ゲスト
(ka0000)
【初夢】救援要請
マスター:からた狐

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~20人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 4日
- 締切
- 2016/01/10 07:30
- 完成日
- 2016/01/24 23:52
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
これといった特徴のない、小さな街だった。
中心部に町長宅。周囲に町民宅が点在、ところどころにお店。全部足しても百かそこらの集落と言える。数時間もあれば、主だった場所は十分見て回れる規模だ。
対して、街を囲む防壁は堅いレンガを高く積み上げた堅牢な物。街の規模に対して実に不釣り合いだが、これは大昔の砦跡を利用して出来た為だ。
出入り口となる門は一か所。その外には田園風景が広がり、農作業をする農民以外は滅多に人の通りも無い。
結局、不釣り合いな壁を持つ以外は、やはり特徴のない普通の田舎町でしかなかった。
その街を、歪虚が強襲した。
百を超える黒犬の歪虚たち。目と口から炎を発し、中には牛ほどの巨大さを持つ者もいる。その後方に控える片目の猟師の姿をした人型歪虚が角笛を吹き鳴らせば、犬たちは見事な連携で人間を噛み殺し、無力な人間たちを追い立て取り囲み、弄りつくす。
人々は命からがら街に逃げ込み、門扉を閉ざした。幸い、古いながらも頑丈な壁を歪虚たちは越えられないでいる。
●
「しかし、いつまでもこもったままではいられない」
町人の一人が危惧する通り。歪虚は街を取り囲みながら、中に入り込めそうな場所を探している。壁に炎を吹きかけ、門に体当たりを繰り返す。
この調子で攻撃が続けば、いずれどこかが壊れる。そこから入り込まれれば、人々はもう蹂躙されるしかない。
田舎町なのでハンターなんていない。旅行者としてもいない。単なる兵士すらいない。
強くても、普通の青年たちがせいぜい。彼らが武器を手にした所でたかが知れている。
「何とかハンターオフィスに連絡を入れなければ」
オフィスのある街まで、街道沿いを早馬で一時間ほど。依頼を要請してハンターが戻ってくるまで、ざっと三時間ほど持ちこたえれば何とかなりそうだ。
けれど、それには門を開け、街を取り囲む歪虚の群れを突破して馬で駆けねばならない。馬程度で犬歪虚を振り切れそうも無く。門前で犬たちを指揮する猟師歪虚も、その機を逃さず攻め込んでくるだろうけれども。
「そういえば。砦として使われていた時の抜け道がどこかにあると聞いたことが……」
誰かがふと思い出す。
さっそく街に残る文献を調べ上げ、抜け道の所在を見つける。
外に通じると知り、一度は喝采を上げたが……。
「駄目だ。中は崩れて通れそうにない」
入り口をふさいでいた土砂。掘り返して扉を開けると、石組の通路があった。
だが、年月の為か、石が崩落し、道を塞いでいる。
「いや、風は通っている。――ここの隙間から向こう側にいけるんじゃないか?」
積み重なった石の隙間。人一人程度が這って通れそうな空間が残っていた。
「そんな隙間では、妊婦や老人には無理だぞ。怪我人だっているんだ。それに街の人全員が抜け出す前に、通路の方が崩壊しかねん」
「だが、数人なら外に出られそうだ。オフィスに連絡を入れるぐらいはできる」
抜け道は地下を通り、近くの山の中腹付近に出るようだ。だが、そこは街を挟んでオフィスのある都とは真逆の方向にある。抜け出たとしても、特に何の用意も無いまま、山を下り、歪虚に見つからないよう都へたどり着かなければならない。
「普通に歩いても丸一日はかかりそうだ。もし歪虚に見つかり襲われれば……」
誰もが顔を見合わせ、ぞっと身を震わせた。知らせるには外に出なければいけないが、危険は避けられない。
「なんとか門扉を支え、籠城を決め込むか」
食料や水などは十分ある。頑張れば一カ月は篭れるだろう。
しかし、街の異変に誰が気付いてくれるだろう。それはいつになるだろう。
歪虚に囲まれ、壁を壊される恐怖を感じながら、来るか来ないか分からない救援を待つのも胆力が必要になる。
「どうする」
留まるのも、進むのも危険極まりない。
それでも選ばねばならない。自分たちの生命をかけて、生き延びる道を――。
これといった特徴のない、小さな街だった。
中心部に町長宅。周囲に町民宅が点在、ところどころにお店。全部足しても百かそこらの集落と言える。数時間もあれば、主だった場所は十分見て回れる規模だ。
対して、街を囲む防壁は堅いレンガを高く積み上げた堅牢な物。街の規模に対して実に不釣り合いだが、これは大昔の砦跡を利用して出来た為だ。
出入り口となる門は一か所。その外には田園風景が広がり、農作業をする農民以外は滅多に人の通りも無い。
結局、不釣り合いな壁を持つ以外は、やはり特徴のない普通の田舎町でしかなかった。
その街を、歪虚が強襲した。
百を超える黒犬の歪虚たち。目と口から炎を発し、中には牛ほどの巨大さを持つ者もいる。その後方に控える片目の猟師の姿をした人型歪虚が角笛を吹き鳴らせば、犬たちは見事な連携で人間を噛み殺し、無力な人間たちを追い立て取り囲み、弄りつくす。
人々は命からがら街に逃げ込み、門扉を閉ざした。幸い、古いながらも頑丈な壁を歪虚たちは越えられないでいる。
●
「しかし、いつまでもこもったままではいられない」
町人の一人が危惧する通り。歪虚は街を取り囲みながら、中に入り込めそうな場所を探している。壁に炎を吹きかけ、門に体当たりを繰り返す。
この調子で攻撃が続けば、いずれどこかが壊れる。そこから入り込まれれば、人々はもう蹂躙されるしかない。
田舎町なのでハンターなんていない。旅行者としてもいない。単なる兵士すらいない。
強くても、普通の青年たちがせいぜい。彼らが武器を手にした所でたかが知れている。
「何とかハンターオフィスに連絡を入れなければ」
オフィスのある街まで、街道沿いを早馬で一時間ほど。依頼を要請してハンターが戻ってくるまで、ざっと三時間ほど持ちこたえれば何とかなりそうだ。
けれど、それには門を開け、街を取り囲む歪虚の群れを突破して馬で駆けねばならない。馬程度で犬歪虚を振り切れそうも無く。門前で犬たちを指揮する猟師歪虚も、その機を逃さず攻め込んでくるだろうけれども。
「そういえば。砦として使われていた時の抜け道がどこかにあると聞いたことが……」
誰かがふと思い出す。
さっそく街に残る文献を調べ上げ、抜け道の所在を見つける。
外に通じると知り、一度は喝采を上げたが……。
「駄目だ。中は崩れて通れそうにない」
入り口をふさいでいた土砂。掘り返して扉を開けると、石組の通路があった。
だが、年月の為か、石が崩落し、道を塞いでいる。
「いや、風は通っている。――ここの隙間から向こう側にいけるんじゃないか?」
積み重なった石の隙間。人一人程度が這って通れそうな空間が残っていた。
「そんな隙間では、妊婦や老人には無理だぞ。怪我人だっているんだ。それに街の人全員が抜け出す前に、通路の方が崩壊しかねん」
「だが、数人なら外に出られそうだ。オフィスに連絡を入れるぐらいはできる」
抜け道は地下を通り、近くの山の中腹付近に出るようだ。だが、そこは街を挟んでオフィスのある都とは真逆の方向にある。抜け出たとしても、特に何の用意も無いまま、山を下り、歪虚に見つからないよう都へたどり着かなければならない。
「普通に歩いても丸一日はかかりそうだ。もし歪虚に見つかり襲われれば……」
誰もが顔を見合わせ、ぞっと身を震わせた。知らせるには外に出なければいけないが、危険は避けられない。
「なんとか門扉を支え、籠城を決め込むか」
食料や水などは十分ある。頑張れば一カ月は篭れるだろう。
しかし、街の異変に誰が気付いてくれるだろう。それはいつになるだろう。
歪虚に囲まれ、壁を壊される恐怖を感じながら、来るか来ないか分からない救援を待つのも胆力が必要になる。
「どうする」
留まるのも、進むのも危険極まりない。
それでも選ばねばならない。自分たちの生命をかけて、生き延びる道を――。
リプレイ本文
※このシナリオは夢シナリオです。オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。
堅固な古い砦を元に発達した街。それ以外の特徴を持たない田舎町は、歪虚に包囲されていた。
街の中に篭るのは、力不足の一般人たち。
「あーあ、こんな所で終わりか。ついてないなぁ」
気が抜けたように、無限 馨(ka0544)が座り込む。
サルヴァトーレ・ロッソと共に転移してどのくらいの月日が経ったか。LH044の事件で己の無力さを痛感し、クリムゾンウェストに来てからも無気力に過ごしていた。
この街に寄ったのもほんの偶然。なのに、ずいぶん間の悪い偶然を引き当ててしまったものだ。
壁はまだ街を守っている。だが、外では歪虚が何か画策している気配がある。
いずれ、壁を越えて入ってくる。大量の歪虚たちにここにいる人たちでは抵抗できるはずもない。そして、その運命は馨も同じ……。
だが、それを良しとしない人間もこの場にはいた。
「パティが行くヨ! ハンターオフィスに事態を知らせて、助けを呼んでくる!」
町娘の中から、パトリシア=K=ポラリス(ka5996)が大きく手を振り、声を上げた。
脱出口は一応ある。そこから外に出て、離れた都にあるハンターオフィスに駆け込む。ハンターが来れば、危機的状況は回避される。
今の所、それが一番助かる方法だろう。だが、街から出れば歪虚がいる。
最善と理解していても、多くの大人は二の足を踏んでいた。
それを外見十六の少女がやろうというのだ。
驚いた視線がパトリシアに集中する。
勿論、パトリシアとてこんな無茶はしたくない。それでも他に考え付く手段は無く、何より人々が言い争う姿を見る方が辛かった。
「私も行く。村人Aよりマシな儚い抵抗はしたい」
言ってる間にも、烏丸 涼子 (ka5728)は淡々と身支度を整える。
用意してもらった砂色のコートは少しでも目立たないようにする為。さらに犬型歪虚相手を考慮して、砂の上を転がり地面の臭いをつけた。
音を立てないように金属製の物は外したが、リアルブルーから持って来た拳銃は腰にねじ込む。帰還方法を探してさ迷っていたが、その考えも変化してきている。それでも、ここで命を散らすつもりもない。
そんな二人の態度を、馨は全く理解できない。
「はあ? なんで、あがこうとするんすか? どうせ、皆、助からないっすよ。VOIDに弄ばれて苦しむ位なら、諦めて首でも吊った方が楽になれるっすよ!?」
不穏な台詞を咎めるように、周囲がにらみつけて来る。
ただ、中には馨の意見ももっともだと……いやむしろ――、と言いたげな視線も混じっていた。
「そこまでです!」
不穏な雰囲気を晴らすように、アメリア・フォーサイス(ka4111)が手を叩いた。
「助からないって決まった訳じゃないですよ。幸い防壁は機能してるし備蓄もあります。あとは外の敵をなんとかする事さえできれば……首を吊るのはまだ早いです。抵抗しようと抵抗しまいとどうせ死ぬかもしれないなら出来る限りの事をしてからにしませんか? だから、手を貸して下さい」
手を差し伸べるアメリアに、馨は困惑して顔を背ける。
「あなたも無謀にも出ようと言いだすんっすか」
「いいえ。私は残って救出隊を待ちます。彼らの脱出の際にはなるべく歪虚の目をそらす必要がありますし、もしかすると他に脱出口があるかもしれません」
アメリアは、転移してくる前はただのOL。この事態に対処する術がないのは変わりない。それでも怖がってばかりでは状況も変わらない。なんとかしたい気持ちのままに、落ち着いて先を見る。
「そうだな。今は協力すべき時だ。全員で生き延びよう」
エアルドフリス(ka1856)は商売道具の薬を確認する。逃げ込んだ怪我人も多い。旅の途中で立ち寄った街だが、街医者と協力して負傷者を見て回っていた。不安に震える者には落ち着くよう語り掛け、薬草茶を振る舞う。
そんなエアルドフリスに、劉 厳靖(ka4574)は酒臭い息を吹きかけた。
「おいおい、わざわざ死に急ぐ事はあるめぇ。放っておいてもそのうち助けは来るんじゃねぇか? 慌てず待とうぜ。ダメだったらそれまでだってこった」
手にした酒に口をつけると、エアルドフリスにも一杯どうだと吹っ掛ける。
「やめておこう。それに酒も消毒に使えるんだ。飲むな、とも言えないが、出来れば少しは残してくれないか」
やんわりと断られ、厳靖の表情が軽く歪んだ。見せつけるように、酒を一気に飲み干す。
「希望だなんだって、ホントに無事助けを呼びに行けるなんて思ってんのかい? 死ぬのが早まるだけさ。そんなに甘かねぇよ。――ふん、まぁせいぜい頑張れよ。だけどな、間違っても連中を中に引きこむようなことはやめてくれよな」
揶揄するように言葉を吐き捨てると、そのままふらふらとどこかへと行ってしまった。
●
脱出に向け、夜明けを待った。
涼子の同行は、パトリシアとしても心強い。彼女になら、自分もカムフラージュになりそうなコートを着込み、草や土で匂いを隠す。
旅立ちの準備はすぐに済んだ。見送りの方が若干の支度が必要だった。
東の空が白み始める。
街を囲む壁。その正門の上から、アメリアは夜明けを見ていた。
彼女の他にも、少なくない人数が壁の上に並ぶ。
「なるべく、煙をいぶすように派手に。奴らの目をこちらに向けるんだ」
エアルドフリスの指示で、火のついた藁を夕べから数度外に投げている。おかげで、周囲には殺気に満ちた犬歪虚が。
獲物が姿を見せたとして、攻撃姿勢をとって低く唸りを上げている。その奥では人に似た歪虚が角笛を手にふんぞり返っている。
だが、それだけ。
壁は十分な高さがある。歪虚と言えども、簡単には手を出せない。
そうと分かっていても、異形から殺意を向けられるのは生きた心地がしない。全員が歯の根が合わないほど震えているのは、寒さのせいでもなかった。
やがて、朝日が街を照らし始める。
「戦闘開始! 無理はしないでください!」
号令と共に、人々は街からかき集めた矢や石を歪虚へと放った。
突然の攻撃に、犬歪虚の一部が退いた。そのまま野良犬のように尻尾を巻いて逃げ出してくれればいいのに、やはりそれは虫が良すぎた。人型歪虚からの角笛が響くと、犬たちは先ほど以上にあらぶり、壁に攻撃を仕掛けて来る。
訓練を受けていない人々からの矢や投擲程度、下っ端である犬歪虚すら平然としている。
けれども姿を見せた獲物とうっとうしい攻撃に、犬たちはますます正門前に集まり始めていた。
その間に、涼子とパトリシアは潰れかけていた通路を潜り抜け、裏の山へと脱出を果たす。
泥まみれになったが、それも幸いと払い落とさず。出入り口を丁寧に隠すと、とにかく先を急ぐ。
「なるべく水をまたぐように移動する。匂いを消して行くよ」
事前に確認した地理を思い出しながら、涼子は行く道を示す。
淡々と冷たく聞こえる物言いだが、パトリシアは素直に頷く。
多くの歪虚は街を狙い、さらに残った人がその目を引き付けてくれている。とはいえ、この界隈にもまだうろつく歪虚はいるかもしれない。
(どうか、あの黒い悪魔に見つかりませんように)
祈りながらパトリシアは足音を立てないよう気を付けつつ、涼子に続いて歩き出す。
――その彼女らの後を追いかけて来る影があった。
●
山を慎重に下り、麓に出ると道が見えた。その道を行けばいずれ都に着く。
無事に下山できたことをひとまず喜んだが、その感動もすぐに吹き飛んだ。
悲鳴を上げそうになるのを手でふさぎ、二人は木の陰へと身を隠す。
道の行く先で黒い犬たちが群れていた。ほんの数匹だが、囲まれると逃げられない。
周囲に広がるのは大量の血。どうやらたまたま通りかかった人間が襲われたようだ。さもしく犬歪虚たちは散らばる死体に顔を近付けている。
こちらに気付く様子はないが、歪虚たちが移動する様子もない。
表情を硬くして、涼子は拳銃を構える。
いざという時は自分が歪虚を引き付け、パトリシアを逃がすつもりでいた。
(こっちの世界に来て絶望もしたけど、今までのしがらみをリセットできるなら悪くない。この旅が終わったら、どこかで身を落ち着けよう、と思っただけだけどね)
そんなささやかな願いは届かないのか。絶望も感じず、涼子はただそう思う。
一方で、パトリシアのも自分が囮となるつもりでいた。涼子と自分とを天秤にかけ、どちらがより生存の可能性が高いか。覚悟は街を出る時にすでに決めていた。
(死ぬのはイタイカナ。パパやママは、泣いちゃうカナ)
その時を思うと泣きたくなる程胸が痛い。けれど、その感情は胸の奥に押しやり、無理やりにでも笑顔を作ろうとする。
後は、二人どちらが先に動くか――。
けれども、状況はすぐに一変した。
犬歪虚たちの中に、肉の塊が投げ込まれる。歪虚たちは投げ込まれた肉よりも、投げ込んで来た方角へと顔を向ける。
「ほらよ、こっちだ!!」
声を上げ、銃声を鳴らしたのは厳靖だった。手には鉄パイプすら持ち合わせている。
そのまま身を翻すと山の奥へ駆け去っていく。犬歪虚たちは即座にその後を追い出した。
「そんな、どうして!?」
「しっ! 今の内に」
蒼白な顔で立ち尽くすパトリシアの手を取ると、涼子は強引に都に向けて走り出す。
一度走り出すともう止まらなかった。
追って来る歪虚はいない。二人は、努めて今やらなければならない事だけを考え、遠い道のりをただ突き進んでいった。
酔いどれの厳靖だったが、女性二人が本当に抜け出すと分かると、誰にも告げることなく動き出していた。
必要な道具をかばんに詰め、銃と鉄パイプを手に抜け道をくぐり、密かに後をつけていたのだ。
そして、犬歪虚の群れに肉を投げつけ、銃声で気をひき、道を開いた。二人が先に行ったのは目の端で確認したが、それ以上どうなったかはもう分からない。
確認しようにも執拗に追いかけて来る犬歪虚たちの相手をせざるを得なかった。
「ガウ、ガッ!!」
牙を剥く犬歪虚。厳靖は酒を口に含むと相手の顔面に吹き付ける。
強い匂いにひるんだ隙に、鉄パイプで打ち払った。
けれども、致命傷には程遠い。さらには騒ぎに気付き、犬歪虚の数が増していた。
やがて周囲を囲まれ、どの方角にも逃げられず。厳靖は山の奥で立ちつくすしかなくなった。
「さてこれまでか。ったく、だからイヤだったんだがなぁ」
口で言うほど嘆きもせず。厳靖は持っていた酒を飲み干す。
空の瓶を捨てると、荷から取り出す別の瓶。その中にあるのは酒ではなく、火薬。集めた銃弾から取り出した物なので、威力がどの程度になるかも不確か。
頃合いを計っていたかのように、犬歪虚たちが一斉に飛びかかってきた。
「まぁ仕方ねぇ、後は任せたぜ」
歪虚の真ん中に火薬瓶を放り投げると、銃で打ち抜く。
爆発は一瞬。広がった衝撃は多くの歪虚と共に厳靖の姿も消し去っていた。
●
昇った陽は、いつも通りに沈んだ。
いつもと違うのは街の外だ。閉ざされた門は絶えず体当たりされている音が繰り返され、さらに、至る所から引っ掻く音や唸り声が聞こえてくる。
街中から物をかき集め、門の前にはバリケードを作っている。定期的に職人が見廻り、壁の補強にも努めている。
……が、いざという時にどれだけの効果があるか、誰も自信は無い。
風に乗って聞こえてくる不気味な音に、人々は怯え、苛立つ。
ストレスから、無用な軋轢も起きた。
「争っている場合かね? 辛い時こそ助け合うのが可能なのは、人だけだ」
不必要な口論が怒る度にエアルドフリスは仲裁に入る。言えば何とか収まるが、またすぐどこかでいさかいが起こり、そして団結の大切さを説く。その繰り返しになっていた。
厳靖のように街から見なくなった顔も結構多い。どこに行ったのか。不安は残るが、探す余裕も無くなっていた。
子供たちは怯え、泣き出す子もいる。大の大人でもうろたえているのだ。子供たちの感じる恐怖はどれだけになるのか。
「大丈夫ですよ。そうだ、リアルブルーのお歌を聞きたくないですか?」
少しでも恐怖を和らげようと、アメリアは子供たちの面倒を見る。一緒に遊んだり、明るく童謡を歌ったり。
他に脱出路が無いかも探したが、残念ながら見つからなかった。上手く二人がオフィスにたどり着くのをただ祈るだけだ。
診療に補強の指示に見回りにと、エアルドフリスの疲労は濃い。たった一日でこれだ。後、どれだけ待つのか……。
さらに夜も深まった頃、その心配はしなくてもよくなった。
「ギャアアアアア!」
街中で起きた悲鳴。ただちに現場に向かうと、犬の歪虚がそこにいた。周囲には武器を持った見回りの人と、血だらけで千切れている見回りの人と……。
さらに近くの壁からは犬歪虚が顔を覗かせている。
「すまねぇ。気付いたら壁の外に足がかりを作っていやがった」
闇に紛れて、木や石を運び、壁を飛び越えて来たらしい。まだ低いのか、壁に手をかけるも登り切れず落ちる個体もいる。だが、いずれ確実に入り込んでくる――と思う間に、次の一体が壁を乗り越えてきた。
「は……はは……。VOIDが来やがる。これで終わりかよ」
さっさと首を吊っておけばと、脱力する馨。
「終わり……。でも、子供たちだけは……」
「まだだ。助けは必ず来る。彼女達を信じよう。それまで持ち堪えるのが我々の義務だ」
蒼白になりながらもアメリアは子供たちを逃がそうと動きだし、エアルドフリスは歯を食いしばって歪虚へと短剣を構えた。
けれども、二人もどこかに諦めが生まれていた。アメリアは妹に、エアルドフリスは短剣をくれた恋人に向けて小さく謝罪を口にする。
さらに次。さらにもう一体、と入り込んでくる犬歪虚。数を増し、一直線に人に向かってくる。
そして、轟音が街中に響き、犬歪虚の体が大きく弾け飛んだ。
何が起きたか。事態を把握するのに、時間を要した。
聞こえたのは銃声。さらに次々と鳴り響くや、的確に犬歪虚は数を減らしていく。
「大丈夫ですか? 助けに来ました」
壁の上には見知らぬ人物。重装備に大型の銃は、田舎町では見たことすらない。
壁の外では犬が騒いでいる。だがそれは、悲鳴と逃走の唸りだと分かる。さらに加わったのは爆音に雷鳴、風の唸り……に交じる、力強く叫ぶ複数の人の声。
助けだ、と誰かが呟く。
その呟きは人々の口に乗り、やがて街中に歓喜が溢れた。
堅固な古い砦を元に発達した街。それ以外の特徴を持たない田舎町は、歪虚に包囲されていた。
街の中に篭るのは、力不足の一般人たち。
「あーあ、こんな所で終わりか。ついてないなぁ」
気が抜けたように、無限 馨(ka0544)が座り込む。
サルヴァトーレ・ロッソと共に転移してどのくらいの月日が経ったか。LH044の事件で己の無力さを痛感し、クリムゾンウェストに来てからも無気力に過ごしていた。
この街に寄ったのもほんの偶然。なのに、ずいぶん間の悪い偶然を引き当ててしまったものだ。
壁はまだ街を守っている。だが、外では歪虚が何か画策している気配がある。
いずれ、壁を越えて入ってくる。大量の歪虚たちにここにいる人たちでは抵抗できるはずもない。そして、その運命は馨も同じ……。
だが、それを良しとしない人間もこの場にはいた。
「パティが行くヨ! ハンターオフィスに事態を知らせて、助けを呼んでくる!」
町娘の中から、パトリシア=K=ポラリス(ka5996)が大きく手を振り、声を上げた。
脱出口は一応ある。そこから外に出て、離れた都にあるハンターオフィスに駆け込む。ハンターが来れば、危機的状況は回避される。
今の所、それが一番助かる方法だろう。だが、街から出れば歪虚がいる。
最善と理解していても、多くの大人は二の足を踏んでいた。
それを外見十六の少女がやろうというのだ。
驚いた視線がパトリシアに集中する。
勿論、パトリシアとてこんな無茶はしたくない。それでも他に考え付く手段は無く、何より人々が言い争う姿を見る方が辛かった。
「私も行く。村人Aよりマシな儚い抵抗はしたい」
言ってる間にも、烏丸 涼子 (ka5728)は淡々と身支度を整える。
用意してもらった砂色のコートは少しでも目立たないようにする為。さらに犬型歪虚相手を考慮して、砂の上を転がり地面の臭いをつけた。
音を立てないように金属製の物は外したが、リアルブルーから持って来た拳銃は腰にねじ込む。帰還方法を探してさ迷っていたが、その考えも変化してきている。それでも、ここで命を散らすつもりもない。
そんな二人の態度を、馨は全く理解できない。
「はあ? なんで、あがこうとするんすか? どうせ、皆、助からないっすよ。VOIDに弄ばれて苦しむ位なら、諦めて首でも吊った方が楽になれるっすよ!?」
不穏な台詞を咎めるように、周囲がにらみつけて来る。
ただ、中には馨の意見ももっともだと……いやむしろ――、と言いたげな視線も混じっていた。
「そこまでです!」
不穏な雰囲気を晴らすように、アメリア・フォーサイス(ka4111)が手を叩いた。
「助からないって決まった訳じゃないですよ。幸い防壁は機能してるし備蓄もあります。あとは外の敵をなんとかする事さえできれば……首を吊るのはまだ早いです。抵抗しようと抵抗しまいとどうせ死ぬかもしれないなら出来る限りの事をしてからにしませんか? だから、手を貸して下さい」
手を差し伸べるアメリアに、馨は困惑して顔を背ける。
「あなたも無謀にも出ようと言いだすんっすか」
「いいえ。私は残って救出隊を待ちます。彼らの脱出の際にはなるべく歪虚の目をそらす必要がありますし、もしかすると他に脱出口があるかもしれません」
アメリアは、転移してくる前はただのOL。この事態に対処する術がないのは変わりない。それでも怖がってばかりでは状況も変わらない。なんとかしたい気持ちのままに、落ち着いて先を見る。
「そうだな。今は協力すべき時だ。全員で生き延びよう」
エアルドフリス(ka1856)は商売道具の薬を確認する。逃げ込んだ怪我人も多い。旅の途中で立ち寄った街だが、街医者と協力して負傷者を見て回っていた。不安に震える者には落ち着くよう語り掛け、薬草茶を振る舞う。
そんなエアルドフリスに、劉 厳靖(ka4574)は酒臭い息を吹きかけた。
「おいおい、わざわざ死に急ぐ事はあるめぇ。放っておいてもそのうち助けは来るんじゃねぇか? 慌てず待とうぜ。ダメだったらそれまでだってこった」
手にした酒に口をつけると、エアルドフリスにも一杯どうだと吹っ掛ける。
「やめておこう。それに酒も消毒に使えるんだ。飲むな、とも言えないが、出来れば少しは残してくれないか」
やんわりと断られ、厳靖の表情が軽く歪んだ。見せつけるように、酒を一気に飲み干す。
「希望だなんだって、ホントに無事助けを呼びに行けるなんて思ってんのかい? 死ぬのが早まるだけさ。そんなに甘かねぇよ。――ふん、まぁせいぜい頑張れよ。だけどな、間違っても連中を中に引きこむようなことはやめてくれよな」
揶揄するように言葉を吐き捨てると、そのままふらふらとどこかへと行ってしまった。
●
脱出に向け、夜明けを待った。
涼子の同行は、パトリシアとしても心強い。彼女になら、自分もカムフラージュになりそうなコートを着込み、草や土で匂いを隠す。
旅立ちの準備はすぐに済んだ。見送りの方が若干の支度が必要だった。
東の空が白み始める。
街を囲む壁。その正門の上から、アメリアは夜明けを見ていた。
彼女の他にも、少なくない人数が壁の上に並ぶ。
「なるべく、煙をいぶすように派手に。奴らの目をこちらに向けるんだ」
エアルドフリスの指示で、火のついた藁を夕べから数度外に投げている。おかげで、周囲には殺気に満ちた犬歪虚が。
獲物が姿を見せたとして、攻撃姿勢をとって低く唸りを上げている。その奥では人に似た歪虚が角笛を手にふんぞり返っている。
だが、それだけ。
壁は十分な高さがある。歪虚と言えども、簡単には手を出せない。
そうと分かっていても、異形から殺意を向けられるのは生きた心地がしない。全員が歯の根が合わないほど震えているのは、寒さのせいでもなかった。
やがて、朝日が街を照らし始める。
「戦闘開始! 無理はしないでください!」
号令と共に、人々は街からかき集めた矢や石を歪虚へと放った。
突然の攻撃に、犬歪虚の一部が退いた。そのまま野良犬のように尻尾を巻いて逃げ出してくれればいいのに、やはりそれは虫が良すぎた。人型歪虚からの角笛が響くと、犬たちは先ほど以上にあらぶり、壁に攻撃を仕掛けて来る。
訓練を受けていない人々からの矢や投擲程度、下っ端である犬歪虚すら平然としている。
けれども姿を見せた獲物とうっとうしい攻撃に、犬たちはますます正門前に集まり始めていた。
その間に、涼子とパトリシアは潰れかけていた通路を潜り抜け、裏の山へと脱出を果たす。
泥まみれになったが、それも幸いと払い落とさず。出入り口を丁寧に隠すと、とにかく先を急ぐ。
「なるべく水をまたぐように移動する。匂いを消して行くよ」
事前に確認した地理を思い出しながら、涼子は行く道を示す。
淡々と冷たく聞こえる物言いだが、パトリシアは素直に頷く。
多くの歪虚は街を狙い、さらに残った人がその目を引き付けてくれている。とはいえ、この界隈にもまだうろつく歪虚はいるかもしれない。
(どうか、あの黒い悪魔に見つかりませんように)
祈りながらパトリシアは足音を立てないよう気を付けつつ、涼子に続いて歩き出す。
――その彼女らの後を追いかけて来る影があった。
●
山を慎重に下り、麓に出ると道が見えた。その道を行けばいずれ都に着く。
無事に下山できたことをひとまず喜んだが、その感動もすぐに吹き飛んだ。
悲鳴を上げそうになるのを手でふさぎ、二人は木の陰へと身を隠す。
道の行く先で黒い犬たちが群れていた。ほんの数匹だが、囲まれると逃げられない。
周囲に広がるのは大量の血。どうやらたまたま通りかかった人間が襲われたようだ。さもしく犬歪虚たちは散らばる死体に顔を近付けている。
こちらに気付く様子はないが、歪虚たちが移動する様子もない。
表情を硬くして、涼子は拳銃を構える。
いざという時は自分が歪虚を引き付け、パトリシアを逃がすつもりでいた。
(こっちの世界に来て絶望もしたけど、今までのしがらみをリセットできるなら悪くない。この旅が終わったら、どこかで身を落ち着けよう、と思っただけだけどね)
そんなささやかな願いは届かないのか。絶望も感じず、涼子はただそう思う。
一方で、パトリシアのも自分が囮となるつもりでいた。涼子と自分とを天秤にかけ、どちらがより生存の可能性が高いか。覚悟は街を出る時にすでに決めていた。
(死ぬのはイタイカナ。パパやママは、泣いちゃうカナ)
その時を思うと泣きたくなる程胸が痛い。けれど、その感情は胸の奥に押しやり、無理やりにでも笑顔を作ろうとする。
後は、二人どちらが先に動くか――。
けれども、状況はすぐに一変した。
犬歪虚たちの中に、肉の塊が投げ込まれる。歪虚たちは投げ込まれた肉よりも、投げ込んで来た方角へと顔を向ける。
「ほらよ、こっちだ!!」
声を上げ、銃声を鳴らしたのは厳靖だった。手には鉄パイプすら持ち合わせている。
そのまま身を翻すと山の奥へ駆け去っていく。犬歪虚たちは即座にその後を追い出した。
「そんな、どうして!?」
「しっ! 今の内に」
蒼白な顔で立ち尽くすパトリシアの手を取ると、涼子は強引に都に向けて走り出す。
一度走り出すともう止まらなかった。
追って来る歪虚はいない。二人は、努めて今やらなければならない事だけを考え、遠い道のりをただ突き進んでいった。
酔いどれの厳靖だったが、女性二人が本当に抜け出すと分かると、誰にも告げることなく動き出していた。
必要な道具をかばんに詰め、銃と鉄パイプを手に抜け道をくぐり、密かに後をつけていたのだ。
そして、犬歪虚の群れに肉を投げつけ、銃声で気をひき、道を開いた。二人が先に行ったのは目の端で確認したが、それ以上どうなったかはもう分からない。
確認しようにも執拗に追いかけて来る犬歪虚たちの相手をせざるを得なかった。
「ガウ、ガッ!!」
牙を剥く犬歪虚。厳靖は酒を口に含むと相手の顔面に吹き付ける。
強い匂いにひるんだ隙に、鉄パイプで打ち払った。
けれども、致命傷には程遠い。さらには騒ぎに気付き、犬歪虚の数が増していた。
やがて周囲を囲まれ、どの方角にも逃げられず。厳靖は山の奥で立ちつくすしかなくなった。
「さてこれまでか。ったく、だからイヤだったんだがなぁ」
口で言うほど嘆きもせず。厳靖は持っていた酒を飲み干す。
空の瓶を捨てると、荷から取り出す別の瓶。その中にあるのは酒ではなく、火薬。集めた銃弾から取り出した物なので、威力がどの程度になるかも不確か。
頃合いを計っていたかのように、犬歪虚たちが一斉に飛びかかってきた。
「まぁ仕方ねぇ、後は任せたぜ」
歪虚の真ん中に火薬瓶を放り投げると、銃で打ち抜く。
爆発は一瞬。広がった衝撃は多くの歪虚と共に厳靖の姿も消し去っていた。
●
昇った陽は、いつも通りに沈んだ。
いつもと違うのは街の外だ。閉ざされた門は絶えず体当たりされている音が繰り返され、さらに、至る所から引っ掻く音や唸り声が聞こえてくる。
街中から物をかき集め、門の前にはバリケードを作っている。定期的に職人が見廻り、壁の補強にも努めている。
……が、いざという時にどれだけの効果があるか、誰も自信は無い。
風に乗って聞こえてくる不気味な音に、人々は怯え、苛立つ。
ストレスから、無用な軋轢も起きた。
「争っている場合かね? 辛い時こそ助け合うのが可能なのは、人だけだ」
不必要な口論が怒る度にエアルドフリスは仲裁に入る。言えば何とか収まるが、またすぐどこかでいさかいが起こり、そして団結の大切さを説く。その繰り返しになっていた。
厳靖のように街から見なくなった顔も結構多い。どこに行ったのか。不安は残るが、探す余裕も無くなっていた。
子供たちは怯え、泣き出す子もいる。大の大人でもうろたえているのだ。子供たちの感じる恐怖はどれだけになるのか。
「大丈夫ですよ。そうだ、リアルブルーのお歌を聞きたくないですか?」
少しでも恐怖を和らげようと、アメリアは子供たちの面倒を見る。一緒に遊んだり、明るく童謡を歌ったり。
他に脱出路が無いかも探したが、残念ながら見つからなかった。上手く二人がオフィスにたどり着くのをただ祈るだけだ。
診療に補強の指示に見回りにと、エアルドフリスの疲労は濃い。たった一日でこれだ。後、どれだけ待つのか……。
さらに夜も深まった頃、その心配はしなくてもよくなった。
「ギャアアアアア!」
街中で起きた悲鳴。ただちに現場に向かうと、犬の歪虚がそこにいた。周囲には武器を持った見回りの人と、血だらけで千切れている見回りの人と……。
さらに近くの壁からは犬歪虚が顔を覗かせている。
「すまねぇ。気付いたら壁の外に足がかりを作っていやがった」
闇に紛れて、木や石を運び、壁を飛び越えて来たらしい。まだ低いのか、壁に手をかけるも登り切れず落ちる個体もいる。だが、いずれ確実に入り込んでくる――と思う間に、次の一体が壁を乗り越えてきた。
「は……はは……。VOIDが来やがる。これで終わりかよ」
さっさと首を吊っておけばと、脱力する馨。
「終わり……。でも、子供たちだけは……」
「まだだ。助けは必ず来る。彼女達を信じよう。それまで持ち堪えるのが我々の義務だ」
蒼白になりながらもアメリアは子供たちを逃がそうと動きだし、エアルドフリスは歯を食いしばって歪虚へと短剣を構えた。
けれども、二人もどこかに諦めが生まれていた。アメリアは妹に、エアルドフリスは短剣をくれた恋人に向けて小さく謝罪を口にする。
さらに次。さらにもう一体、と入り込んでくる犬歪虚。数を増し、一直線に人に向かってくる。
そして、轟音が街中に響き、犬歪虚の体が大きく弾け飛んだ。
何が起きたか。事態を把握するのに、時間を要した。
聞こえたのは銃声。さらに次々と鳴り響くや、的確に犬歪虚は数を減らしていく。
「大丈夫ですか? 助けに来ました」
壁の上には見知らぬ人物。重装備に大型の銃は、田舎町では見たことすらない。
壁の外では犬が騒いでいる。だがそれは、悲鳴と逃走の唸りだと分かる。さらに加わったのは爆音に雷鳴、風の唸り……に交じる、力強く叫ぶ複数の人の声。
助けだ、と誰かが呟く。
その呟きは人々の口に乗り、やがて街中に歓喜が溢れた。
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歪虚に囲まれた街で【相談卓】 エアルドフリス(ka1856) 人間(クリムゾンウェスト)|30才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2016/01/10 20:52:36 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/01/08 01:06:55 |