ゲスト
(ka0000)
【闇光】脚本家達の共演
マスター:龍河流

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/02/16 19:00
- 完成日
- 2016/03/02 02:22
このシナリオは3日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
フレーベルニンゲン平原のある区域。
そこにも先の戦いで破壊されたユニットが、その残骸をあちこちに散らばせていた。CAM乗りでなくとも、心楽しい光景ではない。
けれど、残骸と呼ばれようとも回収されれば、また活躍する可能性はある。それがパーツ取りと呼ばれる行為であろうとも、ただ打ち捨てられて朽ちていくよりはましだろう。
散らばる残骸に、そんな感傷があるとして。
もっと身も蓋もない言い方をすれば、こんな回収も必要なほどに人側の戦力も危ういのだ。資源は有限で、CAMなどは元々の数も限られる。
回収を依頼されたハンターの中には、これで組み直されたCAMを買おうと期待で胸を膨らませている者もいるようだ。彼または彼女の財布が、その出費を許すならば、と条件は付くけれども。
なにはともあれ、ハンター達は予想通りの状況に出会っていた。
他の回収隊より少しばかり出発が遅かったので、先行した人々が歪虚に操られているCAMなどと戦闘を繰り広げているのは承知していた。
歪虚共は余計な知恵を付けて、CAMはじめユニットを自分達が利用しようとしているのだろう。
よって現在、ハンター達は傷付いた姿で立ち上がり、自分達を攻撃してくるあらゆるユニットと戦うことを強いられていた。たまにバイクも混じっているのは、もう御愛嬌だ。
目的のユニット回収のために、ユニットと戦う。
否。こいつらを操っているのは、十三魔レチタティーヴォが遺した人形だ。何処かに張り付いているそれをはがせば、動きは止まる。
後は、人形を壊せばいい。それだけのこと。
この時まで、ハンター達はそう思っていた。
まさか、人形達を退けて取り戻したはずのCAMが、また動き出すとは予想もしていなかったのだ。
警戒の薄かった方向からの攻撃に、ハンター達の態勢は乱れて、すぐには立て直せそうにない。
平原の、様々なユニットと人とが入り乱れる場所から少し離れて。
白い仮面の男が、人がましい仕草で軽く肩をすくめた。
「レチタティーヴォが、親切なはずもなく。やれやれ」
同じ嫉妬の眷族として、レチタティーヴォが最期に寄越した手紙に沿うてやろうかと、珍しく同胞意識を見せたのがいけなかった。遺された人形は敵味方の区別なしに襲ってくる不良品ばかり。
これを退けている内に、カッツォはユニットへの興味を失い掛けていた。あれば便利だが、なくても自身の遊戯は続けられる。
壊れかけた玩具を集めるのもつまらないと考えたカッツォだったが、思い直したのはハンター達が懸命に戦っている姿を遠目に認めたからだ。
「あのメイド、確かルチアと言いましたか……」
彼女はその身をCAMと融合し、随分見事に戦ったという。
今回は連れてきたのは彼女より格の落ちる歪虚だが、数は三体。
レチタティーヴォの置き土産と、自分の駒。
これらでハンター達を玩具にするのも、悪くはない。
そこにも先の戦いで破壊されたユニットが、その残骸をあちこちに散らばせていた。CAM乗りでなくとも、心楽しい光景ではない。
けれど、残骸と呼ばれようとも回収されれば、また活躍する可能性はある。それがパーツ取りと呼ばれる行為であろうとも、ただ打ち捨てられて朽ちていくよりはましだろう。
散らばる残骸に、そんな感傷があるとして。
もっと身も蓋もない言い方をすれば、こんな回収も必要なほどに人側の戦力も危ういのだ。資源は有限で、CAMなどは元々の数も限られる。
回収を依頼されたハンターの中には、これで組み直されたCAMを買おうと期待で胸を膨らませている者もいるようだ。彼または彼女の財布が、その出費を許すならば、と条件は付くけれども。
なにはともあれ、ハンター達は予想通りの状況に出会っていた。
他の回収隊より少しばかり出発が遅かったので、先行した人々が歪虚に操られているCAMなどと戦闘を繰り広げているのは承知していた。
歪虚共は余計な知恵を付けて、CAMはじめユニットを自分達が利用しようとしているのだろう。
よって現在、ハンター達は傷付いた姿で立ち上がり、自分達を攻撃してくるあらゆるユニットと戦うことを強いられていた。たまにバイクも混じっているのは、もう御愛嬌だ。
目的のユニット回収のために、ユニットと戦う。
否。こいつらを操っているのは、十三魔レチタティーヴォが遺した人形だ。何処かに張り付いているそれをはがせば、動きは止まる。
後は、人形を壊せばいい。それだけのこと。
この時まで、ハンター達はそう思っていた。
まさか、人形達を退けて取り戻したはずのCAMが、また動き出すとは予想もしていなかったのだ。
警戒の薄かった方向からの攻撃に、ハンター達の態勢は乱れて、すぐには立て直せそうにない。
平原の、様々なユニットと人とが入り乱れる場所から少し離れて。
白い仮面の男が、人がましい仕草で軽く肩をすくめた。
「レチタティーヴォが、親切なはずもなく。やれやれ」
同じ嫉妬の眷族として、レチタティーヴォが最期に寄越した手紙に沿うてやろうかと、珍しく同胞意識を見せたのがいけなかった。遺された人形は敵味方の区別なしに襲ってくる不良品ばかり。
これを退けている内に、カッツォはユニットへの興味を失い掛けていた。あれば便利だが、なくても自身の遊戯は続けられる。
壊れかけた玩具を集めるのもつまらないと考えたカッツォだったが、思い直したのはハンター達が懸命に戦っている姿を遠目に認めたからだ。
「あのメイド、確かルチアと言いましたか……」
彼女はその身をCAMと融合し、随分見事に戦ったという。
今回は連れてきたのは彼女より格の落ちる歪虚だが、数は三体。
レチタティーヴォの置き土産と、自分の駒。
これらでハンター達を玩具にするのも、悪くはない。
リプレイ本文
突然の出来事に、ハンター達の反応は様々だった。
「なんだって……壊れたユニットの回収に来ただけだってのに!」
ほんの一分前まで順調だった作業が危機的状況に変化して、八原 篝(ka3104)が悪態をついた。
彼女が魔導バイクを停め、片足を着いた地面を蹴りつける勢いなのもおかしな話ではない。苦労してレチタティーヴォの人形から取り戻したはずのアーマーが、どういう訳か動き出したのだ。
「三つ巴たぁ、楽しいじゃねぇか!」
「確かに、さっきとは動きが違う。他にもいるかもしれないな」
前後を敵に挟まれたと思しき状況に呵々大笑する万歳丸(ka5665)に、至極冷静にジュード・エアハート(ka0410)が頷いた。前者は状況をあっさり三つ巴と言葉にして楽しげだが、後者はその言葉から何やら気付くことがあったようだ。
再度動き出した方が、今までより動きが滑らかだとは、確かに指摘の通り。武器の構え方はまるで様になっていないが、足の運びは熟練のパイロットが乗っているかのように滑らかだ。
まるで。
「人形ではない何かが、憑りついたような……?」
じっとしていると、ユニット群に張り付いた人形達のいい的になるから、細かく位置を変えながら、エメラルド・シルフィユ(ka4678)が思い付いた言葉を漏らした。アーマーに注目するあまり、足元への注意が散漫になった彼女に、足場が良い方を手で示してやったザレム・アズール(ka0878)は、聞こえた呟きに成程とアーマーを振り仰ぐ。
そのまま、エンジンをふかしてアーマーとユニット群の狭間を抜けようとする動きを取った。こちらも固まってはいないが、前後を挟まれているのは違いなく、横まで固められては逃げ場もない。
せめても、どちらかの視線を動かして、狙いが散漫になれと思いつつの観察に、
「左側、頭部におそらく歪虚だ! あの人形とは違うぞっ」
後方のアーマー二体に向かって左側、言われた皆が見やれば、さっきまではなかった突起が存在していた。レチタティーヴォの人形より大きく、もう少し人に近い姿をしているが頭部が大きすぎて歪な形状のそれには、足が見えない。
否、アーマーに溶け込むように胴がくっついていた。ザレムが自身を目にしたことに気付いたか、赤い裂け目のような口をにぃと歪ませる。
「きっと歪虚が無機物に同化する能力だよ!」
少し前に、十三魔二体の逃走のために時間稼ぎをした歪虚の能力だと、アリア(ka2394)がその危険を皆に伝えた。確かにその話なら、耳にしたことがあるハンターは少なくない。
レチタティーヴォの人形も、これを自分以外が使えるように応用した結果なのかもしれないが……人形ではなく歪虚本体に取り込まれたアーマーは、もう少し知恵があるようだ。
なぜなら、ハンター達を人形が操るユニット群の方へ追い込もうとする動きを見せるのだ。人形達は、新手の歪虚の登場など気にした様子もなく、ひたすらに目前の存在を攻撃しようと蠢いている。
このまま挟撃されれば、もちろんハンター達は押し潰されるしかない。それを良しとする者など、一人も居はしないのだが。
特に。
「上等だ……全部、倒してやる」
ユニットの回収より、そこに現われる敵との遭遇を目的に参加したのではと思われるウィンス・デイランダール(ka0039)は、挟撃された事実に含み笑いまで漏らしていた。危機に陥ることでかえって奮い立つと見るには、その様子にはいささか余裕が足りない。
まるで追い詰められたかのような顔付きの彼が、一人で飛び出さないようにと目顔で相談したアリアとエメラルドが何か声を掛けようとした時、アリアが提げていたトランシーバーががなり立てた。
正確には、その通信先の仙堂 紫苑(ka5953)が、今回ハンター側で唯一の魔導アーマー「ゾーン」から連絡を寄越したのだ。
『一度制圧したアーマーに向かって右、右脚に何かついている。そちらで正体が分かるか?』
ユニット群へシールドを振っての牽制をしながらの通信は、いささか音が悪いが、聞き取ったアリアは皆に注意を促した。
けれども、その詳細を確かめるより先に、ウィンスが叫ぶ。
「倒せばいいだけだろぉっ!!」
思わずそちらを振り向いたハンターの数人が、ソウルトーチの輝きに目を奪われた。
「何やってんのよぉ!」
一人で突っ込む奴があるかと、ユニット群に向かって走るウィンスの先に篝が銃弾をばらまく。敵の動きを止めれば、ウィンスも皆と勢いを合わせるかと思ったが、その希望はあっさりと裏切られた。
それも、別人により。
「今のはいい! よぅし、挙げた武勲で勝負だ!」
「あぁ、脳筋多過ぎっ」
万歳丸までが、ユニット群へと真正面から向かって行くのを目にしては、篝の愚痴をたしなめる者などいない。そんな余裕もない。
「集中させるなっ」
ザレムが叫んで、二人に一旦添うように魔導バイク「バルバシューム」の進路を取った。そこから、すぐに離れて行くのは、ユニット群の狙いを分散させるためだ。まだ愚痴が収まらない篝も、バイクでザレムと反対方向に走りつつ、次の制圧射撃を食らわせる機を狙っている。
「ただの力仕事じゃなくなって、嬉しいねぇ!」
「五月蠅いっ!」
そうした後方の援護に気付いているものか、万歳丸はその野太い声を弾ませて、ウィンスに何かと声を掛ける。どれだけ相手がつれなかろうと、気を悪くする様子もない。
ウィンスのミラージュグレイブが、人形の憑りついたバイクを薙ぎ払って横倒しにする。そこに万歳丸の拳が、タイヤを叩き潰す勢いでめり込んだ。
「あんた達! 私らは壊しに来たんじゃないよっ」
篝が怒鳴るのも無理はないと、ザレムだけは思っていた。
なにしろ、他の四人は新手のアーマー相手に忙しかったのだ。
仙堂が指摘した右脚の『何か』は、お面と手足の先だけの浮彫の様になっていた。アーマーに溶け込んだのか、元から薄いのか。
「きみ、よくあれに気付けたね」
『今は見えなくなったが、逃げたのか?』
溶け込んでいっているのかと、アリアは仙堂との会話から察した。もう一体は頭部に乗っかるような体勢のままだから、憑りつき方にも個体差があるものらしい。
「あの悪趣味なヴィスキオ、視界はアーマーの目を使ってるらしい。本体の視線に惑わされないで」
仙堂のゾーンが、右脚にもう顔しか浮かんでいない機体と睨み合う姿勢の中、間を潜り抜けるように魔導バイク「ソーペルデュ」でジュードがアリアとエメラルドに近付いてきた。悪路に強いソーペルデュの特性を活かして、宿り木と称した機体の周囲をぐるりと巡り、こちらに背を向けさせるのに成功したからか、冗句を言う余裕がある。
「鞭捌きで、眩ませちゃうよ。向こうがでかいのが、ちょっとアレだけど」
「動きを止めるなら、任せておけ」
挟撃状態から解放され、更に自分達に有利な状態に持ち込むのに、どういう位置取りが最適か。ユニット群に向かった仲間は、相手の数からも簡単に陣形を整えるとはいかないからと、まずエメラルドとアリア、ついで二人とジュードが手早く相談をまとめる。
ゾーンの仙堂には、またトランシーバーを通じて、もはや指示となるまで方針が固まっている。
「ヴィスキオとそっちの機体、エメが動きを鈍らせるから! あたし達、ヴィスキオに向かうので、しばらく抑えをよろしくね」
『了解。キールでどうだ』
「は? あ、そっちの敵の呼び名? なんで?」
『ん……右脚野郎よりはいいと思った』
そういう冗談を言うとは思わなかったとアリアに驚かれた仙堂が、ゾーンの機内で苦笑したのは、当然ながら誰の目にも入らない。そして、アリアが『何かにつけて驚く自分はおかしいのか』と、ため息をついたのも誰知らぬことだ。
その頃には、ジュードのソーペルデュを障壁代わりに、エメラルドがレクイエムを歌い上げていた。歪虚なら、これで行動が鈍るはず。
そして、ヴィスキオは憑りついた上半身が頭を傾げるように揺らめいて、周囲を見渡し出した。エメラルドに狙いを定めたように見えたのもつかの間、ジュードから狙い撃ちされて、また頭を傾げている。
ゾーンに向かっていたキールは、少し歩みが遅くなった程度の変化だ。仙堂が、その進行方向、提げたカタナの剣先が届く範囲にまだ仲間がいると、盾を前に出そうと構えた途端。
『レクイエムのせいか?』
後方、ユニット群と自分達の間、地面に落ちていたアーマー用のライフルから放たれた銃弾が盾の裏に当たったのを訝しんで尋ねた。が、尋ねられた側も、ライフルしかなかったはずだと戸惑っている。
その返答を寄越したのはジュード、対応を叫んだのはザレムだった。
「人形の方だ。他にいないか、捜してる」
「こいつら、相手構わずだ! アーマーから離れろ!」
キールとヴィスチオは多少知恵があるからと、具体的な行動は示されていない叫びだったが、ゾーンの反応は素早かった。盾を盆のように掴み直し、アリアとエメラルドを載せて、アーマーとユニット群の双方から離れていく。
その後を、ジュードがアーマーの足を止める威嚇射撃をしながら、追いかけた。こちらの離脱は、速やかに行ったと言えるだろう。
かたや、ユニット群を相手取る四人の方は、相手が多いだけに少しばかり手間が掛かっている。
「あの銃は、大丈夫だと思ったんだがな!」
「その根拠のない自信は、そろそろ捨てていいわよ。ほらほら、きりがいいとこで離脱……しなさいっ!」
「銃は後ろには撃てんだろう。あんたが先に離れろ」
足が一本曲がっただけのCAMが、ウィンスの引きつけと万歳丸の攻撃で上半身だけになり果てて、回収作業を残骸漁りになると篝の嘆きが尽きない中、今度はどちらが殿を務めるかで意見がぶつかっていた。
速度なら魔導バイクに乗る篝に分があり、操縦の要がない万歳丸とウィンスには攻撃の範囲と手数の優位がある。もう一つ、後者二人は派手な動きで人形達の多数に攻撃対象とされていた。
よって、危険度が高い状況から早く二人を離脱させたい篝は、ユニット群への攻撃とアーマー二体への標的移動を、不思議と息を合わせて行うウィンスと万歳丸に連れ添う低速で走行中だ。ザレムはどうしたものか、いつの間にか彼女の視界からは外れている。
先程とは逆に、今度はアーマー二体に正面から向かっているように見えた万歳丸が、篝とウィンスに斜め方向に大分離れた地表を指した。ちらりと目をやった二人の視線に、ひらりと振られた手が見える。ザレムの籠手と気付くかどうかのうちに、そちらから銃声が響いた。
狙うのは、当然ユニット群。バイクとトラックが数体の人形で引き合されて、動こうとしていた塊だ。
もう一発、揺らいだ塊に向けて、今度はヴィスキオの脚の間を通しての一撃が。
「あいつらを噛み合わせて、あたし達は弱ったところを叩きに行く。OK?」
「分かっているが……それこそ残骸だらけにならないか」
「何言ってんだ、坊主。まだトラックもアーマーもあるじゃねえか。頭使い過ぎねえで、あれを獲りに行こうぜ!」
そのためには、奴らを襲うに適した場所へと、万歳丸がウィンスを引きずるようにして移動していく。それを横目に、篝は丁寧に弾込めを終えた。早くする方法もスキルもあるが、予定外、予想外の連続だから、気を落ち着けるのも大切だ。
アーマー側に向かっていた仲間から聞いた情報を、ザレムが知らせに近付いてきたのはこの時で、あいにくと聞く相手は篝しかいない。
「もう一体、歪虚がいるらしい。多分、状況が落ち着いたところで来るぞ」
ちょうど今、アーマーはたった二体で何倍かのユニット群の組織立たない攻撃にさらされていた。仲間も壊しかねない人形の攻勢は予想が付きにくいせいか、アーマーもこちらを構う余裕を失っている。とはいえ、武器を持つアーマーの方が優位だろう。
どうやら、アーマーに振り払われたユニットには、ウィンスや万歳丸がきっちりと人形をはがしに行っている。エメラルドのレクイエムの支援と、ジュードの援護射撃で、危険度は大分と低そうだ。
仙堂のゾーンは、突撃の機を測っているようで、アーマー二体のどちらにも向かえる姿勢でいた。ここまでは、ハンター達が狙ったように有利に事が運んでいる。そう確かめて、ザレムと篝はアーマーのうち、ヴィスキオを狙える位置に動き始めた。
そちらには、先程下半身が壊されたCAMも放置されたままになっている。
「そう、あの上半身だけの。向こうのバイクの二人も気付いたようだが、仙堂にも知らせてくれ」
「分かった。あ、いつもの、よろしくお願い」
一度見失った歪虚の姿を探し続けていたアリアに、エメラルドがそれらしい気配を見付けたと知らせた時には、そいつはCAMの残骸に近付いてしまっていた。ここまで隠れおおせたのは、単なる運か、それともこいつに他の二体を取りまとめるだけの知恵があるのか。
ウィンスと万歳丸が人形を千切っては投げ、アーマーの注意も引く派手な動きをしている中で、まずゾーンが動いた。今までの警戒態勢から、シールドを構えての突撃はキールに対してだ。
横合いの低い位置から、全力でぶつかられたキールが転倒する。そこに殺到するユニット群は放置して、ゾーンは自分に得物を振りかざしたヴィスキオの前進を止めるため、パワードアンカーを発動させた。動けはしないが、押し負けもない。
そして、複数の銃声が轟いた。
ジュードとザレム、篝がそれぞれの銃の構えを解いた時には、ゾーンが倒れるヴィスキオだった機体をそっと地面に降ろしている。
「よし、残りは」
誰かが、残る歪虚を数えようと視線を巡らせた時、駆け抜けたのはアリアだった。手にしたダンサーズショートソードは、エメラルドのホーリーセイバーで白く輝きを増している。
「「見付けたぁ!」」
歪虚に向けられた声は、男女の二種類。攻撃のためには憑りつくモノを選ぶだろうと、上半身だけになったCAMを怪しんで、順々に警戒していた中のアリアと、転倒したキールに臆せず飛び掛かったウィンスと。
アリアはがれきの影からCAMに手を伸ばした幼児ほどの大きさの歪虚を、ウィンスはアーマーの右足に浮かんだ顔を、それぞれに貫いた。
「かーっ、いいとこ取られたな。しかし坊主、数はオレの勝ちだと思うが?」
「数えてない」
最初からここまで、何の変りもない万歳丸の態度に呆れたり、笑みを誘われたり。ユニット群もキールとヴィスキオとの潰し合いで数を減らしていて、もうハンター達が相手取るのに苦労はなかった。
ただ。
「あの三体目が、俺達と人形の潰し合いを画策したとは思えないよな」
ザレムの疑念は、皆も感じたが……
その後、残骸の回収に入った彼らを脅かす存在が現われることはなかった。
「なんだって……壊れたユニットの回収に来ただけだってのに!」
ほんの一分前まで順調だった作業が危機的状況に変化して、八原 篝(ka3104)が悪態をついた。
彼女が魔導バイクを停め、片足を着いた地面を蹴りつける勢いなのもおかしな話ではない。苦労してレチタティーヴォの人形から取り戻したはずのアーマーが、どういう訳か動き出したのだ。
「三つ巴たぁ、楽しいじゃねぇか!」
「確かに、さっきとは動きが違う。他にもいるかもしれないな」
前後を敵に挟まれたと思しき状況に呵々大笑する万歳丸(ka5665)に、至極冷静にジュード・エアハート(ka0410)が頷いた。前者は状況をあっさり三つ巴と言葉にして楽しげだが、後者はその言葉から何やら気付くことがあったようだ。
再度動き出した方が、今までより動きが滑らかだとは、確かに指摘の通り。武器の構え方はまるで様になっていないが、足の運びは熟練のパイロットが乗っているかのように滑らかだ。
まるで。
「人形ではない何かが、憑りついたような……?」
じっとしていると、ユニット群に張り付いた人形達のいい的になるから、細かく位置を変えながら、エメラルド・シルフィユ(ka4678)が思い付いた言葉を漏らした。アーマーに注目するあまり、足元への注意が散漫になった彼女に、足場が良い方を手で示してやったザレム・アズール(ka0878)は、聞こえた呟きに成程とアーマーを振り仰ぐ。
そのまま、エンジンをふかしてアーマーとユニット群の狭間を抜けようとする動きを取った。こちらも固まってはいないが、前後を挟まれているのは違いなく、横まで固められては逃げ場もない。
せめても、どちらかの視線を動かして、狙いが散漫になれと思いつつの観察に、
「左側、頭部におそらく歪虚だ! あの人形とは違うぞっ」
後方のアーマー二体に向かって左側、言われた皆が見やれば、さっきまではなかった突起が存在していた。レチタティーヴォの人形より大きく、もう少し人に近い姿をしているが頭部が大きすぎて歪な形状のそれには、足が見えない。
否、アーマーに溶け込むように胴がくっついていた。ザレムが自身を目にしたことに気付いたか、赤い裂け目のような口をにぃと歪ませる。
「きっと歪虚が無機物に同化する能力だよ!」
少し前に、十三魔二体の逃走のために時間稼ぎをした歪虚の能力だと、アリア(ka2394)がその危険を皆に伝えた。確かにその話なら、耳にしたことがあるハンターは少なくない。
レチタティーヴォの人形も、これを自分以外が使えるように応用した結果なのかもしれないが……人形ではなく歪虚本体に取り込まれたアーマーは、もう少し知恵があるようだ。
なぜなら、ハンター達を人形が操るユニット群の方へ追い込もうとする動きを見せるのだ。人形達は、新手の歪虚の登場など気にした様子もなく、ひたすらに目前の存在を攻撃しようと蠢いている。
このまま挟撃されれば、もちろんハンター達は押し潰されるしかない。それを良しとする者など、一人も居はしないのだが。
特に。
「上等だ……全部、倒してやる」
ユニットの回収より、そこに現われる敵との遭遇を目的に参加したのではと思われるウィンス・デイランダール(ka0039)は、挟撃された事実に含み笑いまで漏らしていた。危機に陥ることでかえって奮い立つと見るには、その様子にはいささか余裕が足りない。
まるで追い詰められたかのような顔付きの彼が、一人で飛び出さないようにと目顔で相談したアリアとエメラルドが何か声を掛けようとした時、アリアが提げていたトランシーバーががなり立てた。
正確には、その通信先の仙堂 紫苑(ka5953)が、今回ハンター側で唯一の魔導アーマー「ゾーン」から連絡を寄越したのだ。
『一度制圧したアーマーに向かって右、右脚に何かついている。そちらで正体が分かるか?』
ユニット群へシールドを振っての牽制をしながらの通信は、いささか音が悪いが、聞き取ったアリアは皆に注意を促した。
けれども、その詳細を確かめるより先に、ウィンスが叫ぶ。
「倒せばいいだけだろぉっ!!」
思わずそちらを振り向いたハンターの数人が、ソウルトーチの輝きに目を奪われた。
「何やってんのよぉ!」
一人で突っ込む奴があるかと、ユニット群に向かって走るウィンスの先に篝が銃弾をばらまく。敵の動きを止めれば、ウィンスも皆と勢いを合わせるかと思ったが、その希望はあっさりと裏切られた。
それも、別人により。
「今のはいい! よぅし、挙げた武勲で勝負だ!」
「あぁ、脳筋多過ぎっ」
万歳丸までが、ユニット群へと真正面から向かって行くのを目にしては、篝の愚痴をたしなめる者などいない。そんな余裕もない。
「集中させるなっ」
ザレムが叫んで、二人に一旦添うように魔導バイク「バルバシューム」の進路を取った。そこから、すぐに離れて行くのは、ユニット群の狙いを分散させるためだ。まだ愚痴が収まらない篝も、バイクでザレムと反対方向に走りつつ、次の制圧射撃を食らわせる機を狙っている。
「ただの力仕事じゃなくなって、嬉しいねぇ!」
「五月蠅いっ!」
そうした後方の援護に気付いているものか、万歳丸はその野太い声を弾ませて、ウィンスに何かと声を掛ける。どれだけ相手がつれなかろうと、気を悪くする様子もない。
ウィンスのミラージュグレイブが、人形の憑りついたバイクを薙ぎ払って横倒しにする。そこに万歳丸の拳が、タイヤを叩き潰す勢いでめり込んだ。
「あんた達! 私らは壊しに来たんじゃないよっ」
篝が怒鳴るのも無理はないと、ザレムだけは思っていた。
なにしろ、他の四人は新手のアーマー相手に忙しかったのだ。
仙堂が指摘した右脚の『何か』は、お面と手足の先だけの浮彫の様になっていた。アーマーに溶け込んだのか、元から薄いのか。
「きみ、よくあれに気付けたね」
『今は見えなくなったが、逃げたのか?』
溶け込んでいっているのかと、アリアは仙堂との会話から察した。もう一体は頭部に乗っかるような体勢のままだから、憑りつき方にも個体差があるものらしい。
「あの悪趣味なヴィスキオ、視界はアーマーの目を使ってるらしい。本体の視線に惑わされないで」
仙堂のゾーンが、右脚にもう顔しか浮かんでいない機体と睨み合う姿勢の中、間を潜り抜けるように魔導バイク「ソーペルデュ」でジュードがアリアとエメラルドに近付いてきた。悪路に強いソーペルデュの特性を活かして、宿り木と称した機体の周囲をぐるりと巡り、こちらに背を向けさせるのに成功したからか、冗句を言う余裕がある。
「鞭捌きで、眩ませちゃうよ。向こうがでかいのが、ちょっとアレだけど」
「動きを止めるなら、任せておけ」
挟撃状態から解放され、更に自分達に有利な状態に持ち込むのに、どういう位置取りが最適か。ユニット群に向かった仲間は、相手の数からも簡単に陣形を整えるとはいかないからと、まずエメラルドとアリア、ついで二人とジュードが手早く相談をまとめる。
ゾーンの仙堂には、またトランシーバーを通じて、もはや指示となるまで方針が固まっている。
「ヴィスキオとそっちの機体、エメが動きを鈍らせるから! あたし達、ヴィスキオに向かうので、しばらく抑えをよろしくね」
『了解。キールでどうだ』
「は? あ、そっちの敵の呼び名? なんで?」
『ん……右脚野郎よりはいいと思った』
そういう冗談を言うとは思わなかったとアリアに驚かれた仙堂が、ゾーンの機内で苦笑したのは、当然ながら誰の目にも入らない。そして、アリアが『何かにつけて驚く自分はおかしいのか』と、ため息をついたのも誰知らぬことだ。
その頃には、ジュードのソーペルデュを障壁代わりに、エメラルドがレクイエムを歌い上げていた。歪虚なら、これで行動が鈍るはず。
そして、ヴィスキオは憑りついた上半身が頭を傾げるように揺らめいて、周囲を見渡し出した。エメラルドに狙いを定めたように見えたのもつかの間、ジュードから狙い撃ちされて、また頭を傾げている。
ゾーンに向かっていたキールは、少し歩みが遅くなった程度の変化だ。仙堂が、その進行方向、提げたカタナの剣先が届く範囲にまだ仲間がいると、盾を前に出そうと構えた途端。
『レクイエムのせいか?』
後方、ユニット群と自分達の間、地面に落ちていたアーマー用のライフルから放たれた銃弾が盾の裏に当たったのを訝しんで尋ねた。が、尋ねられた側も、ライフルしかなかったはずだと戸惑っている。
その返答を寄越したのはジュード、対応を叫んだのはザレムだった。
「人形の方だ。他にいないか、捜してる」
「こいつら、相手構わずだ! アーマーから離れろ!」
キールとヴィスチオは多少知恵があるからと、具体的な行動は示されていない叫びだったが、ゾーンの反応は素早かった。盾を盆のように掴み直し、アリアとエメラルドを載せて、アーマーとユニット群の双方から離れていく。
その後を、ジュードがアーマーの足を止める威嚇射撃をしながら、追いかけた。こちらの離脱は、速やかに行ったと言えるだろう。
かたや、ユニット群を相手取る四人の方は、相手が多いだけに少しばかり手間が掛かっている。
「あの銃は、大丈夫だと思ったんだがな!」
「その根拠のない自信は、そろそろ捨てていいわよ。ほらほら、きりがいいとこで離脱……しなさいっ!」
「銃は後ろには撃てんだろう。あんたが先に離れろ」
足が一本曲がっただけのCAMが、ウィンスの引きつけと万歳丸の攻撃で上半身だけになり果てて、回収作業を残骸漁りになると篝の嘆きが尽きない中、今度はどちらが殿を務めるかで意見がぶつかっていた。
速度なら魔導バイクに乗る篝に分があり、操縦の要がない万歳丸とウィンスには攻撃の範囲と手数の優位がある。もう一つ、後者二人は派手な動きで人形達の多数に攻撃対象とされていた。
よって、危険度が高い状況から早く二人を離脱させたい篝は、ユニット群への攻撃とアーマー二体への標的移動を、不思議と息を合わせて行うウィンスと万歳丸に連れ添う低速で走行中だ。ザレムはどうしたものか、いつの間にか彼女の視界からは外れている。
先程とは逆に、今度はアーマー二体に正面から向かっているように見えた万歳丸が、篝とウィンスに斜め方向に大分離れた地表を指した。ちらりと目をやった二人の視線に、ひらりと振られた手が見える。ザレムの籠手と気付くかどうかのうちに、そちらから銃声が響いた。
狙うのは、当然ユニット群。バイクとトラックが数体の人形で引き合されて、動こうとしていた塊だ。
もう一発、揺らいだ塊に向けて、今度はヴィスキオの脚の間を通しての一撃が。
「あいつらを噛み合わせて、あたし達は弱ったところを叩きに行く。OK?」
「分かっているが……それこそ残骸だらけにならないか」
「何言ってんだ、坊主。まだトラックもアーマーもあるじゃねえか。頭使い過ぎねえで、あれを獲りに行こうぜ!」
そのためには、奴らを襲うに適した場所へと、万歳丸がウィンスを引きずるようにして移動していく。それを横目に、篝は丁寧に弾込めを終えた。早くする方法もスキルもあるが、予定外、予想外の連続だから、気を落ち着けるのも大切だ。
アーマー側に向かっていた仲間から聞いた情報を、ザレムが知らせに近付いてきたのはこの時で、あいにくと聞く相手は篝しかいない。
「もう一体、歪虚がいるらしい。多分、状況が落ち着いたところで来るぞ」
ちょうど今、アーマーはたった二体で何倍かのユニット群の組織立たない攻撃にさらされていた。仲間も壊しかねない人形の攻勢は予想が付きにくいせいか、アーマーもこちらを構う余裕を失っている。とはいえ、武器を持つアーマーの方が優位だろう。
どうやら、アーマーに振り払われたユニットには、ウィンスや万歳丸がきっちりと人形をはがしに行っている。エメラルドのレクイエムの支援と、ジュードの援護射撃で、危険度は大分と低そうだ。
仙堂のゾーンは、突撃の機を測っているようで、アーマー二体のどちらにも向かえる姿勢でいた。ここまでは、ハンター達が狙ったように有利に事が運んでいる。そう確かめて、ザレムと篝はアーマーのうち、ヴィスキオを狙える位置に動き始めた。
そちらには、先程下半身が壊されたCAMも放置されたままになっている。
「そう、あの上半身だけの。向こうのバイクの二人も気付いたようだが、仙堂にも知らせてくれ」
「分かった。あ、いつもの、よろしくお願い」
一度見失った歪虚の姿を探し続けていたアリアに、エメラルドがそれらしい気配を見付けたと知らせた時には、そいつはCAMの残骸に近付いてしまっていた。ここまで隠れおおせたのは、単なる運か、それともこいつに他の二体を取りまとめるだけの知恵があるのか。
ウィンスと万歳丸が人形を千切っては投げ、アーマーの注意も引く派手な動きをしている中で、まずゾーンが動いた。今までの警戒態勢から、シールドを構えての突撃はキールに対してだ。
横合いの低い位置から、全力でぶつかられたキールが転倒する。そこに殺到するユニット群は放置して、ゾーンは自分に得物を振りかざしたヴィスキオの前進を止めるため、パワードアンカーを発動させた。動けはしないが、押し負けもない。
そして、複数の銃声が轟いた。
ジュードとザレム、篝がそれぞれの銃の構えを解いた時には、ゾーンが倒れるヴィスキオだった機体をそっと地面に降ろしている。
「よし、残りは」
誰かが、残る歪虚を数えようと視線を巡らせた時、駆け抜けたのはアリアだった。手にしたダンサーズショートソードは、エメラルドのホーリーセイバーで白く輝きを増している。
「「見付けたぁ!」」
歪虚に向けられた声は、男女の二種類。攻撃のためには憑りつくモノを選ぶだろうと、上半身だけになったCAMを怪しんで、順々に警戒していた中のアリアと、転倒したキールに臆せず飛び掛かったウィンスと。
アリアはがれきの影からCAMに手を伸ばした幼児ほどの大きさの歪虚を、ウィンスはアーマーの右足に浮かんだ顔を、それぞれに貫いた。
「かーっ、いいとこ取られたな。しかし坊主、数はオレの勝ちだと思うが?」
「数えてない」
最初からここまで、何の変りもない万歳丸の態度に呆れたり、笑みを誘われたり。ユニット群もキールとヴィスキオとの潰し合いで数を減らしていて、もうハンター達が相手取るのに苦労はなかった。
ただ。
「あの三体目が、俺達と人形の潰し合いを画策したとは思えないよな」
ザレムの疑念は、皆も感じたが……
その後、残骸の回収に入った彼らを脅かす存在が現われることはなかった。
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作戦相談卓 仙堂 紫苑(ka5953) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2016/02/16 12:36:20 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/02/13 20:30:44 |