ゲスト
(ka0000)
【闇光】鏡の中のマリオネット
マスター:cr

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/12/15 19:00
- 完成日
- 2015/12/24 00:18
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「ふぇぇぇん! 痛いよー!」
「あなたには次の場面にも出演していただこうと思ったのですが……まあいいでしょう。一つ、試してみたいものもありますしね。次の一幕は彼に出てもらいましょう」
●
暴食と怠惰、二つの歪虚王が同時に動き出したことにより北伐連合軍は撤退を余儀なくされた。このまま歪虚達に進行を許せば帝国と辺境一帯が蹂躙される事は想像に難くない。そこで連合軍は最終防衛ラインを構築すべく戦力を集中させていた。
「何だありゃ?」
そんな撤退途中の者達の前に現れたのは高さ7、8メートルはあろうかという人形。宙に浮かぶその姿は巨大な操り人形というのにふさわしい。その周囲に二枚の鏡が浮かび、さらにその周りに四つの球体が浮かんでいる。球体からは一本の宙空の棒が付き出しており、それをこちら側に向けたかと思うとその先から弾丸を連続発射してきた。
「畜生! 最大火力で行くぞ!」
盾で弾丸を弾きながら、すぐさま行動を開始する。魔術師が呪文を詠唱し始め、機導師が魔導機械を起動する。程なくして火球が、光線が人形の元へと集まっていった。
その時だった。浮かんでいた鏡、そこに人形の姿が映ったかと思うと、その姿が掻き消えた。目標を失った火球は、光線は虚しく何もない空中で爆発する。
戸惑いを隠せない人々。そんな彼らをあざ笑うかのように、やや経って人形は一団の横に姿を表す。そして両腕を前に突き出すとそこに瘴気が集中していき、次の瞬間その手の先から極太の光線が迸った。
その光が晴れた時、そこには何も残っていなかった。
●
「くそっ、嫌でも焦っちまうぜ」
魔導トラックのハンドルを握りながらイバラキ(kz0159)は悪態をついていた。その荷台にはハンター達に加え何やらよくわからない砲台らしきものが一つ。それらをぎゅうぎゅうに押し込め、トラックは荒野を走っていた。
巨大な操り人形型の敵が現れ、こちらに向かっている。その情報はすぐさま連合軍に伝えられ、それを撃退するためハンター達が招集された。
「全長8メートルの人形……『デウスエクスマキナ』か。さすがのアタシにもこれは殴れないな。この魔導砲とやらが上手く働いてくれりゃいいんだが」
荷台にあるのは試作品の魔導砲。この緊急事態に試用されることになったもの。本来はCAMや魔導アーマーに搭載しての運用が予定されているものである。その威力は上手く働けば一発で戦況をひっくり返すものがあった。上手く働けば、の話だが。
コードネーム、デウスエクスマキナ。その破壊という重い任務の事を考え、荷台の中では否が応でも緊張感が高まっていた。
●
「デウスエクスマキナ、興味深い言葉ですね。物語に終わりを告げる“機械仕掛けの神”。これでこの物語が終わってしまえば三文芝居もいいところですが……果たしてどうするのでしょうね」
「ふぇぇぇん! 痛いよー!」
「あなたには次の場面にも出演していただこうと思ったのですが……まあいいでしょう。一つ、試してみたいものもありますしね。次の一幕は彼に出てもらいましょう」
●
暴食と怠惰、二つの歪虚王が同時に動き出したことにより北伐連合軍は撤退を余儀なくされた。このまま歪虚達に進行を許せば帝国と辺境一帯が蹂躙される事は想像に難くない。そこで連合軍は最終防衛ラインを構築すべく戦力を集中させていた。
「何だありゃ?」
そんな撤退途中の者達の前に現れたのは高さ7、8メートルはあろうかという人形。宙に浮かぶその姿は巨大な操り人形というのにふさわしい。その周囲に二枚の鏡が浮かび、さらにその周りに四つの球体が浮かんでいる。球体からは一本の宙空の棒が付き出しており、それをこちら側に向けたかと思うとその先から弾丸を連続発射してきた。
「畜生! 最大火力で行くぞ!」
盾で弾丸を弾きながら、すぐさま行動を開始する。魔術師が呪文を詠唱し始め、機導師が魔導機械を起動する。程なくして火球が、光線が人形の元へと集まっていった。
その時だった。浮かんでいた鏡、そこに人形の姿が映ったかと思うと、その姿が掻き消えた。目標を失った火球は、光線は虚しく何もない空中で爆発する。
戸惑いを隠せない人々。そんな彼らをあざ笑うかのように、やや経って人形は一団の横に姿を表す。そして両腕を前に突き出すとそこに瘴気が集中していき、次の瞬間その手の先から極太の光線が迸った。
その光が晴れた時、そこには何も残っていなかった。
●
「くそっ、嫌でも焦っちまうぜ」
魔導トラックのハンドルを握りながらイバラキ(kz0159)は悪態をついていた。その荷台にはハンター達に加え何やらよくわからない砲台らしきものが一つ。それらをぎゅうぎゅうに押し込め、トラックは荒野を走っていた。
巨大な操り人形型の敵が現れ、こちらに向かっている。その情報はすぐさま連合軍に伝えられ、それを撃退するためハンター達が招集された。
「全長8メートルの人形……『デウスエクスマキナ』か。さすがのアタシにもこれは殴れないな。この魔導砲とやらが上手く働いてくれりゃいいんだが」
荷台にあるのは試作品の魔導砲。この緊急事態に試用されることになったもの。本来はCAMや魔導アーマーに搭載しての運用が予定されているものである。その威力は上手く働けば一発で戦況をひっくり返すものがあった。上手く働けば、の話だが。
コードネーム、デウスエクスマキナ。その破壊という重い任務の事を考え、荷台の中では否が応でも緊張感が高まっていた。
●
「デウスエクスマキナ、興味深い言葉ですね。物語に終わりを告げる“機械仕掛けの神”。これでこの物語が終わってしまえば三文芝居もいいところですが……果たしてどうするのでしょうね」
リプレイ本文
●
荒野を魔導トラックが土煙を上げながら走っていた。程なくして目的地が姿を現した。
「お……大きいわね。たしかに機械人形の神様ね」
ケイルカ(ka4121)は馬で並走しながらそう漏らす。高さは7、8メートル、見上げんばかりに大きい姿は土埃が舞うこの場所でも見間違うわけがない。
「北伐は面倒な敵のオンパレードね。デウスエクスマキナか。歪虚王のハヴァマールに比べたら随分理性的なほうね」
もう一方で同じく馬で並走していた烏丸 涼子 (ka5728)はそうつぶやいていた。目標の周りには球体のビットと称される敵が四体、そして付き従うかのように浮かぶ鏡が二枚。これらも同時に相手しなければならない。
「ご都合主義(デウスエクスマキナ)な……こっちのこのデカブツも、充分ユニークなご都合主義な気がするけどな」
「ああ、褒められたもんじゃねぇぜ、その手法はよ。都合の良い神なんぞに頼らず、地に足付けねぇとな」
荷台のなかでキー=フェイス(ka0791)とアーサー・ホーガン(ka0471)がそう会話を交わしていた。サルヴァトーレ・ロッソが浮上し、CAMの実戦投入が可能になったタイミングでのこの敵。そのサイズもCAMとほぼ同じ。それはCAMを用い逆襲を狙う人類側に対し、ご都合主義的に歪虚が用意した武器とも捉えられる。
しかも“機械仕掛けの神”の名の通り、きっちりとコントロールされた動きを見せる敵のようだ。揺さぶりは意味を為さない。やっかいだが、向かうハンター達はその動きを逆に利用することを考えていた。そうして立てた作戦を元に、ハンター達は動き始める。
「意外とあっさり勝てますよーに、なの」
リリア・ノヴィドール(ka3056)が荷台を出てターゲット目掛け向かっていく。それに続き荷台を降りていくハンター達。
「頑張るわよ。じゃないと追いつけないんだから!」
ケイルカは自分がハンターになるきっかけとなった幼なじみの姿を思い浮かべながら、そう決意を固めた。
「神の名を冠するに足る強さを期待するぜ。見かけ倒しで終わってくれるなよ?」
アーサーはそんな軽口を叩きながら、向かっていった。
「生憎と、信奉する神は間に合っている。早々に、消えろ」
そして最後に荒野に降り立ったオウカ・レンヴォルト(ka0301)がデウスエスクマキナの巨体を見上げながら、そう口の中で転がした。
●
「さあ、猫ちゃん、出ておいで。私達の出番が来たわよ」
そのケイルカの言葉と共に、幻影の猫が姿を表し彼女の肩へと乗った。それと同時に詠唱される呪文。その言葉が唱え終えられると、風が彼女たちの周囲を舞い、その身に纏わせる。そして彼女の動きは、まるで猫を思わせるかのようなしなやかで素早い物へと変わっていった。
その頃、オウカは人形へと向かって突き進んでいたが、やおらその歩みを止めた。仮面越しに居並ぶ敵を見る。視線は一瞬だけ人形を見ると、その周囲を巡らせる。そこには鏡が2枚にビットが一つ。それらに集中すると視界に文字が浮かぶ。
オウカはその文字に従って仮面を操作する。これはただの仮面に見えるが、その正体は技術の粋を尽くした魔導機械である。果たして、彼の目の前に光り輝く三角形が現れたかとその頂点から光が走る。3本の光は2枚の鏡と1つのビット、それを貫いた。
光が駆け抜けた後に残ったのは大きく損傷したビットと、傷が見えない鏡。どうやらこの鏡は相当頑丈に作られているらしい。オウカはそのことを気に留めつつ、意識を人形に集中する。すると人形はその身を滑らせ、こちらに向かって殴りかかってきた。なるほど、鏡を守るために速やかに敵を排除する。そのようにコントロールされているらしい。
だが、その拳はオウカに届くことはなかった。両者の間に身を割り込ませたアーサーがその巨剣で拳を受け止める。大きな質量を伴って繰り出される拳はズズッ、と彼の身体を沈める。だがその重さをかけるだけの一撃は両足で地にしっかりと立っている彼にとっては捌くことなど容易いことだった。
「失礼するわ、なの!」
そして、逆側からはリリアが飛び込んできた。彼女は軽い身のこなしてで飛び、人形の拳が届かない位置、すなわち人形そのものの身体に着地した。そのまま器用にバランスを取ると、チャクラムにマテリアルを込めて放つ。カーブを描き飛んだそれがビットを切り裂きながら鏡にぶつかる。
そこから少し離れた位置にJ(ka3142)が立っていた。彼女の眼鏡にはハンター達と、それに攻撃を加える人形の姿が映る。だが、それより目についたのは銃弾をばら撒いているビット達であった。あっという間に一つ破壊し終えたが、すぐさま鏡からビットが飛び出してハンター達を傷つける。その姿を見て素早く杖を操作する。
「穿て、瞬光」
その彼女の短い言葉と同時に、三本の光がビット達を焼く。
一方、トラックの荷台の上で、キーが双眼鏡を覗いていた。把握した戦場の様子をトランシーバーで素早く伝えていく。
「『刀を弾き倒す狙撃』と比較すると今回は大きな的デスネェ。ガ、弾数の制限アリ。コレはスナイパーとして燃えない訳がアリマセン」
そんな中もう一人、荷台に陣取っていたヒズミ・クロフォード(ka4246)がスコープを覗いていた。彼の仕事はずばり、魔導砲の砲手である。失敗の許されない状況に襲い来るプレッシャーをむしろ心地よく感じながら、いつでも撃てるようにトリガーに指を当て、じっと息を止めその時を待っていた。
「ちなみにだけど、銃を覚える気はある?」
そしてもう一人、馬にまたがりトラックの側に居た涼子が運転席のイバラキに話しかける。
「アタシにはこの拳で十分さ」
「便利よ。趣味じゃないと思うけど」
「ああ、そうだな。趣味じゃない」
格闘士同士気が合うのか、軽口を交わした後涼子は手綱を引いた。馬は荒野を駆け人形へと一直線に走っていく。そのまま拳銃を片手で構え、照準を人形に向けていた。
「まあ……趣味じゃないけど」
そして放たれる銃弾が、人形の腕に食い込む。そこに人形の攻撃を捌いていたアーサーが素早く剣を回し、反撃の人達を腕に食らわせた。人形は大きな動きを見せる様子はない。強力な攻撃にテレポートをするという事だったが、これらは“強力な攻撃”では無いらしい。ならば、と二人は腕の一点に狙いを絞り、集中攻撃を加えていた。
●
その時、最初に気づいたのはキーであった。交戦しているハンター達と取り巻きの中、人形の周囲で空気が動いたような感触があった。そして瘴気が少しずつ集まっていくのが見える。これは……すかさずトランシーバー越しに人形の元に居るハンター達に状況を伝える。
Jがその状況を把握したのと、キーからの指示を聞いたのは同じタイミングだった。そして彼女はすぐさま反応する。
「穿て、龍光」
その短い言葉とともに現れた光の竜頭、それが絡みあうように人形へと飛んで行く、その動きに合わせてハンター達が動く。アーサーはすかさず防御を軸とした構えを解き、一気の攻めをすべくその得物を振り上げる。そして大上段から渾身の一撃を振り下ろす。
合わせるかのように、そこにいたオウカも仮面の導きに従って操作した。するとマテリアルがエネルギーに変換され、一条の光となって人形へと突き進む。
さらにケイルカもじっと人形を見つめ、意識を集中していた。マテリアルが彼女の体を巡る。それを送り出すように呪文を一つ唱えると、轟々と燃え盛る火球が生まれ、それが人形へと向かっていった。
竜頭と斬撃と光線と火球、四つが重なり人形の懐で爆発する、そう思われた時だった。不意に人形の姿が掻き消えた。後に残るのは何もない空間。そこで爆発音が鳴ったかと思うと、あとはビットから放たれる銃声だけが辺りに聞こえる。
だが、これはハンター達の狙いだった。テレポートして逃げたということは、すなわちあの後放たれるはずだった強力な一撃を打ち切らせたということだ。機械のように正確に攻撃と防御を行うデウスエクスマキナは、同時に機械のように規定の動きしか取れないのであった。
「どちらに映った?」
「両方だ」
テレポートの瞬間、鏡に集中していたオウカにアーサーがそう一言尋ねる。それで承知したとばかりに、彼はせわしなく動く鏡を追いかける。それを見てオウカもまたもう一枚の鏡を追いかける。
「そっちに行くぞ」
アーサーは走りながらトラックに向けて指示を伝える。
そして程なくして人形は再び姿を表した。その時、同時にアーサーの剣がその腕に叩き付けられていた。その時近くに居たはずのトラックはエンジン音を響かせながら急発進し、すでに別の場所へと動いた後だった。
「どういうこと?」
地面に降りてからオウカに従って走り、そのまま鏡にマテリアルを込めたチャクラムを投げつけていたリリアが尋ねていた。それに対しアーサーは人形の攻撃を捌きながら手短に説明する。
「要はこの鏡は転移門なんだ。どちらかの鏡の中へ飛び込んで、どちらかの鏡から飛び出してくる。おそらく鏡の中にはビットが詰まってるんだろう」
「便利な鏡ね……。あたしも利用してみたいのよ」
素直に感想を漏らすリリア。そしてオウカは
「やはり、キーとなるのは鏡、か」
そう短くつぶやいていた。
●
種がわかった手品なら、それを打ち破るのは容易い。ハンター達は鏡に対して集中攻撃を加える。ケイルカが何発もファイアーボールを打ち込み、オウカとリリアも攻撃を続ける。相当頑丈にできているらしく、なかなか破壊の兆しは見えないが、それでも鏡に攻撃を集めていた。
しかし、この戦場にいるもう一つの敵、ビットがそれを許さなかった。Jは高温ゆえ白く輝く炎を放ってビットを焼き払っていくが、鏡から次々と現れていく。
そして不運は不意に訪れた。火球を放ったケイルカ、その急所、心臓めがけ銃弾が突き進む。それはピンポイントで彼女の胸を貫き、その生命の灯火を吹き消す、そう思われた。
「光りの神よ、彼女にご加護を与えたまえ。困難に立ち向かう力を与えたまえ」
彼女の命運はここで尽きるはずだった。だが、友の祈りが奇跡をもたらした。弾丸に撃ちぬかれながらも、ケイルカは確かにそこに立っていた。
「無理しないでね」
そんなケイルカを心配しつつ、涼子は人形を撃っていた拳銃を仕舞い両手を構えて呼吸を一つ行う。そして裂帛の気合とともに両腕を突き出すと、青く輝く光線が放たれ一気に二つのビットを撃ちぬいた。
一方別のビットは人形の周りを外れ、退避したトラックを追いかけるように進んできた。どこまでビットが、人形が敵を認識しているのか、それはわからない。辺りにただ銃弾をばら撒く。だが、そのうちの何発はトラックを、そして魔導砲を捉えようとしていた。
「種馬を……舐めんじゃねえよってな!!」
弾丸を回避するためトラックが急旋回を切る。それによりかかるGに意識を持って行かれそうになりながら、キーは踏みとどまると銃の照準を合わせる。肩に当てたストックの部分に力を入れ、銃身がぶれないように固定するとトリガーを引き絞った。
軽快な音とともに魔導銃の先端から鉛弾が連続発射される。それはビットの体を二発、三発と捉え、そしてそれを爆発四散させた。
その時、人形は再び動きを変えた。瘴気が集まる感覚がもう一度訪れる。それに気づいたキーは再びハンター達に指示を出す。もう一度高火力の攻撃を集めテレポートを誘発させようとするハンター達。だが、先ほどとはほんの少しずつタイミングがずれていた。あちこちを飛び回るビットにより邪魔されたことにより生じた遅れ。このままでも間に合うかもしれない。しかし、それは100%の保証は無い。ならば。
Jは輝く竜を生み出しながら、トラックに指示を出していた。その言葉にヒズミが動く。大きな人形の、“大体居る辺り”という大きな範囲へ向け撃ちこむことなど彼にとっては目をつぶっていてもできるほど容易いことだった。
一切の躊躇なくトリガーを引く。迸るエネルギーの筋が一瞬で走る。その光線は人形に当たらなかった。だが、それで良かった。再び人形は姿を消していた。いや、鏡の中に身を潜めただけだった。もう人形の手の内はすべて明らかになっていた。その事を知らないのはただ人形のみだった。
再び鏡から躍り出た人形の目にもし映っていたのだとしたら、それは大剣を手に空を駆ける一人の男であっただろう。姿を表した人形へと飛び込んでいったアーサーの剣が人形の腕に食い込み、とうとう切り落とした。
そしてこれにより、ハンター達はただ鏡を破壊することに集中ができるようになった。
リリアがもう一度投げつけたチャクラムが、とうとう鏡に一筋のひびを作る。そこにケイルカが生み出した火球が迫る。それが鏡面の前で爆発する。その爆風はひびを押し広げていく。そして爆発が終わり、火が晴れた時、彼女の魔法は鏡を粉々に砕き割っていた。
もう一枚の鏡に対しては、後方に回り込んでいた涼子がもう一度、龍が翔び咬みつくかの如き一撃を放つ。それにより吹き飛ばされた鏡の中央に、正確に何度も撃ち込まれていたオウカの機動砲が当たる。それは雨だれが石に穴を開けるかのごとく、鏡をとうとう穿ち、叩き割っていたのだった。
腕を失っていた人形は、それでも付け根から三度瘴気による光線を放とうとしていた。砲身が短くなった分威力の集約は鈍るだろうが、それでもハンター達は焼き払えるという判断か、そのような判断もできずただ機械的に動いているのか。
「さあ、こっちを向きなさいよ。こっ、これくらいどうってこと……ないわよっ」
ケイルカは最後の一手のための隙を作るため、最大魔力の火球を放ち人形の意識をこちらに向かせようとする。それに気づいてか、気付かずか、体ごと砲身を向けた時だった。
「ロックオン……チェックメイト、デスヨ」
キーの指示を受けてハンター達が左右に別れる。その間を花道として、魔導砲が放たれた。ヒズミの狙いは寸分違わず人形のどまんなかを貫いた。そして光線が通り過ぎた後、もはや自重に耐えられなくなったそれは崩れ落ち、バラバラになって地面に散らばっていた。
●
任務を無事に終わらせ、帰還すべくハンター達はトラックに乗り込む。試作品の魔導砲は使い物にならなくなってしまったが、これだけでこの戦果を挙げれたのだ。お釣りが来るぐらいだ。
そんな中、キーは歪虚側の狙いを知るべく残骸を拾い集めていた。
「大体この手の粗雑なやつは試作品って相場が決まってんだが……いや、なんでそう思うんだ俺?」
彼の集めた情報は人類側に蓄積され、敵の狙いを知る助けとなるのだろうが、それはまだ先の話だ。今は傷ついた体を休めるのが先だ。ハンター達を乗せてトラックは再び荒野を走りだした。
荒野を魔導トラックが土煙を上げながら走っていた。程なくして目的地が姿を現した。
「お……大きいわね。たしかに機械人形の神様ね」
ケイルカ(ka4121)は馬で並走しながらそう漏らす。高さは7、8メートル、見上げんばかりに大きい姿は土埃が舞うこの場所でも見間違うわけがない。
「北伐は面倒な敵のオンパレードね。デウスエクスマキナか。歪虚王のハヴァマールに比べたら随分理性的なほうね」
もう一方で同じく馬で並走していた烏丸 涼子 (ka5728)はそうつぶやいていた。目標の周りには球体のビットと称される敵が四体、そして付き従うかのように浮かぶ鏡が二枚。これらも同時に相手しなければならない。
「ご都合主義(デウスエクスマキナ)な……こっちのこのデカブツも、充分ユニークなご都合主義な気がするけどな」
「ああ、褒められたもんじゃねぇぜ、その手法はよ。都合の良い神なんぞに頼らず、地に足付けねぇとな」
荷台のなかでキー=フェイス(ka0791)とアーサー・ホーガン(ka0471)がそう会話を交わしていた。サルヴァトーレ・ロッソが浮上し、CAMの実戦投入が可能になったタイミングでのこの敵。そのサイズもCAMとほぼ同じ。それはCAMを用い逆襲を狙う人類側に対し、ご都合主義的に歪虚が用意した武器とも捉えられる。
しかも“機械仕掛けの神”の名の通り、きっちりとコントロールされた動きを見せる敵のようだ。揺さぶりは意味を為さない。やっかいだが、向かうハンター達はその動きを逆に利用することを考えていた。そうして立てた作戦を元に、ハンター達は動き始める。
「意外とあっさり勝てますよーに、なの」
リリア・ノヴィドール(ka3056)が荷台を出てターゲット目掛け向かっていく。それに続き荷台を降りていくハンター達。
「頑張るわよ。じゃないと追いつけないんだから!」
ケイルカは自分がハンターになるきっかけとなった幼なじみの姿を思い浮かべながら、そう決意を固めた。
「神の名を冠するに足る強さを期待するぜ。見かけ倒しで終わってくれるなよ?」
アーサーはそんな軽口を叩きながら、向かっていった。
「生憎と、信奉する神は間に合っている。早々に、消えろ」
そして最後に荒野に降り立ったオウカ・レンヴォルト(ka0301)がデウスエスクマキナの巨体を見上げながら、そう口の中で転がした。
●
「さあ、猫ちゃん、出ておいで。私達の出番が来たわよ」
そのケイルカの言葉と共に、幻影の猫が姿を表し彼女の肩へと乗った。それと同時に詠唱される呪文。その言葉が唱え終えられると、風が彼女たちの周囲を舞い、その身に纏わせる。そして彼女の動きは、まるで猫を思わせるかのようなしなやかで素早い物へと変わっていった。
その頃、オウカは人形へと向かって突き進んでいたが、やおらその歩みを止めた。仮面越しに居並ぶ敵を見る。視線は一瞬だけ人形を見ると、その周囲を巡らせる。そこには鏡が2枚にビットが一つ。それらに集中すると視界に文字が浮かぶ。
オウカはその文字に従って仮面を操作する。これはただの仮面に見えるが、その正体は技術の粋を尽くした魔導機械である。果たして、彼の目の前に光り輝く三角形が現れたかとその頂点から光が走る。3本の光は2枚の鏡と1つのビット、それを貫いた。
光が駆け抜けた後に残ったのは大きく損傷したビットと、傷が見えない鏡。どうやらこの鏡は相当頑丈に作られているらしい。オウカはそのことを気に留めつつ、意識を人形に集中する。すると人形はその身を滑らせ、こちらに向かって殴りかかってきた。なるほど、鏡を守るために速やかに敵を排除する。そのようにコントロールされているらしい。
だが、その拳はオウカに届くことはなかった。両者の間に身を割り込ませたアーサーがその巨剣で拳を受け止める。大きな質量を伴って繰り出される拳はズズッ、と彼の身体を沈める。だがその重さをかけるだけの一撃は両足で地にしっかりと立っている彼にとっては捌くことなど容易いことだった。
「失礼するわ、なの!」
そして、逆側からはリリアが飛び込んできた。彼女は軽い身のこなしてで飛び、人形の拳が届かない位置、すなわち人形そのものの身体に着地した。そのまま器用にバランスを取ると、チャクラムにマテリアルを込めて放つ。カーブを描き飛んだそれがビットを切り裂きながら鏡にぶつかる。
そこから少し離れた位置にJ(ka3142)が立っていた。彼女の眼鏡にはハンター達と、それに攻撃を加える人形の姿が映る。だが、それより目についたのは銃弾をばら撒いているビット達であった。あっという間に一つ破壊し終えたが、すぐさま鏡からビットが飛び出してハンター達を傷つける。その姿を見て素早く杖を操作する。
「穿て、瞬光」
その彼女の短い言葉と同時に、三本の光がビット達を焼く。
一方、トラックの荷台の上で、キーが双眼鏡を覗いていた。把握した戦場の様子をトランシーバーで素早く伝えていく。
「『刀を弾き倒す狙撃』と比較すると今回は大きな的デスネェ。ガ、弾数の制限アリ。コレはスナイパーとして燃えない訳がアリマセン」
そんな中もう一人、荷台に陣取っていたヒズミ・クロフォード(ka4246)がスコープを覗いていた。彼の仕事はずばり、魔導砲の砲手である。失敗の許されない状況に襲い来るプレッシャーをむしろ心地よく感じながら、いつでも撃てるようにトリガーに指を当て、じっと息を止めその時を待っていた。
「ちなみにだけど、銃を覚える気はある?」
そしてもう一人、馬にまたがりトラックの側に居た涼子が運転席のイバラキに話しかける。
「アタシにはこの拳で十分さ」
「便利よ。趣味じゃないと思うけど」
「ああ、そうだな。趣味じゃない」
格闘士同士気が合うのか、軽口を交わした後涼子は手綱を引いた。馬は荒野を駆け人形へと一直線に走っていく。そのまま拳銃を片手で構え、照準を人形に向けていた。
「まあ……趣味じゃないけど」
そして放たれる銃弾が、人形の腕に食い込む。そこに人形の攻撃を捌いていたアーサーが素早く剣を回し、反撃の人達を腕に食らわせた。人形は大きな動きを見せる様子はない。強力な攻撃にテレポートをするという事だったが、これらは“強力な攻撃”では無いらしい。ならば、と二人は腕の一点に狙いを絞り、集中攻撃を加えていた。
●
その時、最初に気づいたのはキーであった。交戦しているハンター達と取り巻きの中、人形の周囲で空気が動いたような感触があった。そして瘴気が少しずつ集まっていくのが見える。これは……すかさずトランシーバー越しに人形の元に居るハンター達に状況を伝える。
Jがその状況を把握したのと、キーからの指示を聞いたのは同じタイミングだった。そして彼女はすぐさま反応する。
「穿て、龍光」
その短い言葉とともに現れた光の竜頭、それが絡みあうように人形へと飛んで行く、その動きに合わせてハンター達が動く。アーサーはすかさず防御を軸とした構えを解き、一気の攻めをすべくその得物を振り上げる。そして大上段から渾身の一撃を振り下ろす。
合わせるかのように、そこにいたオウカも仮面の導きに従って操作した。するとマテリアルがエネルギーに変換され、一条の光となって人形へと突き進む。
さらにケイルカもじっと人形を見つめ、意識を集中していた。マテリアルが彼女の体を巡る。それを送り出すように呪文を一つ唱えると、轟々と燃え盛る火球が生まれ、それが人形へと向かっていった。
竜頭と斬撃と光線と火球、四つが重なり人形の懐で爆発する、そう思われた時だった。不意に人形の姿が掻き消えた。後に残るのは何もない空間。そこで爆発音が鳴ったかと思うと、あとはビットから放たれる銃声だけが辺りに聞こえる。
だが、これはハンター達の狙いだった。テレポートして逃げたということは、すなわちあの後放たれるはずだった強力な一撃を打ち切らせたということだ。機械のように正確に攻撃と防御を行うデウスエクスマキナは、同時に機械のように規定の動きしか取れないのであった。
「どちらに映った?」
「両方だ」
テレポートの瞬間、鏡に集中していたオウカにアーサーがそう一言尋ねる。それで承知したとばかりに、彼はせわしなく動く鏡を追いかける。それを見てオウカもまたもう一枚の鏡を追いかける。
「そっちに行くぞ」
アーサーは走りながらトラックに向けて指示を伝える。
そして程なくして人形は再び姿を表した。その時、同時にアーサーの剣がその腕に叩き付けられていた。その時近くに居たはずのトラックはエンジン音を響かせながら急発進し、すでに別の場所へと動いた後だった。
「どういうこと?」
地面に降りてからオウカに従って走り、そのまま鏡にマテリアルを込めたチャクラムを投げつけていたリリアが尋ねていた。それに対しアーサーは人形の攻撃を捌きながら手短に説明する。
「要はこの鏡は転移門なんだ。どちらかの鏡の中へ飛び込んで、どちらかの鏡から飛び出してくる。おそらく鏡の中にはビットが詰まってるんだろう」
「便利な鏡ね……。あたしも利用してみたいのよ」
素直に感想を漏らすリリア。そしてオウカは
「やはり、キーとなるのは鏡、か」
そう短くつぶやいていた。
●
種がわかった手品なら、それを打ち破るのは容易い。ハンター達は鏡に対して集中攻撃を加える。ケイルカが何発もファイアーボールを打ち込み、オウカとリリアも攻撃を続ける。相当頑丈にできているらしく、なかなか破壊の兆しは見えないが、それでも鏡に攻撃を集めていた。
しかし、この戦場にいるもう一つの敵、ビットがそれを許さなかった。Jは高温ゆえ白く輝く炎を放ってビットを焼き払っていくが、鏡から次々と現れていく。
そして不運は不意に訪れた。火球を放ったケイルカ、その急所、心臓めがけ銃弾が突き進む。それはピンポイントで彼女の胸を貫き、その生命の灯火を吹き消す、そう思われた。
「光りの神よ、彼女にご加護を与えたまえ。困難に立ち向かう力を与えたまえ」
彼女の命運はここで尽きるはずだった。だが、友の祈りが奇跡をもたらした。弾丸に撃ちぬかれながらも、ケイルカは確かにそこに立っていた。
「無理しないでね」
そんなケイルカを心配しつつ、涼子は人形を撃っていた拳銃を仕舞い両手を構えて呼吸を一つ行う。そして裂帛の気合とともに両腕を突き出すと、青く輝く光線が放たれ一気に二つのビットを撃ちぬいた。
一方別のビットは人形の周りを外れ、退避したトラックを追いかけるように進んできた。どこまでビットが、人形が敵を認識しているのか、それはわからない。辺りにただ銃弾をばら撒く。だが、そのうちの何発はトラックを、そして魔導砲を捉えようとしていた。
「種馬を……舐めんじゃねえよってな!!」
弾丸を回避するためトラックが急旋回を切る。それによりかかるGに意識を持って行かれそうになりながら、キーは踏みとどまると銃の照準を合わせる。肩に当てたストックの部分に力を入れ、銃身がぶれないように固定するとトリガーを引き絞った。
軽快な音とともに魔導銃の先端から鉛弾が連続発射される。それはビットの体を二発、三発と捉え、そしてそれを爆発四散させた。
その時、人形は再び動きを変えた。瘴気が集まる感覚がもう一度訪れる。それに気づいたキーは再びハンター達に指示を出す。もう一度高火力の攻撃を集めテレポートを誘発させようとするハンター達。だが、先ほどとはほんの少しずつタイミングがずれていた。あちこちを飛び回るビットにより邪魔されたことにより生じた遅れ。このままでも間に合うかもしれない。しかし、それは100%の保証は無い。ならば。
Jは輝く竜を生み出しながら、トラックに指示を出していた。その言葉にヒズミが動く。大きな人形の、“大体居る辺り”という大きな範囲へ向け撃ちこむことなど彼にとっては目をつぶっていてもできるほど容易いことだった。
一切の躊躇なくトリガーを引く。迸るエネルギーの筋が一瞬で走る。その光線は人形に当たらなかった。だが、それで良かった。再び人形は姿を消していた。いや、鏡の中に身を潜めただけだった。もう人形の手の内はすべて明らかになっていた。その事を知らないのはただ人形のみだった。
再び鏡から躍り出た人形の目にもし映っていたのだとしたら、それは大剣を手に空を駆ける一人の男であっただろう。姿を表した人形へと飛び込んでいったアーサーの剣が人形の腕に食い込み、とうとう切り落とした。
そしてこれにより、ハンター達はただ鏡を破壊することに集中ができるようになった。
リリアがもう一度投げつけたチャクラムが、とうとう鏡に一筋のひびを作る。そこにケイルカが生み出した火球が迫る。それが鏡面の前で爆発する。その爆風はひびを押し広げていく。そして爆発が終わり、火が晴れた時、彼女の魔法は鏡を粉々に砕き割っていた。
もう一枚の鏡に対しては、後方に回り込んでいた涼子がもう一度、龍が翔び咬みつくかの如き一撃を放つ。それにより吹き飛ばされた鏡の中央に、正確に何度も撃ち込まれていたオウカの機動砲が当たる。それは雨だれが石に穴を開けるかのごとく、鏡をとうとう穿ち、叩き割っていたのだった。
腕を失っていた人形は、それでも付け根から三度瘴気による光線を放とうとしていた。砲身が短くなった分威力の集約は鈍るだろうが、それでもハンター達は焼き払えるという判断か、そのような判断もできずただ機械的に動いているのか。
「さあ、こっちを向きなさいよ。こっ、これくらいどうってこと……ないわよっ」
ケイルカは最後の一手のための隙を作るため、最大魔力の火球を放ち人形の意識をこちらに向かせようとする。それに気づいてか、気付かずか、体ごと砲身を向けた時だった。
「ロックオン……チェックメイト、デスヨ」
キーの指示を受けてハンター達が左右に別れる。その間を花道として、魔導砲が放たれた。ヒズミの狙いは寸分違わず人形のどまんなかを貫いた。そして光線が通り過ぎた後、もはや自重に耐えられなくなったそれは崩れ落ち、バラバラになって地面に散らばっていた。
●
任務を無事に終わらせ、帰還すべくハンター達はトラックに乗り込む。試作品の魔導砲は使い物にならなくなってしまったが、これだけでこの戦果を挙げれたのだ。お釣りが来るぐらいだ。
そんな中、キーは歪虚側の狙いを知るべく残骸を拾い集めていた。
「大体この手の粗雑なやつは試作品って相場が決まってんだが……いや、なんでそう思うんだ俺?」
彼の集めた情報は人類側に蓄積され、敵の狙いを知る助けとなるのだろうが、それはまだ先の話だ。今は傷ついた体を休めるのが先だ。ハンター達を乗せてトラックは再び荒野を走りだした。
依頼結果
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サポート一覧
依頼相談掲示板 | |||
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質問卓 オウカ・レンヴォルト(ka0301) 人間(リアルブルー)|26才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/12/14 18:27:32 |
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機械仕掛けの神様なんて退治! ケイルカ(ka4121) エルフ|15才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/12/15 08:12:13 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/12/12 00:30:53 |