ゲスト
(ka0000)
【初夢】戦え!御当地CAM
マスター:篠崎砂美

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/01/04 22:00
- 完成日
- 2016/01/11 19:12
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
その日、海から、巨大な歪虚がヴァリオスを目指していた。
巨大なイソギンチャクとも、タコとも思えるその巨体は、無数の触手を振り回し、阻む者なき海を渡ってくる。
このままでは、ヴァリオスが壊滅するのは時間の問題であった。
「うふふ。夢のヴァリオスが滅んでしまえば、人の心は夢と共に崩壊する。どうすることもできませんわ」
歪虚の肩に乗った小さな人影が、楽しそうに足をぶらつかせながらつぶやいた。黒のゴシックドレスに身をつつみ、レースに縁取られた傘をクルクルと回している。
YA・シャオuと呼ばれるその少女は、ヴァリオスの港を指さした。偽足をのばした怪物が、ついに上陸を開始する。
「ついに、この日が来たのですね」
近づいてくる破壊の音を耳にして、お嬢様が決断を下した。
案内所奥に飾られた絵画をスライドさせると、中に隠されていたスイッチを、思いっきり拳で叩く。
「発進!」
鳴動が商店街の広場を振るわせた。
飾られていたCAM像の擬装表面装甲に細かな罅が縦横無尽に走り、中から隠されていた最終兵器がその真の姿を現す。商店街に飾られた実物大CAM像とは仮の姿、本当は防衛用新型CAMであったのだ。
決戦の火ぶたは開かれた!
巨大なイソギンチャクとも、タコとも思えるその巨体は、無数の触手を振り回し、阻む者なき海を渡ってくる。
このままでは、ヴァリオスが壊滅するのは時間の問題であった。
「うふふ。夢のヴァリオスが滅んでしまえば、人の心は夢と共に崩壊する。どうすることもできませんわ」
歪虚の肩に乗った小さな人影が、楽しそうに足をぶらつかせながらつぶやいた。黒のゴシックドレスに身をつつみ、レースに縁取られた傘をクルクルと回している。
YA・シャオuと呼ばれるその少女は、ヴァリオスの港を指さした。偽足をのばした怪物が、ついに上陸を開始する。
「ついに、この日が来たのですね」
近づいてくる破壊の音を耳にして、お嬢様が決断を下した。
案内所奥に飾られた絵画をスライドさせると、中に隠されていたスイッチを、思いっきり拳で叩く。
「発進!」
鳴動が商店街の広場を振るわせた。
飾られていたCAM像の擬装表面装甲に細かな罅が縦横無尽に走り、中から隠されていた最終兵器がその真の姿を現す。商店街に飾られた実物大CAM像とは仮の姿、本当は防衛用新型CAMであったのだ。
決戦の火ぶたは開かれた!
リプレイ本文
●上陸
「ヨイショ、ヨイショ、あんよが上手。ほら、頑張ってぇ」
YA・シャオuが、歪虚の触手に座って、足をブラブラさせながら言いました。
歪虚が、這うようにして港へと近づいていきます。
「薙ぎ払っちゃって♪」
命令された歪虚が、巨大な目を開きました。胴体の中央部分にある一つ目です。その瞳にゆっくりと光が集まっていきます。
パチンと歪虚がウインクしたかと思うと、再び見開かれた瞳から目映い光線が放たれました。海上を走って水蒸気爆発を起こしつつ、湾岸にあった倉庫群を薙ぎ払って爆発させます。
「これで、上りやすくなったかしら」
爆発で吹き上げられた海水が降り注ぐのをパラソルで防ぎながら、シャオuが歪虚に再度上陸を命じます。目指すは、魔術師協会本部のようです。ヴァリオス大ピンチです。
●発進
「なんなの、あれは!?」
商店街で新春福袋のワゴンセールを準備していたコルネ(ka0207)が、唐突な歪虚の襲来に顔を引きつらせました。これでは、せっかくの福袋の儲けが……、いえ、町の平和が危険でピンチです。しかも、歪虚はまっすぐにこちらを目指しているようにも思えます。
「こんなこともあろうかと、この商店街には強力な防衛機能があるのです。今こそ、そのベールを脱ぐときです!」
そう叫ぶと、コルネが案内所に飛び込みました。
「待っていたわ。運悪く駐在さんが不在なのよ、頼むわね」
「任せてください」
待ち構えていたお嬢様にそう答えると、コルネはトイレに駆け込みました。水栓の紐を引っぱると、トイレが部屋ごと地下へと下りていきます。地下秘密基地への秘密のエレベーターです。
地下深くに到着すると、コルネは指令所へと駆け込みました。緊急でスイッチが入り、室内に明かりが点ります。左右にまったく同じコントロールシステムがならんでいます。その左側のシートにコルネが座りました。メインスクリーンには、敵の姿が映し出されています。
「こちら司令部です。指揮官より通達、マコト様は機体の発進準備を、社長は搭乗準備をお願い致します」
コルネが、マイクを通して指示を飛ばしました。
「ルイーズさん、準備はいいですか?」
「重役出勤準備よし!」
マコト・タツナミ(ka1030)の声に、梯子を上ってCAM像のコックピットに入ったルイーズ・ホーナル(ka0596)社長が答えました。
「擬装解除!」
マコトがCAM像の側に立てられていた門松を、ぐいと下に押し込みました。すると、CAM像が揺れ出し、トタンで作られたハリボテの外装に亀裂が入って崩れ出しました。
その下からは、本物のCAMが現れます。白いボディに赤い追加装甲を装着したスリムなCAMです。
「今回は、白兵戦仕様、タイプ轟天となります」
マコトがルイーズに告げると、CAMの左右に、地下からウエポンラックがポップアップしてきました。武装を持ったアームがのび、轟天に本物のアサルトライフルと、ナイトシールドを装備させます。
「全システム、オールグリーン。発進してください!」
コルネが告げます。
「了解。ルイーズ・ホーナル、ただいまより出社する!」
ルイーズが操縦桿を倒しました。商店街を、CAM独特の足音と駆動音を響かせながら、ルイーズの操縦する一号機は、炎上する港へとむかっていきました。
「一号機出撃完了。続いて、第二号機出撃準備。クリス様、よろしくお願い致します」
そう言って、コネルが右の指令ユニットを振りむきました。でも、まだ誰もいません。
「遅れましたー、トイレが混んでて……」
なんだか律儀に順番待ちしてからやってきたらしい月詠クリス(ka0750)が、急いで右側の指令ユニットに着きました。
「クリスティンさん、新型の二号機はまだ試運転もしていません。そんな機体で大丈夫ですか?」
「大丈夫だ、問題ない。一番いいCAMだからな」
クリスの問いに、CAMのコックピットの中から深紅のパイロットスーツを着て仮面で顔を隠したクリスティン・ガフ(ka1090)が敬礼しつつ答えました。ちょっと危ない人かもしれません。
「第一級装備、装着します」
地下格納庫でウエポンラックの間に移動した二号機にむかって、マリィア・バルデス(ka5848)が言いました。
マリィアがサイドコンソールを操作すると、金色に輝く細身のCAM素体に、アームがのびて深紅の装甲と武装群を装着していきます。肩には、カノンを装備し、頭部小口径ガトリング、胸部大型ガトリング、両手のインナーガトリングを固定武装とし、バックパックハンガーにはショットガンとレーザーアサルトライフルを装備し、腰部ラックにビームサーベル、携帯武装としてロングレンジスナイパーライフルという、過剰装備です。ついたコードネームはローテンイーゲル、赤いハリネズミでした。
「本当に調整できているのかしら……」
限りなく心配なコルネですが、たった一機のCAMではあの歪虚には厳しそうです。完全を期すためには、二号機を含め、全戦力を投入する必要があります。
「二号機の発進シークエンスに入ります! リニアカタパルト準備!」
クリスの指示に従って、地下格納庫の二号機が、射出リフトに乗りました。固定アームが、二号機をリフトに固定します。
「発進!」
青いシグナルを受けて、マリィアが発進スイッチを押しました。電磁誘導されたリフトが、高速で二号機を地上へと押し上げます。CAM像があった広場にハッチが開き、飛びだしてきた二号機が激しい衝撃と共に停止しました。
「クリスティン。ローテンイーゲル、出る!」
リフトのロックを外して、クリスティンが二号機を歩き出させました。一足ごとに、地面が抜けるのではないかという振動が響きます。なにしろ、機体重量が重すぎて、移動速度が出ません。
「二号機はその位置で待機。一号機の遠距離支援をしてください」
クリスが指示を与えます。
「了解。攻撃を開始する」
「ええっ、ちょっと!? まだ早い……」
クリスが止める間もなく、二号機が脚部アウトリガーを展開して、砲撃を開始しました。
●戦闘
「あら? 何か光っ……」
商店街からのマズルフラッシュをシャオuが確認しました。直後に、歪虚の触手が一本爆発して吹っ飛びました。二号機からの遠距離攻撃です。
「まあ、生意気。あそこにむかいますわよ」
プンプンして、シャオが歪虚を商店街へむけます。
「敵、接近中です!」
コルネが、ルイーズに注意をうながします。
「任せて。世界と経済は私が守るのだ!」
「守るのは、ヴァリオスの町と人です!」
思いっきり、コルネがルイーズの言葉を訂正しました。
「プレジデント、ファイアー!」
アサルトライフルを連射しつつ、一号機が突進していきました。うねる触手を、ライフルで破壊しつつ接近します。
「うざい……」
眉根を寄せたシャオuが、一号機を指さしました。
何本もの触手が、鞭のように唸りをあげて一号機に襲いかかりました。
あっけなく、アサルトライフルが叩き折られます。
「使えない商品は廃棄です。やっぱり、営業は、顔を見て!」
あっさりとライフルを捨てると、ルイーズがシールドの裏から斧を取り出しました。ブンとそれを振ると、柄がのびてハルバードになります。
「プレジデント、ハルバード!! すぱーん!」
ルイーズが、ハルバードを振り回して歪虚の触手を切り払いました。
「なっまいっきぃ。やっておしまい!」
シャオuの命令で、触手が一号機のハルバードに巻きついてへし折ります。
「ああもう! なんか、もっと強力な武器出荷してよ!」
次々に武器を破壊されて、ルイーズが叫びました。
「指令、より強力な武装のオーダーだよ。どーするの!?」
「仕方ありませんね……。オーダー承認! 試作武器を射出します。その間、二号機は援護を」
マコトの報告を受けて、コルネが判断を下します。
「了解。一号機と歪虚が交戦中! 二号機は一号機の援護をおこなってください! クリスティンさん、町の被害は気にする必要ありません! 全武装の使用を許可します!」
「えっ!?」
なんのためらいもなく、クリスが指示を飛ばしました。隣で、コルネが唖然とします。
「任せとき。いくぞ、フルバースト!!」
躊躇なく、クリスティンが、長距離砲を一斉発射しました。直撃を受けた歪虚を激しい爆発がつつみ、さすがに反動でよろめきます。
「けほっ、あーん、少し焦げたあ」
歪虚の触手を蕾のようにして自身を防御したシャオuでしたが、周囲のヴァリオス港の建物は跡形もなく吹っ飛んで焼け野原です。
「今です、試作装備発射!」
マコトが叫びました。地下基地から電磁カタパルトを利用して、追加武装が射出されます。
「きたあ! 受け取りはサインでいいな!」
ズンと地上にめり込むようにして落ちた巨大なハンマーにむかって、ルイーズが接近します。そうはさせじと、歪虚が体勢を立てなおして触手で攻撃してきました。けれども、先に新武装に達しようとした触手が、弾丸によって弾かれます。その間に、ルイーズがハンマーに手を掛けました。
「残弾、もってけー!」
うち尽くしたスナイパーライフルを放り出すと、再び、クリスティンがフルバーストを仕掛けます。全身のエクスプロージョンボルトが爆発して、役目を終えたカノン砲などをパージして機体を身軽にしました。
「いっくよ! スーパープレジデント、ハンマァァァァ!!」
再び爆炎につつまれる歪虚を、横殴りにルイーズが巨大ハンマーで叩きました。再び蕾状に纏まってシャオuを守っていた触手が、衝撃でボロボロと崩れ落ちました。けれども、恐ろしく頑丈な胴体は無傷です。
「もう一度、プレジデント、ハンマー!!」
再びルイーズが、ハンマーで歪虚の頭頂部を狙いました。ところが、再生した触手が総出でハンマーを受けとめます。
「もう、痛いじゃないの。めっ!」
逸早く上空に逃げていたシャオuが、ふわりとハンマーの柄の部分に降り立ちました。ハンマーの頭と柄の接続部分を、パラソルでチョンと叩きます。とたんに、ぽっきりとハンマーが折れました。そのまま歪虚が、触手の絡んだハンマーの頭を一号機にむかって投げつけようとするところへ、二号機のレーザーライフルが着弾します。狙いが外れて、ハンマーの残骸があらぬところへととなでいきました。その間に、かろうじて、一号機が後退します。
それを援護して、二号機のレーザーが、間断なく歪虚の胴体を薙ぎ払いますが、触手は焼き切られても胴体は無傷です。下から上へ射線移動するレーザーを、シャオuがパラソルで防ぎました。少し、パラソルのレースが焦げます。
「あら、あいつうざい……」
焦げたレースを見て、シャオuの可愛らしい顔が一瞬恐ろしい形相に変貌しました。
「薙ぎ払え」
歪虚が目を開きます。
「経済効果がない!? 営業会議を要求するわ!」
いったん後退したルイーズが、叫びます。
「ふっふっふ。名探偵にして名指揮官である私には分かります! この手の敵には必ず弱点があると!」
「ということです」
コルネが、クリスの言葉をルイーズにも伝えました。
「企画提案受領したわ」
ルイーズが敵の弱点を探して分析データを司令室へと送ります。
次の瞬間、チャージが完了した歪虚の目からビームが、二号機を直撃しました。爆発の中、メインスクリーンが炎につつまれて二号機の姿が確認できなくなります。
「大丈夫!? クリスティン!」
クリスが叫びました。
爆炎の中、ボロボロの二号機がモニタの中に現れました。
「大丈夫だ、問題ない」
クリスティンが、半溶解してボロボロになった装甲をパージしました。
一気に、二号機のシルエットがスリムな物に変貌します。どうやら、フレーム部分は無事だったようです。とはいえ、二度目はありません。
「これではっきりしました。敵の弱点は火です。それで反撃してきたのです。ぜひ焦土作戦を……」
「敵装甲は強固です。分析では、目の形状のレーザー発振器には装甲はないと思われます」
暴走しかけるクリスを、コルネがポカリと黙らせました。
「ピンポイントを大型砲で撃ち抜くしかないということだな」
「コルネ司令官! あの武器を使うしかありません!」
クリスティンの言葉に、マコトが進言します。
「仕方ない、許可する」
「許可が出た、グスタフ、移動! ルート9!」
コルネの言葉に、あわただしくマリィアたちが動き始めます。
魔術師協会地下にある特殊研究所から各地へとのびる地下移動線路を、牽引車によって五十メートル近い超巨大砲が商店街の地下まで移動してきました。
「リフトアップ!」
マコトとマリィアの操作で商店街のメインストリートの半分がハッチを開き、その下からグスタフが上昇します。
二号機でクリスティンが待ち構えます。二号機のジェネレータを腕の回路から接続して使用するのです。
「よし、接続……あっ!?」
引っ掛かりました。どうやら、グスタフが大きすぎたようです、地上まで上がってきません。これでは、まったく使えません。
「仕方ない。直接棚卸しするまでよ」
そう言うと、ルイーズがハンマーの柄を一振りしました。鞘走り、柄に仕込まれていた試製絡繰大刀「紫電改」がその刀身を顕わにします。
「スーパープレジデント、カタナ! 斬!」
「そんな物、効かないですわ」
一号機の一撃に、シャオuは涼しい顔でしたが、ルイーズは歪虚の胴体にある目蓋の隙間に刀を突き刺していました。
「ちょっと、それって、斬じゃくて突でしょう!」
ずっこいとシャオuが叫びました。
「だから、吹き飛ばす!」
刀の突き刺さった歪虚の目が輝き始めました。
「ぬ、抜けない……」
刀を抜こうとして、一号機が歪虚の触手に絡めとられました。これでは、目からビームの0距離射撃の的です。
「どけ、一号!」
そこへ、身軽になった二号機が突っ込んできました。その手には、グスタフの砲弾がかかえられています。
そのまま、刀が邪魔で閉じられなくなった目の中へと砲弾をねじ込みます。そのまま、インナーガトリングで砲弾を起爆させます。凄まじい爆発に、歪虚の身体が風船のように膨れあがりました。
「やーん」
歪虚が内部から爆発し、YA・シャオuが空の彼方へと吹き飛ばされていきました。
歪虚の装甲が厚すぎで爆発が抑えられたおかげで二機のCAMは無事でしたが、完全にボロボロです。
「これは、整備が大変そうね……」
マコトとマリィアが頭をかかえました。
「状況終了。帰還してください」
コネルが告げます。
「でも、動かないんだけど……」
ちょっと困ったように、ルイーズが言いました。
「こうなったら仕方ありません、最終手段です。一号機と二号機の合体を許可します!」
クリスが叫びます。
「そんな機能ないから!」
クリスティンと共に、全員がツッコミました。
「ヨイショ、ヨイショ、あんよが上手。ほら、頑張ってぇ」
YA・シャオuが、歪虚の触手に座って、足をブラブラさせながら言いました。
歪虚が、這うようにして港へと近づいていきます。
「薙ぎ払っちゃって♪」
命令された歪虚が、巨大な目を開きました。胴体の中央部分にある一つ目です。その瞳にゆっくりと光が集まっていきます。
パチンと歪虚がウインクしたかと思うと、再び見開かれた瞳から目映い光線が放たれました。海上を走って水蒸気爆発を起こしつつ、湾岸にあった倉庫群を薙ぎ払って爆発させます。
「これで、上りやすくなったかしら」
爆発で吹き上げられた海水が降り注ぐのをパラソルで防ぎながら、シャオuが歪虚に再度上陸を命じます。目指すは、魔術師協会本部のようです。ヴァリオス大ピンチです。
●発進
「なんなの、あれは!?」
商店街で新春福袋のワゴンセールを準備していたコルネ(ka0207)が、唐突な歪虚の襲来に顔を引きつらせました。これでは、せっかくの福袋の儲けが……、いえ、町の平和が危険でピンチです。しかも、歪虚はまっすぐにこちらを目指しているようにも思えます。
「こんなこともあろうかと、この商店街には強力な防衛機能があるのです。今こそ、そのベールを脱ぐときです!」
そう叫ぶと、コルネが案内所に飛び込みました。
「待っていたわ。運悪く駐在さんが不在なのよ、頼むわね」
「任せてください」
待ち構えていたお嬢様にそう答えると、コルネはトイレに駆け込みました。水栓の紐を引っぱると、トイレが部屋ごと地下へと下りていきます。地下秘密基地への秘密のエレベーターです。
地下深くに到着すると、コルネは指令所へと駆け込みました。緊急でスイッチが入り、室内に明かりが点ります。左右にまったく同じコントロールシステムがならんでいます。その左側のシートにコルネが座りました。メインスクリーンには、敵の姿が映し出されています。
「こちら司令部です。指揮官より通達、マコト様は機体の発進準備を、社長は搭乗準備をお願い致します」
コルネが、マイクを通して指示を飛ばしました。
「ルイーズさん、準備はいいですか?」
「重役出勤準備よし!」
マコト・タツナミ(ka1030)の声に、梯子を上ってCAM像のコックピットに入ったルイーズ・ホーナル(ka0596)社長が答えました。
「擬装解除!」
マコトがCAM像の側に立てられていた門松を、ぐいと下に押し込みました。すると、CAM像が揺れ出し、トタンで作られたハリボテの外装に亀裂が入って崩れ出しました。
その下からは、本物のCAMが現れます。白いボディに赤い追加装甲を装着したスリムなCAMです。
「今回は、白兵戦仕様、タイプ轟天となります」
マコトがルイーズに告げると、CAMの左右に、地下からウエポンラックがポップアップしてきました。武装を持ったアームがのび、轟天に本物のアサルトライフルと、ナイトシールドを装備させます。
「全システム、オールグリーン。発進してください!」
コルネが告げます。
「了解。ルイーズ・ホーナル、ただいまより出社する!」
ルイーズが操縦桿を倒しました。商店街を、CAM独特の足音と駆動音を響かせながら、ルイーズの操縦する一号機は、炎上する港へとむかっていきました。
「一号機出撃完了。続いて、第二号機出撃準備。クリス様、よろしくお願い致します」
そう言って、コネルが右の指令ユニットを振りむきました。でも、まだ誰もいません。
「遅れましたー、トイレが混んでて……」
なんだか律儀に順番待ちしてからやってきたらしい月詠クリス(ka0750)が、急いで右側の指令ユニットに着きました。
「クリスティンさん、新型の二号機はまだ試運転もしていません。そんな機体で大丈夫ですか?」
「大丈夫だ、問題ない。一番いいCAMだからな」
クリスの問いに、CAMのコックピットの中から深紅のパイロットスーツを着て仮面で顔を隠したクリスティン・ガフ(ka1090)が敬礼しつつ答えました。ちょっと危ない人かもしれません。
「第一級装備、装着します」
地下格納庫でウエポンラックの間に移動した二号機にむかって、マリィア・バルデス(ka5848)が言いました。
マリィアがサイドコンソールを操作すると、金色に輝く細身のCAM素体に、アームがのびて深紅の装甲と武装群を装着していきます。肩には、カノンを装備し、頭部小口径ガトリング、胸部大型ガトリング、両手のインナーガトリングを固定武装とし、バックパックハンガーにはショットガンとレーザーアサルトライフルを装備し、腰部ラックにビームサーベル、携帯武装としてロングレンジスナイパーライフルという、過剰装備です。ついたコードネームはローテンイーゲル、赤いハリネズミでした。
「本当に調整できているのかしら……」
限りなく心配なコルネですが、たった一機のCAMではあの歪虚には厳しそうです。完全を期すためには、二号機を含め、全戦力を投入する必要があります。
「二号機の発進シークエンスに入ります! リニアカタパルト準備!」
クリスの指示に従って、地下格納庫の二号機が、射出リフトに乗りました。固定アームが、二号機をリフトに固定します。
「発進!」
青いシグナルを受けて、マリィアが発進スイッチを押しました。電磁誘導されたリフトが、高速で二号機を地上へと押し上げます。CAM像があった広場にハッチが開き、飛びだしてきた二号機が激しい衝撃と共に停止しました。
「クリスティン。ローテンイーゲル、出る!」
リフトのロックを外して、クリスティンが二号機を歩き出させました。一足ごとに、地面が抜けるのではないかという振動が響きます。なにしろ、機体重量が重すぎて、移動速度が出ません。
「二号機はその位置で待機。一号機の遠距離支援をしてください」
クリスが指示を与えます。
「了解。攻撃を開始する」
「ええっ、ちょっと!? まだ早い……」
クリスが止める間もなく、二号機が脚部アウトリガーを展開して、砲撃を開始しました。
●戦闘
「あら? 何か光っ……」
商店街からのマズルフラッシュをシャオuが確認しました。直後に、歪虚の触手が一本爆発して吹っ飛びました。二号機からの遠距離攻撃です。
「まあ、生意気。あそこにむかいますわよ」
プンプンして、シャオが歪虚を商店街へむけます。
「敵、接近中です!」
コルネが、ルイーズに注意をうながします。
「任せて。世界と経済は私が守るのだ!」
「守るのは、ヴァリオスの町と人です!」
思いっきり、コルネがルイーズの言葉を訂正しました。
「プレジデント、ファイアー!」
アサルトライフルを連射しつつ、一号機が突進していきました。うねる触手を、ライフルで破壊しつつ接近します。
「うざい……」
眉根を寄せたシャオuが、一号機を指さしました。
何本もの触手が、鞭のように唸りをあげて一号機に襲いかかりました。
あっけなく、アサルトライフルが叩き折られます。
「使えない商品は廃棄です。やっぱり、営業は、顔を見て!」
あっさりとライフルを捨てると、ルイーズがシールドの裏から斧を取り出しました。ブンとそれを振ると、柄がのびてハルバードになります。
「プレジデント、ハルバード!! すぱーん!」
ルイーズが、ハルバードを振り回して歪虚の触手を切り払いました。
「なっまいっきぃ。やっておしまい!」
シャオuの命令で、触手が一号機のハルバードに巻きついてへし折ります。
「ああもう! なんか、もっと強力な武器出荷してよ!」
次々に武器を破壊されて、ルイーズが叫びました。
「指令、より強力な武装のオーダーだよ。どーするの!?」
「仕方ありませんね……。オーダー承認! 試作武器を射出します。その間、二号機は援護を」
マコトの報告を受けて、コルネが判断を下します。
「了解。一号機と歪虚が交戦中! 二号機は一号機の援護をおこなってください! クリスティンさん、町の被害は気にする必要ありません! 全武装の使用を許可します!」
「えっ!?」
なんのためらいもなく、クリスが指示を飛ばしました。隣で、コルネが唖然とします。
「任せとき。いくぞ、フルバースト!!」
躊躇なく、クリスティンが、長距離砲を一斉発射しました。直撃を受けた歪虚を激しい爆発がつつみ、さすがに反動でよろめきます。
「けほっ、あーん、少し焦げたあ」
歪虚の触手を蕾のようにして自身を防御したシャオuでしたが、周囲のヴァリオス港の建物は跡形もなく吹っ飛んで焼け野原です。
「今です、試作装備発射!」
マコトが叫びました。地下基地から電磁カタパルトを利用して、追加武装が射出されます。
「きたあ! 受け取りはサインでいいな!」
ズンと地上にめり込むようにして落ちた巨大なハンマーにむかって、ルイーズが接近します。そうはさせじと、歪虚が体勢を立てなおして触手で攻撃してきました。けれども、先に新武装に達しようとした触手が、弾丸によって弾かれます。その間に、ルイーズがハンマーに手を掛けました。
「残弾、もってけー!」
うち尽くしたスナイパーライフルを放り出すと、再び、クリスティンがフルバーストを仕掛けます。全身のエクスプロージョンボルトが爆発して、役目を終えたカノン砲などをパージして機体を身軽にしました。
「いっくよ! スーパープレジデント、ハンマァァァァ!!」
再び爆炎につつまれる歪虚を、横殴りにルイーズが巨大ハンマーで叩きました。再び蕾状に纏まってシャオuを守っていた触手が、衝撃でボロボロと崩れ落ちました。けれども、恐ろしく頑丈な胴体は無傷です。
「もう一度、プレジデント、ハンマー!!」
再びルイーズが、ハンマーで歪虚の頭頂部を狙いました。ところが、再生した触手が総出でハンマーを受けとめます。
「もう、痛いじゃないの。めっ!」
逸早く上空に逃げていたシャオuが、ふわりとハンマーの柄の部分に降り立ちました。ハンマーの頭と柄の接続部分を、パラソルでチョンと叩きます。とたんに、ぽっきりとハンマーが折れました。そのまま歪虚が、触手の絡んだハンマーの頭を一号機にむかって投げつけようとするところへ、二号機のレーザーライフルが着弾します。狙いが外れて、ハンマーの残骸があらぬところへととなでいきました。その間に、かろうじて、一号機が後退します。
それを援護して、二号機のレーザーが、間断なく歪虚の胴体を薙ぎ払いますが、触手は焼き切られても胴体は無傷です。下から上へ射線移動するレーザーを、シャオuがパラソルで防ぎました。少し、パラソルのレースが焦げます。
「あら、あいつうざい……」
焦げたレースを見て、シャオuの可愛らしい顔が一瞬恐ろしい形相に変貌しました。
「薙ぎ払え」
歪虚が目を開きます。
「経済効果がない!? 営業会議を要求するわ!」
いったん後退したルイーズが、叫びます。
「ふっふっふ。名探偵にして名指揮官である私には分かります! この手の敵には必ず弱点があると!」
「ということです」
コルネが、クリスの言葉をルイーズにも伝えました。
「企画提案受領したわ」
ルイーズが敵の弱点を探して分析データを司令室へと送ります。
次の瞬間、チャージが完了した歪虚の目からビームが、二号機を直撃しました。爆発の中、メインスクリーンが炎につつまれて二号機の姿が確認できなくなります。
「大丈夫!? クリスティン!」
クリスが叫びました。
爆炎の中、ボロボロの二号機がモニタの中に現れました。
「大丈夫だ、問題ない」
クリスティンが、半溶解してボロボロになった装甲をパージしました。
一気に、二号機のシルエットがスリムな物に変貌します。どうやら、フレーム部分は無事だったようです。とはいえ、二度目はありません。
「これではっきりしました。敵の弱点は火です。それで反撃してきたのです。ぜひ焦土作戦を……」
「敵装甲は強固です。分析では、目の形状のレーザー発振器には装甲はないと思われます」
暴走しかけるクリスを、コルネがポカリと黙らせました。
「ピンポイントを大型砲で撃ち抜くしかないということだな」
「コルネ司令官! あの武器を使うしかありません!」
クリスティンの言葉に、マコトが進言します。
「仕方ない、許可する」
「許可が出た、グスタフ、移動! ルート9!」
コルネの言葉に、あわただしくマリィアたちが動き始めます。
魔術師協会地下にある特殊研究所から各地へとのびる地下移動線路を、牽引車によって五十メートル近い超巨大砲が商店街の地下まで移動してきました。
「リフトアップ!」
マコトとマリィアの操作で商店街のメインストリートの半分がハッチを開き、その下からグスタフが上昇します。
二号機でクリスティンが待ち構えます。二号機のジェネレータを腕の回路から接続して使用するのです。
「よし、接続……あっ!?」
引っ掛かりました。どうやら、グスタフが大きすぎたようです、地上まで上がってきません。これでは、まったく使えません。
「仕方ない。直接棚卸しするまでよ」
そう言うと、ルイーズがハンマーの柄を一振りしました。鞘走り、柄に仕込まれていた試製絡繰大刀「紫電改」がその刀身を顕わにします。
「スーパープレジデント、カタナ! 斬!」
「そんな物、効かないですわ」
一号機の一撃に、シャオuは涼しい顔でしたが、ルイーズは歪虚の胴体にある目蓋の隙間に刀を突き刺していました。
「ちょっと、それって、斬じゃくて突でしょう!」
ずっこいとシャオuが叫びました。
「だから、吹き飛ばす!」
刀の突き刺さった歪虚の目が輝き始めました。
「ぬ、抜けない……」
刀を抜こうとして、一号機が歪虚の触手に絡めとられました。これでは、目からビームの0距離射撃の的です。
「どけ、一号!」
そこへ、身軽になった二号機が突っ込んできました。その手には、グスタフの砲弾がかかえられています。
そのまま、刀が邪魔で閉じられなくなった目の中へと砲弾をねじ込みます。そのまま、インナーガトリングで砲弾を起爆させます。凄まじい爆発に、歪虚の身体が風船のように膨れあがりました。
「やーん」
歪虚が内部から爆発し、YA・シャオuが空の彼方へと吹き飛ばされていきました。
歪虚の装甲が厚すぎで爆発が抑えられたおかげで二機のCAMは無事でしたが、完全にボロボロです。
「これは、整備が大変そうね……」
マコトとマリィアが頭をかかえました。
「状況終了。帰還してください」
コネルが告げます。
「でも、動かないんだけど……」
ちょっと困ったように、ルイーズが言いました。
「こうなったら仕方ありません、最終手段です。一号機と二号機の合体を許可します!」
クリスが叫びます。
「そんな機能ないから!」
クリスティンと共に、全員がツッコミました。
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相談卓 クリスティン・ガフ(ka1090) 人間(クリムゾンウェスト)|19才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2016/01/04 17:24:42 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/01/02 00:53:39 |