木の形をしているのだが、動きが怪しい。
獲物が来るのを両手を広げて待っているように枝触手をワサワサと揺らしていた。
「フロー姉と一緒なら百人力♪ ぱぱっと、片付けて遊びに行くのだ♪」
元気一杯にとっても嬉しそうにして、ネフィリアは満面の笑みを向けながら、頼もしい姉を見上げ――
「ネフィ? くれぐれも、くれぐれも一人で突っ込んでは駄目よ?」
フローレンスのその言葉は上からではなく、下から聞こえてくる。
「あれ?」
首を傾げるネフィリア。
無理も無い。いつもは見上げていた姉なのに、今に限って言うと、見降ろしていたからだ。
小さくなった姉と視線が合う。しばし、刻が流れた。
ややあって、叫ぶフローレンス。
「こ、これは、いっにゃい、如何いうこひょ!?」
舌足らずな言葉使いが愛おしさを倍増させている。
フローレンスは小さくなっていた。小さすぎて目に入れてもきっと痛くないはずだとネフィリアが思う位。
というか、小さくなったのは背丈だけで、豊満な胸はそのままだ。つまりこれは――
リアルブルーで言う所のロリ巨凸凸――
「こ、これひゃ、雑魔の能力!?」
依頼の詳細な内容を聞いて来なかったらしく、フローレンスは驚く。
ネフィリアも驚愕の表情を浮かべている。さすが、姉妹といった所か。
「はやや!? フロー姉が可愛くなってる……」
更に異変はこれだけではなかった。
なにか胸が重く感じる。胸が――なにか重りでもついているようだ。
これも雑魔の特殊能力かと思い、胸元に手を置くネフィリア。
「ふに? この変なのは一体何なのだ………って、胸が大きくなってるのだ!?」
見なれた甲板胸あるいはまな板、もしくは、水平線が今や、巨大山脈の如く、その存在感を増している。
「ちょっと、胸が苦しいけど倒してしまうことには変わりないし……」
状況の変化に首を傾げる。
小さくなった姉。(胸が)大きくなった自分。
それ以上でもそれ以下でも影響はなさそうだ。となると、殺る事は一つ。
「いっくのだー♪ 木なら切り倒してやるのだ……はややや!?」
勇ましく駆けようとしたネフィリアを小さくなったフローレンスが服を引っ張って引き止めた。
「待って。独りで行くのは危険よ」
ところがどっこい、危険だったのは、姉妹の方だった。
フローレンスが服を引っ張ったせいで、バランスを崩したからだ。巨大化した胸が遠心力となってネフィリアに襲いかかる!
「胸のせいで何かバランスが……って、わひゃ!?」
転びそうな所で何かによって支えられる。
胸で地面を支えた――わけではなく、振り返ると、雑魔の枝触手が腕を絡んでいたのだ。
「変な所に絡みつくんじゃないのだ! 離すのだ! 変な所に入るんじゃないのだー!」
するすると伸びてきた枝触手が、ヘンナトコに侵入してきた。
柔らかい肌を吸いつくように伸びた枝触手は、文字通り変な所を絡んでいく。どこかって? 聞くだけ、野暮ってものです。
まさぐってくる枝触手から姉を守ろうとしたネフィリアの動きをフローレンスは予想できなかった。
「フロー姉ゲットなのだー♪ 小さいフロー姉もこれはこれで可愛くていいのだー♪」
「ネフィ! お、落ち着いて。落ち着きなさいって、ああぁっ!?」
幾手にも向かってくる枝触手よりも早く、フローレンスの幼くなった身体をネフィリアは胸で挟んだ。
胸部装甲により防御は完璧なはず――
だと思ったが、そう簡単にはいかなかった。
白い樹液を撒き散らす事により、すべりを良くし、なんたらかんたら。白液を浴びた姉妹の間を引き裂くように枝触手が絡み入ってきた。
「何処に絡んで。あ、止め、そんなっ、はぁんっ♪」
フローレンスが色っぽい声を上げた。
肝心な所をパルムがモザイクを掛けてゆく。おのれ、野良パルム。
きっと、もう筆舌し難い姉妹の甘美な光景が広がっているのだろうと想像に難くないが、当の本人達は必死だ。
フローレンスの胸から光が迸った(注:セイクリッドフラッシュ)ような雰囲気の中、なんとか落ち着きを取り戻したネフィリアが斧をギュッと構え、雑魔に向かって突貫していったのであった。
●触手トラウマハンター-十色 エニア(ka0370)
×《偏向》する歪んだ心-シェリル・マイヤーズ(ka0509)
「中々機会の無かった、武器の試し切りに、ちょうど良さそう」
エニアが大鎌を振るう。炎のマテリアルを宿した巨大な鎌だ。
退治すべきは、木の雑魔。これほど、ぴったりな武器は他にはないかもしれない。
「……あの雑魔……動き方が、気持ち悪い……」
怪訝な表情を浮かべてシェリルが呟く。
確かに雑魔の動きは超絶怪しい雰囲気を出していた。はち切れんばかりの枝触手をわしゃわしゃと動かしている。
「う……」
その動きにエニアが思わず固まった。
どうも、触手っぽい動きをするのが苦手だ。精神の奥深くに刻まれた傷が疼いた。
「エニア……何かあったら……? 目線が……高い……?」
言葉の途中でシェリルが辺りを見回す。
自身の背丈が大きくなっているのだ。この雑魔が持つ、噂の特殊能力なのだろう。
癖毛でゆるくるな長い髪が風に流れ、スラッとした長身と相まって大人の色香に包まれる。
「これが……大人の……私?」
一瞬感動したが、胸に手をやり愕然とする。
「胸……ない……」
身体は大きくなったというのに、だ。なんという事か。
気を取り直して視線を上げるとエニアの姿が目に入った。向こうは大人にはなっていない――が、胸がある様に見える。
きっと、気のせいだ。私、疲れているんだと思い、視線を再度向けた。
――やはり、胸があるような気がする。
私が大人になっても胸の差は変わらないのか! おのれ、格差社会! っぽい感じのシェリルの視線に気がついて、エニアが口を開いた。
「な、なぁに!?」
迫ってくる枝触手を鎌で振り払い、激しく動くエニアを見てシェリルは思った。
揺れてる――胸が、エニアたんの胸の揺れてる!
これは、確かめなければいけない! 抱きついてでも確かめなくては!
白液まみれになりながらシェリルは決意すると、エニアとの距離を一気に詰めて抱きつこうとした。
「えっ! ちょっと、服の中、やめ……ひぃ!!」
枝触手と文字通り格闘を繰り広げているエニアにそれを避ける余裕どころか、受け止める事すらできなかった。
大人の姿をしたシェリルがエニアを豪快に押し倒す――
「……大きい……これ、本物?」
「き、気のせいだよ、きっと」
前にもこんな光景あったようななかったような……ともかく、エニアは両手で顔を覆って答えた。
そんなエニアの反応に面白がって、シェリルが不気味な笑みを浮かべた。彼女は今、闇落ちしている。
ふと気がつくと、時間差で自分の胸が大きくなっている事に気がつく。これなら、エニアに負けていない――はず。
「……ふかふか、だ」
思わず触って確かめてみる。
柔らかさと弾力に感動するシェリル。
その楽しみの時間を邪魔するが如く、枝触手が伸びてきた。
「離……せ……さ、さわる、な……ッ!」
枝触手の動きに激しい嫌悪感を覚える。
大きくなった胸を撫でるように這ってくるそれを、無理矢理掴む。とたんに先端から白い樹液を噴き出す枝触手。
「えぇーい!」
「ちょ、やめ……ッ! あぁ! い、いやぁぁ!」
何が起こったのか説明する必要はなさそうだが、敢えて説明するとすれば、シェリルが枝触手をひっつかんで、それを使ってエニア(に取りついている他の枝触手)を叩いたり結んだりしているのだ。たぶん。いいぞ、もっとやれ!
全身が白液によって汚れたエニアが虚ろの瞳で呟いた。
「うぅ……暫く、引き籠っていたい……」
大惨事になる前に魔法を使うべきだったかもしれない。
だが、もう時既に遅し。エニアは精神に再び深い傷を負ったようだ。これは悪落ちまで秒読みに違いない。
触手は相変わらず体中を弄ってくるし、シェリルは馬乗りになって触手を振りまわしているし。
反撃とばかりに、シェリルのある部分に向かって手を伸ばそうとした所で、思い留まった。
茫然とやられるがまま、なすがままのエニアの姿を見て、興奮した――否、冷静に戻ったシェリルはある事に気がついた。
枝触手を払うのではなく、雑魔本体を倒せば良いのだと。
「大人の姿は捨てがたいけど……私は、今の私で、いいんだ……」
赤い刀身の日本刀を構え、マテリアルを活性化させる。こんなエロ雑魔なぞ、一刀両断、だ!
こうして、林の中に現れた雑魔は、無事? に討伐されるのであった。
おしまい。
●激闘を終えて
「……白液まみれ……」
その言葉に全員が頷いた。
誰一人、犠牲者を免れた者はいなかった。
「これは、水浴びですね」
「ちょうど、川が近いです」
誰かからそんな声があがると、ベトベトの衣服を脱ぎだす。
「全員女性ですし」
「皆で、洗いっこなのだ♪」
和気あいあいとした雰囲気の中、『一人の女性』が顔を真っ赤にして走りだした。
「こ、これ以上は、もう、ダメェ!」
ちょっと際どい表現がありますが、これは戦闘依頼の報告書です。
大事な事なので(以下略
――林の中に踏み入ったハンター達は、雑魔を見つけ、各々、駆け出した……そこに、ヒゲキが待っているとは知らぬままに――
●破壊の魔術師-メトロノーム・ソングライト(ka1267)
×蒼き姫騎士-ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)
「木の雑魔なら、そこまで大した事なさそうね。数も多くないだろうし、早い所討伐して造船所が出来る様にしないとね」
刀身を蒼く染めた刀を抜き放ったユーリは林の中に見える木の雑魔を一瞥している。
その隣に並ぶのは、青髪が美しい少女メトロノームであった。
「過日のマシュマロ雑魔に続いて、今度は杉の木の雑魔ですか。王国海軍は奇妙な雑魔に縁がありますね……」
溜め息混じりの言葉を紡ぐ。
船の中に出現した雑魔を討伐したのは以前の事。今回の雑魔は見るからに怪しそうな雰囲気を醸し出していた。
「たいして強そうにも感じませんけれど……」
「まぁ、何やら厄介な能力? を持っているって話だけど、あまり気にする必要もないわよね」
メトロノームとユーリの言葉を、人はフラグと呼ぶのだが、当の本人達がそんな事に気がつくはずがない。
麗しき破壊の魔術師と凛々しき蒼き姫騎士――そこから導き出される、なんたらはもはや、語る必要はない。
なにか風が吹き抜けた瞬間、それは訪れる。
「え……っ? どういう事……子供の姿になってる!?」
急に視点が低くなったと思ったユーリが驚く。
そもそも元から外見年齢が10代である彼女が感じる程、子供の姿になっているという事は、かなりの子供だ。
ちょんと立っている姿が可愛いが、同時に、刀が不気味な程、映えている。これは所謂、闘う幼女という奴ですね。
「ちょっと待って、こんなんじゃまともに戦えないじゃないっ!?」
誰に向かってのツッコミなのか、甲高い声で叫ぶ幼女ユーリ。
(あ……凄く可愛いです、ヴァレンティヌスさん)
自身を見上げてくるユーリに、戦闘中というのに不覚にも和んでしまったメトロノーム。
ふと、気がつくと、なんだかいつもより、視点が高い。
「…………大人になっています」
少女から階段を登って大人になった感じだ。
具体的に言うと、20代半ばと言った感じか。諸事情により、服も大きくなった事は幸いだったかもしれない。
破けてしまえばいいだろうという謎の声が聞こえてきそうだが、それはそれ、これはこれである。
「服は破けなかったみたいです。もっとも、裸は見られてもあまり気にしませんが」
なんというサービス精神!
「……そもそも、女性しかいませんし」
そうでした。今回の雑魔討伐依頼、全員が女性という偶然! なんという僥倖! まさに、奇跡!
視点の高さに少し戸惑いながらも、淡々として装いで、マテリアルを操り、魔法を唱えるメトロノーム。
風が刃のように切り裂いて枝葉を切り落としていく。
ユーリの身体が大人になったり子供になったりと落ち着きがない。
「もう!」
雑魔が伸ばしてくる枝触手を剣で払い続ける。
無数の枝がユーリとメトロノームを捕まえようとして全方位から襲いかかって来た。雑魔が本気を出したようだ。
「まずいです」
メトロノームが言った台詞の意味をユーリは理解できた。
このままだと、二人一緒に掴まってしまう。
「ここは、私に任せて!」
仲間を庇うように飛び出るユーリ。まさに姫騎士の名に相応しい行動だった。
獲物が飛び込んできたといわんばかりに、雑魔の枝触手がユーリの身体に絡みついてきた。
「っく、このてい……」
そんな言葉が聞こえたような聞こえなかったような。
次の瞬間、ユーリの悲鳴が響き渡った。
「だ、だめぇ! そ、こ……はっ! ア……ルュ……し……」
這いついてくる様な枝触手が鎧の隙間からユーリの身体に迫る。
必死に悶える程、その動きが艶めかしい。おまけになんだか、ごちそうさまです。
思ったより抵抗する為か、それとも飽きっぽい雑魔だったのか、ユーリを解放する雑魔。
「た、助かりました……わ……」
「ヴァレンティヌスさん!」
ホッとしたのも束の間、メトロノームの言葉に我に返ったが、時既に遅し。
白い樹液が枝触手の先から大量に放たれ、それらをもろに受けたからだ。全身が白液――した樹液まみれになるユーリ。
「…………」
ユーリは自身になにが起こったのか理解できなかったのか、茫然としている。
「だ、大丈夫ですか?」
メトロノームの言葉にプルプルと首を横に振る。
ユーリの姿は徐々に小さくなり、先程の幼女な姿になるとメトロノームに向かって駆け出した。
「ご、ごめんなさいー!」
謝っているが白液まみれでのまま、メトロノームに飛びつく。
「え、えーと……」
あまりの事にメトロノームもどうしていいか分からず、幼女ユーリの頭を優しく撫でる。
パッと見、親子のようにも……見えなくもない……が、そんな事を雑魔が求めているわけでもなく、再び枝触手を向けてきた。
「いい加減にして下さい」
片手で撫でながら、もう片方の手を突き出す。
母性本能? に目覚めた彼女が放った白雷が一直線に雑魔へと迸った。
●爆乳爆弾-フローレンス・レインフォード(ka0443)
×残念食欲-ネフィリア・レインフォード(ka0444)
林を切り開いて造船所を作る計画。当然、造船所では船を作る事になるのだが……。
「巨大な船、ね。いったいどんなものになるのかしら? ともあれ、今は駆除を優先ね」
フローレンスが建造されるであろう甲板胸の船とは正反対の豊満なそれを天空に向けとばかり胸を反って向けた。
依頼の為には、雑魔を頑張って駆除する必要がある。
「随分と妙な雑魔見たいだけれど……」
視界の中にいる雑魔は木の形をしているのだが、動きが怪しい。
獲物が来るのを両手を広げて待っているように枝触手をワサワサと揺らしていた。
「フロー姉と一緒なら百人力♪ ぱぱっと、片付けて遊びに行くのだ♪」
元気一杯にとっても嬉しそうにして、ネフィリアは満面の笑みを向けながら、頼もしい姉を見上げ――
「ネフィ? くれぐれも、くれぐれも一人で突っ込んでは駄目よ?」
フローレンスのその言葉は上からではなく、下から聞こえてくる。
「あれ?」
首を傾げるネフィリア。
無理も無い。いつもは見上げていた姉なのに、今に限って言うと、見降ろしていたからだ。
小さくなった姉と視線が合う。しばし、刻が流れた。
ややあって、叫ぶフローレンス。
「こ、これは、いっにゃい、如何いうこひょ!?」
舌足らずな言葉使いが愛おしさを倍増させている。
フローレンスは小さくなっていた。小さすぎて目に入れてもきっと痛くないはずだとネフィリアが思う位。
というか、小さくなったのは背丈だけで、豊満な胸はそのままだ。つまりこれは――
リアルブルーで言う所のロリ巨凸凸――
「こ、これひゃ、雑魔の能力!?」
依頼の詳細な内容を聞いて来なかったらしく、フローレンスは驚く。
ネフィリアも驚愕の表情を浮かべている。さすが、姉妹といった所か。
「はやや!? フロー姉が可愛くなってる……」
更に異変はこれだけではなかった。
なにか胸が重く感じる。胸が――なにか重りでもついているようだ。
これも雑魔の特殊能力かと思い、胸元に手を置くネフィリア。
「ふに? この変なのは一体何なのだ………って、胸が大きくなってるのだ!?」
見なれた甲板胸あるいはまな板、もしくは、水平線が今や、巨大山脈の如く、その存在感を増している。
「ちょっと、胸が苦しいけど倒してしまうことには変わりないし……」
状況の変化に首を傾げる。
小さくなった姉。(胸が)大きくなった自分。
それ以上でもそれ以下でも影響はなさそうだ。となると、殺る事は一つ。
「いっくのだー♪ 木なら切り倒してやるのだ……はややや!?」
勇ましく駆けようとしたネフィリアを小さくなったフローレンスが服を引っ張って引き止めた。
「待って。独りで行くのは危険よ」
ところがどっこい、危険だったのは、姉妹の方だった。
フローレンスが服を引っ張ったせいで、バランスを崩したからだ。巨大化した胸が遠心力となってネフィリアに襲いかかる!
「胸のせいで何かバランスが……って、わひゃ!?」
転びそうな所で何かによって支えられる。
胸で地面を支えた――わけではなく、振り返ると、雑魔の枝触手が腕を絡んでいたのだ。
「変な所に絡みつくんじゃないのだ! 離すのだ! 変な所に入るんじゃないのだー!」
するすると伸びてきた枝触手が、ヘンナトコに侵入してきた。
柔らかい肌を吸いつくように伸びた枝触手は、文字通り変な所を絡んでいく。どこかって? 聞くだけ、野暮ってものです。
まさぐってくる枝触手から姉を守ろうとしたネフィリアの動きをフローレンスは予想できなかった。
「フロー姉ゲットなのだー♪ 小さいフロー姉もこれはこれで可愛くていいのだー♪」
「ネフィ! お、落ち着いて。落ち着きなさいって、ああぁっ!?」
幾手にも向かってくる枝触手よりも早く、フローレンスの幼くなった身体をネフィリアは胸で挟んだ。
胸部装甲により防御は完璧なはず――
だと思ったが、そう簡単にはいかなかった。
白い樹液を撒き散らす事により、すべりを良くし、なんたらかんたら。白液を浴びた姉妹の間を引き裂くように枝触手が絡み入ってきた。
「何処に絡んで。あ、止め、そんなっ、はぁんっ♪」
フローレンスが色っぽい声を上げた。
肝心な所をパルムがモザイクを掛けてゆく。おのれ、野良パルム。
きっと、もう筆舌し難い姉妹の甘美な光景が広がっているのだろうと想像に難くないが、当の本人達は必死だ。
フローレンスの胸から光が迸った(注:セイクリッドフラッシュ)ような雰囲気の中、なんとか落ち着きを取り戻したネフィリアが斧をギュッと構え、雑魔に向かって突貫していったのであった。
●触手トラウマハンター-十色 エニア(ka0370)
×《偏向》する歪んだ心-シェリル・マイヤーズ(ka0509)
「中々機会の無かった、武器の試し切りに、ちょうど良さそう」
エニアが大鎌を振るう。炎のマテリアルを宿した巨大な鎌だ。
退治すべきは、木の雑魔。これほど、ぴったりな武器は他にはないかもしれない。
「……あの雑魔……動き方が、気持ち悪い……」
怪訝な表情を浮かべてシェリルが呟く。
確かに雑魔の動きは超絶怪しい雰囲気を出していた。はち切れんばかりの枝触手をわしゃわしゃと動かしている。
「う……」
その動きにエニアが思わず固まった。
どうも、触手っぽい動きをするのが苦手だ。精神の奥深くに刻まれた傷が疼いた。
「エニア……何かあったら……? 目線が……高い……?」
言葉の途中でシェリルが辺りを見回す。
自身の背丈が大きくなっているのだ。この雑魔が持つ、噂の特殊能力なのだろう。
癖毛でゆるくるな長い髪が風に流れ、スラッとした長身と相まって大人の色香に包まれる。
「これが……大人の……私?」
一瞬感動したが、胸に手をやり愕然とする。
「胸……ない……」
身体は大きくなったというのに、だ。なんという事か。
気を取り直して視線を上げるとエニアの姿が目に入った。向こうは大人にはなっていない――が、胸がある様に見える。
きっと、気のせいだ。私、疲れているんだと思い、視線を再度向けた。
――やはり、胸があるような気がする。
私が大人になっても胸の差は変わらないのか! おのれ、格差社会! っぽい感じのシェリルの視線に気がついて、エニアが口を開いた。
「な、なぁに!?」
迫ってくる枝触手を鎌で振り払い、激しく動くエニアを見てシェリルは思った。
揺れてる――胸が、エニアたんの胸の揺れてる!
これは、確かめなければいけない! 抱きついてでも確かめなくては!
白液まみれになりながらシェリルは決意すると、エニアとの距離を一気に詰めて抱きつこうとした。
「えっ! ちょっと、服の中、やめ……ひぃ!!」
枝触手と文字通り格闘を繰り広げているエニアにそれを避ける余裕どころか、受け止める事すらできなかった。
大人の姿をしたシェリルがエニアを豪快に押し倒す――
「……大きい……これ、本物?」
「き、気のせいだよ、きっと」
前にもこんな光景あったようななかったような……ともかく、エニアは両手で顔を覆って答えた。
そんなエニアの反応に面白がって、シェリルが不気味な笑みを浮かべた。彼女は今、闇落ちしている。
ふと気がつくと、時間差で自分の胸が大きくなっている事に気がつく。これなら、エニアに負けていない――はず。
「……ふかふか、だ」
思わず触って確かめてみる。
柔らかさと弾力に感動するシェリル。
その楽しみの時間を邪魔するが如く、枝触手が伸びてきた。
「離……せ……さ、さわる、な……ッ!」
枝触手の動きに激しい嫌悪感を覚える。
大きくなった胸を撫でるように這ってくるそれを、無理矢理掴む。とたんに先端から白い樹液を噴き出す枝触手。
「えぇーい!」
「ちょ、やめ……ッ! あぁ! い、いやぁぁ!」
何が起こったのか説明する必要はなさそうだが、敢えて説明するとすれば、シェリルが枝触手をひっつかんで、それを使ってエニア(に取りついている他の枝触手)を叩いたり結んだりしているのだ。たぶん。いいぞ、もっとやれ!
全身が白液によって汚れたエニアが虚ろの瞳で呟いた。
「うぅ……暫く、引き籠っていたい……」
大惨事になる前に魔法を使うべきだったかもしれない。
だが、もう時既に遅し。エニアは精神に再び深い傷を負ったようだ。これは悪落ちまで秒読みに違いない。
触手は相変わらず体中を弄ってくるし、シェリルは馬乗りになって触手を振りまわしているし。
反撃とばかりに、シェリルのある部分に向かって手を伸ばそうとした所で、思い留まった。
茫然とやられるがまま、なすがままのエニアの姿を見て、興奮した――否、冷静に戻ったシェリルはある事に気がついた。
枝触手を払うのではなく、雑魔本体を倒せば良いのだと。
「大人の姿は捨てがたいけど……私は、今の私で、いいんだ……」
赤い刀身の日本刀を構え、マテリアルを活性化させる。こんなエロ雑魔なぞ、一刀両断、だ!
こうして、林の中に現れた雑魔は、無事? に討伐されるのであった。
おしまい。
●激闘を終えて
「……白液まみれ……」
その言葉に全員が頷いた。
誰一人、犠牲者を免れた者はいなかった。
「これは、水浴びですね」
「ちょうど、川が近いです」
誰かからそんな声があがると、ベトベトの衣服を脱ぎだす。
「全員女性ですし」
「皆で、洗いっこなのだ♪」
和気あいあいとした雰囲気の中、『一人の女性』が顔を真っ赤にして走りだした。
「こ、これ以上は、もう、ダメェ!」
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
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面白かった! | 18人 |
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相談卓、です メトロノーム・ソングライト(ka1267) エルフ|14才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/11/25 11:01:45 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/11/23 08:07:08 |