ゲスト
(ka0000)
美味しい一杯とクッキーの為に
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/03/01 09:00
- 完成日
- 2016/03/05 20:05
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●荷車が来ない……
王都「イルダーナ」と、港街「ガンナ・エントラータ」の間をつなぐ街道。
ここは、人々が荷物の運搬の為に行き交う場所だ。
その中央に当たる場所に、1軒の茶屋がある。街道を行き来する者達にとって、この茶屋『ブリーズ』は立ち寄るべきポイントとして抑えており、必ずと言ってもいいほどに立ち寄る店なのだという。
というのは、ここで淹れてもらえるブレンド紅茶、コーヒーの味が実に絶品なのだ。微妙な量で配分された茶葉や豆で淹れた一杯は、ここでしか味わえない味なのだとか。
また、振る舞われるクッキーの味がまた絶妙で。素朴な味なのだが、甘さが控えめで、飲み物の味を引き立ててくれるのだそうだ。
この茶屋を切り盛りしているのは、1組の夫婦。代々旦那の家系が、ここを往来する人々を相手に商売を行っている。
「来ないな……」
旦那、クレマンは街道に出て、港街の方角を見る。そろそろ、港街から馴染みの運び屋が来る頃だと思うのだが、なかなかやってこない。
「私が、しっかり小麦粉を管理しておけば……ごめんなさい」
「もうその話はいいだろう」
妻、ミレイユも客応対の合間に夫のそばへとやってきた。この間、妻の不注意でクッキーの原料となる小麦粉が虫にやられてしまったのだ。
普段から、茶葉や豆などの原材料は、顔なじみの運び屋頼りだ。定期的に来てくれるこの運び屋が来ないことは、茶屋にとっては死活問題となる。茶葉やコーヒー豆はしばらく持つだろうが、小麦粉が尽きかけている状況ではクッキーが作れなくなる。
紅茶やコーヒーの美味しさはクッキーで引き立ててこそと、クレマンは親に教わっている。そのこだわりもあり、小麦粉がなくなれば、一時閉店もやむなしとすら彼は考えていた。
「捜索依頼を出すか……」
自分達の事情もそうだが、運び屋が何かトラブルに遭っている可能性も大いに考えられる。最悪、ヴォイドに襲われた可能性も……。
クレマンは止むを得ず、ハンターズソサエティへと出かけることに決めたのだった。
●折角だから、飲んでみたいその味
ハンターズソサエティにて、運び屋の捜索依頼を確認したハンター達。
依頼主のクレマンの姿はもうない。できる限り、店の前を往来する客に茶やコーヒーを振る舞いたいと、依頼だけ行ってから帰っていったのだ。
『仮に街道上でトラブルに見舞われた目撃証言があれば、俺の耳にも、客を通じて届いていたと思うのだが……』
殴り書きのように、クレマンは依頼書にそんな書き置きを残している。そして、その最後にはこうあった。
『運び屋が無事なら、店の紅茶、コーヒーを無料で振る舞わせてもらう』
ハンター達の考えは様々ではあったが、その茶屋に興味を持ったようだ。折角だから、この店で振る舞われる一杯を口にしてみたいと。
王都「イルダーナ」と、港街「ガンナ・エントラータ」の間をつなぐ街道。
ここは、人々が荷物の運搬の為に行き交う場所だ。
その中央に当たる場所に、1軒の茶屋がある。街道を行き来する者達にとって、この茶屋『ブリーズ』は立ち寄るべきポイントとして抑えており、必ずと言ってもいいほどに立ち寄る店なのだという。
というのは、ここで淹れてもらえるブレンド紅茶、コーヒーの味が実に絶品なのだ。微妙な量で配分された茶葉や豆で淹れた一杯は、ここでしか味わえない味なのだとか。
また、振る舞われるクッキーの味がまた絶妙で。素朴な味なのだが、甘さが控えめで、飲み物の味を引き立ててくれるのだそうだ。
この茶屋を切り盛りしているのは、1組の夫婦。代々旦那の家系が、ここを往来する人々を相手に商売を行っている。
「来ないな……」
旦那、クレマンは街道に出て、港街の方角を見る。そろそろ、港街から馴染みの運び屋が来る頃だと思うのだが、なかなかやってこない。
「私が、しっかり小麦粉を管理しておけば……ごめんなさい」
「もうその話はいいだろう」
妻、ミレイユも客応対の合間に夫のそばへとやってきた。この間、妻の不注意でクッキーの原料となる小麦粉が虫にやられてしまったのだ。
普段から、茶葉や豆などの原材料は、顔なじみの運び屋頼りだ。定期的に来てくれるこの運び屋が来ないことは、茶屋にとっては死活問題となる。茶葉やコーヒー豆はしばらく持つだろうが、小麦粉が尽きかけている状況ではクッキーが作れなくなる。
紅茶やコーヒーの美味しさはクッキーで引き立ててこそと、クレマンは親に教わっている。そのこだわりもあり、小麦粉がなくなれば、一時閉店もやむなしとすら彼は考えていた。
「捜索依頼を出すか……」
自分達の事情もそうだが、運び屋が何かトラブルに遭っている可能性も大いに考えられる。最悪、ヴォイドに襲われた可能性も……。
クレマンは止むを得ず、ハンターズソサエティへと出かけることに決めたのだった。
●折角だから、飲んでみたいその味
ハンターズソサエティにて、運び屋の捜索依頼を確認したハンター達。
依頼主のクレマンの姿はもうない。できる限り、店の前を往来する客に茶やコーヒーを振る舞いたいと、依頼だけ行ってから帰っていったのだ。
『仮に街道上でトラブルに見舞われた目撃証言があれば、俺の耳にも、客を通じて届いていたと思うのだが……』
殴り書きのように、クレマンは依頼書にそんな書き置きを残している。そして、その最後にはこうあった。
『運び屋が無事なら、店の紅茶、コーヒーを無料で振る舞わせてもらう』
ハンター達の考えは様々ではあったが、その茶屋に興味を持ったようだ。折角だから、この店で振る舞われる一杯を口にしてみたいと。
リプレイ本文
●運び屋はいずこに……?
港街「ガンナ・エントラータ」にやってきたハンター達。
「こっちの世界に来て初の仕事っすね。美味しい紅茶・コーヒー、クッキーの為に、人探し頑張るっすよー」
「小麦粉は喫茶店にとって、茶葉やコーヒー豆に次ぐ必需品ですからね……」
報酬として、紅茶、コーヒーといった飲み物とクッキーがいただけるという。西蓮寺 咏(ka5700)は初依頼だということも相まって、両手を上げて意気込む。マキナ・バベッジ(ka4302)も、茶屋夫婦の心情を慮り、依頼に臨んでいた。
「きっと、何か大変なことがあったに違いないもの……。イヴォンさんの無事と美味しいお茶の為に私、頑張っちゃいます!」
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)は元気に叫ぶ。評判の紅茶とはどんな味かも関心があるが、やはり、運び屋イヴォンの安否が気になるところだ。
「今回の行方不明、茶屋『ブリーズ』を妬んだ同業者の怨恨の線も、視野に入れた方が良いかもしれませんね……」
その当たりも含めて情報を集めようと、マルカ・アニチキン(ka2542)は考える。
一刻を争う事態になっている可能性もある。ハンター一行は取り急ぎ、情報収集をと動き始めるのだった。
●イヴォンについて情報を
動き出すハンター達だったが、ユキヤ・S・ディールス(ka0382)は仲間を呼び止める。
「情報収集を始める前に、よろしいですか」
彼はメンバー間で情報交換できるようにと仲間に魔導短伝話を渡す。ユキヤは収集場所を街でなく、街道でということで、一足早く馬を走らせて街を後にしていたようだ。
さて、街中で散開したメンバー達。
情報収集に当たり、マルカは茶屋『ブリーズ』を訪れようと考えたのだが。仲間からそれはここでも聞くことができると言われ、港街で聞くことにする。ちなみに、彼女が聞きたかったのは、運び屋イヴォンの体格など、身体特徴だ。
収集する相手は、街道を通って港町にやってきた運び屋や旅人。可能な限り、イヴォンが港町を発った時間。見かけたならその場所、そして、すれ違わなくなった地点、時間などを確認する。
加えて、ゴブリンの目撃情報、大穴の場所、大きさについても把握する。
「街道に残ってる馬車の目撃情報も無いなら、馬車ごと穴に落ちてる可能性も高いかなって」
ルンルンはそう考え、大穴についても聞き出しを行う。
別所では、イヴォンの匂いが付いた物が手に入らないかと咏は考えていた。ただ、彼が運んできた荷物はあったが、それほど匂いが染み込んでいたわけではない。愛用品などあれば、咏はペットの犬に匂いを覚えさせようと考えたのだが……。
そうして小一時間、ハンター達が集めた情報を纏めると。
イヴォンは30代男性。1人で運び屋を行うくらいなので、ガタイはかなりいいようだ。
出発は昨日の朝らしい。茶屋夫婦が心配しているのだから、時間は経っていてしかるべきだろう。街に到着している知人や同業者からは人当たりのいい男だということで、馬に草を食べさせるタイミングで語らった者もいたようだ。それは大穴よりも手前の場所。それより茶屋側での目撃証言は得られなかった。
(怨恨の線も考えたけれど、それはないかしら)
マルカはそんなことを考える。
ゴブリンの目撃情報は、港町と茶屋の中間地点。街道脇に開いた大穴の付近らしい。大穴は丁度馬車が入る程度の大きさらしいが、少なくとも街にいた者の中に穴を覗き込んだ者はいないらしい。
「ゴブリンが見かけられたという情報もありますし……。イヴォンさんが心配です」
急ぎましょうと主張するマキナの言葉に、ハンター達は揃って頷いたのである。
●穿たれた大穴で
ある程度、イヴォンの失踪場所に当たりを付けたメンバー達。
港町を出発したメンバー達は、馬やバイクを走らせ、現場へと急行する。
「申し訳ないっすけど、誰か乗せてほしいっす」
唯一、長距離の移動手段を持たない咏は、誰かに乗せてもらうよう頼む。
マキナは魔導バイクの後ろにとも考えたが、生憎バイクは1人乗り。かといって、彼女だけを街道で歩かせるわけにも行かぬと、マルカが馬に乗せることにしたようだ。
そうして、港街を出発したハンター達。
メンバーの中で一足早く港町を発っていたユキヤは、街道をゆく人々をメインに情報収集を行っていた。大穴の存在、そして、ゴブリンの目撃情報。それは、ほとんど港町で得られるものと変わらない。
大穴が開いたのは、この数日ではないかという話もある。また、ゴブリンは最近、この当たりに流れてきているらしい。
「なるほど、予定のキャンセルができなかったと」
人々が街道を使う理由は様々だが。用心棒を立てれば、街道を行くのはどうにかなるという考えを持つ者が多いようだ。
そこで、街を出発したメンバーと一旦合流したユキヤは、集めた情報を仲間に伝える。
「もしかしたら、敵に襲われて荷物を奪われた……なんて事も、可能性は低いですが、あるかも知れないですね」
ユキヤはそんな見解を仲間達へ語った。
そのユキヤはそのまま、街道の人々に情報を集め続けるということで、他のメンバーが先行する形となる。
一行はバイクや馬を走らせながらも、人や馬車が街道脇にそれ、争ったり逃げるように踏み荒らしたりした場所がないかと探す。
「やはり、中間地点で何かあったと思うんですよね」
実は引き返したという線もあるが、一番大きな可能性は大穴だろうとルンルンは考えを口にする。
街道ゆくうち、大穴を発見したハンター達。その周辺を咏が注意深く見ると、蹄や轍の跡があった。
「急に地面が陥没して落ち込んだとか? 念の為、ジュゲームリリカル……」
ルンルンは符をドローし、生命感知を行う。
「ニンジャ感覚に感有りです!」
そうとなると、この中にイヴォンがいる可能性が高い。
彼らがそこを覗き込むと……その下、奥まった場所に人の姿があった。
「誰かいますかー?」
「幸運に恵まれていたらいいんですが……」
ルンルンはマルカと共に穴をLEDライトで照らし、声を掛ける。すると、かすかに何か声が聞こえた。その為、マルカが用意したロープを使い、その人物を地上へと引き上げた。
「ふぅ、助かったぜ」
そこから現れたのは、イヴォン本人だった。マルカは彼に駆け寄り、全身の擦り傷に気づき、応急処置を行う。おそらく、落下したときにできた傷だろう。
ともあれ、彼の無事に安堵するハンター達だったが、タイミング悪くゴブリンが現れる。
「イヴォンさんを守りませんとっ……」
マルカはワンドを取り出して構える。ハンター達は休む暇なくこの対処に当たり始めるのだった。
●襲い来る亜人ども
イヴォンの発見を聞きつけ、ユキヤもその場へと駆けつけてきた。
「敵、ですか……」
彼もまたゴブリンの存在を認識し、敵を迎え撃つべく聖剣を抜いた。
「覚えた武術を実際に使える機会っすからね。少しわくわくするっす」
意気込む咏。目に焼きつくくらい動画を見たということで、武術にはそれなりに自身がある様子。
「……そういえば、ゴブリンって強いんすかね? 拍子抜けなのは勘弁っす」
そう言いつつ、彼女は八角棍「紫電」をゴブリンへと叩きつけていく。
対するゴブリンは、槍や斧を手にして襲い掛かってくる。マルカはイヴォンに被害が及ばないようにと、緑色の風でイヴォンの身体を取り巻いた上で、護衛を行う。怪我がなければと戦えるのにと、イヴォンは歯痒さを覚えていたようだ。
ワイヤーウィップを打ち鳴らし、ゴブリンを牽制するマキナ。
(退治が目的ではないですからね)
この場から追い払えれば。そう思い、彼はゴブリンの身体へと鞭を巻きつけていく。
しばし交戦が続く中、咏、ユキヤも敵の足止めを行う。
「ルンルン忍法五星花!」
ルンルンは符を飛ばし、不可視の結界を展開する。
そこで、斧を振り上げるゴブリンの脳天を、咏の棍が強かに叩きつける。それを受け、脳震盪を起こしたそいつは倒れてしまった。
残りのゴブリンはハンターに恐れをなし、そいつを引きずってその場から逃げるように去っていったのだった。
●美味しい一杯とクッキーを
ゴブリンを撃退したハンター一行。
イヴォン本人の救出は比較的容易だったが、馬や荷物はそうも行かない。
馬に関してはロープを駆使し、なだめながらもなんとか穴から救出をしたが、荷台は損壊してしまい、そのまま上げることは困難だった。
その為、メンバー達は上げられる荷物だけを上げ、各メンバー達は分担し、荷物の運搬へと当たることにする。
その間に、ハンター達はイヴォンに何があったか尋ねると、どうやらゴブリンに襲われたのは、街道を行く途中だった。馬車を走らせてゴブリンを撒いてしまおうと考えたイヴォンだったが、運悪く大穴にはまり、落下してしまったということらしい。
「今後は無理しないで、いつだってハンターを利用してください」
「ああ、次はそうさせてもらう」
マルカのお願いに、イヴォンはすまなさそうに答えていた。
ハンター達はイヴォンと共に茶屋を目指す。
作業はそれなりの時間を要したこともあり、茶屋『ブリーズ』の到着は夜になってしまった。
それでも、茶屋のクレマン、ミレイユ夫婦は快くハンターを出迎えてくれた。イヴォンから夫婦に小麦粉が渡り、依頼は無事解決する。
「いよいよお待ちかねの時間っすね。この為に身体張って頑張ったんすから」
咏は久々の運動で筋肉が悲鳴を上げるのを感じ、テーブルへと突っ伏してしまう。
「疲れたろう。よければこれを」
茶屋2人はハンター達の労を労い、飲み物とクッキーを振舞ってくれた。
それを見ただけで、咏は涎を抑えることができず、クッキーをぼりぼりと食べ始める。
「みるみるうちに回復していく気がするっすー」
咏は待ちに待っていたと、それを美味しそうに頬張っていた。
「祖父の喫茶店のコーヒーもいいですが、これはこれで格別の味ですね」
マキナはにっこりと微笑み、その味を堪能する。クッキーもさくさくとした触感、それでいて、コーヒーよりも主張しすぎない控え目な味が癖になりそうだ。
「わぁ、ほっとする香りと味です」
ルンルンは紅茶を頂く。こちらは気持ちを落ち着かせるハーブをつかっているのだろうか。依頼で疲れた身体を癒してくれるようだ。
メンバー達はその後しばらく、茶屋での一時を過ごす。深夜になっても、茶屋には灯りが付いていたのだった。
港街「ガンナ・エントラータ」にやってきたハンター達。
「こっちの世界に来て初の仕事っすね。美味しい紅茶・コーヒー、クッキーの為に、人探し頑張るっすよー」
「小麦粉は喫茶店にとって、茶葉やコーヒー豆に次ぐ必需品ですからね……」
報酬として、紅茶、コーヒーといった飲み物とクッキーがいただけるという。西蓮寺 咏(ka5700)は初依頼だということも相まって、両手を上げて意気込む。マキナ・バベッジ(ka4302)も、茶屋夫婦の心情を慮り、依頼に臨んでいた。
「きっと、何か大変なことがあったに違いないもの……。イヴォンさんの無事と美味しいお茶の為に私、頑張っちゃいます!」
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)は元気に叫ぶ。評判の紅茶とはどんな味かも関心があるが、やはり、運び屋イヴォンの安否が気になるところだ。
「今回の行方不明、茶屋『ブリーズ』を妬んだ同業者の怨恨の線も、視野に入れた方が良いかもしれませんね……」
その当たりも含めて情報を集めようと、マルカ・アニチキン(ka2542)は考える。
一刻を争う事態になっている可能性もある。ハンター一行は取り急ぎ、情報収集をと動き始めるのだった。
●イヴォンについて情報を
動き出すハンター達だったが、ユキヤ・S・ディールス(ka0382)は仲間を呼び止める。
「情報収集を始める前に、よろしいですか」
彼はメンバー間で情報交換できるようにと仲間に魔導短伝話を渡す。ユキヤは収集場所を街でなく、街道でということで、一足早く馬を走らせて街を後にしていたようだ。
さて、街中で散開したメンバー達。
情報収集に当たり、マルカは茶屋『ブリーズ』を訪れようと考えたのだが。仲間からそれはここでも聞くことができると言われ、港街で聞くことにする。ちなみに、彼女が聞きたかったのは、運び屋イヴォンの体格など、身体特徴だ。
収集する相手は、街道を通って港町にやってきた運び屋や旅人。可能な限り、イヴォンが港町を発った時間。見かけたならその場所、そして、すれ違わなくなった地点、時間などを確認する。
加えて、ゴブリンの目撃情報、大穴の場所、大きさについても把握する。
「街道に残ってる馬車の目撃情報も無いなら、馬車ごと穴に落ちてる可能性も高いかなって」
ルンルンはそう考え、大穴についても聞き出しを行う。
別所では、イヴォンの匂いが付いた物が手に入らないかと咏は考えていた。ただ、彼が運んできた荷物はあったが、それほど匂いが染み込んでいたわけではない。愛用品などあれば、咏はペットの犬に匂いを覚えさせようと考えたのだが……。
そうして小一時間、ハンター達が集めた情報を纏めると。
イヴォンは30代男性。1人で運び屋を行うくらいなので、ガタイはかなりいいようだ。
出発は昨日の朝らしい。茶屋夫婦が心配しているのだから、時間は経っていてしかるべきだろう。街に到着している知人や同業者からは人当たりのいい男だということで、馬に草を食べさせるタイミングで語らった者もいたようだ。それは大穴よりも手前の場所。それより茶屋側での目撃証言は得られなかった。
(怨恨の線も考えたけれど、それはないかしら)
マルカはそんなことを考える。
ゴブリンの目撃情報は、港町と茶屋の中間地点。街道脇に開いた大穴の付近らしい。大穴は丁度馬車が入る程度の大きさらしいが、少なくとも街にいた者の中に穴を覗き込んだ者はいないらしい。
「ゴブリンが見かけられたという情報もありますし……。イヴォンさんが心配です」
急ぎましょうと主張するマキナの言葉に、ハンター達は揃って頷いたのである。
●穿たれた大穴で
ある程度、イヴォンの失踪場所に当たりを付けたメンバー達。
港町を出発したメンバー達は、馬やバイクを走らせ、現場へと急行する。
「申し訳ないっすけど、誰か乗せてほしいっす」
唯一、長距離の移動手段を持たない咏は、誰かに乗せてもらうよう頼む。
マキナは魔導バイクの後ろにとも考えたが、生憎バイクは1人乗り。かといって、彼女だけを街道で歩かせるわけにも行かぬと、マルカが馬に乗せることにしたようだ。
そうして、港街を出発したハンター達。
メンバーの中で一足早く港町を発っていたユキヤは、街道をゆく人々をメインに情報収集を行っていた。大穴の存在、そして、ゴブリンの目撃情報。それは、ほとんど港町で得られるものと変わらない。
大穴が開いたのは、この数日ではないかという話もある。また、ゴブリンは最近、この当たりに流れてきているらしい。
「なるほど、予定のキャンセルができなかったと」
人々が街道を使う理由は様々だが。用心棒を立てれば、街道を行くのはどうにかなるという考えを持つ者が多いようだ。
そこで、街を出発したメンバーと一旦合流したユキヤは、集めた情報を仲間に伝える。
「もしかしたら、敵に襲われて荷物を奪われた……なんて事も、可能性は低いですが、あるかも知れないですね」
ユキヤはそんな見解を仲間達へ語った。
そのユキヤはそのまま、街道の人々に情報を集め続けるということで、他のメンバーが先行する形となる。
一行はバイクや馬を走らせながらも、人や馬車が街道脇にそれ、争ったり逃げるように踏み荒らしたりした場所がないかと探す。
「やはり、中間地点で何かあったと思うんですよね」
実は引き返したという線もあるが、一番大きな可能性は大穴だろうとルンルンは考えを口にする。
街道ゆくうち、大穴を発見したハンター達。その周辺を咏が注意深く見ると、蹄や轍の跡があった。
「急に地面が陥没して落ち込んだとか? 念の為、ジュゲームリリカル……」
ルンルンは符をドローし、生命感知を行う。
「ニンジャ感覚に感有りです!」
そうとなると、この中にイヴォンがいる可能性が高い。
彼らがそこを覗き込むと……その下、奥まった場所に人の姿があった。
「誰かいますかー?」
「幸運に恵まれていたらいいんですが……」
ルンルンはマルカと共に穴をLEDライトで照らし、声を掛ける。すると、かすかに何か声が聞こえた。その為、マルカが用意したロープを使い、その人物を地上へと引き上げた。
「ふぅ、助かったぜ」
そこから現れたのは、イヴォン本人だった。マルカは彼に駆け寄り、全身の擦り傷に気づき、応急処置を行う。おそらく、落下したときにできた傷だろう。
ともあれ、彼の無事に安堵するハンター達だったが、タイミング悪くゴブリンが現れる。
「イヴォンさんを守りませんとっ……」
マルカはワンドを取り出して構える。ハンター達は休む暇なくこの対処に当たり始めるのだった。
●襲い来る亜人ども
イヴォンの発見を聞きつけ、ユキヤもその場へと駆けつけてきた。
「敵、ですか……」
彼もまたゴブリンの存在を認識し、敵を迎え撃つべく聖剣を抜いた。
「覚えた武術を実際に使える機会っすからね。少しわくわくするっす」
意気込む咏。目に焼きつくくらい動画を見たということで、武術にはそれなりに自身がある様子。
「……そういえば、ゴブリンって強いんすかね? 拍子抜けなのは勘弁っす」
そう言いつつ、彼女は八角棍「紫電」をゴブリンへと叩きつけていく。
対するゴブリンは、槍や斧を手にして襲い掛かってくる。マルカはイヴォンに被害が及ばないようにと、緑色の風でイヴォンの身体を取り巻いた上で、護衛を行う。怪我がなければと戦えるのにと、イヴォンは歯痒さを覚えていたようだ。
ワイヤーウィップを打ち鳴らし、ゴブリンを牽制するマキナ。
(退治が目的ではないですからね)
この場から追い払えれば。そう思い、彼はゴブリンの身体へと鞭を巻きつけていく。
しばし交戦が続く中、咏、ユキヤも敵の足止めを行う。
「ルンルン忍法五星花!」
ルンルンは符を飛ばし、不可視の結界を展開する。
そこで、斧を振り上げるゴブリンの脳天を、咏の棍が強かに叩きつける。それを受け、脳震盪を起こしたそいつは倒れてしまった。
残りのゴブリンはハンターに恐れをなし、そいつを引きずってその場から逃げるように去っていったのだった。
●美味しい一杯とクッキーを
ゴブリンを撃退したハンター一行。
イヴォン本人の救出は比較的容易だったが、馬や荷物はそうも行かない。
馬に関してはロープを駆使し、なだめながらもなんとか穴から救出をしたが、荷台は損壊してしまい、そのまま上げることは困難だった。
その為、メンバー達は上げられる荷物だけを上げ、各メンバー達は分担し、荷物の運搬へと当たることにする。
その間に、ハンター達はイヴォンに何があったか尋ねると、どうやらゴブリンに襲われたのは、街道を行く途中だった。馬車を走らせてゴブリンを撒いてしまおうと考えたイヴォンだったが、運悪く大穴にはまり、落下してしまったということらしい。
「今後は無理しないで、いつだってハンターを利用してください」
「ああ、次はそうさせてもらう」
マルカのお願いに、イヴォンはすまなさそうに答えていた。
ハンター達はイヴォンと共に茶屋を目指す。
作業はそれなりの時間を要したこともあり、茶屋『ブリーズ』の到着は夜になってしまった。
それでも、茶屋のクレマン、ミレイユ夫婦は快くハンターを出迎えてくれた。イヴォンから夫婦に小麦粉が渡り、依頼は無事解決する。
「いよいよお待ちかねの時間っすね。この為に身体張って頑張ったんすから」
咏は久々の運動で筋肉が悲鳴を上げるのを感じ、テーブルへと突っ伏してしまう。
「疲れたろう。よければこれを」
茶屋2人はハンター達の労を労い、飲み物とクッキーを振舞ってくれた。
それを見ただけで、咏は涎を抑えることができず、クッキーをぼりぼりと食べ始める。
「みるみるうちに回復していく気がするっすー」
咏は待ちに待っていたと、それを美味しそうに頬張っていた。
「祖父の喫茶店のコーヒーもいいですが、これはこれで格別の味ですね」
マキナはにっこりと微笑み、その味を堪能する。クッキーもさくさくとした触感、それでいて、コーヒーよりも主張しすぎない控え目な味が癖になりそうだ。
「わぁ、ほっとする香りと味です」
ルンルンは紅茶を頂く。こちらは気持ちを落ち着かせるハーブをつかっているのだろうか。依頼で疲れた身体を癒してくれるようだ。
メンバー達はその後しばらく、茶屋での一時を過ごす。深夜になっても、茶屋には灯りが付いていたのだった。
依頼結果
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MVP一覧
- 忍軍創設者
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/02/27 07:22:33 |
|
![]() |
相談卓 マキナ・バベッジ(ka4302) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2016/03/01 00:45:25 |