ゲスト
(ka0000)
迷路でどっきりダウンタウン
マスター:STANZA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/08/18 19:00
- 完成日
- 2014/08/31 14:14
このシナリオは2日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
港町ポルトワールに隣接する下町、ダウンタウン。
そこはかつて、犯罪者の巣窟だった。
素人が一度足を踏み入れたら、命か金のどちらか——大抵はその両方を落とす事になる。
そんな噂がまことしやかに囁かれ、しかも誰もが、それをただの噂だと笑い飛ばす事が出来なかった、社会の暗部。
だが、そんなダウンタウンも現在では随分と住み心地が良くなっていた。
治安も改善され、そこに住む者達の顔ぶれも変わりつつある。
凶悪犯はほぼ姿を消し——地下に潜っただけかも知れないが、とりあえず一般の人々の目に付く事はなくなった。
スリや引ったくりなどの軽犯罪は相変わらず横行しているが、命に関わる様な重犯罪は減少の一途を辿っている。
安全快適とは言い難いが、その分だけ家賃や物価も安く、油断さえしなければそれなりに住み心地は良い。
それが現在の、ダウンタウンの評価だ。
「オレは好きだな、この町」
どこかの家の屋根に上がったアルド・サンテは、眼下に広がるポルトワールの港を眺めていた。
奔放に跳ねた金髪が、海風に揺れる。
古い煉瓦の建物がひしめき、日当たりも風通しも悪く、狭い小路が複雑に入り組んでいる上に、段差や階段があちこちにある、まるで迷路の様な町。
「ゴチャゴチャして汚いって言う奴もいるけどさ、このゴチャゴチャが良いんだよな」
その周囲を取り巻く子供達が、うんうんと頷く。
彼等はダウンタウンの便利屋、カナイオ・スイーパーの仲間達だ。
この町に地図はない。
立体交差しながら縦横無尽に広がる抜け道や脇道、地下道や屋根の上は勿論、他人の庭はおろか家の中までが通路として日常的に使われるのだ。
普通に道路だけを地図に記しても、恐らく何の役にも立たないだろう。
そればかりではない。
この町では、道路とは「家を建てるには狭すぎる隙間」の事であり、少しでも広い隙間があれば、そこにはいつの間にか細長い家が建っているのだ。
勿論、それで道が塞がれるのは困るから、町の人々は家の中を平気で通って行く。
それが嫌なら屋根を通れる様に階段を作るのが、この街のルールだ。
因みに鍵はかけない。
鍵をかけてもやられる時はやられるし、寧ろ施錠していると却って狙われやすくなるのだ——鍵をかけてでも守りたくなる様な、何か良い物があるに違いない、と。
アルド自身の家は、ポルトワールの港に近い一等地にある。
だが彼はだいぶ前から家には帰らず、このダウンタウンでスイーパーの仲間達と寝食を共にしていた。
子供達の多くはこのダウンタウンに家族と共に暮らしているのだが、中には色々と問題のある親もいる。
そんな子供達が共同生活を営む施設で、アルドも寝泊まりをしているのだ。
つまりは家出中……という訳だが。
「家出じゃねーよ、独立したんだよ! ちゃんとハンターやって稼いでるし!」
と、本人は言っているが——
まあ、それはともかく。
「このまちってさー、なんかたのしいよね!」
「うん、でっかいあそびばみたいだよね!」
子供達の声に、アルドはポンと手を打って答えた。
「じゃあさ、遊び場にしちゃおうぜ!」
町全体をフィールドにして、迷子になったり追いかけっこしたり。
とは言え、それだけでは普段と変わりない。
「よし、ハンターの皆も巻き込もうぜ!」
今は海の怪物騒ぎで大変な時期だけど。
でも、そんな時だからこそ適度な息抜きが必要なのだ。
それにこれが上手く行けば、観光用のイベントか何かに応用出来るかもしれない。
このダウンタウンにも人が来る様になれば、住民の懐も潤うだろう。
そうなれば、犯罪の発生率も更に低下するかもしれない。
というわけで。
お一人様でもグループでも、新たな出会いを求める方も。
ダウンタウンで楽しい一日を過ごしてみませんか?
リプレイ本文
「……これがこの町の景色か」
マウローゼ・ツヴァイ(ka2489)は、眼下に広がる雑然とした町並を眺めていた。
町で一番高い所だと教えられたその場所からは、港や遥か沖を行く船の姿まで見通せる。
特に何もない所だと聞いたが、ここからの眺めは捨てたものではない。
かつては犯罪者の巣窟だったと聞くが、活気溢れるいい町だ。
物騒なのはどこへ行っても同じ、ハンターにとっては軽犯罪など危険のうちには入らないだろう。
(こんな町に住むのも悪くはないかもしれないな)
もっとも、彼女は放浪の身。
悪くはないが、実際に居を構えるつもりはなかった。
「安住の地を探す旅ではないからな」
ふと、眼下に見覚えのある子供達の姿が見えた。
マウローゼはそっと後ろに下がると、迷路の様な町の景色に溶け込む。
自分を見付けるのもゲームのうちだが、余り簡単では子供達も面白くないだろう。
その少し前。
「ダウンタウンか。ハンターになってからは来てなかったが、相変わらずゴチャゴチャしてんなー」
懐かしそうに笑いながら、ジャック・エルギン(ka1522)は町を歩く。
「すご、迷路みたい」
その後に続いたロザーリア・アレッサンドリ(ka0996)は、きょろきょろとあちこちを見回しながら目を輝かせていた。
「森も迷路みたいなもんだって人間はいうけれど、こっちのほうがすごいよ?」
ただし、スリやらなにやらに引っかかるほどマヌケではないし、もし何かあっても……恐らくは相手の方が後悔する事になるだろう。
疾影士、ナメたらあかん。
「ま、財布をポケットから覗かせたり、荷物から目を離すようなことでもしねえ限り、問題ねーよ」
彼等が目指すのは子供達の家。
本日、そこでは町の未来を決める重要な会議が開催される事になっていた――というのは大袈裟だが、意気込みは多分それくらい。
「また逢えたね♪ この子のお散歩も兼ねて遊びに来たわ」
小さく手を振るリアリュール(ka2003)の足元で、柴犬のフォーリィが尻尾を振っている。
それを迎えるアルドの足元には二頭の柴犬。
名前はまだない。
さて、今から楽しい遊びの相談だ。
「どうしたら小さい子でも理解して楽しめるかしら?」
デュプロ(ka0046)が出したのは、ナマハゲと呼ばれる鬼の資料。
「悪い子を懲らしめる鬼なんだけど、悪い鬼ではなくて……」
鬼ごっこ+お宝の争奪戦という感じで、そこにナマハゲの要素を取り入れたら、喜んでくれるだろうか。
「……子どもがどんなこと考えているのか知りたいの」
とは言っても、子供達の年齢や興味によって喜ばれる遊びは様々だ。
そこで様々な遊びをハシゴして楽しんで貰うスタンプラリー案が浮上する。
ゲームクリアごとに記念のスタンプを押せば、コレクター心をくすぐる事も出来そうだ。
「小さい子はカードだと破いたりなくしちゃったりしそうだから、代わりにこれはどうかな?」
シルフェ・アルタイル(ka0143)が見せたのは、銀色の飾りがジャラジャラ付いた首飾り。
スタンプの代わりに飾りを配る事にすれば、見てわかりやすいし、なくす事もなさそうだ。
「じゃあ、このスタンプはいらないかな?」
海堂 紅緒(ka1880)は鉛筆の絵を掘ったスタンプを用意していた様だが。
「でも折角だし、何かに使いたいよなー。チビ達ってスタンプとかシール大好きだろ?」
アルドがぼやく。
「油断すると施設の壁じゅうにペタペタされてさ」
「そっか、じゃあ私はお絵描きの担当だし……」
大きな紙にスタンプアートみたいなものを、やってみようか。
「それなら押し放題だよね」
「いいな! じゃ、もっとスタンプの数増やそうぜ!」
お菓子の買い出しついでに、雑貨屋で買って来よう。
皆が協議をしている間、ルシエド(ka1240)は子供達を外へ連れ出していた。
秘密の会議中に退屈しない様に、ちょっとお散歩という名目でのんびり町を巡る。
「俺もこんな町で育ったんだぜ、まあ、ここよりだいぶ酷い所だったけどな」
良い事よりも、嫌な事の方が圧倒的に多かった。
何かを楽しんでいる余裕などなく、生きる為に生きる生活だった。
そんな彼の目には、自分の住む町が好きだと素直に言える彼等の姿が眩しく映る。
そしてちょっぴり、羨ましくもあった。
「なあ、町のおすすめスポットとか教えてくれよ」
大人にとっては何でもない所も、子供達ならではの視点で楽しんでいる事もあるだろう。
安くて割と美味しい店や、名物店主や店員、はたまた看板わんこにゃんこがいるお店、想い出の場所……
「後で友達に自慢してやるんだ。ダウンタウンって、こんな面白いトコなんだぞってな」
それがいずれ口コミで広がって、沢山の人が訪れるようになれば良い。
「俺も客商売してっからさ、宣伝くらいはできると思うぜ」
概要を決め、それぞれに準備を終えると、子供達を集めたシルフェは革紐を配りながら説明を始めた。
「ゲームをやってくれたら1個銀色の飾りをあげるよ。それを今配った革紐に通して持ってるとお守りになったりいいことがあったりするからなくさないでね」
そして、マウローゼを紹介。
「あっ、この町の中にここにいる銀髪の綺麗なお姉さんがいるよ。この人に話しかけても飾りが1つもらえるよ」
マウローゼはそれに応えて、プレゼントの箱を模した小さな銀細工をポケットから出して見せた。
「ひとつのゲームでもらえるのは1個までだから気をつけてね」
「じゃあ、まずは『怪盗とハンター』から始めるね!」
その間に、他の遊びを担当する仲間達はそれぞれの持ち場へ散って行く。
「汚れても良い服装で来て下さいね」
シグリッド=リンドベリ(ka0248)が、にこにこ顔で手を振った。
「舞台はここダウンタウン」
芝居がかった様子で、デュプロがプロローグを読み上げる。
「巷で噂の怪盗から挑戦状が届いた。ダウンタウンに眠る宝を頂きに参る、と。依頼を受けたハンターたちは、怪盗と対峙すべく集まった」
ハンターチームはデュプロ、シルフェ、そしてアルドの三人。
対する怪盗は20人を超える数の子供達だ。
お宝の入ったくす玉を落とそうと、子供達は物陰に隠れながらこっそり近付いて来る。
それを見付けて捕まえるのがハンターの役割だ。
「悪い子はいねがぁ!」
金砕棒を振り上げて追うデュプロ、逃げる子供達。
シルフェは子供達が現れそうな細い通路や抜け道に入り込んで探す。
だが、この町を知り尽くした彼等は思わぬ所に消え、そしてまた予想もしない場所から現れた。
そうして追っ手を掻き回している隙に、残った仲間がお宝に近付く。
彼等はそれを守るアルドに近付こうとはせず、くす玉に向かって遠くから石を投げ始めた。
投げて落としちゃダメって、言われてないし!
と、そのひとつが継ぎ目に上手く当たり――
ぼんっ!
勢いよく弾けたその中から、色とりどりに可愛く包装されたお菓子が飛び出し宙を舞う。
「みんな! ご褒美よ~!」
それは、息を弾ませて駆けつけたデュプロのお手製だった。
ポケットいっぱいにお菓子を詰め込んだ子供達は、次にアリス・シンドローム(ka0982)主催の缶蹴りコーナーに雪崩れ込んだ。
ルールは簡単――だが、言葉で説明するのは難しい。
「見ればわかるわ! ってことでアルド君、攻撃側お願いね!」
「え、オレ!? っていきなり!?」
結構な無茶振りだが、有無を言わせず腰に尻尾の様なタブ(飾り紐)を付けられてしまった。
「その缶を蹴っ飛ばせば良いんだな?」
「そうよ、出来るものならね!」
ガンッと音を立てて、アリスは缶をしっかりと踏みつける。
「それじゃ蹴れねーじゃん!」
「蹴れない様にしてるのよ、こっちは守備側なんだから!」
まごまごしているアルドの背後に手を伸ばし、アリスは素早くタブを奪い取った。
「はい捕まえた、アルドの負け!」
こうして全員のタブを奪うか、缶を守りきれば守備側の勝ちだ。
「ふふふ、実はね……」
アリスはアルドにそっと耳打ちする。
「これは遊びに見せかけた『気軽に出来る高度な戦略知識を要する実戦演習』よ」
「そうだったのか! うん、確かにこれは実戦に通じるものが……」
あ、真に受けた。
「じゃあ本番! 半分に別れて、缶は5個、制限時間は3分!」
「え、短い!」
「実戦演習だもの、短い時間で如何に攻略するかも大事でしょ?」
コイントスで、アリスチームが攻撃側に。
「参加者以外に迷惑かけたり、大怪我させなきゃなにやってもオッケー☆」
用意、スタート!
ついでにフリーランニングも仕込んでみようかな?
全力で遊んだ子供達は、次に休憩を兼ねてロザーリアの所へ。
「よろしく、ロザリーだよ」
帽子を取って、ご挨拶。
尖った耳がぴょこんと飛び出した。
「すごいねぇ、カオスな町だね。森にいたころは、すごく静かな暮らしだったから……ってことで、お姉さんはエルフの歌を教えてあげよう」
古い古い、エルフの里以外では滅多に聞く事もなさそうな歌。
「どう? 良い子守唄になるでしょ?」
って、寝たらアカン。
「じゃあ、ちっちゃい子にもわかりやすそうなのを歌うねー。代わりにお姉さんにも皆の知ってる歌を教えてくれるかな?」
そしたら、このキューピッドの飾りをあげるよ!
歌を歌いながら散策を楽しむロザーリアと子供達。
と、その頭上からひらひらと紙切れが舞い降りて来た。
「なんだこれ? くらいあなの、おく?」
他の紙に描かれて言葉は、木が三本、井戸の近く、赤い屋根……等々。
何だろうと、子供達は首を傾げる。
それはシグリッドが用意した、宝探しのヒントだった。
やがて誰かが閃いた。
「これぜんぶがみえるとこに、たからものがあるんだ!」
「よーし、探しておいで。お姉さんは大丈夫、ひとりで帰れるからね」
ロザーリアが子供達の背中を押した。
入り組んだ迷路の様な場所でも、大体の方角は何となくわかる、はず。多分。
「きっと、あそこだ!」
見当を付けて走り出す子供達。
近道をしようと、一軒の家のドアを開けた途端――
ぼふんっ!
小麦粉が降って来た。
蒼の世界ではお馴染みの、古典的な罠だ。
その他にも、水風船や蒟蒻、オモチャの虫、金だらい……
「安全な罠をチョイスしました。暑いので濡れてもすぐに乾くでしょう」
こっそり後をつけたシグリッドが、こくりと頷く。
子供達は全ての罠に引っかかり、びっくり箱で肝を冷やしながらも、どうにかお宝に辿り着いた。
また罠だったらどうしようと、ドキドキしながら豪華な箱を開けると――入っていたのは手作り玩具の数々。
竹とんぼやゴム鉄砲、水鉄砲に、振ると伸びるペーパーヨーヨー。
「おめでとうございます。遊び方がわからない物があったら教えてあg」
ばちぃん!
言い終わらないうちに、ゴム鉄砲で狙撃された。
「わなのおかえしだ!」
「13歳は子供だと思います、反撃してもいいはず」
にっこり笑って反撃する大人げない子供――
その最中、マウローゼの姿を見付けた子供達は一目散に駆け寄って行く。
物陰に隠れ、気配を抑えていたつもりだったが、子供達の目は鋭かった。
思いがけない場所から飛び出して来る彼等の動きは予測不能、あっという間に囲まれて――
「わかった、降参だ」
戦利品を手に入れた子供達は、今度は足元に妙な矢印を見付けた。
それはリアリュールが仕込んだ「追跡ハイク」のサイン。
狩りでも使われるというそのサインは、石や小枝を組んだものだったり、草やリボンを結んだものだったり。
サインの意味は、予め教えられていた。
後はそれに従って行けば、ゴールではリアリュールがご褒美を用意して待っている筈だ。
危険はないと思うが、念の為にマウローゼも一緒に付いて行く。
墓地で花の種を見付け、子供達はメモに従って剥き出しの地面に蒔いていった。
いつか綺麗な花が咲いたら、墓地も怖い場所ではなくなるかもしれない。
そして沢山の人が訪れるようになれば、この前の様な事件も起こりにくくなるだろう。
猫だらけの路地を抜けて、港が見える屋根を通り、小高い丘に出る。
そこは誰かの家の庭だったが、もはや公園の様に誰もが出入り自由になっていた。
「おめでとう、ここがゴールよ」
フォーリィと一緒に木陰でのんびり休んでいたリアリュールが立ち上がった。
「たくさん歩いて喉が渇いたでしょう?」
あまり冷えてはいないけれど、炭酸飲料とお茶をどうぞ?
その頃、置き去りにされたシグリッドはぷち迷子になっていた。
でも大丈夫、困った時の友頼みで、きっと無事に帰れるって信じてる。
残る遊びは施設の敷地内で行われていた。
ルシエドは壁にかけたコルクボードに的の絵を貼り付ける。
「これはダーツっていう的当てゲームだ。的の中心近くに当てるほど得点が高くなる」
挑戦は一人5投まで。
「良い点とったヤツには、ご褒美があるぜ?」
お菓子をチラつかせると、子供達は我先にと群がって来た。
「お、来たなガキ共。ここじゃリアルブルーの『めんこ』ってのを教えるぜ」
ジャックは分厚いトランプの様なカードを手に、子供達を出迎えた。
「ルールは超簡単だ。基本は複数での対戦、先手と後攻があり、後攻は自分のカードを置く」
石畳の上にカードを置き、実演して見せる。
「先手は置かれたカードに向けて、自分のカードを叩きつけて相手のを裏返す」
パァン!
「これで勝ちだ」
鋭い音と共に叩き付けられるカード。
その風圧で裏返る、相手のカード。
それを見た子供達の間から「おぉっ」というどよめきが上がる。
「裏返せなきゃ手番の交代、カードの作り方を覚えたら、勝者はカードを取るルールにすりゃ良い。カードの多いヤツはチャンピオン、王様って訳だ」
作って来たカードを子供達に配り、早速対戦だ。
「今日は俺に勝ったらカード持ってきな」
適度に勝ったり負けたり、勝ったり勝ったり勝っ……
「おっと、いけねぇ」
ちょっと熱くなりすぎただろうか。
「ま、たまにゃガキの遊びに熱中すんのも悪かねーな」
荒っぽい事が苦手な子供達は、紅緒のお絵描き教室へ。
「参加してくれた子にはおねーさんの秘蔵の飴をプレゼントをしよう!」
お徳用だけど、美味しいよ?
「町の好きな場所、食べ物、動物、家族や友達の似顔絵とか、何でも良いよ?」
上手下手とか気にしない。
だって先生だって、ほら。
「なにそれ?」
「猫だよ、見えない?」
「みえない!」
「へたくそー!」
お子様達は容赦ない。
それでも堂々と、紅緒はそれをコルクボードに貼り付けた。
ちゃんと名前も書いて「猫」というタイトルも付けて。
「皆は名前を書いても書かなくてもかな?」
書かずにおいて、後で誰の絵かを当てるゲームをしてみるのも楽しそうだ。
名前の代わりにスタンプでも良い。
「子供の絵ってその子の性格とか出るから面白いよね、見てて飽きないよ」
小さな子供達は、大きな紙に好きなスタンプや手形や足形を、ぺたぺた、ぺたぺた……
「あっ、それ楽しそう!」
少し大きな子供達も混ざって、皆でぺたぺた……
お疲れの子供達には、デュプロが絵本を読んで聞かせたり、シルフェが魔法の様なあやとりを披露したり――
やがて夕暮れも迫って来た頃。
皆の絵を手にした紅緒が訊ねた。
「アルド君、これ飾れる場所あるかな?」
「そうだな、じゃあ食堂の壁に!」
そこは今ちょうど、打ち上げパーティの為に飾り付けが行われている所だ。
飾りはあるもので可愛く、料理も皆で協力して安上がりに。
「お疲れ様!」
デュプロの料理が出来上がり、皆で食卓を囲む。
まずはダウンタウンの発展と、これからのイベントの成功を願って乾杯!
「楽しかったですか? また一緒に遊べるとぼくは嬉しいのですが」
シグリッドの問いには、返事の代わりにゴム弾が飛んだ。
つまりはYESという事だろう。
「また遊びに来てぇな。まだ探検してねー場所も、沢山あるんだろ?」
「うん、その時もまた何かやりたいよね」
ルシエドの言葉に紅緒が頷く。
「こうやって街を隅々までめぐると、今まで知らなかったことが見つかるかもね」
マウローゼが撮った写真を見ながら、ロザーリアが言った。
その為にも、一度で終わらせたくはない。
今日教えた遊びも、子供達の間で受け継がれていく事だろう。
「この町に良い風が吹き続ける事を願うよ」
紅緒が改めてグラスを掲げる。
「ねぇ? アルドさん?」
隅の方では、デュプロが静かに皆の様子を見守っていた。
「……ボクには子ども時代がないの。……心臓に欠陥が、ね」
驚いた様子のアルドに苦笑いを返し、デュプロは続ける。
「童心を知りたいから貴方のチームに入りたいって言うのはダメかしら?」
「いいけど、無理すんなよ?」
入団は希望があれば誰でもOKだ。勿論、アリスも紅緒も。
向こうでは、シルフェが銀細工の飾りに込めた意味を解説していた。
「えっと、これはプレゼントの箱だよ。笑顔があふれる生活が来るお守りだよ」
鍵は友達ができて、王冠は勝利、馬鉄は幸運、黒猫は悪運から守ってくれる、時計は有意義な時間が過ごせて、飴玉は心と体を癒してくれる。
キューピッドは好きな人が振り向いてくれて、ピストルはチャンスがやって来る、本は努力が実って、リボンは幸せがずっと続く――
全部集められた子は、いるかな?
マウローゼ・ツヴァイ(ka2489)は、眼下に広がる雑然とした町並を眺めていた。
町で一番高い所だと教えられたその場所からは、港や遥か沖を行く船の姿まで見通せる。
特に何もない所だと聞いたが、ここからの眺めは捨てたものではない。
かつては犯罪者の巣窟だったと聞くが、活気溢れるいい町だ。
物騒なのはどこへ行っても同じ、ハンターにとっては軽犯罪など危険のうちには入らないだろう。
(こんな町に住むのも悪くはないかもしれないな)
もっとも、彼女は放浪の身。
悪くはないが、実際に居を構えるつもりはなかった。
「安住の地を探す旅ではないからな」
ふと、眼下に見覚えのある子供達の姿が見えた。
マウローゼはそっと後ろに下がると、迷路の様な町の景色に溶け込む。
自分を見付けるのもゲームのうちだが、余り簡単では子供達も面白くないだろう。
その少し前。
「ダウンタウンか。ハンターになってからは来てなかったが、相変わらずゴチャゴチャしてんなー」
懐かしそうに笑いながら、ジャック・エルギン(ka1522)は町を歩く。
「すご、迷路みたい」
その後に続いたロザーリア・アレッサンドリ(ka0996)は、きょろきょろとあちこちを見回しながら目を輝かせていた。
「森も迷路みたいなもんだって人間はいうけれど、こっちのほうがすごいよ?」
ただし、スリやらなにやらに引っかかるほどマヌケではないし、もし何かあっても……恐らくは相手の方が後悔する事になるだろう。
疾影士、ナメたらあかん。
「ま、財布をポケットから覗かせたり、荷物から目を離すようなことでもしねえ限り、問題ねーよ」
彼等が目指すのは子供達の家。
本日、そこでは町の未来を決める重要な会議が開催される事になっていた――というのは大袈裟だが、意気込みは多分それくらい。
「また逢えたね♪ この子のお散歩も兼ねて遊びに来たわ」
小さく手を振るリアリュール(ka2003)の足元で、柴犬のフォーリィが尻尾を振っている。
それを迎えるアルドの足元には二頭の柴犬。
名前はまだない。
さて、今から楽しい遊びの相談だ。
「どうしたら小さい子でも理解して楽しめるかしら?」
デュプロ(ka0046)が出したのは、ナマハゲと呼ばれる鬼の資料。
「悪い子を懲らしめる鬼なんだけど、悪い鬼ではなくて……」
鬼ごっこ+お宝の争奪戦という感じで、そこにナマハゲの要素を取り入れたら、喜んでくれるだろうか。
「……子どもがどんなこと考えているのか知りたいの」
とは言っても、子供達の年齢や興味によって喜ばれる遊びは様々だ。
そこで様々な遊びをハシゴして楽しんで貰うスタンプラリー案が浮上する。
ゲームクリアごとに記念のスタンプを押せば、コレクター心をくすぐる事も出来そうだ。
「小さい子はカードだと破いたりなくしちゃったりしそうだから、代わりにこれはどうかな?」
シルフェ・アルタイル(ka0143)が見せたのは、銀色の飾りがジャラジャラ付いた首飾り。
スタンプの代わりに飾りを配る事にすれば、見てわかりやすいし、なくす事もなさそうだ。
「じゃあ、このスタンプはいらないかな?」
海堂 紅緒(ka1880)は鉛筆の絵を掘ったスタンプを用意していた様だが。
「でも折角だし、何かに使いたいよなー。チビ達ってスタンプとかシール大好きだろ?」
アルドがぼやく。
「油断すると施設の壁じゅうにペタペタされてさ」
「そっか、じゃあ私はお絵描きの担当だし……」
大きな紙にスタンプアートみたいなものを、やってみようか。
「それなら押し放題だよね」
「いいな! じゃ、もっとスタンプの数増やそうぜ!」
お菓子の買い出しついでに、雑貨屋で買って来よう。
皆が協議をしている間、ルシエド(ka1240)は子供達を外へ連れ出していた。
秘密の会議中に退屈しない様に、ちょっとお散歩という名目でのんびり町を巡る。
「俺もこんな町で育ったんだぜ、まあ、ここよりだいぶ酷い所だったけどな」
良い事よりも、嫌な事の方が圧倒的に多かった。
何かを楽しんでいる余裕などなく、生きる為に生きる生活だった。
そんな彼の目には、自分の住む町が好きだと素直に言える彼等の姿が眩しく映る。
そしてちょっぴり、羨ましくもあった。
「なあ、町のおすすめスポットとか教えてくれよ」
大人にとっては何でもない所も、子供達ならではの視点で楽しんでいる事もあるだろう。
安くて割と美味しい店や、名物店主や店員、はたまた看板わんこにゃんこがいるお店、想い出の場所……
「後で友達に自慢してやるんだ。ダウンタウンって、こんな面白いトコなんだぞってな」
それがいずれ口コミで広がって、沢山の人が訪れるようになれば良い。
「俺も客商売してっからさ、宣伝くらいはできると思うぜ」
概要を決め、それぞれに準備を終えると、子供達を集めたシルフェは革紐を配りながら説明を始めた。
「ゲームをやってくれたら1個銀色の飾りをあげるよ。それを今配った革紐に通して持ってるとお守りになったりいいことがあったりするからなくさないでね」
そして、マウローゼを紹介。
「あっ、この町の中にここにいる銀髪の綺麗なお姉さんがいるよ。この人に話しかけても飾りが1つもらえるよ」
マウローゼはそれに応えて、プレゼントの箱を模した小さな銀細工をポケットから出して見せた。
「ひとつのゲームでもらえるのは1個までだから気をつけてね」
「じゃあ、まずは『怪盗とハンター』から始めるね!」
その間に、他の遊びを担当する仲間達はそれぞれの持ち場へ散って行く。
「汚れても良い服装で来て下さいね」
シグリッド=リンドベリ(ka0248)が、にこにこ顔で手を振った。
「舞台はここダウンタウン」
芝居がかった様子で、デュプロがプロローグを読み上げる。
「巷で噂の怪盗から挑戦状が届いた。ダウンタウンに眠る宝を頂きに参る、と。依頼を受けたハンターたちは、怪盗と対峙すべく集まった」
ハンターチームはデュプロ、シルフェ、そしてアルドの三人。
対する怪盗は20人を超える数の子供達だ。
お宝の入ったくす玉を落とそうと、子供達は物陰に隠れながらこっそり近付いて来る。
それを見付けて捕まえるのがハンターの役割だ。
「悪い子はいねがぁ!」
金砕棒を振り上げて追うデュプロ、逃げる子供達。
シルフェは子供達が現れそうな細い通路や抜け道に入り込んで探す。
だが、この町を知り尽くした彼等は思わぬ所に消え、そしてまた予想もしない場所から現れた。
そうして追っ手を掻き回している隙に、残った仲間がお宝に近付く。
彼等はそれを守るアルドに近付こうとはせず、くす玉に向かって遠くから石を投げ始めた。
投げて落としちゃダメって、言われてないし!
と、そのひとつが継ぎ目に上手く当たり――
ぼんっ!
勢いよく弾けたその中から、色とりどりに可愛く包装されたお菓子が飛び出し宙を舞う。
「みんな! ご褒美よ~!」
それは、息を弾ませて駆けつけたデュプロのお手製だった。
ポケットいっぱいにお菓子を詰め込んだ子供達は、次にアリス・シンドローム(ka0982)主催の缶蹴りコーナーに雪崩れ込んだ。
ルールは簡単――だが、言葉で説明するのは難しい。
「見ればわかるわ! ってことでアルド君、攻撃側お願いね!」
「え、オレ!? っていきなり!?」
結構な無茶振りだが、有無を言わせず腰に尻尾の様なタブ(飾り紐)を付けられてしまった。
「その缶を蹴っ飛ばせば良いんだな?」
「そうよ、出来るものならね!」
ガンッと音を立てて、アリスは缶をしっかりと踏みつける。
「それじゃ蹴れねーじゃん!」
「蹴れない様にしてるのよ、こっちは守備側なんだから!」
まごまごしているアルドの背後に手を伸ばし、アリスは素早くタブを奪い取った。
「はい捕まえた、アルドの負け!」
こうして全員のタブを奪うか、缶を守りきれば守備側の勝ちだ。
「ふふふ、実はね……」
アリスはアルドにそっと耳打ちする。
「これは遊びに見せかけた『気軽に出来る高度な戦略知識を要する実戦演習』よ」
「そうだったのか! うん、確かにこれは実戦に通じるものが……」
あ、真に受けた。
「じゃあ本番! 半分に別れて、缶は5個、制限時間は3分!」
「え、短い!」
「実戦演習だもの、短い時間で如何に攻略するかも大事でしょ?」
コイントスで、アリスチームが攻撃側に。
「参加者以外に迷惑かけたり、大怪我させなきゃなにやってもオッケー☆」
用意、スタート!
ついでにフリーランニングも仕込んでみようかな?
全力で遊んだ子供達は、次に休憩を兼ねてロザーリアの所へ。
「よろしく、ロザリーだよ」
帽子を取って、ご挨拶。
尖った耳がぴょこんと飛び出した。
「すごいねぇ、カオスな町だね。森にいたころは、すごく静かな暮らしだったから……ってことで、お姉さんはエルフの歌を教えてあげよう」
古い古い、エルフの里以外では滅多に聞く事もなさそうな歌。
「どう? 良い子守唄になるでしょ?」
って、寝たらアカン。
「じゃあ、ちっちゃい子にもわかりやすそうなのを歌うねー。代わりにお姉さんにも皆の知ってる歌を教えてくれるかな?」
そしたら、このキューピッドの飾りをあげるよ!
歌を歌いながら散策を楽しむロザーリアと子供達。
と、その頭上からひらひらと紙切れが舞い降りて来た。
「なんだこれ? くらいあなの、おく?」
他の紙に描かれて言葉は、木が三本、井戸の近く、赤い屋根……等々。
何だろうと、子供達は首を傾げる。
それはシグリッドが用意した、宝探しのヒントだった。
やがて誰かが閃いた。
「これぜんぶがみえるとこに、たからものがあるんだ!」
「よーし、探しておいで。お姉さんは大丈夫、ひとりで帰れるからね」
ロザーリアが子供達の背中を押した。
入り組んだ迷路の様な場所でも、大体の方角は何となくわかる、はず。多分。
「きっと、あそこだ!」
見当を付けて走り出す子供達。
近道をしようと、一軒の家のドアを開けた途端――
ぼふんっ!
小麦粉が降って来た。
蒼の世界ではお馴染みの、古典的な罠だ。
その他にも、水風船や蒟蒻、オモチャの虫、金だらい……
「安全な罠をチョイスしました。暑いので濡れてもすぐに乾くでしょう」
こっそり後をつけたシグリッドが、こくりと頷く。
子供達は全ての罠に引っかかり、びっくり箱で肝を冷やしながらも、どうにかお宝に辿り着いた。
また罠だったらどうしようと、ドキドキしながら豪華な箱を開けると――入っていたのは手作り玩具の数々。
竹とんぼやゴム鉄砲、水鉄砲に、振ると伸びるペーパーヨーヨー。
「おめでとうございます。遊び方がわからない物があったら教えてあg」
ばちぃん!
言い終わらないうちに、ゴム鉄砲で狙撃された。
「わなのおかえしだ!」
「13歳は子供だと思います、反撃してもいいはず」
にっこり笑って反撃する大人げない子供――
その最中、マウローゼの姿を見付けた子供達は一目散に駆け寄って行く。
物陰に隠れ、気配を抑えていたつもりだったが、子供達の目は鋭かった。
思いがけない場所から飛び出して来る彼等の動きは予測不能、あっという間に囲まれて――
「わかった、降参だ」
戦利品を手に入れた子供達は、今度は足元に妙な矢印を見付けた。
それはリアリュールが仕込んだ「追跡ハイク」のサイン。
狩りでも使われるというそのサインは、石や小枝を組んだものだったり、草やリボンを結んだものだったり。
サインの意味は、予め教えられていた。
後はそれに従って行けば、ゴールではリアリュールがご褒美を用意して待っている筈だ。
危険はないと思うが、念の為にマウローゼも一緒に付いて行く。
墓地で花の種を見付け、子供達はメモに従って剥き出しの地面に蒔いていった。
いつか綺麗な花が咲いたら、墓地も怖い場所ではなくなるかもしれない。
そして沢山の人が訪れるようになれば、この前の様な事件も起こりにくくなるだろう。
猫だらけの路地を抜けて、港が見える屋根を通り、小高い丘に出る。
そこは誰かの家の庭だったが、もはや公園の様に誰もが出入り自由になっていた。
「おめでとう、ここがゴールよ」
フォーリィと一緒に木陰でのんびり休んでいたリアリュールが立ち上がった。
「たくさん歩いて喉が渇いたでしょう?」
あまり冷えてはいないけれど、炭酸飲料とお茶をどうぞ?
その頃、置き去りにされたシグリッドはぷち迷子になっていた。
でも大丈夫、困った時の友頼みで、きっと無事に帰れるって信じてる。
残る遊びは施設の敷地内で行われていた。
ルシエドは壁にかけたコルクボードに的の絵を貼り付ける。
「これはダーツっていう的当てゲームだ。的の中心近くに当てるほど得点が高くなる」
挑戦は一人5投まで。
「良い点とったヤツには、ご褒美があるぜ?」
お菓子をチラつかせると、子供達は我先にと群がって来た。
「お、来たなガキ共。ここじゃリアルブルーの『めんこ』ってのを教えるぜ」
ジャックは分厚いトランプの様なカードを手に、子供達を出迎えた。
「ルールは超簡単だ。基本は複数での対戦、先手と後攻があり、後攻は自分のカードを置く」
石畳の上にカードを置き、実演して見せる。
「先手は置かれたカードに向けて、自分のカードを叩きつけて相手のを裏返す」
パァン!
「これで勝ちだ」
鋭い音と共に叩き付けられるカード。
その風圧で裏返る、相手のカード。
それを見た子供達の間から「おぉっ」というどよめきが上がる。
「裏返せなきゃ手番の交代、カードの作り方を覚えたら、勝者はカードを取るルールにすりゃ良い。カードの多いヤツはチャンピオン、王様って訳だ」
作って来たカードを子供達に配り、早速対戦だ。
「今日は俺に勝ったらカード持ってきな」
適度に勝ったり負けたり、勝ったり勝ったり勝っ……
「おっと、いけねぇ」
ちょっと熱くなりすぎただろうか。
「ま、たまにゃガキの遊びに熱中すんのも悪かねーな」
荒っぽい事が苦手な子供達は、紅緒のお絵描き教室へ。
「参加してくれた子にはおねーさんの秘蔵の飴をプレゼントをしよう!」
お徳用だけど、美味しいよ?
「町の好きな場所、食べ物、動物、家族や友達の似顔絵とか、何でも良いよ?」
上手下手とか気にしない。
だって先生だって、ほら。
「なにそれ?」
「猫だよ、見えない?」
「みえない!」
「へたくそー!」
お子様達は容赦ない。
それでも堂々と、紅緒はそれをコルクボードに貼り付けた。
ちゃんと名前も書いて「猫」というタイトルも付けて。
「皆は名前を書いても書かなくてもかな?」
書かずにおいて、後で誰の絵かを当てるゲームをしてみるのも楽しそうだ。
名前の代わりにスタンプでも良い。
「子供の絵ってその子の性格とか出るから面白いよね、見てて飽きないよ」
小さな子供達は、大きな紙に好きなスタンプや手形や足形を、ぺたぺた、ぺたぺた……
「あっ、それ楽しそう!」
少し大きな子供達も混ざって、皆でぺたぺた……
お疲れの子供達には、デュプロが絵本を読んで聞かせたり、シルフェが魔法の様なあやとりを披露したり――
やがて夕暮れも迫って来た頃。
皆の絵を手にした紅緒が訊ねた。
「アルド君、これ飾れる場所あるかな?」
「そうだな、じゃあ食堂の壁に!」
そこは今ちょうど、打ち上げパーティの為に飾り付けが行われている所だ。
飾りはあるもので可愛く、料理も皆で協力して安上がりに。
「お疲れ様!」
デュプロの料理が出来上がり、皆で食卓を囲む。
まずはダウンタウンの発展と、これからのイベントの成功を願って乾杯!
「楽しかったですか? また一緒に遊べるとぼくは嬉しいのですが」
シグリッドの問いには、返事の代わりにゴム弾が飛んだ。
つまりはYESという事だろう。
「また遊びに来てぇな。まだ探検してねー場所も、沢山あるんだろ?」
「うん、その時もまた何かやりたいよね」
ルシエドの言葉に紅緒が頷く。
「こうやって街を隅々までめぐると、今まで知らなかったことが見つかるかもね」
マウローゼが撮った写真を見ながら、ロザーリアが言った。
その為にも、一度で終わらせたくはない。
今日教えた遊びも、子供達の間で受け継がれていく事だろう。
「この町に良い風が吹き続ける事を願うよ」
紅緒が改めてグラスを掲げる。
「ねぇ? アルドさん?」
隅の方では、デュプロが静かに皆の様子を見守っていた。
「……ボクには子ども時代がないの。……心臓に欠陥が、ね」
驚いた様子のアルドに苦笑いを返し、デュプロは続ける。
「童心を知りたいから貴方のチームに入りたいって言うのはダメかしら?」
「いいけど、無理すんなよ?」
入団は希望があれば誰でもOKだ。勿論、アリスも紅緒も。
向こうでは、シルフェが銀細工の飾りに込めた意味を解説していた。
「えっと、これはプレゼントの箱だよ。笑顔があふれる生活が来るお守りだよ」
鍵は友達ができて、王冠は勝利、馬鉄は幸運、黒猫は悪運から守ってくれる、時計は有意義な時間が過ごせて、飴玉は心と体を癒してくれる。
キューピッドは好きな人が振り向いてくれて、ピストルはチャンスがやって来る、本は努力が実って、リボンは幸せがずっと続く――
全部集められた子は、いるかな?
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相談卓 ジャック・エルギン(ka1522) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/08/18 13:03:40 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/08/15 12:21:56 |
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リーダーへ質問卓 シグリッド=リンドベリ(ka0248) 人間(リアルブルー)|15才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2014/08/18 00:00:48 |