ゲスト
(ka0000)
呪いをもたらす人形
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2016/02/14 19:00
- 完成日
- 2016/02/18 16:06
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●持ちこまれた呪いの人形
古都【アークエルス】。
そこでとある男が古物商を営んでいる。名はエリック。3人の子供にも恵まれ、家族と幸せな生活を送っていた。
冒険都市リゼリオなどに比べれば、物が集まることは少ないものの、日々を暮らす日銭を稼ぐくらいならば十分な規模でひっそりと商いを行っていた。
そんな彼の元にやってきた、1体の奇妙な人形。それは、黒い服を纏い、金髪で青い目の可愛らしい人形。だが、どことなく不気味な雰囲気を漂わせているのを見ただけで感じ、背筋に寒気すら覚えたものだ。
これを持ってきた者が言うには、持ち主が次々に変死していると言う。古物ならば、そんな噂の1つ2つあってもおかしくはない。エリックはうすら寒さを覚えつつ、それを買い取ることに決めたのだが……。
ある日、店へと遊びに来た娘。彼女も人形を一目見て、何か恐ろしい雰囲気を感じ取って距離を置こうとしていたのだが。人形に睨まれた娘は衰弱し、しばらく目覚めなかったという1件があった。
そこから、訪れる客が店内で具合が悪くなる事件が起こるようになる。時には失神する客まで出だしたのだ。さすがにこれはと、危機感を覚えたエリックは、自身で処理をと考え、人形に掴みかかり、破こうとしたのだが……。
●このザマである
エリックはその後、数日目覚めることはなかったという。妻の話によれば、発見時には相当衰弱しており、生死の境をさまよっていたのだとか。
「……それで、ハンターに頼みに来たわけだ」
ハンターズソサエティにたまたま訪れていたハンター達は、直接エリックから話を聞く。
エリックはまだ五体満足ではなかったが、妻に付き添われてハンターズソサエティにやってきた。店は臨時休業中。エリックの体調の回復を待っているのはもちろんだが、物騒な人形を置いたまま営業するわけにもいかない。
「問題の人形は今も店の中だ。店の奥の棚の上に座ったままだな」
彼の店は、こじんまりとした店。6人も入ればいっぱいいっぱいになってしまう。
「できれば、店の外に持ち出してからこの人形を破壊してほしい」
敵意を持って人形に近づけば、人形は怪しげな力で相手に呪いを与えたり、瞳で睨み付けて体を麻痺させるようだ。また、その際、店にあった別の人形やぬいぐるみがカタカタ動いていたという証言もある。用心をしておく必要があるだろう。
「以上だ。それではよろしく頼む……」
ぐったりとする夫を抱え、妻が小さくハンターに頭を下げ、その場を去っていくのだった。
古都【アークエルス】。
そこでとある男が古物商を営んでいる。名はエリック。3人の子供にも恵まれ、家族と幸せな生活を送っていた。
冒険都市リゼリオなどに比べれば、物が集まることは少ないものの、日々を暮らす日銭を稼ぐくらいならば十分な規模でひっそりと商いを行っていた。
そんな彼の元にやってきた、1体の奇妙な人形。それは、黒い服を纏い、金髪で青い目の可愛らしい人形。だが、どことなく不気味な雰囲気を漂わせているのを見ただけで感じ、背筋に寒気すら覚えたものだ。
これを持ってきた者が言うには、持ち主が次々に変死していると言う。古物ならば、そんな噂の1つ2つあってもおかしくはない。エリックはうすら寒さを覚えつつ、それを買い取ることに決めたのだが……。
ある日、店へと遊びに来た娘。彼女も人形を一目見て、何か恐ろしい雰囲気を感じ取って距離を置こうとしていたのだが。人形に睨まれた娘は衰弱し、しばらく目覚めなかったという1件があった。
そこから、訪れる客が店内で具合が悪くなる事件が起こるようになる。時には失神する客まで出だしたのだ。さすがにこれはと、危機感を覚えたエリックは、自身で処理をと考え、人形に掴みかかり、破こうとしたのだが……。
●このザマである
エリックはその後、数日目覚めることはなかったという。妻の話によれば、発見時には相当衰弱しており、生死の境をさまよっていたのだとか。
「……それで、ハンターに頼みに来たわけだ」
ハンターズソサエティにたまたま訪れていたハンター達は、直接エリックから話を聞く。
エリックはまだ五体満足ではなかったが、妻に付き添われてハンターズソサエティにやってきた。店は臨時休業中。エリックの体調の回復を待っているのはもちろんだが、物騒な人形を置いたまま営業するわけにもいかない。
「問題の人形は今も店の中だ。店の奥の棚の上に座ったままだな」
彼の店は、こじんまりとした店。6人も入ればいっぱいいっぱいになってしまう。
「できれば、店の外に持ち出してからこの人形を破壊してほしい」
敵意を持って人形に近づけば、人形は怪しげな力で相手に呪いを与えたり、瞳で睨み付けて体を麻痺させるようだ。また、その際、店にあった別の人形やぬいぐるみがカタカタ動いていたという証言もある。用心をしておく必要があるだろう。
「以上だ。それではよろしく頼む……」
ぐったりとする夫を抱え、妻が小さくハンターに頭を下げ、その場を去っていくのだった。
リプレイ本文
●人形の怪異
アークエルスにやってきていたハンター達。
彼らはとある古物店にやってきていた。ハンター達が受けた今回の依頼。それは……。
「クリムゾンウェストにも都市伝説?」
クオン・サガラ(ka0018)は、今回の依頼を聞いて疑問を抱く。
リアルブル―では、東洋西洋問わず、人形が意志を持って怪異を為すという事例が少なからずあると彼は語る。
今回討伐を依頼されたのは、リアルブル―でいうところの、西洋人形だ。それに、呪いが掛かっているのだと言う。
今回参加のハンターの中で、唯一クリムゾンウェスト出身のルヌーン・キグリル(ka5477)は、呪いの人形に興味津々だ。
「機会があれば、その人形を魔術や呪術的な観点から研究、そして、実験をしてみたいわね」
誰からともなく「何故?」と問いかけがあると、ルヌーンは含み笑いだけをして応えてみせた。
「呪いの人形退治か、本当に力を持った人形の調伏は初めてだね」
リアルブル―ではとある寺に預けられ、そこで育った過去を持つ天道 遮那 ( ka6113 ) 。クリムゾンウェストに飛ばされた今なお、そこでの教えを忠実に守り、人々を救い、安寧をもたらそうとする。これも修行なのだと。遮那はひとしきり、真言を唱えた。
「ただ、歪虚なるモノが闊歩するここでは、遠からず起きるとは思っていましたが……。都市化の状況を見ていると、少し早い気が……」
その背景には、リアルブル―の文明の流入による歪が、こんなところにも響いてきているのではとクオンは現状を分析していた。本当にそうなら、予断を赦さない状況が始まっているのではないかと彼は推測する。
「ただ、その手の怪異の扱いは私の専門外ですけど、やれることはやってみます」
クオンの言葉に、メンバー達もまた力を尽くそうと語るのだった。
●人形の対処に当たる為に
メンバー達は問題の店へと向かう前に、エリックと接触することにした。
自身の依頼を引き受けてくれたハンター達の頼みもあり、エリックはまだ満足に動かぬ体を引きずり、同行してくれていた。
「人形もぬいぐるみも、本来はかわいいモンやで」
入口から店内を見ると、右奥にある人形が異様なほどに目を引く。
「人を衰弱させたってことはぁ、人形はもう歪虚化した可能性が高いですぅ」
それから放たれるただならぬ雰囲気を、星野 ハナ(ka5852)は感じ取る。
「あそこにあるのも、すでに『伝染ってる』というか、歪虚になっている可能性が高いのね」
その近くにはクマのぬいぐるみや、似た西洋人形が並べられている。獅臣 琉那(ka6082)はそれらからも、かすかに怪しげな気配を肌で感じていた。
「だとしたら、外に持ち出すのは難しいやろな……。外に避けといて、そこでも被害が生じたらアカンやろ?」
外に避けることで、通行人に被害が及ぶ可能性は、琉那が言うように否定することはできない。そこで、天道 遮那(ka6113)が提案した作戦に、皆が乗っかることにする。
「まず、人形、ぬいぐるみ以外を持ち出すんだ。その後、敵意を持たないように、ぬいぐるみ中心に人形を外へと運び出す。準備ができたら、戦闘開始という作戦を考えているよ」
ハンター達は、この為に必要な情報が欲しいとエリックに説明する。
「火事と一緒や。大事なモンだけ教えて戴けますやろか?」
「あと、店内配置も教えていただけますぅ?」
琉那の後にハナが付け加えて、エリックに問う。自分達の攻撃だけでなく、相手の攻撃によって物品が破壊される恐れがある。それらをできる限り守りたいからこそ、聞いておきたいとハナは語った。
「相手が歪虚ならぁ、もう素手で掴みだすことって無理なんですぅ、ごめんなさいぃ。その代わり、終わった後のお掃除と修繕、頑張りますぅ」
今回の人形がとある人物の配下と同じようなものだと捉えていたハナは、最初から店内で戦う想定でいた。だからこそ、彼女はエリックに誠心誠意説明をし、店内での戦闘の許可が欲しいと説得する。
ただ、その作戦に、エリックは浮かない顔をする。室内に被害が及ぶことを避けたかったのだ。
とはいえ、ハンター達は、商品には最大限の配慮している。この状況で否定することの方がマイナスと彼は判断したようだ。
エリックは深い溜息をついた後、よろしく頼むとハンターに頭を下げたのだった。
さて、店の中の配置と、貴重品について聞いたハンター達は、店へと入っていく。
「今回の最初にやるべき事は、『殺意』を消す事ですね……。敵はそれを探知するらしいですしね」
この点が、ある意味で一番面倒な部分でもある。石の様に風の様に、心を静かに、機械の様に……。難しいが、今回の依頼には必要な事。できる限りやってみようとクオンは考えていた。
そんな彼を含め、ハンター達は人形以外の物品を店外へと運び出す。
メンバーは壊れやすい貴重品を優先して外に持ち出した。遮那はできる限り、平常心で作業に当たる。ここで人形に暴れられると元も子もないからだ。
外での戦いとなった場合を想定して、物品はやや離れた場所まで運び、最低限の安全を確保する。その貴重品が気になるのか、エリックがそれらを見てくれていたようだ。
そんな中、ユキヤ・S・ディールス(ka0382)は呪いの人形のみ運び出そうと考えていたのだが、敵意を持たずに人形を運び出すことは困難と仲間達は判断していたようだ。自身の認識が他のメンバーとズレていたようで、ユキヤはそちらに合わせることにしていた。
ここでユキヤが気にかけていたのは、店内にある人形の数だ。
(全ての人形を店外に出す事も、不可能ではないと思いますが……)
ひっそりと商いを行う古物店がそこまで多くの人形、ぬいぐるみの類ばかり置いているはずもない。店内の人形、ぬいぐるみの数はターゲットを含め、5つ。もしかしたらその全てが……。
「こんなに可愛らしいのにね」
ルヌーンは少し残念がる。それらはすでに、呪いの人形の影響を受けている可能性が高そうだ。
店の奥側に勝手口を発見したハチは、荷運びを仲間にお願いしつつ、不測の事態に備えていた。ある程度、物を運び出した後は、クオンも人形の見張りを行う。
やがて、荷物はほとんどが運び出され、室内に残る物は人形と、それの置かれた棚のみとなった。
「すみませーん、今からちょっと雑魔退治しますからぁ。ここから10m以内に近づかないで下さいぃ! 近づいて流れ弾当たっても責任取りませんよぅ!」
それを見届けたハナは外に出て、人払いを行う。
「すみません、暫くこの周囲は危険なので立ち入らないでください」
周りに被害が及ばないようにと、遮那も呼びかけを行っていた。
さて、改めて、人形に対するハンター達。敵意を察して、呪いの人形の目が真っ赤に光り、ふわりと浮かびあがる。
「人形が急に動いたらビックリするやん?」
とはいえ、琉那に驚く様子はなく、悠然と人形に対する。
「ぬいぐるみにまだ『針が残って』なんかしても、危なっかしいやろ?」
肌触りが良いものに棘が混ざっていると怪我をしてしまうと、彼女は人形に対して言葉を投げかける。
メンバー達も戦闘態勢に入る。すると、人形の顔がかすかに微笑むのが分かった。
「そやし、ここで祓っとこな!」
琉那が叫ぶと、呪いの人形はハンターに敵意を抱いて動き出す。それに合わせ、周りの人形もふわりと宙に浮き、動き始めたのだった。
●呪いの人形の駆除を
呪いの人形はふわりと浮き、両目を怪しく光らせる。
クオンはその視線をできるだけ避け、殺意を向けぬようにして立ち回り、そいつを守るように動くぬいぐるみや人形……配下達から叩くことにする。その為にまずはと、彼は光の防御壁を展開していく。
ユキヤは敵の動きに注意しながら戦う。もし、人形が飛び出したなら、周辺の人々に避難を呼びかけねばならないからだ。
集まっている人形。これなら一網打尽だと、ユキヤは自身の身体から光の波動を飛ばし、人形達へと浴びせかけていく。
「人に仇なす怪異はブッコロですぅ!」
配下達は動いて来るが、肝心の呪いの人形が移動してこない。その為、ハナは複数の符を使って張った結界を呪いの人形を中心に展開し、発する光で人形を焼き払おうとする。
だが、それから逃れた人形がハンターの足元からしがみついて来た。それを、琉那はボールを扱うようにつま先で浮かせ、他の動く人形達へ思いっきりシュートする。
仲間によって、被害を与えそうな物品はある程度外に持ち出されている。ルヌーンはぬいぐるみ1体に向け、多少躊躇しながらも炎の矢を飛ばした。炎の矢は燃え上がることなく、衝撃となってそのぬいぐるみを突き飛ばす。だが、その衝撃でただのクマのぬいぐるみへと戻り、店内の床に転がった。
配下はさほど強くはないが、主である呪いの人形の力は強い。そいつの眼光に耐えるべく、遮那は印を結びつつ真言を唱える。そして、現れた光が仲間の体を守り始めた。
それを貫こうと呪いの人形は怪光線を発し、ハンターが張る光の壁を易々と貫いてきた。ダメージの軽減こそされているが、なかなかにその一撃は痛い。
ハナはまたも結界を展開していき、その中を光で焼き払う。1体の人形が、そこで糸が切れたように動きを止めた。
「まとめて喰らっとき!」
さらに、琉那は掌から練り上げたマテリアルを飛ばす。それを受けた1体の配下の人形が力を失い、ぽとりと地面に落ちた。
「効果があるかは不明だが」
広範囲に眠りの雲を起こすルヌーン。だが、眠るという行為をしない人形達に、それは効果がないようだ。この現状はやはり興味深いと、ルヌーンは考える。
くすくす、くすくす……。
そんな不気味な声が室内に響き渡る。それにも関わらず、人形はあまりに冷たい視線でハンターを見つめてくる。魔眼の力で身体を痺れされた仲間には、ユキヤがキュアを施してその痺れを取り払う。
戦う仲間のサポートを。遮那は先ほどとは別の印を結び、真言を唱える。更なる光を飛ばし、仲間の防御力を高めていった。
クオンは魔導機械にマテリアルを込め、アンカーを射出する。それがぬいぐるみに引っ掛かるのと同時に雷撃を走らせた。残っていた最後のぬいぐるみがそれで焼かれ、地面に転がる。
呪いの人形はさらに怪光線を撃ち放つ。浴びたメンバー達に振りかかる呪いが体を蝕む。その体力を回復させようと、またも遮那が印を結び、祈りを捧げていた。
さて、残っているのは、呪いの人形ただ1体。残念ながらそれが乗っていた棚は多少損壊してしまっている。
「下手に人形に近づけば、呪われるようだが……」
ルヌーンは人形を見て思う。自身はすでに、頭の上の植物が生え、呪われているような状態なのではないかと。
彼女はその手にメラメラと燃える炎を纏う。炎の精霊の加護を受けた腕輪、ブレスレット『シャルール』の為だ。彼女はそれで付けた腕を伸ばし、炎の矢を人形へとぶつけていく。
ハナも符を飛ばし、結界を作り続ける。幾度も光を浴び続ける人形もまた、眼光鋭くハンターを睨み付け、応戦を続けていた。
もはや、この人形は破壊せねばならないと、琉那も意を決し、大手裏剣を短剣のように振るう。それによって傷が増えていく人形に、クオンが魔導銃で狙いを定め……撃ち貫く。
「ちゃんと注意すれば、強敵でも無いですね」
クオンが呟く。これだけ手間を掛けているのだ。そうでなくては困るというもの。
ユキヤがここぞと輝く光の弾を飛ばす。それが人形に命中して弾けると、ついに人形の目から光が消え、その体もまた消え失せる。
同時に、店内の異様な雰囲気も合わせて消え失せたのだった。
●元に戻った店内で
戦いを終え、ハンター達はスキルを駆使し、店内を清掃する。ハナが事前に暗記した通りに、物品を店内へと戻していく。
「なぜ人形は人を呪うのか疑問だ。人を呪わば、穴二つなのにな」
改めてルヌーンが人形の消えた場所を見て考える。呪いは誰も幸福になどしないと。
「せやな。こうならなければ、どこかの家で大切にかわいがられたやろな」
琉那もそう考え、配下だった人形やぬいぐるみを拾う。これらは修繕すれば、新たな持ち主によって大切にしてもらえるだろう。
「願わくば……」
遮那は回向を唱える。功徳を広く有縁の人々に……と。
「これで大丈夫でしょうか」
ユキヤは元通りに戻った店内を見回し、頷く。多少壁に傷が入っているが、それもある程度は補修してある。
壊した棚も全壊していたわけではない。多少は手直しし、使えるレベルには戻している。エリックが許容してくれればいいが……。
「それでは、エリックさんに報告へ行きましょう」
エリックはおそらく、一時的に荷物を置いた場所で待機したままだろう。ユキヤの提案もあり、ハンター全員で改めてエリックの元へと終了報告と謝罪へと出向きにいったのだった。
アークエルスにやってきていたハンター達。
彼らはとある古物店にやってきていた。ハンター達が受けた今回の依頼。それは……。
「クリムゾンウェストにも都市伝説?」
クオン・サガラ(ka0018)は、今回の依頼を聞いて疑問を抱く。
リアルブル―では、東洋西洋問わず、人形が意志を持って怪異を為すという事例が少なからずあると彼は語る。
今回討伐を依頼されたのは、リアルブル―でいうところの、西洋人形だ。それに、呪いが掛かっているのだと言う。
今回参加のハンターの中で、唯一クリムゾンウェスト出身のルヌーン・キグリル(ka5477)は、呪いの人形に興味津々だ。
「機会があれば、その人形を魔術や呪術的な観点から研究、そして、実験をしてみたいわね」
誰からともなく「何故?」と問いかけがあると、ルヌーンは含み笑いだけをして応えてみせた。
「呪いの人形退治か、本当に力を持った人形の調伏は初めてだね」
リアルブル―ではとある寺に預けられ、そこで育った過去を持つ天道 遮那 ( ka6113 ) 。クリムゾンウェストに飛ばされた今なお、そこでの教えを忠実に守り、人々を救い、安寧をもたらそうとする。これも修行なのだと。遮那はひとしきり、真言を唱えた。
「ただ、歪虚なるモノが闊歩するここでは、遠からず起きるとは思っていましたが……。都市化の状況を見ていると、少し早い気が……」
その背景には、リアルブル―の文明の流入による歪が、こんなところにも響いてきているのではとクオンは現状を分析していた。本当にそうなら、予断を赦さない状況が始まっているのではないかと彼は推測する。
「ただ、その手の怪異の扱いは私の専門外ですけど、やれることはやってみます」
クオンの言葉に、メンバー達もまた力を尽くそうと語るのだった。
●人形の対処に当たる為に
メンバー達は問題の店へと向かう前に、エリックと接触することにした。
自身の依頼を引き受けてくれたハンター達の頼みもあり、エリックはまだ満足に動かぬ体を引きずり、同行してくれていた。
「人形もぬいぐるみも、本来はかわいいモンやで」
入口から店内を見ると、右奥にある人形が異様なほどに目を引く。
「人を衰弱させたってことはぁ、人形はもう歪虚化した可能性が高いですぅ」
それから放たれるただならぬ雰囲気を、星野 ハナ(ka5852)は感じ取る。
「あそこにあるのも、すでに『伝染ってる』というか、歪虚になっている可能性が高いのね」
その近くにはクマのぬいぐるみや、似た西洋人形が並べられている。獅臣 琉那(ka6082)はそれらからも、かすかに怪しげな気配を肌で感じていた。
「だとしたら、外に持ち出すのは難しいやろな……。外に避けといて、そこでも被害が生じたらアカンやろ?」
外に避けることで、通行人に被害が及ぶ可能性は、琉那が言うように否定することはできない。そこで、天道 遮那(ka6113)が提案した作戦に、皆が乗っかることにする。
「まず、人形、ぬいぐるみ以外を持ち出すんだ。その後、敵意を持たないように、ぬいぐるみ中心に人形を外へと運び出す。準備ができたら、戦闘開始という作戦を考えているよ」
ハンター達は、この為に必要な情報が欲しいとエリックに説明する。
「火事と一緒や。大事なモンだけ教えて戴けますやろか?」
「あと、店内配置も教えていただけますぅ?」
琉那の後にハナが付け加えて、エリックに問う。自分達の攻撃だけでなく、相手の攻撃によって物品が破壊される恐れがある。それらをできる限り守りたいからこそ、聞いておきたいとハナは語った。
「相手が歪虚ならぁ、もう素手で掴みだすことって無理なんですぅ、ごめんなさいぃ。その代わり、終わった後のお掃除と修繕、頑張りますぅ」
今回の人形がとある人物の配下と同じようなものだと捉えていたハナは、最初から店内で戦う想定でいた。だからこそ、彼女はエリックに誠心誠意説明をし、店内での戦闘の許可が欲しいと説得する。
ただ、その作戦に、エリックは浮かない顔をする。室内に被害が及ぶことを避けたかったのだ。
とはいえ、ハンター達は、商品には最大限の配慮している。この状況で否定することの方がマイナスと彼は判断したようだ。
エリックは深い溜息をついた後、よろしく頼むとハンターに頭を下げたのだった。
さて、店の中の配置と、貴重品について聞いたハンター達は、店へと入っていく。
「今回の最初にやるべき事は、『殺意』を消す事ですね……。敵はそれを探知するらしいですしね」
この点が、ある意味で一番面倒な部分でもある。石の様に風の様に、心を静かに、機械の様に……。難しいが、今回の依頼には必要な事。できる限りやってみようとクオンは考えていた。
そんな彼を含め、ハンター達は人形以外の物品を店外へと運び出す。
メンバーは壊れやすい貴重品を優先して外に持ち出した。遮那はできる限り、平常心で作業に当たる。ここで人形に暴れられると元も子もないからだ。
外での戦いとなった場合を想定して、物品はやや離れた場所まで運び、最低限の安全を確保する。その貴重品が気になるのか、エリックがそれらを見てくれていたようだ。
そんな中、ユキヤ・S・ディールス(ka0382)は呪いの人形のみ運び出そうと考えていたのだが、敵意を持たずに人形を運び出すことは困難と仲間達は判断していたようだ。自身の認識が他のメンバーとズレていたようで、ユキヤはそちらに合わせることにしていた。
ここでユキヤが気にかけていたのは、店内にある人形の数だ。
(全ての人形を店外に出す事も、不可能ではないと思いますが……)
ひっそりと商いを行う古物店がそこまで多くの人形、ぬいぐるみの類ばかり置いているはずもない。店内の人形、ぬいぐるみの数はターゲットを含め、5つ。もしかしたらその全てが……。
「こんなに可愛らしいのにね」
ルヌーンは少し残念がる。それらはすでに、呪いの人形の影響を受けている可能性が高そうだ。
店の奥側に勝手口を発見したハチは、荷運びを仲間にお願いしつつ、不測の事態に備えていた。ある程度、物を運び出した後は、クオンも人形の見張りを行う。
やがて、荷物はほとんどが運び出され、室内に残る物は人形と、それの置かれた棚のみとなった。
「すみませーん、今からちょっと雑魔退治しますからぁ。ここから10m以内に近づかないで下さいぃ! 近づいて流れ弾当たっても責任取りませんよぅ!」
それを見届けたハナは外に出て、人払いを行う。
「すみません、暫くこの周囲は危険なので立ち入らないでください」
周りに被害が及ばないようにと、遮那も呼びかけを行っていた。
さて、改めて、人形に対するハンター達。敵意を察して、呪いの人形の目が真っ赤に光り、ふわりと浮かびあがる。
「人形が急に動いたらビックリするやん?」
とはいえ、琉那に驚く様子はなく、悠然と人形に対する。
「ぬいぐるみにまだ『針が残って』なんかしても、危なっかしいやろ?」
肌触りが良いものに棘が混ざっていると怪我をしてしまうと、彼女は人形に対して言葉を投げかける。
メンバー達も戦闘態勢に入る。すると、人形の顔がかすかに微笑むのが分かった。
「そやし、ここで祓っとこな!」
琉那が叫ぶと、呪いの人形はハンターに敵意を抱いて動き出す。それに合わせ、周りの人形もふわりと宙に浮き、動き始めたのだった。
●呪いの人形の駆除を
呪いの人形はふわりと浮き、両目を怪しく光らせる。
クオンはその視線をできるだけ避け、殺意を向けぬようにして立ち回り、そいつを守るように動くぬいぐるみや人形……配下達から叩くことにする。その為にまずはと、彼は光の防御壁を展開していく。
ユキヤは敵の動きに注意しながら戦う。もし、人形が飛び出したなら、周辺の人々に避難を呼びかけねばならないからだ。
集まっている人形。これなら一網打尽だと、ユキヤは自身の身体から光の波動を飛ばし、人形達へと浴びせかけていく。
「人に仇なす怪異はブッコロですぅ!」
配下達は動いて来るが、肝心の呪いの人形が移動してこない。その為、ハナは複数の符を使って張った結界を呪いの人形を中心に展開し、発する光で人形を焼き払おうとする。
だが、それから逃れた人形がハンターの足元からしがみついて来た。それを、琉那はボールを扱うようにつま先で浮かせ、他の動く人形達へ思いっきりシュートする。
仲間によって、被害を与えそうな物品はある程度外に持ち出されている。ルヌーンはぬいぐるみ1体に向け、多少躊躇しながらも炎の矢を飛ばした。炎の矢は燃え上がることなく、衝撃となってそのぬいぐるみを突き飛ばす。だが、その衝撃でただのクマのぬいぐるみへと戻り、店内の床に転がった。
配下はさほど強くはないが、主である呪いの人形の力は強い。そいつの眼光に耐えるべく、遮那は印を結びつつ真言を唱える。そして、現れた光が仲間の体を守り始めた。
それを貫こうと呪いの人形は怪光線を発し、ハンターが張る光の壁を易々と貫いてきた。ダメージの軽減こそされているが、なかなかにその一撃は痛い。
ハナはまたも結界を展開していき、その中を光で焼き払う。1体の人形が、そこで糸が切れたように動きを止めた。
「まとめて喰らっとき!」
さらに、琉那は掌から練り上げたマテリアルを飛ばす。それを受けた1体の配下の人形が力を失い、ぽとりと地面に落ちた。
「効果があるかは不明だが」
広範囲に眠りの雲を起こすルヌーン。だが、眠るという行為をしない人形達に、それは効果がないようだ。この現状はやはり興味深いと、ルヌーンは考える。
くすくす、くすくす……。
そんな不気味な声が室内に響き渡る。それにも関わらず、人形はあまりに冷たい視線でハンターを見つめてくる。魔眼の力で身体を痺れされた仲間には、ユキヤがキュアを施してその痺れを取り払う。
戦う仲間のサポートを。遮那は先ほどとは別の印を結び、真言を唱える。更なる光を飛ばし、仲間の防御力を高めていった。
クオンは魔導機械にマテリアルを込め、アンカーを射出する。それがぬいぐるみに引っ掛かるのと同時に雷撃を走らせた。残っていた最後のぬいぐるみがそれで焼かれ、地面に転がる。
呪いの人形はさらに怪光線を撃ち放つ。浴びたメンバー達に振りかかる呪いが体を蝕む。その体力を回復させようと、またも遮那が印を結び、祈りを捧げていた。
さて、残っているのは、呪いの人形ただ1体。残念ながらそれが乗っていた棚は多少損壊してしまっている。
「下手に人形に近づけば、呪われるようだが……」
ルヌーンは人形を見て思う。自身はすでに、頭の上の植物が生え、呪われているような状態なのではないかと。
彼女はその手にメラメラと燃える炎を纏う。炎の精霊の加護を受けた腕輪、ブレスレット『シャルール』の為だ。彼女はそれで付けた腕を伸ばし、炎の矢を人形へとぶつけていく。
ハナも符を飛ばし、結界を作り続ける。幾度も光を浴び続ける人形もまた、眼光鋭くハンターを睨み付け、応戦を続けていた。
もはや、この人形は破壊せねばならないと、琉那も意を決し、大手裏剣を短剣のように振るう。それによって傷が増えていく人形に、クオンが魔導銃で狙いを定め……撃ち貫く。
「ちゃんと注意すれば、強敵でも無いですね」
クオンが呟く。これだけ手間を掛けているのだ。そうでなくては困るというもの。
ユキヤがここぞと輝く光の弾を飛ばす。それが人形に命中して弾けると、ついに人形の目から光が消え、その体もまた消え失せる。
同時に、店内の異様な雰囲気も合わせて消え失せたのだった。
●元に戻った店内で
戦いを終え、ハンター達はスキルを駆使し、店内を清掃する。ハナが事前に暗記した通りに、物品を店内へと戻していく。
「なぜ人形は人を呪うのか疑問だ。人を呪わば、穴二つなのにな」
改めてルヌーンが人形の消えた場所を見て考える。呪いは誰も幸福になどしないと。
「せやな。こうならなければ、どこかの家で大切にかわいがられたやろな」
琉那もそう考え、配下だった人形やぬいぐるみを拾う。これらは修繕すれば、新たな持ち主によって大切にしてもらえるだろう。
「願わくば……」
遮那は回向を唱える。功徳を広く有縁の人々に……と。
「これで大丈夫でしょうか」
ユキヤは元通りに戻った店内を見回し、頷く。多少壁に傷が入っているが、それもある程度は補修してある。
壊した棚も全壊していたわけではない。多少は手直しし、使えるレベルには戻している。エリックが許容してくれればいいが……。
「それでは、エリックさんに報告へ行きましょう」
エリックはおそらく、一時的に荷物を置いた場所で待機したままだろう。ユキヤの提案もあり、ハンター全員で改めてエリックの元へと終了報告と謝罪へと出向きにいったのだった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/02/11 00:44:08 |
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呪いの人形退治 天道 遮那(ka6113) 人間(リアルブルー)|18才|男性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2016/02/14 01:43:23 |