アマリリス~岩壁の巨人

マスター:深夜真世

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/12/14 22:00
完成日
2015/12/26 02:28

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●セル鉱山と商人たち
「赤ずきんは生き延びたらしい」
「しかも現地で反抗的だった工員からの信頼を得たとか」
 同盟領のどこかで商人たちのそんな囁き声がする。
 赤ずきん、とはアマリリス商会代表のアムのことだ。
 蒸気工業都市フマーレの近くで開発のすすむセル鉱山に必要物資を搬入する業者の集まりに、価格を武器に後から割り込んだのだから彼らにやっかまれるのも無理はない。今までは酒だけだったが、森林狼に狙われ不足していた食料の納入に成功したため業者連中は危機感を抱いているところだ。
 ちなみに、アムの狼退治は失敗すると目されていた。
 いくら覚醒者の護衛を常時抱えているといっても数人でしかないからだ。
 故に犠牲に差し出す「赤ずきん」呼ばわりしていたのだが、食料も運ぶことでハンターを雇う予算を確保するとは思わなかったらしい。
「忌々しいが、まあいい。ここはついでに『岩壁の巨人』も倒してもらおうじゃないか」
「伝説じゃないのか?」
「いるかどうかも分からんのに」
 商人仲間から一斉に声が挙がる。
「セル鉱山付近が麓の住民から禁足地扱いされ手付かずのまま残っていた元凶。いるかもしれない、という状況こそ一番活用すべきなのだよ」
「なる……。いなければそれに掛かりっきりで酒以外の取り引きどころではないな」
 そんなこんなで、事業主のグリス・オムに進言し、うまいことアマリリス商会に相談がいくよう仕向けるのだった。


●炭鉱街では
「よう、お嬢。ごきげんはどうだい?」
「お嬢の酒は故郷の酒に近い味がして、いいな」
 密造酒の納入でアマリリス商会がセル炭鉱街を訪れると、それとなく男どもが寄って来て声を掛けてきた。
「田舎受けする酒が故郷の味って……あんたら、お里が知れるわよ」
 アム、これに対し愛想を振りまくなどは絶対にしない。ツンとしたものだ。もっとも、荒くれ男たちはヒュッ、と口笛を吹いて囃しむしろ楽しそうなのだが。
「知るかよ。ここぁ極彩色の都ってわけじゃねぇ。ごらんの通り穴を掘るだけのド田舎だ」
「こんなところで上品な酒を飲んでもうまかねぇよ」
 わはは、と笑い合うのは素性についてすっとぼけているから。
「仕方ないわね。しっかり稼いで都に帰る時があるなら、飛び切りの酒を用意しとくわ」
「おおぅ。お嬢が俺っちらの冗談に付き合ってくれたぜ?」
「こりゃ早めにがっぽり稼いで、都でお嬢に酌をしてもらわんとなぁ」
 アムの言葉にひゃっほうと盛り上がる男ども。
「……すっかり気に入られましたね」
 アムの横を歩いていた、現場管理技術者のハミル・タグは感心したようにため息をついた。
「女をからかいたいだけじゃないの? それより」
 話をいなしたアム、口調を改めた。
「……『岩壁の巨人』ってのを倒すようグリス氏に言われたんだけど、そんなのいるの?」
 懐疑的な目を向ける。
「深夜、遠くから大きな音を聞いたという報告はありますね。同時に蝙蝠の群れの目撃。そして、ここに『岩壁の巨人』がいるという伝説があるというのも知っています」
 ハミル、整然と答えた。
「困るのよね」
 アム、不機嫌そうに眉の根を寄せた。
「いれば退治すればいいんだけど、発見して倒すなんて手間を取ることなんかしたくないのよね。こっちは本業に力を入れたいし」
 酒の取引で人員は必要で、ハンターを雇って偵察するにしても必要経費はアマリリス商会持ちなので何度も雇えない。
「倒すまでには費用は出ないんですか?」
「全力出撃一回分、というところね。ウチはモータルやメイスンとかハンターレベルがそろってるから、やりくりしても二回までね。それ以上やると赤が出ちゃう」
 だから、とアムはいたずらそうに微笑して続けた。
「出たら何とかするから、それまではあんたたちで何とかしてね」
 つまり、自警団を作れということだ。
「ちょっと……」
「あら、勘違いしないで。自警団を作るのに私たちも手を貸すから、その分予算を分捕って来て、って言ってるの」
 実はこの案、採用される。
 予算もついた。

 後日。
「じゃ、自警団の代わりに『岩壁の巨人』の偵察に行ってくるわ」
 すっかり嬢王となっているアム、ハンターを雇って偵察に出る。
 で、あっさりと発見した。
 山の岩肌に影のように映る三メートル程度の岩の巨人を。

 周りには大きな足跡もある。
 目の前にあるのは壁画だが、どう見ても抜け出して動き回っている。
 まだ、抜け出しきってない。
 弓のアム、剣のモータル、鎚のメイスン、そしてハンター8人は森と岩壁に挟まれた20メートル四方の草原にいる。

 どうしたものか?

リプレイ本文


「何よ、これは」
 目の前にそそり立つ岩壁を見上げ、アムが呆れた声を出した。
「これが伝説の巨人……すごいです」
 隣のリラ(ka5679)も細い顎を上げて青い瞳を輝かせていた。

 一行は森を進んでいたのだが、途中で木々のまばらな場所を発見。そこにあった巨大な足跡をたどり岩壁のそそり立つ広場の前に来ていた。森に身を隠した目前に、全高3メートルはあろうかという、巨人の姿を思わせる壁画――いや、リレーフに近い――があった。

「結構大きいですよね……」
 リラの横でヴェンティ・クアドリフォーリョ(ka5776)が両手を胸の前に組んでいた。あるいは、「教会のステンドグラスとどちらが大きいでしょう」などとも思ったかもしれない。
「岩壁の巨人ね……何があるのかしら?」
 エレンジア・アーヴァイン(ka5584)がそういうのは、巨大な足跡をたどってきたから。この壁画から巨人が実際に出てくる可能性が高い。と、すれば一体どうして、という考えだ。
 その時。
「いや、あれは伝説の巨人じゃ!」
 へそ出しアラビアンな衣装のディヤー・A・バトロス(ka5743)が前に躍り出て胸を張った。
「ワシは伝説にお目に掛かれると聞いてここに来たのじゃ! ただの岩壁の巨人ならば用はない!」
「うん。伝説の岩壁の巨人だよね~。リアルブルーにある話だと伝説の無限のエネルギーで星の住民全員死亡というオチの……」
 おっと。天竜寺 詩(ka0396)もディヤーの熱弁に加わった。
「そうですね。伝説の巨人と聞くと何かこう…光の矢で額を攻撃とかなんとか思い浮かびます……何故か」
 あああ、サクラ・エルフリード(ka2598)まで一緒になってッ。
「巨人が調査できれば伝説でも岩壁でもどちらでもいいだろう?」
 ベリャコフ・ヴェロニーカ(ka5493)が冷静に突っ込んだ。今日もリアリストで平常運転。
「でも士気にはかかわりそうですよね」
 ツィスカ・V・アルトホーフェン(ka5835)が一歩引いて皆の様子を観察しながら話を振った。
「そういう見方もあるか」
「そうじゃ! とれじゃーはんたーは男の子の夢! 伝説万歳なのじゃ!」
 感心するベリャコフに、ぴょんと飛び跳ね明らかに士気の上がるディヤー。どうやら呼称は伝説の巨人に決定のようで。
「アムさん、何か情報はいただいてますの?」
「ないわ。エレンジアも一緒だったときのパーティーで少し話題が出ていた程度」
 エレンジアがアムに確認するが、芳しくはない。
「何故こんな所にいるのかとか気になるところですね」
「この巨人、もしかしたら何かを護るためのゴーレム的なモノじゃない?」
 ヴェンティが根本的な疑問を口にすると、詩がズバリ。
「そういえば伝説を事前に調べたって……」
 これを聞いてモータルが振り返る。
「リラです、よろしくお願いしますね! 私が調べたところ、ゴブリンや森林狼すら近寄らないそうです。大きな足跡だけで夜に足音がするだけなら危険回避は簡単だと思うんですけど」
 リラ、モータルに改めてあいさつしてから新規情報を伝えた。
「蝙蝠の群れの目撃情報が気になるのう」
 ニヤニヤとディヤーがそれに対する見解を口にして双眼鏡を取り出す。
「というわけで、巨人の近くに洞窟がありそうだよね」
 詩もにやり。
「でも……洞窟はなさそうです」
 同じく双眼鏡を構えるリラが残念そうに。
「壁画から巨人が出てくるなら、洞窟の在処もその後に分かりそうですね」
 ツィスカ、そう言ってカービン「ルブルムレクスRK3」を取り出した。
「やることは決まったようだな」
 ベリャコフもライフル「ミーティアAT7」を構えた。
「あっさり倒してもいいわよ。もしそうなら事後調査するし、ほかの商人は私たちがここにかかりっきりだと油断させるから」
 アム、戦闘開始前に念を押しておく。
「裏の思惑はさておきとして…伝説の巨人というのは興味あります…」
 サクラ、シールド「ゴッデス」を前に掲げ一斉射撃後の展開に集中する。
「この場所なら広く戦えます。倒れそうな木が多いので隠れて狙う人は気を付けてください」
 リラもぐっと身を沈めて備える。
「アマリリス商会も軌道に乗ってきたみたいだし下手はうてないよね。アムちゃん、モータル君、メイスン君、頑張ろうね!」
 詩の声にモータルとメイスンが頷いた!
「私も大丈夫です」
 ヴェンティ、エクソシスムメイスを掲げたっ!
「ではアマリリス商会、参りますわ」
 マギスタッフを掲げたエレンジアの合図で、ツィスカが、ベリャコフが、ヴェンティが、そしてエレンジア自身が一斉に攻撃した。



 ツィスカとベリャコフの銃弾、そしてヴェンティとエレンジアのマジックアローが当たっても岩壁に掘られた巨人像はピクリとも動かなかった。
 だが、もう一度4人が攻撃した時だった!
 ――ばきっ、べきべきべき……。
「ああっ! 巨人が……」
 モータルが叫んだ通り、岩壁の巨人が自らを封じる岩肌から巨体をはがして出てきたッ!
 続いて地響き。
 巨人が粉塵を散らしつつこちらに殺到しているのだ。
「早い!」
 今度はメイスンの叫び。
「ん、任せて……」
 いつものように盾を構えたサクラが前に出る。
 が、あまりにも体格差があるぞ!
「大きさの割には…素早いですわね」
「無理だ!」
 エレンジアは攻撃をやめて横に逃げている。ベリャコフも続くが、サクラを気遣い無茶しないよう叫ぶ。この二人だけではなく、すでに全員退避しようと腰を浮かせている。
「んん、どこまで耐えられるか……」
 サクラ、逃げない。
 ――どかっ!
 大質量の突撃はサクラの構えた白亜のシールドに激突。
 結果、吹っ飛ばされた。
 それだけではない。
 巨体の弾いた枝などが容赦なく飛んできて全員を打ち付ける。嵐もかくやの状態だ。
 ここでリラの声。
「洞窟、ありました!」
 指差す先は、巨人の埋まっていた岩壁。
 粉まみれになった面々が巨人通過後のつかの間の安全な時間に振り向き確認。
 確かに、新たに人型にくぼんだ場所に入り口があった。騒ぎに驚いたのか、中から蝙蝠が群れをなして飛び散っている。
「思った通りじゃ。行くぞ!」
 ディヤー、一目散に洞窟へ駆け出す。
「適当に攻撃して足止めしておきます」
 ツィスカがボトルアクションをしながら声を張る。ここに残って巨人の相手をするつもりだ。
「行動範囲や追跡範囲も知りたいですしね」
 ツィスカとは反対に逃げたヴェンティが言い放つ。彼女も残り組。
「こいつの弱点でも探っておこう」
「アムさん、ここはお任せくださいな」
 ベリャコフが行き過ぎて振り向く巨人に撃ち込みながら話し、エレンジアがにっこりとアムを振り返る。
「倒してから、ができないかもだから行くしかないよねー。ここは遠距離の人に任せよう」
 詩、モータルとメイスンを伴って遠慮なく洞窟方面に走る。
「サクラさん、大丈夫ですか?」
「んん、受け流し気味にして良かった…洞窟ならシャインを使いますよ…」
 リラがサクラに駆け寄ると無事の様子。前を行く仲間を追った。
「出てくるまでにマジックアローを様々な場所に撃ち込んでみますわ」
「近寄ってマジックアローとウインドスラッシュも放ってみます」
 残ったヴェンティとエレンジアが魔法を駆使して敵の調査に出た。
「一点集中も試しましょう」
「敵の動きは要注意だな」
 射程調整のため近付くウェンティのため援護射撃をするツィスカとベリャコフである。

 味方射撃陣が中距離戦闘を繰り広げる中、近距離戦部隊は洞窟へと突入していた。
「入ると結構広いですね」
 松明を掲げつつリラがきょろきょろ。
「結構な高さがあるの? 蝙蝠天国じゃ」
 ディヤーは魔法剣「レヴァリー」を掲げてリトルファイヤ。周囲を照らした後で天井を観察する。「これなら変なガスが充満して爆発の危険もなかろう」とも。
「あの巨人がゴーレムとすれば明らかにここを護ってるわけだから、あまり時間はないよ?」
 ホーリーライトの光に照らされた詩が振り返り急かす。
「ん、下手に倒してしまっても何かありそうな感じがしますから手早く、ですね」
 霊槍「グングニル」をシャインで光らせたサクラが頷く。
 以上4人と、アム、モータル、メイスンが洞窟に入った。
 そのまま進むとやがて天井は低くなり、そして左右に分かれ道。
 右がやや下り、左がやや上る。
「とれじゃーはんたーとしては底じゃの」
「危険があれば守ります」
 ディヤーが迷いもせずに右の通路に。サクラも続いた。
「モータル君たちはここで待ってて」
「蝙蝠はこちらからは出ないんでしょうか?」
 詩とリラが必然的に左に走ることになる。
「急いでよ。巨人が戻って来たら出られなくなるんだから」
 アムたちがここに連絡役として残る。
 その結果!

 通路、右。
「ぬお?」
 下った通路はやがて行き止まりの広場に。
 そこでディヤーが立ち尽くした。
「これは……」
 続いたサクラが光るグンニグルを巡らせ言葉を失った。
 周りには白い何かが転がっていた。
「頭蓋骨……人骨じゃの」
「アムさんたちを残してきてよかったです……」
 二人が調べると明らかに人の骨だった。朽ち果てた女性用と思しきドレスも散見される。

 通路、左。
「え?」
 上った通路はやがて行き止まりの広場に。
 そこで詩が立ち尽くした。
「まさか……」
 続いたリラも目を見開いた。
 明かりに照らされた場所には、大きな寝具と思しき家具があった。
「まるでベッドじゃない?」
「ふかふかです……」
 近寄った詩がぴらっと掛け布団をめくってみたがもぬけの殻。
 リラは手を置きぽふぽふして寝心地を確かめている。
 誰かがここで寝起きしているとしか思えなかった。
「しかも……大きいね」
「二人以上が横になれるでしょうか?」
 しげしげと観察する二人だった。



 しばらく後、外。
 ――どどどど……ずしゃあああ……。
「くっ……雑なことをしてくれるな」
 いま、巨人が遠距離射撃したベリャコフに突撃し、ヘッドスライディングをした。もちん横にかわしたベリャコフだが、激しく飛んでくる枝や石を食らいまくっていた。直撃を免れても手広くダメージを広げる攻撃だ。
「これならファイアアローの間合いに入れます」
 ヴェンティが巨人の滑り込んだ後背から走り寄り魔法を打ち込む。うまい連携だ。
「攻撃モーションはひたすら大きく、そのかわり分かっていても余波を食らうことになりますわね」
 エレンジアはヴェンティに攻撃を任せてひたすら敵の特徴をメモしていた。
「魔法属性は……ほとんど差はないですね」
 気付くとツィスカが横に来ていた。
「物理攻撃にも適度に強く、これといった特徴がないですわ。こういうのは……」
「どんな敵にも一定の防御力を発揮する、典型的なゴーレムです」
 エレンジアとツィスカは顔を見合わせそれぞれ呟くと、うんと頷き合った。
「あとは距離での反応だけです」
 魔導拳銃「ベンティスカ」を構えて距離を詰めるツィスカ。巨人の立ち上がったところにパンと打ち込むが体力任せにかわしもせずに一歩を踏み出し腰を落として地を這わせるように拳を振って来た。これだけで一気に敵の間合いに入ってしまう。
「くっ」
 受け流し気味にバックステップするが無傷ではいられない。
「間合いが近ければ近いなりの反応……か。単純な消耗戦だな」
 立ち上がったベリャコフが背後から観察する。
 この時、蝙蝠が近くを舞う中、巨人が顔を上げた。
 遠く岩壁の洞窟を見たのだ。
 ちょうど探索に入っていた7人が出てきたところである。
 ――ぐっ……ど、どどどど……。
 巨人、そちらに殺到したッ!
「いけない」
 ヴェンティがウインドスラッシュでひざ裏を狙う。
「伊達にスキルは鍛えてなくってよ」
 エレンジアも続いた。ツィスカも、ベリャコフも。
 さすがに巨人はぐらっときて倒れた。
 まずいことに、前に!
 ――ずざざざ……。
「んん……」
 サクラ、盾を構え仲間をかばうように前に出る。ヘッドスライディングで捲れた地面の土や石が礫となって激しく打ち付けてくる。
「ワシも止めるぞ!」
「あ、そろそろ退避……」
 意気に感じたディヤーも盾「雅龍」を左手に出たが、この時には潮時と見たサクラが脱出していた。
「何と? ……おおお折れる折れる折れる!」
 逃げ遅れたディヤー、巻き込まれた。右手の魔法剣「レヴァリー」でいなすようにしたが敵の指に引っかかって引きずられた。……いろいろ折れなかったのは敵のスライディングがここで止まっていたためだ。
 そして身を起こす巨人。
 その時!
「気を付けろ、下敷きを狙ってくるぞ!」
 響いたのはベリャコフの叫び。これまで伊達に巨人の相手をしていたわけではない。
「ボクに行かせて下さい! …先生の教え通りに…いま!」
 リラ、この声で敵の次の動きを理解した。先手を打って大地を蹴るッ!
 巨人、まだ身を起こしていた。つまり、後ろに重心を移す動き。
 この移動に合わせるように、リラの飛翔撃の蹴撃が彗星のように胸板を打つッ。
 ――ぐらっ。
 敵、上半身を仰け反らせた。前に倒れるつもりがリラの蹴りで思わぬ隙を作ることになる。
「3人とも下がって。……ホーリーライト!」
 詩のかざすスタッフから魔法の光が飛び、さく裂。
「今度の光はただの光ではありません……」
 ぐっ、と身を沈めたサクラがついにグングニルを突き出した。ホーリーセイバーの白い輝きとともに高く敵の鳩尾を突く。
「風斬!」
 立ち直ったディヤーも魔法剣一閃。仰け反る喉元を風魔法で狙った。
 これに合わせるように、後衛4人が再び敵のひざ裏に集中攻撃。
 ――ずず……ん。
 ついに敵は初めて、すぐに行動できない仰向け状態に倒れたのだった。
「よし!」
 この隙にモータルが、メイスンが、アムが巨人の左右を抜ける。サクラや詩、リラにディヤーも続く。
 そして再び立ち上がり振り向いた巨人の顔に、炎の矢がさく裂する。
「これで撤退です」
 ヴェンティだ。
 巨人がたじろいだところで背を向け仲間を追い、走る。

 そして帰還後。
「今回の戦力でも倒せましたね」
 鉱山街で紅茶を飲みつつツィスカが呟いた。
「でも、倒さなかったから私たちにもうちょっと出資させることができるわ。上出来よ」
 アムはこの結果に大変満足そうだ。
「追跡はあまりしてこなかったですね」
「あの場所を護ってるからですわね、きっと」
 ヴェンティの言葉に上品にエレンジアが応じる。
「何を護っていた?」
 ベリャコフが顔を上げ周りを見た。
「誰かがあそこで生活してるみたい」
「大きなベッドでした」
 詩とリラが一斉に。
「犠牲者もいたようじゃの」
「着飾った女性が中心でした」
 ディヤーと、彼女を回復するサクラの証言。
「すぐに倒していいのか、放っておいた方がいいのか迷いますね」
 うーん、と唸るモータル。

 とにかく、的確な予測とスムーズな連携でこれ以上ないほどの成果を挙げたのだった。

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参加者一覧

  • 征夷大将軍の正室
    天竜寺 詩(ka0396
    人間(蒼)|18才|女性|聖導士
  • 星を傾く者
    サクラ・エルフリード(ka2598
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • Pクレープ隊員
    ベリャコフ・ヴェロニーカ(ka5493
    人間(紅)|20才|女性|猟撃士
  • アマリリス商会
    エレンジア・アーヴァイン(ka5584
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 想いの奏で手
    リラ(ka5679
    人間(紅)|16才|女性|格闘士
  • 鉄壁の機兵操者
    ディヤー・A・バトロス(ka5743
    人間(紅)|11才|男性|魔術師
  • 世話焼きシスター
    ヴェンティ・クアドリフォーリョ(ka5776
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • アウレールの太陽
    ツィスカ・V・A=ブラオラント(ka5835
    人間(紅)|20才|女性|機導師

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依頼相談掲示板
アイコン さて、相談じゃ。
ディヤー・A・バトロス(ka5743
人間(クリムゾンウェスト)|11才|男性|魔術師(マギステル)
最終発言
2015/12/14 21:07:53
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/12/12 20:22:20