ゲスト
(ka0000)
パンダさん!
マスター:水貴透子

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/08/18 09:00
- 完成日
- 2014/08/26 22:52
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
チャラッチャ~、チャチャッ!
みんなのヒーロー、パンダさん登場!
※※※
「ヨッス! 今回一緒に雑魔退治に同行するパンダさんだ! よろしくな!」
パンダの着ぐるみを身にまとった男性(多分)がハンター達に話しかける。
「……」
突然パンダ(の着ぐるみを身にまとう怪しげな男(多分))に話しかけられ、ハンター達は戸惑いの表情を見せる。
「……その、ふざけた格好で雑魔退治に行くのか?」
同行するハンターが恐る恐る問いかけると「あったりめぇよ! パンダこそ俺の生きる道!」と
意味不明な言葉が返ってきた。
「リアルブルー出身なんだけど、子供の頃からヒーローに憧れてたんだよ……!」
きらきら、と目を輝かせながら(多分)話すパンダの姿はある意味不気味な雰囲気を醸し出している。
「子供向けのヒーローショーに出る仕事してたんだけど、まさか本物のヒーローになれる機会があるとは……!」
「くぅ~~! 雑魚敵パンダさんしかやってなかったけど、これで俺もヒーローの仲間入りじゃん!」
どうやら、彼が着ている着ぐるみ『パンダさん』はヒーローではなく、
ヒーローに倒される運命の雑魚敵のようだ。
「いやいや、ヒーローになりたいなら雑魚敵の着ぐるみは脱いだ方が……」
「おまけに名前までパンダさんって……さんまで名前? さん付けで呼ぶときはパンダさんさん?」
一気に気の抜けるような名前になり、ハンター達は引きつった笑みを浮かべている。
「それもそうなんだけどさぁ、ずーっとこれの役してたから愛着出て脱げないんだよなぁ」
「おかげで蒸れる蒸れる、暑っ苦しくてかなわねーんだけど」
(……脱いだら異臭を放ちそうだな、こいつ)
「とにかく! 俺、今回が初めての仕事なんだけどよろしくな!」
「ちなみに役のパンダさんと同じで、俺、絶対役に立ちそうにないから!」
足手まとい1人を連れながらの雑魔退治が、今始まる――……!
リプレイ本文
●珍妙なる者、パンダさん!
「……まぁ、人の趣味はそれぞれだし、本人が納得しているのならば、俺からは特に言う事はない。ヒーローになりたいのならば、自分が出来る範囲で協力してくれ」
榊 兵庫(ka0010)は呆れたような表情でパンダさんを見ながら呟く。
「ヒーローねぇ……同じ世界出身でも庶民の方々の言われる事は分かりません。個人の拘りにあまり口を出す気はありませんが……もうちょっと早く歩けませんの?」
ゆっくりと歩く(多分、本人は急いで歩いている)姿を見て、ベアトリス・ド・アヴェーヌ(ka0458)はため息混じりに呟く。
確かに、彼女が苛立つのも無理はない。普通の半分くらいの速度になっており、このままだと目的地に到着するのは、予定よりも大きな時間を要する事になってしまうのだから。
(……英雄やら何やらは、形から入るものでも、ましてや見た目ではないだろうに)
Charlotte・V・K(ka0468)は、他のハンター達に気づかれぬよう、小さなため息を零す。
何故か、任務が開始してから、パンダさんは人を疲れさせる事しかしていない。
本人は何もしていなくても、その姿を見て、他人は疲れを感じ取ってしまうのだろう。
「それほど難しい依頼でもなさそうですし、少し気楽にいきましょうか」
ミリア・コーネリウス(ka1287)はにっこりと微笑みながら呟く。そんな彼女の姿は『まるごとうさぎ』を装備しているせいか、全員うさぎさんだ。
パンダさんと違って、うさぎの口部分から顔が出ているため、パンダさんのように顔も分からないような状態ではないのだけれど。
「着ぐるみ、初めて着ましたけど悪くないですよね……可愛いし。それに動きも制限されてしまうので、良い修行になりそうです」
「そうですよね、うさぎさんは可愛いです……! パンダさんさん、メイドである私がサポートしますので、よろしくお願いしますね」
パンダさんに挨拶をするのは、ミリアと同じく『まるごとうさぎ』を着用しているルナ・セレスティア(ka2675)だった。メイドでうさぎとは、もはや既に何が何やら分からない。
「ヒーロー……今の若者達の間には、このようなヒーローが人気なのでございますね。妾の若かりし頃の辺境には、ヒーローなど存在しておりませんでした。皆が決死の覚悟で、ただひたすら歪虚と戦い続ける日々でございましたからな」
ガルヴァート=キキ(ka2082)は腕を組み、うんうん、と頷きながら呟くが、今の若い者達にパンダさんが人気というわけではない、という事を知らなかった。
「まぁ、怪我しない程度に頑張ってくれ。ヤバそうなら『ストーンアーマー』で補助しよう……ただ、頭だけは自分でどうにかしてもらうしかないけどな」
神代 廼鴉(ka2504)はボソッと呟く。頭、というのも実際の頭を守るという意味ではなく、恐らく頭の中身の事を言っているのであろう事は、パンダさん以外のハンターしか気づけなかった。
「……パンダ……ううん……?」
何か思う所があるのか、首を傾げながら柏部 狭綾(ka2697)が小さく呟いている。
「ん? どうかしたのか? まさか、俺のパンダ着ぐるみが欲しいとか言うんじゃ……!」
「言わないわよ――……っていうか、いらないわよ」
パンダさんの言葉に、柏部は即答する。
「とりあえず、今回の雑魔は苦労するようなものじゃなさそうだし早く終わらせましょう。もちろん油断とかは一切無しで」
柏部の言葉に、ハンター達は頷きながら雑魔退治のために行動を開始し始めたのだった。
●パンダさんと書いて『役立たず』と読む
「……ぜはぁ……ぜはぁ……ひはぁ……」
歩くたびに変質者のような声を出しているのは、言うまでもなくパンダさんだ。
「あまり言いたくはないが、もう少し早く歩けないのか? このままでは日が暮れるぞ」
榊がため息を零しながら、パンダさんに話しかける。
「いや……ぜぇ、ぜぇ……これ、でも……げほっ、俺の……全速力……なんだよ」
まだ戦闘も始まっていないのに、既にパンダさんの疲れは最高潮に達しており、ハンター達は嫌な予感をひしひしと感じていた。
「もう少し早く歩きなさいな、歩けないというのなら転がしてあげても良くってよ」
「鬼がいる! 転がされたら、この白いパンダボディーが真っ黒になる!」
ベアトリスとしては半分冗談だったのだけど、その言葉に怯えたパンダさんはせかせかと歩き始める。
(……本当に、あれでハンターが務まるのだろうか。明らかに無理な気しかしないが)
Charlotteはシャカシャカと歩いているパンダさんを見ながら、心の中で呟く。
「ヒーローになりたいという意志を持つ事は素晴らしいと思いますが、妾には些か短慮にも見えてございますな……」
ガルヴァートが呟くが、恐らく彼女以外も、短慮以外の何者でもない、と考えている。
「……おーい、パンダさんとやら、中身は生きてるか?」
「だ、脱水症状で死にそうだ……俺は、もう雑魔にやられて動けなくなる寸前だ……」
「いやいや、まだ雑魔見つけてねぇよ、まだそこに到ってすらいないからな?」
ぱたり、と力尽きそうなパンダさんに神代はズバッと遠慮のないツッコミをいれる。
「……うぅん……やっぱり……あ、いえ、雑魔は犬型という話でしたね、と……」
ちらっ、ちらっ、とパンダさんを見つめ、視線が合うとパッと逸らしながら柏部が呟く。
これがラブコメなら『え、もしかして俺に惚れたの!?』という状態だが、相手はあのパンダさん、絶対にありえるはずがない。
(ちゃんと、この気持ちを伝えた方がいいわよね……雑魔退治が終わったら、言おう……)
柏部は心の中で呟きながら、ギュ、と『オートマチックピストル』を握り締める手に、力を込めた。
「皆様、あちらが目的の雑魔ではないでしょうか?」
ルナが呟き、ハンター達の前方には、こちらに向かって威嚇をする犬の姿がある。
けれど、パッと見ただけでもその犬が普通ではない事が伺え、ハンター達はそれぞれ戦闘態勢を取った。
●戦闘開始
「パンダさんさんには、このメイドうさぎさんが指1本触れさせません!」
ルナは『闘心昂揚』で身体能力を上昇させ、雑魔に『クラッシュブロウ』を繰り出す。
普通にしていれば結構カッコイイ姿なのだが『まるごとうさぎ』と『ハリセン』がすべてを台無しにしている。
「……行きます!」
ミリアも『ツヴァイハンダー』を抱え、雑魔に向かって行くが『まるごとうさぎ』であり、かっこよさが半減している。
「やれやれ、今回の雑魔が大した相手ではない事が幸いだったな」
榊はため息を吐きながら『フラメア』を駆使して、雑魔へと攻撃を仕掛ける。雑魔は榊に向かって飛びかかったけれど、槍のリーチを生かして突き攻撃をカウンターとして行う。
そして、1度距離を取った後に『踏込』から『強打』と攻撃を繋げ、雑魔にとって強力すぎる一撃がお見舞いされた。
再び榊が雑魔から距離を取ると、柏部が『強弾』を使用した攻撃を行う。
「ぐずぐずせずに、そこを御退きなさい!」
慌てふためくパンダさんを突き飛ばしながら、ベアトリスは『運動強化』を使用して『ドリルナックル』で攻撃を行った。
「パンダ、戦うなら戦う。戦わないなら邪魔にならないように下がっておくんだね」
Charlotteは『魔導銃』を構えながら、パンダさんへと言葉を投げかける。
そして、中衛の位置に陣取り、雑魔の動きを制限するように『魔導銃』を放った。
「妾が行きますでございます」
ガルヴァートは『七節棍』を構え、雑魔の動きを封じるために動き始める。
まるで鞭のようにしならせた『七節棍』は動き回る雑魔に絡まって、地面に倒れこむ。
「よし、行くぞ……!」
神代は『ウインドスラッシュ』を使って、雑魔へ攻撃を行う。神代の攻撃を避けようとした雑魔だが、ガルヴァートの『七節棍』が絡まっており、上手く避ける事は叶わない。
けれど、神代の攻撃で『七節棍』が取れてしまい、再び雑魔に自由が戻った。
「そうは、させるかよ……!」
だが、神代は追撃として『ファイアアロー』を繰り出し、雑魔の動きを止める。
「そろそろ終いにさせてもらおう」
榊が低い声で呟くと『踏込』と『強打』を使用して、雑魔に攻撃を仕掛ける。
彼の動きに合わせるように、ミリアとルナも動き、Charlotte、柏部、神代はそれぞれ遠距離からの攻撃を行い、ガルヴァートとベアトリスが雑魔にトドメを刺したのだった。
●パンダさん!
「気のせいか? 俺にはお前が戦闘に参加していた記憶がないのだが?」
戦闘終了後、榊がパンダさんに話しかける。
彼の言う通り、戦闘は8名のハンターが行い、パンダさんは何もしていない。
パンダさんは『ファイアアロー』の1つも使用しておらず、本当にそこにいただけの着ぐるみ野郎でしかなかった。
「……戦闘に参加する事の難しさが、今回の経験で多少理解出来たんじゃないかと思うが。今後もハンターとしてやっていきたいと思うのならば、今回の事をきちんと振り返って頑張るんだな」
大人である榊は、心に溜まっている苛立ちをグッと我慢して、パンダさんに励ましの言葉を投げかける。普通ならば、この給料泥棒! と叫んでもおかしくない状態なのに。
「……ねえ、その着ぐるみ、ちゃんと洗ってるの?」
戦闘終了後にパンダさんに何かを告げようとしていた柏部が、眉根を寄せながら呟く。
「何だか薄汚れているし……臭うわよ?」
10代女子のはっきり物事を言う性格は、パンダさんの心を傷つけた。
いや、しかし悪いのは薄汚れた着ぐるみを着ているパンダさんなのだけれど。
「匂いでこちらの存在を察知する敵もいるだろうし、あまり自分の臭いを強くするのは考えものよ? それに、ハンターには女性も多いんだから。わたし自身、如何に依頼でも不潔な人と一緒に行動するのは嫌。わたし達と一緒に依頼に参加する以上、最低限の身だしなみは整えてもらわないと困るわよ? それくらいは、紳士の嗜みじゃない?」
心に溜めていた事をすべて言い切った柏部は、どこかすっきりした表情に見える。
「まぁ、臭いの件もそうですけど、英雄を名乗りたいのならばもう少し精進なさいな。姿形を真似れば、そうなれるなど愚かの極みですが、努力次第で何かになれるというのは否定するつもりはありません、ちょっと、臭うのであまりこちらに来ないで下さい」
良い事を言ったベアトリスなのだが、最後の最後で臭いに耐えきれなくなったらしい。
「君の行動次第で英雄になれるか、愚か者と呼ばれるか決まるだろうな。英雄になりたいのならば、最低限の努力はするべきだ。努力なき行為には、何の意味もないのだから」
Charlotteがパンダさんの肩を、ぽん、と叩きながら呟く――が、やはり鼻に手を当てている。
「ぷ、はー……! もう、我慢出来ません! よくこんな暑苦しいものを常時装備出来ますね……ある意味では、本当に尊敬します!」
ミリアは着ぐるみを脱ぎ捨てながら、パンダさんに話しかける。
しかし、下着は身に着けているとはいえ、男性にとっては少々刺激的な姿である。
もちろん、パンダさんも着ぐるみの中で「ふおおお……」と奇声をあげながら悶えてる。
「ミリア様の言う通りです……私、もう暑さでどうにかなってしまいそうです、はにゃー」
くらくら、とその場に座り込むルナを見て、ハンター達は別な意味でパンダさんの体力を尊敬した、が、別な意味なので、その尊敬は嘲笑にもなりえる。
「みなの言葉は心に沁みましたか? 人のために何かを行い、行い続けたその先に、英雄と周りから呼ばれるのでございます。そなたもこの先も戦い続け、生き残り続ければ、いつしかヒーロー……英雄と呼ばれる事になりましょうぞ」
ガルヴァートも己の言葉を言い終わり、パンダさんに背中を向ける。
「……しかし、ハンターに上下関係がなくて助かったな。現役軍人の頃の俺だったら『戦いを舐めるな』と殴り飛ばしていたところだ……」
ぼそっ、と榊が呟き「んん? 何か言ったか?」とパンダさんが首を傾げながら問いかける。首を傾げたせいで頭が落ちそうになっているが、それはあえて見なかった事にした。
「いや、何でもない。お前も無事にこれから先を乗り越えられるといいな」
「おう! 次こそはこのパンダさんも役に立って見せるぜ! せめて『ファイアアロー』を1回くらいは出せるように!」
パンダさんの言葉を聞き、ハンター達は『1回かよ!?』と心の中で総ツッコミを入れていたが、それをパンダさんが知る由はなかった――……。
END
「……まぁ、人の趣味はそれぞれだし、本人が納得しているのならば、俺からは特に言う事はない。ヒーローになりたいのならば、自分が出来る範囲で協力してくれ」
榊 兵庫(ka0010)は呆れたような表情でパンダさんを見ながら呟く。
「ヒーローねぇ……同じ世界出身でも庶民の方々の言われる事は分かりません。個人の拘りにあまり口を出す気はありませんが……もうちょっと早く歩けませんの?」
ゆっくりと歩く(多分、本人は急いで歩いている)姿を見て、ベアトリス・ド・アヴェーヌ(ka0458)はため息混じりに呟く。
確かに、彼女が苛立つのも無理はない。普通の半分くらいの速度になっており、このままだと目的地に到着するのは、予定よりも大きな時間を要する事になってしまうのだから。
(……英雄やら何やらは、形から入るものでも、ましてや見た目ではないだろうに)
Charlotte・V・K(ka0468)は、他のハンター達に気づかれぬよう、小さなため息を零す。
何故か、任務が開始してから、パンダさんは人を疲れさせる事しかしていない。
本人は何もしていなくても、その姿を見て、他人は疲れを感じ取ってしまうのだろう。
「それほど難しい依頼でもなさそうですし、少し気楽にいきましょうか」
ミリア・コーネリウス(ka1287)はにっこりと微笑みながら呟く。そんな彼女の姿は『まるごとうさぎ』を装備しているせいか、全員うさぎさんだ。
パンダさんと違って、うさぎの口部分から顔が出ているため、パンダさんのように顔も分からないような状態ではないのだけれど。
「着ぐるみ、初めて着ましたけど悪くないですよね……可愛いし。それに動きも制限されてしまうので、良い修行になりそうです」
「そうですよね、うさぎさんは可愛いです……! パンダさんさん、メイドである私がサポートしますので、よろしくお願いしますね」
パンダさんに挨拶をするのは、ミリアと同じく『まるごとうさぎ』を着用しているルナ・セレスティア(ka2675)だった。メイドでうさぎとは、もはや既に何が何やら分からない。
「ヒーロー……今の若者達の間には、このようなヒーローが人気なのでございますね。妾の若かりし頃の辺境には、ヒーローなど存在しておりませんでした。皆が決死の覚悟で、ただひたすら歪虚と戦い続ける日々でございましたからな」
ガルヴァート=キキ(ka2082)は腕を組み、うんうん、と頷きながら呟くが、今の若い者達にパンダさんが人気というわけではない、という事を知らなかった。
「まぁ、怪我しない程度に頑張ってくれ。ヤバそうなら『ストーンアーマー』で補助しよう……ただ、頭だけは自分でどうにかしてもらうしかないけどな」
神代 廼鴉(ka2504)はボソッと呟く。頭、というのも実際の頭を守るという意味ではなく、恐らく頭の中身の事を言っているのであろう事は、パンダさん以外のハンターしか気づけなかった。
「……パンダ……ううん……?」
何か思う所があるのか、首を傾げながら柏部 狭綾(ka2697)が小さく呟いている。
「ん? どうかしたのか? まさか、俺のパンダ着ぐるみが欲しいとか言うんじゃ……!」
「言わないわよ――……っていうか、いらないわよ」
パンダさんの言葉に、柏部は即答する。
「とりあえず、今回の雑魔は苦労するようなものじゃなさそうだし早く終わらせましょう。もちろん油断とかは一切無しで」
柏部の言葉に、ハンター達は頷きながら雑魔退治のために行動を開始し始めたのだった。
●パンダさんと書いて『役立たず』と読む
「……ぜはぁ……ぜはぁ……ひはぁ……」
歩くたびに変質者のような声を出しているのは、言うまでもなくパンダさんだ。
「あまり言いたくはないが、もう少し早く歩けないのか? このままでは日が暮れるぞ」
榊がため息を零しながら、パンダさんに話しかける。
「いや……ぜぇ、ぜぇ……これ、でも……げほっ、俺の……全速力……なんだよ」
まだ戦闘も始まっていないのに、既にパンダさんの疲れは最高潮に達しており、ハンター達は嫌な予感をひしひしと感じていた。
「もう少し早く歩きなさいな、歩けないというのなら転がしてあげても良くってよ」
「鬼がいる! 転がされたら、この白いパンダボディーが真っ黒になる!」
ベアトリスとしては半分冗談だったのだけど、その言葉に怯えたパンダさんはせかせかと歩き始める。
(……本当に、あれでハンターが務まるのだろうか。明らかに無理な気しかしないが)
Charlotteはシャカシャカと歩いているパンダさんを見ながら、心の中で呟く。
「ヒーローになりたいという意志を持つ事は素晴らしいと思いますが、妾には些か短慮にも見えてございますな……」
ガルヴァートが呟くが、恐らく彼女以外も、短慮以外の何者でもない、と考えている。
「……おーい、パンダさんとやら、中身は生きてるか?」
「だ、脱水症状で死にそうだ……俺は、もう雑魔にやられて動けなくなる寸前だ……」
「いやいや、まだ雑魔見つけてねぇよ、まだそこに到ってすらいないからな?」
ぱたり、と力尽きそうなパンダさんに神代はズバッと遠慮のないツッコミをいれる。
「……うぅん……やっぱり……あ、いえ、雑魔は犬型という話でしたね、と……」
ちらっ、ちらっ、とパンダさんを見つめ、視線が合うとパッと逸らしながら柏部が呟く。
これがラブコメなら『え、もしかして俺に惚れたの!?』という状態だが、相手はあのパンダさん、絶対にありえるはずがない。
(ちゃんと、この気持ちを伝えた方がいいわよね……雑魔退治が終わったら、言おう……)
柏部は心の中で呟きながら、ギュ、と『オートマチックピストル』を握り締める手に、力を込めた。
「皆様、あちらが目的の雑魔ではないでしょうか?」
ルナが呟き、ハンター達の前方には、こちらに向かって威嚇をする犬の姿がある。
けれど、パッと見ただけでもその犬が普通ではない事が伺え、ハンター達はそれぞれ戦闘態勢を取った。
●戦闘開始
「パンダさんさんには、このメイドうさぎさんが指1本触れさせません!」
ルナは『闘心昂揚』で身体能力を上昇させ、雑魔に『クラッシュブロウ』を繰り出す。
普通にしていれば結構カッコイイ姿なのだが『まるごとうさぎ』と『ハリセン』がすべてを台無しにしている。
「……行きます!」
ミリアも『ツヴァイハンダー』を抱え、雑魔に向かって行くが『まるごとうさぎ』であり、かっこよさが半減している。
「やれやれ、今回の雑魔が大した相手ではない事が幸いだったな」
榊はため息を吐きながら『フラメア』を駆使して、雑魔へと攻撃を仕掛ける。雑魔は榊に向かって飛びかかったけれど、槍のリーチを生かして突き攻撃をカウンターとして行う。
そして、1度距離を取った後に『踏込』から『強打』と攻撃を繋げ、雑魔にとって強力すぎる一撃がお見舞いされた。
再び榊が雑魔から距離を取ると、柏部が『強弾』を使用した攻撃を行う。
「ぐずぐずせずに、そこを御退きなさい!」
慌てふためくパンダさんを突き飛ばしながら、ベアトリスは『運動強化』を使用して『ドリルナックル』で攻撃を行った。
「パンダ、戦うなら戦う。戦わないなら邪魔にならないように下がっておくんだね」
Charlotteは『魔導銃』を構えながら、パンダさんへと言葉を投げかける。
そして、中衛の位置に陣取り、雑魔の動きを制限するように『魔導銃』を放った。
「妾が行きますでございます」
ガルヴァートは『七節棍』を構え、雑魔の動きを封じるために動き始める。
まるで鞭のようにしならせた『七節棍』は動き回る雑魔に絡まって、地面に倒れこむ。
「よし、行くぞ……!」
神代は『ウインドスラッシュ』を使って、雑魔へ攻撃を行う。神代の攻撃を避けようとした雑魔だが、ガルヴァートの『七節棍』が絡まっており、上手く避ける事は叶わない。
けれど、神代の攻撃で『七節棍』が取れてしまい、再び雑魔に自由が戻った。
「そうは、させるかよ……!」
だが、神代は追撃として『ファイアアロー』を繰り出し、雑魔の動きを止める。
「そろそろ終いにさせてもらおう」
榊が低い声で呟くと『踏込』と『強打』を使用して、雑魔に攻撃を仕掛ける。
彼の動きに合わせるように、ミリアとルナも動き、Charlotte、柏部、神代はそれぞれ遠距離からの攻撃を行い、ガルヴァートとベアトリスが雑魔にトドメを刺したのだった。
●パンダさん!
「気のせいか? 俺にはお前が戦闘に参加していた記憶がないのだが?」
戦闘終了後、榊がパンダさんに話しかける。
彼の言う通り、戦闘は8名のハンターが行い、パンダさんは何もしていない。
パンダさんは『ファイアアロー』の1つも使用しておらず、本当にそこにいただけの着ぐるみ野郎でしかなかった。
「……戦闘に参加する事の難しさが、今回の経験で多少理解出来たんじゃないかと思うが。今後もハンターとしてやっていきたいと思うのならば、今回の事をきちんと振り返って頑張るんだな」
大人である榊は、心に溜まっている苛立ちをグッと我慢して、パンダさんに励ましの言葉を投げかける。普通ならば、この給料泥棒! と叫んでもおかしくない状態なのに。
「……ねえ、その着ぐるみ、ちゃんと洗ってるの?」
戦闘終了後にパンダさんに何かを告げようとしていた柏部が、眉根を寄せながら呟く。
「何だか薄汚れているし……臭うわよ?」
10代女子のはっきり物事を言う性格は、パンダさんの心を傷つけた。
いや、しかし悪いのは薄汚れた着ぐるみを着ているパンダさんなのだけれど。
「匂いでこちらの存在を察知する敵もいるだろうし、あまり自分の臭いを強くするのは考えものよ? それに、ハンターには女性も多いんだから。わたし自身、如何に依頼でも不潔な人と一緒に行動するのは嫌。わたし達と一緒に依頼に参加する以上、最低限の身だしなみは整えてもらわないと困るわよ? それくらいは、紳士の嗜みじゃない?」
心に溜めていた事をすべて言い切った柏部は、どこかすっきりした表情に見える。
「まぁ、臭いの件もそうですけど、英雄を名乗りたいのならばもう少し精進なさいな。姿形を真似れば、そうなれるなど愚かの極みですが、努力次第で何かになれるというのは否定するつもりはありません、ちょっと、臭うのであまりこちらに来ないで下さい」
良い事を言ったベアトリスなのだが、最後の最後で臭いに耐えきれなくなったらしい。
「君の行動次第で英雄になれるか、愚か者と呼ばれるか決まるだろうな。英雄になりたいのならば、最低限の努力はするべきだ。努力なき行為には、何の意味もないのだから」
Charlotteがパンダさんの肩を、ぽん、と叩きながら呟く――が、やはり鼻に手を当てている。
「ぷ、はー……! もう、我慢出来ません! よくこんな暑苦しいものを常時装備出来ますね……ある意味では、本当に尊敬します!」
ミリアは着ぐるみを脱ぎ捨てながら、パンダさんに話しかける。
しかし、下着は身に着けているとはいえ、男性にとっては少々刺激的な姿である。
もちろん、パンダさんも着ぐるみの中で「ふおおお……」と奇声をあげながら悶えてる。
「ミリア様の言う通りです……私、もう暑さでどうにかなってしまいそうです、はにゃー」
くらくら、とその場に座り込むルナを見て、ハンター達は別な意味でパンダさんの体力を尊敬した、が、別な意味なので、その尊敬は嘲笑にもなりえる。
「みなの言葉は心に沁みましたか? 人のために何かを行い、行い続けたその先に、英雄と周りから呼ばれるのでございます。そなたもこの先も戦い続け、生き残り続ければ、いつしかヒーロー……英雄と呼ばれる事になりましょうぞ」
ガルヴァートも己の言葉を言い終わり、パンダさんに背中を向ける。
「……しかし、ハンターに上下関係がなくて助かったな。現役軍人の頃の俺だったら『戦いを舐めるな』と殴り飛ばしていたところだ……」
ぼそっ、と榊が呟き「んん? 何か言ったか?」とパンダさんが首を傾げながら問いかける。首を傾げたせいで頭が落ちそうになっているが、それはあえて見なかった事にした。
「いや、何でもない。お前も無事にこれから先を乗り越えられるといいな」
「おう! 次こそはこのパンダさんも役に立って見せるぜ! せめて『ファイアアロー』を1回くらいは出せるように!」
パンダさんの言葉を聞き、ハンター達は『1回かよ!?』と心の中で総ツッコミを入れていたが、それをパンダさんが知る由はなかった――……。
END
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼相談場 Charlotte・V・K(ka0468) 人間(リアルブルー)|26才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/08/18 04:05:02 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/08/16 00:50:54 |