ゲスト
(ka0000)
カニカニ・パニック☆
マスター:葉槻

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~7人
- サポート
- 0~7人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2015/12/24 09:00
- 完成日
- 2016/01/06 18:33
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●ある日、町の外れにて
「うー、寒くなって来たねぇ」
「でも今年は去年に比べたらまだ暖かくない? 晴れの日も多いし」
すぐ傍の港町に住む2人の若者が、のんびりと海岸線を歩いていた。
手には釣り道具。今日のお夕飯をゲットすべくやってきたらしい。
「……んー? 何だか、生臭くねぇ?」
「……そうだなぁ……魚が腐ったみたいな……お、おい、アレ」
2人の前には無残に食い散らかされたお魚さんの死骸が、砂浜にうち捨てられていた。
「ったく、誰だよ! ちゃんとゴミは自分達で片付けて行けよな」
「そこじゃねぇだろ! 生だぜ、これ。それがこんな風に食い散らかされてるって、『こんなの絶対おかしいよ!』」
「……何で今、そこだけ裏声にしたん?」
「……察せ」
こんな具合に悪友2人、お魚の残骸に近寄り、「ふむ」と顎に手をやった。
「俺、こーゆー食い方する生き物に心当たりがある」
「マジか。俺さっぱりだわ」
「昔買ってたザリガニがこんな感じだったわ」
「あー! 確かに、ハサミでちまちま抓みながら食うよな、あいつら」
死骸は頭部と骨、尻尾以外の身の柔らかい所ばかりがつつかれたような形で周囲に身を散乱させている。
臭いが立ち始めていると言う事は、昨日から今朝にかけての犯行なのかもしれない。
「……にしても、この魚、結構大きいよな」
「大体60センチぐらいか……いいなぁ、こんな大物釣ってみたいぜ」
「……いや、そうじゃなくて。こんなデカイ得物食うってことは、相手も相当デカイんじゃ……」
そこまで言った1人が、何やら視線に気付いて顔を陸の方へと向けた。
その先は砂浜から緩やかな丘になっており、冬に入ってからは膝丈ぐらいの枯れ草が茂っている。
そこに、黒く輝く二つの球状のナニカを見て、首を傾げた。
「……なぁ? あれって……???」
手の平でひょいひょいと呼ばれて、相方も「ん?」と彼が見ている茂みに目をやる。
その時、『キラーン☆』とその黒い球状のナニカが光った。
同時に、ガサガサガサガサガサガサ!! と、凄い勢いでナニカが横歩きで登場した!
「「……カニーっ!?」」
それは胴体だけで2m×2m、足も含めれば3mぐらいはありそうな大きなカニだった。
しかも、早い。物凄い速さの横歩きで2人に迫ってきた為、2人は一心不乱にダッシュして逃げ出した。
●久しぶりの登場
「……いえ、何だかんだとフランツ伯……フラットさんからの依頼説明で顔出してますよ?」
ハンターオフィス。説明係の女性は心外そうにそう訂正を入れると、こほん、と一つ咳をして気持ちを入れ替えた。
「世間はそれどころじゃないぐらいにとんでも無い事になっていますが、雑魔は待ってくれないようですので、みなさんこちらの解決にもご助力頂ければ幸いです」
つまり、この巨大カニの雑魔を対峙して欲しい、とのことらしい。
「調査しましたところ、このカニ、どうやらまだ雑魔化してそれほど時間が経っていないようで、主食は魚。魚を取りに海に潜る事はありますが、食事は陸で行うようです。現在は、港町の外れの海岸沿いを住処にしているようで、この地域から出る事も今の所ないようです」
ただ、時間の経過共に、得物が魚から人間へ、行動範囲が広くなったり、水陸両用で自由気ままに振る舞い始めたりする可能性は否定できない。
「しかも、定置網に掛かった美味しい旬のお魚を食べているようで、漁師さん達にも被害が出てきています」
餌が手に入りやすく、かつ住み心地のいい場所……という好条件もあって、この巨大カニはここに住み着く事にしたらしい。けしからん。
「行動パターンなどはこちらの用紙に纏めましたので、ご確認下さい。また、今回の雑魔は先ほども言いましたように、雑魔化してからさほど時間が経過していないようなのです」
……つまり。
「上手く死骸を残せば、美味しい巨大カニを食べる事が出来る……かもしれません。みなさん、是非とも頑張って来て下さい」
「おぉーっ!!」と感嘆の声が上がったハンターオフィスで、女性はにっこりと微笑んだ後、丁寧に頭を下げたのだった。
「うー、寒くなって来たねぇ」
「でも今年は去年に比べたらまだ暖かくない? 晴れの日も多いし」
すぐ傍の港町に住む2人の若者が、のんびりと海岸線を歩いていた。
手には釣り道具。今日のお夕飯をゲットすべくやってきたらしい。
「……んー? 何だか、生臭くねぇ?」
「……そうだなぁ……魚が腐ったみたいな……お、おい、アレ」
2人の前には無残に食い散らかされたお魚さんの死骸が、砂浜にうち捨てられていた。
「ったく、誰だよ! ちゃんとゴミは自分達で片付けて行けよな」
「そこじゃねぇだろ! 生だぜ、これ。それがこんな風に食い散らかされてるって、『こんなの絶対おかしいよ!』」
「……何で今、そこだけ裏声にしたん?」
「……察せ」
こんな具合に悪友2人、お魚の残骸に近寄り、「ふむ」と顎に手をやった。
「俺、こーゆー食い方する生き物に心当たりがある」
「マジか。俺さっぱりだわ」
「昔買ってたザリガニがこんな感じだったわ」
「あー! 確かに、ハサミでちまちま抓みながら食うよな、あいつら」
死骸は頭部と骨、尻尾以外の身の柔らかい所ばかりがつつかれたような形で周囲に身を散乱させている。
臭いが立ち始めていると言う事は、昨日から今朝にかけての犯行なのかもしれない。
「……にしても、この魚、結構大きいよな」
「大体60センチぐらいか……いいなぁ、こんな大物釣ってみたいぜ」
「……いや、そうじゃなくて。こんなデカイ得物食うってことは、相手も相当デカイんじゃ……」
そこまで言った1人が、何やら視線に気付いて顔を陸の方へと向けた。
その先は砂浜から緩やかな丘になっており、冬に入ってからは膝丈ぐらいの枯れ草が茂っている。
そこに、黒く輝く二つの球状のナニカを見て、首を傾げた。
「……なぁ? あれって……???」
手の平でひょいひょいと呼ばれて、相方も「ん?」と彼が見ている茂みに目をやる。
その時、『キラーン☆』とその黒い球状のナニカが光った。
同時に、ガサガサガサガサガサガサ!! と、凄い勢いでナニカが横歩きで登場した!
「「……カニーっ!?」」
それは胴体だけで2m×2m、足も含めれば3mぐらいはありそうな大きなカニだった。
しかも、早い。物凄い速さの横歩きで2人に迫ってきた為、2人は一心不乱にダッシュして逃げ出した。
●久しぶりの登場
「……いえ、何だかんだとフランツ伯……フラットさんからの依頼説明で顔出してますよ?」
ハンターオフィス。説明係の女性は心外そうにそう訂正を入れると、こほん、と一つ咳をして気持ちを入れ替えた。
「世間はそれどころじゃないぐらいにとんでも無い事になっていますが、雑魔は待ってくれないようですので、みなさんこちらの解決にもご助力頂ければ幸いです」
つまり、この巨大カニの雑魔を対峙して欲しい、とのことらしい。
「調査しましたところ、このカニ、どうやらまだ雑魔化してそれほど時間が経っていないようで、主食は魚。魚を取りに海に潜る事はありますが、食事は陸で行うようです。現在は、港町の外れの海岸沿いを住処にしているようで、この地域から出る事も今の所ないようです」
ただ、時間の経過共に、得物が魚から人間へ、行動範囲が広くなったり、水陸両用で自由気ままに振る舞い始めたりする可能性は否定できない。
「しかも、定置網に掛かった美味しい旬のお魚を食べているようで、漁師さん達にも被害が出てきています」
餌が手に入りやすく、かつ住み心地のいい場所……という好条件もあって、この巨大カニはここに住み着く事にしたらしい。けしからん。
「行動パターンなどはこちらの用紙に纏めましたので、ご確認下さい。また、今回の雑魔は先ほども言いましたように、雑魔化してからさほど時間が経過していないようなのです」
……つまり。
「上手く死骸を残せば、美味しい巨大カニを食べる事が出来る……かもしれません。みなさん、是非とも頑張って来て下さい」
「おぉーっ!!」と感嘆の声が上がったハンターオフィスで、女性はにっこりと微笑んだ後、丁寧に頭を下げたのだった。
リプレイ本文
●かにかに、どこかに?
マリィア・バルデス(ka5848)は徒歩のメンバーに合わせてのんびりと魔導バイクを押しながらまるで春のような暖かな陽気の海岸を歩く。
「ふむ。迷惑なカニが居ったものよのぅ。ま、雑魔と言えどカニはカニ」
「海のカニか、酒の肴になるかねぇ……」
アルマ(ka3330)の言葉に山里住まいだった百鬼 雷吼(ka5697)は沢ガニぐらいしか見た事も食べたこともない為、今回の巨大カニ、と言われてもイマイチピンと来ない。
それでも参加したのはカニミソを肴に一杯やるためだ。
……来てみたら、自分以外全員女子だったのにはちょっと驚いたが、まぁ、そんなこともあるかと気にしないことにした。
和気藹々とした雰囲気の中、目撃証言のあった現場へ近付くと徐々に生臭さが鼻を突くようになり、確かに砂浜に魚の死骸が食い散らかされて落ちているのを見つけた。
超級まりお(ka0824)はトレードマークの帽子のつばに合わせて右手でひさしを作りながら周囲を見回す。
「カニ肉ちゃ~ん、出ておいで~……お、居た居た♪」
枯れ草の向こう、遠目に見ても握り拳より大きそうな黒いつぶらな瞳と目が合うと、まりおは嬉しそうに笑った。
……その目、確実に得物(食材)を狙う狩人の目ですよね?
「見るからに食べ応えありそうですねー、サッサと倒して食べましょう」
最上 風(ka0891)もカニの姿を見て、おぉ。と感嘆の声を上げる。
……これ、間違いなく市場やなんかで良い食材を見た時の反応と一緒ですよね?
「あの美味しそうな鋏……それに脚。身が詰まってそうなあの甲羅の中身……」
思わずヨダレを垂らしそうになって、慌てて手の甲で拭うアルマ。
……乙女、しっかりして、乙女!
この日の為に簡単な調理を覚えて胃も鍛えてきた華蜂院 蜜希(ka5703)は嬉しそうに右の拳を左の手の平に打ち付けると、腰を落として両腕を軽く開いて構えた。
「おぉ、コレ全部喰って良いのか! っしゃあ! やってやっぜ!」
……とっくみあいする気満々ですか!?
「水属性じゃないと魔導銃になっちゃうのよね……殻に穴をあけないよう気を付けないと」
嬉しそうにマリィアは目を細め、魔導銃にキスを一つ落とす。
カニの雑魔は6人に向かって大きなハサミを振り上げて拘束移動して砂浜へと向かってくる。
「こんなところに住み着いたのが運の尽き。食材に強制ジョブチェンジの時間だよ? ではいただきまー……じゃなくて突撃開始~!!」
まりおのかけ声と共に、とても女性陣とは思えぬ鬨の声が上がり、雷吼はちょっとだけ驚きつつも、冷静に四神護符を構え直した。
●なるべく、身が残るように攻撃しましょうー。
「我を加護する十二の天の将よ、かしこみかしこみ申す」
まず雷吼が二枚の符を使い、禹歩で吉方を示す。
それにより先手を取ったまりおが錐揉み回転しながら鋭く斬り付けていく。
「これでも喰らいなさい!」
風の帽子の目玉がぎょろりと動いた……ような錯覚を一同が感じた直後、その瞳孔に当たる部分から光の弾が生み出される。
それらを直撃しても、その甲羅にはヒビ一つ入っていない。
「流石、甲殻類……硬い!」
光斬刀の柄を握る手が、ジィンと衝撃に痺れ、まりおは思わず右手を放してぶんぶんと振った。
「砂浜を走るのはマシン操作の鍛錬になるわね」
戦闘が始まって、マリィアはすぐに距離を取るべく魔導バイクを走らせていた。
距離を取って、マテリアルを込めて魔導銃を構える。仲間達が戦っている間を縫って、引き金を引いた。
それは確かに胴体に当たったはずだが、この距離からでは小さな変化は分からない。
ならば、倒れるまで撃つだけと、マリィアは再び照準を巨大カニへと合わせる。
「急急如律令」
雷吼が胡蝶符を放つが、それらは立ち上がった脚によって、叩き落とされた。
「破ッ!」
今まで冷静に状況を見据えていた蜜希は、華蜂院流練気法『発勁』を発動させる。
これは華蜂院流の技の一つで、攻撃の動作と気の循環を同調させることで、効率良く攻撃威力の向上を図る物だ。他の格闘士達の間では【練気】と言われる技でもある。
「ねぇぇぇっさぁつ!」
熱殺蜂掌――ネッサツホウショウ。まるで炎のようなオーラがその拳を包み、カニの腹部……いや、腹部と脚の付け根の関節部分(底節)へと掌打を叩き込んだ。
なお、他の格闘士の間では【鎧徹し】と言われる技でもある。
――ぽろっ。
左の第3歩脚が関節から外れて落ちた。
「脚一本もげたー!!」
まりおが嬉しそうに右拳を挙げながらジャンプする。
「……やはり狙うのは関節部分か」
ほぼ身長と変わらないバスターソードを軽々と1度頭上で振り回したアルマは、姿勢を低くしながら巨大カニへと走り込むと、蜜希が落としたのとは反対側の右脚、第4歩脚の中央(長節)から綺麗に切り落とした。
脚を2本失っても、非常に素早くカニは横に移動していく。
「横移動速っ!?」
そして泡をぶわわわわっと周囲に撒き散らした。
マリィア以外の全員が泡まみれとなり、足元は砂のはずなのに、つるつると滑る。
「それでもっ!」
風が生まれたての子鹿のような足取りで神楽鈴を構えると、再び帽子の目から光球を放つ。
マリィアがしっかりと狙いを付けて引き金を引き、雷吼が再び胡蝶符を投げる。
「コレでも喰らえ!」
蜜希が片膝を付いた状態から気功波をぶつけると、ついに、あとハサミを残すだけとなり、カニは腹を見せてひっくり返った。
「人を食べようとした以上当然逆に人に食べられる覚悟ぐらいしてるよね~?」
まりおが強く地面を蹴って、飛び上がると、その腹部――ふんどし、と呼ばれる部分に光斬刀の刃を突き立てたのだった。
●それじゃ町の人たちも呼んでカニの甲羅で鍋パーティと洒落込みましょうか!
そう、港町の人々に声を掛けに言ったマリィアと風だったが、しかし、港町の人々は、雑魔を食す、という行為に恐れをなしたのか、全力でお断りをされた。
「その代わりと言っては何だが……」
町で取れた野菜や魚を無事退治をしてくれたお礼だと持ってきた。
一応最初は断ったのだが、カニだけだと飽きてしまうかも知れないからと、鍋の具材にと言われると断る理由もない。
「では、有り難く戴きます」
「また、何かマグロとか、ホタテとか、エビとかが雑魔化したら呼んで下さいねー?」
マリィアが礼を言う一方で、風が茶化してそう告げると、人々は笑いながら2人を見送ったのだった。
その間に、残った4人で火を起こし、カニの解体を始めていた。
雷吼と蜜希が大きな石を集めて簡易竈を作り、まりおとアルマが解体に勤しむ。
「シンプルに焼きからかのぅ」
鍋にお湯が沸くまでの間に、カニの脚を焼き始める。
カニの身の焼ける良い匂いが周囲に漂い始めた頃、マリィアと風も帰ってきた。
お昼も過ぎて蜜希のお腹がぐぅと高らかに鳴って、朗らかに一同は笑いに包まれた。
「ん」
味見、する? と雷吼が程よく焼けた1番小さな脚の先を蜜希に手渡した。
食欲をそそる香ばしい匂いに蜜希は、「いただきます」と小さく呟いてからドキドキしながら歯を立てた。
「……硬い」
「いや、身だけ食べる物だから」
実はカニを食べるのが始めてだった蜜希は、雷吼に身を取りだして貰って漸く本当に身を口にした。
「……うめー!!」
蜜希の弾けんばかりの笑顔と歓喜の悲鳴に、さらに一同は笑って、次々に焼けたカニの脚へと手を伸ばしていく。
マリィアは焼きガニを軽く頬張った後は手慣れた様子で魚を捌き、野菜を切ると、鍋へと投下していく。
その間に、もう一つの鍋ではシンプルにゆでガニを作って行く。
「味見なら、風にお任せ下さい! 跡形もなくなるまで、味見しますよ?」
「もう少しで、カニもゆであがるから、あっちで待ってて?」
言外に『邪魔をするな』オーラを感じ取った風は、大人しく「はい」と焼きガニに舌鼓を打っている仲間の元へと戻った。
マリィアは皆が狙っていたカニミソもたっぷりあった為、きちんと取り分けてカニ焼き、コロッケへと分けていく。
「お鍋に入れても美味しいと思うんだけどな……」
それだけはNOだと、カニミソを食べたくないとまりおが主張したため、カニミソは食べたい人だけが食べられるようにし、鍋には入れないことになったのだった。
『だって、イメージ的に脳って雑魔化の影響が強そうじゃん』
そうまりおは思っていたが、実はカニミソは『みそ』とはいうが、脳みそではなく『中腸腺』という物で、人間でいうところの『肝臓とすい臓』にあたる臓器であるという事を彼女は知らない。
「うめー!!」
「美味いのう」
「カニミソは酒の肴に最高なんだよ」
カニミソ焼きと東方の酒で盛り上がる蜜希、アルマ、雷吼の3人をちょっとだけ羨ましく思いながらも、まりおは運ばれて来たゆでガニを真っ先に頬張った。
「いただきまーぁぁぁっす♪ ……んほほ、美味しい」
旨味がぎゅっと濃縮されていて、身はぷりぷり、噛めば噛むほどじゅわっとカニのエキスが口に広がる。
二杯酢を少し付けると、これまた程よい酸味と甘みがカニの旨味を更に引き立て、まりおは雑魔化直後の物を食べるという不安がどこかに吹き飛んでいくのを感じた。
「出来たよー」
魚介鍋がどんと中央に置かれ、手作りコロッケが搭乗すると銘々待ってましたと歓声を上げながら箸やフォークをのばした。
「カニエキスが五臓六腑に染み渡りますねー、今生きている感じを実感しますよ」
風が恍惚の表情でほぅ、と息を吐いた。
「あと、まだ鍋に入りきれなかった身をほぐして焼きそばにしようと思うんだけど、食べる?」
「「「「「食べる!!!!!」」」」」
マリィアの問いに、5人の返事が綺麗にハモって、次の瞬間誰ともなしに笑い合う。
一口食べては「うめー!」と笑い、酒をあおっては「まじうめー!」と蜜希は上機嫌だった。
「三杯酢でもミソでもうめぇ! うめーとしかいえねー」
そしてまた酒をぐびびっとあおると、くぅぅ、と噛み締めるように呻いた。
「もったいねぇなぁ。見付けた人とか近所の人とかにも振る舞えないかねぇ? 大勢で分かち合えた方が楽しいのに」
「ある意味珍味だからのぅ」
生理的に受け付けない等、それぞれ事情はあるだろう。
ほろ酔い気分でアルマは鍋のつゆをくぴっと飲み干して、はーっ、と幸せの溜息を吐いた。
なお、身長129センチと小柄で童顔のアルマが酒を手にした時には一同が止めた。
「えーいっ! これでもアルマは立派な大人じゃっ!!」
キーッ! と起こる仕草も子どもらしかった訳だが、話しを聞けばきちんと成人済みらしいと言う事が分かり、5人はドワーフという種族のある意味闇に触れたのだった。
「海のカニも良い味してんなぁ」
実際の海のカニを食べたらまた違うのかも知れないが、これはまた格別の美味さで、雷吼は焼きガニのミソ部分を酒に浸し、溶かして啜りながら満足げに頷いた。
「鋏はアルマが頂きじゃっ! ポン酢でそれはもう美味しく戴いてやるぞ?」
全長1m級のとんでも無く巨大なハサミだった為、じっくりじっくり焼いていたハサミの部分に口を付ける時が漸く来て、アルマは「あつ! あっつい!!」と悲鳴を上げながら、ハサミの殻をバスターソードで切り開いていく。
ぶわぁっと大量の湯気がアルマの顔を包んだ。
その湯気すらも美味しい。そんな気がして、アルマは思いっきりがぶりと身にかぶりついた。
ポン酢などなくとも美味い。カニの身の甘み、旨味、程よい塩味が熱と共に口一杯に広がって、今なら自分の吐く息ですらカニの味がしそうな程、カニの味で全身が満たされていく。
「本格的な料理をせずとも、美味しく食べられるカニと言うものは本当に良いものじゃて」
「ふー! 喰った喰った! 漁師さん達の被害もなくせるし、修行にもなるし、腹も膨れるし大満足だぜ!」
「うむ、美味かった。もうお腹いっぱいじゃ……」
お酒の酔いと満腹感にうとうとし始めたアルマはどこからどう見ても(以下略)
「では、みなさん、手を合わせて」
「「「「「「ごちそうさまでした」」」」」」
マリィア・バルデス(ka5848)は徒歩のメンバーに合わせてのんびりと魔導バイクを押しながらまるで春のような暖かな陽気の海岸を歩く。
「ふむ。迷惑なカニが居ったものよのぅ。ま、雑魔と言えどカニはカニ」
「海のカニか、酒の肴になるかねぇ……」
アルマ(ka3330)の言葉に山里住まいだった百鬼 雷吼(ka5697)は沢ガニぐらいしか見た事も食べたこともない為、今回の巨大カニ、と言われてもイマイチピンと来ない。
それでも参加したのはカニミソを肴に一杯やるためだ。
……来てみたら、自分以外全員女子だったのにはちょっと驚いたが、まぁ、そんなこともあるかと気にしないことにした。
和気藹々とした雰囲気の中、目撃証言のあった現場へ近付くと徐々に生臭さが鼻を突くようになり、確かに砂浜に魚の死骸が食い散らかされて落ちているのを見つけた。
超級まりお(ka0824)はトレードマークの帽子のつばに合わせて右手でひさしを作りながら周囲を見回す。
「カニ肉ちゃ~ん、出ておいで~……お、居た居た♪」
枯れ草の向こう、遠目に見ても握り拳より大きそうな黒いつぶらな瞳と目が合うと、まりおは嬉しそうに笑った。
……その目、確実に得物(食材)を狙う狩人の目ですよね?
「見るからに食べ応えありそうですねー、サッサと倒して食べましょう」
最上 風(ka0891)もカニの姿を見て、おぉ。と感嘆の声を上げる。
……これ、間違いなく市場やなんかで良い食材を見た時の反応と一緒ですよね?
「あの美味しそうな鋏……それに脚。身が詰まってそうなあの甲羅の中身……」
思わずヨダレを垂らしそうになって、慌てて手の甲で拭うアルマ。
……乙女、しっかりして、乙女!
この日の為に簡単な調理を覚えて胃も鍛えてきた華蜂院 蜜希(ka5703)は嬉しそうに右の拳を左の手の平に打ち付けると、腰を落として両腕を軽く開いて構えた。
「おぉ、コレ全部喰って良いのか! っしゃあ! やってやっぜ!」
……とっくみあいする気満々ですか!?
「水属性じゃないと魔導銃になっちゃうのよね……殻に穴をあけないよう気を付けないと」
嬉しそうにマリィアは目を細め、魔導銃にキスを一つ落とす。
カニの雑魔は6人に向かって大きなハサミを振り上げて拘束移動して砂浜へと向かってくる。
「こんなところに住み着いたのが運の尽き。食材に強制ジョブチェンジの時間だよ? ではいただきまー……じゃなくて突撃開始~!!」
まりおのかけ声と共に、とても女性陣とは思えぬ鬨の声が上がり、雷吼はちょっとだけ驚きつつも、冷静に四神護符を構え直した。
●なるべく、身が残るように攻撃しましょうー。
「我を加護する十二の天の将よ、かしこみかしこみ申す」
まず雷吼が二枚の符を使い、禹歩で吉方を示す。
それにより先手を取ったまりおが錐揉み回転しながら鋭く斬り付けていく。
「これでも喰らいなさい!」
風の帽子の目玉がぎょろりと動いた……ような錯覚を一同が感じた直後、その瞳孔に当たる部分から光の弾が生み出される。
それらを直撃しても、その甲羅にはヒビ一つ入っていない。
「流石、甲殻類……硬い!」
光斬刀の柄を握る手が、ジィンと衝撃に痺れ、まりおは思わず右手を放してぶんぶんと振った。
「砂浜を走るのはマシン操作の鍛錬になるわね」
戦闘が始まって、マリィアはすぐに距離を取るべく魔導バイクを走らせていた。
距離を取って、マテリアルを込めて魔導銃を構える。仲間達が戦っている間を縫って、引き金を引いた。
それは確かに胴体に当たったはずだが、この距離からでは小さな変化は分からない。
ならば、倒れるまで撃つだけと、マリィアは再び照準を巨大カニへと合わせる。
「急急如律令」
雷吼が胡蝶符を放つが、それらは立ち上がった脚によって、叩き落とされた。
「破ッ!」
今まで冷静に状況を見据えていた蜜希は、華蜂院流練気法『発勁』を発動させる。
これは華蜂院流の技の一つで、攻撃の動作と気の循環を同調させることで、効率良く攻撃威力の向上を図る物だ。他の格闘士達の間では【練気】と言われる技でもある。
「ねぇぇぇっさぁつ!」
熱殺蜂掌――ネッサツホウショウ。まるで炎のようなオーラがその拳を包み、カニの腹部……いや、腹部と脚の付け根の関節部分(底節)へと掌打を叩き込んだ。
なお、他の格闘士の間では【鎧徹し】と言われる技でもある。
――ぽろっ。
左の第3歩脚が関節から外れて落ちた。
「脚一本もげたー!!」
まりおが嬉しそうに右拳を挙げながらジャンプする。
「……やはり狙うのは関節部分か」
ほぼ身長と変わらないバスターソードを軽々と1度頭上で振り回したアルマは、姿勢を低くしながら巨大カニへと走り込むと、蜜希が落としたのとは反対側の右脚、第4歩脚の中央(長節)から綺麗に切り落とした。
脚を2本失っても、非常に素早くカニは横に移動していく。
「横移動速っ!?」
そして泡をぶわわわわっと周囲に撒き散らした。
マリィア以外の全員が泡まみれとなり、足元は砂のはずなのに、つるつると滑る。
「それでもっ!」
風が生まれたての子鹿のような足取りで神楽鈴を構えると、再び帽子の目から光球を放つ。
マリィアがしっかりと狙いを付けて引き金を引き、雷吼が再び胡蝶符を投げる。
「コレでも喰らえ!」
蜜希が片膝を付いた状態から気功波をぶつけると、ついに、あとハサミを残すだけとなり、カニは腹を見せてひっくり返った。
「人を食べようとした以上当然逆に人に食べられる覚悟ぐらいしてるよね~?」
まりおが強く地面を蹴って、飛び上がると、その腹部――ふんどし、と呼ばれる部分に光斬刀の刃を突き立てたのだった。
●それじゃ町の人たちも呼んでカニの甲羅で鍋パーティと洒落込みましょうか!
そう、港町の人々に声を掛けに言ったマリィアと風だったが、しかし、港町の人々は、雑魔を食す、という行為に恐れをなしたのか、全力でお断りをされた。
「その代わりと言っては何だが……」
町で取れた野菜や魚を無事退治をしてくれたお礼だと持ってきた。
一応最初は断ったのだが、カニだけだと飽きてしまうかも知れないからと、鍋の具材にと言われると断る理由もない。
「では、有り難く戴きます」
「また、何かマグロとか、ホタテとか、エビとかが雑魔化したら呼んで下さいねー?」
マリィアが礼を言う一方で、風が茶化してそう告げると、人々は笑いながら2人を見送ったのだった。
その間に、残った4人で火を起こし、カニの解体を始めていた。
雷吼と蜜希が大きな石を集めて簡易竈を作り、まりおとアルマが解体に勤しむ。
「シンプルに焼きからかのぅ」
鍋にお湯が沸くまでの間に、カニの脚を焼き始める。
カニの身の焼ける良い匂いが周囲に漂い始めた頃、マリィアと風も帰ってきた。
お昼も過ぎて蜜希のお腹がぐぅと高らかに鳴って、朗らかに一同は笑いに包まれた。
「ん」
味見、する? と雷吼が程よく焼けた1番小さな脚の先を蜜希に手渡した。
食欲をそそる香ばしい匂いに蜜希は、「いただきます」と小さく呟いてからドキドキしながら歯を立てた。
「……硬い」
「いや、身だけ食べる物だから」
実はカニを食べるのが始めてだった蜜希は、雷吼に身を取りだして貰って漸く本当に身を口にした。
「……うめー!!」
蜜希の弾けんばかりの笑顔と歓喜の悲鳴に、さらに一同は笑って、次々に焼けたカニの脚へと手を伸ばしていく。
マリィアは焼きガニを軽く頬張った後は手慣れた様子で魚を捌き、野菜を切ると、鍋へと投下していく。
その間に、もう一つの鍋ではシンプルにゆでガニを作って行く。
「味見なら、風にお任せ下さい! 跡形もなくなるまで、味見しますよ?」
「もう少しで、カニもゆであがるから、あっちで待ってて?」
言外に『邪魔をするな』オーラを感じ取った風は、大人しく「はい」と焼きガニに舌鼓を打っている仲間の元へと戻った。
マリィアは皆が狙っていたカニミソもたっぷりあった為、きちんと取り分けてカニ焼き、コロッケへと分けていく。
「お鍋に入れても美味しいと思うんだけどな……」
それだけはNOだと、カニミソを食べたくないとまりおが主張したため、カニミソは食べたい人だけが食べられるようにし、鍋には入れないことになったのだった。
『だって、イメージ的に脳って雑魔化の影響が強そうじゃん』
そうまりおは思っていたが、実はカニミソは『みそ』とはいうが、脳みそではなく『中腸腺』という物で、人間でいうところの『肝臓とすい臓』にあたる臓器であるという事を彼女は知らない。
「うめー!!」
「美味いのう」
「カニミソは酒の肴に最高なんだよ」
カニミソ焼きと東方の酒で盛り上がる蜜希、アルマ、雷吼の3人をちょっとだけ羨ましく思いながらも、まりおは運ばれて来たゆでガニを真っ先に頬張った。
「いただきまーぁぁぁっす♪ ……んほほ、美味しい」
旨味がぎゅっと濃縮されていて、身はぷりぷり、噛めば噛むほどじゅわっとカニのエキスが口に広がる。
二杯酢を少し付けると、これまた程よい酸味と甘みがカニの旨味を更に引き立て、まりおは雑魔化直後の物を食べるという不安がどこかに吹き飛んでいくのを感じた。
「出来たよー」
魚介鍋がどんと中央に置かれ、手作りコロッケが搭乗すると銘々待ってましたと歓声を上げながら箸やフォークをのばした。
「カニエキスが五臓六腑に染み渡りますねー、今生きている感じを実感しますよ」
風が恍惚の表情でほぅ、と息を吐いた。
「あと、まだ鍋に入りきれなかった身をほぐして焼きそばにしようと思うんだけど、食べる?」
「「「「「食べる!!!!!」」」」」
マリィアの問いに、5人の返事が綺麗にハモって、次の瞬間誰ともなしに笑い合う。
一口食べては「うめー!」と笑い、酒をあおっては「まじうめー!」と蜜希は上機嫌だった。
「三杯酢でもミソでもうめぇ! うめーとしかいえねー」
そしてまた酒をぐびびっとあおると、くぅぅ、と噛み締めるように呻いた。
「もったいねぇなぁ。見付けた人とか近所の人とかにも振る舞えないかねぇ? 大勢で分かち合えた方が楽しいのに」
「ある意味珍味だからのぅ」
生理的に受け付けない等、それぞれ事情はあるだろう。
ほろ酔い気分でアルマは鍋のつゆをくぴっと飲み干して、はーっ、と幸せの溜息を吐いた。
なお、身長129センチと小柄で童顔のアルマが酒を手にした時には一同が止めた。
「えーいっ! これでもアルマは立派な大人じゃっ!!」
キーッ! と起こる仕草も子どもらしかった訳だが、話しを聞けばきちんと成人済みらしいと言う事が分かり、5人はドワーフという種族のある意味闇に触れたのだった。
「海のカニも良い味してんなぁ」
実際の海のカニを食べたらまた違うのかも知れないが、これはまた格別の美味さで、雷吼は焼きガニのミソ部分を酒に浸し、溶かして啜りながら満足げに頷いた。
「鋏はアルマが頂きじゃっ! ポン酢でそれはもう美味しく戴いてやるぞ?」
全長1m級のとんでも無く巨大なハサミだった為、じっくりじっくり焼いていたハサミの部分に口を付ける時が漸く来て、アルマは「あつ! あっつい!!」と悲鳴を上げながら、ハサミの殻をバスターソードで切り開いていく。
ぶわぁっと大量の湯気がアルマの顔を包んだ。
その湯気すらも美味しい。そんな気がして、アルマは思いっきりがぶりと身にかぶりついた。
ポン酢などなくとも美味い。カニの身の甘み、旨味、程よい塩味が熱と共に口一杯に広がって、今なら自分の吐く息ですらカニの味がしそうな程、カニの味で全身が満たされていく。
「本格的な料理をせずとも、美味しく食べられるカニと言うものは本当に良いものじゃて」
「ふー! 喰った喰った! 漁師さん達の被害もなくせるし、修行にもなるし、腹も膨れるし大満足だぜ!」
「うむ、美味かった。もうお腹いっぱいじゃ……」
お酒の酔いと満腹感にうとうとし始めたアルマはどこからどう見ても(以下略)
「では、みなさん、手を合わせて」
「「「「「「ごちそうさまでした」」」」」」
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/12/21 21:46:50 |
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相談卓 最上 風(ka0891) 人間(リアルブルー)|10才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/12/21 23:18:57 |