ゲスト
(ka0000)
朱の世界のクリスマス
マスター:四月朔日さくら

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~5人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/12/19 12:00
- 完成日
- 2015/12/27 23:54
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
クリムゾンウェストにだって、十二月はやってくる。
寒くて、手もかじかんでしまうけれど、それでも少しうきうきする季節が。
ヤマシナ学院――リアルブルーの学院長を中心に、リアルブルー形式のカリキュラムを組んでいる、実験的な学校だ。
学校といっても通う生徒は老若男女様々で、つまりやる気のある生徒が集まっていると考えてくれるといい。そして、その生徒の半数以上がリアルブルー出身者だった。
サルヴァトーレ・ロッソの転移に巻き込まれた者、その前後に転移してきた者、素性は様々だが、そんな子どもたちが多く在籍している。
そして彼らは同時に、「親と離ればなれになっている」ということが多いのもまた事実だった。
●
「クリスマス?」
不思議そうに尋ねるのは、辺境からやってきたファナ。
クリムゾンウェストにもクリスマス相当のイベントは存在するが、それは主にエクラの信者達のイベントで、辺境育ちな上に記憶の一部が欠落しているファナには耳慣れないイベントらしい。
「二十四日の夜にサンタクロースって言うおじいさんがプレゼントを配りにやってきたり、美味しいご馳走を食べたりするイベントなんだ!」
リアルブルー出身の同級生達は、目を輝かせて説明する。
「学院でもクリスマスパーティを企画しているみたいだから、楽しんだらいいんじゃないかな? 信仰とかに関係なく、イベントとして考えればいいと思うよ」
同級生達の言葉に、ファナも胸を高鳴らせた。
(クリスマス……なんだか、すごく楽しそう!)
●
「で、今回の依頼はヤマシナ学院で行なわれるクリスマスパーティでの参加者、ですか」
オフィスの受付嬢が依頼書を見て頷いた。
「はい。リアルブルー由来のクリスマスを知るハンターたちにも手伝ってもらいたいなと思いまして。むろん、クリムゾンウェスト出身の方にも楽しんでいただけたら、こちらとしても文句なしですし」
学院長のヤマシナ氏は、そう言って微笑む。リアルブルーでも教鞭を執っていたというヤマシナ氏は、この学院からリアルブルーとクリムゾンウェスト、両方の知識とのびのびした発想力を持った生徒が出現することを切に望んでいた。
きっとそう言う生徒こそが、将来的に世界を引っ張っていけるだけの力を持っていると思っているから。
「なるほど、クリスマスパーティでサンタに扮したり、生徒と同じ目線で楽しんだり、そう言うスタイルと認識してよろしいですか?」
「そうですね、生徒にもハンターさんたちにも楽しんで貰えるパーティという形式で、楽しみたいところです」
ヤマシナ氏はハンターの支援も依頼の形でしばしば行なっている。たしかにこういう依頼ならば、多少怪我をしていても楽しめるだろう。
「では、よろしくお願いしますね」
ヤマシナ氏はそう言って、小さく頭を下げた。
クリムゾンウェストにだって、十二月はやってくる。
寒くて、手もかじかんでしまうけれど、それでも少しうきうきする季節が。
ヤマシナ学院――リアルブルーの学院長を中心に、リアルブルー形式のカリキュラムを組んでいる、実験的な学校だ。
学校といっても通う生徒は老若男女様々で、つまりやる気のある生徒が集まっていると考えてくれるといい。そして、その生徒の半数以上がリアルブルー出身者だった。
サルヴァトーレ・ロッソの転移に巻き込まれた者、その前後に転移してきた者、素性は様々だが、そんな子どもたちが多く在籍している。
そして彼らは同時に、「親と離ればなれになっている」ということが多いのもまた事実だった。
●
「クリスマス?」
不思議そうに尋ねるのは、辺境からやってきたファナ。
クリムゾンウェストにもクリスマス相当のイベントは存在するが、それは主にエクラの信者達のイベントで、辺境育ちな上に記憶の一部が欠落しているファナには耳慣れないイベントらしい。
「二十四日の夜にサンタクロースって言うおじいさんがプレゼントを配りにやってきたり、美味しいご馳走を食べたりするイベントなんだ!」
リアルブルー出身の同級生達は、目を輝かせて説明する。
「学院でもクリスマスパーティを企画しているみたいだから、楽しんだらいいんじゃないかな? 信仰とかに関係なく、イベントとして考えればいいと思うよ」
同級生達の言葉に、ファナも胸を高鳴らせた。
(クリスマス……なんだか、すごく楽しそう!)
●
「で、今回の依頼はヤマシナ学院で行なわれるクリスマスパーティでの参加者、ですか」
オフィスの受付嬢が依頼書を見て頷いた。
「はい。リアルブルー由来のクリスマスを知るハンターたちにも手伝ってもらいたいなと思いまして。むろん、クリムゾンウェスト出身の方にも楽しんでいただけたら、こちらとしても文句なしですし」
学院長のヤマシナ氏は、そう言って微笑む。リアルブルーでも教鞭を執っていたというヤマシナ氏は、この学院からリアルブルーとクリムゾンウェスト、両方の知識とのびのびした発想力を持った生徒が出現することを切に望んでいた。
きっとそう言う生徒こそが、将来的に世界を引っ張っていけるだけの力を持っていると思っているから。
「なるほど、クリスマスパーティでサンタに扮したり、生徒と同じ目線で楽しんだり、そう言うスタイルと認識してよろしいですか?」
「そうですね、生徒にもハンターさんたちにも楽しんで貰えるパーティという形式で、楽しみたいところです」
ヤマシナ氏はハンターの支援も依頼の形でしばしば行なっている。たしかにこういう依頼ならば、多少怪我をしていても楽しめるだろう。
「では、よろしくお願いしますね」
ヤマシナ氏はそう言って、小さく頭を下げた。
リプレイ本文
●
「クリスマス、って、あのきらきらしてて、プレゼントが貰えて、とてもきれいな、あの日のこと? それにちなんだパーティ、しかもリアルブルーのパーティなんて……わくわくしすぎて、どうにかなっちゃいそう……!」
瞳を輝かせながらそう言っているのは、エティ・メルヴィル(ka3732)。まだまだ幼さの残る彼女の目標は友達作り。ヤマシナ学院というリベラルな学舎であれば、あるいはそう言う友を見つけることもできるかも知れない……そう考えると、少女の胸はまたどきどきと弾む。
「……なるほど、クリスマスパーティですか」
そう言って頷くのはアデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)。舞桜守 巴(ka0036)に誘われ、時音 ざくろ(ka1250)とともにこの依頼を引き受けたわけだが、ぶっちゃけこの三人の関係は説明するのがややこしくなりそうなので若干割愛する。
まあどちらにしろ、三人は面識もあり、仲もいい。
「でもクリムゾンウェストでクリスマスのお祝いってきくと……なんかこう、すごいですわね」
巴はわずかに目を細める。リアルブルーのクリスマスというのは地域や宗教などでずいぶん雰囲気の変わる行事であったりするのだが、クリムゾンウェストではどうかと言えばこれまたエクラの教えの根付いている地域はともかく、それ以外の地域ではそう言うフェスティバルの一種、と言うとらえ方をしているものもそれなりの数がいるようで、それはちょうどリアルブルーの極東のそれにも似ているのかも知れない。
「アデリシアはクリスマスってわかる?」
ざくろが辺境出身のアデリシアに問うと、
「そのイベントのことはいろいろ伺っていますから大丈夫ですよ」
彼女はそうにっこりと微笑んで見せた。
「でも、ヤマシナ学院の子どもたちにクリスマス……素敵ねぇ」
リアルブルーの子どもたちの多いというヤマシナ学院。リアルブルー出身者ならそれを懐かしむことができるだろうし、クリムゾンウェストの出身者ならリアルブルー形式のクリスマスを楽しむことができるいい機会になる。
カミーユ・鏑木(ka2479)はそう思いながら、周りのハンターにもぱちりとウィンクして見せた。
自分たちももちろん楽しめるだろうが、今回の主役はもちろん子どもたちだ。クリスマスパーティの手伝いというと地味なものから派手なものまで多様に存在するけれど、カミーユが考えているのはどうやら自慢の料理の腕を振るってのライブクッキングらしい。
「荷物持ちとかももちろんやりますよ。クリスマスは運搬物が多いと聞いてますからハンターの出番も多いだろうし……いやぁ、楽しみだなあ」
普段はクリスマスという行事を行なわないというメリエ・フリョーシカ(ka1991)が、楽しそうに笑った。力仕事なら任せろ、と言うタイプの彼女、初めてのクリスマスに想像以上に胸を躍らせている。
(しかし、サンタって言うのは煙突から進入してくるんでしょう? 勇気がありますよねぇ……煤も熱気も恐れないなんて)
若干の認識違いもご愛敬。彼女の実家は鍛冶屋なので、そう言う誤解が生まれているらしい。
「でも、素敵な催しですよね……それに、ヤマシナ学院にまたうかがえるのが、とても楽しみです」
長く白い髪をそっとかき上げながら、シルウィス・フェイカー(ka3492)は感慨深そうにため息をついた。
彼女は以前、ヤマシナ学院で特別講師として講義を行なったことがある。そのときの生徒達は彼女のことを覚えてくれているだろうか。それもまた、胸が高鳴る一因でもあった。
「私は先生方のお手伝いで、子どもたちの面倒を見ようかと思っています。そう言う立ち位置も、必要と思いますし」
クリスマスというイベントで多少羽目を外す人がいるのは事実だが、目も当てられないような状態になってしまっても困る。特に子どもたちが多い環境なので、ある程度の規律を守らせたりするのも、イベントでのマナーという意味ではひとつの勉強になるだろう。
普段の生活とはまったく違う、特別な時間を楽しめるように――シルウィスの願いは、この一言に尽きるのだ。
「でも、こっちの世界でもクリスマスのお祝いってやるんだね。できることがあれば精一杯お手伝いさせてもらうね!」
リアルブルー出身でまだハンターになって間もないシェルミア・クリスティア(ka5955)は、まだまだクリムゾンウェストの行事に興味津々だ。
「うん、わたしもこっちのことを知るいい機会だしね。カミーユさん、料理はわたしも作りたいな」
彼女の頭にあるのは、家族や友人達と行なってきた、リアルブルーでのクリスマス。むろんそれを百パーセント提供できるわけではないが、出来る限りのもてなしはするつもりだ。
「歓迎するわ。折角のパーティですもの、たっぷり用意したいものね♪」
カミーユも楽しそう。
「うちは……飾り付けのお手伝い、やろか」
東方出身でクリスマスをほとんど知らない耀華(ka4866)が、ちらちらと伺うように言う。その手には千代紙で綺麗に作られた折り鶴があり、こんなモノもちょっとしたアクセントになるだろうと思ったらしい。
「力仕事も大事だし、それ以外でも下準備はたくさんあるからね、大歓迎だよ! ざくろたちはサンタさんとか、皆と接する役目を受け持つつもりだけど」
地球にのこしてきた家族をちらりと思い返しつつ、笑顔でそれを振り払うざくろ。
「プレゼントに、衣装に、料理に……本格的なパーティになりそうだな! クリスマスの思い出は大人になった今でもきらきら輝いてるしな……ここの子どもたちにもそうなってくれたらいいなって思う。改めて、今日はよろしくな」
グリムバルド・グリーンウッド(ka4409)が白い歯を見せて笑うと、その場にいたハンターたちも頷き返した。
だって、クリスマスは――誰にとっても特別な日であって欲しいから。
●
パーティの会場は学院の講堂だ。
屋内でのパーティだからこその工夫も、準備の折々で随所に見られる。
折り紙で作った鎖を天井からぶら下げたり、大きな鉢植えのもみの木を持ち込んでめいいっぱい飾り付けたり。
きらきらして楽しいものでいっぱいにして。
それはきっとクリスマスという佳き日をめいいっぱい楽しむためのひとつの方法なのだ。
万が一危険なことがないように、シルウィスもちゃんとサポートしてくれている。そんな彼女を見た生徒達は『エルフの先生!』と嬉しそうにはしゃいでいた。こどもたちはたった一度講義を行なっただけのシルウィスのことを、しっかりと覚えてくれていたのだ。
また、料理のほうだって準備は少しずつ、けれどしっかりとできている。
シェルミアが用意しているのはオードブルにもなる食べやすいカナッペや野菜や果物をふんだんに使ったサラダ。
魚を使ったマリネに、スープは子どもたちの好みに合わせて数種類用意している。
シンプルなコンソメスープ、子どもたちが好きなほんのり甘いコーンスープ、それに具だくさんのミネストローネ。材料は、リゼリオを駆け回って見つけることができた。
それぞれ、たっぷり――とはいってもまあ限度はあるが――用意して、講堂の中に簡易コンロも準備。温かいスープをその場で選べるようにして置いてある。
いっぽうキッチン、と言うか調理室に籠もっているのはグリムバルド。クリスマスの定番とも言えるジンジャーマンクッキーやクリスマスケーキを焼くのに追われている。
ジンジャーブレッドハウスにも挑戦してみた。もっとも、一流の職人のような出来にはまだまだ遠いけれど。
ちなみにケーキについてはシェルミアやカミーユと言った調理メインのメンバーをはじめとするハンターたちの意見をいろいろ採用して、それぞれ生クリームのショートケーキやブッシュ・ド・ノエル、あるいはパネットーネといったクリスマスにちなんだ菓子を準備している。……もっともパネットーネは作るのにそれなりの時間がかかる代物であるのだが。
そしてカミーユは――七面鳥の丸焼き、それもあらかじめ何羽か買っておいて自らさばき、スタッフィングやグレービーソースと言ったものはリアルブルーの地域ごとの特徴を活かしたものを用意するという細かさ。
それに大きな寸胴鍋に入ったクリームシチューはとろとろに野菜や鶏肉のエキスが溶け出して、香りだけでもどきりとさせられる。
更にライブクッキングとしてローストビーフやステーキ、ノンアルコールのカクテルをパーティをやっている生徒達の目の前で披露するという、目も鼻も口も満足させる方法を選んでいる。オーダーにあわせた肉の焼き加減やカクテルの作成など、子どもたちならずとも喜ぶだろう。
「……でも、パーティって本当に凄いですね。子どもたちが楽しみにするって言うのもわかります」
運搬などを担当していたメリエが、準備で既に目を輝かせているほかの仲間たち、そして有志の生徒達の様子を見てにこにこ笑ってみせる。初めてのクリスマスをこうやって過ごせるのは、本当に幸運なことなのだなとしみじみ感じるのだ。
「私はあまりクリスマスとは縁のない生活でしたからね。そのかわり、子どもたちには色んなお話をして上げたいなと思いますよ、ええ」
メリエの瞳も輝いている。
そしてサンタ衣装に身を包んだざくろ、巴、アデリシアの三人が表れた。
「似合ってるかな?」
衣装の確認にきたらしい。
「似合ってるわよー、かわいいサンタさん♪」
カミーユが太鼓判を押す。耀華もクリスマスについてはあまり知識が無いながらも、こっくりと頷いた。
ちなみに学校でのイベントと言うこともあって露出度は控えめ。ざくろの服装は髭こそないが、どちらかというと正統派のサンタ服に近い。女性陣もどちらかというとかわいらしい印象のサンタ服で、これはこれで新しい魅力の発見だ。
「さて、仕度はそろそろ万端かな?」
ざくろが問うと、アデリシアも巴も頷いた。
「料理もだいたいできあがってます!」
シェルミアがとんと胸を叩く。
「飾り付けも大丈夫です!」
メリエがにっこり。
――さあ。
クリスマスパーティの、始まりだ。
●
会場に訪れた生徒達は、目をまん丸くして中央のツリーを見つめている。
「メリークリスマス!」
「メリークリスマス!」
やってくる生徒達にそうやさしく声をかけるのはサンタ装束のハンターたちだ。
子どもたちは目をきらきらと輝かせ、嬉しそうに講堂に入ってくる。
ふんわりただよう、温かなシチューやスープの香り。
ジュウジュウと音を立てて焼かれていく、分厚いステーキ肉。
子どもたちの空きっ腹をそれらはさっそくわしづかみにしたようだ。
いつもはどこかまだ不安そうにしている転移者の子どもや、家屋を歪虚にうばわれたもの――そう言う子どもたちも少なくない――も、今日ばかりは満面の笑顔でさっそく料理を選んでいる。ブッフェスタイルのため、おのおのが食べたいだけの料理を取っていくのもまた嬉しい。
肉ばかりを山のように積み上げる子どももいれば、食べ比べと称してスープを山ほど受け取る子どももいる。
甘いものはもちろん別腹だ。
色とりどりのケーキやクッキー、他にもパイやフルーツポンチなどが用意してあるので、みんながみんな選び放題だ。
そんな中、ヤマシナ学院の生徒であるファナはサラダやカナッペと言った、比較的ローカロリーの食品を選んで更に並べていた。
「あ、ファナさん」
シルウィスが彼の子を見つけると、にっこり笑って近づいた。
「あ、シルウィス先生。以前はありがとうございました」
ファナは礼儀正しくぺこりと挨拶をする。このあたりはおそらく帝国出身のゲルタにもある程度作法を学んだのだろうな、と思わせるきれいな礼だった。
「お友達も増えたみたいで、何よりです」
言われて、ファナも照れくさそうに微笑む。
「そう言って下さる人がいるのも、幸せなんだと、ボクは思うんです」
「そう考えられるのなら、よかった。……そうだ。リアルブルーでは家族でプレゼントを贈り合うクリスマスもあるそうです。いつもお世話になっている方に、贈り物をしては如何ですか?」
シルウィスの提案に、ファナも興味深そうに頷く。
やがて、それじゃあ友達も待っているので、と、ファナは席を外した。それを見て、シルウィスはぽつりと。
「……本当、ずいぶん幸せそうでよかった」
「折角だから、生徒さんにはリアルブルーのクリスマスってどんなものなのか教えて欲しいのです!」
小柄なエティは興味津々そうに生徒達に混じって会話をしている。リアルブルーのクリスマスというのはやはりずいぶん雰囲気も異なるのだろう、と一番わくわくしていたのは何しろエティだから。
リアルブルーのことを知るためにはこちらの知識も、と、エティはクリムゾンウェストならではのイベントや生き物を紹介したりもする。リアルブルーとは勝手が違うことも多く、それらを聞くのも話すのもお互い楽しい、と言うのが隠しきれない。
(……でも、思い出してばかりじゃ少しさびしい、かな)
エティはそうも考える。幼くともハンターとしての自覚はしっかりあるので、傷ついた心の癒し方を頭の片隅で考える。
と、目についたのは大きなクリスマスツリー。
「ね、確かあのおっきな木の上にお星様をつけるんだよね?」
言われてみれば、クリスマスツリー最大の特徴である星は、まだついていない。
「じゃあね、みんなでじゃんけんして! 勝った人を、エティがあの木ののてっぺんに届くようにかかえてジャンプしてあげる!」
ハンターならではの突然のアトラクション。子どもたちはわっと声を上げ、さっそく白熱したじゃんけん大会が始まった。何しろハンターのスキルを実感できるというのだから、人気も集まるというものだ。
そして勝者になったのは、リアルブルー出身という小柄な少女。
「気を付けるけど、こわかったり、なにか危ないことがあったりしたら言ってね?」
そう言って、ジェットブーツを発動させる。
たちまち少女達はツリーのてっぺんにたどり着き、抱えられた少女が嬉しそうに星の飾りをデコレーションした。
ほかの子どもたちも、てっぺんの星では無いけれど、希望者を抱きかかえてツリーのあちこちを飾り付けして。
それまでも十分綺麗だったツリーがいっそうの輝きを放つのが、子どもたちには印象的だったに違いない。
●
宴もたけなわと言ったところで、サンタ服を着たざくろ、巴、そしてアデリシアが、
「改めてみんな、メリークリスマス!」
そう声を上げる。
「サンタさんから、プレゼントだよ!」
巴がそう言って子どもたちに渡すのは、アデリシアが作った焼き菓子やちょっとした玩具、それに今までの冒険で見つけてきた珍しい石や貝殻など。子どもたちの心をちょっとくすぐる、宝物になるはずだ。
なんだかんだと子ども好きでもある巴としては、子どもたちのちょっとした悪戯もある程度は許容範囲。チラ、とざくろを見やるのは、ざくろも巴からすればまだまだ幼さがある、と言う印象があるからだ。
「こうやっていると故郷の教会でも同じように過ごしていたのを思い出しますね……」
アデリシアはにこにこと笑顔を絶やさない。そして、ざくろは。
「ざくろもね、リアルブルーから来たんだ。だから家族に会いたいのはざくろも同じ。だからそのために、リアルブルーへ帰る道を絶対探し出してみせるから、そのときはみんなにも教えに来るからね!」
そしてこれまでの冒険譚をいろいろと話していく。若干の誇張はあるかも知れないが、ざくろにとってはどれもがいい思い出だ。
「クリスマス、ってすごいですね」
感心したように言うメリエ。やはり乞われてハンターの生活を語ったりしていたが、ファナの姿を見つけてにっこり笑った。
「ファナさんは辺境の出身なんでしたっけ? 面白い行事とかって、あります?」
しかし、記憶が曖昧なファナは小さく首を横に振るばかり。
「……覚えて、なくて」
「でも、全部思い出せないってわけじゃないんですよね?」
その言葉には、頷く。基本的な生活習慣や、言葉を忘れてしまった、と言うわけではないから。
「お父さん、言ってました。『忘れたもんは仕方ねぇ、気にせず他のことをやれ』って――まあ、お父さんの場合は物忘れの言い訳ですけど。でも、今と先を大事にするのは良いことですから……大事にして下さいね」
メリエはそう言って微笑む。
「ありがとう」
そう言ったファナの笑顔は、とても優しかった。
やがて、笛の音と、そしてオルガンの音が講堂に響く。クリスマスソングが、皆の心をやさしく包み込んでいった。
●
始まりがあれば終わりもある。
パーティは終わり、今はハンターが中心となって後片付けをしている。
と、ざくろはそっと巴とアデリシアを呼び出し、小さな包みをそれぞれに渡す。
中に入っていたのは、お揃いのサンタクロースのブローチ。
「これは、ざくろからのプレゼント……改めて、メリークリスマス」
言われて女性二人はにっこり微笑む。
「こちらこそメリークリスマス!」
そう、きっとすべての人に。
メリーメリークリスマス!
「クリスマス、って、あのきらきらしてて、プレゼントが貰えて、とてもきれいな、あの日のこと? それにちなんだパーティ、しかもリアルブルーのパーティなんて……わくわくしすぎて、どうにかなっちゃいそう……!」
瞳を輝かせながらそう言っているのは、エティ・メルヴィル(ka3732)。まだまだ幼さの残る彼女の目標は友達作り。ヤマシナ学院というリベラルな学舎であれば、あるいはそう言う友を見つけることもできるかも知れない……そう考えると、少女の胸はまたどきどきと弾む。
「……なるほど、クリスマスパーティですか」
そう言って頷くのはアデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)。舞桜守 巴(ka0036)に誘われ、時音 ざくろ(ka1250)とともにこの依頼を引き受けたわけだが、ぶっちゃけこの三人の関係は説明するのがややこしくなりそうなので若干割愛する。
まあどちらにしろ、三人は面識もあり、仲もいい。
「でもクリムゾンウェストでクリスマスのお祝いってきくと……なんかこう、すごいですわね」
巴はわずかに目を細める。リアルブルーのクリスマスというのは地域や宗教などでずいぶん雰囲気の変わる行事であったりするのだが、クリムゾンウェストではどうかと言えばこれまたエクラの教えの根付いている地域はともかく、それ以外の地域ではそう言うフェスティバルの一種、と言うとらえ方をしているものもそれなりの数がいるようで、それはちょうどリアルブルーの極東のそれにも似ているのかも知れない。
「アデリシアはクリスマスってわかる?」
ざくろが辺境出身のアデリシアに問うと、
「そのイベントのことはいろいろ伺っていますから大丈夫ですよ」
彼女はそうにっこりと微笑んで見せた。
「でも、ヤマシナ学院の子どもたちにクリスマス……素敵ねぇ」
リアルブルーの子どもたちの多いというヤマシナ学院。リアルブルー出身者ならそれを懐かしむことができるだろうし、クリムゾンウェストの出身者ならリアルブルー形式のクリスマスを楽しむことができるいい機会になる。
カミーユ・鏑木(ka2479)はそう思いながら、周りのハンターにもぱちりとウィンクして見せた。
自分たちももちろん楽しめるだろうが、今回の主役はもちろん子どもたちだ。クリスマスパーティの手伝いというと地味なものから派手なものまで多様に存在するけれど、カミーユが考えているのはどうやら自慢の料理の腕を振るってのライブクッキングらしい。
「荷物持ちとかももちろんやりますよ。クリスマスは運搬物が多いと聞いてますからハンターの出番も多いだろうし……いやぁ、楽しみだなあ」
普段はクリスマスという行事を行なわないというメリエ・フリョーシカ(ka1991)が、楽しそうに笑った。力仕事なら任せろ、と言うタイプの彼女、初めてのクリスマスに想像以上に胸を躍らせている。
(しかし、サンタって言うのは煙突から進入してくるんでしょう? 勇気がありますよねぇ……煤も熱気も恐れないなんて)
若干の認識違いもご愛敬。彼女の実家は鍛冶屋なので、そう言う誤解が生まれているらしい。
「でも、素敵な催しですよね……それに、ヤマシナ学院にまたうかがえるのが、とても楽しみです」
長く白い髪をそっとかき上げながら、シルウィス・フェイカー(ka3492)は感慨深そうにため息をついた。
彼女は以前、ヤマシナ学院で特別講師として講義を行なったことがある。そのときの生徒達は彼女のことを覚えてくれているだろうか。それもまた、胸が高鳴る一因でもあった。
「私は先生方のお手伝いで、子どもたちの面倒を見ようかと思っています。そう言う立ち位置も、必要と思いますし」
クリスマスというイベントで多少羽目を外す人がいるのは事実だが、目も当てられないような状態になってしまっても困る。特に子どもたちが多い環境なので、ある程度の規律を守らせたりするのも、イベントでのマナーという意味ではひとつの勉強になるだろう。
普段の生活とはまったく違う、特別な時間を楽しめるように――シルウィスの願いは、この一言に尽きるのだ。
「でも、こっちの世界でもクリスマスのお祝いってやるんだね。できることがあれば精一杯お手伝いさせてもらうね!」
リアルブルー出身でまだハンターになって間もないシェルミア・クリスティア(ka5955)は、まだまだクリムゾンウェストの行事に興味津々だ。
「うん、わたしもこっちのことを知るいい機会だしね。カミーユさん、料理はわたしも作りたいな」
彼女の頭にあるのは、家族や友人達と行なってきた、リアルブルーでのクリスマス。むろんそれを百パーセント提供できるわけではないが、出来る限りのもてなしはするつもりだ。
「歓迎するわ。折角のパーティですもの、たっぷり用意したいものね♪」
カミーユも楽しそう。
「うちは……飾り付けのお手伝い、やろか」
東方出身でクリスマスをほとんど知らない耀華(ka4866)が、ちらちらと伺うように言う。その手には千代紙で綺麗に作られた折り鶴があり、こんなモノもちょっとしたアクセントになるだろうと思ったらしい。
「力仕事も大事だし、それ以外でも下準備はたくさんあるからね、大歓迎だよ! ざくろたちはサンタさんとか、皆と接する役目を受け持つつもりだけど」
地球にのこしてきた家族をちらりと思い返しつつ、笑顔でそれを振り払うざくろ。
「プレゼントに、衣装に、料理に……本格的なパーティになりそうだな! クリスマスの思い出は大人になった今でもきらきら輝いてるしな……ここの子どもたちにもそうなってくれたらいいなって思う。改めて、今日はよろしくな」
グリムバルド・グリーンウッド(ka4409)が白い歯を見せて笑うと、その場にいたハンターたちも頷き返した。
だって、クリスマスは――誰にとっても特別な日であって欲しいから。
●
パーティの会場は学院の講堂だ。
屋内でのパーティだからこその工夫も、準備の折々で随所に見られる。
折り紙で作った鎖を天井からぶら下げたり、大きな鉢植えのもみの木を持ち込んでめいいっぱい飾り付けたり。
きらきらして楽しいものでいっぱいにして。
それはきっとクリスマスという佳き日をめいいっぱい楽しむためのひとつの方法なのだ。
万が一危険なことがないように、シルウィスもちゃんとサポートしてくれている。そんな彼女を見た生徒達は『エルフの先生!』と嬉しそうにはしゃいでいた。こどもたちはたった一度講義を行なっただけのシルウィスのことを、しっかりと覚えてくれていたのだ。
また、料理のほうだって準備は少しずつ、けれどしっかりとできている。
シェルミアが用意しているのはオードブルにもなる食べやすいカナッペや野菜や果物をふんだんに使ったサラダ。
魚を使ったマリネに、スープは子どもたちの好みに合わせて数種類用意している。
シンプルなコンソメスープ、子どもたちが好きなほんのり甘いコーンスープ、それに具だくさんのミネストローネ。材料は、リゼリオを駆け回って見つけることができた。
それぞれ、たっぷり――とはいってもまあ限度はあるが――用意して、講堂の中に簡易コンロも準備。温かいスープをその場で選べるようにして置いてある。
いっぽうキッチン、と言うか調理室に籠もっているのはグリムバルド。クリスマスの定番とも言えるジンジャーマンクッキーやクリスマスケーキを焼くのに追われている。
ジンジャーブレッドハウスにも挑戦してみた。もっとも、一流の職人のような出来にはまだまだ遠いけれど。
ちなみにケーキについてはシェルミアやカミーユと言った調理メインのメンバーをはじめとするハンターたちの意見をいろいろ採用して、それぞれ生クリームのショートケーキやブッシュ・ド・ノエル、あるいはパネットーネといったクリスマスにちなんだ菓子を準備している。……もっともパネットーネは作るのにそれなりの時間がかかる代物であるのだが。
そしてカミーユは――七面鳥の丸焼き、それもあらかじめ何羽か買っておいて自らさばき、スタッフィングやグレービーソースと言ったものはリアルブルーの地域ごとの特徴を活かしたものを用意するという細かさ。
それに大きな寸胴鍋に入ったクリームシチューはとろとろに野菜や鶏肉のエキスが溶け出して、香りだけでもどきりとさせられる。
更にライブクッキングとしてローストビーフやステーキ、ノンアルコールのカクテルをパーティをやっている生徒達の目の前で披露するという、目も鼻も口も満足させる方法を選んでいる。オーダーにあわせた肉の焼き加減やカクテルの作成など、子どもたちならずとも喜ぶだろう。
「……でも、パーティって本当に凄いですね。子どもたちが楽しみにするって言うのもわかります」
運搬などを担当していたメリエが、準備で既に目を輝かせているほかの仲間たち、そして有志の生徒達の様子を見てにこにこ笑ってみせる。初めてのクリスマスをこうやって過ごせるのは、本当に幸運なことなのだなとしみじみ感じるのだ。
「私はあまりクリスマスとは縁のない生活でしたからね。そのかわり、子どもたちには色んなお話をして上げたいなと思いますよ、ええ」
メリエの瞳も輝いている。
そしてサンタ衣装に身を包んだざくろ、巴、アデリシアの三人が表れた。
「似合ってるかな?」
衣装の確認にきたらしい。
「似合ってるわよー、かわいいサンタさん♪」
カミーユが太鼓判を押す。耀華もクリスマスについてはあまり知識が無いながらも、こっくりと頷いた。
ちなみに学校でのイベントと言うこともあって露出度は控えめ。ざくろの服装は髭こそないが、どちらかというと正統派のサンタ服に近い。女性陣もどちらかというとかわいらしい印象のサンタ服で、これはこれで新しい魅力の発見だ。
「さて、仕度はそろそろ万端かな?」
ざくろが問うと、アデリシアも巴も頷いた。
「料理もだいたいできあがってます!」
シェルミアがとんと胸を叩く。
「飾り付けも大丈夫です!」
メリエがにっこり。
――さあ。
クリスマスパーティの、始まりだ。
●
会場に訪れた生徒達は、目をまん丸くして中央のツリーを見つめている。
「メリークリスマス!」
「メリークリスマス!」
やってくる生徒達にそうやさしく声をかけるのはサンタ装束のハンターたちだ。
子どもたちは目をきらきらと輝かせ、嬉しそうに講堂に入ってくる。
ふんわりただよう、温かなシチューやスープの香り。
ジュウジュウと音を立てて焼かれていく、分厚いステーキ肉。
子どもたちの空きっ腹をそれらはさっそくわしづかみにしたようだ。
いつもはどこかまだ不安そうにしている転移者の子どもや、家屋を歪虚にうばわれたもの――そう言う子どもたちも少なくない――も、今日ばかりは満面の笑顔でさっそく料理を選んでいる。ブッフェスタイルのため、おのおのが食べたいだけの料理を取っていくのもまた嬉しい。
肉ばかりを山のように積み上げる子どももいれば、食べ比べと称してスープを山ほど受け取る子どももいる。
甘いものはもちろん別腹だ。
色とりどりのケーキやクッキー、他にもパイやフルーツポンチなどが用意してあるので、みんながみんな選び放題だ。
そんな中、ヤマシナ学院の生徒であるファナはサラダやカナッペと言った、比較的ローカロリーの食品を選んで更に並べていた。
「あ、ファナさん」
シルウィスが彼の子を見つけると、にっこり笑って近づいた。
「あ、シルウィス先生。以前はありがとうございました」
ファナは礼儀正しくぺこりと挨拶をする。このあたりはおそらく帝国出身のゲルタにもある程度作法を学んだのだろうな、と思わせるきれいな礼だった。
「お友達も増えたみたいで、何よりです」
言われて、ファナも照れくさそうに微笑む。
「そう言って下さる人がいるのも、幸せなんだと、ボクは思うんです」
「そう考えられるのなら、よかった。……そうだ。リアルブルーでは家族でプレゼントを贈り合うクリスマスもあるそうです。いつもお世話になっている方に、贈り物をしては如何ですか?」
シルウィスの提案に、ファナも興味深そうに頷く。
やがて、それじゃあ友達も待っているので、と、ファナは席を外した。それを見て、シルウィスはぽつりと。
「……本当、ずいぶん幸せそうでよかった」
「折角だから、生徒さんにはリアルブルーのクリスマスってどんなものなのか教えて欲しいのです!」
小柄なエティは興味津々そうに生徒達に混じって会話をしている。リアルブルーのクリスマスというのはやはりずいぶん雰囲気も異なるのだろう、と一番わくわくしていたのは何しろエティだから。
リアルブルーのことを知るためにはこちらの知識も、と、エティはクリムゾンウェストならではのイベントや生き物を紹介したりもする。リアルブルーとは勝手が違うことも多く、それらを聞くのも話すのもお互い楽しい、と言うのが隠しきれない。
(……でも、思い出してばかりじゃ少しさびしい、かな)
エティはそうも考える。幼くともハンターとしての自覚はしっかりあるので、傷ついた心の癒し方を頭の片隅で考える。
と、目についたのは大きなクリスマスツリー。
「ね、確かあのおっきな木の上にお星様をつけるんだよね?」
言われてみれば、クリスマスツリー最大の特徴である星は、まだついていない。
「じゃあね、みんなでじゃんけんして! 勝った人を、エティがあの木ののてっぺんに届くようにかかえてジャンプしてあげる!」
ハンターならではの突然のアトラクション。子どもたちはわっと声を上げ、さっそく白熱したじゃんけん大会が始まった。何しろハンターのスキルを実感できるというのだから、人気も集まるというものだ。
そして勝者になったのは、リアルブルー出身という小柄な少女。
「気を付けるけど、こわかったり、なにか危ないことがあったりしたら言ってね?」
そう言って、ジェットブーツを発動させる。
たちまち少女達はツリーのてっぺんにたどり着き、抱えられた少女が嬉しそうに星の飾りをデコレーションした。
ほかの子どもたちも、てっぺんの星では無いけれど、希望者を抱きかかえてツリーのあちこちを飾り付けして。
それまでも十分綺麗だったツリーがいっそうの輝きを放つのが、子どもたちには印象的だったに違いない。
●
宴もたけなわと言ったところで、サンタ服を着たざくろ、巴、そしてアデリシアが、
「改めてみんな、メリークリスマス!」
そう声を上げる。
「サンタさんから、プレゼントだよ!」
巴がそう言って子どもたちに渡すのは、アデリシアが作った焼き菓子やちょっとした玩具、それに今までの冒険で見つけてきた珍しい石や貝殻など。子どもたちの心をちょっとくすぐる、宝物になるはずだ。
なんだかんだと子ども好きでもある巴としては、子どもたちのちょっとした悪戯もある程度は許容範囲。チラ、とざくろを見やるのは、ざくろも巴からすればまだまだ幼さがある、と言う印象があるからだ。
「こうやっていると故郷の教会でも同じように過ごしていたのを思い出しますね……」
アデリシアはにこにこと笑顔を絶やさない。そして、ざくろは。
「ざくろもね、リアルブルーから来たんだ。だから家族に会いたいのはざくろも同じ。だからそのために、リアルブルーへ帰る道を絶対探し出してみせるから、そのときはみんなにも教えに来るからね!」
そしてこれまでの冒険譚をいろいろと話していく。若干の誇張はあるかも知れないが、ざくろにとってはどれもがいい思い出だ。
「クリスマス、ってすごいですね」
感心したように言うメリエ。やはり乞われてハンターの生活を語ったりしていたが、ファナの姿を見つけてにっこり笑った。
「ファナさんは辺境の出身なんでしたっけ? 面白い行事とかって、あります?」
しかし、記憶が曖昧なファナは小さく首を横に振るばかり。
「……覚えて、なくて」
「でも、全部思い出せないってわけじゃないんですよね?」
その言葉には、頷く。基本的な生活習慣や、言葉を忘れてしまった、と言うわけではないから。
「お父さん、言ってました。『忘れたもんは仕方ねぇ、気にせず他のことをやれ』って――まあ、お父さんの場合は物忘れの言い訳ですけど。でも、今と先を大事にするのは良いことですから……大事にして下さいね」
メリエはそう言って微笑む。
「ありがとう」
そう言ったファナの笑顔は、とても優しかった。
やがて、笛の音と、そしてオルガンの音が講堂に響く。クリスマスソングが、皆の心をやさしく包み込んでいった。
●
始まりがあれば終わりもある。
パーティは終わり、今はハンターが中心となって後片付けをしている。
と、ざくろはそっと巴とアデリシアを呼び出し、小さな包みをそれぞれに渡す。
中に入っていたのは、お揃いのサンタクロースのブローチ。
「これは、ざくろからのプレゼント……改めて、メリークリスマス」
言われて女性二人はにっこり微笑む。
「こちらこそメリークリスマス!」
そう、きっとすべての人に。
メリーメリークリスマス!
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相談卓 メリエ・フリョーシカ(ka1991) 人間(クリムゾンウェスト)|17才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/12/18 23:17:01 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/12/15 01:28:55 |