ゲスト
(ka0000)
【闇光】希望の祈り
マスター:四月朔日さくら

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/02/04 12:00
- 完成日
- 2016/02/09 06:31
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
――たくさんの被害が出たものの、何とか敵を退けることはできた。
多くの犠牲を伴うのは、やむを得まい。
しかし――戦闘の残滓とも言える負のマテリアルは、たしかにいまだ燻っている。
●
「浄化の祀り、とかした方がいいんじゃないですか。もしかしなくても」
ガーディナ補佐のジーク・真田(kz0091)に促され、リムネラは小さく頷く。
巫女であるリムネラは、マテリアルを浄化する術を知っていた。
ただ、準備がたいへんなのでおいそれとできるものではない。
「やりたいのはヤマヤマ……デスけど、マダ戦いは続いてイマスから」
すぐに是とすることはむずかしいのだ、と言ってため息。
「それでも、きっと辺境ではリムネラさんの力を欲している人がいるはずです。むろん、辺境以外でも」
ジークの言葉は右から左。先日聞かされた驚くべき事実を思い出しながら、リムネラはまだ頬杖をついたままだ。
北方で滅びたはずの『リグ・サンガマ』――その存在と、そしてナディア・ドラゴネッティの正体、これらが明かされてからまだ日にちも経っていない。が、確実に事態は変容しつつある。
(せめて、ワタシに出来るコトは――)
そして、ふっと気づいた。
彼女の役目は、やはり『巫女』なのだ。
●
――開拓地『ホープ』。
リムネラはそこに足を付けた。
思えば、この場所もなんだかんだと歪虚による被害を受けている。そのため、リムネラも足を運ぶのは――考えてみたらこれがはじめてかも知れない。
リムネラは集まってくれたハンターたちに頭を下げる。
「ココで、ワタシはマテリアル浄化の儀式を行ないマス。先の戦いで、命を落とした人も多いので……鎮魂の祀り、デスね。折角ナので、皆サンには無事に終わるヨウに、盛り上げてクレルと、嬉しいのデス」
――なるほど。
ホープもしばらくみないうちに復興が大分進み、定期的に市も立つようになった。前線近くと言うことで、医療施設も整っている。ホープの辺境におけるポジションはどうやら『そこに行けば何かしら手助けしてくれる人がいる』という感じ、なのだろう。
祭りの手伝いも喜んで引き受けてくれている。
ハンターたちにも、犠牲者を悼み、そして同時に正のマテリアルへの昇華の手伝いをして欲しい――と言うことなのだ。
と言っても、それはつまり、心から『遊ぶ』こと。『楽しむ』こと。
――さあ、どうなる?
多くの犠牲を伴うのは、やむを得まい。
しかし――戦闘の残滓とも言える負のマテリアルは、たしかにいまだ燻っている。
●
「浄化の祀り、とかした方がいいんじゃないですか。もしかしなくても」
ガーディナ補佐のジーク・真田(kz0091)に促され、リムネラは小さく頷く。
巫女であるリムネラは、マテリアルを浄化する術を知っていた。
ただ、準備がたいへんなのでおいそれとできるものではない。
「やりたいのはヤマヤマ……デスけど、マダ戦いは続いてイマスから」
すぐに是とすることはむずかしいのだ、と言ってため息。
「それでも、きっと辺境ではリムネラさんの力を欲している人がいるはずです。むろん、辺境以外でも」
ジークの言葉は右から左。先日聞かされた驚くべき事実を思い出しながら、リムネラはまだ頬杖をついたままだ。
北方で滅びたはずの『リグ・サンガマ』――その存在と、そしてナディア・ドラゴネッティの正体、これらが明かされてからまだ日にちも経っていない。が、確実に事態は変容しつつある。
(せめて、ワタシに出来るコトは――)
そして、ふっと気づいた。
彼女の役目は、やはり『巫女』なのだ。
●
――開拓地『ホープ』。
リムネラはそこに足を付けた。
思えば、この場所もなんだかんだと歪虚による被害を受けている。そのため、リムネラも足を運ぶのは――考えてみたらこれがはじめてかも知れない。
リムネラは集まってくれたハンターたちに頭を下げる。
「ココで、ワタシはマテリアル浄化の儀式を行ないマス。先の戦いで、命を落とした人も多いので……鎮魂の祀り、デスね。折角ナので、皆サンには無事に終わるヨウに、盛り上げてクレルと、嬉しいのデス」
――なるほど。
ホープもしばらくみないうちに復興が大分進み、定期的に市も立つようになった。前線近くと言うことで、医療施設も整っている。ホープの辺境におけるポジションはどうやら『そこに行けば何かしら手助けしてくれる人がいる』という感じ、なのだろう。
祭りの手伝いも喜んで引き受けてくれている。
ハンターたちにも、犠牲者を悼み、そして同時に正のマテリアルへの昇華の手伝いをして欲しい――と言うことなのだ。
と言っても、それはつまり、心から『遊ぶ』こと。『楽しむ』こと。
――さあ、どうなる?
リプレイ本文
●
その場所は、かつてはただの荒野だった。
人々が協力しあい、少しずつ開拓地として築いていったその地は、名前を『ホープ』という。
人々の希望を、願いを込めて付けられた名前。
そして、そのホープは一時期は歪虚の攻撃によって壊滅寸前まで追いやられたものの、それでも希望を失わなかったもの達の手によってずいぶんな復興を遂げていた。
「ホープ、人、結構多い、ね。なんだか、楽しみ」
ハンターになってまだ日の浅いアーシェ(ka6089)は、きょろきょろと興味深そうにこの開拓地を眺め、そして後ろに控えている蜂蜜色の髪の女性に微笑みかけた。
「ワァ……ステキな場所デスね」
蜂蜜色の髪の女性――リムネラ(kz0018)はそう言って、愛おしげに目を細める。
ホープの開拓が始まったのはもう一年以上も前だろうか。その時はまだ本当に小さな小さな種にすぎなかったはずなのに、今はすくすくと若葉を伸ばしているかのよう。
「リムネラさん、お疲れさまです」
そう声をかけたのは先にホープに向かっていたハンターの一人、ノーマン・コモンズ(ka0251)だ。以前にもホープに来たことのある彼としてはずいぶんと久々に見たホープの姿に少し驚いたらしいが……
(でも、あのときはそれほどに絶望的ではなかったですねぇ)
今、クリムゾンウェストは大きな転換期を迎えているのだろう。それも、あまり良くない方向への。
「先の戦いで人間達は歪虚から多いに痛手を受けましたから、事態が好転したわけでもないのに鎮魂だなんてやっても、逆に行き場のない怒りをぶつけてしまういい対象になってしまいそうですねえ」
確かにその通りではあるの、だが。
「ソレでも、ワタシに出来るコトは祈りを捧げること、デス」
リムネラはそう言って微笑む。少し目の縁が赤いのは、きっとここに来るまでにも惨状を見聞きして泣いてしまったのだろう。
今回、リムネラがこのホープを訪れた理由は、辺境に広がる負のマテリアルを浄化するための儀式のためだ。ハンターは、そんな彼女に気概が加わらないように見守りつつ、祀りを楽しんでくれ――とのことをあらかじめ言われている。賑やかに、明るい方がマテリアルの活性化にも繋がるというのだから、それに反対するハンターはいなかった。それに得てして、ハンターの多くはお祭りごとが好きなのである。
(でも、マテリアルの浄化……儀式を見るのははじめてですが、これで少しでも人々の気持ちが軽くなれば、いいのですが……)
ユキヤ・S・ディールス(ka0382)はそう思ってから、リムネラの顔をそっとうかがう。
(でも、リムネラさんの気持ちは……)
戦闘能力はほぼ皆無に等しいリムネラからすれば、時には歯がゆく思うこともあるだろう。しかし、彼女の本質はやはり巫女。救いを求める人々に手を差し伸べる一端となれば、とユキヤも思う。
浄化の儀式に興味を持って参加したハンターは少なくない。リュー・グランフェスト(ka2419)もまた、そんなひとりだ。護衛の名目でやってきた彼は、リムネラに明るい笑顔を見せる。
「まだついて間もないし、儀式までも時間はあるだろ。少し休むといいぜ」
言われてリムネラは小さく微笑んだ。感謝の気持ちを込めて。
「まだまだ傷は深いでしょうけど、たとえつかの間でもそれが安らぐのであれば――わたしも力を尽くしましょう」
そう言って微笑みながら、一本の栄養ドリンクをリムネラに手渡したのはアニス・エリダヌス(ka2491)だ。長丁場の儀式で疲れてしまわないようにと言う心遣いの強壮剤である。
リムネラは一瞬目をぱちくりさせたけれど、すぐに笑顔になった。そして、アリガトウ、とも。
●
明王院 穂香(ka5647)は行動が早かった。
あらかじめ簡易テントや屋台を使った炊き出しの許可を取った上で、必要な資材を調達するように準備してきたのだ。
このあたり、特殊な環境で育ったゆえの度量の深さというのもうかがえるような気がする。しかも食材などは自腹だと言うから恐れ入る話だ。
「これらを無料提供にすれば、皆さん楽しめるかと思って」
確かに、辺境は厳しい環境下にあることもあって、他の地域に住む人々よりも食環境に難があるのは事実だ。無料の炊き出しがあれば、人々は体も心も温まるだろう。
「あー、でも、もし厄介者がでたとしても、酔っ払いの説得って難しいんだよなぁ……そこに人の死が絡んでいるなら尚更だね」
ノーマンの誘いに乗ってやってきたローエン・アイザック(ka5946)は、事情を確認するとひとつため息をつく。まあそれでも、相手が強力な歪虚の可能性の低い場所であるし、リムネラという巫女を警護すると言う役目も兼ねているしで好奇心がわかないわけではない。もともとこの世界のありように興味を覚えてハンターになったローエンである、絶好の機会には違いないはずだった。
(まぁ、変な気起こした酔っ払いがいなければ問題ないだけのことだしね)
儀式を満足に執り行うための夜警をノーマンと二人でかってでているのだ、その辺はぬかりないようにせねば。
●
かつてホープの周辺で大規模な戦闘があったとき。
多くの罪なき人々が犠牲となり、それを弔うための碑が作られたことがあった。
今、そこにはリムネラ、そしてディーナ・フェルミ(ka5843)と天央 観智(ka0896)、外待雨 時雨(ka0227)の四人が訪れている。
(我思う、ゆえに我あり。神思う、ゆえに神あり……)
ディーナは辺境出身ではあるが部族の民ではない。そして敬虔なエクラの信徒でありながら、己は神を感じたことは、ない。
この依頼に参加したのも、もともとはリムネラに会って話をしてみたいという想いからだった。若いながらも優秀と言われる巫女の彼女ならば、神を感じたことがあるに違いない。
しかし、いざ聞こうと思ったが、舌が回らない。言いたいこと、聞きたいこと、伝えたいことは沢山あるのに。
(……どうして)
少女はわずかに喉を詰まらせる。
それでも無理なものは無理なのだと、それは理解できてしまうのだった。
いっぽう、リアルブルー出身の観智は知的好奇心を全開にして、リムネラに話を聞きたがった。
「マテリアルは……やはり話に聞くだけでも、相変わらず不思議な存在……ですよね」
それはリアルブルー出身者ゆえの感想なのだろうか。考え込むクセのある彼は、さまざまな憶測を頭の中に巡らせる。
(マテリアルが零をはさんで、正と負にある関係なのなら……何もない、零から正を取り出すことができるのなら、その埋め合わせをするように、別のどこかで、絶対値が同量の負が、……湧き出していたりするのでしょうか……?)
その問いに答える声は、ない。
(正と負、と言う呼称が便宜上のもので、性質の異なるよく似たもの、とするなら……この浄化という行為を無尽蔵に行なっていけばいずれ歪虚はいられなくなりますし、いろいろな不都合も解決していきそうな気もしますけれど……それができていないこの現状を見るに、きっと代償だったりタイミングだったり……そう言った、いろいろな縛りがあるのでしょうね)
これから行なわれる儀式とマテリアルの関係を、深く考えれば考えるほど、分からないことが増えていく。しかしそれは、観智に取ってみればまた知的好奇心をくすぐる材料ができた、と言うことでもあり、それは彼の歓びにも繋がるのであった。むろんこれが少し変わった楽しみ方ではあるのだろうという自覚はある。
しかし、だからこそ夜に行なわれる儀式がますます楽しみになるのだ。
そして、時雨は。
「雨降り婦人」と言われるだけあって、彼女がいると雨が降り続けると言うくらいの、いわゆる雨女なのだが、乾燥地帯にあるホープでは幸いなことに少し雲が出る程度にとどまっている。これももしかしたらあるいは、マテリアルの影響もあるのかも知れない。
そして彼女は、ぽつり、呟く。
「こちらの大地でも……終を迎えた魂は、空へと逝くのでしょうか……?」
瞼を閉じて思うことは、魂の行く末。もしそうなのだとしたら……せめて、友である『雨』が、その妨げとならぬよう、そして雨が降りそそ具というのなら、天と地を繋ぐ雨だれが道標となり得るよう、――そう祈って止まない。
「タクサンの人が、なくなって、悲しいこともタクサン。デモ、ソノ悲しみを浄化するタメに、ワタシも祈りマショウ」
リムネラも小さく瞑目すると、祈りの言霊を唇にのせた。
●
「ホープはそれにしても、ずいぶん賑やかになりましたね」
ノーマンがそう言って感嘆の声を上げる。
以前この地に来たときは、心身共にボロボロの人々が身を寄せ合う、まさに難民キャンプと野戦病院を兼ねたような場所だったのだが、今はそんな雰囲気は欠片も感じさせられない。
いや、確かに当時の爪痕は残っているにはいるのだが――、きっとそれからも各地のさまざまな人々が手を差し伸べ、協力してくれているのだろう。
今では定期的に市も開催されていたり、また帝国式の医療を受けることができるようになったことで周辺の部族からは感謝されることもずいぶんと増えているようだった。
更に聞けば、部族会議の会場候補にも挙がっているらしいこの場所は、間違いなく発展を遂げている。
今まで辺境の賑やかな場所というものに縁のなかったアーシェは、目を輝かせてその様子を見つめるばかりだ。
「いい傾向ですね。皆、何かを求めてここに来ている。浄化の儀式も執り行えば、きっと多少なり友安心の気持ちも芽生えると思うし……」
医術の心得もあるユキヤは、医療施設のほうにも顔を出す。今現在不足しがちなものや、患者達が欲しているものを確認して、取り寄せることができないかと考えているらしい。幸い、不足しがちな医療品は要塞都市から定期的に届けられるらしく、そう言う意味では安堵した。
(僕らに出来ることの足がかりがつかめれば……)
まだまだ吹けば飛ぶような存在の今のホープをいっそう盛り上げたいし、それに、誰も何も諦めたり絶望に囚われてしまったり、そんなことがないように、と祈るのだ。
いっぽうはじめてホープに足を踏み入れた時雨は、その賑やかさにわずかに目を見はった。
まだ開拓地とは聞いていたが、リムネラがここに来るのに合わせて臨時の市を開催しているらしい。人々の顔もどこか朗らかだ。
売っているのは、それぞれの部族の特産であろう布だったり薬草だったり、あるいは保存のきく食品だったりと、かなりいろいろなものが持ち込まれている。
なかには同盟などの商人達に買ってもらうものだろうか、民族衣装などもあっていろいろと驚きを隠せない。
「普段も……このような商品が?」
「いや、今回はいつもよりも活気があると思うよ。何しろ鎮魂の儀式を間近で見る機会はそうそう無いからね」
「なるほど……」
思わずそんな声を上げるしか、なかった。
●
「それにしてもお疲れさま。極力便宜は図るからなんでも言ってくれよ」
リューがそう言ってにっかりと笑い、温かい飲み物を差し出した。リムネラもそれを受け取って飲み、そろそろ仕度をせねばと準備に取りかかろうとする。
――リムネラは、今ガーディナのみならず、ハンターたちにとってに欠かせない存在だ。聖地リタ・ティトとの連絡や便宜をとるのに彼女は欠かせないし、浄化の祀りだってまともに執り行える巫女はそれほど多くないとも聞いている。
今回はそんな彼女を護衛する役目を仰せつかっているのだから、何ともありがたい話ではあるのだ。
けれどリムネラ自身は普通の少女だ。だが、周囲がそれを認めない。そんな風潮――だからこそ、彼女をもっと尊重してあげたい、そう思える。
そして――祀りがはじまった。
真っ白い巫女の正装に身を包んだリムネラがそろりそろりと現れ、聞いたことのないような言語で言葉を紡いでいく。
しかし、それは精霊達に届けるための、祈りの言葉なのだ。
●
リムネラがきちんと視認できる位置――但しすぐに護衛とは分からないように人混みにうまく紛れるよう――に、多くのハンターは交替で警護をする。
そのいっぽうで、穂香は出店で自慢の料理を振る舞う。まだ寒い季節だから、温かな豚汁や甘酒と言ったレパートリーだ。それが無料で振る舞われるわけだから、決して裕福とは言えない辺境の住民達は嬉しそうに受け取ってそれを口に運ぶ。
他のハンターたちも、護衛の合間を縫ってそれぞれの得意技を披露などして、祭りの雰囲気を盛り上げるのに一役買っていた。
リューは得意のギターを奏でて子どもも大人もその音色の虜にした。祭りという場所だからこそ笑顔が大切、と思ったリューの奏でる曲は、明るく盛り上がるような曲ばかり。
「もしもリクエストがあれば受け付けるぜ」
そう言って、子どもっぽさの残る笑みを浮かべる。
アニスは手元の弓をぎゅっと握りしめつつ、リムネラの踊りを見守っている。
(護衛の気配というのは、ない方が見やすいですからね)
一般人に下手にピリピリした空気を気取られるのもよくない。それが分かっているからこそ、アニスはあくまで見物人としてのスタンスを貫ければ、と思っているのだ。
そして――ディーナは。
リムネラの舞に、目が釘付けになっていた。
エクラ教徒でありながら教会のありように疑問を感じるという彼女は、きっと異端の存在だろう。神よりも、むしろ精霊達のほうが己の信ずる神に近い存在なのではないか――とそう思っているのだから。
むろん歪虚を尊ぶ神も神とは思わない。感謝を捧げられない神を神とは思えないのだ。
リムネラの舞をみて思うのは、美しさと、そして神々しさ。
(神よ神よ、我が神よ。私に治癒を授けてくれた我が神よ……存在を一度も疑ったことのない我が神よ。貴方がいったいどの神なのか、知りたい、感じたい――私が焦がれる、私の神よ)
ディーナは胸の奥で何度もそう唱える。己の神を探し求めて、強く叫ぶ。
その思いは、彼女の神に届いたのであろうか?
●
「にしても、万が一の可能性はあるからなあ」
ホープの内外を巡回しているのはノーマンとローエンの二人だ。
彼らが気がかりなのは歪虚だけにとどまらない。よからぬ思いを抱いたものがいないか、そう言うことにも気を配っているのだ。
と、――市のすみっこのほうで、不審な人影がひとつふたつ。
「こんばんはー」
ローエンがにこっと笑って声をかける。
「え、あ、」
声をかけられたのはまだ若い男だ。明らかに狼狽した顔をして、唇をわななかせている。
「死者を弔うための夜にちょーっと無粋な気配を感じてね、声をかけさせてもらったよ。一応神父をしていてね、折角鎮魂の祈りをしている巫女さんを邪魔してはかわいそうだからね。……代わりに、君の憤りをきかせてもらうよ?」
そう言って、またもにっこり。
「盗みにしても、傷害にしても。そう言う、死を悼むものに害を与えて使者が喜びますかねぇ? 酒に溺れてそう言う行動に出るようなヒマがあるようなら、祈りのひとつも捧げたらどうですか? それが人ってものでしょう?」
ノーマンもにやっと笑って羽目を外そうとした若者達にしっかりと押さえ込んで、はい、御用と相成った。
それ以外に怪しい動きがなかったのは、幸いと言えるだろう。
やや遠巻きにしてリムネラの舞を見つめている時雨は、そっと目を閉じる。
(折角の、安寧への導き……友――雨が空を覆ってしまうことがあっては、やはり申し訳ありませんね)
祈りを捧げながら、彼女は思う。
恨み辛みはあれど、それは生きるものへと託して貰えるように、と。死んで恨むのはある意味当たり前なのだから、それを否定することはしない。
(それでもどうか)
時雨は祈る。
(眠り見る夢は、安らかなものでありますように……)
ダンッ!
そのとき、ひときわ大きな音がして、人々の目が思わずその音の主――リムネラに向かう。表情がいつもよりもたしかにどこか異なる今の彼女は、いわゆるトランス状態だ。
しかし、これがマテリアルという存在を負から正へと転化させる前段階であるのだ。静かに、しかし激しく、リムネラの動きが変わっていく。優雅で、可憐で、けれど威厳を感じさせる動きだ。
やがて人々の顔が少しずつ明るくなっていく。
マテリアルが浄化されていく、いい証拠だ。
むろん悼むことを忘れたわけではない。それを乗り越えられるだけの力を、彼らは感じ取っていたのだ。
(これが――浄化)
その如実な変化に、誰もが思わず息をのむ。
むろん、一度やそこらですべてのマテリアルが浄化されるわけではない。それでもそのきっかけを作ることの出来るリムネラを、巫女という存在を、改めてすごいと誰もが思うのであった。
――かえってくることのない、いのち。
けれどそれを糧にして、ばねにして、人々は逞しく生きていく。
願わくばどうか、見守っていてくれますように――。
その場所は、かつてはただの荒野だった。
人々が協力しあい、少しずつ開拓地として築いていったその地は、名前を『ホープ』という。
人々の希望を、願いを込めて付けられた名前。
そして、そのホープは一時期は歪虚の攻撃によって壊滅寸前まで追いやられたものの、それでも希望を失わなかったもの達の手によってずいぶんな復興を遂げていた。
「ホープ、人、結構多い、ね。なんだか、楽しみ」
ハンターになってまだ日の浅いアーシェ(ka6089)は、きょろきょろと興味深そうにこの開拓地を眺め、そして後ろに控えている蜂蜜色の髪の女性に微笑みかけた。
「ワァ……ステキな場所デスね」
蜂蜜色の髪の女性――リムネラ(kz0018)はそう言って、愛おしげに目を細める。
ホープの開拓が始まったのはもう一年以上も前だろうか。その時はまだ本当に小さな小さな種にすぎなかったはずなのに、今はすくすくと若葉を伸ばしているかのよう。
「リムネラさん、お疲れさまです」
そう声をかけたのは先にホープに向かっていたハンターの一人、ノーマン・コモンズ(ka0251)だ。以前にもホープに来たことのある彼としてはずいぶんと久々に見たホープの姿に少し驚いたらしいが……
(でも、あのときはそれほどに絶望的ではなかったですねぇ)
今、クリムゾンウェストは大きな転換期を迎えているのだろう。それも、あまり良くない方向への。
「先の戦いで人間達は歪虚から多いに痛手を受けましたから、事態が好転したわけでもないのに鎮魂だなんてやっても、逆に行き場のない怒りをぶつけてしまういい対象になってしまいそうですねえ」
確かにその通りではあるの、だが。
「ソレでも、ワタシに出来るコトは祈りを捧げること、デス」
リムネラはそう言って微笑む。少し目の縁が赤いのは、きっとここに来るまでにも惨状を見聞きして泣いてしまったのだろう。
今回、リムネラがこのホープを訪れた理由は、辺境に広がる負のマテリアルを浄化するための儀式のためだ。ハンターは、そんな彼女に気概が加わらないように見守りつつ、祀りを楽しんでくれ――とのことをあらかじめ言われている。賑やかに、明るい方がマテリアルの活性化にも繋がるというのだから、それに反対するハンターはいなかった。それに得てして、ハンターの多くはお祭りごとが好きなのである。
(でも、マテリアルの浄化……儀式を見るのははじめてですが、これで少しでも人々の気持ちが軽くなれば、いいのですが……)
ユキヤ・S・ディールス(ka0382)はそう思ってから、リムネラの顔をそっとうかがう。
(でも、リムネラさんの気持ちは……)
戦闘能力はほぼ皆無に等しいリムネラからすれば、時には歯がゆく思うこともあるだろう。しかし、彼女の本質はやはり巫女。救いを求める人々に手を差し伸べる一端となれば、とユキヤも思う。
浄化の儀式に興味を持って参加したハンターは少なくない。リュー・グランフェスト(ka2419)もまた、そんなひとりだ。護衛の名目でやってきた彼は、リムネラに明るい笑顔を見せる。
「まだついて間もないし、儀式までも時間はあるだろ。少し休むといいぜ」
言われてリムネラは小さく微笑んだ。感謝の気持ちを込めて。
「まだまだ傷は深いでしょうけど、たとえつかの間でもそれが安らぐのであれば――わたしも力を尽くしましょう」
そう言って微笑みながら、一本の栄養ドリンクをリムネラに手渡したのはアニス・エリダヌス(ka2491)だ。長丁場の儀式で疲れてしまわないようにと言う心遣いの強壮剤である。
リムネラは一瞬目をぱちくりさせたけれど、すぐに笑顔になった。そして、アリガトウ、とも。
●
明王院 穂香(ka5647)は行動が早かった。
あらかじめ簡易テントや屋台を使った炊き出しの許可を取った上で、必要な資材を調達するように準備してきたのだ。
このあたり、特殊な環境で育ったゆえの度量の深さというのもうかがえるような気がする。しかも食材などは自腹だと言うから恐れ入る話だ。
「これらを無料提供にすれば、皆さん楽しめるかと思って」
確かに、辺境は厳しい環境下にあることもあって、他の地域に住む人々よりも食環境に難があるのは事実だ。無料の炊き出しがあれば、人々は体も心も温まるだろう。
「あー、でも、もし厄介者がでたとしても、酔っ払いの説得って難しいんだよなぁ……そこに人の死が絡んでいるなら尚更だね」
ノーマンの誘いに乗ってやってきたローエン・アイザック(ka5946)は、事情を確認するとひとつため息をつく。まあそれでも、相手が強力な歪虚の可能性の低い場所であるし、リムネラという巫女を警護すると言う役目も兼ねているしで好奇心がわかないわけではない。もともとこの世界のありように興味を覚えてハンターになったローエンである、絶好の機会には違いないはずだった。
(まぁ、変な気起こした酔っ払いがいなければ問題ないだけのことだしね)
儀式を満足に執り行うための夜警をノーマンと二人でかってでているのだ、その辺はぬかりないようにせねば。
●
かつてホープの周辺で大規模な戦闘があったとき。
多くの罪なき人々が犠牲となり、それを弔うための碑が作られたことがあった。
今、そこにはリムネラ、そしてディーナ・フェルミ(ka5843)と天央 観智(ka0896)、外待雨 時雨(ka0227)の四人が訪れている。
(我思う、ゆえに我あり。神思う、ゆえに神あり……)
ディーナは辺境出身ではあるが部族の民ではない。そして敬虔なエクラの信徒でありながら、己は神を感じたことは、ない。
この依頼に参加したのも、もともとはリムネラに会って話をしてみたいという想いからだった。若いながらも優秀と言われる巫女の彼女ならば、神を感じたことがあるに違いない。
しかし、いざ聞こうと思ったが、舌が回らない。言いたいこと、聞きたいこと、伝えたいことは沢山あるのに。
(……どうして)
少女はわずかに喉を詰まらせる。
それでも無理なものは無理なのだと、それは理解できてしまうのだった。
いっぽう、リアルブルー出身の観智は知的好奇心を全開にして、リムネラに話を聞きたがった。
「マテリアルは……やはり話に聞くだけでも、相変わらず不思議な存在……ですよね」
それはリアルブルー出身者ゆえの感想なのだろうか。考え込むクセのある彼は、さまざまな憶測を頭の中に巡らせる。
(マテリアルが零をはさんで、正と負にある関係なのなら……何もない、零から正を取り出すことができるのなら、その埋め合わせをするように、別のどこかで、絶対値が同量の負が、……湧き出していたりするのでしょうか……?)
その問いに答える声は、ない。
(正と負、と言う呼称が便宜上のもので、性質の異なるよく似たもの、とするなら……この浄化という行為を無尽蔵に行なっていけばいずれ歪虚はいられなくなりますし、いろいろな不都合も解決していきそうな気もしますけれど……それができていないこの現状を見るに、きっと代償だったりタイミングだったり……そう言った、いろいろな縛りがあるのでしょうね)
これから行なわれる儀式とマテリアルの関係を、深く考えれば考えるほど、分からないことが増えていく。しかしそれは、観智に取ってみればまた知的好奇心をくすぐる材料ができた、と言うことでもあり、それは彼の歓びにも繋がるのであった。むろんこれが少し変わった楽しみ方ではあるのだろうという自覚はある。
しかし、だからこそ夜に行なわれる儀式がますます楽しみになるのだ。
そして、時雨は。
「雨降り婦人」と言われるだけあって、彼女がいると雨が降り続けると言うくらいの、いわゆる雨女なのだが、乾燥地帯にあるホープでは幸いなことに少し雲が出る程度にとどまっている。これももしかしたらあるいは、マテリアルの影響もあるのかも知れない。
そして彼女は、ぽつり、呟く。
「こちらの大地でも……終を迎えた魂は、空へと逝くのでしょうか……?」
瞼を閉じて思うことは、魂の行く末。もしそうなのだとしたら……せめて、友である『雨』が、その妨げとならぬよう、そして雨が降りそそ具というのなら、天と地を繋ぐ雨だれが道標となり得るよう、――そう祈って止まない。
「タクサンの人が、なくなって、悲しいこともタクサン。デモ、ソノ悲しみを浄化するタメに、ワタシも祈りマショウ」
リムネラも小さく瞑目すると、祈りの言霊を唇にのせた。
●
「ホープはそれにしても、ずいぶん賑やかになりましたね」
ノーマンがそう言って感嘆の声を上げる。
以前この地に来たときは、心身共にボロボロの人々が身を寄せ合う、まさに難民キャンプと野戦病院を兼ねたような場所だったのだが、今はそんな雰囲気は欠片も感じさせられない。
いや、確かに当時の爪痕は残っているにはいるのだが――、きっとそれからも各地のさまざまな人々が手を差し伸べ、協力してくれているのだろう。
今では定期的に市も開催されていたり、また帝国式の医療を受けることができるようになったことで周辺の部族からは感謝されることもずいぶんと増えているようだった。
更に聞けば、部族会議の会場候補にも挙がっているらしいこの場所は、間違いなく発展を遂げている。
今まで辺境の賑やかな場所というものに縁のなかったアーシェは、目を輝かせてその様子を見つめるばかりだ。
「いい傾向ですね。皆、何かを求めてここに来ている。浄化の儀式も執り行えば、きっと多少なり友安心の気持ちも芽生えると思うし……」
医術の心得もあるユキヤは、医療施設のほうにも顔を出す。今現在不足しがちなものや、患者達が欲しているものを確認して、取り寄せることができないかと考えているらしい。幸い、不足しがちな医療品は要塞都市から定期的に届けられるらしく、そう言う意味では安堵した。
(僕らに出来ることの足がかりがつかめれば……)
まだまだ吹けば飛ぶような存在の今のホープをいっそう盛り上げたいし、それに、誰も何も諦めたり絶望に囚われてしまったり、そんなことがないように、と祈るのだ。
いっぽうはじめてホープに足を踏み入れた時雨は、その賑やかさにわずかに目を見はった。
まだ開拓地とは聞いていたが、リムネラがここに来るのに合わせて臨時の市を開催しているらしい。人々の顔もどこか朗らかだ。
売っているのは、それぞれの部族の特産であろう布だったり薬草だったり、あるいは保存のきく食品だったりと、かなりいろいろなものが持ち込まれている。
なかには同盟などの商人達に買ってもらうものだろうか、民族衣装などもあっていろいろと驚きを隠せない。
「普段も……このような商品が?」
「いや、今回はいつもよりも活気があると思うよ。何しろ鎮魂の儀式を間近で見る機会はそうそう無いからね」
「なるほど……」
思わずそんな声を上げるしか、なかった。
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「それにしてもお疲れさま。極力便宜は図るからなんでも言ってくれよ」
リューがそう言ってにっかりと笑い、温かい飲み物を差し出した。リムネラもそれを受け取って飲み、そろそろ仕度をせねばと準備に取りかかろうとする。
――リムネラは、今ガーディナのみならず、ハンターたちにとってに欠かせない存在だ。聖地リタ・ティトとの連絡や便宜をとるのに彼女は欠かせないし、浄化の祀りだってまともに執り行える巫女はそれほど多くないとも聞いている。
今回はそんな彼女を護衛する役目を仰せつかっているのだから、何ともありがたい話ではあるのだ。
けれどリムネラ自身は普通の少女だ。だが、周囲がそれを認めない。そんな風潮――だからこそ、彼女をもっと尊重してあげたい、そう思える。
そして――祀りがはじまった。
真っ白い巫女の正装に身を包んだリムネラがそろりそろりと現れ、聞いたことのないような言語で言葉を紡いでいく。
しかし、それは精霊達に届けるための、祈りの言葉なのだ。
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リムネラがきちんと視認できる位置――但しすぐに護衛とは分からないように人混みにうまく紛れるよう――に、多くのハンターは交替で警護をする。
そのいっぽうで、穂香は出店で自慢の料理を振る舞う。まだ寒い季節だから、温かな豚汁や甘酒と言ったレパートリーだ。それが無料で振る舞われるわけだから、決して裕福とは言えない辺境の住民達は嬉しそうに受け取ってそれを口に運ぶ。
他のハンターたちも、護衛の合間を縫ってそれぞれの得意技を披露などして、祭りの雰囲気を盛り上げるのに一役買っていた。
リューは得意のギターを奏でて子どもも大人もその音色の虜にした。祭りという場所だからこそ笑顔が大切、と思ったリューの奏でる曲は、明るく盛り上がるような曲ばかり。
「もしもリクエストがあれば受け付けるぜ」
そう言って、子どもっぽさの残る笑みを浮かべる。
アニスは手元の弓をぎゅっと握りしめつつ、リムネラの踊りを見守っている。
(護衛の気配というのは、ない方が見やすいですからね)
一般人に下手にピリピリした空気を気取られるのもよくない。それが分かっているからこそ、アニスはあくまで見物人としてのスタンスを貫ければ、と思っているのだ。
そして――ディーナは。
リムネラの舞に、目が釘付けになっていた。
エクラ教徒でありながら教会のありように疑問を感じるという彼女は、きっと異端の存在だろう。神よりも、むしろ精霊達のほうが己の信ずる神に近い存在なのではないか――とそう思っているのだから。
むろん歪虚を尊ぶ神も神とは思わない。感謝を捧げられない神を神とは思えないのだ。
リムネラの舞をみて思うのは、美しさと、そして神々しさ。
(神よ神よ、我が神よ。私に治癒を授けてくれた我が神よ……存在を一度も疑ったことのない我が神よ。貴方がいったいどの神なのか、知りたい、感じたい――私が焦がれる、私の神よ)
ディーナは胸の奥で何度もそう唱える。己の神を探し求めて、強く叫ぶ。
その思いは、彼女の神に届いたのであろうか?
●
「にしても、万が一の可能性はあるからなあ」
ホープの内外を巡回しているのはノーマンとローエンの二人だ。
彼らが気がかりなのは歪虚だけにとどまらない。よからぬ思いを抱いたものがいないか、そう言うことにも気を配っているのだ。
と、――市のすみっこのほうで、不審な人影がひとつふたつ。
「こんばんはー」
ローエンがにこっと笑って声をかける。
「え、あ、」
声をかけられたのはまだ若い男だ。明らかに狼狽した顔をして、唇をわななかせている。
「死者を弔うための夜にちょーっと無粋な気配を感じてね、声をかけさせてもらったよ。一応神父をしていてね、折角鎮魂の祈りをしている巫女さんを邪魔してはかわいそうだからね。……代わりに、君の憤りをきかせてもらうよ?」
そう言って、またもにっこり。
「盗みにしても、傷害にしても。そう言う、死を悼むものに害を与えて使者が喜びますかねぇ? 酒に溺れてそう言う行動に出るようなヒマがあるようなら、祈りのひとつも捧げたらどうですか? それが人ってものでしょう?」
ノーマンもにやっと笑って羽目を外そうとした若者達にしっかりと押さえ込んで、はい、御用と相成った。
それ以外に怪しい動きがなかったのは、幸いと言えるだろう。
やや遠巻きにしてリムネラの舞を見つめている時雨は、そっと目を閉じる。
(折角の、安寧への導き……友――雨が空を覆ってしまうことがあっては、やはり申し訳ありませんね)
祈りを捧げながら、彼女は思う。
恨み辛みはあれど、それは生きるものへと託して貰えるように、と。死んで恨むのはある意味当たり前なのだから、それを否定することはしない。
(それでもどうか)
時雨は祈る。
(眠り見る夢は、安らかなものでありますように……)
ダンッ!
そのとき、ひときわ大きな音がして、人々の目が思わずその音の主――リムネラに向かう。表情がいつもよりもたしかにどこか異なる今の彼女は、いわゆるトランス状態だ。
しかし、これがマテリアルという存在を負から正へと転化させる前段階であるのだ。静かに、しかし激しく、リムネラの動きが変わっていく。優雅で、可憐で、けれど威厳を感じさせる動きだ。
やがて人々の顔が少しずつ明るくなっていく。
マテリアルが浄化されていく、いい証拠だ。
むろん悼むことを忘れたわけではない。それを乗り越えられるだけの力を、彼らは感じ取っていたのだ。
(これが――浄化)
その如実な変化に、誰もが思わず息をのむ。
むろん、一度やそこらですべてのマテリアルが浄化されるわけではない。それでもそのきっかけを作ることの出来るリムネラを、巫女という存在を、改めてすごいと誰もが思うのであった。
――かえってくることのない、いのち。
けれどそれを糧にして、ばねにして、人々は逞しく生きていく。
願わくばどうか、見守っていてくれますように――。
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相談スレッド 天央 観智(ka0896) 人間(リアルブルー)|25才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2016/02/03 17:35:12 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/02/03 17:34:33 |