ゲスト
(ka0000)
【闇光】群がる亡者
マスター:植田誠

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/02/16 07:30
- 完成日
- 2016/02/24 03:19
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
フレーベルニンゲン平原。
歪虚との大規模な戦闘が行われたこの地には、多数の魔導アーマー、CAMの残骸が転がっている。これを確保して修理、あるいは解体して他の機体にパーツを回せばアーマーやCAMの数を多少なり増やすことが出来る。人類側が動くのも当然と言えるだろう。
そして、歪虚からしてもそれらを確保することには益がある。
だからこそ、全身を包帯で包んだ歪虚、レオン・シュナイダーはライフルを抱えながら平原を歩く。
『特命だ。博士からのな』
レオンに命を下したフリッツの言葉だ。曰く、平原に放棄されている魔導アーマーないしCAMのパーツを回収するようにとのこと。それらが今後、機械化ゾンビの研究開発に役立たせられることになるだろう。
だが、そのことはレオンにとって関係の無いことだ。レオンはただ指示された行動を適切に実行する。それだけの存在なのだから。無論、戦場にはレオンだけではない。空を見ると輸送用の剣機リンドヴルムが見える。機体の回収用だろう。それに向かいグリフォンライダー……かつての仲間たちが攻撃をしかけようとしていた。
だが、それを見てもレオンは動揺した様子もなく、ただ緩々とその歩みを進めるだけだった。
●
上空では第5師団のグリフォンライダーが飛行型の歪虚……剣機リンドヴルムとその護衛であろう鷹型の歪虚と戦闘を行っていた。
「剣機の出現が確認されました!」
「……輸送用、でしょうね。この剣機は私が対応します。あなた達は新たに出現した剣機を」
「で、ですが一人では……」
「……師団長には出来て、私には出来ないとでも?」
「いえ、そういうわけでは……では、お気をつけて」
サラ・グリューネマン兵長にそう言われると、部下たちは指示に従い新たな剣機へと向かう。
「さて……」
サラは槍を構え敵を見据える。
(これで2体……もう1体ぐらいはいるかもしれないわね……)
下方では暴れまわっている魔導アーマーの姿が見える。ほぼ無傷なのは、おそらくパイロットが直接攻撃によって死んだか撤退せざるを得ない状態にさせられたためだろう。この辺り……パイロットがむき出しの状態なのは魔導アーマーの弱点であろう。
では、それがなぜ暴れまわっているのかと言えば、レチタティーヴォ……災厄の十三魔に数えられていた歪虚の置き土産により操られているからだそうだ。アーマーを確保するという一点では面倒なことこの上ない。ただ、アーマーを囲むゾンビたちもなかなか近寄れないようだ。どうやら敵味方区別しないで暴れているらしい。不幸中の幸いと言ったところか。
「……来たみたいね。後は任せましょう」
輸送用の魔導トラックが走ってきている。ハンターたちを乗せて。
敵の数が多いため第5師団から援護を行うことは出来ない。眼下のアーマーを人類が手にできるか否かはハンターたちの手にかかっていた。
フレーベルニンゲン平原。
歪虚との大規模な戦闘が行われたこの地には、多数の魔導アーマー、CAMの残骸が転がっている。これを確保して修理、あるいは解体して他の機体にパーツを回せばアーマーやCAMの数を多少なり増やすことが出来る。人類側が動くのも当然と言えるだろう。
そして、歪虚からしてもそれらを確保することには益がある。
だからこそ、全身を包帯で包んだ歪虚、レオン・シュナイダーはライフルを抱えながら平原を歩く。
『特命だ。博士からのな』
レオンに命を下したフリッツの言葉だ。曰く、平原に放棄されている魔導アーマーないしCAMのパーツを回収するようにとのこと。それらが今後、機械化ゾンビの研究開発に役立たせられることになるだろう。
だが、そのことはレオンにとって関係の無いことだ。レオンはただ指示された行動を適切に実行する。それだけの存在なのだから。無論、戦場にはレオンだけではない。空を見ると輸送用の剣機リンドヴルムが見える。機体の回収用だろう。それに向かいグリフォンライダー……かつての仲間たちが攻撃をしかけようとしていた。
だが、それを見てもレオンは動揺した様子もなく、ただ緩々とその歩みを進めるだけだった。
●
上空では第5師団のグリフォンライダーが飛行型の歪虚……剣機リンドヴルムとその護衛であろう鷹型の歪虚と戦闘を行っていた。
「剣機の出現が確認されました!」
「……輸送用、でしょうね。この剣機は私が対応します。あなた達は新たに出現した剣機を」
「で、ですが一人では……」
「……師団長には出来て、私には出来ないとでも?」
「いえ、そういうわけでは……では、お気をつけて」
サラ・グリューネマン兵長にそう言われると、部下たちは指示に従い新たな剣機へと向かう。
「さて……」
サラは槍を構え敵を見据える。
(これで2体……もう1体ぐらいはいるかもしれないわね……)
下方では暴れまわっている魔導アーマーの姿が見える。ほぼ無傷なのは、おそらくパイロットが直接攻撃によって死んだか撤退せざるを得ない状態にさせられたためだろう。この辺り……パイロットがむき出しの状態なのは魔導アーマーの弱点であろう。
では、それがなぜ暴れまわっているのかと言えば、レチタティーヴォ……災厄の十三魔に数えられていた歪虚の置き土産により操られているからだそうだ。アーマーを確保するという一点では面倒なことこの上ない。ただ、アーマーを囲むゾンビたちもなかなか近寄れないようだ。どうやら敵味方区別しないで暴れているらしい。不幸中の幸いと言ったところか。
「……来たみたいね。後は任せましょう」
輸送用の魔導トラックが走ってきている。ハンターたちを乗せて。
敵の数が多いため第5師団から援護を行うことは出来ない。眼下のアーマーを人類が手にできるか否かはハンターたちの手にかかっていた。
リプレイ本文
●
魔導トラックに分乗して戦場へ向かうハンターたち。
1台は軍が用意したもので、運転手も帝国兵が務めている。そして、もう1台がヒズミ・クロフォード(ka4246)の用意したトラックだ。
「基本は友軍の魔導トラックに回収を委ねマスガ、予備をネ」
これで、可能性は薄いだろうが万一片方のトラックが壊された場合でも、もう片方のトラックで運搬が可能だ。
「今後の戦力拡充のためにも魔導アーマーの回収は必要不可欠だな」
『その為の俺達、その為のCAM……だろ?』
「その通りだ……折角こいつを手に入れたんだ。せいぜい有効活用させてもらう事としよう」
榊 兵庫(ka0010)は無線を通し須磨井 礼二(ka4575)と話す。二人はヒズミの魔導トラックに積まれた魔導型CAMに乗り込んでいた。魔導アーマーの回収役としては適切だろう。
「CAMに魔導アーマーか……覚醒者以外にも使えるのは便利だけれど……」
馬を駆りトラックに追従するテノール(ka5676)は考える。有用ではあるものの、解析され歪虚に転用されたら……そう考えると、使い所を誤るとまずいことになる。
考え込むテノールと共にトラックと並走するのは2人。馬ではない、人によっては見慣れない生物に乗っていた。
「クフィン、一緒に戦う初めての大きな実戦……がんばろうねっ!」
クフィンと名付けられたイェジド……フェンリルの眷属といわれる狼型の幻獣だ。これに乗るのはUisca Amhran(ka0754)。
「ヒャッハー、この加速たまんないじゃーん!」
そして、巨大な鳥の姿をした幻獣リーリー。ブラックパールと呼ばれるリーリーとともに疾駆するのはゾファル・G・初火(ka4407)だ。
魔導アーマーの回収という目的があるものの、幻獣で行う初めてと言える実戦に昂揚しているようだった。
戦場に到着したハンターたちが目にしたのは、暴れまわる魔導アーマーとその周囲を囲むゾンビたちだった。
魔導アーマーの攻撃……敵味方を判別していないのだろう。ゾンビたちも迂闊に近寄れないようだ。だが、ハンターたちが接近したことで動きが変わる。時間が無いと判断したのか、元々そう動くつもりだったのかは定かではないが、ゾンビたちは一斉にアーマーへ飛びかかる。
だが、アーマーは体を回転させながら迫るゾンビたちを振り払う。半数はその攻撃に当たり弾き飛ばされるが、もう半数はアーマーに取りついたらしい。腕力が強化されているおかげだろうか。
「いけない……なんとしてでもアーマーを回収しないと!」
声を上げる夜桜 奏音(ka5754)。魔導アーマー自体の抵抗もありすぐにコントロールを奪われるということは無い。だが、手をこまねいてみているわけにもいかない。
「これ以上、貴重な魔導アーマーを歪虚の玩具にさせるわけにはいかないな」
シルヴェイラ(ka0726)の言葉に誰となく頷き、ハンターたちは各々の行動方針に従って戦闘を開始した。
●
「まずは周辺の掃除からだ。構わないな?」
『了解。あんまりアーマーの方にダメージを与えたくないしな』
無線を通じ連絡を取り合った兵衛と礼二。CAMの攻撃を受けては魔導アーマーにも損傷が及ぶ可能性がある。なので、周辺に吹っ飛ばされたゾンビたちの処理から始める。
兵衛、礼二とも取った行動は同じ。まずアサルトライフルを掃射して仲間が魔導アーマーに接近するための道を拓こうというつもりだ。共に元はCAMパイロット。行動も似てくるという事だろうか。尤も、想定よりも敵はアーマーの周囲に散っている。それは接近するという点では好都合だが、纏めて倒すことが出来ないという意味では不都合であった。
「さぁ、まずはあなたの脚を見せて頂戴……行きます!」
さらに走り込んでくるのはUisca。目的は2機のCAMと同様、味方の進路を確保するためだ。
「ここで……龍閃光!」
Uiscaは敵が固まって倒れている場所まで接近。そこで龍閃光を使用する。翡翠の龍が発する波動は周囲に広がり、複数のゾンビを纏めて攻撃する。Uisca自身の能力とゾンビに対して効果的な属性による魔法攻撃。範囲にいたゾンビたちは纏めて葬り去られる。
「遅れてはいられないな」
「さって、回収の露払いと行くじゃん!」
先んじた3人。それに続くのは馬を駆るテノール、リーリーに騎乗するゾファル。
「待って……皆さんに力を!」
その前に、奏音が符を投げつける。すると、二人に大地のマテリアルが流れ込んでくる。地脈鳴動と呼ばれる術。これにより戦闘力を底上げされた2人は分かれて離れた位置に倒れているゾンビを狙う。
「回収まで邪魔をさせないのがボクらの今回の役目だ……その為にも!」
馬で走りながら角度を調整したテノールは、大きく拳を突きだす。全身のマテリアルを練り、一気に放出する青龍翔咬波。これにより直線状の2体を纏めて攻撃する。
「死体は死体らしく、もう一度眠らせてやる」
ゾファルはブラックパールを走らせつつアーマーから最も離れた敵に攻撃。すれ違いざまに身の丈1.5倍もの大きさを持つ鎌を振りおろしゾンビを攻撃。そして、すぐに離脱。イメージはリンゴの皮むき。周辺を掠めるように移動してダメージを重ねていく。これには、敵が見た目からも腕力強化型であり、接近戦は組みつかれた際など不利になるとの予測もあった。
「こんな所でガラクタになるのは惜しいでしょう……連れ帰りますよ。人形は?」
「多少難儀しましたが、確認できました。計7か所です」
この間にヒズミ、シルヴェイラはアーマーに接近。暴れまわるアーマーはその位置を、あるいは向きをコロコロと変える。そのおかげで一方向からでもアーマーの全体を見ることが出来たし、敵……アーマーを勝手に動かしている人形も発見できた。
「さて、この調子だと近づくというわけにも……」
とはいえ見ているわけにもいかない。シルヴェイラはゾンビを狙いデルタレイを使用。だが、攻撃はゾンビを掠める、あるいは外れて魔導アーマーに当たる。
これが動き回ることによる弊害。鈍重な見た目、実際鈍重な機体のくせになんと俊敏なことか。これも取りついた人形の影響か。
「となると……まぁまず脚部か背部付近デスカネェ」
ヒズミの狙いは人形。脚部にとりついた人形を狙う。使うのはレイターコールドショット。冷気を伴う攻撃で、あわよくば魔導アーマー自体の動きも抑えようというつもりだろう。だが、ゾンビもアーマー上で動き回っている。どうもこれらも人形の破壊を狙っているようだ。それ故にゾンビの方に当たり人形まで攻撃が通らない。
「うっとうしいですね……どきなさい!」
ゾンビの対応を任せた奏音は五色光符陣を使いゾンビごと人形を攻撃する。
「面倒デスネェ……CAM側で何とか出来ませんカ?」
『了解だ』
その間にヒズミはCAMに乗る二人に援護を要請。足元のゾンビたちは任せても問題無さそうだと判断し、二人はすぐに兵衛と礼二は魔導アーマーに向かう。二人がかりで魔導アーマーを押さえ込めば多少動きも収まるはずだ。
「……どう?」
Uiscaが尋ねると、クフィンは申し訳なさそうに首を振る。狼嗅覚でCAM以外の匂い……すなわち人形の匂いを嗅ぎ分けて人形の位置を早期に発見しようと考えたUiscaだったが、周囲にはそれ以上に腐臭が漂っている。ゾンビたちのものだ。
「気にしないで……それじゃ、他の手で加勢しましょう」
そう言うと、Uiscaは暴れる魔導アーマーに接近していく。
この時、周囲の腐臭が強すぎるため臭いで気付くことが出来なかった。1体の歪虚がまもなく戦場へ到達しようとしていることに。
●
戦局に変化があったのはそれからすぐのことだった。
「あれは……! 敵だぜ!」
ゾファルの声が響く。開けた戦場である以上狙撃兵による横やりに注意すべし。それ故にゾファルは狙撃ポイントに向いていそうな場所を走り回りながらも確認していた。この時トランシーバーでもあればすぐに味方に伝えられただろうが……生憎持ち合わせてはいない。
「……っ! なんだ!?」
故に初弾は躱せず、礼二のCAMが撃たれ、大きく揺れる。
「狙撃か! 位置は……」
テノールを始め、各自が狙撃手に注意を割く。だが、狙撃手だけに手間取っていてはアーマーの回収に差し障るかもしれない。
『アレはこちらで何とかする』
そう言うと、兵衛はCAMにシールドを構えさせ魔導アーマーと敵の間に入るような位置取り、狙撃ポイントに対し弾幕を張る。
『弾丸の雨の中ではさすがに精密な狙撃は出来まい……そちらは頼むぞ』
「了解!」
無線を通じて礼二への指示。言われるまでも無く、礼二は行動を起こす。ワイヤードクローを射出。それをアーマーの腕に巻き付けて動きを封じようという策だ。だが、先程比べると動きが激しい。兵衛がいなくなった分抑えが弱まったことによる。
「援護しないと……上手く避けてね、クフィン」
Uiscaは回避をクフィンに任せながらレクイエムを使用。歪虚である人形の動きを鈍らせることで、間接的にアーマーの動きを抑えようとする。
「ちっ……仕方ない、あっちは任せて残りの敵を倒しちまうじゃん」
この間にゾファルはブラックパールを操り、残りのゾンビを退治しに走る。
すでに地上のゾンビはゾファルの向かった残り1体のみ。アーマーに取りついたゾンビも半数は倒してある。
そのアーマーに取りついているゾンビに向かい、シルヴェイラがデルタレイを使用。攻撃を受けたゾンビはダメージによるものか、力を失ったように魔導アーマーから落ちる。
「喰らいなさい!」
そこに奏音が五色光符陣を使用。落ちたゾンビを纏めて撃破する。残りは2体。
(そろそろ地脈鳴動の効果が消える頃……それに人形も。どうしますか)
符をリロードしつつ奏音は一瞬考え……
「……いえ、ここは残りのゾンビを!」
全体の戦況を考えた奏音。まずはゾンビを倒すことを決断。シルヴェイラには大事な役割があるし、人形を倒す役は他にもいた。
「五色光符陣……纏めて祓います!!」
舞でも舞うかのように奏音は符を投じ、ゾンビを中心として結界を構築した。
「これで、5体目デスカネ!」
その間、ヒズミが発砲、背部に取りついてた人形を撃破する。これで残されたのは正面とコクピット……
「いや、6体目……残り1体だ」
正面、拳を突きだしていたテノール。気功波での遠距離攻撃だ。地上でのゾンビ討伐が順調に行ったが故に、テノールにも余裕が生まれていた。だからこそ、こうしてアーマーの援護を行うことが出来るようになっていた。
「今がチャンス、ですね」
魔導アーマーから全てのゾンビが取り払われ、さらに人形の減少によってかアーマー自体の動きもかなり鈍り、今は礼二のCAMがほぼ動きを抑えている状況。この機に乗じてシルヴェイラはジェットブーツを使用。一気にコクピットに飛び乗る。
『そこにも人形がある! それが最後の一個だ、恐らくな!』
CAMから礼二の声が聞こえる。見ると確かに人形はあった。それをデルタレイで攻撃し破壊すると、ついに魔導アーマーは止まった。
●
「残りはあのスナイパーだけだぜ!」
最後の1体を倒したゾファルの声が響く。その言葉通り、ブラックパールがゾンビの頭を踏み砕いたところだ。これでゾンビは全滅。
「すぐに移動させます!」
動きの止まった魔導アーマー。だが悠長にはしていられない。敵の回収部隊も迫っているかもしれないのだ。シルヴェイラはすぐに操縦桿を握ると、魔導トラックの方へとアーマーを進ませた。
「クフィン、私たちは足元に回ろう」
その意図……足回りを破壊されることで魔導アーマーの移動を難しくされないように盾となる、それをくみ取ったクフィンは魔導アーマーにつき従った。
ワイヤークローを回収した礼二は盾を構えレオンの方へ向ける。そして、盾で守るように後退していく。
一方、単騎でレオンに対応することになっていた兵衛。距離をとって弾幕を張ることは多少効果があったようで、結局アーマー側に狙撃が行われることはなかった。だが、CAMの方は……とうにシールドは砕け散っており、攻撃を防御できない状態。
(さらに各関節部に異常。装甲も限界値……これまでか……)
兵衛にとっての幸運はCAMについてレオンが詳しくなかったことであろうか。そうでなければ、コクピットを狙って乗り手を潰しに来ていたかもしれない。 ともあれ、この状況はまずい。魔導アーマーの代わりにCAMが持って行かれたとなっては話にならない。
だが、そんな兵衛に助け舟が出される。
『兵衛さん! こっちに!!』
CAMの真後ろにヒズミの魔導トラックが着けられる。兵衛はすぐさまアクティブスラスターを起動。トラックの荷台にCAMを移動させる。無論それを阻止しようとレオンが狙撃を行う。だが、兵衛はライフルを盾にその狙撃を防御。ライフルは砕けたが、トラックに損傷はない。
すぐさまトラックは戦場の離脱を図る。全力で逃げるトラックはすぐにレオンの射程外へと消える。
空を見上げたレオン。そこには剣機リンドヴルムの姿は無い。
これ以上の作戦続行は不可能と判断したレオンは、来た時と同様なんらの感慨を浮かべることも無く、ライフルを抱えその場を歩き去って行った。
「……何とか、助かったようだな」
「お疲れ様でした。お陰で魔導アーマーは無事です」
コクピット内で胸をなで下ろす兵衛に、無線を通じシルヴェイラが労いの言葉をかける。
「CAMの方は無事……とはいかないようだけど、ミイラ取りがミイラにならなくてよかった」
テノールは走りまわって疲れたであろう馬を労うようにさすりながら息を吐く。そう口に出してしまうほど、CAMの損害は大きかった。
他の者も、当然疲れただろう。疲れただろうが……言い換えればそれだけだ。結局大きな怪我を負うものもなく、負ってもせいぜいかすり傷程度。
「……歌?」
不意に聞こえてきた歌。助手席に座っていた奏音が外を見ると、クフィンの背でUiscaが龍奏……癒しの力を持つ、祈りの歌を歌っている。
「新相棒とのデビュー戦、大成功じゃーん!」
その横でゾファルは機嫌良さそうにブラックパールと共に走る。その歌をまるで凱歌とでもするように。
「……鎮魂歌にも丁度いいかもしれませんね」
コクピットで、礼二はそう呟く。CAMから見たコクピットには大量の血がついていた。それは恐らくパイロットのもので、死体は無かったもののあの量では恐らく……
そのことを聞いていたヒズミも、歌を聞きながら無言で帽子を胸に当てた。
だが、アーマーを回収したこと……敵にこれを利用させなかったこと。これがきっとパイロットへの弔いになるだろう。
依頼は文句のつけようのない、大成功に終わった。
魔導トラックに分乗して戦場へ向かうハンターたち。
1台は軍が用意したもので、運転手も帝国兵が務めている。そして、もう1台がヒズミ・クロフォード(ka4246)の用意したトラックだ。
「基本は友軍の魔導トラックに回収を委ねマスガ、予備をネ」
これで、可能性は薄いだろうが万一片方のトラックが壊された場合でも、もう片方のトラックで運搬が可能だ。
「今後の戦力拡充のためにも魔導アーマーの回収は必要不可欠だな」
『その為の俺達、その為のCAM……だろ?』
「その通りだ……折角こいつを手に入れたんだ。せいぜい有効活用させてもらう事としよう」
榊 兵庫(ka0010)は無線を通し須磨井 礼二(ka4575)と話す。二人はヒズミの魔導トラックに積まれた魔導型CAMに乗り込んでいた。魔導アーマーの回収役としては適切だろう。
「CAMに魔導アーマーか……覚醒者以外にも使えるのは便利だけれど……」
馬を駆りトラックに追従するテノール(ka5676)は考える。有用ではあるものの、解析され歪虚に転用されたら……そう考えると、使い所を誤るとまずいことになる。
考え込むテノールと共にトラックと並走するのは2人。馬ではない、人によっては見慣れない生物に乗っていた。
「クフィン、一緒に戦う初めての大きな実戦……がんばろうねっ!」
クフィンと名付けられたイェジド……フェンリルの眷属といわれる狼型の幻獣だ。これに乗るのはUisca Amhran(ka0754)。
「ヒャッハー、この加速たまんないじゃーん!」
そして、巨大な鳥の姿をした幻獣リーリー。ブラックパールと呼ばれるリーリーとともに疾駆するのはゾファル・G・初火(ka4407)だ。
魔導アーマーの回収という目的があるものの、幻獣で行う初めてと言える実戦に昂揚しているようだった。
戦場に到着したハンターたちが目にしたのは、暴れまわる魔導アーマーとその周囲を囲むゾンビたちだった。
魔導アーマーの攻撃……敵味方を判別していないのだろう。ゾンビたちも迂闊に近寄れないようだ。だが、ハンターたちが接近したことで動きが変わる。時間が無いと判断したのか、元々そう動くつもりだったのかは定かではないが、ゾンビたちは一斉にアーマーへ飛びかかる。
だが、アーマーは体を回転させながら迫るゾンビたちを振り払う。半数はその攻撃に当たり弾き飛ばされるが、もう半数はアーマーに取りついたらしい。腕力が強化されているおかげだろうか。
「いけない……なんとしてでもアーマーを回収しないと!」
声を上げる夜桜 奏音(ka5754)。魔導アーマー自体の抵抗もありすぐにコントロールを奪われるということは無い。だが、手をこまねいてみているわけにもいかない。
「これ以上、貴重な魔導アーマーを歪虚の玩具にさせるわけにはいかないな」
シルヴェイラ(ka0726)の言葉に誰となく頷き、ハンターたちは各々の行動方針に従って戦闘を開始した。
●
「まずは周辺の掃除からだ。構わないな?」
『了解。あんまりアーマーの方にダメージを与えたくないしな』
無線を通じ連絡を取り合った兵衛と礼二。CAMの攻撃を受けては魔導アーマーにも損傷が及ぶ可能性がある。なので、周辺に吹っ飛ばされたゾンビたちの処理から始める。
兵衛、礼二とも取った行動は同じ。まずアサルトライフルを掃射して仲間が魔導アーマーに接近するための道を拓こうというつもりだ。共に元はCAMパイロット。行動も似てくるという事だろうか。尤も、想定よりも敵はアーマーの周囲に散っている。それは接近するという点では好都合だが、纏めて倒すことが出来ないという意味では不都合であった。
「さぁ、まずはあなたの脚を見せて頂戴……行きます!」
さらに走り込んでくるのはUisca。目的は2機のCAMと同様、味方の進路を確保するためだ。
「ここで……龍閃光!」
Uiscaは敵が固まって倒れている場所まで接近。そこで龍閃光を使用する。翡翠の龍が発する波動は周囲に広がり、複数のゾンビを纏めて攻撃する。Uisca自身の能力とゾンビに対して効果的な属性による魔法攻撃。範囲にいたゾンビたちは纏めて葬り去られる。
「遅れてはいられないな」
「さって、回収の露払いと行くじゃん!」
先んじた3人。それに続くのは馬を駆るテノール、リーリーに騎乗するゾファル。
「待って……皆さんに力を!」
その前に、奏音が符を投げつける。すると、二人に大地のマテリアルが流れ込んでくる。地脈鳴動と呼ばれる術。これにより戦闘力を底上げされた2人は分かれて離れた位置に倒れているゾンビを狙う。
「回収まで邪魔をさせないのがボクらの今回の役目だ……その為にも!」
馬で走りながら角度を調整したテノールは、大きく拳を突きだす。全身のマテリアルを練り、一気に放出する青龍翔咬波。これにより直線状の2体を纏めて攻撃する。
「死体は死体らしく、もう一度眠らせてやる」
ゾファルはブラックパールを走らせつつアーマーから最も離れた敵に攻撃。すれ違いざまに身の丈1.5倍もの大きさを持つ鎌を振りおろしゾンビを攻撃。そして、すぐに離脱。イメージはリンゴの皮むき。周辺を掠めるように移動してダメージを重ねていく。これには、敵が見た目からも腕力強化型であり、接近戦は組みつかれた際など不利になるとの予測もあった。
「こんな所でガラクタになるのは惜しいでしょう……連れ帰りますよ。人形は?」
「多少難儀しましたが、確認できました。計7か所です」
この間にヒズミ、シルヴェイラはアーマーに接近。暴れまわるアーマーはその位置を、あるいは向きをコロコロと変える。そのおかげで一方向からでもアーマーの全体を見ることが出来たし、敵……アーマーを勝手に動かしている人形も発見できた。
「さて、この調子だと近づくというわけにも……」
とはいえ見ているわけにもいかない。シルヴェイラはゾンビを狙いデルタレイを使用。だが、攻撃はゾンビを掠める、あるいは外れて魔導アーマーに当たる。
これが動き回ることによる弊害。鈍重な見た目、実際鈍重な機体のくせになんと俊敏なことか。これも取りついた人形の影響か。
「となると……まぁまず脚部か背部付近デスカネェ」
ヒズミの狙いは人形。脚部にとりついた人形を狙う。使うのはレイターコールドショット。冷気を伴う攻撃で、あわよくば魔導アーマー自体の動きも抑えようというつもりだろう。だが、ゾンビもアーマー上で動き回っている。どうもこれらも人形の破壊を狙っているようだ。それ故にゾンビの方に当たり人形まで攻撃が通らない。
「うっとうしいですね……どきなさい!」
ゾンビの対応を任せた奏音は五色光符陣を使いゾンビごと人形を攻撃する。
「面倒デスネェ……CAM側で何とか出来ませんカ?」
『了解だ』
その間にヒズミはCAMに乗る二人に援護を要請。足元のゾンビたちは任せても問題無さそうだと判断し、二人はすぐに兵衛と礼二は魔導アーマーに向かう。二人がかりで魔導アーマーを押さえ込めば多少動きも収まるはずだ。
「……どう?」
Uiscaが尋ねると、クフィンは申し訳なさそうに首を振る。狼嗅覚でCAM以外の匂い……すなわち人形の匂いを嗅ぎ分けて人形の位置を早期に発見しようと考えたUiscaだったが、周囲にはそれ以上に腐臭が漂っている。ゾンビたちのものだ。
「気にしないで……それじゃ、他の手で加勢しましょう」
そう言うと、Uiscaは暴れる魔導アーマーに接近していく。
この時、周囲の腐臭が強すぎるため臭いで気付くことが出来なかった。1体の歪虚がまもなく戦場へ到達しようとしていることに。
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戦局に変化があったのはそれからすぐのことだった。
「あれは……! 敵だぜ!」
ゾファルの声が響く。開けた戦場である以上狙撃兵による横やりに注意すべし。それ故にゾファルは狙撃ポイントに向いていそうな場所を走り回りながらも確認していた。この時トランシーバーでもあればすぐに味方に伝えられただろうが……生憎持ち合わせてはいない。
「……っ! なんだ!?」
故に初弾は躱せず、礼二のCAMが撃たれ、大きく揺れる。
「狙撃か! 位置は……」
テノールを始め、各自が狙撃手に注意を割く。だが、狙撃手だけに手間取っていてはアーマーの回収に差し障るかもしれない。
『アレはこちらで何とかする』
そう言うと、兵衛はCAMにシールドを構えさせ魔導アーマーと敵の間に入るような位置取り、狙撃ポイントに対し弾幕を張る。
『弾丸の雨の中ではさすがに精密な狙撃は出来まい……そちらは頼むぞ』
「了解!」
無線を通じて礼二への指示。言われるまでも無く、礼二は行動を起こす。ワイヤードクローを射出。それをアーマーの腕に巻き付けて動きを封じようという策だ。だが、先程比べると動きが激しい。兵衛がいなくなった分抑えが弱まったことによる。
「援護しないと……上手く避けてね、クフィン」
Uiscaは回避をクフィンに任せながらレクイエムを使用。歪虚である人形の動きを鈍らせることで、間接的にアーマーの動きを抑えようとする。
「ちっ……仕方ない、あっちは任せて残りの敵を倒しちまうじゃん」
この間にゾファルはブラックパールを操り、残りのゾンビを退治しに走る。
すでに地上のゾンビはゾファルの向かった残り1体のみ。アーマーに取りついたゾンビも半数は倒してある。
そのアーマーに取りついているゾンビに向かい、シルヴェイラがデルタレイを使用。攻撃を受けたゾンビはダメージによるものか、力を失ったように魔導アーマーから落ちる。
「喰らいなさい!」
そこに奏音が五色光符陣を使用。落ちたゾンビを纏めて撃破する。残りは2体。
(そろそろ地脈鳴動の効果が消える頃……それに人形も。どうしますか)
符をリロードしつつ奏音は一瞬考え……
「……いえ、ここは残りのゾンビを!」
全体の戦況を考えた奏音。まずはゾンビを倒すことを決断。シルヴェイラには大事な役割があるし、人形を倒す役は他にもいた。
「五色光符陣……纏めて祓います!!」
舞でも舞うかのように奏音は符を投じ、ゾンビを中心として結界を構築した。
「これで、5体目デスカネ!」
その間、ヒズミが発砲、背部に取りついてた人形を撃破する。これで残されたのは正面とコクピット……
「いや、6体目……残り1体だ」
正面、拳を突きだしていたテノール。気功波での遠距離攻撃だ。地上でのゾンビ討伐が順調に行ったが故に、テノールにも余裕が生まれていた。だからこそ、こうしてアーマーの援護を行うことが出来るようになっていた。
「今がチャンス、ですね」
魔導アーマーから全てのゾンビが取り払われ、さらに人形の減少によってかアーマー自体の動きもかなり鈍り、今は礼二のCAMがほぼ動きを抑えている状況。この機に乗じてシルヴェイラはジェットブーツを使用。一気にコクピットに飛び乗る。
『そこにも人形がある! それが最後の一個だ、恐らくな!』
CAMから礼二の声が聞こえる。見ると確かに人形はあった。それをデルタレイで攻撃し破壊すると、ついに魔導アーマーは止まった。
●
「残りはあのスナイパーだけだぜ!」
最後の1体を倒したゾファルの声が響く。その言葉通り、ブラックパールがゾンビの頭を踏み砕いたところだ。これでゾンビは全滅。
「すぐに移動させます!」
動きの止まった魔導アーマー。だが悠長にはしていられない。敵の回収部隊も迫っているかもしれないのだ。シルヴェイラはすぐに操縦桿を握ると、魔導トラックの方へとアーマーを進ませた。
「クフィン、私たちは足元に回ろう」
その意図……足回りを破壊されることで魔導アーマーの移動を難しくされないように盾となる、それをくみ取ったクフィンは魔導アーマーにつき従った。
ワイヤークローを回収した礼二は盾を構えレオンの方へ向ける。そして、盾で守るように後退していく。
一方、単騎でレオンに対応することになっていた兵衛。距離をとって弾幕を張ることは多少効果があったようで、結局アーマー側に狙撃が行われることはなかった。だが、CAMの方は……とうにシールドは砕け散っており、攻撃を防御できない状態。
(さらに各関節部に異常。装甲も限界値……これまでか……)
兵衛にとっての幸運はCAMについてレオンが詳しくなかったことであろうか。そうでなければ、コクピットを狙って乗り手を潰しに来ていたかもしれない。 ともあれ、この状況はまずい。魔導アーマーの代わりにCAMが持って行かれたとなっては話にならない。
だが、そんな兵衛に助け舟が出される。
『兵衛さん! こっちに!!』
CAMの真後ろにヒズミの魔導トラックが着けられる。兵衛はすぐさまアクティブスラスターを起動。トラックの荷台にCAMを移動させる。無論それを阻止しようとレオンが狙撃を行う。だが、兵衛はライフルを盾にその狙撃を防御。ライフルは砕けたが、トラックに損傷はない。
すぐさまトラックは戦場の離脱を図る。全力で逃げるトラックはすぐにレオンの射程外へと消える。
空を見上げたレオン。そこには剣機リンドヴルムの姿は無い。
これ以上の作戦続行は不可能と判断したレオンは、来た時と同様なんらの感慨を浮かべることも無く、ライフルを抱えその場を歩き去って行った。
「……何とか、助かったようだな」
「お疲れ様でした。お陰で魔導アーマーは無事です」
コクピット内で胸をなで下ろす兵衛に、無線を通じシルヴェイラが労いの言葉をかける。
「CAMの方は無事……とはいかないようだけど、ミイラ取りがミイラにならなくてよかった」
テノールは走りまわって疲れたであろう馬を労うようにさすりながら息を吐く。そう口に出してしまうほど、CAMの損害は大きかった。
他の者も、当然疲れただろう。疲れただろうが……言い換えればそれだけだ。結局大きな怪我を負うものもなく、負ってもせいぜいかすり傷程度。
「……歌?」
不意に聞こえてきた歌。助手席に座っていた奏音が外を見ると、クフィンの背でUiscaが龍奏……癒しの力を持つ、祈りの歌を歌っている。
「新相棒とのデビュー戦、大成功じゃーん!」
その横でゾファルは機嫌良さそうにブラックパールと共に走る。その歌をまるで凱歌とでもするように。
「……鎮魂歌にも丁度いいかもしれませんね」
コクピットで、礼二はそう呟く。CAMから見たコクピットには大量の血がついていた。それは恐らくパイロットのもので、死体は無かったもののあの量では恐らく……
そのことを聞いていたヒズミも、歌を聞きながら無言で帽子を胸に当てた。
だが、アーマーを回収したこと……敵にこれを利用させなかったこと。これがきっとパイロットへの弔いになるだろう。
依頼は文句のつけようのない、大成功に終わった。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 6人 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/02/12 22:50:39 |
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魔道アーマー回収のために テノール(ka5676) 人間(クリムゾンウェスト)|26才|男性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2016/02/13 21:12:16 |