ゲスト
(ka0000)
【闇光】いとを断ち切れ
マスター:鷹羽柊架

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/02/16 19:00
- 完成日
- 2016/02/22 06:20
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
十三魔レチタティーヴォ。
七眷属、嫉妬の歪虚。
脚本家であり演出家であると称し、配下の歪虚を各地に派遣、数多の惨劇を引き起こすと言われている。
奴はハンター達との戦いにより、果てた。
しかし、レチタティーヴォのシナリオは彼の死後もまた、綴られていたことに気づかされたのは、奴が死の間際に放った無数の人形達。
レチタティーヴォ死後の後も動けるように仕掛けていた。
遺された人形たちは、レチタティーヴォの意図のまま惨劇を引き起こすのだろう。
要塞都市【ノアーラ・クンタウ】内にあるドワーフ工房【ド・ウェルク】では今でも通常業務をストップし、修繕用の金物や、武器防具の修繕に当たっていた。
ドワーフ工房には三つの部署があり、工房内のスケジュール全体をはじめ、配合などを手がけるエテルタ、マテリアル鉱物の加工を主に手がけるフェルツ、金属加工を主とするクレムトがある。
その中のエテルタのリーダーはドワーフ工房の持ち主である通称『ドワーフ王』ヨアキムの娘であるカペラとなっている。
今回の件でカペラにも負担がかかっており、フェルツやクレムトの事務担当達、帝国から派遣されている工房管理官の四人でスケジュールや発注を回していた。
そんな折に、レチタティーヴォ撃破の知らせと、その人形達と破損されたCAMの部品回収の話が回って来た。
最初は何でこんな情報が回ってきたのか首を傾げていたのだが、カペラはふと、業務への思考をストップさせてユニット回収の方へと思考を回す。
「CAMの残骸……」
そう、CAM。
リアルブルーの者達がサルバトーレ・ロッソで転移してきた時、あの巨大な戦艦の中にあったの全領域人型戦術兵器。
戦いで故障、または停止となってしまったCAMや魔導アーマー量産型の回収依頼。
「再びCAMを見れるチャンス……!」
マギア砦で見させてもらったあの技術をまた見るためのまたとないチャンス。
「行くわ!」
立ち上がったカペラは「後は宜しく!」と叫んで駆け出していった。
「できるものならほしいわね!」
いくら動けないCAMを貰い受けるという事はできないと分かっていても、強欲なドワーフの気質には例え理性的なカペラとて抗う事などできない。
すぐにカペラはしかるべきところに連絡し、回収に赴いた。
カペラは道案内役を買って出て、魔導トラックと運転できるハンターの貸し出し許可をもらう。
ハンター達と共に現場へと駆けつけた。
「……え……」
トラックの助手席から見たカペラの瞳に写ったのは、倒れた状態で微かに動いているCAMの姿。
生存者がいたのだろうかと思ったカペラであるが、その考えは間違っていると本能的に察してしまう。
CAMの動きがなんだか鈍く、ぎこちない。
立つ為の駆動系統が壊れているのか、判別が付かないカペラは目を細めて警戒をする。
通信機から聞こえてきたのは、CAMを守るように歪虚が大勢が何かを拾っているという報告だった。
「嫌な予感しかしないわ……皆、気をつけて!」
カペラが叫ぶと、全員が臨戦態勢となった。
七眷属、嫉妬の歪虚。
脚本家であり演出家であると称し、配下の歪虚を各地に派遣、数多の惨劇を引き起こすと言われている。
奴はハンター達との戦いにより、果てた。
しかし、レチタティーヴォのシナリオは彼の死後もまた、綴られていたことに気づかされたのは、奴が死の間際に放った無数の人形達。
レチタティーヴォ死後の後も動けるように仕掛けていた。
遺された人形たちは、レチタティーヴォの意図のまま惨劇を引き起こすのだろう。
要塞都市【ノアーラ・クンタウ】内にあるドワーフ工房【ド・ウェルク】では今でも通常業務をストップし、修繕用の金物や、武器防具の修繕に当たっていた。
ドワーフ工房には三つの部署があり、工房内のスケジュール全体をはじめ、配合などを手がけるエテルタ、マテリアル鉱物の加工を主に手がけるフェルツ、金属加工を主とするクレムトがある。
その中のエテルタのリーダーはドワーフ工房の持ち主である通称『ドワーフ王』ヨアキムの娘であるカペラとなっている。
今回の件でカペラにも負担がかかっており、フェルツやクレムトの事務担当達、帝国から派遣されている工房管理官の四人でスケジュールや発注を回していた。
そんな折に、レチタティーヴォ撃破の知らせと、その人形達と破損されたCAMの部品回収の話が回って来た。
最初は何でこんな情報が回ってきたのか首を傾げていたのだが、カペラはふと、業務への思考をストップさせてユニット回収の方へと思考を回す。
「CAMの残骸……」
そう、CAM。
リアルブルーの者達がサルバトーレ・ロッソで転移してきた時、あの巨大な戦艦の中にあったの全領域人型戦術兵器。
戦いで故障、または停止となってしまったCAMや魔導アーマー量産型の回収依頼。
「再びCAMを見れるチャンス……!」
マギア砦で見させてもらったあの技術をまた見るためのまたとないチャンス。
「行くわ!」
立ち上がったカペラは「後は宜しく!」と叫んで駆け出していった。
「できるものならほしいわね!」
いくら動けないCAMを貰い受けるという事はできないと分かっていても、強欲なドワーフの気質には例え理性的なカペラとて抗う事などできない。
すぐにカペラはしかるべきところに連絡し、回収に赴いた。
カペラは道案内役を買って出て、魔導トラックと運転できるハンターの貸し出し許可をもらう。
ハンター達と共に現場へと駆けつけた。
「……え……」
トラックの助手席から見たカペラの瞳に写ったのは、倒れた状態で微かに動いているCAMの姿。
生存者がいたのだろうかと思ったカペラであるが、その考えは間違っていると本能的に察してしまう。
CAMの動きがなんだか鈍く、ぎこちない。
立つ為の駆動系統が壊れているのか、判別が付かないカペラは目を細めて警戒をする。
通信機から聞こえてきたのは、CAMを守るように歪虚が大勢が何かを拾っているという報告だった。
「嫌な予感しかしないわ……皆、気をつけて!」
カペラが叫ぶと、全員が臨戦態勢となった。
リプレイ本文
少し時間を巻き戻して……依頼に応じて待ち合わせ場所に現れたカペラはテンションが上がっているようであった。
カペラは技術者であり、リアルブルーという高度な技術を持った別の世界で作られた物を実際に触れられる機会はないからと高瀬 未悠(ka3199)は判断する。
叢雲 伊織(ka5091)は以前、ドワーフ工房の技術者より個人的な依頼を受けたことがあるが、カペラと会うのは初めてだった。
「CAMって男の子の浪漫がありますよね……」
「ロマンは共有してもいいものよ!」
カペラがテンション上がってて伊織との会話が成立しているのだろうかと叢雲・咲姫(ka5090)は思案する。
「仲良く会話ができるのはいいことだよ」
穏やかな口調で言うのは霧雨 悠月(ka4130)であった。
「準備が出来たようですね」
凛とした声を響かせたのはフィルメリア・クリスティア(ka3380)であり、彼女の視線の向こうでは魔導トラックを運転するハンターが待っているようだ。
「往きましょう」
マーゴット(ka5022)が言えば、ハンター達は支度を始める。
●
戦闘の跡が見られるようになってくると、ハンターの表情が曇る。
CAMや魔導アーマーがクリムゾンウェストの地を踏みしめた足跡が強く残っていた。
激しい戦闘だったのは一目でわかる。
「もうそろそろよね」
咲姫はカペラと共にトラックに乗り込んでおり、周囲を見回す。
「ええ、そのはずなんだけど……」
カペラもきょろきょろしつつ、周囲を確認していると、カペラの表情が固まった。
「……え……」
呆然とするカペラの声に咲姫が異変に気付き、遠見の眼鏡の拡大機能を使う。
言葉に詰まった咲姫は併走している伊織に声をかける。
「確認してきて!」
「あ、はい!」
トランシーバーを投げられた伊織はなんとかキャッチしてスピードを上げる。
「どうかしたのかしら?」
「バイクで先行偵察を頼まれました」
未悠が尋ねると、伊織は素直に答える。
「急ぎましょう」
魔導トラックでは出せるスピードが限られるため、バイクで確認したほうがいいだろう。
フィルメリアはスピードを上げると、高いエンジン音が響いた。
数百メートルも走らないうちに咲姫の言わんとした事が理解できた。
その向こうにあったのは戦闘にて倒れただろうCAM……最初はバイクの振動でそう錯覚を起こしたのだろうと思ったのだ。
しかし、違っている。
「……CAMが……」
ぽつりとマーゴットが呟く。
傷ついて横たわっているCAMが微かに動いている。
「姉上! CAMが動いています!」
伊織がトランシーバーで報告を行い、トラックの運転手のハンターのトランシーバーから聞こえたのは咲姫が遠見の眼鏡を使ったときと同じものが見えていたのだろう。
「それと……」
「いますね」
悠月がどこか好戦的な声を含みつつ言えば、フィルメリアが判断を下す。
CAMの周囲を徘徊している歪虚の姿をハンター達は目撃した。
この時点でまだ生存者がいたのだろうか……それは分らないが、確かめるしかない。
カペラと咲姫がトラックより降りて、先行した仲間達と合流する。
「……CAMのおばけでしょうか……」
弱気になってしまう気持を抑える伊織だが、悠月はそれは嫌だなぁという顔をしてCAMを見つめる。
「カペラ、あなたの知識も必要よ」
静かに告げられた言葉に応えるようにカペラは頷く。
CAMの知識があるのはリアルブルー時代よりCAMの知識のあるフィルメリアと以前、マギア砦にて、リアルブルーの技術者からCAMの知識を教わったカペラだ。
二班に分かれたハンター達はそれぞれの方へと走っていく。
先行するのは未悠、悠月、咲姫。
破損しているCAMの部品が落ちていないかうろうろしているようであり、実際にその腕の中には鉄くずが抱えられていた。
くるりと悠月が手にしていた刀をゆっくりと振るい上げる。
「昂ぶらせてよ……!」
切っ先を目標たる歪虚へと向けて悠月がそう囁く。
一気に彼の魔導バイクのエンジンが回転数を上げていき、歪虚を煽るかのように音が響いた。
タイヤが勢いよく回転してバイクが走り出す。
のろのろとゾンビ型歪虚が動き出して悠月の進む方向へと足を向けていた。
悠月を迎撃するためではないのは分かる。ゾンビは悠月を見てはいなかったし、彼もスピードを緩めるつもりはない。
魔導バイクは無情にもゾンビ型歪虚を轢き倒すと、ゾンビの腕がタイヤとの接触でちぎれてしまい、どこかへ飛ばされてしまった。
放り投げ出された腕に気を留めず、未悠はまっすぐ法輪「精霊馬」で悠月とは違う方向へ走っていく。
骸骨型歪虚はハンター達に気づいていないのか、何一つ気づかない模様。
知能が低い可能性も未悠は考慮し、法輪より降りた。
幅広の穂先が風を切り、歪虚の方へと聖槍「ロンゴミニアド」を構えた未悠には紫がかった黒い髪と同じ色の猫耳と尻尾が見えていた。
じっと標的を目測する真紅の瞳は虹彩を細めていく。
狙いを定めた未悠はマテリアルが巡った事を感じ、一気に駆け出した。
槍を水平に構え、骸骨型歪虚へ穂先を薙いで横へと飛ばす。
歪虚を倒すよりも、その場から離れさせる事を優先とし、素早く追いかける様は野生の猫さながら、上段から歪虚の骨を叩き折る。
未悠を追うように咲姫が更に歪虚の清掃に参加した。
知能が低いと思わしき歪虚も、歪虚にとっての妨害する者が現れたと認識したのか、のろのろと咲姫達の方へと向かう。
ハンター達にとっては歪虚達が妨害する者であり、排除しなくてはならない。
戦闘跡地の回収のみと思っていたが、とんだ後始末がまっていたものだと咲姫は前歯で軽く下唇を噛んだ。
未悠が開けた道へと立ち塞がろうとしているゾンビ型歪虚に気付いた咲姫は全身にマテリアルが巡るのを体感して一気に駆け出す。
自身が得物の日本刀を構えた咲姫は目的のゾンビ型歪虚がこれ以上前へ進まないようにと駆け出して袈裟懸けに歪虚を後ろへ押し飛ばすように斬り倒した。
咲姫は弟をはじめ、CAMへ向かう仲間達を心配するように振り向いた。
「こっちは抑えるから!」
そう叫ぶと、伊織は何かに気付いたかのように「姉上!」と叫ぶ。
弟の様子に気づいた咲姫は半身の姿勢となって武器を水平に構える。駆け出した瞬間には間合を詰めて、咲姫の隙をついたと思っただろう歪虚の首をとばした。
「そっちは任せたよ!」
威勢のいい咲姫の言葉にフィルメリア達がCAMへと一直線に駆けていった。
CAMの方へと駆けて行った班は今もゆっくりと動き出そうとしているCAMのコックピットへと向かう。
「すごい……」
感嘆の思いを込めて伊織が呟く。
「だから、助けないといけません」
フィルメリアの言葉は集約された言葉であったが、彼女の思いは伊織にも伝わっていた。
「はいっ!」
機体は仰向けになろうとしているところであり、フィルメリアとマーゴットがコックピットの中を覗く。
「え……」
二人は声を揃えたあと、すぐに顔を見合わす。
そこは無人であり、少し砂埃が被っていた。
操縦席に座ったフィルメリアは即座に起動させようとしたが、CAMは何一つ応えてくれなかった。
しかし、動いている音は聞こえる。
「……カペラお姉さん。なんだか、CAMは人間と変わらないんですね」
カペラより簡素な説明を受けていた伊織はぽつりと呟いた。
「人間に近い動きをするからねって、こんなに壊されてなんで動こうとするの……!」
背面を見ていたカペラはフィルメリア達に損傷具合を伝える。
その状態は明らかに故障どころではなく、動けるとは到底思えない。
しかし、動ているのだから、何かがある。
フィルメリアはぎゅっと瞳を瞑った。これ以上CAMが自分たちリアルブルーの移転者、この世界……クリムゾンウェストの大地を傷つけさせる道具となってほしくないと思いながら。
睫毛を震わせて瞳を見開いたフィルメリアにマーゴットは彼女の言葉を待つ。
「動いていたのは腕、脚よね」
「しらみつぶしに探そう」
マーゴットの言葉にフィルメリアは頷き、伊織達に伝える。
CAM班の会話が超聴覚を展開していた未悠の耳に届いていた。
「パイロットはいないみたい」
「そっか」
バイクから降りた悠月は骸骨型歪虚と対峙しており、未悠は猫のしなやかさのように悠月と咲姫の背に自身の背を併せて告げた。
「早く片づけましょ!」
いち早く咲姫が先手必勝とばかりにゾンビ型歪虚へと走り出す。
手分けしてCAM班が腕と足の部分を探しに行った。
表から見ると、このCAMはあまり損傷はなく見えるのだが、背面からの攻撃にでもやられたと一見して分ってしまう。
「手ひどくやられたものだ……」
顔を顰めるマーゴットはCAMの駆動部分の損傷を確認していた。
腕の部分のフレームは何らかの攻撃を受けており、焼け爛れたようになている。
フィルメリアはマーゴットが確認している腕の反対の腕……左腕になる方を確認していた。
CAMはこの腕を起点にして起き上がろうとしている。早く見つけなくてはと探していると、カタカタと音が聞こえてくる。
「わかった?」
悠月が声をかけると、フィルメリアは細い指を唇に当てて、「静かに」と伝えた。
彼女の様子に悠月は超聴覚を展開し、フィルメリアが気にしている音を探し出してゆっくりと指を差した。
腕のフレームの更に奥、関節部分に鉄ではない……CAMのものとは違う何かを覚ったフィルメリアは反射的に携行していた魔導拳銃「ベンティスカ」を抜き、即座に撃つ。
弾丸は命中し、甲高い破裂音が聞こえた。
銃声に気付いたと同時に、マーゴットの手伝いに入った未悠はCAMの駆動部分に隠れていた『異物』がマーゴットを狙っている事に気づく。
「あぶない!」
未悠が『異物』と判断したものが口をあけて、光を発射させた。
警戒の声に気付いたマーゴットだが、相手の方が早く、攻撃を受けてしまう。
「……くっ」
顔を顰めるマーゴットを庇い、未悠が前に出る。間合いは槍では間に合わない。
赤い椿をあしらった簪を持ち構える未悠は異物の目視をし、真正面から突き刺した。
その異物は人形であった。
思い出したのはかの十三魔の位置にいたレチタティーヴォ。
奴が死の間際に放った人形は今も尚、動いていると報告があったことを未悠は思い出す。
「レチタティーヴォの人形がいるわよ! 口から閃光弾も発射を確認! 気をつけて!」
未悠の言葉は仲間全員に聞こえたらしく、皆が警戒に当たる。
「伊織、気をつけて!」
咲姫が注意を促すと、伊織は「姉上っ」と警戒を返した。
弟の視線の先には人形がCAMに引っ付いており、一見すると、同化しているようだ。
「おばけじゃなくてよかった」
ほっとするような伊織の安堵は安定した集中へと向けられる。
伊織が手にしたダガーは光を握り締めているかのように輝いており、人形が伊織に気づくと同時にその光は人形とCAMを引き剥がすように振り下ろされた。
レチタティーヴォの人形達はCAMの駆動部分……特に、関節部分に同化しようとしており、CAMが動いていたように見えていたのは、人形達が動かしていたのだ。
人形を撃破すると、その部分は動かなくなってしまう。
両腕、両足に付着していた人形は撃破したが、まだ動いているようだ。
「あるとすれば、肩の関節、腰の関節部分ね」
ふむと答えるカペラの言葉に応じて、ハンター達が確認に走る。
「フィルメリアさん、CAMの応急処置に行きましょう」
「ええ、動かせたいわ」
カペラの提案にフィルメリアは同意し、二人はコックピットへと向かった。
腰部分を確認していた悠月は人形に気付く。
人形はまだ悠月には気付いていない模様であり、好機とばかりに悠月は手裏剣「八握剣」を握り締め、自身のマテリアルに集中する。
祖霊の力を借り降ろすと、手裏剣の切っ先に青白い霊力が纏われていく。
赤い瞳を人形へと向けると、大きく弧を描くように手裏剣を振りぬいた。手裏剣の切っ先は獣の牙のごとくの幻影が見え、獣が獲物を噛むように人形を砕いた。
肩の部分は地に着いている側の人形は壊すことが出来たが、その反対は実際に登らないと撃破は無理だ。
「……あの人形、移動してる!」
咲姫が気付いて、遠見の眼鏡を装着する。
肩の関節部分にはもう一体、同化しており、補強の為だろうか、他の部位に向かう為か、一体の人形がCAMを登っていた。
「先に同化している方の人形を破壊します。周囲お願いします」
伊織の手には黒い弓身のロングボウ「ソウルクラッシュ」があった。
矢を番え、狙いを澄ますためにマテリアルと視覚を集中させる。
登っていた人形はハンターに気付いたのだろう、登っていた場所を放棄し、伊織達へと降下していった。
「伊織の邪魔は……」
気配を察知した咲姫は剣を構え、脚にマテリアルを集中させて下降する人形に向かって跳躍し、刀を振り上げる。
「させないわ!」
切っ先が人形に当たり、一撃の衝撃で人形はCAMに激突して乾いた音を立てて壊れた。
咲姫の着地と共に伊織の矢が放たれる。
射出の音は叫びの音と言われているが、伊織の気迫は人形そのものを砕いた。
人形はハンターの仲間達のおかげで何とかなったが、問題はCAMの操作系統。
フィルメリアに乗ってもらい、落ち着いて状況確認する。
しかし、背面からの損傷がひどく、操作系の基盤を見たら、ショートしてしまっていた。
「……残念ね」
「仕方ない」
ふーっと、ため息をつくフィルメリアにマーゴットが答える。
「マギー、大丈夫?」
「すぐ治る」
こくりと頷くマーゴットにフィルメリアは穏やかに微笑んだ。
トラックの積み込み作業を終えて少し休んだ後、戻ることにした。
休憩中、未悠がカペラにヨアキムの話を振った。
類を見ないヨアキムの無法っぷりはカペラの耳にもよく届き、オトモのキュジィの苦労ぶりにドワーフ工房一同で涙するのはいつものこと。
「お父さんが迷惑かけてたらごめんなさいね……」
げんなりするカペラに未悠はそうではないと否定した。
スメラギが行った歌舞浄化陣の影で奮闘したヨアキムの話はカペラは知らなく、寸劇の内容はともかくだが。
「貴女のお父さんは子供達の人気者だったわよ」
未悠の一言で、沈んでいたカペラのテンションと表情がみるみると上がっていき、頬が高潮し、目が輝く。
「そうなの! パパは子供ウケいいの!」
ほっとしたカペラが喜んでくれたことを未悠もまた、静かに微笑んで喜ぶ。
周囲では「アレがパパ……」という複雑な空気を残して……。
その後、CAMや部品は無事に回収。
カペラはやっぱり、諦めきれなく、戻りしだい加勢してくれるハンターと共に交渉を行ったという。
カペラは技術者であり、リアルブルーという高度な技術を持った別の世界で作られた物を実際に触れられる機会はないからと高瀬 未悠(ka3199)は判断する。
叢雲 伊織(ka5091)は以前、ドワーフ工房の技術者より個人的な依頼を受けたことがあるが、カペラと会うのは初めてだった。
「CAMって男の子の浪漫がありますよね……」
「ロマンは共有してもいいものよ!」
カペラがテンション上がってて伊織との会話が成立しているのだろうかと叢雲・咲姫(ka5090)は思案する。
「仲良く会話ができるのはいいことだよ」
穏やかな口調で言うのは霧雨 悠月(ka4130)であった。
「準備が出来たようですね」
凛とした声を響かせたのはフィルメリア・クリスティア(ka3380)であり、彼女の視線の向こうでは魔導トラックを運転するハンターが待っているようだ。
「往きましょう」
マーゴット(ka5022)が言えば、ハンター達は支度を始める。
●
戦闘の跡が見られるようになってくると、ハンターの表情が曇る。
CAMや魔導アーマーがクリムゾンウェストの地を踏みしめた足跡が強く残っていた。
激しい戦闘だったのは一目でわかる。
「もうそろそろよね」
咲姫はカペラと共にトラックに乗り込んでおり、周囲を見回す。
「ええ、そのはずなんだけど……」
カペラもきょろきょろしつつ、周囲を確認していると、カペラの表情が固まった。
「……え……」
呆然とするカペラの声に咲姫が異変に気付き、遠見の眼鏡の拡大機能を使う。
言葉に詰まった咲姫は併走している伊織に声をかける。
「確認してきて!」
「あ、はい!」
トランシーバーを投げられた伊織はなんとかキャッチしてスピードを上げる。
「どうかしたのかしら?」
「バイクで先行偵察を頼まれました」
未悠が尋ねると、伊織は素直に答える。
「急ぎましょう」
魔導トラックでは出せるスピードが限られるため、バイクで確認したほうがいいだろう。
フィルメリアはスピードを上げると、高いエンジン音が響いた。
数百メートルも走らないうちに咲姫の言わんとした事が理解できた。
その向こうにあったのは戦闘にて倒れただろうCAM……最初はバイクの振動でそう錯覚を起こしたのだろうと思ったのだ。
しかし、違っている。
「……CAMが……」
ぽつりとマーゴットが呟く。
傷ついて横たわっているCAMが微かに動いている。
「姉上! CAMが動いています!」
伊織がトランシーバーで報告を行い、トラックの運転手のハンターのトランシーバーから聞こえたのは咲姫が遠見の眼鏡を使ったときと同じものが見えていたのだろう。
「それと……」
「いますね」
悠月がどこか好戦的な声を含みつつ言えば、フィルメリアが判断を下す。
CAMの周囲を徘徊している歪虚の姿をハンター達は目撃した。
この時点でまだ生存者がいたのだろうか……それは分らないが、確かめるしかない。
カペラと咲姫がトラックより降りて、先行した仲間達と合流する。
「……CAMのおばけでしょうか……」
弱気になってしまう気持を抑える伊織だが、悠月はそれは嫌だなぁという顔をしてCAMを見つめる。
「カペラ、あなたの知識も必要よ」
静かに告げられた言葉に応えるようにカペラは頷く。
CAMの知識があるのはリアルブルー時代よりCAMの知識のあるフィルメリアと以前、マギア砦にて、リアルブルーの技術者からCAMの知識を教わったカペラだ。
二班に分かれたハンター達はそれぞれの方へと走っていく。
先行するのは未悠、悠月、咲姫。
破損しているCAMの部品が落ちていないかうろうろしているようであり、実際にその腕の中には鉄くずが抱えられていた。
くるりと悠月が手にしていた刀をゆっくりと振るい上げる。
「昂ぶらせてよ……!」
切っ先を目標たる歪虚へと向けて悠月がそう囁く。
一気に彼の魔導バイクのエンジンが回転数を上げていき、歪虚を煽るかのように音が響いた。
タイヤが勢いよく回転してバイクが走り出す。
のろのろとゾンビ型歪虚が動き出して悠月の進む方向へと足を向けていた。
悠月を迎撃するためではないのは分かる。ゾンビは悠月を見てはいなかったし、彼もスピードを緩めるつもりはない。
魔導バイクは無情にもゾンビ型歪虚を轢き倒すと、ゾンビの腕がタイヤとの接触でちぎれてしまい、どこかへ飛ばされてしまった。
放り投げ出された腕に気を留めず、未悠はまっすぐ法輪「精霊馬」で悠月とは違う方向へ走っていく。
骸骨型歪虚はハンター達に気づいていないのか、何一つ気づかない模様。
知能が低い可能性も未悠は考慮し、法輪より降りた。
幅広の穂先が風を切り、歪虚の方へと聖槍「ロンゴミニアド」を構えた未悠には紫がかった黒い髪と同じ色の猫耳と尻尾が見えていた。
じっと標的を目測する真紅の瞳は虹彩を細めていく。
狙いを定めた未悠はマテリアルが巡った事を感じ、一気に駆け出した。
槍を水平に構え、骸骨型歪虚へ穂先を薙いで横へと飛ばす。
歪虚を倒すよりも、その場から離れさせる事を優先とし、素早く追いかける様は野生の猫さながら、上段から歪虚の骨を叩き折る。
未悠を追うように咲姫が更に歪虚の清掃に参加した。
知能が低いと思わしき歪虚も、歪虚にとっての妨害する者が現れたと認識したのか、のろのろと咲姫達の方へと向かう。
ハンター達にとっては歪虚達が妨害する者であり、排除しなくてはならない。
戦闘跡地の回収のみと思っていたが、とんだ後始末がまっていたものだと咲姫は前歯で軽く下唇を噛んだ。
未悠が開けた道へと立ち塞がろうとしているゾンビ型歪虚に気付いた咲姫は全身にマテリアルが巡るのを体感して一気に駆け出す。
自身が得物の日本刀を構えた咲姫は目的のゾンビ型歪虚がこれ以上前へ進まないようにと駆け出して袈裟懸けに歪虚を後ろへ押し飛ばすように斬り倒した。
咲姫は弟をはじめ、CAMへ向かう仲間達を心配するように振り向いた。
「こっちは抑えるから!」
そう叫ぶと、伊織は何かに気付いたかのように「姉上!」と叫ぶ。
弟の様子に気づいた咲姫は半身の姿勢となって武器を水平に構える。駆け出した瞬間には間合を詰めて、咲姫の隙をついたと思っただろう歪虚の首をとばした。
「そっちは任せたよ!」
威勢のいい咲姫の言葉にフィルメリア達がCAMへと一直線に駆けていった。
CAMの方へと駆けて行った班は今もゆっくりと動き出そうとしているCAMのコックピットへと向かう。
「すごい……」
感嘆の思いを込めて伊織が呟く。
「だから、助けないといけません」
フィルメリアの言葉は集約された言葉であったが、彼女の思いは伊織にも伝わっていた。
「はいっ!」
機体は仰向けになろうとしているところであり、フィルメリアとマーゴットがコックピットの中を覗く。
「え……」
二人は声を揃えたあと、すぐに顔を見合わす。
そこは無人であり、少し砂埃が被っていた。
操縦席に座ったフィルメリアは即座に起動させようとしたが、CAMは何一つ応えてくれなかった。
しかし、動いている音は聞こえる。
「……カペラお姉さん。なんだか、CAMは人間と変わらないんですね」
カペラより簡素な説明を受けていた伊織はぽつりと呟いた。
「人間に近い動きをするからねって、こんなに壊されてなんで動こうとするの……!」
背面を見ていたカペラはフィルメリア達に損傷具合を伝える。
その状態は明らかに故障どころではなく、動けるとは到底思えない。
しかし、動ているのだから、何かがある。
フィルメリアはぎゅっと瞳を瞑った。これ以上CAMが自分たちリアルブルーの移転者、この世界……クリムゾンウェストの大地を傷つけさせる道具となってほしくないと思いながら。
睫毛を震わせて瞳を見開いたフィルメリアにマーゴットは彼女の言葉を待つ。
「動いていたのは腕、脚よね」
「しらみつぶしに探そう」
マーゴットの言葉にフィルメリアは頷き、伊織達に伝える。
CAM班の会話が超聴覚を展開していた未悠の耳に届いていた。
「パイロットはいないみたい」
「そっか」
バイクから降りた悠月は骸骨型歪虚と対峙しており、未悠は猫のしなやかさのように悠月と咲姫の背に自身の背を併せて告げた。
「早く片づけましょ!」
いち早く咲姫が先手必勝とばかりにゾンビ型歪虚へと走り出す。
手分けしてCAM班が腕と足の部分を探しに行った。
表から見ると、このCAMはあまり損傷はなく見えるのだが、背面からの攻撃にでもやられたと一見して分ってしまう。
「手ひどくやられたものだ……」
顔を顰めるマーゴットはCAMの駆動部分の損傷を確認していた。
腕の部分のフレームは何らかの攻撃を受けており、焼け爛れたようになている。
フィルメリアはマーゴットが確認している腕の反対の腕……左腕になる方を確認していた。
CAMはこの腕を起点にして起き上がろうとしている。早く見つけなくてはと探していると、カタカタと音が聞こえてくる。
「わかった?」
悠月が声をかけると、フィルメリアは細い指を唇に当てて、「静かに」と伝えた。
彼女の様子に悠月は超聴覚を展開し、フィルメリアが気にしている音を探し出してゆっくりと指を差した。
腕のフレームの更に奥、関節部分に鉄ではない……CAMのものとは違う何かを覚ったフィルメリアは反射的に携行していた魔導拳銃「ベンティスカ」を抜き、即座に撃つ。
弾丸は命中し、甲高い破裂音が聞こえた。
銃声に気付いたと同時に、マーゴットの手伝いに入った未悠はCAMの駆動部分に隠れていた『異物』がマーゴットを狙っている事に気づく。
「あぶない!」
未悠が『異物』と判断したものが口をあけて、光を発射させた。
警戒の声に気付いたマーゴットだが、相手の方が早く、攻撃を受けてしまう。
「……くっ」
顔を顰めるマーゴットを庇い、未悠が前に出る。間合いは槍では間に合わない。
赤い椿をあしらった簪を持ち構える未悠は異物の目視をし、真正面から突き刺した。
その異物は人形であった。
思い出したのはかの十三魔の位置にいたレチタティーヴォ。
奴が死の間際に放った人形は今も尚、動いていると報告があったことを未悠は思い出す。
「レチタティーヴォの人形がいるわよ! 口から閃光弾も発射を確認! 気をつけて!」
未悠の言葉は仲間全員に聞こえたらしく、皆が警戒に当たる。
「伊織、気をつけて!」
咲姫が注意を促すと、伊織は「姉上っ」と警戒を返した。
弟の視線の先には人形がCAMに引っ付いており、一見すると、同化しているようだ。
「おばけじゃなくてよかった」
ほっとするような伊織の安堵は安定した集中へと向けられる。
伊織が手にしたダガーは光を握り締めているかのように輝いており、人形が伊織に気づくと同時にその光は人形とCAMを引き剥がすように振り下ろされた。
レチタティーヴォの人形達はCAMの駆動部分……特に、関節部分に同化しようとしており、CAMが動いていたように見えていたのは、人形達が動かしていたのだ。
人形を撃破すると、その部分は動かなくなってしまう。
両腕、両足に付着していた人形は撃破したが、まだ動いているようだ。
「あるとすれば、肩の関節、腰の関節部分ね」
ふむと答えるカペラの言葉に応じて、ハンター達が確認に走る。
「フィルメリアさん、CAMの応急処置に行きましょう」
「ええ、動かせたいわ」
カペラの提案にフィルメリアは同意し、二人はコックピットへと向かった。
腰部分を確認していた悠月は人形に気付く。
人形はまだ悠月には気付いていない模様であり、好機とばかりに悠月は手裏剣「八握剣」を握り締め、自身のマテリアルに集中する。
祖霊の力を借り降ろすと、手裏剣の切っ先に青白い霊力が纏われていく。
赤い瞳を人形へと向けると、大きく弧を描くように手裏剣を振りぬいた。手裏剣の切っ先は獣の牙のごとくの幻影が見え、獣が獲物を噛むように人形を砕いた。
肩の部分は地に着いている側の人形は壊すことが出来たが、その反対は実際に登らないと撃破は無理だ。
「……あの人形、移動してる!」
咲姫が気付いて、遠見の眼鏡を装着する。
肩の関節部分にはもう一体、同化しており、補強の為だろうか、他の部位に向かう為か、一体の人形がCAMを登っていた。
「先に同化している方の人形を破壊します。周囲お願いします」
伊織の手には黒い弓身のロングボウ「ソウルクラッシュ」があった。
矢を番え、狙いを澄ますためにマテリアルと視覚を集中させる。
登っていた人形はハンターに気付いたのだろう、登っていた場所を放棄し、伊織達へと降下していった。
「伊織の邪魔は……」
気配を察知した咲姫は剣を構え、脚にマテリアルを集中させて下降する人形に向かって跳躍し、刀を振り上げる。
「させないわ!」
切っ先が人形に当たり、一撃の衝撃で人形はCAMに激突して乾いた音を立てて壊れた。
咲姫の着地と共に伊織の矢が放たれる。
射出の音は叫びの音と言われているが、伊織の気迫は人形そのものを砕いた。
人形はハンターの仲間達のおかげで何とかなったが、問題はCAMの操作系統。
フィルメリアに乗ってもらい、落ち着いて状況確認する。
しかし、背面からの損傷がひどく、操作系の基盤を見たら、ショートしてしまっていた。
「……残念ね」
「仕方ない」
ふーっと、ため息をつくフィルメリアにマーゴットが答える。
「マギー、大丈夫?」
「すぐ治る」
こくりと頷くマーゴットにフィルメリアは穏やかに微笑んだ。
トラックの積み込み作業を終えて少し休んだ後、戻ることにした。
休憩中、未悠がカペラにヨアキムの話を振った。
類を見ないヨアキムの無法っぷりはカペラの耳にもよく届き、オトモのキュジィの苦労ぶりにドワーフ工房一同で涙するのはいつものこと。
「お父さんが迷惑かけてたらごめんなさいね……」
げんなりするカペラに未悠はそうではないと否定した。
スメラギが行った歌舞浄化陣の影で奮闘したヨアキムの話はカペラは知らなく、寸劇の内容はともかくだが。
「貴女のお父さんは子供達の人気者だったわよ」
未悠の一言で、沈んでいたカペラのテンションと表情がみるみると上がっていき、頬が高潮し、目が輝く。
「そうなの! パパは子供ウケいいの!」
ほっとしたカペラが喜んでくれたことを未悠もまた、静かに微笑んで喜ぶ。
周囲では「アレがパパ……」という複雑な空気を残して……。
その後、CAMや部品は無事に回収。
カペラはやっぱり、諦めきれなく、戻りしだい加勢してくれるハンターと共に交渉を行ったという。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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死霊を超えて、繰り糸を断つ為に フィルメリア・クリスティア(ka3380) 人間(リアルブルー)|25才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2016/02/16 18:17:33 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/02/13 14:14:31 |