ゲスト
(ka0000)
【初夢】もふもふに、出逢った。
マスター:四月朔日さくら

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/01/09 12:00
- 完成日
- 2016/01/11 22:36
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
目が覚めたら、そこは一面の草原だった。
「……アレ……さっきマデ、ガーディナにいたはず、ナノニ」
そう言いながら、無理矢理腕組みをしようとするのはハンターならずとも名の知れた、辺境の巫女リムネラ(kz0018)。
そばに幼い白龍のヘレがいるのを確かめてから、しかしそれにしても、見覚えの無い場所にいるわけで、首をかしげてしまう。
……と、見覚えのある人影を見つけた。
「あ……皆サン、モ、ここに突然イタ……のデス?」
居合わせたハンターの一人でもあるトワ・トモエはそう言って首をかしげているリムネラに、戸惑いながらも頷いた。。
何しろ辺境ユニオン『ガーディナ』のリーダーであり、大霊堂出身の巫女である彼女は数々の大規模作戦に尽力した人物の一人。その傍らにいる白龍の幼子をつれた姿は、どこか尊い。緊張を隠しきれないまま、トモエは問いに答えた。
「あ、ええと、あたしもさっき気づいたらここにいたんです。ここ、本当に――」
と、トモエはそこで言葉をとぎらせた。
白い塊が、もっふもっふと足音を立てて近づいてきたからである。
●
厳密には真っ白い塊、ではない。
彼の自称幻獣王チューダよりも一回りか二回り大きな「それ」は、くりっとした大きな瞳と、まるで襟巻きのような赤い毛に覆われているのがひどく特徴的で。
ついでに言うと、かなりふてぶてしい表情をしている。ブサカワ、とでも言えばいいのか。
しかしそれを見たトモエは思わずあっと声を上げた。
「え、うそ! あれってもしかしなくても、リアルブルーのマンガのキャラ……!」
リアルブルーで流行っていた活劇コミック『舵天照』。男女ともから支持を得ていた人気作品だったが、このもふもふの生き物はそれに出てくる精霊にうり二つなのだ。
その精霊の名は、もふら。
クセのある性格をしているものの、舵天照のマスコットキャラ的存在として人気の高いキャラクターだ。
「もふ? なんだか妙に騒がしいと思ったら、見たことのない連中がいるもふね~」
そう言いながら、もふららしきもふもふの存在はリムネラやハンターたちを眺め見やる。そういえばこの舵天照というコミックでは、もふらやその他の一部の存在は『精霊』として扱われていたが、なるほど、おそらくそれはこのクリムゾンウェストにおける幻獣のようなポジションなのだろうな、とトモエは思い至る。
「アノ……貴方は、幻獣、デスか?」
リムネラが問うのも仕方が無い。彼女が見たこともない生物なのだから。――しかし、もしここが『舵天照』の世界ならば、もふらはごくポピュラーな存在なのだ。
「もふ? もふを知らない方がおかしいもふね~。それに、お前達、どこから来たもふ?」
「エエト……分からなくて……」
リムネラは嘘のつけない性格ゆえ、半端に言葉を濁すばかり。
それを尻目に、トモエは自らの欲望に忠実になっていた。
つまり――近くにいた別のもふらを、思う存分もふり倒していたのである。
(見た感じ、もふらさまはわんさかいるし、こんな都合のいい空間であのもふらさまをもふもふできるなんて、まるで夢みたい!)
ほかのハンターたちは微妙にかみ合わない会話をしているリムネラともふらに力を貸すか貸すまいか、はたまたトモエのようにもふもふに包まれてしまおうか、まだ悩んでいるようだが――。
――ああ、うん。
――だってこれ、夢だし。
目が覚めたら、そこは一面の草原だった。
「……アレ……さっきマデ、ガーディナにいたはず、ナノニ」
そう言いながら、無理矢理腕組みをしようとするのはハンターならずとも名の知れた、辺境の巫女リムネラ(kz0018)。
そばに幼い白龍のヘレがいるのを確かめてから、しかしそれにしても、見覚えの無い場所にいるわけで、首をかしげてしまう。
……と、見覚えのある人影を見つけた。
「あ……皆サン、モ、ここに突然イタ……のデス?」
居合わせたハンターの一人でもあるトワ・トモエはそう言って首をかしげているリムネラに、戸惑いながらも頷いた。。
何しろ辺境ユニオン『ガーディナ』のリーダーであり、大霊堂出身の巫女である彼女は数々の大規模作戦に尽力した人物の一人。その傍らにいる白龍の幼子をつれた姿は、どこか尊い。緊張を隠しきれないまま、トモエは問いに答えた。
「あ、ええと、あたしもさっき気づいたらここにいたんです。ここ、本当に――」
と、トモエはそこで言葉をとぎらせた。
白い塊が、もっふもっふと足音を立てて近づいてきたからである。
●
厳密には真っ白い塊、ではない。
彼の自称幻獣王チューダよりも一回りか二回り大きな「それ」は、くりっとした大きな瞳と、まるで襟巻きのような赤い毛に覆われているのがひどく特徴的で。
ついでに言うと、かなりふてぶてしい表情をしている。ブサカワ、とでも言えばいいのか。
しかしそれを見たトモエは思わずあっと声を上げた。
「え、うそ! あれってもしかしなくても、リアルブルーのマンガのキャラ……!」
リアルブルーで流行っていた活劇コミック『舵天照』。男女ともから支持を得ていた人気作品だったが、このもふもふの生き物はそれに出てくる精霊にうり二つなのだ。
その精霊の名は、もふら。
クセのある性格をしているものの、舵天照のマスコットキャラ的存在として人気の高いキャラクターだ。
「もふ? なんだか妙に騒がしいと思ったら、見たことのない連中がいるもふね~」
そう言いながら、もふららしきもふもふの存在はリムネラやハンターたちを眺め見やる。そういえばこの舵天照というコミックでは、もふらやその他の一部の存在は『精霊』として扱われていたが、なるほど、おそらくそれはこのクリムゾンウェストにおける幻獣のようなポジションなのだろうな、とトモエは思い至る。
「アノ……貴方は、幻獣、デスか?」
リムネラが問うのも仕方が無い。彼女が見たこともない生物なのだから。――しかし、もしここが『舵天照』の世界ならば、もふらはごくポピュラーな存在なのだ。
「もふ? もふを知らない方がおかしいもふね~。それに、お前達、どこから来たもふ?」
「エエト……分からなくて……」
リムネラは嘘のつけない性格ゆえ、半端に言葉を濁すばかり。
それを尻目に、トモエは自らの欲望に忠実になっていた。
つまり――近くにいた別のもふらを、思う存分もふり倒していたのである。
(見た感じ、もふらさまはわんさかいるし、こんな都合のいい空間であのもふらさまをもふもふできるなんて、まるで夢みたい!)
ほかのハンターたちは微妙にかみ合わない会話をしているリムネラともふらに力を貸すか貸すまいか、はたまたトモエのようにもふもふに包まれてしまおうか、まだ悩んでいるようだが――。
――ああ、うん。
――だってこれ、夢だし。
リプレイ本文
●
「うわぁ~」
思わず声を上げてしまったのはアズロ・シーブルー(ka0781)だ。飼っている二匹のマルチーズも何故か一緒にいるが、その犬たちにもどこかよく似た白いもふもふの存在が目の前にいることに興奮を隠せない。
トワ・トモエは既にもふもふをもふもふすることを満喫する、つまりある種の現実逃避の域に達しているようで、
「ふふ、ふふふふふ」
と傍目では少し気持ちの悪い笑みを浮かべながらなで繰り回している。
そのいっぽう、リムネラ(kz0018)はヘレをなでながら戸惑っていた。
無理もない話だ。何しろ見たことも聞いたこともないふてぶてしい顔のなぞの獣が、人語を理解し、そして話しかけてくるのだ。
「アナタたちは……幻獣?」
基本的にクリムゾンウェストの知識しか無い彼女がそう聞きたくなるのも仕方のない話。
「もふ? もふたちはげんじゅーとか言うものじゃないもふよ? もふたちはもふらもふ!」
かみ合わない会話。リムネラも、もふら達も、お互いの常識が通じないことに、お互い気づいていないのだ。
と、それを遮るように声をかけた少女がいた。紫色の髪をしたエルフの少女、ケイルカ(ka4121)である。歓びを隠しきれない声で、ケイルカは語り出す。
「この子達、私、知ってるわ!」
「エ?」
リムネラが不思議そうに首をかしげると、ケイルカは嬉しそうに口元を緩ませ、そして説明をはじめた。
「リアルブルーの本に『舵天照』って言うファンタジーがあるの、リアルブルーともクリムゾンウェストとも違う『天儀』って言う世界のファンタジー。ちょっと東方の雰囲気に似ているかしら?」
ふむ。ケイルカはその舵天照をいたく気に入っているらしい。横で聞いていたアズロも、そうそう、と言わんばかりに首を縦に振っている。
「このもふもふしたものは、清らかな場所にしか発生しない、尊い精霊様と聞いているよ。そんな存在と遊べるなんて、まるで夢のようだね……いや、本当に夢かも知れないけれど、それでもこのもふもふの感触はとてもリアルだと思うよ」
そんなことを言いながら、なにやらアズロは念じてみる。すると、大きなさらとその上に手作りとおぼしきかぼちゃや芋をふんだんに使ったクッキーやマフィンが現れた。
うーん、やっぱりこれは夢なのかも知れない。ご都合主義すぎるもの。
「エエト……そしたら、これは、リアルブルーの、お話しの中、デスか?」
リムネラは目をぱちくりさせて、その言葉をなげかける。おそらく、とハンターたちは頷き返した。
「ええ。そしてこの子たちはもふらって言うの。あこがれのもふらに出会えるなんて、これって夢じゃ無いわよね? 本当に天儀にこれたなんて……間違いないわ!」
興奮した彼女の声は、わずかに裏返っている。
「さあ、もふらちゃん、いらっしゃーい!」
そう言いながら、ケイルカはもふらと自身が呼んだ一体に抱きつき、そしてもふもふもふっとその柔らかなもふ毛にふれる。想像以上の柔らかさに、ケイルカもすっかり顔を蕩けさせてしまった。
何しろ超一級品の布団なんかよりも、そのさわりごこちは満点。
「これがもふら……アニメをやってたことは知ってたけど、きちんと見たことは無かったのよねぇ……ほら、あの……ジャパンの、対の石の守護者……エエと、阿吽じゃなくて、そうそう、狛犬? それを可愛くした感じの成獣様がでているとは聞いていたんだけれど」
トモエを除いたこのなかで唯一のリアルブルー出身者であるマリィア・バルデス(ka5848)はそんなことをいって説明しようとしているが、その手は気づかぬうちにもふらの柔らかな毛並みをもふもふもふもふと無言でもふりまくっていたあとだった。
と、そこにいた女性の一人のそばに白龍の幼生であるヘレがいることに気づいたのだろう、マリィアは目を大きく見開いてからぺこりと頭を下げる。
「その白龍の幼生がいるってことは、リムネラ様ですよね? よかったら、いっしょにこちらで料理でもつまみませんか? その方が名案が浮かびやすいって言いますし」
腹が減っては何とやら。アズロもリムネラには尊敬の念を払っていると言うこともあり、ポポンと取り出したパンケーキを彼女の前に差し出してにっこりと笑う。
「よろしければお茶もお淹れしましょう。こういうときは多分のんびり構えている方がいいです」
「そう……ソウ、かも知れない、デスね」
リムネラも差し出された温かい茶を一口すすり、少しばかりふうと息をついたのであった。
●
「……にしても、犬のようで犬でもない。幻獣とも違うと言ったな? ええと、もふらだったか」
ザレム・アズール(ka0878)は、興味津々そうにもふらに声をかける。
もふらたちはこくこくっと頷くと、どや顔で
「そうもふ! 天儀の精霊もふよ!」
と胸を張ってみせた。
「オレはザレム……怪しいモノがいないか、見回っていたんだけれど、ここは危険はなさそうだなぁ」
「当たり前もふ! むしろおまえのほうが怪しいもふ! こんなに愛くるしくてみんなの役にも立ってるもふたちを知らないなんて、一体どこの田舎者もふか?」
若干自意識過剰なもふら(しかしこれがもふらという存在の通常運転である)にこんなことを言われてしまう始末。
「オレは怪しくないよー! ほらほら、お菓子も沢山持ってるんだ、これで怪しくない証明にしてくれよー!」
ザレムはポケットから、山のようにお菓子を取り出す。するともふらたちは手のひらを返したかのように目を輝かせ、
「おまえ、悪い奴じゃないもふね!」
そう言いながらさっそくお菓子をお腹の中に収めていく。
「だからそうだって言ってるだろ! それにしてもきれいなもふもふの毛並みだな、お前達」
お腹がくちくなって目を細めているもふらにザレムがそう言ってやると、その言葉にどや顔で頷く。
「もっふっふ。もふ達の魅力にやっと気づいたもふね?」
もふらは流石というか、そんなことは今更当たり前だろう、と言わんばかりの満面の笑み。
「もふりたければ、思う存分もふるといいんだもふ!」
こんな時にもどこか偉そうに言うあたり、やはりどこかあの幻獣王にもにている――なんて、ザレムはちらっと思ったけれど。
と、
「あ、あそこにも人がいるね~!」
アズロが気づいたらしく、手を振ってザレムを呼ぶ。
「アア……ホカにも、いたんデスね」
見覚えのある蜂蜜色の髪と瞳の女性――リムネラに気づいたザレムは慌てて礼をする。
と言っても、彼女の周囲はすっかりティーパーティの様相を呈していたけれど。
そして仲間たちの話を聞いて、彼は斜め上の結論づけた。
つまり――ここが異世界である、と言う。
正しい、のかも知れない、が、ザレムは力を込めて言う。
「だって、なんだかリアルブルーの子ども向けファンタジーに不可欠と言われているらしいマスコット的生物がこんなにいるんだから、きっとそう言う正義の味方として召喚されたんだよ!」
「いや、それは違うような。それにしてもザレムくんも来ていたのね……そしてやっぱりもふらのかわいさに負けちゃったのね?」
妙に冷静な判断をしているのはマリィア。
「ま、まあ……そうだよな。あ、言っとくけど別にリムネラさんの変身シーンが見たかったからじゃ……ッ」
「?」
女児向けバトルアニメにありがちな変身シーンを想像していたらしい。いやそれまずいだろう。リムネラは分からないから、首をかしげるだけだけれど。
「でも、もふらさまって結構重いんですよね」
そう言って苦笑するのはさっき小柄なもふらを抱えたというアズロ。マルチーズのように軽いかと思ったら、ずっしりと重くて、手が痺れてしまったと苦笑する。
「もふらさまについては、折角ならこれを読んでね♪」
ケイルカは手にちゃっかりなにやら薄い冊子を持っていた。聞けば、彼女が作った舵天照の同人誌だという。
「もふらについては私も本の知識程度ならあるけど」
ケイルカが説明するのは、もふらの基礎知識。食っちゃ寝が好きで、だけれど力持ちだから荷車を引いたりもしてくれる、人々に親しみを持たれた神様なのだと、ざっくり述べて毛並みをもふもふもふ。
「でも、やっぱり折角なら、もふらの背中に乗ってみたいわ。いいかしら? リムネラちゃんも、一緒にどう?」
尋ねられて、リムネラは目をぱちくり。
「……イイのです?」
「かわいい女の子は大歓迎もふ!」
もふらもそんなことを言ってみせる。ドヤ顔で。それに思わず苦笑を浮かべてしまうのは、仕方が無かろう。
●
そんななか、少し離れたところでぼんやりともふらたちを見つめていた少女がいた。
沙耶香・ソーヴィニオン(ka4054)である。
くん、とかいだ空気の匂い。周囲を歩く、もふら達。
知らないはずなのに、不思議なくらいに懐かしいかんじがする。まるでかつて、もふらが常にそばにいてくれたような、そんな錯覚。
そのもふらは大柄な、金色の毛並みがきれいなもふらだった――気がする。
沙耶香のことを『ご主人様』と呼んで懐いてくれていた――気がする。
でもそんな錯覚はたちまちのうちに雲散霧消する。だってそれはきっと気のせい、この世界においてもふらは架空の存在なのだから。
「このもふら達と楽しむことに致しましょうか♪」
そう言いながら、どこからか調理道具が現れて、彼女の手の中に収まっている。食いしん坊なもふらにご馳走してあげようと言う発想が調理道具を呼び寄せたらしい。
正月の残りの餅などを適度に使い、細かく切ってビザのようにしたり、創作料理に余念が無い。もちろん、もふらの数はたっぷりいるし、どれもこれももふらは食いしん坊だから、量はたっぷり作っておく。
ちなみに、つまみ食いをしようとする意地汚いもふらたちには鍋ぶたとお玉で軽いけん制をかけたりしておく。そうしないと、つまみ食いだけで全部無くなってしまうからだ。
「はい、できました~」
そう言って料理を広げると、もふらたちは嬉しそうに料理に飛びついた。沙耶香は、そんなもふら達の様子を見てにこにこ笑う。もふら達が美味しそうに食べている姿は、やはりどこか既視感を覚えて、だけど言葉にしづらくて、笑顔を浮かべて眺めるばかり。
やがて瞼がとろりと重くなっていく。
お腹いっぱいになったもふら達とひなたぼっこをしているうちに眠気が襲ってきたのだ。
どんどん重くなる瞼の隙間からちらりと見えたのは、金色のふかふかの毛並み。
――ああ、あの子は知っている、気がする――
あの子と遊ぶ夢を、今ならきっと見られるに違いない。
●
「でも、リアルブルーの人たちが転移したように、きっと私たちも天儀に転移したのよ! きっと!」
ケイルカの言葉に、目を丸くするリムネラ。
「デモ、今は……クリムゾンウェストに、もどらナイト」
リムネラは小さな肩をふるわせる。彼女のやるべきことは、まだまだ沢山あるのだから――。
「でも、帰る方法が分からない今は、少し息抜きしましょう、リムネラ様」
アズロがそう言うと、少しためらってから小さく頷く。
「もふらは帰り方を知らないか?」
ザレムが問いかけると、もふらたちは「わからんもふ~」と言わんばかりに首を横に振る。
(なにか大きなショックを受けたら、もしかしたら……)
「よし、もふら! 『まふっともふらあたっく』で、俺たちをもとの世界に戻してくれ!」
ザレムがそう言うが、もふらたちは首をかしげるばかり。
もふらたちには今ひとつ通じなかったらしい。
『異世界』という概念がないのだから、仕方が無い。
「こういうときは少し落ち着いてのんびりするもふ~」
もふらがにこにこ笑う。いや、にやにや、に近いけれど。
アズロは思いついてオカリナを取り出した。それを吹き鳴らせば、もふらも気持ちよさそうに口ずさむ。
(もふらさまの癒しが、僕たちの世界にもあればなあ……)
ハーモニーを奏でながら、思わずそう思わずにはいられなかった。
その音につられるようにして、瞼がだんだん重くなる。
眠ってしまいそうになる。
しかし、きっとそれは――この夢から抜け出す手段。
誰も、そこまで気づいていないけれど。
(ああ、今年も沢山もふらさまのような、かわいらしい幻獣に会えますように……!)
マリィアは抱きついていたもふらに頬ずりしながらそんなことを願う。
――もうすぐ、夢の終わり。
だけれど、きっと忘れてしまっても。
その癒しは、彼らの心に根付くのだろう。きっと。たぶん。
「うわぁ~」
思わず声を上げてしまったのはアズロ・シーブルー(ka0781)だ。飼っている二匹のマルチーズも何故か一緒にいるが、その犬たちにもどこかよく似た白いもふもふの存在が目の前にいることに興奮を隠せない。
トワ・トモエは既にもふもふをもふもふすることを満喫する、つまりある種の現実逃避の域に達しているようで、
「ふふ、ふふふふふ」
と傍目では少し気持ちの悪い笑みを浮かべながらなで繰り回している。
そのいっぽう、リムネラ(kz0018)はヘレをなでながら戸惑っていた。
無理もない話だ。何しろ見たことも聞いたこともないふてぶてしい顔のなぞの獣が、人語を理解し、そして話しかけてくるのだ。
「アナタたちは……幻獣?」
基本的にクリムゾンウェストの知識しか無い彼女がそう聞きたくなるのも仕方のない話。
「もふ? もふたちはげんじゅーとか言うものじゃないもふよ? もふたちはもふらもふ!」
かみ合わない会話。リムネラも、もふら達も、お互いの常識が通じないことに、お互い気づいていないのだ。
と、それを遮るように声をかけた少女がいた。紫色の髪をしたエルフの少女、ケイルカ(ka4121)である。歓びを隠しきれない声で、ケイルカは語り出す。
「この子達、私、知ってるわ!」
「エ?」
リムネラが不思議そうに首をかしげると、ケイルカは嬉しそうに口元を緩ませ、そして説明をはじめた。
「リアルブルーの本に『舵天照』って言うファンタジーがあるの、リアルブルーともクリムゾンウェストとも違う『天儀』って言う世界のファンタジー。ちょっと東方の雰囲気に似ているかしら?」
ふむ。ケイルカはその舵天照をいたく気に入っているらしい。横で聞いていたアズロも、そうそう、と言わんばかりに首を縦に振っている。
「このもふもふしたものは、清らかな場所にしか発生しない、尊い精霊様と聞いているよ。そんな存在と遊べるなんて、まるで夢のようだね……いや、本当に夢かも知れないけれど、それでもこのもふもふの感触はとてもリアルだと思うよ」
そんなことを言いながら、なにやらアズロは念じてみる。すると、大きなさらとその上に手作りとおぼしきかぼちゃや芋をふんだんに使ったクッキーやマフィンが現れた。
うーん、やっぱりこれは夢なのかも知れない。ご都合主義すぎるもの。
「エエト……そしたら、これは、リアルブルーの、お話しの中、デスか?」
リムネラは目をぱちくりさせて、その言葉をなげかける。おそらく、とハンターたちは頷き返した。
「ええ。そしてこの子たちはもふらって言うの。あこがれのもふらに出会えるなんて、これって夢じゃ無いわよね? 本当に天儀にこれたなんて……間違いないわ!」
興奮した彼女の声は、わずかに裏返っている。
「さあ、もふらちゃん、いらっしゃーい!」
そう言いながら、ケイルカはもふらと自身が呼んだ一体に抱きつき、そしてもふもふもふっとその柔らかなもふ毛にふれる。想像以上の柔らかさに、ケイルカもすっかり顔を蕩けさせてしまった。
何しろ超一級品の布団なんかよりも、そのさわりごこちは満点。
「これがもふら……アニメをやってたことは知ってたけど、きちんと見たことは無かったのよねぇ……ほら、あの……ジャパンの、対の石の守護者……エエと、阿吽じゃなくて、そうそう、狛犬? それを可愛くした感じの成獣様がでているとは聞いていたんだけれど」
トモエを除いたこのなかで唯一のリアルブルー出身者であるマリィア・バルデス(ka5848)はそんなことをいって説明しようとしているが、その手は気づかぬうちにもふらの柔らかな毛並みをもふもふもふもふと無言でもふりまくっていたあとだった。
と、そこにいた女性の一人のそばに白龍の幼生であるヘレがいることに気づいたのだろう、マリィアは目を大きく見開いてからぺこりと頭を下げる。
「その白龍の幼生がいるってことは、リムネラ様ですよね? よかったら、いっしょにこちらで料理でもつまみませんか? その方が名案が浮かびやすいって言いますし」
腹が減っては何とやら。アズロもリムネラには尊敬の念を払っていると言うこともあり、ポポンと取り出したパンケーキを彼女の前に差し出してにっこりと笑う。
「よろしければお茶もお淹れしましょう。こういうときは多分のんびり構えている方がいいです」
「そう……ソウ、かも知れない、デスね」
リムネラも差し出された温かい茶を一口すすり、少しばかりふうと息をついたのであった。
●
「……にしても、犬のようで犬でもない。幻獣とも違うと言ったな? ええと、もふらだったか」
ザレム・アズール(ka0878)は、興味津々そうにもふらに声をかける。
もふらたちはこくこくっと頷くと、どや顔で
「そうもふ! 天儀の精霊もふよ!」
と胸を張ってみせた。
「オレはザレム……怪しいモノがいないか、見回っていたんだけれど、ここは危険はなさそうだなぁ」
「当たり前もふ! むしろおまえのほうが怪しいもふ! こんなに愛くるしくてみんなの役にも立ってるもふたちを知らないなんて、一体どこの田舎者もふか?」
若干自意識過剰なもふら(しかしこれがもふらという存在の通常運転である)にこんなことを言われてしまう始末。
「オレは怪しくないよー! ほらほら、お菓子も沢山持ってるんだ、これで怪しくない証明にしてくれよー!」
ザレムはポケットから、山のようにお菓子を取り出す。するともふらたちは手のひらを返したかのように目を輝かせ、
「おまえ、悪い奴じゃないもふね!」
そう言いながらさっそくお菓子をお腹の中に収めていく。
「だからそうだって言ってるだろ! それにしてもきれいなもふもふの毛並みだな、お前達」
お腹がくちくなって目を細めているもふらにザレムがそう言ってやると、その言葉にどや顔で頷く。
「もっふっふ。もふ達の魅力にやっと気づいたもふね?」
もふらは流石というか、そんなことは今更当たり前だろう、と言わんばかりの満面の笑み。
「もふりたければ、思う存分もふるといいんだもふ!」
こんな時にもどこか偉そうに言うあたり、やはりどこかあの幻獣王にもにている――なんて、ザレムはちらっと思ったけれど。
と、
「あ、あそこにも人がいるね~!」
アズロが気づいたらしく、手を振ってザレムを呼ぶ。
「アア……ホカにも、いたんデスね」
見覚えのある蜂蜜色の髪と瞳の女性――リムネラに気づいたザレムは慌てて礼をする。
と言っても、彼女の周囲はすっかりティーパーティの様相を呈していたけれど。
そして仲間たちの話を聞いて、彼は斜め上の結論づけた。
つまり――ここが異世界である、と言う。
正しい、のかも知れない、が、ザレムは力を込めて言う。
「だって、なんだかリアルブルーの子ども向けファンタジーに不可欠と言われているらしいマスコット的生物がこんなにいるんだから、きっとそう言う正義の味方として召喚されたんだよ!」
「いや、それは違うような。それにしてもザレムくんも来ていたのね……そしてやっぱりもふらのかわいさに負けちゃったのね?」
妙に冷静な判断をしているのはマリィア。
「ま、まあ……そうだよな。あ、言っとくけど別にリムネラさんの変身シーンが見たかったからじゃ……ッ」
「?」
女児向けバトルアニメにありがちな変身シーンを想像していたらしい。いやそれまずいだろう。リムネラは分からないから、首をかしげるだけだけれど。
「でも、もふらさまって結構重いんですよね」
そう言って苦笑するのはさっき小柄なもふらを抱えたというアズロ。マルチーズのように軽いかと思ったら、ずっしりと重くて、手が痺れてしまったと苦笑する。
「もふらさまについては、折角ならこれを読んでね♪」
ケイルカは手にちゃっかりなにやら薄い冊子を持っていた。聞けば、彼女が作った舵天照の同人誌だという。
「もふらについては私も本の知識程度ならあるけど」
ケイルカが説明するのは、もふらの基礎知識。食っちゃ寝が好きで、だけれど力持ちだから荷車を引いたりもしてくれる、人々に親しみを持たれた神様なのだと、ざっくり述べて毛並みをもふもふもふ。
「でも、やっぱり折角なら、もふらの背中に乗ってみたいわ。いいかしら? リムネラちゃんも、一緒にどう?」
尋ねられて、リムネラは目をぱちくり。
「……イイのです?」
「かわいい女の子は大歓迎もふ!」
もふらもそんなことを言ってみせる。ドヤ顔で。それに思わず苦笑を浮かべてしまうのは、仕方が無かろう。
●
そんななか、少し離れたところでぼんやりともふらたちを見つめていた少女がいた。
沙耶香・ソーヴィニオン(ka4054)である。
くん、とかいだ空気の匂い。周囲を歩く、もふら達。
知らないはずなのに、不思議なくらいに懐かしいかんじがする。まるでかつて、もふらが常にそばにいてくれたような、そんな錯覚。
そのもふらは大柄な、金色の毛並みがきれいなもふらだった――気がする。
沙耶香のことを『ご主人様』と呼んで懐いてくれていた――気がする。
でもそんな錯覚はたちまちのうちに雲散霧消する。だってそれはきっと気のせい、この世界においてもふらは架空の存在なのだから。
「このもふら達と楽しむことに致しましょうか♪」
そう言いながら、どこからか調理道具が現れて、彼女の手の中に収まっている。食いしん坊なもふらにご馳走してあげようと言う発想が調理道具を呼び寄せたらしい。
正月の残りの餅などを適度に使い、細かく切ってビザのようにしたり、創作料理に余念が無い。もちろん、もふらの数はたっぷりいるし、どれもこれももふらは食いしん坊だから、量はたっぷり作っておく。
ちなみに、つまみ食いをしようとする意地汚いもふらたちには鍋ぶたとお玉で軽いけん制をかけたりしておく。そうしないと、つまみ食いだけで全部無くなってしまうからだ。
「はい、できました~」
そう言って料理を広げると、もふらたちは嬉しそうに料理に飛びついた。沙耶香は、そんなもふら達の様子を見てにこにこ笑う。もふら達が美味しそうに食べている姿は、やはりどこか既視感を覚えて、だけど言葉にしづらくて、笑顔を浮かべて眺めるばかり。
やがて瞼がとろりと重くなっていく。
お腹いっぱいになったもふら達とひなたぼっこをしているうちに眠気が襲ってきたのだ。
どんどん重くなる瞼の隙間からちらりと見えたのは、金色のふかふかの毛並み。
――ああ、あの子は知っている、気がする――
あの子と遊ぶ夢を、今ならきっと見られるに違いない。
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「でも、リアルブルーの人たちが転移したように、きっと私たちも天儀に転移したのよ! きっと!」
ケイルカの言葉に、目を丸くするリムネラ。
「デモ、今は……クリムゾンウェストに、もどらナイト」
リムネラは小さな肩をふるわせる。彼女のやるべきことは、まだまだ沢山あるのだから――。
「でも、帰る方法が分からない今は、少し息抜きしましょう、リムネラ様」
アズロがそう言うと、少しためらってから小さく頷く。
「もふらは帰り方を知らないか?」
ザレムが問いかけると、もふらたちは「わからんもふ~」と言わんばかりに首を横に振る。
(なにか大きなショックを受けたら、もしかしたら……)
「よし、もふら! 『まふっともふらあたっく』で、俺たちをもとの世界に戻してくれ!」
ザレムがそう言うが、もふらたちは首をかしげるばかり。
もふらたちには今ひとつ通じなかったらしい。
『異世界』という概念がないのだから、仕方が無い。
「こういうときは少し落ち着いてのんびりするもふ~」
もふらがにこにこ笑う。いや、にやにや、に近いけれど。
アズロは思いついてオカリナを取り出した。それを吹き鳴らせば、もふらも気持ちよさそうに口ずさむ。
(もふらさまの癒しが、僕たちの世界にもあればなあ……)
ハーモニーを奏でながら、思わずそう思わずにはいられなかった。
その音につられるようにして、瞼がだんだん重くなる。
眠ってしまいそうになる。
しかし、きっとそれは――この夢から抜け出す手段。
誰も、そこまで気づいていないけれど。
(ああ、今年も沢山もふらさまのような、かわいらしい幻獣に会えますように……!)
マリィアは抱きついていたもふらに頬ずりしながらそんなことを願う。
――もうすぐ、夢の終わり。
だけれど、きっと忘れてしまっても。
その癒しは、彼らの心に根付くのだろう。きっと。たぶん。
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もふらと遊ぼう卓 ケイルカ(ka4121) エルフ|15才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2016/01/08 23:04:35 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/01/07 17:39:20 |